環境省では除染などできるわけがない=一刻も早く、政策転換と担い手の交代を
前略,田中一郎です。
(別添PDFファイルは添付できませんでした)
別添PDFファイルは、昨今の「除染」(放射性物質の除去)に関する若干の新聞報道です。そもそも広範囲に深刻なまでに放射能で汚染された地域の「除染」が、ほぼ不可能に近いくらいに困難であることに加え、霞が関官庁の中でも最も体制脆弱で腰ぬけ、無責任の役所と言われている環境省では、こうした困難な仕事を遂行することはほぼ不可能であることを示すいくつかの事例ではないかと思われます。できない組織に困難な仕事を無理やりさせると、このように(めちゃくちゃに)なる、の典型事例のような気がします。
加えて、環境省担当大臣は、あの石原伸晃(自民党:東京)ですから、「除染」についての事態の改善はおそらく絶望的であると考えていいでしょう。現に、既に報道で、政府が約束していたはずの「除染」完了の期限が3年間先送りされたとも伝えられており、「除染」に伴って大量に発生すると言われている汚染ごみの「中間」を含む処理施設の問題とも合わせ、現状のままでは、ますます汚染地域の事情は苦しくなるばかりです。放射能汚染下での居住継続に伴う健康被害発生への懸念も高まってきています。まさに、抜本的な政策転換が求められていると言えるでしょう。
政策転換の内容は、簡単にいえば、次のようなことになります。内閣総理大臣以下、政府が責任を持って取り組むことが重要で、環境省への丸投げではダメです。
(1)「避難・疎開・移住」と「除染」との2本立ての政策とすること
(2)放射線管理区域指定基準を上回る空間線量の地域からは、全住民の一刻も早い「避難・疎開・移住」を実施。かつ、万全の賠償・補償を行いつつ、「避難・疎開・移住」先での生活や仕事の再建のための支援を拡充する。
(3)放射線管理区域指定基準を下回る空間線量の地域で、かつ1mSv以上の地域では、居住を続ける方々がいることを前提に、まず、綿密な汚染状況調査に基づいて、ホット・スポットを徹底的に退治する。しかる後に、空間線量が下がるまで着実に除染をやっていく(山林からの放射能降下で再汚染しないような低線量汚染地域を優先)。
(5)「除染」のやり方については、技術の向上や担い手の被ばく防止などを含め、抜本的な改善が必要
⇒ 検討委員会の設置、地域ごとの自主裁量の幅も広げる。環境省の「ゼネコン丸投げ方式」や、陳腐な除染手法の現場への押し付け、あるいは「手抜き除染」にみられるずさん極まりない除染事業の在り方を抜本的に見直さねばならない。
(6)「除染ごみ」の減容化については、最先端の技術を使って極力体積を小さくして閉じ込めることとし、放射能の再拡散による二次被害を回避する。(古い焼却炉で燃やすな、放射能汚染ごみを原形のまま放置するな他)
(7)「除染」費用をけちるな
(8)「除染」事業の利権化の防止・「除染」を巡る不正や暴力団関係の徹底排除など、「除染」事業の適正化が必要(厳しく対処せよ)
(9)飲食や呼吸による恒常的な低線量内部被曝に対して警戒を高め、ゆがんだ放射線教育や被ばく軽視PRを全面的に適正化する(飲食品検査体制の抜本拡充、地域住民の健康管理及び被ばく医療体制の整備など)。また、放射性セシウム以外の放射性核種に対しても十分に警戒することが必要不可欠。
(10)空間線量が1mSvを下回る地域においても、決して油断はできないので、個別地域ごとに被ばく防止の対策が取られることが望ましい。
<別添PDFファイル>
(1)ため池に高濃度汚染土(朝日 2014.2.25)
(2)汚染ごみ焼却施設爆発の報告書、黒塗り(東京 2013.12.6)
(3)除染技術実用化4件、採算・効率性に課題(東京 2014.1.8)
1.ため池に高濃度汚染土(朝日 2014.2.25)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140225-00000010-asahi-soci
http://www.asahi.com/articles/ASG2G014KG2FUGTB00Y.html
(一部抜粋)
