福島原発事故

2015年6月17日 (水)

国や自治体は、被ばく押しつけの「帰還」強制政策をやめ、原発震災被災者を差別・区別することなく、あらゆる方法で支援・救済せよ、加害者・東京電力は何をしているのか

前略,田中一郎です。

(別添PDFファイルは添付できませんでした)

 

みなさまご承知の通り、国や福島県庁は、これまでも、福島第1原発事故の加害者・東京電力や原発を推進してきた原子力ムラの復活、及びそこに群がる事業者群の救済、ないしは利権事業の確保を優先する一方で、被害者住民に対しては、きちんとした救済措置を取ることなく、超党派で全会一致で成立させた「子ども・被災者支援法」も棚上げにしながら、放射線被曝を押しつける「帰還」強制政策や、原発事故の賠償・補償を踏み倒す被害者切捨て・棄民方針をとり続け、あるいはまた、復興予算に「タカリ」行為を働き、利権・土建の事業を積み重ねることで福島第1原発事故からの復旧・復興を演出するというウソ・偽りの政策をとり続けてきた。原発事故から4年半を経過した現在、安倍晋三・自公政権は、いよいよ決定的な「あべこべ政策」を閣議決定し、福島第1原発事故被害者を、恒常的な低線量被曝(外部被曝・内部被曝)による大量被ばくか、または家族解体・コミュニティ破壊の上の貧困化・生活苦か、の二者択一を迫る「権力暴力」の暴挙に出ることを決めたのだ。

 

とりわけ、政府や自治体が避難指示を出さなかった地域、あるいは出したけれども、それを解消してしまった地域の被害者に対する救済措置の廃止は、避難住宅支援の廃止をはじめ、冷酷無残な重大な「犯罪行為」ともいうべき暴挙である。被害者住民は、何の罪もなく、ある日突然、安全で絶対に事故は起こさないと言われていた原発が火を吹き、あたり一面を放射能だらけにしたために着の身着のままで避難を余儀なくされ、それ以来、そのままに放置されている。政府は、事故直後から、賠償・補償負担の極小化を図ることを目的として、本来は一つであるところの「避難指示区域」を、みょうちくりんな官僚用語を付けた「区域指定」でバラバラにして差別化し、しかもその範囲を「30km圏」+αという非常に狭い範囲内に限定したのである。原発事故直後の初めの段階から、日本の政府は、被害者を守り救済するという姿勢に欠けていた。

 

 <参考:避難区域とその再編>

 再編前も再編後も、原発事故の賠償・補償を極小化し、踏み倒すために設けられた官僚用語の「(避難等)地域指定」がなされている。この「地域指定」には何の(科学的実証的実態的な)根拠もない(原発からの距離や年間被ばく線量など)。重大な人権侵害の悪政であることは言うを待たずだ。この「住民分断、賠償・補償踏み倒し」方式の「避難指示政策」は、今後の原発・核燃料施設事故においても踏襲されるであろう、重大かつ反国民的・反地域住民的政策であることもまた、しかと認識しておく必要がある。本来の被害者住民政策・原発事故被害者対策は、こうした霞が関官僚どもがつくった出鱈目の枠組みを、いったんご破算にし、放射能汚染とその危険性に基づいて、被害者住民の命と健康を最優先とし,かつ被害者住民の利益や要望に応える形で再構築するところから始まる。

 

●再編前=事故直後

 警戒区域(20km圏内、強制避難)

 緊急時避難準備区域(20km~30km圏内、屋内退避、20mSv/年以内)

 計画的避難区域(20km圏外で20mSv/年以上、原則避難)

 特定避難勧奨地点(20km圏外で20mSv/年以上、原則避難、計画的避難区域を広げたくないためのインチキ指定:出鱈目な汚染計測と地域住民の分断)

 

●再編後

 避難指示解除準備区域(20mSv/年以下)

 居住制限区域(20超~50mSv/年以下)

 帰還困難区域(50mSv/年超)

 

案の定、賠償・補償の手続きが始まると、政府や自治体が避難指示をした区域以外の地域の住民に対しては、放射能汚染の度合いとは関係なく、あるいは、原発事故で受けた被害の度合いとも関係なく、一律にわずか12万円という信じがたい少額の慰謝料を払ったきりで、そのあとは加害者・東京電力も事故責任者・国も何もしないで居直るという出鱈目を続けている。わずかに県庁や基礎自治体が、本当にスズメの涙ほどの支援策や救済策を打ち出してきたが、今回の話はそれをも打ち切って、被害者を完璧に切り捨てて、救済や再建支援の行政上の「重荷」を除去してしまおうというのだから驚きを越えて怒りを覚える。そもそも被害者救済を「重荷」と受け止めること自体がゆがんでいる。

 

いわゆる「自主避難者」と言われている方々は、そうした状況の下で、放射能汚染がひどく、子どもたちや自身の健康を懸念して、やむにやまれぬ思いで避難をされた方々である。決して「自主的」に、「喜んで」「自ら進んで」「避難をしたくて」避難をしたのではない。その被害者の方々に対して、政府や福島県庁などの都県は、「自主避難者」などという、一種の差別選別用語を用い、避難することが、さも復旧・復興の妨げとなる自分勝手なふるまいであるかのごとく印象付けるための言葉を使って、これまで一貫して差別的対処を続けてきた。被害者虐待の行政・被害者いじめの行政そのものだが、今回はそのわずかばかりの支援策の大黒柱ともいうべき避難住宅への支援さえ,やめてしまうという。

 

そのために節約できる予算は年間約80億円、年間の除染費用が今年度だけでも6500億円、放射能汚染物の中間貯蔵施設を含むトータルの放射能対策費が約4兆円も予算化されている中で、80億円の用意ができないなどという言い訳は通用しない。放射能汚染とその危険性をもみ消すための被害者踏みつぶし=つべこべ言わずに元いた場所へ戻れという、被ばく押しつけの「帰還」強制政策以外の何物でもない。被害者の意向を十分に聞いて、それを反映させて遂行すべき原発震災からの復興政策が、原子力ムラ主導の被ばく押しつけ政策に転換されてしまっているのだ。まさに「あべこべ」政権の「あべこべ」政策である。

 

●東日本大震災に係る応急仮設住宅の供与期間の延長について-福島県ホームページ

https://www.pref.fukushima.lg.jp/sec/16055b/260528-kasetukyouyoencyou.html

 

どこの世界に、あるいは歴史を振り返ってみて、悪質な人災で多くの人々に大規模な被害が出ているにもかかわらず、その被害者を救済しない支配者、あるいは政権・政策というものが存在したことがあるのだろうか。現日本政府は、現福島県庁は、信じがたい人権侵害と被害者踏みつぶしの政策を開始している(同じく、放射能汚染に見舞われている福島県庁以外の都県庁も、われ関せず・関係なしの、素知らぬふりをしているだけで、事は同じである。福島県以外の放射能汚染地域の被害者の方々もひどい状態に放置されている)。

 

放射能汚染とそれに伴う恒常的な低線量被曝(外部被曝・内部被曝)の危険性を、原子力ムラ・放射線ムラの力を借りて、新たな放射線安全神話を築きながら軽視・無視・矮小化し、原発事故の広範な被害者への償いも救済もしようとはしない。他方では、できもしない除染を巨額の復興予算を割いて原発推進事業者たちに分け与え、除染事業を「利権」化して、原発事故を食い物にする、そして、その行きつく先が原発再稼働と再びの原発・原子力推進である。こんなことが許されていいはずはない。かようなことをする「反逆者」どもは、政治や行政の世界から追い払う必要があるのだ。

 

今回、大きく申し上げて、政府の原発被害者切捨て・棄民化方策として、次の3つが同時並行で進められることとなった。本来なら、その政府方針に抵抗し、被害者住民の立場に立って行政を行うべき自治体は、ことごとく政府の下請け・原子力ムラの手下のごとく、被害者を踏みつける施策に邁進しているようだ。狂気の原子力翼賛社会が台頭している。まるで原発事故などなかったかのごとく、偽りの復興が飾り立てられ、フクシマ万歳・フルサト万歳の大合唱とともに、放射能と被ばくが忘れ去られようとしているのだ。その行きつく先は、子どもたちを中心に、多くの人たちの健康被害・遺伝的障害となっていく可能性は極めて高い。福島県やその周辺の放射能汚染地域の汚染状況は、とてもではないが、人間が住み続けることができる線量ではないことは明らかである。原発事故が起きてしまったら、「放射線管理区域が消えてなくなる」などということはあり得ないのだ。

 

 <安倍晋三・自公「あべこべ」政権が打ち出した3つの被害者切り捨て・踏みつぶし政策>

(1)賠償・補償の打ち切り(就業(失業)補償はすでに打ち切られている(20143月)、今回の打ち切りは、精神的被害補償(慰謝料・迷惑料)と営業補償の2つ、物損被害への賠償・補償は続く)

(2)避難指示区域外からの避難者(いわゆる「自主避難者」)への住宅支援の打ち切り

(3)居住制限区域、及び避難指示解除準備区域の区域指定の解除(目的は(1)の賠償・補償の打ち切りと、原発震災復興本格化、ないしは完了の演出)

 

福島第1原発事故の全ての被害者のみなさま、泣き寝入りはやめて、被害者同士で団結をして、まず、福島第1原発事故によるすべての被害・損害を、加害者・東京電力や事故責任者・国に賠償・補償をさせる裁判に立ち上がりましょう。すでにある損害賠償の集団訴訟に参加するか、新たに損害賠償訴訟を提訴していきましょう。みなさまが、原発事故で失ったものを全て返せ、元に戻せ、戻せないのなら相応の賠償・補償をせよ、と訴えることは全く正当なことであって、何ら躊躇すべきことではありません。そして、全ての被害者が提訴に立ち上がることによって、1000万人を超える巨大訴訟にしていきましょう。

 

また、それと並行して、こうした理不尽極まる出鱈目な被害者政策や救済切捨て行政を、こともあろうに加害者・東京電力や原子力ムラの人間・企業たちと手を組んで進めている、今の安倍晋三・自公政権の人間達や、自民党・公明党、及びその補完勢力を選挙で落選させて、政治の世界から葬り去りましょう。日本は民主主義の国です。安倍晋三・自公政権の独裁国家ではありません。みなさまがお持ちになっている権利をフルに行使することにより、少し時間はかかるかもしれませんが、今起きている理不尽で出鱈目極まる状態は、必ずや払拭し、変えていくことができます。案ずるより産むがやすしです。かような理不尽・出鱈目の政治・政策・行政に終止符を打ちましょう。手を取り合って、みなさまの権利を、みんなで行使していきましょう。

 

 <別添PDFファイル>

(1)自主避難者 無償住宅打ち切り、福島県、173月まで(東京 2015.6.16

http://www.tokyo-np.co.jp/article/tochigi/20150617/CK2015061702000153.html

(2)自主避難、家賃補助に縮小、173月 住宅提供廃止(毎日 2015.6.16

 http://mainichi.jp/select/news/20150616k0000m040087000c.html

(3)仮設、借り上げ無償提供、293月まで1年延長(福島民報 2015.6.16

 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150616-00000043-fminpo-l07

 http://www.minpo.jp/news/detail/2015051922886

(4)「安心して帰れるのか」(朝日 2015.6.13

 http://www.asahi.com/articles/DA3S11805913.html

(5)復興指針改定 閣議決定、居住制限・避難指示解除準備区域、28年度まで集中支援(福島民報 2015.6.13

 https://www.minpo.jp/news/detail/2015061323436

(6)柏崎刈羽 再稼働の準備加速、東電新潟本社「名ばかり」(東京 2015.6.14

 http://www.tokyo-np.co.jp/article/kakushin/list/CK2015061402000127.html

 

 <関連サイト>

(1)ママレボ通信 福島県庁に直接声を届けよう! ハンスト中の坂本さん、集まったみなさんの、避難者支援課への要請(文字起こし)

 http://momsrevo.blogspot.jp/2015/06/blog-post_8.html

(2)ママレボ通信 「どこが決めるんですか!?誰が責任者なんですか――!?」自主避難住宅提供終了報道をうけて「きびたきの会」院内集会(文字起こし)

 http://momsrevo.blogspot.jp/2015/06/blog-post.html

 

(別添PDFファイル(5)復興指針改定 閣議決定、居住制限・避難指示解除準備区域、28年度まで集中支援(福島民報 2015.6.13

 https://www.minpo.jp/news/detail/2015061323436

 

(下記の通り,この復興指針や支援策のメニューから強く感じられることは,放射能汚染や放射線被曝に対する無警戒,ないしは警戒の甘さです。信じがたい気がします。福島県民を何だと思っているのでしょうか? :田中一郎)

 

(一部抜粋)

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<改訂された復興指針>

▽居住制限、避難指示解除準備両区域の避難指示を遅くとも平成293月までに解除。

▽居住制限、避難指示解除準備両区域の精神的損害賠償は,、早期に避難指示を解除した場合でも,解除時期にかかわらず平成303月まで支払う

▽旧緊急時避難準備区域で復興施策を積極的に展開

▽帰還困難区域は放射線量の見通し、住民の帰還意向などを踏まえ地元と検討。復興拠点となる地域の避難指示の見直しを早急に検討

▽平成2728年度の2年間、特に集中的に自立支援策を展開

▽官民一体のチームを創設。事業者への個別訪問や相談支援

▽事業再建や人材確保、農林水産業の再生,医療・介護護・福祉施設の再開などに向けた各種支援施策を充実

▽営業損害賠償は2728年度は適切な対応。その後は個別の事情を踏まえる

▽中間貯蔵施設への除染廃棄物の迅速な搬入のため,地権者への丁寧な説明、用地交渉に関する人員確保などに取り組む

▽復興の動きと連携した除染の推進。

▽JR常磐線のできるだけ早期の全線開通

▽イノベーション・コースト構想の具体化。

▽官民連携による新産業創出。

▽中長期的な廃炉を支える環境整備・体制強化

 

<避難区域か設定された12市町村の事業・生業の再建・自立、生活の再構築に向けた支援策>

▽事業者への個別訪問を通じた実態や課題の把握、各種支援策の活用に向けた後押し

 事業再建、転業、新分野進出、資金繰りなどを支援する。中小企業診断土や税理士、中小企業経営コンサルタントなどを活用した訪問・相談型の支援を行う。

▽事業・生業の再建・自立や働く場の確保のための支援策

 試行的な事業再開場所として仮設施設の整備を進め、企業立地支援や企業誘致の支援を行う。福島再開投資等準備金を活用し、避難指示のあった区域での事業再開を支援する。

▽人材確保のための支援策

 雇用のミスマッチ解消に向け、国や地方自治体が連携して総合的な雇用対策を講じる

▽農林水産業再生のための支援策

 放射性物質の吸収抑制対策や検査を引き続き支援する。除染の進捗〈しんちょく)状況に合わせた農業関連インフラの復旧、大規模化、施設園芸の導入などを進める。森林は間伐による森林整備と土砂流出抑制で放射性物質対策を進める。漁業の試験操業は対象種と海域を拡大する

▽風評被害対策、諸外国・地域における農林水産物・食品の輸入規制、渡航制限撤廃・緩和に向けた働き掛け

 廃炉・汚染水対策の進捗状況を含めた情報、科学的知見に基づく説明、地元の魅力を国内外に発信し、働き掛けを徹底する

▽販路開拓のための支援策

 大手企業との商談機会を提供する他、大手企業と被災事業者とのワークショップを開催する

▽商業・小売I苫の買い物環境整備のための支援策

 仮設店舗での再開、補助金を活用した商業施設の整備、関連企業の誘致を後押しする

▽医療・介護・福祉施設の再開・整備のための支援策

 国のリーダーシップで県や市町村と連携し、施設整備や専門職の人材確保を進める

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<追1>【拡散・傍聴お願いします】7/15(水)福島原発被害東京訴訟 第12回期日

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福島原発被害東京訴訟 [mailto:311himawari@gmail.com]

【拡散・傍聴お願いします】7/15(水)福島原発被害東京訴訟 第12回期日

 

一人でも多くの方の傍聴をお願いします(チラシ添付します)

 

【福島原発被害東京訴訟 第12回期日 及び 報告会】

日時:7月15日(水)1000分~

 

国・東京電力の責任を問う!![第12回期日]

日時:7月15日(水)1000分~

場所:東京地方裁判所 101号法廷[東京都千代田区霞が関1-1-4]

原告及び弁護団からの意見陳述を行います。

(その後の期日予定)9/18(金)10:0011/11(水)10:00

 

[報告会]

日時:7月15日 裁判終了後(1040頃)

場所:弁護士会館10階1006AB会議室[東京都千代田区霞が関1-1-3]

当日の裁判の説明,これまでの経過報告とともに,今後の手続の流れや方針などについて,弁護団からご報告します。

 

最寄り駅は、いずれも

東京メトロ丸ノ内線,日比谷線,千代田線「霞ヶ関駅」A1出口

もしくは、東京メトロ有楽町線「桜田門駅」 です。

☆当日、930分より地裁前でチラシ配布・アピールなどいたします。こちらにもご参加ください。

 

【お問い合わせ】 

福島原発被害首都圏弁護団

160-0022 東京都新宿区新宿1丁目19番7号 新花ビル6階 オアシス法律事務所内

電話: 03-5363-0138 FAX: 03-5363-0139

Mail: shutokenbengodan@gmail.com

ブログ:http://genpatsu-shutoken.com/blog/

FB:https://www.facebook.com/genpatsuhigai.shutoken.bengodan

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<追2>「原発事故子ども・被災者支援法3周年シンポジウム」

2015621() 13:3016:30 開場 13:00 上智大学12号館502号室

原発事故子ども・被災者支援法支援会議 http://shiminkaigi.jimdo.com/

河崎健一郎弁護士ほか

※申込必須 http://kokucheese.com/s/event/index/299839/

※問合せ FoE Japan 03-6909-5983

 

<追3>(6)柏崎刈羽 再稼働の準備加速、東電新潟本社「名ばかり」(東京 2015.6.14

 http://www.tokyo-np.co.jp/article/kakushin/list/CK2015061402000127.html

 

(一部抜粋)

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東京電力が相崎刈羽原発(新潟県)の再稼働に向けた動きを加速させている。三年ぶりに核燃料を搬入した一方、地元の同意を得るために、新潟市にこの春、新潟本社を設置し、住民や自治体への広報活動に力を一入れる。しかし新潟県の泉田裕彦知事は本紙のインタビューに「情報開示に消極的な東電の体質は変わってない」と指摘。「名ばかり本社」への不信感をあらわにした。

 

(中略)新潟県の泉田知事との一問一答は次の通り。

 

ー新潟本社ができた後、東電の姿勢に変化は。

「真実を語らないという根本的な体質は変わっていない。例えば東日本大震災の一週間後、東電に福島第一原発の状況を聞いた。燃料の中にしかない放射性物質が建屋の外で検知され、炉心溶融は明らかだったのに担当者は『燃料は溶けていない』と説明した。国も虚偽の情報を公表していた。なぜ真実を語らなかったのか検証せず、いまだに社内処分もない。そんな会社は安全を確保できない」

 

「新潟本社が東電本社から独立し自分たちで責任を取り、予算を確保して安全を追求するなら話は別だ。しかし名前を『本社』にしただけで実際には何の権限もない。営業所のようなもので議論に値しない」

 

ー東電は柏崎刈羽原発の再稼働を急いでいる。

「東電に投融資している金融機関や株主は原発事故の責任を逃れている。本来なら自らが投融資した企業が安全を担える会社かどうか、チェックすべきだ。だが現状ではこうした機能が働かず、安全対策が二の次になりかねない。そうしたリスクの高い状態で原発を動かし、お金を生み出そうというのは筋違いだ」

 

ー東電は二O一三年に「福島復興本社」をつくったが、福島第一原発の汚染水を海に流していた情報を公表せず、地元との信頼関係が崩れた。

「名前だけの『本社』をつくっても本質は遠い東京の目線。情報を隠したら発電所の周りで暮らす住民がどう思うのか、想像できないのだろう。O二年の(福島第一、第二、柏崎刈羽の各原発での)トラブル隠しに始まり、ずっと隠蔽の歴史だ。まずは、その体質を根本から変えなげればならない」

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(田中一郎コメント)

 福島第1原発事故の被害者への賠償・補償や再建支援もろくすっぽせず、福島第1原発事故の実態解明や原因究明も棚上げ・隠ぺい、柏崎刈羽原発の地元への説明もいい加減で、この会社、いったい何をしているのか。さっさとつぶせ。(泉田裕彦新潟県知事のおっしゃることは,全くその通りだ)

草々

 

 

2015年5月28日 (木)

福島第1原発事故被害者の切捨てを画策し始めた自民党・政府、そして福島県庁、これは明らかな国家犯罪だ、が更に、新たな責任回避を「制度化」せんとする原子力ムラの厚顔無恥

前略,田中一郎です。

(別添PDFファイルは一部を除き添付できませんでした)

 

 今月(2015年5月)中旬、福島第1原発事故の被害者に対する重大な人権侵害政策が検討されていることが大きく報道された。別添PDFファイル、及び下記URLはその関連の情報である。その一つは、いわゆる「自主避難者」に対する住宅支援の打ち切りであり、もう一つは、原発事故被害者に対する賠償の打ち切りである。信じがたいことながら、こうしたことが、厚顔にも破廉恥にも、福島第1原発事故の責任者でもある日本政府及び自民党と、福島第1原発事故後、終始一貫して県民の命と健康と生活を守らずに、政府・原子力ムラの手下となって県民に放射線被曝を押し付けつつ、政府から交付される復興資金による利権・土建事業への「タカリ」行為を続ける福島県庁である。

 

 福島県を本当の意味で復興させるためには、何よりも、その復興を担う人間=県民が復興されなければならないことは自明のことである。また、その場合に、福島第1原発事故でひどく放射能に汚染された地域からは、住民を避難・疎開・移住させ、万が一にも命や健康に支障が出るようなことがあってはならない。そのことを最も重視する基本方針の下で、まずもって原発事故で全てを奪われてしまった被害者の方々が経済的に追い詰められたり、精神的に苦境に陥ったりすることがないように、すみやかに万全な賠償・補償が実施されるとともに、従前の生活・くらし、仕事や家業、教育・子育てなどが,被害者の方々の意見や意向が十分に反映された形で様々な政策的支援をもって復旧・復興されなければならないはずである。「子ども・被災者支援法」は、そういう基本的な考え方に基づきながらつくられた法律である。

 

 しかし、事態はほんとうに情けないくらいに出鱈目の展開を見せ、日本の政治に寄生するゴロツキ・ゴキブリ政治家どもによってメチャクチャな状態に陥りつつある。国会で全会一致で可決されたはずの「子ども被災者支援法」は,とうの昔に棚上げにされてしまって,法の主旨とは違う勝手な基本方針が霞が関の背信官僚達によって策定された。多くの原発事故被害者が路頭に迷い、あるいは粗末な仮設住宅に長期間にわたり閉じ込められ、将来への展望も希望も見失って、悲しい苦しいつらい状態に陥れられてしまっているのである。家族や地域のコミュニティが引き裂かれ,被ばくによる健康への懸念が日増しに大きくなり,収入の途絶ないしは大幅減少により生活苦も襲いかかる。原発事故が起きる前は、原発には事故がないかのごとき嘘八百の安全神話を流布して地域住民をたぶらかし、さんざん自分たちの原子力推進に利用しておきながら、その原発が、いい加減な安全管理が原因で大事故を起こすや否や、今度は、それによって被害を受けた方々を、「費用が掛かりすぎる」「財政負担が大変だ」などといった理由から、全く不誠実にも理不尽にも、はした金と交換に切って捨てようというのだ。こんなことが、人間として、人間社会のこととして、法治国家の出来事として、許されるはずもない。原発事故被害以外の場合には、それぞれ相応の賠償・補償や被害者支援がなされているというのに、何故、原発・原子力についてだけは、かような無法極まる暴挙が許されるのか。

 