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福島県内の農業用ため池576カ所の底の土から、1キロあたり8千ベクレルを超える高濃度の放射性セシウムが検出されていたことが県などの調査でわかった。うち14カ所は10万ベクレルを超えていた。国はため池を除染対象外としているが、農業用水を供給している池や住宅街にある池も多い。汚染土の農地流出や住民の健康被害を不安視する県は、国に汚染土の処理を求めている。
8千ベクレルを超える汚染土などは、国の責任で処分する指定廃棄物に相当する。また、環境省は県内で発生する除染廃棄物のうち10万ベクレルを超えるのは2千分の1以下と推定している。
県によると、県内の農業用のため池は3730カ所。県と農林水産省東北農政局は2012年2月~昨年12月、地域のバランスを考えて選んだ計1939カ所の底にある土壌を初めて調べた。
その結果、東京電力福島第一原発事故で住民が避難した国の避難指示区域内では108カ所(調査対象の41・2%)、事故後も水田や畑にため池の水を供給している同区域外では福島市や伊達市などの中通り地方を中心に468カ所(同27・9%)から土1キロあたり8千ベクレル超のセシウムが検出された。10万ベクレルに達した池は区域内で9カ所、区域外で5カ所あり、最高は区域内にある双葉町の大南?(おおみなみさく)ため池(39万ベクレル)だった。
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この後、この記事では、次のような記述が続く。
(1)夏場に水位が下がり、底の土がむき出しになるところがある。
(2)渇水や大雨で濁った池で取水し、農地に汚染土が流れ込む恐れもある。
(3)住宅街の池も多く、土が露出すれば周辺住民の健康被害の心配もある。
言われるまでもない。湖沼や池の水がなくなるか、減水・渇水すれば、底にたまっていた汚染土が乾燥して、ちりやほこりになって飛んでいく可能性が高くなるし、そこまで行かなくても、減水した、あるいは渇水気味の湖沼や池から田畑に農業用水を取水をすれば、放射能汚染土と一緒に水を引いてしまうことにもなりかねない。かような高濃度汚染の湖沼や池は、地域住民の居住地に近い場所にある場合や、農業用水として利用しているのであれば、ただちに除染しなければならないのは当然の話である。また、人里離れたところで、空間線量も高い地域にある湖沼や池であれば、むしろ地域住民が避難する方が話は早く、かつ費用も少なくて済むだろう。
ところが、除染や農業・農産物の安全に責任を持つべき霞が関の2つの役所は次のように言を左右して、自分たちの職責を果たそうとしない。
(1)環境省 「住民の環境に影響が出るほど周辺の空間放射線量は上がっていない」「現時点では除染しない」
(2)農林水産省 「除染は環境省の所管。農林水産省の事業として検討対象にしていない」「農林水産省が土の除去をすれば除染とみなされず、国費負担になる可能性がある」
この馬鹿ども、いったい何を言っているのか、ではありませんか? じゃあ、お前たちが福島県にやってきて、住んでみろ、農業をやってみろと、誰しも怒鳴りつけたくなるのではありませんか。しかし、これが日本の政府の実態です。もちろん、この2省庁のどうしようもない木端役人たちの背後には、あの石原伸晃環境相や、林芳正農林水産相や、その連中を集めた自民党という「原子力ムラ代理人会」が存在しているのです。言ってみれば、有権者・国民が選挙で愚かな投票をした結果が(あるいは投票を棄権した結果が)、この理不尽きわまる「除染対策」や、地域住民の被爆無視・健康被害切り捨て政策として「跳ね返ってきている」と言えるのです。私たちは、常日頃の選挙投票のところから、自分達の行動の見直しをする必要があるのではないかと思います。
福島県の農地管理課の課長さんは、(記事の中で)次のように発言しています。さっさと国は高濃度に汚染したため池の除染をやるべきです。
「中間貯蔵施設への輸送も含む全てのため池の除染費用は約154億円、国の新年度予算での計上除染費用は約2,600億円、この1割弱で費用は賄え
る。どこの予算でもいい、お金さえあれば作業は県でもやれる」
それから、もう一つ大事なことを申し上げておきますと、これだけ高濃度の放射性セシウム汚染がある場合には、当然ながら放射性セシウム以外の放射性核種による汚染も懸念されます。放射性セシウムだけを念頭に置いて動くのは危険です。放射性ストロンチウムやプルトニウム・ウランなどのベータ核種・アルファ核種へも、十分すぎるくらいの警戒をしておかなければなりません。また、放射性セシウム以外のガンマ核種も環境にばら撒かれています。更に、福島第1原発は、今でも大量の放射性物質を、大気中に、海に、垂れ流し続けているのです。朝日新聞の記事からは欠落している大きなポイントです。