 以下、可能な限り簡潔に、この福島第1原発事故被害者切り捨ての問題を下記にまとめ、日本社会への告発メールとしたい。私たち東京に住む者も福島第1原発事故の被害者であり、また、無用の被ばくを強要され、かつ今も引き続き被曝させられている被害者だが(福島第1原発からは今も放射能が放出されていることに加え、既に環境放出された放射能によって、主として継続的な内部被曝を余儀なくされている=二次被害)、しかし、幸いにして東京は福島第1原発から少し距離が離れていたことにより、深刻な被害に陥ることはなかった。しかし、だからこそ、上記で申し上げたような、福島第1原発事故で深刻な被害を受けられた方々(福島県民だけではなく、その周辺の県の住民の方々も含む)に対するあまりにひどい仕打ち=政府や自治体による人権侵害行為に対して、「やめろ」「きちんとしろ」「被害者の方々を完全救済せよ」の声を上げていくことは、同時代を生きる人間として、同じ国の国民として、良識を持つ人間としての道であり,義務であり,使命であり,倫理・道徳ではないかと思う次第である。

 

 聞くところによると、福島県をはじめ東日本の汚染地域から他の都道府県へ避難された方々に対して、民間ベースでの自主的な救済の手を差し伸べるのではなく、福島第1原発事故責任者の政府や、愚かで無責任な自治体の意向を背景にして、いわゆる被害者いじめ・被害者バッシングをする大馬鹿者が少なからずいるという。これも信じがたい話だが、故中沢啓治著の漫画「はだしのゲン」に描かれる「非国民よばわり」を続ける「民衆」「大衆」を思い出すと、さもありなん、とも思われる。日本という国は,古来の悪癖とも言うべき「頂点同調主義」「無限の同調圧力」「ムラ社会体質」のようなものが根強く残り、結果的には自分で自分の首を絞めるようなことになっているにもかかわらず、まるで「原子力翼賛社会」のごとく、原発事故で追い詰められた人々に対して鞭打つ大馬鹿者が絶えないようだ。この国は、政府や権力の歪みが、民衆によって増幅されるという重大な欠陥を抱えている。

 

 しかし、被害者の方々を含め、私たちには望みも希望もあるし、それを具現化せんとする大きな動きも出始めた。既に、福島第1原発事故で深刻な被害を受けた方々が、あまりの理不尽で無責任で自分勝手で冷酷極まる政府や自治体の対応に対して,怒りをもって損害賠償請求に立ち上がる、大きなまとまった動きが目立ち始めている(いわき市、浪江町、飯館村、南相馬市など)。更に,さる5月24日には、「原発事故被害者団体連絡会(ひだんれん)」の設立総会が成功裡に開催され多くの人々が参集した。被害者の方々は、苦境を乗り越えるべく、手をつなぎ、肩を組み、お互いを励ましあって、この21世紀最大級の人権侵害事件=国家権力犯罪に対して「NO」を申し立て始めている。その人数は既に1万人を超えた。今後1000万人規模による巨大損害賠償訴訟によって,福島第1原発事故での一人の「泣き寝入り」も許さない、完全完璧な被害者の救済が強く望まれる。そして,これからこれを実現していくことが、私は最も大事な私たち同時代に生きる有権者・国民・市民の課題であり責任ではないかと思っている。何故なら、危機にある日本を救うための脱原発は脱被ばくと表裏一体であり、その脱被ばくのためには被害者が完全に救済されなければならないからだ。脱原発と脱被ばくと被害者完全救済は、まさに三位一体なのである。

 

 <別添PDFファイル>

(1)自主避難 住宅提供終了へ、福島県調整 16年度で(朝日 2015.5.27

(2)自民復興5次提言 原発慰謝料18年3月終了 避難指示は17年に解除(東京 2015.5.22

(3)自民「18年に賠償打ち切り」提言 消えぬ不安(東京 2015.5.25

(4)原発営業賠償を延長、20172月まで一括払い(福島民報 2015.5.19

(5)賠償の底流 第3部課税 その1,その2(福島民報 2015.5.17.18

(6)賠償の底流 第3部課税 その3,その4(福島民報 2015.5.19,20

(7)原発賠償見直し 初会合、結論は越年(毎日 2015.5.22

(8)原発被害 救済続けて、国会へ署名12万筆(東京 2015.5.27 夕刊)

(9)(ちらし)南相馬・避難20ミリシーベルト基準撤回訴訟支援の会にご参加を!!(20155月)

10)(参加申込用紙)南相馬・避難20ミリシーベルト基準撤回訴訟支援の会(20155月)

 

1.今般打ち出されようとしている「福島第1原発事故被害者切り捨て」

 内容は2つ:(1)いわゆる「自主避難者」への災害救助法にもとづく避難先での住宅支援の「打ち切り」と、(2)福島第1原発事故被害者(但し「避難指示解除準備区域」と「居住制限区域」の住民について)に対する精神的損害賠償(慰謝料)の打ち切りと、反対が多くて一旦引っ込めた「営業補償」の終了の示唆(賠償・補償の「打ち切り」)、の2つの「打ち切り」である。

 

(その1):自主避難 住宅提供終了へ、福島県調整 16年度で(朝日 2015.5.27

 http://www.asahi.com/articles/ASH5J5H83H5JUTIL00M.html

 

(一部抜粋)

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東京電力福島第一原発事故後に政府からの避難指示を受けずに避難した「自主避難者」について、福島県は避難先の住宅の無償提供を2016年度で終える方針を固め、関係市町村と調整に入った。反応を見極めた上で、5月末にも表明する。故郷への帰還を促したい考えだ。だが、自主避難者からの反発が予想される。原発事故などで県内外に避難している人は現在約11万5千人いる。このうち政府の避難指示の対象外は約3万6千人。津波や地震の被災者を除き、大半は自主避難者とみられる。

 

県は災害救助法に基づき、国の避難指示を受けたか否かにかかわらず、避難者に一律でプレハブの仮設住宅や、県内外の民間アパートなどを無償で提供している。期間は原則2年だが、これまで1年ごとの延長を3回し、現在は16年3月までとなっている。今回、県はこの期限をさらに1年延ばして17年3月までとし、自主避難者についてはその後は延長しない考え。その際、終了の影響を緩和する支援策も合わせて示したいとしている。国の避難指示を受けて避難した人には引き続き無償提供を検討する。

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(その2)自民復興5次提言 原発慰謝料18年3月終了 避難指示は17年に解除(東京 2015.5.22

 http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2015052202000117.html

 

(一部抜粋)

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自民党の東日本大震災復興加速化本部(額賀福志郎本部長)は二十一日、総会を開き、震災からの復興に向けた第五次提言を取りまとめた。東京電力福島第一原発事故による福島県の「避難指示解除準備区域」と「居住制限区域」の避難指示を二〇一七年三月までに解除するよう正式に明記し、復興の加速化を政府に求めた。賠償では、東電が避難指示解除準備区域と居住制限区域の住民に月十万円支払う精神的損害賠償(慰謝料)を一八年三月に一律終了し、避難指示の解除時期で受取額に差が生じないようにする。既に避難指示が解除された地域にも適用するとした。

 

(中略)また一六年度までの二年間、住民の自立支援を集中的に行うとし、商工業の事業再開や農業再生を支援する組織を立ち上げる。その間、営業損害と風評被害の賠償を継続するよう、東電への指導を求めるとした。

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(関連)自民「18年に賠償打ち切り」提言 消えぬ不安(東京 2015.5.25

 http://www.tokyo-np.co.jp/article/tokuho/list/CK2015052502000170.html

 

(関連)原発営業賠償を延長、20172月まで一括払い(福島民報 2015.5.19

(関連)福島原発事故の被害補償に関連する記事一覧 - Yahoo!ニュース

 http://news.yahoo.co.jp/related_newslist/fukushima1np_compensation/

 

2.被害者がいかに苦しめられているかの事例(福島民報「賠償の底流 第3部課税」より)

 「所得税や法人税などの申告・納付の延長措置が(2015年)3月末で切れた」で始まるこの特集記事、読んでみると、胸が悪くなるくらいに、この国の税制のひどさが見て取れた。福島第1原発事故の被害者(今のところ物損被害,これから健康被害が追いかける)に対してろくすっぽ賠償・補償も再生支援もしないのに、税金だけはなんだかんだと言って取り立てる。福島第1原発事故によってすべてを奪われてしまった人たちは、これでは生きていくことができないではないか(被害者への賠償金に課税するとはいかなることぞ。常識的に考えても、被害という「税法上の損害」と差引されて、課税所得はゼロというのが常識的な判断ではないか)。他方では、加害者側にいる大企業・大資本や財界人たちは海外のタクス・ヘイブンなどを使って税金をほとんど納付していない。日本の国税当局は,税金を取り立てる相手を間違っているのではないのか。また,政治家どもは,何故,特別立法で被害者救済のための税制特例法を制定しないのか。

 

(その1)賠償の底流 第3部課税 その1,その2(福島民報 2015.5.17.18

 (1)https://www.minpo.jp/news/detail/2015051722849

 (2)http://www.minpo.jp/pub/topics/jishin2011/2015/05/post_11781.html

 

(その2)

 (3)http://www.minpo.jp/pub/topics/jishin2011/2015/05/post_11783.html

 (4)http://www.minpo.jp/pub/topics/jishin2011/2015/05/post_11785.html

 

(関連)「賠償の底流-東京電力福島第一原発事故」アーカイブ 東日本大震災 福島民報

 http://www.minpo.jp/pub/topics/jishin2011/2014CompensationNA/

 

3.原発・核燃料施設の過酷事故賠償制度の見直し

 原発・核燃料施設の過酷事故に伴う賠償・補償責任や、除染、あるいは廃炉の財務負担に耐えられない原子力ムラが画策している原発事故「賠償制度の見直し」とは、まさに「無責任の制度化」=倍賞・補償や除染・廃炉の費用は国庫負担とし、事故を起こした原子力産業=電力会社等の負担は「有限」=つまり上限金額を設けて、それ以上の負担がかからないようにする、ということのようだ。この似非専門家会議は、そのための屁理屈探しの委員会となりそうである。

 

●原発賠償見直し 初会合、結論は越年(毎日 2015.5.22

 http://mainichi.jp/shimen/news/20150522ddm008010154000c.html

 

4.知っておいていただきたいこれまでの簡単な経緯

(1)福島第1原発事故での住民対策で最優先されたのは、事故の実態隠しと放射能の危険性の隠蔽である

 連日のようにTVに登場していた原子力ムラの無能なインチキ似非学者たちは、口をそろえて「大丈夫」「心配ない」を繰り返し、すでにメルトダウン状態にあった福島第1原発事故の実態隠しを続けていた。もちろん政府の黙認の下でである。一方、原子力安全委員会は斑目(でたらめ)春樹原子力安全委員長以下、福島第1原発の水素爆発を見て「あわわわわわ・・・」と腰を抜かしてしまい、他方で、原子力安全保安院や経済産業省は真っ先に福島第1原発事故の現場から逃げ出して避難をしていた。東京電力も首相官邸からの強い制止を無視し、一時福島第1原発現場での事故後対応を放棄して、現場作業員を福島第2原発に撤退させていた。

 

 また、真っ先に放射能から守られるべき住民の命と健康も、ご承知の通り、巨額の費用をかけて開発されたSPEEDI情報の隠蔽・非公開(放射能の拡散予測は計算されていたし、在日米軍(真っ先に報告した相手)や福島県庁など、複数の部署や組織にはその結果が伝えられていた)、ヨウ素剤の配布・服用は指示されず、あるいは妨害し(県民を守るべき立場にある福島県立医大では家族を含む自分達だけでヨウ素剤を服用していた)、初期被ばく検査の意図的サボタージュや妨害、放射線防護措置の放棄ないしは手抜き、環境放射能測定のサボタージュないしは隠蔽などなど、住民に放射能汚染の深刻な状況を知らせまい・危険性を悟られないことが最優先にされ,事実上,後回しにされてしまっていたのである。原発・原子力が地域住民や国民のためのものではないことがこの原発事故ではっきりし、原子力ムラ連合の反国民性も明らかとなり、原発・原子力が国家滅亡・故郷壊滅をもたらす超危険物であることも明白となった。

 

(2)賠償負担の抑え込み・圧縮・切捨ては福島第1原発事故直後の「避難指示」の時から最優先されてきた

 福島第1原発事故の深刻化に伴い、周辺住民の避難指示が出されたが、その特徴は、事故後の賠償負担をにらみ、それを極力抑え込み、圧縮・切捨てすることを念頭に置いた,きわめて不十分かつ不適切なものだった。まず第一に、避難指示の範囲が狭すぎる・小さすぎるため、深刻な放射能汚染状態にある地域が「避難指示されない」ままに放置され、その結果その地域は、損害賠償・補償の対象外地域とされた(中通地方や南相馬市など)。第二に、避難指示が遅く、かつ,その避難指示を情勢の後追いで小出しにしたため、住民は無用の大量被ばくをさせられてしまった(飯館村など)、第三に、避難指示区域は「一つの一律的な区域」とすればいいものを、下記のように、わけのわからぬ官僚用語をくっ付けて「細切れ」の分断区域にされてしまった。後日、住民が賠償・補償を求めて統一的な動きがとりにくいよう「分割し統治せよ」が文字通り実践された。

 

 <福島第1原発事故に伴う旧避難区域の区分=再編前>

●「警戒区域」(20km圏内:強制避難)

●「緊急時避難準備区域」(20~30kn圏内:屋内退避・20mSv/年未満)

●「計画的避難区域」(20km圏外で20mSv/年以上)

●「特定避難勧奨地点」(20km圏外で20mSv/年以上)

 

注1:アメリカ政府は福島第1原発の80km圏を避難指示区域に指定し、自国民にその圏外に退去するよう勧告を出していた。

 

注2:「特定避難勧奨地点」がひどいのは、地点指定が個別の家屋ごとになされるため、同じ地域にあって、同じような汚染状態にあっても指定される家とされない家が出ていること、加えて、放射能汚染の測定の仕方が出鱈目で(マニュアル違反)、放射能汚染の実態とは違うインチキの測定結果で判断がなされている点である。また、昨年12月に住民一同の強い反対を押さえつけて南相馬市の「特定避難勧奨地点」が解除されたことにより、全ての「特定避難勧奨地点」の解除が終わったが(他に伊達市や川内村)、実際の現場はひどい放射能汚染のままに放置されており、あまりに理不尽な措置に対して、住民からは地点解除撤回と賠償の提訴がなされている。

 

 <避難指示区域の再編後>

●「帰還困難区域」(年間50mSv超)

●「居住制限区域」(年間20超~50mSv以下)

●「避難指示解除準備区域」(年間20mSv以下)

 

注:田村市都路地区や川内村などが避難指示区域再編を経て避難指示区域解除となった。避難指示が解除されると、その地域の放射能汚染や生活基盤整備や営業基盤回復の実態如何にかかわらず、精神的賠償(毎月10万円)が解除後1年間を経過したのちに打ち切られる。

 

(3)役に立たなかった原子力損害賠償法

 電力事業者への賠償責任の集中によって、原子炉・原発メーカーを免責してしまっている、この「原子力ムラ保護法」は、原子力損害賠償遂行の法規制としても全く有効に機能しなかった。肝心要の被害者に対する賠償責任履行の財源となるべき「原子力損害賠償責任保険契約、及び原子力損害賠償補償契約」は、いずれも金額が小さく(1200億円)、福島第1原発事故のような原発・核燃料施設過酷事故に対しては金額的に全然不足していて、全く無力・無意味である。言ってみれば、日本の原発・核燃料施設は、福島第1原発事故の前も後も、その過酷事故(シビア・アクシデント)発生リスクに対する損害保険費用を払わないまま、偽りの原発コスト安価の「見せかけ」の上で稼働され推進されているわけで、その結果としての損害負担踏み倒しの「ツケ」は、すべて原発事故被害者に一方的に押し付けられているのである。ゴロツキ・ゴキブリ政治家たちが約束した原子力損害賠償法の抜本見直しが始まったけれども、その状況は上記「3.原発・核燃料施設の過酷事故賠償制度の見直し」のとおり、あきれることか、反国民性をより一段とひどくする方向で、原子力ムラの無責任をさらに助長する形で,まさに「原子力ムラ焼け太り」の形で、この原子力損害賠償法が見直しされようとしている。

 

(関連)原子力損害賠償法

 http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S36/S36HO147.html

 

(4)賠償・補償の「瀬戸際政策」

 原発の過酷事故被害に関する損害賠償・補償であっても、他の賠償・補償事件と基本的な考え方は変わらないはずである。要するに、被害が出ていれば、全て賠償・補償されなければならないし、被害の金額は、その賠償される被害に応じて、それが完全に償われるだけの金額でなければならない。原発事故で被害者の方々が何らかの負担を負わねばならないというのは許されず、負わされた負担はすべて償われなくてはいけない。精神的被害への賠償(慰謝料)も、悪質な交通事故被害の際に支払われる金額以上のものが支払われなければいけないし(先祖代々の故郷喪失に対する慰謝料)、営業補償についても、原発事故前の状態に戻るまでの間、その減収分については満額支払われなければいけない。もちろん実際に支払われるのが遅くなれば、電力料金遅延損害金と同じ利率(10%)の遅延損害金付で、加害者・東京電力から徴収する必要があるのである。

 

 しかし、福島第1原発事故後は、そうはならなかった。まずもって、原子力損害賠償法を根拠にして「原子力損害賠償紛争審査会」なるものが、世にいう御用学者ばかりを集めて設置され、そこで下記のような「損害賠償指針」なるものが策定された。複数回にわたって答申されているが、いずれもひどい内容で、簡単に言えば、原発事故による被害・損害の「踏み倒しマニュアル」のようなものである。その2011年8月に公表された「中間報告」には次のような驚くべき記載がある。

 

「また、原賠法における原子力損害賠償制度は、一般の不法行為の場合と同様、本件事故によって生じた損害を塡補することで、被害者を救済することを目的とするものであるが、被害者の側においても、本件事故による損害を可能な限り回避し又は減少させる措置を執ることが期待されている。したがって、これが可能であったにもかかわらず、合理的な理由なく当該措置を怠った場合には、損害賠償が制限される場合があり得る点にも留意する必要がある。」(被害者から見ても、また私たち一般の有権者・国民・市民からみても、かような記載は「ふざけるな!!」ではないか。「原子力損害賠償紛争審査会」の「正体」をいみじくも現した記述と言える)。

 

 その後も、この「原子力損害賠償紛争審査会」の御用委員たちは、被害者救済のために何の働きも機能も発揮することなく今日に至っている。この反被害者・反国民の態度をとって居直り続けている「原子力損害賠償紛争審査会」は、ただちに解散されなければならないし、そもそも政府の原子力推進政策の総本山である文部科学省(旧科学技術庁)が、こうした原発事故の損害賠償の所管をしていること自体が「利益相反」そのもので不当である。文部科学省から原発事故損害賠償の所管を切り離せ。

 

(関連)原子力損害賠償紛争審査会:文部科学省

 http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/kaihatu/016/

 

(関連)東京電力株式会社福島第一、第二原子力発電所事故による原子力損害の範囲の判定等に関する中間指針(平成2385日)

http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/kaihatu/016/houkoku/1309452.htm

 

 肝心の被害者に対する東京電力の賠償・補償については、手続き情報の案内が不親切で、かつすべての被害者に行き届いていない、手続きが煩雑すぎる(書類整備等)、時間がかかりすぎる・意図的に遅らせている、そもそも多くの場合屁理屈を付けて支払わないし、支払っても満額払わずに値切る、など、さまざまな苦情が寄せられている。また,賠償・補償をめぐる裁判などでは,福島第1原発事故で環境に放出された放射能は,もはや誰のものでもない「無主物」であるから,放出元の自分達東京電力はこれに対して責任を持たないなどとうそぶき,自分達の原発事故による加害責任=汚染者負担の原則の否定を平然と主張してみせる厚顔ぶりを発揮している。

 

 今現在進められている東京電力による福島第1原発事故の賠償・補償で,最大の問題というか理不尽なことの一つは,いわゆる避難指示区域以外の放射能汚染地域に居住していた被害者への対応である。こちらは避難指示区域とは違い,精神的被害については,1人一律,たったの8万円(妊婦・子どもは40万円,のち60万円に増額)が1回限り支払われるのみで,あとは個別事情に応じて原発事故が原因の費用増加に対して,加害者・東京電力の判断に基づき是々非々で賠償が行われている(許されない「利益相反行為」である)。しかも,避難指示区域以外の地域から放射能汚染・被ばくを避けて避難している被害者に対しては,「自主避難者」などという失礼極まりないワッペンを張り付けて,「必要もないのに放射能を過剰に恐れている非科学的な人間」という,いわれなき差別的・偏見的ニュアンスを含みながら,ほとんど何の支援もサポートもされないまま,まるで棄民であるかのように放置されているのである。何という国なのか,何という自治体か。そして,この方々に唯一に近い,災害救助法という原発事故に特定されない一般法を根拠にした避難先での住宅支援が,このほど「打ち切り」の検討俎上に挙げられたというのである。

 

 なお,避難指示区域以外の被害者に対する営業保障については,賠償・補償の適用が極めて理不尽で範囲が狭く,金額も小さく,報道などでは,わずかに農林水産業と観光業くらいが,不本意な金額で東京電力から賠償・補償を受けている程度である。原発事故により勤め先が倒産したり廃業したり長期休業したりした場合の「休業補償」も,少し前に打ち切りとなってしまったようである。これでは,避難指示区域以外にたくさん存在している深刻な放射能汚染地域に住む人々は,危険な恒常的な低線量被曝(外部被爆・内部被曝)をし続けるか,路頭に迷うかの選択しかできない,非常に理不尽かつ重大な人権侵害状況に置かれていると言える。

 

 もう一つの大きな理不尽・不合理は,原発事故による損害賠償の中でも,最も金額が大きくなる不動産等の賠償については,原子力損害賠償紛争審査会が指針を出すのではなく,東京電力と経済産業省が談合しあってその基準を決めたというから驚きである。言ってみれば,加害者が被害者に対して,お前の財産の価値はこんなものだ,と申し送りするようなものである。しかし,これほど下劣かつ醜態極まる「利益相反」行為に対しても,原子力損害賠償紛争審査会は素知らぬ顔をし,福島県庁をはじめ原発事故被害自治体からもさしたる異議申し立ては出ず,被害者からの異議は無視されて,かような出鱈目な損害賠償がまかり通っているのである。

 

(関連)東電からの賠償について - yamagatahinanhaha ページ!

http://yamagatahinanhaha.jimdo.com/%E6%B4%BB%E5%8B%95%E3%81%AE%E6%A7%98%E5%AD%90/%E6%9D%B1%E9%9B%BB%E3%81%8B%E3%82%89%E3%81%AE%E8%B3%A0%E5%84%9F%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6/

 

 しかし、東京電力の大株主であり監督官庁でもある政府は、この状態をいつまでたっても改善しようとはせず、むしろ、放射能汚染地域への住民の帰還を促す効果もあるなどと評価して、その改善のための手を打とうとしないのである。いわば、加害者・東京電力の原発事故賠償踏み倒し行為を、陰ながら歓迎し、応援している様子さえ見受けられる。

 

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●「賠償・補償・再建支援:5原則+α(同時代に生きる人間としての使命・倫理)

 賠償・補償・再建支援が全く不十分で出鱈目=21世紀最大の人権侵害事件

 賠償・補償・再建支援がきちんとならないと被害者はいつまでも救われない

(1)全ての被害者の全ての被害・損害が何の留保条件を付けられることなく全額賠償または原状復帰されること(逸失利益含む)

(2)全ての被害者の生活及び経営が再建されること(費用,段取り,その他の負担のすべてを加害者が負うこと)

(3)上記②の再建が確認できるまでの間,全ての被害者の生活及び経営を補償すること

(4)2011311日以降,上記の賠償・補償・再建費用が実払いされるまでの間,電気料金遅延にかかる「遅延損害金」と同利率(10%)の「遅延損害金」が被害者に支払われること

(5)悪質な交通事故被害の場合以上の慰謝料(迷惑料)が被害者に支払われること

(6)(+α)被害者の被害は「お金」に変えられないものも多い。その部分を加害者・東京電力(及び原発メーカー)や事故責任者・国が万全にフォローすること

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(5)原発ADRと「原子力損害賠償紛争解決センター」のインチキ

 原発事故の損害賠償・補償の問題を裁判で解決しようとすると、原告側=被害者側に大きな経済的・心理的負担がかかるので、できるだけ速やかに簡潔に事態の解決を図るべく、被害者と加害者・東京電力とが話し合いでこの問題を解決できるようにと設けられた「損害賠償に関する仲裁機関」が、この原発ADRを所管する「原子力損害賠償紛争解決センター」である。

 

 発足当初は期待されたが、時間が経過するにつれて、だんだんと被害者救済のためとは思えないようなADR対応が目立ち始め、今では被害者救済=倍賞・補償の完全履行に対して、さしたる付加価値のある機能を果たしているとは言えない状況になっている。このことについては、少し前の毎日新聞が「ゆがんだ償い」という特集記事を組んで、その歪みきった実態を告発する記事を掲載した。簡単に言えば、原子力損害賠償法や「原子力損害賠償紛争審査会」、「原子力損害賠償紛争解決センター」を所管している文部科学省が、裏で陰に隠れて、原子力損害賠償や原発ADRが十分には機能しないように=言い換えれば、賠償金額が可能な限り小さくなるように(交通事故等の場合の損害賠償額の半額以下へ)様々な形で現場に干渉をし、あるいは被害者を切り捨ててしまうよう、上から権力的にふるまっていたことが暴露された。

 

(関連)(毎日新聞)ゆがんだ償い:切り捨てられる原発被害者=その背後でうごめいていたのは文部科学省(下村博文文相)と自民党政権だった いちろうちゃんのブログ

 http://tyobotyobosiminn.cocolog-nifty.com/blog/2014/10/post-c237.html

 

(6)被害者を切捨て加害者を救済するスキームである「原子力損害賠償支援機構」

 上記で見たように、福島第1原発事故の被害者である東日本の地域住民に対して、きちんとした賠償・補償を行わないまま、加害者・東京電力を事故責任者の国(菅直人民主党政権)が、下記の原子力損害賠償支援機構(今は廃炉事業が合体されて「原子力損害賠償・廃炉等支援機構」となっている)を設立して、事実上救済し、青天井の損失補てんと実質的な賠償・補償資金の拠出、及び除染や廃炉費用の負担肩代わりを実施している。加害者・東京電力に巨額出資をして最大の大株主となった政府は、東京電力に対しては、経費削減と徹底した合理化をさせるとともに、国が肩代わりした費用については超長期の期間をかけて、すべて国に返済させるとしているが、怪しい限りである。既に、放射能汚染ゴミの中間貯蔵施設は国庫負担(約1兆円)で建設されることになっているし、廃炉費用についても、今後いかほどの費用がかかるのか、見当もつかない状態である。損害賠償についてもしかりである。

 

 本来は福島第1原発事故を引き起こしたことにより、事実上破たん会社となった東京電力は、一旦会社更生法を適用して破綻会社として整理し、少なくとも株主や大口債権者に応分の負担をさせて負債サイドを身軽にし、かつ減資も行い、しかる後に政府の管理会社として復活させるべきなのである。それをしないで、事実上、当事者能力も喪失してゾンビ状態にある東京電力に、ずるずると巨額の税金の投入を続けて、半ば死に体のまま組織と経営を存続させることが、必然的に東京電力と電力業界他社の経営陣にモラル・ハザードを生み出し、それが日常の原発管理の手抜きやずさんさ、あるいは安易軽率な原発再稼働への道につながって、次の過酷事故を用意していくのである。

 

 東京電力には直ちに会社更生法を適用して、その負の遺産・巨額負債を、それぞれの債権者や株主の負担で整理・処分すべきである。そして、しかるのちに、発送電分離や地域独占解消のための発電部門や小売部門の会社分割・分離独立など、東京電力があまりに巨大・強大であることの害悪を取り除き,電力の消費者・ユーザーが自由に電力を選択できる,適切に管理された競争条件の整った新たな時代の電力供給体制を,他の地域に先駆けて創設していくようにしなければならない。

 

(関連)ウィキペディア 原子力損害賠償・廃炉等支援機構

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8E%9F%E5%AD%90%E5%8A%9B%E6%90%8D%E5%AE%B3%E8%B3%A0%E5%84%9F%E3%83%BB%E5%BB%83%E7%82%89%E7%AD%89%E6%94%AF%E6%8F%B4%E6%A9%9F%E6%A7%8B

 

(関連)原子力損害賠償・廃炉等支援機構 HP

 http://www.ndf.go.jp/

 

5.被害者の団結・絆の構築,そして人間としての尊厳と暮らしを取り戻す闘いの立ち上げ

 それぞれ別添PDFファイル,及び下記のサイトをご覧下さい。

 

(1)5.24「原発事故被害者団体連絡会」(ひだんれん)設立集会

 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150525-00000018-khks-l07

 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150524-00000036-mai-soci

 


(関連)【ライブ配信】24日13時〜原発被害者団体連絡設立総会 OurPlanet-TV:特定非営利活動法人 アワープラネット・ティービー

 http://www.ourplanet-tv.org/?q=node/1919

 

(関連)原発事故で全国組織設立 - 「尊厳取り戻すため闘う」マイナビニュース

http://news.mynavi.jp/news/2015/05/24/185/?utm_content=buffer95d51&utm_medium=social&utm_source=facebook.com&utm_campaign=buffer

 

(関連)原発被害糾弾 飯館村民救済申立団「原発事故被害者団体連絡会設立集会」関連 - kyusaimoushitatedan ページ!

http://kyusaimoushitatedan.jimdo.com/%E5%8E%9F%E7%99%BA%E4%BA%8B%E6%95%85%E8%A2%AB%E5%AE%B3%E8%80%85%E5%9B%A3%E4%BD%93%E9%80%A3%E7%B5%A1%E4%BC%9A%E8%A8%AD%E7%AB%8B%E9%9B%86%E4%BC%9A-%E9%96%A2%E9%80%A3/

 

(2)原発被害 救済続けて、国会へ署名12万筆(東京 2015.5.27 夕刊)

 http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2015052702000229.html

 http://blog.goo.ne.jp/tanutanu9887/e/a7aba0dbeaa68218b9c258b6d14cdb5c

 

(関連)原発事故被害者の救済を求める全国運動 - ホーム

 http://act48.jp/index.php/2014-01-07-02-41-36.html

 

(3)(別添PDFファイル)

●(ちらし)南相馬・避難20ミリシーベルト基準撤回訴訟支援の会にご参加を!!(20155月)

「minamisouma_tirasi.pdf」をダウンロード

●(参加申込用紙)南相馬・避難20ミリシーベルト基準撤回訴訟支援の会(20155月)

「minamisouma_nyuukaimousikomi.pdf」をダウンロード

(関連)南相馬の地点解除訴訟(20ミリ基準撤回訴訟)支援の会(準備会)

 https://www.facebook.com/minamis20wg

 

(関連)全国の原発事故集団訴訟を闘う皆様へ(南相馬・避難20ミリシーベルト基準撤回訴訟支援の会(略称20ミリ撤回訴訟の会)代表世話人・坂本建)

 https://www.facebook.com/minamis20wg/posts/788654951251347

 

(関連)FoE Japan:ついに提訴へ!南相馬地点解除訴訟(20ミリ撤回訴訟)を応援しよう

 http://www.foejapan.org/energy/action/150416.html

 

(4)「ふくしま集団疎開裁判」

20150513 UPLAN 子ども脱被ばく裁判新宿デモ - YouTube

 https://www.youtube.com/watch?v=9kLBVUy71zU

 

20150521 UPLAN 柳原敏夫「子ども脱被ばく裁判-福島の最大の問題を正面から問うた裁判」ほか - YouTube

 https://www.youtube.com/watch?v=bvNW1f_doio

 

(関連)ふくしま集団疎開裁判の会 活動ブログ 子ども脱被ばく裁判 「子ども脱被ばく裁判」­5.23新宿デモ 子どもが「爆弾が埋まっているようだ」と庭に置き去りの除染土50袋のことを言いました。

 http://fukusima-sokai2.blogspot.jp/2015/05/52350.html

 

(関連)「ふくしま集団疎開裁判」ブログ

 http://fukusima-sokai.blogspot.jp/

草々

 

 

2015年5月12日 (火)

原発はいい加減な管理をして他人様に大迷惑をかけても、賠償も補償も謝罪もしないのか=踏み倒される原発震災被害者の損害賠償・補償

前略,田中一郎です。

(別添PDFファイルは添付できませんでした)

 

(最初に4つばかり)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

1.(別添PDFファイル)ストップ汚染水・ネット署名

 http://stoposensui15.blogspot.jp/

(別添PDFファイル)

「osensui1.pdf」をダウンロード
「osensui2.pdf」をダウンロード

2.(別添PDFファイル)仏アレバ・続報:アレバ 仏政府が救済へ(日経 2015.5.5

 http://www.nikkei.com/article/DGXLZO86436700V00C15A5FFB000/

 

(関連)粉飾決算疑惑の東芝、株価が大暴落!チャートが断崖絶壁!会計のメンバーがJALと同じ!東芝の電力システム等が調査対象に! 赤かぶ

 http://www.asyura2.com/15/hasan96/msg/379.html

 

(関連)1272.倒産寸前のアレバ、大赤字の三菱、決算出せない東芝(院長の独り言) 聖なる経済学を語る

 http://blog.livedoor.jp/sacredeconomics/archives/43997307.html

 

3.(必見サイトその1)ママレボ通信

 http://momsrevo.blogspot.jp/

 

(1)「福島の人たちは胸をはって戦って!」広島の被爆者たちも激励<「南相馬の地点解除訴訟(20ミリ撤回訴訟)を応援する全国集会in東京」

 http://momsrevo.blogspot.jp/2015/05/15020in.html

(2)渡利小学校(福島市)の通学路はいまだに放射線管理区域なみの放射線量

 http://momsrevo.blogspot.jp/2015/05/blog-post.html

(3)「ただ、ふつうの生活をしたいだけ」――応急仮設住宅(みなし仮設)の供与期間について

 http://momsrevo.blogspot.jp/2015/04/blog-post_26.html

 

4.(必見サイトその2)OSHIDORI Mako&Ken Portal / おしどりポータルサイト

 http://oshidori-makoken.com/

 

(1)汚染水が最高値を更新しているのを見つけるのはマコちゃんだけ?

 http://oshidori-makoken.com/?p=1062

(2)福島県回答「東京電力からは覆土式一時保管施設のモニタリング結果の報告は受け取っていない」

 http://oshidori-makoken.com/?p=1050

(3)この日も質問の回答は「お持ち帰りが多い」

 http://oshidori-makoken.com/?p=1037

 

ここから本文

===============================

別添PDFファイルは、昨今の福島第1原発事故に関連した被害者への賠償・補償問題に関する新聞報道等を若干集めたものです。一見して、そのあまりのひどさと酷さに唖然とさせられます。他の産業部門での事故災害などでは考えられないような出鱈目、人権侵害、無責任、インチキ行為、被害者切り捨て、などがのさばり続けています。何故に、原発についてだけは、当て逃げ・壊し逃げ・汚し逃げ、被害者踏みつけ、のような犯罪行為が大手を振ってまかり通るのでしょう? 日本という国は本当に法治国家なのでしょうか。このままでは、原発の出鱈目「法治」国家ではなく、出鱈目「放置」国家です。

 

 <別添PDFファイル>

(1)原発事故の自治体賠償、東電支払い まだ1割(福島民報 2015.5.6

(2)原発事故 賠償手引6社未整備(毎日 2015.5.11

(3)原発賠償原告1万人規模に(朝日 2015.5.5

(4)原発事故 被害者が連携(毎日 2015.5.9

(5)地域振興策 被災地も負担(朝日 2015.5.4

(6)付録・全国脱原発訴訟一覧

(7)アレバ 仏政府が救済へ(日経 2015.5.5

(8)(パンフ)ストップ汚染水

 

1.原発事故の自治体賠償、東電支払い まだ1割(福島民報 2015.5.6

 https://www.minpo.jp/news/detail/2015050622610

 

(一部抜粋)

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東京電力福島第一原発事故に伴う自治体への賠償で、今年1月末までに県内56市町村が計539億6000万円を請求したのに対し、東電が支払ったのは1割の59億2000万円にとどまる。県がまとめた。請求額の多くを占める税の減収分をめぐっては迅速に処理するための算定基準が固まらず、支払いを始められない。市町村は賠償の未払い分を自主財源などで賄っており、今後の財政運営への影響が懸念される。

 

■一般会計分2・7%

 県は、各市町村が東電に請求した一般会計分と企業会計分、両会計を合わせた合計についてまとめた。1月末現在の請求額と支払い状況は【グラフ】の通り。

 一般会計分は51市町村が計438億3000万円を請求したが、支払いはわずか11億7000万円(2・7%)にとどまる。請求額の大半を人口減に伴う住民税や固定資産税などの税の減収分、原発事故対応の職員増に伴う人件費などが占めるが、支払いは実現していない。東電は学校給食などの放射性物質検査費、避難区域からの移転費など一部には応じている。

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(田中一郎コメント)

 全くふざけた話だ。東京電力はさっさと払え!! 東京電力支配株主の日本政府は早く東京電力幹部に指示して、被害者に対して万全の賠償・補償を支払わせよ!! が、しかし、自治体の方の対応も軟弱で怪しげなところがある。まずもって賠償請求の金額が少なすぎる。原発事故被害の金額は、機会費用まで入れればもっと巨額のはず。それを少なく見積もって請求しているというのは、この損害賠償請求が一種の「アリバイ行為」に近く、東京電力や国と「ナアナア」でやろうとしていることの証左ではないか。また、加害者・東京電力が払わないのなら事故責任者・国に対して請求すればいい。両者は被害者に対する賠償・補償については連帯責任である。そして、実際に支払われるまでの間、2011年3月11日に遡り、電力料金の納付遅延の場合の遅延損害金利率(10%)と同じ利率の遅延損害金を併せて請求すればよい。いよいよ支払わないのなら裁判を提訴せよ。

 

2.原発事故 賠償手引6社未整備(毎日 2015.5.11

 http://mainichi.jp/select/news/20150511k0000m040112000c.html

 

(関連)クローズアップ2015:原発事故賠償、マニュアル未整備 「免責制度」見極め 国の見直し、期待する事業者

 http://mainichi.jp/shimen/news/20150511ddm003040100000c.html

 

(一部抜粋)

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原発事故が起きた際の損害賠償手続きの体制や手順を定めたマニュアルについて、文部科学省が5年以上前に原子力事業者に作成を促したにもかかわらず、12社中6社がいまだに作成していないことが毎日新聞の取材で分かった。作成済みであっても、「福島第1原発事故を踏まえて作成や改定をした」と答えたのは6社中1社のみで、福島の事故後の国による賠償制度の見直し作業が進まない中、作成や改定が滞っている。専門家は再稼働の条件としてマニュアル整備が必要だと指摘する。

 

原子力事業者の半数が、原発事故の発生時に被災者への賠償をスムーズに進めるための業務マニュアルを作成していない背景には、東京電力福島第1原発事故を受けた国の賠償制度の見直し作業で賠償責任が限定されることを期待する事業者が、作業の行方を見守っている状況がある。しかし、原発事故を経てもなおマニュアルを作成・改定しないまま原発を再稼働させようとする事業者の姿勢を、専門家は「事故が起こらない前提に立っている」と批判している。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

(田中一郎コメント)

 地域独占と総括原価方式に胡坐をかき、政治家・官僚や御用学者たちをアゴで使い、そのための資金を世界中で最も高い電力料金を一般消費者に対して押し付けることで調達してきた大手電力会社たちは、もともと会社体質がグータラで、一般ユーザーのことなど二の次にしか考えていないから、顧客サービスとしての電力供給について、きちんとした仕事はできるはずもない。その電力会社たちは、福島第1原発事故後においても、電力の安定供給のために何の努力もしないまま、これまで通り原発・原子力にしがみつく一方で、その危険な原発が大事故を引き起こした時の賠償・補償責任は、もっとドラスティックに軽くしてくれと政府に強く要請をし始めた。記事にもあるように、何らかの政治的な力を使って、この原発事故賠償制度を歪んだ方向に改悪して、自分たちの都合のいいように変えようとしているのは明らかだ。

 

 専門家が指摘するように、再稼働の条件としてマニュアル整備が必要であるだけでなく、原発過酷事故の際に備えて、電力会社が政府に頼ることなく賠償・補償を自力で遂行できるよう、金額無制限の原発事故賠償の「民間損害保険」を付保することを再稼働の条件にすべきである。そうすることで、他のエネルギーとの選択について、条件がイコールフィッティオングすることになる。一般有権者・国民に向けては、四六時中「自己責任」を言い続けている国が、この最も肝心な原発事業の「自己責任」原則については、知らんぷりとはどういうことか。

 

3.原発賠償原告1万人規模に(朝日 2015.5.5

 http://www.asahi.com/articles/ASH4Y538XH4YULZU005.html

 

(関連)<解説>被災者の不満あらわ 原発賠償訴訟、原告1万人規模 福島第一

 http://www.asahi.com/articles/DA3S11739202.html

 

4.原発事故 被害者が連携(毎日 2015.5.9

 http://mainichi.jp/shimen/news/20150509ddm041040106000c.html

 http://mainichi.jp/select/news/20150509k0000m040060000c.html

 

(一部抜粋)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

◇謝罪・完全賠償・被ばく低減要求、責任追及

 

 東京電力福島第1原発事故で国や東電に被害救済を求め提訴した原告団や、国の原子力損害賠償紛争解決センターに裁判外紛争解決手続き(原発ADR)を申し立てた住民らが、連携を図るための全国組織「原発事故被害者団体連絡会」を設立することを決めた。連絡会に参加する原告団らが8日、福島県庁で記者会見し明らかにした。【土江洋範】

 

 原発事故の被害者は各地に避難しており、全国的な組織の設立は初めて。原告団の弁護士によると、国や東電を相手取った集団訴訟は全国20地裁・支部で原告数が約1万人に上るといい、連絡会への参加を広く呼びかける。

 

 会見した原告団らによると、連絡会への参加を既に決めているのは福島県内のほか、避難先で提訴した宮城、神奈川、京都、岡山の原告団などオブザーバー参加を含め11団体・約2万2700人。原発ADRを申し立てた福島県飯舘村の住民団体や、東電幹部を業務上過失致死傷容疑で告訴・告発した団体も入っている。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

(関連)原発事故の被災者が初の全国組織発足へ OurPlanet-TV:特定非営利活動法人 アワープラネット・ティービー

 http://www.ourplanet-tv.org/?q=node/1911

 

(関連)原発事故の被災者ら、初の全国組織 約1万9千人加入へ:朝日新聞デジタル

 http://www.asahi.com/articles/ASH584CQ4H58UGTB003.html

 

(田中一郎コメント)

 みんなで被害者を応援・支援しよう。加害者や国の責任を棚上げにする「食べて応援・買って支援」ではなく、被害を受けた一人一人の被害者の救済を国の政策として実現するのです。これから被害者の皆さんに手をつなぎ、肩を組んでいただいて、できれば福島県だけでなく、福島第1原発事故で被害にあった、放射能で汚染されてしまったすべての地域に住むすべての被害者が一致団結して、東京電力と国の福島第1原発事故の責任を、様々なレベルで追及していきましょう。目標は1000万人損害賠償訴訟です。

 

 原子力ムラの暴力・原子力ムラ代理店政府の人権蹂躙に、みんなで立ち向かいましょう。福島第1原発事故被害者の完全救済は、同時代に生きる人間としての使命であり義務でもあります。そして何よりも、被害者が完全に救済されてこそ、本当の脱原発が実現するのであり、二度と再び原発・核燃料施設の大事故を引き起こさない仕組みが創れるのです。みんなで原発事故被害の「泣き寝入り」をしなくてもいい社会情勢を創っていきましょう。

 

 最後に、何度も書いて恐縮ながら、原発事故の損害賠償・補償の「5原則+α」を再び下記に書いておきます。

 

●「賠償・補償・再建支援:5原則+α(同時代に生きる人間としての使命・倫理)

 賠償・補償・再建支援が全く不十分で出鱈目=21世紀最大の人権侵害事件

 賠償・補償・再建支援がきちんとならないと被害者はいつまでも救われない

(1)全ての被害者の全ての被害・損害が何の留保条件を付けられることなく全額賠償または原状復帰されること(逸失利益含む)

(2)全ての被害者の生活及び経営が再建されること(費用,段取り,その他の負担のすべてを加害者が負うこと)

(3)上記②の再建が確認できるまでの間,全ての被害者の生活及び経営を補償すること

(4)2011311日以降,上記の賠償・補償・再建費用が実払いされるまでの間,電気料金遅延にかかる「遅延損害金」と同利率(10%)の「遅延損害金」が被害者に支払われること

(5)悪質な交通事故被害の場合以上の慰謝料(迷惑料)が被害者に支払われること

(6)(+α)被害者の被害は「お金」に変えられないものも多い。その部分を加害者・東京電力(及び原発メーカー)や事故責任者・国が万全にフォローすること

 

5.地域振興策 被災地も負担(朝日 2015.5.4

 http://www.asahi.com/articles/DA3S11738067.html

 

(田中一郎コメント)

 少し前にも福島民報の記事を使って申し上げたが、この記事にあるような事業の、どこが、どれが、「震災復興」「原発震災復興」なのか? 書かれているのは、「震災復興に名を借りた、火事場泥棒的な、税金無駄遣いの「利権・土建」事業か、放射線被曝の危険性を組織的に歪曲してもみ消してしまうための「放射線安全神話」定着化事業ばかりではないか。一部の地方のボスが、こうした事業で潤うかもしれないが、大多数の被災者・被害者は、粗末な仮設住宅に入れられたまま「棄民」されていくことになるのだろう。被害を受けた人間の復興を棚上げにして、どうして被災地・被害者の復興ができるのか。かような事業には、私たちの税金をビタ一文使ってほしくない。

 

6.付録・全国脱原発訴訟一覧

 http://www.datsugenpatsu.org/bengodan/list/

草々

2015年5月 9日 (土)

原子炉過酷事態時に減圧装置=SR弁(主蒸気逃がし安全弁)は,何故,開かなかったのか(NHK『福島第一原発事故7つの謎』より) :5号機も危機一髪だった!! わからないこと山積みです

前略,田中一郎です。

(別添PDFファイルは添付できませんでした)

 

(最初に4つばかり)

1.南相馬・避難勧奨地域の会

 https://sites.google.com/site/minamiswg/

 

(この件については,本日(5/9土),文京区男女平等センターにおいて午後6時半より集会がありました。会場が満席になり立ち見の人も出るほどの多くの参加者が集まり,福島からの方々をはじめ,遠く広島からも,この集会の応援に駆け付けて下さいました。この集会の報告は来週にさせていただきます:田中一郎)

 http://www.foejapan.org/energy/action/150416.html

 

2.原発被害者の救済を求める全国集会 in 東京

 http://www.foejapan.org/energy/evt/150527.html

 

2015527日(水)10:2011:50(開場:10:10

日比谷コンベンションホール(旧都立日比谷図書館B1F、日比谷公園内)

<デモ・請願行動> 日比谷公園発 12:05~  集合場所:西幸門

 

3.(別添PDFファイル)仏アレバ 最大6000人削減(東京 2015.5.8

 http://www.asyura2.com/15/genpatu42/msg/741.html

 

(アレバは欧州原子力ムラの最大組織です。福島第1原発事故直後は,当時の民主党政権が,このアレバとともに日本にやってきた「火事場泥棒」の仏大統領サルコジにまんまとだまされ,数百億円もの血税をつかって,役に立たない汚染水浄化装置を購入しています。もちろん,わずか数日使っただけで,それ以降は今日に至るまで停止したまま放置されています。民主党に買取らせればいいのではないでしょうか? ともあれ,アレバの経営不振=欧州原発・原子力の「終わりの始まり」でしょう:田中一郎)

 

4.福島近くで大量座礁中死亡したイルカに発見された白肺・血液供給の断絶・放射能被曝に関連(ENENews) ナルト大橋

 http://www.asyura2.com/15/genpatu42/msg/733.html

 

(一部抜粋)

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「日本の科学者:「私は以前にこれを見たことがない」 -福島近くで大量座礁中死亡したイルカに発見された白肺 - 組織の死につながる血液供給の断絶 -疾患は放射能被曝に関連付けられている」

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(先般お送りした内容とは全然違います。いってみれば「セシウム心筋症」のイルカ版ということのようです。真偽のほどはわかりません:田中一郎)

 

(ここから本文です)