2.汚染ごみ焼却施設爆発の報告書、黒塗り(東京 2013.12.6)
http://takumiuna.makusta.jp/e236743.html
http://ameblo.jp/heiwabokenosanbutsu/entry-11719312467.html
福島県鮫川村での話です。記事には「労働局、発生日時まで、黒塗り」「102ページ真っ黒、まるで保護法先取り」という副題が付いています。
これは環境省による犯罪行為です。情報をオープンにできない理由などなく、ひとえに環境省がロクでもないことをしているから、それが公になる
ことを恐れているだけの話です。そもそも焼却炉設置までの経緯からして出鱈目です。相手が福島県鮫川村だから、少々のことはやったっていいの
だ、という環境省役人たちの許しがたい傲慢・無礼な態度が透けて見えるような気がします。地域住民に理不尽なことを押しつける常套手段の「環
境省方式」の典型と言ってもいいでしょう。
環境省は、すでに水俣病などの公害問題や、産業廃棄物処分場問題で「前科」があり、環境を守らない環境破壊省、責任を取らない環境無責任省
として、その正体が明らかになっております。自分たちの政策でさえしっかり実現する姿勢を示さない「軟弱」省庁としても有名です。この官庁
は、経済産業省のように解体してなくしてしまうのではなく、幹部クラスを全員クビにすれば、大きく変わることができるでしょう。
3.除染技術実用化4件、採算・効率性に課題(東京 2014.1.8)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/feature/nucerror/list/CK2014010802100004.html
(一部抜粋)
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◆汚染土減らし策なし
放射能汚染が深刻な福島県内の除染では大量の汚染土壌の保管、処分が課題になっている。新技術の中には汚染土を洗浄して大半の土の放射性物
質濃度を低減し、高濃度の土を減らす「減容化」技術も複数あるが、実用化はゼロだ。
汚染土をはじめとした除染ごみの処理で国は現在、同県内に中間貯蔵施設の整備を計画している。ごみの総量を最大約二千八百万トン(東京ドー
ム約二十三個分)と想定し、全量を持ち込む予定だ。
国が認定した減容化技術はいずれも、貯蔵などの管理が必要な汚染土の量を50~20%程度に減らす効果が確認された。利用できれば中間貯蔵
施設の規模縮小も可能だ。しかし洗浄した土にも低濃度の放射性物質が残るために再利用のあてがなく、実用化を阻んでいる。除染場所に埋め戻す
のは住民感情を考えれば難しい。
公共利用の可能性はあるが、国は、低濃度の汚染土を道路の舗装の下の路盤材などに使う基準として「コンクリートなどで遮蔽(しゃへい)して
濃度が一キロ当たり三〇〇〇ベクレル以下なら再利用可能」と基準を決めただけ。具体的な用途の検討や省庁間での調整などは、まったくされてい
ない。
減容化技術の実用化を目指して、建設業者らは協議会をつくって効果的な遮蔽方法などを研究しているが「地元や住民の理解が大前提。国が政策
的にやらなければ難しい」(協議会幹部)という。除染現場では、汚染土処理の見通しがないため仮置き場の確保が難航し、除染計画が大幅に遅れ
ている。環境省は「除染を進めるには中間貯蔵施設を早く造る必要がある。減容化と併用できれば確かに効率的だが、施設規模やコストの再検討の
時間はない」としている。
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私は上記の記事内容を「マユツバ」で見ています。減容化や汚染土減らしの対策がない、というのは「本当かな」という気がします。そもそも
「除染の仕方」のところから変えていけば、汚染土や汚染物の量はかなり減るはずです。これは、技術の問題と言うよりも、環境省のやる気の問題
ではないかと、私は思っております。おい、環境省よ、お前たち、いい加減にせいよ。
早々