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以前より,講談社現代新書『福島第一原発事故7つの謎』(NHKスペシャル「メルトダウン」取材班)については,その内容に注目し,福島第1原発事故の実態や原因に関して様々な問題があることを,みなさまにお伝えしておりますが,今日は,その中でも注目のSR弁(主蒸気逃がし安全弁)の機能不全についてお伝えします。今回の件についてのNHK著書の説明は,それ自体としては,私が今まで他の方々より聞いていたことと整合的ですので,ほぼその通りだろうと思われますが,しかし,その説明を導いていくこの「章」の記述の中には,私から見て納得し難い経緯・経過,そして結果,あるいは関連事項などが書かれています。以下では,それらを簡単に列記しながら,福島第1原発事故において2号機で起きていたことの,あるいは1,3号機で起きていたことの実態に迫るとともに,残された問題点を明らかにしておきたいと思います。

 

● 講談社現代新書『福島第一原発事故7つの謎』(NHKスペシャル「メルトダウン」取材班)

http://www.e-hon.ne.jp/bec/SA/Detail?refShinCode=0100000000000033203896&Action_id=121&Sza_id=C0

(このメールでは,この本のことを「NHK著書」,あるいは「本書」と表現しております:田中一郎)

 

最初に,本書から少し抜粋して,説明を引用してみましょう。(別添PDFファイル(1))

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

(中略)それにしても、なぜ2号機は、これほどまでの危機に陥ったのか。4章でも述べたとおり、2号機は、事故発生から4日目となる314日までRCICによる冷却が継続していた。運転中だった3つの原子炉のなかで最も長い時間冷却ができていたのである。電源がない状況では8時間しか稼働が保証されていないRCICが、3日間も持ちこたえたこと自体「奇跡」といってよい。しかし2号機は、1号機や3号機にくらべて時間的な余裕があったにもかかわらず、短時間のうちに、吉田が「死を覚悟する」までに状況が悪化していった。

 

 2号機がメルトダウンに至った理由のひとつが4章で取り上げたベント弁の不具合である。そして、2号機を危機に陥れた、もうひとつの重大な要因が、「冷却の要」といわれる緊急時の減圧装置「SR弁」の不具合であった。この異なる2つの弁のトラブルが、吉田をはじめとする東電技術者を絶体絶命の窮地に追い込んでいく。なぜ2号機のSR弁は開かなかったのか。6章では、この謎を解明していく。

 

 SR弁(Safety Relief valve)は、主蒸気逃がし安全弁ともいわれる。原子炉の圧力が異常上昇した場合、自動または中央制御室で手動により弁を開き、原子炉の水蒸気をサプレッションチェンバー(圧力抑制室)に逃がす仕組みになっている。原子炉の冷却機能が失われると、急速に炉内の圧力が上昇し、短時間で危険な状態になるので、SR弁はそれを防ぐために、原子炉の圧力を格納容器に逃がす重要な役割を担う。SR弁は、今回の事故時には原子炉を減圧できる唯一の装置であり、これが正常に機能することが原子炉を冷却する大前提であった。ところが、2号機では、この唯一の「減圧手段」であるSR弁が作動しないという、異常事態が起きたのである。取材班はSR弁のオペレーションが難航を極めた理由を探るべく、SR弁の開放に携わった東京電力の技術者たちから聞き取り調査を進めた。

 

(中略)314日午後125分、RCICが停止して以降、2号機の原子炉圧力は急激に上昇し、その後70気圧を超える状況が続いていた。消防車のポンプは9気圧程度しかないから、これではとても原子炉には水は入らない。原子炉の圧力を下げて消防注水を行わなければ、メルトダウンは時間の問題だ。

 

(中略)原子炉の圧力を一気に下げるにはSR弁の開放しかない。困難なオペレーションではあったが、ぶっつけ本番というわけではなかった。先にメルトダウンした3号機では、SR弁を開けるためのバッテリー不足に悩まされたが、最終的にSR弁の開放に成功している。2号機にはSR弁が8つ取り付けられており、どれか一つでも開けることができれば、消防車で注水できる9気圧まで炉圧を下げることができる。バッテリーの不足によって減圧操作に6時間半かかった3号機のようにならないように、準備は入念に行われた。2号機のRCICが停止する前には、SR弁を動かすために必要な12ボルトのバッテリーを10個確保し、中央制御室でそれを直列につなぎSR弁開放の準備をしていた。(以下,省略)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

(田中一郎コメント)

 ここまでで,2つ,3つ,私の疑問を書きとめておきたい。

 

(1)上記は2号機の話だが,1,3号機にももちろんSR弁はある。まず,その1,3号機のSR弁はどうだったのか。3号機については,バッテリーの確保や準備に手間取ったが,最終的にはSR弁の開放に成功したようだ。であれば,まず,困難を極めた2号機と3号機のどこがどう違ったかが丁寧に説明されなければいけない。しかし,この新書にその記述はない。

 

 そしてきわめつけは1号機だが,以前にも申し上げたように,1号機のSR弁は作動した形跡が全くない。作動すれば「ゴー」という大きな音がするのだが(2,3号機では大きな音がしていたことを多くの作業員が聞いたと証言しているし,同じ型の原発で被災した女川や東海第二などでも,大きな音がしていたという),そんな音を聞いた作業員はいないという。しかし,このことを指摘した国会事故調以外の,このNHK著書も,そして政府事故調も,1号機のSR弁は動いていたかのように説明をしている。全くおかしな話である。そして,1号機については,SR弁が閉まったままで圧力容器が密閉状態であるにもかかわらず,圧力容器内の圧力が2,3号機のようには上昇していないらしい。これはとりもなおさず,圧力容器につながる配管(非常用復水器(IC)系配管や再循環器p系配管)が破損し,そこから圧力容器内の放射能を含む水蒸気が漏れていた=圧力が漏れていたということではないか? だからこそ,非常用復水器(IC)が作業員によって人為的に止められてしまったのではないのか? あるいは「過渡現象記録」に残された記録に異常な数値が残っているのではないか? この最重要の問題の実態解明に,何故,国会事故調以外の調査組織は取組もうとしないのか?

 

(2)314日午後125分、RCICが停止するまでに,何故,高圧注水系(HPCI)の注水ができるよう対策をしなかったのか。3号機では,原子炉隔離時冷却系(RCIC)が止まってからは高圧注水系(HPCI)に切り替えがなされている。何故,2号機ではこれができなかったのか? 単純に高圧注水系(HPCI)の初期稼働開始の際に必要となる電源がないという,ただそれだけのことなのか。全電源喪失(SBO)となっても3号機は高圧注水系(HPCI)を稼働できていたではないか?

 

(3)関連して,2号機では,何故,原子炉隔離時冷却系(RCIC)がかくも長く,数日間にわたり稼働し続けたのか? このNHK著書にも書かれている通り,原子炉隔離時冷却系(RCIC)の想定される稼働時間は8時間程度である。それが何故,数日間も継続稼働できたのか。更に,3号機では,原子炉隔離時冷却系(RCIC)は,1日程度しか継続できていない。これを2号機のように,何故,長期間持続させたうえで,高圧注水系(HPCI)に継承していくことをしなかったのか?

 

 

更に引用を続けます。驚愕の事実=福島第1原発5号機も実は間一髪だった。(別添PDFファイル(2))

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

(中略)津波が福島第一原発を襲ったとき、原子炉の運転が休止していた56号機は事故とは無縁だったと思われるかもしれない。しかし、取材を積み重ねていくうちに、56号機でも、運転中だった1号機から3号機と同様にメルトダウンの危機と向き合い、過酷な事故収束作業が行われていたことがわかってきた。特に5号機では定期検査の最終段階で、原子炉の圧力の耐性を確認する検査が行われていた。つまり原子炉の中には熱を持った核燃料が548本もある状態で、津波に襲われていたのだ。

 

 津波後、暗闇となった中央制御室。運転員たちは311日の深夜から現場確認を行う。80気圧という高い圧力の状態となっていた原子炉に水を注ぐための高圧系の冷却装置を活かせるか、探るためだ。しかし、2号機と3号機の原子炉を一定期間冷やすことができたRCICやHPCIは悪いことに定期検査中だったため使えない。さらに5号機では原子炉や格納容器から熱を逃がすためのRHRと呼ばれる残留熱除去系も、津波によって電源盤が浸水し交流電源が全て失われたため使用できないことがわかった。

 

 残る手段は、生き残った低圧系によって原子炉に水を注ぐこと。そのためには、9気圧以下に原子炉の圧力を下げる「減圧」操作が必要だった。それにはSR弁を開くしかない。5号機のオペレーションにあたった運転員は、次のように証言している。「原子炉の圧力や熱はどんどん高まっていきました。通常であれば、減圧装置であるSR弁を開けばいい。しかし、SR弁は定期検査の圧力試験のため、弁を開けるための窒素を供給するラインにあるバルブが「ロック」されていた状況でした。つまり津波当時、原子炉の圧力を逃がす手段は全くなかったのです。」

 

(中略)専門的な話をかみくだいて説明しよう。核燃料の熱によって原子炉内が高温高圧になったときに使うのが「逃がし弁」機能である。この機能を使う場合、開閉に関しては人間の操作が可能だ。すなわち、注水ができるところまで圧力を下げ、ある程度水位が回復すれば、また人間の判断でスイッチを操作し、再び閉じることができる。SR弁の「逃がし弁」機能を使うことさえできれば注水できるので、原子炉が破壊されることはない。つまり、原子炉に水を注ぐために圧力を自在にコントロールする機能、これがSR弁の持つ「逃がし弁」機能だ。

 

 しかし、前述したように、SR弁には、中央制御室から人の意思で動かせる「逃がし弁」機能と異なるもう一つの顔がある。一定の圧力になると、自律的に働く「安全弁」機能である。5号機のSR弁は、原子炉が75気圧程度になると、原子炉につながる配管から流れ出る高温高圧の水蒸気がバネを自然に押し上げてSR弁を開くように設計されていた。弁が開けば、高温高圧の水蒸気はサプレッションチェンバーに流れるから、原子炉の圧力は下がり、高圧破損は免れる。一方で、原子炉の気圧が一定以下になれば、SR弁が閉じるようになっている。5号機の場合、炉圧が70気圧以下になれば、バネを押し上げることができなくなり、自然にSR弁は閉じる。原子炉内部の水蒸気の圧力を利用して自律的に原子炉の安全性を保つ。これがSR弁の「安全弁」機能である。

 

 付け加えて、重要な説明をしておかなくてはならない。「逃がし弁」機能にせよ「安全弁」機能にせよ、原子炉の圧力、すなわち蒸気を原子炉の外に出すということは、水を原子炉の外に出すことを意味する。いずれの機能にせよSR弁が開けば、水位は下がっていくのだ。水を注がない限り。人為の力と白然の力を組み合わせた見事な仕組みだが、「安全弁」機能は、物理法則まかせで、人の力では制御できない。これが厄介な事態を招いた。(以下,省略)

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(田中一郎コメント)

 5号機の危機は,この後,現場作業員の方々が放射線量の高い格納容器内に入り(格納容器内部はメルトダウンしていなくても,もともと線量が高い),SR弁を開けるための窒素供給ラインにある「ロック」されていたバルブを壊し,アキュムレーターと呼ばれる装置からチッソガスを供給して,かつ起動用電気は生き残っていた6号機の非常用ディーゼル発電機の電源を使ってSR弁の開放に成功している。これで低圧系による炉心注水が可能となり,5号機は冷温停止に持ち込むことができた。詳細は省略するが(本書参照),まさに間一髪だったようである。

 

 私が申し上げたいのは,5号機のSR弁開放の苦労話ではない。申し上げたいのは,この5号機を東日本大震災が襲ったまさにその時,5号機では定期検査がなされており,その間にSR弁の圧力試験をしていて,原子炉の中には熱を持った核燃料が548本もある状態だったという点である。この試験中に地震や津波等によって被害を受けて全電源が停止すると(SBO),「RCICやHPCIは悪いことに定期検査中だったため使えない」「原子炉や格納容器から熱を逃がすためのRHRと呼ばれる残留熱除去系も、津波によって電源盤が浸水し交流電源が全て失われたため使用できない」「低圧系によって原子炉に水を注ぐためにSR弁を開かなければいけないが,SR弁は定期検査の圧力試験のため、弁を開けるための窒素を供給するラインにあるバルブが「ロック」されていた状況でした。つまり津波当時、原子炉の圧力を逃がす手段は全くなかったのです」というような状態で,お手上げ状態であったということだ。

 

 つまり,こんなことで,こんな危機対策無防備の状態下で,定期点検中に原子炉内に危険な核燃料を入れたままSR弁の圧力試験などをしていいのかということ,言い換えれば,圧力試験をするのなら,その試験中に地震や津波が襲ってきても,十分に安全が確保できるよう,緊急時炉心冷却装置(ECSC)が動くようにしておくなり,SR弁も機能するようにしておくなり,それなりの安全対策をしておくべきではないのか,という点である。このことについては,NHK著書は何も言及していないが,日本全国にある他の沸騰水型原子炉でも,この福島第1原発5号機と同じような定期検査の仕方をしているであろうから,この5号機の危機一髪は,今のやり方を続ける限り,再び起きることだと言えるだろう。すなわち,この5号機の教訓を活かして,定期検査の仕方も抜本的に改める必要があるということを示していると言える。

 

 

更に引用を続けます。2号機危機の真相=今回のメールの中心部分です。(別添PDFファイル(3))

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(中略)SR弁は開けることができるはずだ。誰もがそう考えていた。(中略)しかし、(全部で8つある)どのSR弁も開かない。(中略)「なんで開かないんだ!?」

 

 福良(作業員リーダーの方のお名前:田中一郎)が恐れていたのは2号機の原子炉に全く水が入らずに、格納容器の圧力が高まり、ベントもできない事態だった。2号機はRCIC停止後、建屋内部でずっとベントの準備が続けられていた。しかし、まだベントは実施できていなかった。

 

(中略)福良、そして吉田(当時の福島第1原発所長:田中一郎)が恐れたのは、2号機のSR弁が開かず、全く水が注げないままメルトダウン、そして格納容器破壊のシナリオになってしまった場合、1号機と3号機に水が注げなくなってしまい、さらに使用済燃料プールへの対策が滞ってしまうことだった。まさに福島第一原発の最悪のシナリオだ。そしてそこから放出された放射性物質の影響で南におよそ10キロの所にある福島第二原発もオペレーション不能になれば、それこそ東日本全体が放射能に覆われてしまう。そうした事態を想像した吉田以下、免震棟の幹部たちは、それこそ祈るような気持ちでSR弁が開くのを待った。

 

(中略)なぜSR弁は開かなかったのか。取材班は、福島第一原発2号機のSR弁の開発に深く関わった原発メーカーOBらへの取材を重ねた結果、格納容器の圧力が上昇した場合に発生する「背圧」がSR弁の作動に影響を与えた可能性があるという情報を入手した。背圧とは、格納容器内の圧力が上昇した場合に発生する、SR弁を上から押さえつける力だ。この背圧に打ち勝つためには、平常時のSR弁の開閉に必要な窒素の圧力では足りない可能性がある。

 

 前述したようにSR弁を開けるための窒素は、格納容器内にあるアキュムレーターと呼ばれる窒素タンクから供給される。(中略)しかし、全電源喪失になると、放射性物質の漏えいを防ぐために,このラインについている弁が自動的に閉まり、外部からアキュムレーターに窒素を供給できるラインは使えなくなる。ただ、アキュムレーター自体に一定量の窒素が蓄えられているので、格納容器の外部から窒素の供給が断たれても、何回かはSR弁を開けるだけの窒素を供給できる。緊急事態に備えた用意周到なバックアップともいえるシステムだが、窒素の内圧が低くなるという欠点がある。それでも平常時であれば、SR弁を開くのに十分な圧力が確保できるはずだった。

 

 しかし、2号機では通常のオペレーションではSR弁は開かなかった。その原因の一つとして疑われたのが、格納容器の圧力上昇によって生じる「背圧」だった。では、格納容器がどれほどの圧力になれば、背圧でSR弁が開かなくなるのか。原発で使われている弁の構造に詳しい東京海洋大学教授の刑部真弘は言う。「2号機のSR弁は、アキュムレーターの内圧が格納容器の圧力に対して4気圧以上、上回っていなければSR弁は開かなくなる設計になっています。しかもメルトダウンが進めば、原子炉から出る膨大な熱によって、その外側にある格納容器の圧力はさらに上昇し、SR弁にかかる背圧も高まる。原子炉が危機的な状況になればなるほど格納容器の圧力は高まり、安全装置であるSR弁が開きにくくなります。

 

 原子炉を減圧できる「唯一」の手段であるSR弁が、非常時には機能しなくなる。恐るべき実態であった。

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(田中一郎コメント)

 ここが今回の問題の中心部分である。SR弁が原子炉の過酷事態時に「背景圧力(背圧)」のために正常に機能しないことが明らかとなった。これは明らかな原子炉の重要装置の設計欠陥である。これと同じようなことが,既に申し上げている通り,原子炉内の水位を計測する水圧計でも起きていて,過酷事故時には圧力容器内の正しい水位がわからなくなることが明らかとなっている。しかし,この2つの欠陥設計・欠陥装置は,今もなお原子力規制委員会・規制庁に問題視されることなく,これから再稼働されようとしている加圧水型の原発でも,そのまま使用されることになっているのだから驚きである。冗談ではない,という話ではないか。

 

 また,上記文章中にある「SR弁を開けるための窒素は、格納容器内にあるアキュムレーターと呼ばれる窒素タンクから供給される。(中略)しかし、全電源喪失になると、放射性物質の漏えいを防ぐために,このラインについている弁が自動的に閉まり、外部からアキュムレーターに窒素を供給できるラインは使えなくなる。」という,この仕組み自体も,全電源喪失(SBO)という深刻な時に,炉心の冷却や減圧ができなくなってしまう事態に陥る大きな要因の一つであり,欠陥設計そのものと言えるのではないか。フェール・セーフだとか,フール・プルーフなどと言われてきた,安全を自動的に担保する仕組みが,実は逆に事態をより深刻化させる方向に働く可能性を持っているということであるわけで,福島第1原発事故でこうした経験を経たからこそ,今一度,原発に係るすべてのフェール・セーフやフール・プルーフの自動調整機能を一から見直して見る必要がありそうである。

 

 更に,上記の引用の中にある「原発銀座」での原発過酷事故の「ドミノ倒し」の話=つまり,複数の原発が近隣に立ち並ぶ福島や柏崎刈羽や福井県若狭湾などの原発乱立地帯では,1つの原発の格納容器が破壊されるような過酷事故状態となった場合には周辺環境に大量の放射能が放出され,それ以外の多数の原発は,たとえ過酷事態に至っていなくても,その放射能のために人間が近づくことができなくなり,やがて,周辺の原発全てがコントロール不能となって全滅する事態に陥ってしまうということ,について,信じがたいことだけれど,何の問題にもなっていない。特に高浜3,4号機の再稼働認可手続きの中では,若狭湾に14基もの原発・核燃料施設が立ち並んでいるのだから,最重要問題の1つとされなければならないのだが,原子力規制委員会・規制庁は,全く問題にもせず,再稼働に向けて猪突猛進しているのである。愚か極まると言わざるを得ない。福島第1原発事故の教訓が顧みられていない典型的な事例である。(もちろん原子力規制委員会・規制庁は見直しなどしておりませんし,しようともしておりません)

 

 

最後の部分です。そしてどうなったのか,謎は解明されていない。(別添PDFファイル(4))

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(中略)通常では1気圧程度しかない格納容器圧力は、14日午後11時1分、6気圧を超えていた。逃がし弁機能用のアキュムレーター(内圧が4.81~7.55気圧)では、この格納容器からの「背圧」に打ち勝つことはできない。復旧班は、逃がし弁機能用のアキュムレーターを使ってSR弁を開こうとするが、8つの弁はどれも開かない。14日から15日に日付が変わり、追い詰められた復旧班は、内圧の高い(8.34~10.3気圧)ADS機能用のアキュムレーターを使ったという。「免震棟からはADSを優先して使えという指示もなかった。ADS機能用のアキュムレーターを使ったのは、いわば「ダメもと」でした」

 

 2号機の原子炉圧力は、14日午後11時25分には31気圧まで上がったが、このオペレーションが功を奏したのか、日付が変わった15日午前1時すぎからは、再び6気圧程度を推移するようになっていた。最後の最後で、現場は技術者の勘ともいえる手段で、SR弁を開けることに成功したのだ。

 

 9気圧前後の消防車のポンプ圧で、十分水が入るはずの圧力だった。復旧班は、2台の消防車の燃料を数時間おきに補給しながら、2号機への注水を続けていた。しかし、その一方でベント作業は試行錯誤したものの、成功する兆しは見えなかった。午前6時10分。福島第一原発の12号機の中央制御室は、ドーンという異音とともに下から突き上げられるような異様な衝撃に襲われた。

 

(中略)サプレッションチェンバーの圧力計がゼロを示していた。発電班から2号機の圧力計がゼロを示したという報告を受けた吉田は、2号機の格納容器で何らかの爆発が起き、圧力計がゼロを示したものと判断した。格納容器が爆発して破損したとすれば、大量の放射性物質の漏えいは避けられない。東京電力の作業員の全面退避を迫られる最悪のシナリオが現実になったかのように思われた。しかし、2号機の格納容器の破損は部分的なものとなり、放射性物質の漏えいは限定的なものにとどまった。

 

 SR弁の開放に成功して、消防注水が断続的ではあっても行われたことが功を奏し、最後の一線で踏みとどまったかのようにも思えるが、現時点では、SR弁の開放が事態の進展にどう影響したかは謎のままだ。

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(田中一郎コメント)

 まず私が驚いたのは,2号機のSR弁が現場作業員の努力で開けられ,15日の午前1時には圧力容器の圧力が6気圧まで低下していたということだ。これは初耳であり,また,これまでの2号機に関する報道では伝えられていない話である。ほんとうなのか? ここまで圧力容器の圧力が下がれば,低圧系の注水でも,圧力容器内に水を入れることができる。しかし,私はSR弁が開放されたことよりも,2号機炉心がこの頃には溶融していて,その熱で圧力容器を突き破って格納容器の底に落下したのではないかとも思う。もしそうなら,圧力容器に穴が開いたのだから,作業員の努力によるSR弁の開放がなくても圧力容器内圧力は大きく低下するだろうから,低圧系注水も可能になるだろう。

 

 それから,その後,2号機については最後まで格納容器ベントができず,3月15日の朝6時過ぎ,4号機建屋が水素爆発して直後に,2号機でもサプレッションチェンバー付近で大きな音がして,サプレッションチェンバー圧力がゼロになったという。サプレッションチェンバーか,あるいは格納容器に穴が開いた,ということを示唆しているのだろうけれど,これが本当かどうかは分からない。何故なら,未だに2号機のサプレッションチェンバーや格納容器のどこに穴があいているのかさえ,わからないままであるからだ。私はそんなバカな話はあり得ないと思っている。何故,2号機のサプレッションチェンバーや格納容器の破損状況を外側から調査しないのか?

 

 結局,2号機の危機は,炉心メルトダウンや圧力容器,格納容器の破損状況を含めて,全く謎のベールに包まれたままであり,また,原子力規制委員会・規制庁や政府,東京電力も,その謎のベールをかぶせたままにしておこうとしているように見える。2号機が,格納容器破壊にまで至ったと言われているのに,福島第1原発全体が深刻な状態に至っていないことも含め,何故,福島第1原発が,あの程度の事故の進展で留まったのかは分からないままである。わからないままにしておけば,今後の原発の安全管理には役に立てることはできないし,再稼働すれば,同じ事態が起きたり,福島第1原発事故以上に深刻な事態に陥ることは十分にあり得るだろう。このまま,2号機の調査を放棄して,無為無策のまま,都合の悪いものは見ないようにしながら,原発再稼働に走ることは許されない。

 

 それから最後に,もう一つだけ,私の疑問点を書いておく。それは1,2,3号機に共通しているが,いずれも炉心がメルトダウンしてしまっているが,それぞれ3月12日,14日,15日の爆発以降は,どういう事故対応がなされ,それはどういう効果なり,欠陥なり,危険性があったのだろうか? 1,3号機は,爆発があったとは言っても,それは格納容器ではなく原子炉建屋が破壊されたにすぎない。圧力容器はいずれも穴があいて役に立たなくなり,炉心はメルトダウンして格納容器下部に落下した状態だ。だから,格納容器が健在なら,今度は格納容器内の圧力が上がっていくから,ベントを続けないといけないことになるが,これはどうしていたのだろうか? 核燃料がその熱で格納容器も突き抜けて,穴をあけてしまったのであれば,ベントはもういらない,ということなのか。この辺のところ,つまり,格納容器ベントと溶融炉心による格納容器破壊の関係が不明のままである。

 

 また,2号機の場合は,爆発によって破壊されたとされているのはサプレッションチェンバーか格納容器だが,そもそも爆発破損したのかどうかも怪しいところがあるし,格納容器が破損したのなら,そもそももう,ベントは必要なくなっているはずである。その代わりに,大量の放射能が,その穴のあいた部分から四六時中出っぱなし,ということになるのだろうけれど,それについての説明も皆無に近い。

 

 つまり,3月15日以降,爆発後の「それからの福島第1原発1,2,3号機」が,どのように推移していき,東京電力や政府はどういう対策をし続けたのかが明らかにされていない。これでは,福島第1原発事故の教訓など,活かせるはずもないではないか。

 

 NHK著書は,最後の資料に「提言」と称して「複数の専門家の連携による事故分析を」(注)を書いている(別添PDFファイル)。専門家が英知を集めて事故分析を真摯に行えというのはその通りである。しかし,今現在の原子力規制委員会・規制庁や政府の態度では,そのようなことは実現するのだろうか。特に自民党政権になってからは,原子力規制委員会や政府の審議会などは,福島第1原発事故前よりもひどくなって,原発・原子力に厳しい見方をしている科学者・技術者をすべてシャットアウトして,言ってみれば,福島第1原発事故を引き起こした原子力ムラの人間だけで,福島第1原発事故を分析しているのである。しかも,シロウトの私が見ても,それはおかしい,と思うような稚拙で,不合理で,まるで先験的にあらかじめ決めていることを強引に正当化するためだけのような調査や検討を行い,肝心なことを棚上げにしたまま,福島第1原発事故を「終わったもの」にしてしまおうとしているかのようである。NHKが,この提言を本気で主張するのであれば,それを妨げている組織や人間達に対して,厳しい告発の報道をしなければいけないのではないか。さもなくば,この提言は,自分達の立場を飾る,一種の「欺瞞の花」あるいは「エクスキューズ・アクセサリー」にすぎなくなってしまうだろう。

 

(注)この提言には,次のようなくだりがある。

「事故の当初、福島第一原発にあったすべてのモ二タリングポストは停電の影響でデータを転送できなくなり、東京電力は原子炉から西側にある正門付近に仮設のモ二タリングポストを設置して放射線量の観測を続けた。」

 

 みなさまは,このことをバカバカしいとは思われませんか? これは明らかに,原発が重大事態になった場合には,その現場である原発敷地内の放射能汚染は分からなくなるように仕組まれている,と見るのが正解ではないかと思われる。地震に襲われたら停電になって全てのモニターが停止して,放射能はわからなくなった,かようなバカバカしい,幼稚極まる話を,はいそうですかと,なんの批判的な追及もなく報道しているNHKを含む今の「マスごみ」どもの報道ぶり(無能ぶり)を見ていると,このままでは,また再び原発・核燃料施設の過酷事故は起きてしまうだろうと,強く思ってしまう次第である。有権者・国民・市民,新聞読者,TV視聴者を馬鹿にするのもいい加減にしろ,ではないだろうか。

 

 (ちなみに,原発・核燃料施設は福島第1原発事故後においても,放射能を含めて,そのモニタリング体制は極めて貧弱で,従来通り,過酷事故などの重大事故が起きた場合には,その原発・核燃料施設がどうなっているのかは,放射能の汚染状況も含めて,外部の人間には絶対にわからないように,バカバカしいまでに不作為,屁理屈,治外法権などによって,徹底して隠されている,ということを申し上げておきたい。事実,未だに福島第1原発の取材さえ,自由にはできない,不合理で不自然極まりない「規制下」「管理下」に置かれたままである。私は,この原発・核燃料施設のモニタリング体制への日本全体の=特に脱原発を担う人々の多くの「無関心」「関心の低さ」について,大きな危惧を抱くものである)

 

 長くなって申し訳ありません。今後も福島第1原発事故の実態解明と事故原因の究明に関する情報と,私の考えをお伝えしていきたいと思っております。

草々

2015年5月 1日 (金)

(報告)福島第1原発1号機 原子炉建屋4階現場調査報告(田中三彦氏講演会:東電株主代表訴訟 公判報告会)

前略,田中一郎です。

 

 昨日、参議院議員会館講堂において、東電株主代表訴訟の事務局主催による田中三彦氏(元日立バブコック原子炉設計技師)の講演会が開催され、今般、20152月に田中三彦氏他の「新潟県原子力発電所の安全管理に関する技術委員会」の委員数名が東京電力職員同伴で、福島第1原発1号機の4階を現場調査した結果の報告がなされました。非常に興味深い講演内容で、会場いっぱいに駆けつけた参加者一同、かたずをのみながら田中三彦氏のお話を聞きました。別添PDFファイル、及び下記URLはその際の資料等です。

 

 福島第1原発事故の実態解明や原因究明を棚上げにしたまま、原子力規制委員会・規制庁と安倍晋三・自民党政権とが平仄を合わせながら、出鱈目で強引な原発再稼働を推し進めようとしておりますが、今回の田中三彦氏の講演にもあるように、福島第1原発事故の深刻化は、単に津波による全電源喪失(SBO)だけが原因でも、問題でもないのです。原発のハードの問題のみならず、それを管理し使う側の人間のソフトの問題も含めて、たくさんのことが未解明のままであり、また当然ながら未解決のままです。田中三彦氏のお話は、現状展開している日本の原発政策の根本矛盾に鋭く突き刺さるお話だったと言えるでしょう。二度とフクシマの悲劇を繰り返さないためには、当たり前のことですが、福島第1原発の事故実態や原因の究明を深堀りし、今後の教訓としていかなくてはならないことは申し上げるまでもありません。

 

 その観点から見て、今の原子力規制委員会・規制庁は、大多数の有権者・国民・市民から期待された原発・核燃料施設の厳格な安全確保という仕事を行わず、原子力ムラという一部の特殊な利害集団の目先の利益のみを優先して動いており、このままでは危険な原発が次々と再稼働されてしまうでしょう。一刻も早くこの組織を解体してメンバーを総入れ替えしなければなりません。また、この原子力規制委員会・規制庁に対して、原子力ムラを代弁しながら原発再稼働への圧力をかけ続けている安倍晋三・自民党政権も、これまた一刻も早く政権から追い払う必要があります。

 

 それから、今回の講師の田中三彦氏には、今回の講演を含め、3.11以降、大変な圧力の中でそれをはね返していただき、国会事故調での大活躍も含め、真相究明へ向けて並々ならぬご尽力と努力をしていただいていることに心より感謝申し上げたいと思います。また、今回の講演会を開催してくださった東電株主代表訴訟のみなさまにも厚くお礼申し上げます。

 

(当日の仔細は、下記のVTR(BY:UPLAN・三輪さん提供)をご覧ください)

 

(参考)新潟県:新潟県原子力発電所の安全管理に関する技術委員会

 http://www.pref.niigata.lg.jp/genshiryoku/gijyututop.html

 

(田中三彦氏もメンバーの一人であるこの新潟県の委員会が、泉田裕彦新潟県知事の方針もあって、今、日本で最も真剣に、かつ真実に迫りながら、福島第1原発事故の実態解明と原因究明に取り組んでいる(おそらくは唯一の)組織だと思われます:田中一郎)

 

 <別添PDFファイル:私が講演当日に走り書きしている部分は無視してください>

(1)田中三彦氏講演レジメ(上)(2015430日)

「fuku14f1.pdf」をダウンロード
「fuku14f2.pdf」をダウンロード

(2)田中三彦氏講演レジメ(下)(2015430日)

「fuku14f3.pdf」をダウンロード
「fuku14f4.pdf」をダウンロード

(3)(ちらし)東電株主代表訴訟 第18回口頭弁論(2015618日)

「tirashi_toudenkabunushi.pdf」をダウンロード

(4)(ちらし)福島原発被害東京訴訟 サポーター募集中

「tirashi_higaisosyou_sapota.pdf」をダウンロード

(5)(ちらし)原発事故被害者団体 設立総会 (2015524日)

「tirashi_higaisyadantai_seturitu.pdf」をダウンロード

 <関連VTR>

(1) 20150430 UPLAN【院内集会】田中三彦「水素爆発は最初に4階で起きた!?」 - YouTube

 https://www.youtube.com/watch?v=j73wFWk3arg


(2)
20150430 UPLAN【地裁前集会・記者会見】東電株主代表訴訟第17回口頭弁論期日+福島原発告訴団東京第5検察審査会へのアピール行動 - YouTube

 https://www.youtube.com/watch?v=KtqRiskCt1w


(3)東電株主代表訴訟

 http://tepcodaihyososho.blog.fc2.com/

 

 <私の質問>

 講演が終了した後、若干の会場からの質問時間がありました。いい機会でしたので4つばかり質問をさせていただきました。上記VTR(1)の1時間25分以降のところに録画されています。

 

(質問1)(田中三彦氏は福島第1原発事故直後から、各種講演会等で、津波が来る前から1号機の非常用復水器(IC)が異常だった旨を訴えておられましたが、それを打ち消す目的で東京電力が「現場実査をしたけれど非常用復水器(IC)の配管等には異常はなかった」などと報告していたのは、いつ頃のどういう報告でしょうか?

 

(答え)2011年10月22日か23日の記者会見です。

 

(しかし、今回の1号機4階の現場検証時のスナップ写真(別添PDFファイル)を見ても分かるように、非常用復水器(IC)の冷却用タンクが据え付けられている1号機4階は、水素爆発の結果、メチャクチャに破壊され、一面瓦礫だらけになっていて(しかも高濃度の放射能汚染)、とても「非常用復水器(IC)の配管等に問題はなかった」などと報告できるような状態ではない。配管等の異常なしを確認などできない状態であるのは一目瞭然だ。つまり、東京電力は、福島第1原発事故後数か月たった、この時点においても、やはり嘘八百をつきまくっていたことになる。こんな会社、ぶっ潰さなければいけません:田中一郎)

 

(質問2)非常用復水器(IC)の配管図を見ると、圧力容器から出ていった配管が返ってくるのが、再循環ポンプの出入り口の部分になっているようだが、こうだとすると、地震の揺れによる配管破損は、非常用復水器(IC)の配管みならず再循環ポンプの配管の可能性もないとは言えないのではないか?

 

(答え)VTRをご覧ください

 

(質問3)政府事故調やNHKスペシャルなどの放送では、非常用復水器(IC)は津波による全電源喪失(SBO)によって自動的に停止=配管がクローズになってしまったと説明されている。以後、非常用復水器(IC)は動いていない、との説明だが、これについて田中三彦さんはどうお考えか?

 

(答え)VTRをご覧ください

 

(質問4)講演の中で「主蒸気逃がし安全弁」(SR弁)がきちんと機能せず、圧力容器内の圧力を圧力抑制室(サプレッション・チェンバー:SC)へ設計意図通りに逃がしてやれなかった旨の説明がありましたが、更にお聞きしたいのは、格納容器内の圧力を同じく圧力抑制室(SC)に逃がしてやるための安全弁のようなものは正常に動いていたのか? 1号機については、早い段階でベントをやろうとして四苦八苦していた様子がある。

 

(答え)そのような安全弁はない。格納容器と圧力抑制室は配管を通じてつながっており、一旦は圧力抑制室に溜めてある水を通してではあるが格納容器内の気体は自動的に圧力抑制室に導かれ、基本的には格納容器内と圧力抑制室内とは同じ圧力に保たれている。従って、格納容器の圧力が上がってベントが必要になっていた時には、圧力抑制室内もまた、同じように圧力が上がっていたということだ。(私=田中一郎の考え違いでした)

草々

 

2015年4月24日 (金)

福島第1原発2号機で何が起きていたのか=緊急炉心却装置(ECCS)の機能不全が原子炉破綻の最大原因の一つなのに、何故、誰もこれを語らないのか!!

前略,田中一郎です。

(別添PDFファイルは添付できませんでした)

 

(最初に重要情報を3つばかり)

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1.(新刊書紹介)原発地震動想定の問題点-内山成樹/著 七つ森書館

http://www.e-hon.ne.jp/bec/SA/Detail?refShinCode=0100000000000033224689&Action_id=121&Sza_id=G1

 

(私もまだ目を通していなくて、書店でちらっと立ち見しただけですが、一読に値する書籍のように思いました。現在、原発運転差止裁判で最も注目されている問題の1つである基準地震動についての解説です。全体のボリュームも大部ではなく、活字も比較的大きな字で書かれていましたから、気軽に読める雰囲気です。少なくとも、別添PDFファイルの日経記事(「原発の「基準地震動」」のようなニセモノ記事をしっかり見抜いて批判するリテラシーをつけるためにも、読んでおいた方がいいような気がします:田中一郎)

 

●原発の「基準地震動」、断層や地盤から最大の揺れ計算 不確実さの解釈で差  

 http://www.nikkei.com/article/DGKKZO86061710T20C15A4TJN000/

 

(基準地震動は「最大の揺れ」ではありませんよ。「最大の揺れ」を装っているだけです。だから,わずか数年の間に「基準地震動」を上回る地震が5回も起きるのです:田中一郎)

 

2.川内原発運転差止裁判に関する続報

 下記は『日刊アグリ・リサーチ』という業界誌に掲載されたコラム記事です。保守・反動・御用の牙城のような業界の冊子にこうした記事が載るということは、原発がいかに危なくて忌み嫌われており、かつ、先般の鹿児島地裁の腰抜け裁判長・前田郁勝(いくまさ)らによる判決内容が話にならないほどひどいものであって、万人の理解が得られていないことを、明々白々と示しているものと思われます。

 

(一部抜粋)

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<対照的な二つの司法判断>

 九電川内原発一、二号機の運転差し止めを住民らが求めた仮処分申請で、鹿児島地裁(前田郁勝裁判長)は二二日、訴えを却下する決定をした。関電高浜三、四号機の再稼働を認めなかった一四日の福井地裁(樋口英明裁判長)の仮処分決定とは判断が分かれた▼

 

  川内・前田判決は、住民側が負け続けてきた従来の原発訴訟の流れを汲むもので、国(原子力規制委)や電力会社の言を鸚鵡返しにし再稼働の露払い役に徹したためか、判決後、藤井俊嗣・火山噴火予知連絡会長から、火山学者が規制委の審査に加わっていたとする誤りなど「事実誤認」を指摘されるまで前のめりなものとなった。争点の一つとなった周辺自治体の避難計画についても、「現時点で一応の実効性を備えている」と評価したが、人の生命・財産にかかわる避難計画が「現時点で一応」では困るのではないか▼

 

 一方、高浜判決は、昨年五月の大飯判決を出した同じ樋口裁判長だけに、住民の素朴な疑問も採り入れ、事実に基づき裁判所としての判断を下すものとなった。最大の争点だった「基準地震動」(原発に到来することが想定できる最大の地震)について、全国二〇箇所にも満たない原発のうち四つの原発に五回にわたり、想定した地震動を超える地震が二〇〇五年以後一〇年足らずの間に到来している事実を重視し、高浜原発の地震想定だけが信頼に値するという根拠は見い出せないとした。科学的知見をもとに作られたはずの基準地震動が何故こうもやすやすと越えられてしまうのか、という疑問を投げかけた。

 

(以下、省略)

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なお、この鹿児島地裁の腰抜け裁判長・前田郁勝(いくまさ)らによる判決内容についての批判は、昨日ご紹介した満田夏花さんのコメントが非常に適切ですので、再掲載しておきます。私から、この満田夏花さんのコメントで漏れていると思うことを1点だけ下記に付け加えておきます。

 

●満田夏花さん:「要旨」を読んだ範囲で、気になった点を下記にまとめましたので、ごらんいただければ幸いです。

https://www.facebook.com/permalink.php?story_fbid=1425519691097615&id=100009187927595

 

(満田夏花さんのコメントを転記)

「福島第一原発における事故の経験等をも考慮した最新の科学的知見および安全 → 目標に照らして、その内容に不合理な点は認められない」

 福島原発事故の検証は十分ではありません。規制基準に十分反映されたとはいえません。安全目標については、パブコメにすらかけられず、たかだか5回くらいの短時間の審議で原子力規制委員会内部で決められました。国民の合意を得たものではありません。

 

(田中一郎コメント)

 川内原発が「最新の科学的知見および安全」を十分に反映しているなどというのは嘘八百です。例えば、過酷事故時には(福島第1原発事故時にしたように)炉心を冷却することをあきらめて溶融するに任せ、それを格納容器下部に水を貯めて落下してくるのを待ち受ける、などという、考えられないような過酷事故(無)対策を用意しておきながら、ヨーロッパなどの原子炉では設置済みのコア・キャッチャー(高温に耐えられる溶融炉心の受け皿)は設置しないとか、格納容器下部に水を貯めるための専用注水設備を用意しないとか、高性能のフィルターのついたベント装置も設置を猶予するとか、信じがたい手抜きを行っています。また、アメリカのウェスチングハウス社の原子炉AP1000のような格納容器(圧力容器内の炉心ではなく)を強力に冷却する装置もなければ、緊急炉心却装置(ECCS)の過酷事故時における機能の有効性に関する科学的検討もなされていなければ、更には水位計や圧力のがし弁や制御系配管などの過酷事故時における機能の堅確性・耐震性などについても、ノーチェックのままなのです。いわば川内原発の再稼働審査は、「非科学の粋」を集めたインチキ・似非知見と、安全対策にカネがかからないで済むようにでっち上げられた、偽りの「現状追認儀式」であるといえるでしょう。

 

●ウィキペディア AP1000

 http://ja.wikipedia.org/wiki/AP1000

 

3.特措法成立 武器購入の契約 最大10年に延長(東京 2015.4.23

 http://www.sankei.com/politics/news/150422/plt1504220016-n1.html

 

(田中一郎コメント)

 東京新聞の記事がネット上に見当たらないので、御用記事ですがサンケイ新聞の記事URLを書いておきます。アメリカの手下として軍事大国化に邁進する安倍晋三政権の下で、この武器購入予算の「タガ外し」は、東京新聞の記事が書いているように「武器の大量購入を既成事実化」することになるでしょう。大企業や富裕層に減税をしすぎて財政難に陥り、私たち一般有権者・国民・市民から消費税をまきあげながら毎年大赤字の予算を組み続ける日本政府、そんな政府が有権者・国民・市民のための様々な政策費用はそっちのけ・先送りで、軍事大国化のための武器購入の予算を将来の財源を先食いしながらどんどんやっていく、これがこの法律の正体です。

 

 それを、今国会では「長期契約を現行の5年から10年まで可能とする特別措置法案が22日の参院本会議で自民、民主、公明、維新の党などの賛成多数により可決、成立した。」というのです。自民や公明はともかくとして、民主や維新の党も賛成に回っていることに注目しておいてください。この連中は、野党でもなんでもない、ただの自民党補完勢力であり、維新の党については、それに「ちんぴら右翼」という「もう一つの本性」がついて回ります(かような国会議決は他にも山のようにあります:例えば特定秘密保護法など)。つまり、世直しを期待して、民主や維新などの政治家に選挙で投票してみても、何にも変わることはない=次の自民党政権ができるまでの「つなぎ」「ふくらし粉」「下準備」程度のことにしかならないということを意味します。臭いにおいは元から断たなきゃダメ、なのです。

 

(ここから本文)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 福島第1原発事故の実態解明において、最も奇妙なのは2号機である。2号機は1,3,4の各号機とは違い、爆発を起こさなかったにもかかわらず、福島第1原発事故では最も大量の放射能を環境に放出したと言われており、また各号機の中では最も危機的な状態にあったとも言われている。いったい何が2号機で起きていたのか。過酷事故時の原子炉の事態を実証的に把握するためにも、この問題を、先般既にご紹介した書籍=『福島第一原発事故7つの謎』(NHKスペシャル『メルトダウン』取材班:講談社現代新書)(以下『7つの謎』)の説明を参考に、下記で少し考えてみたい。

 

 私はNHK著作のこの書籍については、全面的な信頼を置いているものではない。いや、むしろ、この書籍は、そのベースが政府事故調の報告に無批判に依拠するところが多く、どちらかといえば批判的な目で見ている次第である。しかし、福島第1原発事故を顧みた場合に、誰が見ても、あのような原子炉の緊急事態において、きちんと想定された役目を果たすはずであって緊急炉心却装置(ECCS)が、その機能を十分に果たせなかった、あるいはほとんど機能しなかったことが、私は福島第1原発事故を深刻な事態に至らしめた大きな理由の一つではないかと思っている。SBO(全電源喪失)という想定外の事態はあったものの、下記に見るように、1号機はともかく、2号機、3号機については、まがりなりにも緊急炉心却装置(ECCS)は動いていたのである。SBOを緊急炉心却装置(ECCS)の機能不全の最大理由にすることは、私は理由のすり替え=ゴマカシであって、何が原因でどういうことが起きていたかの解明にもつながらないし、今後の原子炉の安全性を高めるための検証にもならない謬論であると考えている。

 

 以下、少し長くなるかもしれないが、福島第1原発事故時における2号機の議論を私なりに展開してみたい。それにしても、私がつくづく思うのは、何故、私のような原子力工学のど素人が、かような原発過酷事故の実態解明や分析のようなことをしなければいけないのかということだ。それは、福島第1原発事故後4年以上の月日が経過したというのに、日本の原子力関係の科学者や技術者が、誰一人として、一般の有権者・国民・市民が理解可能な形で、福島第1原発の各原子炉の事故実態や、深刻化した原因究明の結果の説明を、(現段階で考えられることという「推測」でもいいので)やろうとしないためである。いったい、日本という国の科学(者)や技術(者)はどうなっているのだろうか。一口に御用化というのはたやすいが、起きたことの説明さえできないどころか、しようともしない、この「事なかれ主義」の体たらくを、私は許すことができないと思っている。原発・原子力・核の世界は、この不透明かつ不誠実極まる状態1つをとってみても、撲滅しなければならない「暗黒の帝国」であることは明らかであるように思うのだ。

 

 <別添PDFファイル>

(1)(第4章表紙)爆発しなかった2号機で放射能大量放出が起きたのはなぜか?(『福島第一原発事故7つの謎 』(NHK:講談社現代新書より)

(2)最大の危機にあった2号機(同)

(3)なぜ、ベントができなかったのか(同)

(4)思わぬ地震の影響(同)

(5)検証:三者三様のトラブルが起きた格納容器ベント(同)

(6)(原子炉の図)ベント配管、主蒸気逃がし安全弁(同)

 

 まず最初に、2号機以外の爆発した2機(1号機と3号機)について、簡単におさらいをしておこう。まず、1号機については、地震直後のスクラムによって、緊急炉心却装置(ECCS)である非常用復水器(IC)が稼働したものの、その動きがおかしいために現場作業員が何度かのストップ&ゴーを繰り返したのちに、その稼働を止めてしまっている。1号機原子炉の様子を記録した圧力容器内の水位や圧力の動き、あるいは過渡現象記録などを見ると、非常用復水器(IC)系配管や再循環器系配管などで地震の揺れによる破損と冷却水漏れ(LOCA)を起こしていた可能性が高く、1号機については緊急炉心却装置(ECCS)の耐震性不足による機能不全が起きていた疑いが強い。

 

 政府事故調などでは、SBOに伴い非常用復水器(IC)は自動停止した、などと報告されているが、電源喪失によって駆動動力が失われる中で、はたして自動停止が実現したのかどうかは極めて怪しいし、そもそも自動停止していたのなら、まさに原子炉の緊急事態時において緊急炉心却装置(ECCS)を機能させなくしてしまう欠陥設計であると言わざるを得ない。いずれにせよ、1号機では非常用復水器(IC)という緊急炉心却装置(ECCS)が期待されていたようには機能しなかったために、福島第1原発の全6機の中では最も早く炉心溶融を起こし、水素爆発に至ってしまった。一方で、現場作業員の努力によって格納容器ベントは成功したため、格納容器の破壊までには至らず、その後は、炉心がメルトダウンしたあとの穴の開いた圧力容器へ向けて、消火系配管(これも低圧系の緊急炉心却装置(ECCS)である)を通じた注水が行われた。しかし、この注水も、消火系配管の欠陥設計のために大半の水が炉心に向かわずに復水器の方に行ってしまうなど、緊急炉心却装置(ECCS)の機能不全が後々まで尾を引く事態となってしまった。

 

(それから、元GEの原子炉技術者である佐藤暁氏は、仮に非常用復水器(IC)が正常に稼働していたとしても、やがて炉心からくる大量の水素ガスによって非常用復水器(IC)の配管が詰まり、冷却機能がマヒしてしまうであろうと論じている。おそらくその通りだろうと思われる。非常用復水器(IC)には、発生してくる水素ガスを逃がす、水素ガス逃し弁のようなものが必要ではないか)

 

(参考)記者会見:「福島第一原発の水素爆発は地震が原因で起こった」(田中三彦氏)再稼働阻止全国ネットワーク

 http://saikadososhinet.sakura.ne.jp/ss/archives/3500

 

 次に3号機だが、3号機は1号機とは違い、緊急炉心却装置(ECCS)としては非常用復水器(IC)ではなく、原子炉隔離時冷却系(RCIC)と高圧注水系(HPCI)という2つの装置が取り付けられていた。これは2号機も同様である(*)。この2つの機器が非常用復水器(IC)と違うのは、いずれも電源なしで稼働するものの、RCICもHPCIも、ともに最初のスタート時には電源が必要である=人間が人為的にスイッチを入れる という点だった。そして、3号機の場合には2号機とは違い、非常用のバッテリーが津波が来た後も生きていて、容易にこの2つの緊急炉心却装置(ECCS)を稼働することができたということだ。

 

(*)昨日(4/23)、たんぽぽ舎で行われた物理学者の槌田敦氏を招いての勉強会で、同氏は「福島第1原発2号機、3号機についても、もともとは非常用復水器(IC)が取り付けられていたが、浜岡原発の非常用復水器(IC)で起きた水素爆発を受けて、極秘裏に非常用復水器(IC)が取り外された」と説明した。真偽のほどは私には判断できないが、事実なら重大問題であり、また、福島第1原発1号機については、非常用復水器(IC)が設置されたまま放置されて、新たな緊急炉心却装置(ECCS)が追加手当されなかったことも大問題である。下記はネット検索したら出てきた関連サイトです。参考までにご覧ください。これについても真偽のほどは私にはわかりません。

 

●恩人菅さんに唾する東電メディア官僚そして民間事故調(8)原発非常時冷却システムを撤去していた勝俣会長

 http://members.jcom.home.ne.jp/u33/i%20think%20120312onjinnkantuba8.htm

 

 原子炉隔離時冷却系(RCIC)は、もともと緊急時対応に特化した装置で、あらかじめ専用のタンクにためてある冷却水を供給し尽くすと停止してしまい、そのあとを高圧注水系(HPCI)に引き継ぐという設計になっているようである。ただ、いずれの装置についても、用意した冷却水が足りなくなった場合には、格納容器下部にある巨大なドーナツ型の水のプールである圧力抑制室(SC:サプレッション・チェンバー)の水を使って、かなり長期に原子炉の冷却を続けられる仕組みになっていた(水源を自動、または手動で切り替える???)。

 

 ということで、3号機は1号機とは違い、3.11以降も最初は原子炉隔離時冷却系(RCIC)、そのあとを高圧注水系(HPCI)が引き継いで、炉心冷却を続けていたので、かろうじて原子炉の緊急事態への転落は避けられていたのである。ところが、その3号機の命綱ともいうべき高圧注水系(HPCI)の注水を現場作業員が3月13日の早朝夜中(午前3時前ごろ)に手動で止めてしまうのである。この動作は全く理解不能であるが、事故調査などでは、この点がとことん追求されていない。私の推測は、(現場作業員は馬鹿ではないのだから)3号機の高圧注水系(HPCI)という緊急炉心却装置(ECCS)もまた、1号機の非常用復水器(IC)と同様に、その配管に地震の揺れによる亀裂か破損が生じており、稼働を続けるうちにそれが徐々に徐々に大きくなって無視できなくなり、このまま稼働を続けると冷却水が炉心に行かずにじゃじゃ漏れになってしまうと判断したために、高圧注水系(HPCI)による注水を止めてしまったのではないか、ということである。

 

 いずれにせよ、3号機はこの高圧注水系(HPCI)を停止させて以降、炉心の冷却ができなくなって一気にメルトダウンに至り、翌日の14日午前11時頃には1号機爆発を上回る大爆発を引き起こして、建屋がボロボロになってしまった。なお、この爆発については、その形状から鑑みて単純な水素爆発とは考えにくく、一説では、使用済み核燃料プールの核燃料が引き起こした即発臨界による核爆発である、という説が広まっている。(核爆発であったか否か、くらいは、どうして未だに実証的に明らかにされないのか、私にはまったく理解できない=「しない」ということは「隠したい」ということを意味するので、益々、核爆発説は有力になっていく。また、3号機がプルトニウムを燃料に使う危険なプルサーマル炉だったことも状況証拠として挙げられている)

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 さて、上記の1,3号機とは違い、2号機はSBOの直後から一切の電源がなくなってしまい、原子炉がどうなっているのかが全く見えなくなってしまった。計器類でさえもが全停止状態だった。しかし、幸いにして、津波に襲われてSBOとなる直前に、現場作業員がたまたま原子炉隔離時冷却系(RCIC)の稼働スイッチをオンにしたため、2号機は(吉田所長以下、原発の現場にいる人たちには認識されなかったが)その後、最も長く緊急炉心却装置(ECCS)が働いて、炉心を冷却し続けたのである。上記でも申し上げたように、原子炉隔離時冷却系(RCIC)は、あらかじめ用意されたタンクの冷却水がなくなれば機能は停止するハズだが(だいたい12~24時間くらいで終了)、それが3月14日の午後くらいまでは冷却が続いていたのは、おそらく圧力抑制室(SC)にある水を使っての冷却だったのではないかと想像するが、その事情はよくわからない。ともあれ、この原子炉隔離時冷却系(RCIC)が14日夕方くらいから機能不全になって、2号機の原子炉の様子がおかしくなってくる。別添PDFファイルにある『7つの謎』は、この炉心がおかしくなり始めて以降について詳しく説明がなされているものである。

 

 それから、この2号機については、1号機が水素爆発を起こしたその際に、原子炉建屋の壁に据え付けられていた「窓」(ブローアウトパネル)が風圧で吹き飛んでオープンになってしまったため、1号機や3号機のように建屋に水素ガスがたまって爆発するという事態は起きなくて済んだという点も重要である。=つまり、原子炉建屋のブローアウトパネルを非常用独自電源で動くようにしておき、いざとなったら「窓」を開けてやれば、少なくとも原子炉建屋の爆発は防げるということである(但し、建屋の中に漏れ出ていた放射能は環境に出ていってしまうが)。

 

 それにしても解せないのは、この原子炉隔離時冷却系(RCIC)の動きである(高圧注水系(HPCI)に引き継ぎできなかったのはSBOのため最初の稼働用の電源がないから)。何故、数日間にもわたり原子炉隔離時冷却系(RCIC)が動き続けたのか、また、吉田所長以下、現場の人たちが2号機の原子炉隔離時冷却系(RCIC)が動いていることを知ったのはいつごろか、更に、原子炉隔離時冷却系(RCIC)を継続的に使いながら高圧注水系(HPCI)を何とか稼働させようとしなかったのはなぜか、という点が、私にはよくわからない。

 

 様々な情報源からの話では、吉田昌郎所長以下の人たちがやろうとしたのは次の2つ、①圧力容器内の圧力を下げて、消火系配管(低圧系の緊急炉心却装置(ECCS)の一つ)経由で炉心に冷却水を注水すること、②格納容器の圧力が高くなってきて危険(放置すれば格納容器が破裂して大変なことになる)なので、ベントを行って格納容器内圧力を下げようとしたこと(2号機の場合には圧力抑制室(SC)の水を原子炉隔離時冷却系(RCIC)経由で炉心冷却に大量に使ってしまったので、ベントといっても1号機、3号機のようなウェットベント(圧力抑制室経由)ではなく、格納容器から直接、外部環境に放射能まじりの気体を放出するドライベントだった)、であり、それは基本的に高圧系の緊急炉心却装置(ECCS)の炉心冷却機能を放棄してしまうことを意味していた。

 

 更に、原子炉の設計では、圧力容器のみならず格納容器の内部圧力についても、主蒸気逃がし安全弁(SR弁、SRV)のような「自動弁」が自動的に開いたり閉まったりすることにより、その圧力(水蒸気などの気体)を圧力抑制室(SC)に逃がしてやることで、原子炉全体の安定が保たれる=破壊的な高圧力の発生が抑えられるはずだった。しかし、これもまた簡単に放棄され、放射能を外部環境に放り出してしまうようなベントが選択されているのである。つまり、どんな原子炉にも備え付けてある、この内部圧力調整のための「逃がし安全弁」というものは、過酷事故のような場合に本当にきちんと正常に機能するのかという、もう一つの重大な問題が福島第1原発事故によって提起されたということを、しっかりと認識しておかなければならないということだ。

 

(このことは、ウェットベントが成功したとはいえ、ベント作業に忙殺された1号機や3号機についても同様に言えることである、「逃がし安全弁」が正常に機能し、圧力を下げる圧力抑制室(SC)が正常に働いていれば、かような作業は不要だった:特に1号機については、圧力容器内の高圧水蒸気を圧力抑制室(SC)へ逃がすための主蒸気逃がし安全弁が全く動いた形跡がないことが重要で、それにもかかわらず、圧力容器内の圧力が低下する事態が起きていたことも重要である=どこかが地震で壊れて破損していて、そこから水蒸気が漏れていたということ)。

 

(ちなみに『7つの謎』には、主蒸気逃がし安全弁(SR弁)に関して次のような記述がある。「2号機では、この頃、ベント弁の操作とは別に、SR弁を開いて原子炉の圧力を抜く作業も同時に進められていた。14日の夕方6時すぎ、SR弁が開いたためか、一気に原子炉の圧力が下がった。しかし、不運にもこの時間帯、2号機へと注水していたはずの消防車が燃料切れのため止まっていたのだ」。・・・・・・・・・・・・これは、とりもなおさず、2号機の逃がし安全弁が設計想定通りには動かずに、コントロールできない状態に陥っていたことを示している。本来は、炉内圧力や格納容器内圧力の大きさに自動的に対応して開いたり閉じたりするはずのものが動いていない、従って、炉心や格納容器内圧力のコントロールができない事態に陥り、過酷事故の深刻さが深まっていったということである)

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 さて、以上のことをご説明したうえで、この『7つの謎』が提起した問題と、本書がそれに対して出した回答を下記にごく簡単にご紹介しておきたい。私が見たところ、この本のこの章でのテーマは次の2つであり、その結論は次のようなものである。私にとっては初耳で、かつ驚くべき内容だった。私には、(もし書かれていることが真実なら)いずれもが傾聴に値する原子炉施設の重大な欠陥ではないかと思われ(沸騰水型に限られない)、当然のことながら、こうした原子炉施設の弱点については、明確な対応策=再発防止策が必要のはずである。しかし、残念ながら(この書籍を世に問うたNHK取材班の意図にも反して)、こうした原子炉の欠陥とでもいうべきものが、上記で申し上げてきた様々な問題とともに、ほとんど手が付けられないままに放置され、まるで福島第1原発事故の経験と教訓を無視して猪突猛進するがごときに原発再稼働が強引に押し進められているのである。電力会社と原子力産業、原子力規制委員会・規制庁、政府、それに無責任極まる御用学者や、この出鱈目をきちんと報道しようとしないマスごみの態度は、日本を亡国に導く行為として厳しく糾弾されなければならない。

 

(テーマその1)爆発しなかった2号機で放射能大量放出が起きたのはなぜか?

 本書のP130には、「東京電力の広報担当であった松本純一は、「全体の放出量のうち、1号機からは2割程度、2号機は4割強、3号機からは4割弱が放出されたとみている」と発表した。」との記述がある。また、小出裕章京都大学原子炉実験所助教は自身の講演会で、福島第1原発が環境に放出した放射能は2号機が最も多く、日本政府による国際原子力機関(IAEA)宛の事故報告書では、全体の80%以上を占める、とまで説明した。爆発もしていない2号機が(3/15早朝に、圧力抑制室(SC)付近で爆発音がした、などと伝えられているが、それがどういうことだったのか、いまだにはっきりしない=おかしな、おかしな、まったくおかしな話である)、何故、かくも大量に放射能を環境放出し、他の号機を上回るまでに高濃度に汚染されてしまったのか、その理由は何か。

 

 (本書P146以下)

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 放射性物質を含んだ蒸気は、どこから漏れてきたのか。(中略)計装線図の読み解きから、専門家たちが漏えいを疑ったのは、意外な抜け道だった。それは、RCICを通るルートだった。2号機がほかの号機に比べて想定外に長く冷却機能を維持し、危機的状況に陥るのを遅らせる立役者ともなった最後の冷却手段が、皮肉にも放射性物質の漏えいに絡んでいるというのだ。RCICは、格納容器の外側にある地下1階の原子炉建屋に設置されている。専門家が疑ったのは、RCICのタービンを回す蒸気は原子炉から直接流れ込むため、そこが放射性物質の漏えいルートになるのではないかということだった。可能性が高いとされた場所は、RCICのタービンの軸の部分だ。しかし、軸は円盤形の4重のパツキンで厳重に塞がれている。果たして、RCICの軸から漏れることはあり得るのだろうか。

 

(模擬実験をしてみたら:田中一郎注)すると、圧力の上昇に伴って、軸の隙間の部分から大量の蒸気が噴き出し始めたのだ。刑部(人の名前:田中一郎注)は、思わず言葉を漏らした。「私が思っていたよりもかなり多い蒸気の量だ。放射性物質がかなり出てきた可能性がある。」

 

 実はパツキンの間には、軸を回転させるために、わずかな隙間が作ってあり、ここから蒸気が漏れ出る可能性があった。しかし、RCICの軸には、蒸気が漏れ出すことのないように入念な対策が施されていた。パッキン部分は、パロメトリック・コンデンサーと呼ばれる装置に繋がっていて、配管を通して蒸気を吸い出すことで軸の隙聞を負の圧力に保つ仕組みになっている。

 

(中略)しかし、RCICには死角があった。このパロメトリック・コンデンサーは、電気がなくなると止まってしまうのだ。蒸気を吸い出す配管の圧力を下げられないまま、原子炉から来る蒸気の圧力だけが高まると、蒸気はRCICの軸の隙聞から一気に漏れ出してしまう。本来は吸い出した蒸気を運ぶ先となるサプレッシヨン・チエンバーの圧力は、通常は大気圧と同じ1気圧程度だが、当時は、原子炉から出た蒸気によって、4気圧を上回る高い値になっていたため、蒸気は外に漏れざるを得なかった。RCICから蒸気が漏れ出すと、そこはもう格納容器の外であり、通常、作業員が行き来する原子炉建屋の中の空間だった。

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 つまり、2号機の大量の放射能漏れを引き起こしていたのは、緊急炉心却装置(ECCS)の原子炉隔離時冷却系(RCIC)だったというのだ。私は、環境放出量の多さから見て、この原子炉隔離時冷却系(RCIC)からの漏出だけでは説明がつきにくいのではないかと思うが、しかし、2号機の建屋内の放射線量が他の号機と比較して非常に高いことの理由の説明にはなるのではないかと思うし、おそらくNHKが取材で突き止めたこの原子炉隔離時冷却系(RCIC)からの放射能漏れという欠陥構造は、ただちに改善されるべきものではないかと思われる(私は、全くの推測ながら、「2号機大量放射能放出」は、15日の「2号機圧力抑制室付近での爆発音」とともに、3号機の核爆発による放射能の大量拡散をカモフラージュするための「作り話」ではないかと疑っている。今のところ、なんとも言えないが、この「作り話」説を完全否定できる物証は見いだせていない)。

 


(テーマその2)なぜ、ベントができなかったのか

 話が長くなったので、ごく簡単に箇条書きすると、「20125月の東京電力の会見で、広報担当であった松本は2号機のベントができなかった理由について、AO弁と呼ばれる空気で動くベント弁を開けるための電磁回路に不具合があった可能性を指摘する一方で、「AO弁を開くための、空気圧が維持できなかった」とも述べている。」(P153)に従い、次のようになる。

 

(1)AO弁と言われる空気圧駆動のベント弁を開くための電磁回路の不具合(ベント弁を動かす電気回路が故障してしまったということだが,これがどんな回路なのかはよくわからない。ひょっとすると下記の(2)を誤魔化すためのインチキ説明の可能性があることは念頭に置いておいた方がよい)

 

 (2)AO弁と言われる空気圧駆動のベント弁を開くための制御系配管が地震の揺れによって破損したために高気圧の空気が漏れ、ベント弁の開閉操作ができなくなってしまった(ベント弁を動かす空気圧制御配管が破損した)

 

 要するに、地震の揺れで、原発施設の制御系配管が壊れて、装置が動かなくなったということである。空気圧を使って動かすような原発装置の制御系配管は、ベント装置に限らず、全て危ないことを物語っている。

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 最後に大事なことを一つだけ申し上げておくと、上記で申し上げた、消火系を含む緊急炉心却装置(ECCS)の耐震性や過酷事故時における機能不全も、逃がし安全弁が設計想定通りに機動しないことも、ベント装置が自在にならないことも、制御系配管の耐震性についても、いずれについても、原子力規制委員会・規制庁は、その具体的実証的な検証と原因究明を行わず、従ってまた、こうした福島第1原発事故時の経験が新規制基準や原発・核燃料施設の再稼働審査に全くといっていいほど生かされていないことである。

 

 彼らがやったことは、福島第1原発事故で生じた様々なトラブル経験に対する対応や対策の検討を可能な限り避けて通り、今ある古い既存の原発・核燃料施設をできる限りそのまま使うための手抜き・低コスト対策を、悪知恵を振り絞ってあみだしたうえで、それに屁理屈や回りくどい説明や大言壮語などで虚飾して、オバカな自民党や民主党の政治家たちをたぶらかしたのである。だからこそ、福井地裁・樋口英明裁判長の高浜原発3,4号機運転差止の仮処分判決が、新規制基準は甘すぎると判定を下しているのだ。かような新規制基準に適合するかどうかだけがチェックされている今の原子力規制委員会・規制庁の「適合性審査」なるものが、全く原発・核燃料施設の安全性を担保するものではないことは言うまでもない。

 

 福島第1原発事故の経験と教訓が生かされない原発=安全性が全く確保されていない原発の再稼働を認めてはならないことは申し上げるまでもない。マスごみ諸君には、上記で申し上げたことをご理解いただいたうえで、安倍晋三や自民党の馬鹿者政治家たちが騒ぎ立てる「世界一、厳しい新規制基準で安全が確認された原発」という天下の大嘘を、「根拠がない」「事実に反している」と報道していただきたい。何故なら、それが乱暴極まりない原発・核燃料施設の再稼働にストップをかけ、近未来における日本の原発・核燃料施設過酷事故の再発と、日本の国としての破滅を防ぐ大きな第一歩となるに違いないからだ。

草々

 

 

2015年3月 3日 (火)

(福島第1)原発事故の賠償を何故きちんとしないのか(続-3):この国の政府は,加害者を救済し,被害者を足蹴りにして,それが立派な原発震災からの復興だと思っているのか

前略,田中一郎です。

(別添PDFファイルは添付できませんでした)

 

最初にいくつかのサイトをご紹介いたします。

(1)ネット署名:Avaaz - 「戦争をする国」にならぬよう

 http://www.avaaz.org/jp/komeito_save_peace_constitution_b/?txYTCdb

 

(2)先ほどの私のメールで申し上げました蔵田計成さんの論文が見つけられない方は,下記サイトをご覧下さい。

 

● 原子力翼賛社会=県民総被ばく受入社会への道を拒否しましょう=危険なものを安全だとウソで固めて「なぐさめ」てくれる「悪魔の使者」にしがみついてはいけない  いちろうちゃんのブログ

http://tyobotyobosiminn.cocolog-nifty.com/blog/2015/02/post-dade.html

 

(3)おしどりマコ・ケンさんたちの迫真の5連続サイト

 http://oshidori-makoken.com/

 

●離れた地点の海水で、汚染水漏えいを評価!?

3行まとめ ・2号機大物搬入口上部汚染に関する原子力規制庁との面談資料が公開された。(通常の公開ペースよりとて …

 http://oshidori-makoken.com/?p=840

 

●海への汚染水流出:東京電力の本音「測ってしまったから、わかってしまった」

3行まとめ ・2月26日の東電会見で、汚染水に関して筆者が質問した内容を、ぶら下がりにおいて、東京電力社員から …

 http://oshidori-makoken.com/?p=82

 

●海に汚染水が流出している切れ目を広河隆一氏が空撮

3行まとめ ・海側遮水壁の閉じられない切れ目からは毎日、汚染水が海へ流出。 ・「閉じられない切れ目」を広河隆一 …

 http://oshidori-makoken.com/?p=812

 

●K排水路:2011年の超高濃度汚染水漏えいは「調査せず」

3行まとめ ・24日、2号機原子炉建屋大物搬入口周辺に高線量汚染水が発見され、それがK排水路から海に流出し続け …

 http://oshidori-makoken.com/?p=774

 

●海へ流出する放射性物質は一日に220億ベクレル以上

3行まとめ ・2014年8月の東電発表では、海洋へ流出する放射性物質(3核種)の総量は、一日に220億ベクレル …

 http://oshidori-makoken.com/?p=758

 

(4)社会は遺伝子改変の痕跡がない作物を受け入れるか:ゲノム編集作物の規制と表示に関する提言 北海道大学(2015226日)

 http://www.hokudai.ac.jp/news/150225_general_pr.pdf

 

(先般ご紹介した「ゲノム編集」による遺伝子組換えに関連した情報サイトです。大学の先生から教えていただきました:田中一郎)

 

(5)(参考)免疫の検査

 http://www.medic-grp.co.jp/tebiki/q.html

 

(6)ピケティブームと税制。の巻 ‐雨宮処凛がゆく!-327 マガジン9

 http://www.magazine9.jp/article/amamiya/17757/

 

(7)首相側に補助金企業寄付、甘利・林大臣にも、子会社が補助金企業、民主・岡田氏側に(朝日 2015.3.3 夕他)

http://www.asahi.com/articles/ASH333DZBH33UTIL009.html?iref=com_alist_6_03

http://www.asahi.com/articles/ASH333D0LH33UTIL007.html

 

● 補助金企業寄付、与野党問わず…首相や岡田氏も 社会 読売新聞(YOMIURI ONLINE

 http://www.yomiuri.co.jp/national/20150302-OYT1T50157.html

 

(民主党や維新などを「野党」などと呼ぶから「与党も野党も」とかいう新聞記事の大見出しとなって,訳が分からなくなるのです。民主党や維新など「野党」でもなんでもなくて「自民補完」「自民補助」「自民代替」「三流自民」とでも書いておけば,ああ,あいつらみ~んな「お仲間ね」となって,ものごとがはっきりする。昔で言えば,自民党の派閥のようなもので,それでも昔の自民党内の派閥の方がもっと違いがあったように思えるのだ。いまは「うんこカレー」か「カレーうんこ」くらいの違いしかない自由民主党と民主自由党ですわ。こんな連中の間で政権交代があったって,それは「政権交代」ではなくて「政権たらい回し」と言う方が適切だ。おー,いやだ,いやだ。:田中一郎)

 

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別添PDFファイルは,昨今の福島第1原発事故に伴う被害者に対する賠償・補償問題を扱った新聞記事です。この国の政府は,加害者を救済し,被害者を足蹴りにして,それが立派な原発震災からの復興だと思っている様子がうかがえます。全てを原発事故で奪われたたくさんの人々が,加害者・東京電力や事故責任者・国から,足蹴りにされて賠償・補償が打ち切られ,あるいは門前払いされ,生活再建支援さえも打ち切られて,切り捨てられようとしています。唯一の例外は,猛烈な放射能汚染の中に「帰還」をして,被ばくを忘れて暮らす決心をした人にのみ,わずかばかりの支援が与えられるのです。

 

この「殺人復興計画」が,これからの日本の原発事故との共存政策の中で,定番となって行きそうです。原子力ムラ代理店政府では,まもなく原子力損害賠償法の見直し作業が開始され,その中で,これまでは(電力会社への)「責任集中」と(電力会社の)「無限責任」と言う名目で,原子炉メーカーやゼネコンなどの原子炉建設業者が免責されてきましたが,今度はそれを「電力会社の有限責任」に切り替えようとしております。つまり,いくら出鱈目しほうだいをやって原発で大事故を引き起こしても,その責任=賠償・補償責任は一定額までしか取らなくていい,こんなムシのいい話が,もっともらしい屁理屈を付けて押し通されようとしているのです。

 

新春和歌:

原子力 無理が通れば 道理が引っ込む 責任かわして やりたい放題

原子力 踊るアホウに 見るアホウ どちらのアホウも まもなく滅亡

 

 <別添PDFファイル>

(1)小高赤坂病院,浪江の西病院,職員90人解雇,院長「苦渋の決断」(2015.2.27

(2)東京電力福島第1原発事故 賠償の底流(15)~(18) 第2部 営業損害(2015.2.1720

(3)「就労不能賠償」続けて 東電、今月で打ち切り、福島被災者「生活できぬ」(毎日 2015.2.27

(4)原発賠償指針 維持,1年ぶり審査会(毎日 2015.1.29

(5)賠償に差,失う一体感(朝日 2015.3.2

(6)東電が東北電に52億円の営業賠償保障支払、原電向け支払い2割減(福島民報 2015.3.3

(7)福島原発事故 営業賠償終了 先送り、国・東電 地元の反発受け(毎日 2015.3.3

(8)東電 和解案ほぼ受諾 特定避難地点 指定外世帯は拒否(毎日 2015.2.3

 

1.小高赤坂病院,浪江の西病院,職員90人解雇,院長「苦渋の決断」(2015.2.27

 http://www.minpo.jp/news/detail/2015022721224

 

(前回,私の下記メールでご紹介した南相馬の病院が破綻させられています。何故,加害者・東京電力が誰一人として責任も問われぬまま,税金で丸抱えをしてもらって生き残り,他方で,こうした何の非もない善良な被害者が破綻させられていくのか。この国の人間達は,これを見て見ぬふりをするつもりなのか:田中一郎)

 

● 原発事故の損害賠償を何故きちんとしないのか(続-2):ある病院が再建できないのはなぜか(福島民報)他=原発稼働とは こういうことだ,という生々しい実態,こんなことを「他人事」にしておいていいのか!!  いちろうちゃんのブログ

http://tyobotyobosiminn.cocolog-nifty.com/blog/2015/02/post-9ea4.html

 

2.東京電力福島第1原発事故 賠償の底流(15)~(18) 第2部 営業損害(2015.2.1720

 こんどは幼稚園の事例です。原発事故で放射能に汚染された地域から子どもたちがいなくなり,幼稚園や保育園の経営が立ち行かなくなった場合に,加害者・東京電力や事故責任者・国が責任を持って,その賠償・補償をせねばならぬことは,常識と言っていいほどに当たり前なはずが,こんなことになっています。いったい,どうなってんのよ,この国は!?

 


(福島民報)一連のシリーズ記事が掲載されています。

 http://www.minpo.jp/pub/topics/jishin2011/2014CompensationNA/

 

(個別記事ごと)

(15)http://blog.goo.ne.jp/tanutanu9887/e/9d75679332c726790469a77af4757c9c

(16)http://www.minpo.jp/pub/topics/jishin2011/2015/02/post_11524.html

(17)http://blog.goo.ne.jp/tanutanu9887/e/d6bd319df4b54282f0c798315d843316

(18)http://www.minpo.jp/pub/topics/jishin2011/2015/02/post_11532.html

 

3.「就労不能賠償」続けて 東電、今月で打ち切り、福島被災者「生活できぬ」(毎日 2015.2.27

http://mainichi.jp/graph/2015/02/27/20150227ddm041040147000c/001.html

(毎日新聞の無料ネット会員になると全文が見られます)

 

●原発賠償「営業損害」「風評被害」対象打ち切りを先送り - 毎日新聞

 http://mainichi.jp/select/news/20150303k0000m020118000c.html

 

(あたり前でしょ,こんなのわ。早いうちから「賠償打ち切り」のジャブを効かせておいて,反応が鈍くなったところでズバッと切り捨てる魂胆だと思われます:福島県民全員の200万人訴訟の準備をいたしましょう。そして,政治家を入れ替えてしまいましょう:田中一郎)

 

4.原発賠償指針 維持,1年ぶり審査会(毎日 2015.1.29

 http://mainichi.jp/select/news/20150129k0000m040093000c.html

 

(田中一郎コメント)

 この連中がつくった「賠償指針」のために多くの被害者が苦しんでいるというのに,1年間も,のたりくたりしていて,やっと出てきたと思ったら,「賠償指針そのまんま」だと言う。被害者を踏みつぶすための「だんご3兄弟」=文部科学省,原子力損害賠償紛争審査会,原子力損害賠償紛争解決センター(原発ADR)」の1つだということだ。この連中を県民・国民で包囲して,ぶったたこう。ちなみに,文部科学省のボスが,学習塾業界から違法献金をもらっていることが今般報道されています。「違法ではない」「金品・便宜はもらっていない」などと,よく言うとるよ,ほんま。

 

5.賠償に差,失う一体感(朝日 2015.3.2

 http://digital.asahi.com/articles/DA3S11628243.html?iref=comkiji_txt_end_s_kjid_DA3S11628243

(朝日新聞の無料ネット会員になると全文が見られます)

 

(田中一郎コメント)

 分割し統治せよ,ローマ帝国。私はマスごみが,この政府の卑劣な政策をおもしろおかしく煽っているような気がするのだが・・・・・。たとえば,福島第1原発事故直後に当時の民主党政権が決めた避難区域のあの妙な区分け(警戒区域,緊急時避難準備区域,計画的避難区域,特定避難勧奨地点)が,実は放射能汚染や住民の被ばくの危険性とは関係なく,事故後の賠償絞り込み・圧縮・切り捨てを意識して創られたものだと言うことを批判した記事は,一度も見たことがない。日本には,ジャーナリストはいないのか?

 

6.東電が東北電に52億円の営業賠償保障支払、原電向け支払い2割減(福島民報 2015.3.3

(1)http://www.minpo.jp/news/detail/2015030321317

(2)http://www.kahoku.co.jp/naigainews/201503/2015030201001843.html

 

(田中一郎コメント)

 福島第1原発事故被害者への賠償・補償を拒否しながら,原子力ムラ仲間への「思いやり」は痛いほど身にしみる。ふざけんなよ,東京電力。

 

7.福島原発事故 営業賠償終了 先送り、国・東電 地元の反発受け(毎日 2015.3.3

 http://mainichi.jp/select/news/20150303k0000m020118000c.html

 

8.東電 和解案ほぼ受諾 特定避難地点 指定外世帯は拒否(毎日 2015.2.3

 http://mainichi.jp/select/news/20150203k0000m040139000c.html

 

(一部抜粋)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

東京電力福島第1原発事故で局所的に放射線量の高い特定避難勧奨地点に指定された福島県南相馬市の住民らが「財物賠償」などを求め、国の原子力損害賠償紛争解決センターに申し立てた和解仲介手続き(原発ADR)で、東電がセンターの提示した和解案の大部分(約4億2000万円)を受諾したことが2日、住民代理人の弁護士への取材で分かった。

 

 しかし、同時に申し立てた指定地点外の1世帯については拒否したため、住民側は東電が指定外世帯も認めるまで賠償を受け取らない方針。

 

 原発ADRに申し立てていたのは同地点の10世帯52人と、隣接する指定外の1世帯9人。センターは昨年12月、避難区域に限られる財物賠償を、同地点の集団申し立てでは初めて認める和解案を出した。東電は同地点10世帯について受諾。指定外1世帯(約1000万円)については「指定地点内と一緒にできない」として拒んだ。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

(「住民側は東電が指定外世帯も認めるまで賠償を受け取らない方針」=胸にじーんときました。このクソ東京電力とはえらい違いだ。放射能の汚染状況とは無関係に決められた,訳の分からない「特定避難勧奨地点」なるものが,実は住民を分断してコミュニティを破壊し,よって集団的抵抗力を削いでおいて,賠償・補償金額を結果的に小さく絞り込んで行こうという,許し難くも卑劣極まりない住民への背信政策であることがこれではっきりした。考え出したのは民主党,それを大々的に推進しているのが自民党,詐欺とゴロツキの合作だ:田中一郎)

草々

 

 

2015年2月26日 (木)

経産省前テントひろばを守る好論文-内藤光博論文紹介 + 福島第1原発高濃度汚染水漏出問題の続き(2/26付 東京新聞記事より)

前略,田中一郎です。

(別添PDFファイルは添付できませんでした)

 

1.特集:経産省前テントひろばを守る好論文-内藤光博論文紹介

 本日(2/26),東京地裁において経済産業省前テントに関する不当な判決が下されました(下記参照)。

 

● 経産省前テントの撤去命令=脱原発運動の拠点―東京地裁 (時事通信) - Yahoo!ニュース

 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150226-00000074-jij-soci

 http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2015022600566

 

●経産省前テントひろば (@tentohiroba)さん Twitter

 https://twitter.com/tentohiroba

 

 テントを守ろうと,強風・雨天の悪天候にもかかわらず,地裁前の抗議行動と裁判傍聴には約350名の市民が駆けつけ,その後の院内集会(参議院議員会館講堂)には約400名の市民が集まって,盛大な「テントを守れ・地裁不当判決糾弾集会」となりました。参加者は,これからも山あり谷ありで紆余曲折が予想される脱原発運動ですが,必ず全原発・核燃料施設をなくすまで,みんなで力を合わせて頑張り抜くことを誓い合いました。(地裁判決の詳細や当日の模様は追ってメールいたします)

 

 ところで,別添PDFファイルは,昨日の「たんぽぽ舎MG」に掲載されました,たんぽぽ舎会員の山田和明さんご紹介の論文で,専修大学法学部教授(憲法学)の内藤光博さんがお書きになったものです。経済産業省前テントを守らんとする私たちにとって,力強い励みとなる内容の論文ですので,ご参考までにお送り申しあげます(ある方が,とても見やすくWORDファイルにして下さったので,みなさまには,それをPDFファイルにしたものをお送り申しあげます。なお,論文後半の一部に文字化け部分があります)。下記には,その論文の最後の「結論」部分を抜き書きしておきます。

 

●たんぽぽ舎から 内藤光博教授論文 TMMNo2416 ちきゅう座

 http://chikyuza.net/archives/51118

 

(一部抜粋)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

┏┓

 ┗■1.特集:経産省前テントひろばを守る好論文-内藤光博論文紹介  

  | 「経産省前テントひろば」は憲法21条1項の「集会の自由」の保障を受けるものである

  | テントひろば」の正当性を憲法学的理論付けしたという点で画期的な論文だ

  └──── 山田和明(たんぽぽ舎会員

 

5.結 論 

 以上論じてきたところにより、以下のことが論証された。

 

1に、「エンキャンプメント(テントの設営および居住)」は、憲法211項が保障する表現の自由の一類型としての「集会の自由」の実行行為であり、かつ本件「テントひろば」における「エンキャンプメント」による意見表明活動は、原発事故により長期的避難を余儀なくされている被災者や放射能汚染に苦しむ福島の人々、そして反原発・脱原発を主張する一般市民が「人間に値する生存」を維持しようとするための「やむにやまれぬ行為」であることから、とりわけ強く表現の自由の保障を受けることである。

 

2に、経産省前「テントひろば」はいわゆる「パブリック・フォーラム」にあたり、経産省の管理権よりも市民団体側の「集会の自由」の保障が優位されるべきことである。

 

3に、経産省による市民団体に対する提訴は、訴訟による権利救済などの実質的な法的利益がないと考えられることから、「裁判を利用した言論抑制」、いわゆるスラップ訴訟であり、実質的な表現の自由への侵害行為である。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

2.汚染水漏れ,1年以上前報告,規制委 対策指示せず(東京 2015.2.26

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2015022602000132.html

 

(田中一郎コメント)

 昨日の私のメールの続きです。まったくふざけた話です。やはり原子力に「寄生」して,原子力の「規制」はできないことがはっきりしたようです。この民主党政権が選んだ田中俊一以下の原子力ムラ代理店人間達を,原発・原子力・核燃料施設の「規制」の世界から追い払う必要があります。

 

 驚くべきことに田中俊一原子力「寄生」委員長は次のような態度だそうです。何をぬかすか,ではないでしょうか。

 

「田中俊一委員長は二十五日の記者会見で「排水溝は雨水などがあり、コントロールできない。放置していたわけではなく、会合で議論していた。(規制委に)責任問題はまったくない」と述べた。」

 

 また,下記の「直ちに影響はない」乱発男も,よく言うよ,だと思います。今頃つべこべ言うのなら,自分たちが責任と権限のある地位にあった時にちゃんとやっとけよ,ということでしょう。事故直後の時期に,首相補佐をしていた馬淵氏らが行った,汚染水の海洋への漏出を止めるためのスラリー・ウォールを建設するという提案を潰したのは,お前達民主党政権ではないか。何を今頃言うとるのやだ。

 

「これに対し、民主党の枝野幸男幹事長は二十五日の記者会見で、汚染水漏れについて「まったくアンダーコントロールではない状況が証明されている」と指摘。「(所管する)経済産業省がきちっと監督をしていないことの裏返しだ。国会論戦で責任を厳しく追及していきたい」と述べた。」

 

 それから,安倍晋三,菅義偉(すがよしひで)官房長官に至っては,お話になりません(記事を直接ご覧下さい)。こんな人間たちを国会議員にしてしまった有権者・国民は,その愚かな投票行動を心から恥じなければなりませんね。

 

(参考)知事「極めて遺憾」 福島第一原発の汚染雨水流出で 東電の対応批判、対策要求 県内ニュース 福島民報

 http://www.minpo.jp/news/detail/2015022621220

 

(参考)委員の紹介 原子力規制委員会 田中俊一 (「悪魔が来たりてホラを吹く」)

 http://www.nsr.go.jp/nra/gaiyou/profile02.html#tanaka_shun

 

●福島原発事故についての緊急建言【PDF150KB】・・・完璧にお忘れのようです。

 http://www.nsr.go.jp/data/000068992.pdf

 

(上記の一部抜粋)「はじめに、原子力の平和利用を先頭だって進めて来た者として、今回の事故を極めて遺憾に思うと同時に国民に深く陳謝いたします。」

 

●原子力規制委員会 田中俊一委員長の悲しい変貌|風塵だより#005 マガジン9

 http://www.magazine9.jp/article/hu-jin/15907/

草々

 

2015年2月22日 (日)

原発事故の損害賠償を何故きちんとしないのか(続-2):ある病院が再建できないのはなぜか(福島民報)他=原発稼働とは こういうことだ,という生々しい実態,こんなことを「他人事」にしておいていいのか!!

前略,田中一郎です。

(別添PDFファイルは添付できませんでした)

 

別添PDFファイルは、福島第1原発事故に伴う損害賠償・補償に関する昨今の新聞情報です。許されない被害者の切り捨てが大規模に展開されています。日本は本当に法治国家なのか,日本は本当に国民主権の民主主義国家なのか,日本は本当に人権が保障される市民社会なのか,この福島第1原発事故後の被害者に対する損害の賠償・補償のあり様を見ていると,まるで日本という国が,原子力ムラ一族の支配する専制抑圧国家であり,人々の生存権も幸福追求権も顧みられることのない暗黒社会であることが浮き彫りになっています。

 

こんなことを「他人事」だとして放置しておいていいのでしょうか? 原発を稼働するということは,突き詰めれば,こういうことなのだ,ということが,まるで思い知らされるように,今私たちの目の前で,巨大な規模で展開されています。原発・原子力を推進すれば,そのいい加減さと出鱈目の結果,必ずや大規模放射能事故の大惨事を引き起こし,その結果生まれる被害者は,適当にあしらって踏みつぶす,そうでなければ原発・原子力など永続的にやっていけるわけがない,そういう生々しい現実が,福島県その他の放射能汚染地域でおきているのです。

 

今,安倍晋三・自民党政権は,原発・核燃料施設の再稼働に猪突猛進しています。しかも,許しがたいことに,今までとてもできなかった厚顔無恥丸出しの,原発・原子力最優先政策を,多くの有権者・国民・市民の意向を無視して強引に導入しようとしているのです。焼け太りどころの話ではありません。単なる再稼働ではなく,原発・原子力の完全復権と最優先での国家的大大推進,それを徐々に徐々に,無関心な有権者・国民・市民をだましだまし,ごまかしごまかししながら,やろうとしているのです。下記に見られる被害者踏みつぶし政策は,そのための土台作りです。被害を受けても反抗させない,権力でどこまで抑えつけられるか,その社会実験が堂々とこの国で行われています。

 

かようなことを放置することはゆるされません。これは福島第1原発事故の被害者の方々の問題ではなく,私たち同時代に同じ国に生きる人間,一人一人の問題です。脱原発は脱被曝と一体であり,脱被曝のためには被害者は完全救済されなければなりません。文字通りの完全救済です。断固として,被害者と手を取り合い,自分達のこととして,この原子力ムラ邪悪権力に徹底抗戦してまいりましょう。知らぬふりをしたり,自分だけ良ければと立ちまわったり,こそこそと逃げ回っても,この狭い日本ではどうすることもできません。無為無策・逃避の時間の後にくるものは,そう「次はあなたが被ばく被害を受けて,切り捨てられる」ことになるのです。何故なら,このままいけば,原発・核燃料施設の過酷事故は必ず起きるからです。

 

 <別添PDFファイル>

(1)東京電力福島第1原発事故 賠償の底流(8)~(10) 第2部営業損害 病院再開を模索(福島民報 2015.2.1012

(2)東京電力福島第1原発事故 賠償の底流(11)~(13) 第2部営業損害 解雇か・・・悩み尽きず(福島民報 2015.2.1315

(3)東京電力福島第1原発事故 賠償の底流(14) 第2部営業損害 被害ある限り償いを (福島民報 2015.2.16

(4)農林水産省 休業賠償なし正式通知 南相馬市(福島民報 2015.2.13

(5)福島県原子力損害対策協 賠償終了 見直し要求 営業損害で政府・東電に(福島民報 2015.2.5

(6)田村市都路町住民339人 精神的賠償37億円請求、東電と国提訴(福島民報 2015.2.10

(7)トモダチ作戦の後遺症 被曝賠償 行方を注視(東京 2015.2.6 夕刊)

 

1.2.福島民報:東京電力福島第1原発事故 賠償の底流(8)~(13) 第2部営業損害 ある病院が再建できないのはなぜか

 このシリーズ記事を私が下手にまとめるよりも,下記サイトをご覧いただく方が早いと思います。南相馬市のある被害者(病院)が,なんとか福島県内で病院を再開しようとするのですが,加害者・東京電力や事故責任者・国が賠償・補償をぐずぐずといつまでも行わず,政府・自治体の支援も不十分のまま金銭的に厳しい状況に追い込まれ,そこへ「営業補償打ち切り」の知らせが届きます。「死ねということか」という,この病院の院長さんのその言葉は,私の胸に突き刺さったままです。こんなことは絶対に許してはならないのです。

 

 この病院をはじめ,こうした多くの被害者の方々を,賠償・補償もろくすっぽせずに,ここまで追い込んでおいて,あるいは一人一人の被害者に寄り添って,個別事情を勘案したしっかりした再建・復興の支援施策を講じないでおいて(「人間の復興」を棚上げにして),何が「福島県の復興」なのでしょう? 劣化する(地方)行政と原子力ムラ代理店政府の「共同作業」で,福島県民をはじめ,放射能汚染地域の被害者は悲しみと苦しみのどん底に陥れられています。

 

(福島民報)一連のシリーズ記事が掲載されています。

 http://www.minpo.jp/pub/topics/jishin2011/2014CompensationNA/

 

(個別記事ごと)

(8)http://www.minpo.jp/pub/topics/jishin2011/2015/02/post_11464.html

(9)http://blog.goo.ne.jp/tanutanu9887/e/243367319f0e7b065b97f105a895297e

10http://blog.goo.ne.jp/tanutanu9887/e/81ae7ca59085824c98f5d4b699118ab7

11http://blog.goo.ne.jp/tanutanu9887/e/7c2c0beb3c9c6ef90abf64473e5a78d3

12http://blog.goo.ne.jp/tanutanu9887/e/f7c478325b9ab140cb357b27704d46b5

13http://blog.goo.ne.jp/tanutanu9887/e/e563710d1a670e1a5294f7e9b370e614

 

3.東京電力福島第1原発事故 賠償の底流(14) 第2部営業損害 被害ある限り償いを (福島民報 2015.2.16

 http://www.minpo.jp/pub/topics/jishin2011/2015/02/post_11515.html

 

(田中一郎コメント)

 「被害ある限り償いを」をしなければならないのは「当たり前」のことです。世の中の常識ではありませんか。それが原発・原子力の世界では,ねじ曲げられて潰される。こんな話があり得ますか? 「移転費用を損害として求められるのかという問題がある」などと,つまらぬことを言っていないで,福島第1原発事故によって生じたすべての損害を賠償・補償させ,加えて慰謝料・迷惑料や,支払いまでの遅延損害金を支払わせるのが,この件の正しい解決方法です。東京電力が払えないのなら,さしあたり政府が立て替えればいいのです。カネ勘定よりも被害者救済が最優先でしょう。

 

 加害者・東京電力や事故責任者・国に対して甘い対応や姿勢は無用です。それは原発・核燃料施設事故の再発防止の観点からも必須のことです。私は,この原発事故の賠償・補償の問題は,もはや良心的に奮闘して下さっている東電原発被害損害賠償弁護団副事務局長の紺野明弘弁護士や,その他の有志の弁護士の方々だけの問題ではなく,日本の法曹界=日弁連全体の問題だと思っています。

 

 この福島第1原発事故の被害者の方々を救済できないのであれば,日本の法曹界など,あってもしょうがないでしょう。人権侵害どころか国家的犯罪を犯す悪質な原子力ムラ代理店政府の邪悪な権力に対して,日本の法曹界や司法が,どこまでこれを食い止め,その存在意義を発揮できるかが問われています。どこまで日本の有権者・国民・市民=被害者を守りきれるのか,が問われているのです。日弁連よ,すべての弁護士を引き連れて,福島第1原発事故の被害者救済のために立ち上がれ。日本のすべての弁護士のみなさん,今こそあなた方の出番なのです。法は国民の権利を守るためのものではなかったのですか?

 

4.農林水産省 休業賠償なし正式通知 南相馬市(福島民報 2015.2.13

 http://www.minpo.jp/news/detail/2015021320938

 

(一部抜粋)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 農林水産省は12日、南相馬市役所で開かれた市地域農業再生協議会意見交換会で、同市の旧警戒区域外の稲作農家について、今年から東京電力の休業賠償の対象から外す方針を正式に伝えた。農業者からは反発が出たが、同省の担当者は早ければ今月中に結論を出す考えを示した。

 

 同省は、平成26年の市内産米から食品衛生法の基準値(1キロ当たり100ベクレル)を超える放射性セシウムが検出されなかったことを受け、旧警戒区域外を休業賠償の対象から外す方針を固め、1月に県、市に通知していた。意見交換会では農業者から、休業賠償が認められる全量生産出荷管理区域の指定の継続を求める意見が出た。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

(田中一郎コメント)

 このどうしようもない役所,自分達が何を言っているのか,自覚があるのだろうか? 農業と生産者・農家を守れない農林水産省など,いらんわ,消えてなくなれ:田中一郎)

 

5.福島県原子力損害対策協 賠償終了 見直し要求 営業損害で政府・東電に(福島民報 2015.2.5

 http://www.minpo.jp/news/detail/2015020520799

 

6.田村市都路町住民339人 精神的賠償37億円請求、東電と国提訴(福島民報 2015.2.10

 http://www.minpo.jp/news/detail/2015021020860

 

(田中一郎コメント)

 福島県,そしてそれ以外の放射能汚染で被害を受けた多くの皆様,みんなで手をつないで損害賠償・補償請求の提訴に立ち上がりましょう。今の自民党政権や内堀福島県政,あるいは宮城,茨城,栃木,群馬,千葉,岩手,埼玉,東京,新潟,山形などの被害各県の県政に期待しても,いつまでたってもラチはあきません。時間が経過すればするほど,被害者は苦しい立場に追いやられ,やがて切り捨てられることになっています。命と健康,幸せに暮らすささやかな権利,そのためのつつましい財産さえも,原発・原子力のためには踏みにじってもいいと考える連中が,政治や行政を牛耳っております。多くの被害者が手を取り合い,殺されてたまるか,踏みにじられてたまるか,と立ち上がり,闘うことでしか,この事態は解消されることはありません。

 

7.トモダチ作戦の後遺症 被曝賠償 行方を注視(東京 2015.2.6 夕刊)

 http://blogs.yahoo.co.jp/erath_water/65487435.html

 

(田中一郎コメント)

 人権圧殺帝国の日本とは違い,アメリカでは福島第1原発事故に伴う米海軍兵士の放射線被曝被害訴訟が始まっています。要注目の裁判について,池内了氏がうまく簡潔にまとめてくれています:田中一郎)

 

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 <追>

1.OSHIDORI Mako&Ken Portal / おしどりポータルサイト:「じゃあ確認しておりませんので、 私からの誤りでした。 ごめんなさい、宜しいですか 会見文字起こし

 http://oshidori-makoken.com/?p=709

 

2.たんぽぽ舎MGより(必見です:川内原発「工事計画」関連他)

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┗■1.「川内原発の再稼働 早くて4月以降に」…1/23NHKニュース

 |  なぜ九電の書類提出は遅れているのか、原発の諸施設が

 |  「基準地震動でさえ耐えられない恐れが高い」内容になっている

 └──── 山崎久隆(たんぽぽ舎)

 

○川内原発の再稼働 早くて4月以降に

 九州電力は再稼働を目指している鹿児島県の川内原子力発電所について、再稼働に必要な書類を今月中に原子力規制委員会に提出できない見通しになりました。このため、川内原発の再稼働は早くてことし4月以降になる見通しです。【後略】

 

○この種のニュースは他にもいくつか流れているのですが、なぜ稼働できないかの説明が、単に書類提出が遅れているだけのごとくに伝えられています。そんなはずがないのであって、実際に起きているのは、構造上の問題、耐震等の評価の間違い、根拠のない、または薄弱な評価結果などが、いっぱい書かれているのではないかと思われます。

 

 特に「白抜き黒枠公開」によりデータや解析結果が見えなくされた「工事計画認可申請書」でさえ、書かれている内容には驚かされる。九電が書いているのだから、基準値には余裕があるとの内容だと思っていたら、「一次冷却系配管」「加圧器逃がし弁管台」「ECCS配管」「蓄圧注入系統」「余熱除去系配管」そして「蒸気発生器細管」が、軒並み基準値を超えていて、一言で言えば「基準地震動でさえ耐えられない恐れが高い」内容になっています。事業者の解析でさえ、ぎりぎりの強度しか無いことになり、これで安全などと言えるはずもない状態です。

 

○基準地震動の、ほぼ2倍の「1260ガル」程度に襲われれば、地震と同時にこれら重要配管の多くは亀裂を生じ、破断し、機能を失い、数分で炉心崩壊になると思われます。このくらいの地震は南九州の地震地体構造を考えると、いくらでも起こりえるわけで、これでは合格など出来ないわけです。

 

○特に、蒸気発生器については、川内原発1号機は新しいものに交換していますが、2号機は建設当時に取り付けた「F51」がそのまま付いています。構造上の欠陥と材料の性能不足とで、蒸気発生器細管に減肉やひび割れが多発し、施栓をしてしのいだ代物を、まだ使おうというですから「論外」といわなければなりません。実際に、2号機の審査書をみると、蒸気発生器が最も厳しい応力値になっています。これを「合格」させる「度胸」が、規制委に無いことを真に祈るのみです。

 

○規制委ヒアリング「規制委の工事計画審査を問う(院内ヒアリング)

~「黒枠白抜き」隠しと「認可前事前工事」を止めろ~」が19日に参議院議員会館で行われました。後日その報告をまとめます。

 

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┗■2.始めから結論ありきの20

 |  「現状追認」から「再稼働圧力」へ

 |  総合資源エネルギー調査会への疑問・不信・できレース

 └──── 山崎久隆(たんぽぽ舎)

 

 2030年の電源構成案に原発20%とする案が、総合資源エネルギー調査会の「長期エネルギー需給見通し小委員会」の初会合がはじまる前から「決まって」いるようだ。 よくもこれだけ見え見えの会合を真面目に開く気になるものだと、怒りよりも、むしろ呆れる。会議費用だってただではない。税金を使ってどれだけ無駄な会合を開いているのだろう。

 

○ 20%の種明かしはあまりに簡単だ。

 まず、既に廃炉が決まった原発を除けば48基が残るが、そのうち建設中の大間を含めて21基が再起動のための新規制基準適合性審査を受けている。それら原発は、北から泊1~3(北海道電)、女川2・東通(東北電)、東海第二(日本原電)、柏崎刈羽6・7(東電)、浜岡4(中部電)、志賀2(北陸)、大飯3・4・高浜3・4(関電)、島根2(中国電)、伊方3(四国電)、玄海3・4、川内1・2(九州電)である。

 

 この原発の設備容量を全部足すと、2,010kwになる。しかしこれらの原発のうち、2030年には40年を超える原発がいくつもある。泊1、高浜3・4、島根2、川内1・2、東海第二だ。従って、これらのうちから40年以上運転する原発もかなりあることが前提となっていると見られる。日本の電力消費量は年間合計7,436kwh(電気事業連合会による電力会社10社の2013年度発電電力量内訳。他社からの受電分を除いた発電電力量の合計(2014年5月)2,010kwの設備で稼働率75%としたら、1,320kwh17.8%、同じく85%ならば1,486kwh、ほぼ20%である。

 

 何のことはない。20%とは、規制基準適合性審査を終えて再稼働している見込みの原発を足し算して、現在の電力消費量で割っただけのことだ。すなわち、エネルギー基本計画などではなく、単なる現状追認である。

 

○ 最初は「追認」だが、その後は「圧力」になるのは容易に想像がつこう。既に経産省が電源3法交付金について原発再稼働した自治体に重点配分することを検討している。つまり金と圧力が立地自治体に掛かってくる。「計画を達成するために20基の再稼働は必須」などと言い出す連中がいるということだ。こんな「結論ありき」の議論など要らない。必要なのは、人口減少と省エネルギー技術の進展に伴う、電力消費量の低下により、より低密度で変動の多い消費動向を、どのようなエネルギー源を持って安定的に賄うかを考えることだ。

 

3.(毎日新聞)衆院予算委員長:民主へのヤジ、首相を注意 「抑制を」

 http://mainichi.jp/m/?2rRUFd

 https://www.youtube.com/watch?v=PJKSJi5GSZg&feature=youtu.be

 

(安倍晋三ほめごろし:立派な首相やなあ,品格のある発言やで,ほんまに。世界のどこへ出しても恥ずかしくないくらいに厚顔無恥ですわ:田中一郎)

 

4.徹底検証 人質事件

http://www.dailymotion.com/video/x2gmule_houtoku-tetteikensyouislamkokuhitojichijiken-nakatakoushigakatattashinjijitsu-imafreejournalisttachi_news

 

5.(録画)20150220 UPLAN 日本政治の行方を考える市民と国会議員の勉強会

 https://www.youtube.com/watch?v=3cSscfW7KXw

 

6.翼賛体制構築に抗するという「声明」を [国民投票/住民投票]情報室 ホームページ

 http://ref-info.com/hanyokusan/

草々

 

2015年1月 6日 (火)

東京地検が福島第1原発事故責任者の東電幹部たちを起訴しない理由はない:明らかとなった原子力安全保安院幹部審議官のメールの驚くべき内容(岩波新書 『原発と大津波』より)

前略,田中一郎です。

 

(最初にいくつか重要情報です)

 

1.(美浜の会)福島の子どもたちに発生した甲状腺ガン

 発生数の多さだけが問題ではない、悪性度がおそろしいほどに深刻(子どもたちを守る闘いの突破口をみいだそう)

 http://www.jca.apc.org/mihama/News/news132/news132kojosen.pdf

 

●美浜の会HP

 http://www.jca.apc.org/mihama/

(上記は「美浜の会ニュース№132号(20141222日)」です)

 

●FoE JAPAN【緊急セミナー】 切迫する放射線被ばくの健診対策(1/7

 http://www.foejapan.org/energy/evt/150107.html

 

●FoE JAPAN:環境省がパブコメ募集中:福島原発事故に伴う健康管理…ポイントをまとめました

 http://www.foejapan.org/energy/action/141231.html

 

2.(別添PDFファイル) 20150105 UPLAN テント新春記者会見 - YouTube

 https://www.youtube.com/watch?v=ZM1TxBUZrGE

「sendainoie_iwasita.pdf」をダウンロード

(当日、テント前でお話になられた方々のスピーチは素晴らしかったです。VTRで是非ご覧下さい。また、別添PDFファイルは、その際に木村さん(阻止ネット)がお配りになったものです:田中一郎)

 

3.ふくしま集団疎開裁判 @★拡散願い★

1月9日(金)文科省前&財務省坂上(18時半~20時半)抗議活動行います。

(ブログ)http://fukusima-sokai.blogspot.jp/

 

4.OSHIDORI Mako&Ken Portal - おしどりポータルサイト

 http://oshidori-makoken.com/

(新しい迫真のレポートがいくつか新着しています)

 

5.タニムラボレター No.029 「不検出」をもう一度考えよう 原子力資料情報室(CNIC

 http://www.cnic.jp/6199

 

6.キャンペーンについてのお知らせ • 1-6 Ust番組FFTV「再生可能エネルギーの未来が今ピンチ!パブコメを出そう」…ゲスト:松原弘道さん(環境エネルギー政策研究所) • Change.org

https://www.change.org/p/%E5%8E%9F%E7%99%BA%E5%9B%9E%E5%B8%B0%E3%81%AE%E3%82%A8%E3%83%8D%E3%83%AB%E3%82%AE%E3%83%BC%E5%9F%BA%E6%9C%AC%E8%A8%88%E7%94%BB%E6%A1%88%E3%81%AB%E5%8F%8D%E5%AF%BE%E3%81%97%E3%81%BE%E3%81%99-%E6%98%A8%E5%B9%B4%E5%A4%8F%E3%81%AE%E5%9B%BD%E6%B0%91%E7%9A%84%E8%AD%B0%E8%AB%96%E3%81%AE%E7%B5%90%E6%9E%9C%E3%82%92%E5%8F%8D%E6%98%A0%E3%81%97-%E5%8E%9F%E7%99%BA%E3%82%BC%E3%83%AD-%E3%82%92%E6%98%8E%E8%A8%98%E3%81%97%E3%81%A6%E3%81%8F%E3%81%A0%E3%81%95%E3%81%84/u/9205431?tk=4Yvx592uqceZyge_0i8LYLRhMHmSFQPge7rN11w71fg&utm_source=petition_update&utm_medium=email&utm_campaign=petition_message_notice

 

 

(ここからが本文)

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 既に少し前の私のメールでご案内申し上げた通り、このほど元朝日新聞記者だった添田孝史氏が岩波新書『原発と大津波:警告を葬った人々』という独力調査報告の新著を執筆し、その中で、今から約20年位前から(阪神大震災を契機にして)、幾度にもわたり大地震とともに、それに伴う大津波の危険性が警告され、注意喚起され、危険だと指摘されてきたにもかかわらず、福島第1原発事故の加害当事者・東京電力や事故責任者の国(経済産業省や資源エネルギー庁、あるいは原子力安全保安院など)の幹部・責任者たちは、危険だと認識しつつこれを見逃し、問題の先送りをしていたことが明らかとなりました。東京電力の目先の費用負担に伴う経営や収支上の問題を優先させ、それを規制当局である国が東京電力と一体となって見逃していたのでした。

 

 東京電力幹部の刑事責任を告訴・告発している福島原発告訴団の弁護団では、ただちにこの添田孝史氏が岩波新書で明らかにした事実の証拠書類等を精査の上、東京地検に対して追加の上申書を提出しております。中でも、弁護団の海渡雄一弁護士がとりわけ注目すべきとしているのが、今回全文をご紹介する、当時の原子力安全保安院幹部だった森山善範審議官が原子力発電安全審査課長らに送ったメールの内容です。

 

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 そもそも論で恐縮ですが、私たちが、たとえば車をいい加減な形で運転をしていて(例えばわき見運転)交通事故を起こせば、刑事上、民事上、及び行政法上の責任を問われ、刑罰・罰金・損害賠償・行政処分などを覚悟しなければなりません。刑事上の責任では、過失運転等の罪を問われて懲役刑や罰金刑が課せられますし、民事上の責任では、事故で被害を受けた方に対しての損害賠償や補償をせねばなりません(しなければ裁判です)。また、行政法上の責任としては、運転免許の停止や取り消しがなされます。

 

 しかし、これが車による交通事故ではなく、原発による過酷事故だったら、日本という国では、刑事、民事、行政法のいずれについても、何の罪も責任も問われなくていいのでしょうか。今回、添田孝史氏が著書で明らかにしたように、あるいは、福島原発告訴団の弁護団がこれまで様々な形で東京電力幹部たちの(原発のずさんな安全管理に関する)罪状とその責任を明らかにしているのに、そして、東京第5検察審査会もそれを認めて「起訴相当」としているにもかかわらず、東京地検は未だに福島第1原発事故の重大責任者たちである東電幹部らを起訴しようとはしていないのです(新聞報道では、相変わらず強制捜査も行わないまま、再び不起訴処分にするという、とんでもない態度です。まるであらかじめ「起訴しない」と決めてかかっているかのようです)。こんなおかしな話はありません。

 

 <福島第1原発事故をめぐる刑事、民事、行政法上の責任追及の現状>

1.刑事責任

 東京電力幹部らの刑事責任追及を求めて、福島原発告訴団が告訴・告発し、目下焦眉の問題となっています。しかし、事故当事者の東京電力を監督・規制していた原子力安全保安院や経済産業省・資源エネルギー庁は何の責任にも罪にも問われておりません。実におかしな話です。また、事故原発をつくった原発メーカーやゼネコンなども何の罪も責任も問われておりません。車による交通事故の場合なら、その車が「欠陥車」なら、当然にそのメーカーの責任も問われるでしょう。しかし、福島第1原発という「欠陥原発」をつくった原発メーカーやゼネコンもまた、刑事、民事、行政法のいずれについても、その罪や責任は不問のままです(市民グループが原発メーカーやゼネコンを刑事告発しています。また、民事上の損害賠償責任は、原子力損害賠償法により免責されていると言われています。これも変です。行政法上の責任もあってしかるべきですが、これも不問のままです)。

 

2.民事責任

 まず、事故を引き起こした加害者・東京電力や事故責任者・国が、被害者に対して万全の賠償・補償をすべきですが、これが実に出鱈目で、わずかばかりの慰謝料や手切れ金で被害者を切り捨てようとしています(実際のところ、政府が「黒子」になって。東京電力が被害者に対して支払う損害賠償の金額を交通事故の際の賠償額の半額以下に押し込める算段をしていたことも発覚しています)。当事者の東京電力のみならず、東京電力の事実上の経営者=大株主=経営意思決定権限者である国が、東京電力の背後に回って、被害者を切り捨てよ、という方針をごり押ししている様子もあります。そもそも事故直後から、国は避難すべき地域をこま切れにして、かつ狭い範囲に限定し、賠償・補償総額ができる限り小さくなるよう、様々な姑息で卑劣な「対策・対応・布石」をしてきています。

 

 また、東京電力の幹部たちに対しては、株主代表訴訟が提起され、今現在係争中です。当時の会長・社長はじめ経営を牛耳っていた幹部たちに対して、総額5兆円以上の損害賠償を会社に対して支払えと訴えが出ています。

 

 他方、原子力安全保安院をはじめ、出鱈目だった原発規制当局・原発管理当局の役人たちに対しては民事訴訟は起きておりません。制度的に起こせるのかどうかはわかりませんが、すでに国が東京電力の賠償や事故収束のための費用を立て替える等、国庫に対して多大な損害を与えており、幹部役人たちに対しても民事上の責任=損害賠償責任を追及すべきです。(また、経済産業省・資源エネルギー庁という組織も、もうどうしようもない原子力ムラ連合との癒着・融合が目に余るため、組織としての民事責任が問えない以上、解体され、原発・原子力をめぐる権限や所管からは切り離されるべきです。=但し、これは行政法上の責任追及と言えるでしょう)

 

3.行政法上の責任

 行政責任についても、これだけの深刻重大な事故を引き起こした、その原因を探ってみれば、東京電力がいかにいい加減で出鱈目だったのかが明らかになってきているわけですから(更には、事故後の対応についても、さまざまな意味で出鱈目の上塗りをしているわけですから)、当然ながら東京電力に対して行政法上の処分=原子力発電免許の取り消しや電力事業者としての免許取り消し=事実上の電力会社としての解体=幹部職員を入れ替え、法的な倒産手続きを経ての新東京電力への抜本的組織替え、がなされてしかるべきです。しかし、現実はご覧のとおり、東京電力は何の行政法上の処分を受けることもなく(政府の全面的支援を受けて:被害者は切り捨てられようとしているのに)電気事業を続け、そして許しがたいことに柏崎刈羽原発を再稼働し、核燃料サイクル事業を継続しようとしております。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 上記のように、福島第1原発事故を引き起こした(組織と個人の)責任当事者たちについて、この日本では、事故後3年9か月が経過したというのに、まともにその責任や罪の追及や解明が行われないまま、次第にうやむやにされようとしているのです。これではいけません。こんなことだと、事故を引き起こした当事者たちはもちろんのこと、今後も原発・核燃料施設関連の仕事に携わる人間たち=特にその幹部クラスの人間たちは、「いかなる悪質な事故を引き起こそうといえども、この日本では自身の罪を問われることはなく、自身の属する組織も国によって大なり小なり助けてもらえる」と確信をし、以後、福島第1原発事故前よりもひどい「モラル・ハザード」を生み出してしまうでしょう。そしてそれは、そのまま「次の、より一層深刻で激しい原発・核燃料施設の過酷事故」を準備していくことになるのです。この悪循環を今ここで断ち切っておくためには、関係当事者や組織の責任や罪を追及し、きちんと罰して責任を取らせておくことが非常に重要であるということです。

 

 以下、海渡雄一弁護士執筆の上申書の「森山善範審議官が原子力発電安全審査課長らに送ったメール」に関して言及した箇所、及びその森山善範審議官メールを下記に全文掲載しておきます。ぜひともご覧になってみてください。これを読めば、東京電力幹部らが福島第1原発を襲うであろう大津波の危険性を認識していたことは明らかであると同時に、原子力安全保安院もまた、それを知りつつ、見て見ぬふりをし、東京電力の安全対策を先送りすることに加担していたことは明らかです。両者はともに、刑事、民事、そして行政法上の責任を問われてしかるべきなのです。

 

 原子力の世界を治外法権=無法の世界にしてはなりません。原子力ムラの無責任で出鱈目なふるまいの結果、重大な事故やトラブルが発生した場合には、それに相応する罪や責任が問われなければいけません。そんなことは、わざわざ申し上げるべきことでもないでしょう。しかし、悲しいかな現代の日本では、それがそうではないのです。少なくとも、すんなりとは行きません。東京地検をはじめとする日本の検察や司法は、その本来の与えられた、期待された使命を果たさねばなりません。それが福島第1原発事故のような、悲惨で重大な原発・核燃料施設過酷事故の再発を防ぐのです。事故の原因となる関係当事者たちのモラル・ハザードを防ぐのです。東京地検は、その第一歩である東京電力幹部たち責任者を起訴すること、これが物事の始まりであり社会正義です。ほおかぶりをしたり、逃げ出したりすることは許されないのです。起訴しない理由など、まったくありません。

 

 <関連サイト>

(1)福島原発告訴団 上申書提出 『原発と大津波』

 http://kokuso-fukusimagenpatu.blogspot.jp/2014/12/blog-post_12.html

 

(2)福島原発告訴団 「やれと言われても、何が起こるかわかりませんよ」

 http://kokuso-fukusimagenpatu.blogspot.jp/2014/12/blog-post_29.html

 

 <海渡雄一弁護士の上申書より>

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

P14「このメールは,福島第一のバックチェックが容易に進まなかったのは津波対策による追加工事が必要になることがほぼ確実に予測され,そのことを東電がいやがったためであることがわかる。保安院は東電の虜となり,まさに共犯とも言うべき状況で,津波対策工事による出費で東電の赤字が膨らむのを防ぐために,バックチェックの先延ばしを進めていたのである。「東電は役員クラスも貞観の地震による津波は認識している。」とされているように,審議官クラスと東電役員の間で,津波対策のための追加対策はバックチェックを完了するには必須であるが,先延ばしとすることが話し合われていたのである。ここまでの証拠がありながら,検察が被疑者らを起訴できないはずがないではないか。」

 

P24「そして,裏では,保安院の森山氏は,前記のようなメールを送り, 「1F3の耐震バックチェックでは,貞観の地震による津波評価が最大の不確定要素である」「福島は,敷地があまり高くなく,もともと津波に対して注意が必要な地点だが,貞観の地震は敷地高を大きく超える恐れがある。」「津波の問題に議論が発展すると,厳しい結果が予想されるので評価にかなりの時照を要する可能性は高く,また,結果的に対策が必要になる可能性も十二分にある。」「というわけで,バックチェックの評価をやれと言われても,何が起こるかわかりませんよ」などと述べていたというのである。まさに,語るに落ちたとはこのととではないか。再捜査の対象には森山審議官は入っていなかったが,このメールからは、本件事故を予見していながら、問題を先送りしていたことが明らかであり、同氏も明らかに起訴相当である。検察は職権で同氏に対する被疑事件を立件し、武藤、武黒、勝俣、小森の四人の被疑者とともに同人も合わせて起訴するべきである。」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 <『原発と大津波』(添田孝史著)より:P143~145>

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「二OO年三月二四日午後八時六分に、保安院の森山善範審議官が、原子力発電安全審査課長らに送ったメールが興味深い。」

 

「件名「1F3バックチェック」(貞観の地震)

 1F3《福島第一3号機》の耐震バックチェックでは、貞観の地震による津波評価が最大の不確定要素である旨、院長《寺坂信昭》、次長《平岡英治》、黒木《慎一》審議官に話しておきました。私の理解が不正確な部分もあると思いますが、以下のように伝えています。

 

●最近貞観の地震についての研究が進んで来た。

●耐震バックチェックWGでも、貞観の地震に関する論文を考慮し検討すべきとの専門家の指摘を受け、地震動評価を実施している。

●また、保安院の報告書には、今後、津波評価、地震動評価の観点から調査研究成果に応じた適切な対応を取るべきと書いており、と宿題になっている。

●貞観の地震については、地震動による被害より、津波による被害が大きかったのではないかとの考えもある。

●貞観の地震についての研究は、もっぱら仙台平野の津波堆積物を基に実施されているが、この波源をそのまま使うと、福島に対する影響は大きいと思われる。

●福島は、敷地があまり高くなく、もともと津波に対しては注意が必要な地点だが、貞観の地震は敷地高を大きく超える恐れがある。

●東電は、WGでの指摘も踏まえ、福島での津波堆積物の調査を実施しているようだ。

●貞観の地震についての佐竹《東大地震研究所教授》他の研究は、多分今年度が最終年度で、今後、地震本部での検討に移ると思われる。そうすれば、今年の夏から来年にかけて、貞観の地震についての評価がある程度固まってくる可能性は高い。

●ただし、貞観の地震による津波の評価結果は、原子力よりも一般防災へのインパクトが大きいので、地震本部での評価も慎重になる可能性もある。

●1F3について、仮に中間報告に対する保安院の評価が求められたとしても、一方で貞観の地震についての検討が進んでいる中で、はたして津波に対して評価せずにすむのかは疑問。

●津波の問題に議論が発展すると、厳しい結果が予想されるので評価にかなりの時聞を要する可能性は高く、また、結果的に対策が必要になる可能性も十二分にある。

●東電は、役員クラスも貞観の地震による津波は認識している。

 

というわけで、バックチェックの評価をやれと言われても、何がおこるかわかりませんよ、という趣旨のことを伝えておきました。」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

草々

 

 

 

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