放射能汚染

2015年4月28日 (火)

トリチウム(三重水素)の恐怖

(はじめに)

「HAJIMENI.pdf」をダウンロード

((ちらし)青森県六ケ所村の再処理工場のトリチウム廃液)

「tirasi_saisyori_toritiumu.pdf」をダウンロード

 

1.トリチウムとは、

 周期律表に1つの元素として記載された原子ではなく、水素の放射性同位体である=簡単に言えば、ちょっと変わった水素、のこと

(周期律表の元素の例:リチウム、ナトリウム、カルシウム、ヘリウム、酸素、塩素他)

 

2.水素の放射性同位体=原子核が違う=化学的(電気的)性質は同じ=区別困難

水素            陽子1つ、電子1つ

二重水素(デューテリウム) 陽子1つ、中性子1つ、電子1つ 安定、天然は微量

三重水素(トリチウム)   陽子1つ、中性子2つ、電子1つ 不安定・放射性物質

 

3.トリチウムの生成

ウラン-235235U44.8億年)とプルトニウム-239239Pu2.41万年)が中性子と反応した時に起こる三体核分裂(二つの大きな原子核と一つの小さな原子核が生成する現象)によって生じる他、原子炉内では、制御棒のなかの中性子吸収物質=炭化ホウ素に含まれるホウ素10 に中性子があたってトリチウムが生成される、あるいは原子炉水中に不純物として含まれるリチウム6 などのような軽い元素に中性子があたることによってもトリチウムができる。なお、かつては大気中の水爆核実験(核融合)により大量のトリチウムが地球上に放出された。

 

(加圧水型炉では,原子炉水中にホウ素とリチウムが添加されており,このため沸騰水型炉よりトリチウムの生成量が多い ⇒ およそ10倍)

 

●青森県六ケ所村の再処理工場が放出するトリチウム

青森県六ケ所村の再処理工場が本格稼働すると、その工程から出てくる様々な危険な放射性物質が膨大な量で環境に(大気中及び海中)放出されるが(中でも量が多いのが、クリプトン85、炭素14、放射性ヨウ素(131、129)、に加えてトリチウムである。トリチウムの海中への放出濃度は1億7千万ベクレル/リットルという信じがたい数字であり、1年間の放出量も2京ベクレルと天文学的な数字となっている。ちなみに大気中へのトリチウム放出は海中放出の1/10程度だが、それでも数字としては極めて巨大である。驚くべきことに青森県六ケ所村の再処理工場には放射性物質の法定排出基準はなく、まさに放射能垂れ流し放置の無法状態が黙認されている。

 

4.トリチウムの放射線

・半減期12.3年、ベータ線のみを出す(放射性セシウムのようにガンマ線は出さない)、ベータ線を出した後、ヘリウム3になる。

・ベータ線のエネルギーは最大で18.6 keV(キロ・エレクトロンボルト),平均5.7 keV である。解説書などには「弱いベータ線」などと書かれているがとんでもない話で、これでも人間を含む生物の細胞を形作る分子の結合エネルギー(数十~数百eV)に比べれば巨大なエネルギーで、特に内部被曝の場合には、人間や生物の体を破壊するには十分に大きなエネルギーである。

 

5. 原発排出のトリチウムへの規制

(1)告示濃度限度(参考:WHO基準ではトリチウム=10,000ベクレル/㍑)           

トリチウム水     

60ベクレル/cm360,000ベクレル/㍑)(6千万ベクレル/m3

 

トリチウム水蒸気  

 0.005ベクレル/cm3(5ベクレル/㍑)(5千ベクレル/m3


有機結合型トリチウム

 20ベクレル/cm320,000ベクレル/㍑)(2千万ベクレル/m3


一般化合物トリチウム 

40ベクレル/cm340,000ベクレル/㍑)(4千万ベクレル/m3

 


(その他の放射性核種)              WHO基準

 放射性セシウム134   60ベクレル/㍑  10ベクレル/㍑

 放射性セシウム137   90ベクレル/㍑  10ベクレル/㍑

 放射性ストロンチウム90 30ベクレル/㍑  10ベクレル/㍑

 

(2)福島第1原発汚染水に係る東京電力自主基準

 放射性セシウム134       1ベクレル/㍑

 放射性セシウム137       1ベクレル/㍑

 放射性ストロンチウム90     5ベクレル/㍑

トリチウム          1,500ベクレル/㍑

 

(参考)実用発電用原子炉施設からの年度別トリチウム放出量(単位:Bq)

 施設名           2007年   2008年   2009年  2010

東京電力(株)福島第1原発  1.4×1012  1.6×1012  2.0×1012   ― 

東京電力(株)福島第2原発 7.3×1011  5.0×1011  9.8×1011 1.6×1012

1012乗=1兆)

 

(法規制の根拠:放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律 ⇒ 放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律施行令・施行規則 ⇒ 放射線を放出する同位元素の数量等を定める件(平成十二年科学技術庁告示第五号)⇒ 別表第二)

 https://www.nsr.go.jp/activity/ri_kisei/kanrenhourei/index.html

 

6.トリチウムによる内部被曝の危険性

・トリチウムによる被ばくは、特殊な場合を除き、外部被曝はほとんど問題にならない(空気中では5mmくらいしか飛ばない)

 

・問題は内部被曝である。トリチウムは、下記にあるように、有機物の水素と入れ替わった有機結合型トリチウムによって、白血病や脳腫瘍などの発がんの危険性や、その他の放射線被曝による健康被害が出る可能性の高い危険な放射性物質と言える。トリチウムの出す放射線=ベータ線のエネルギーが他の放射性核種に比べて小さいからといっても、その内部被曝による危険性を軽視することは許されないことである。

 

・トリチウムの放射線のエネルギーは小さく、18.6KeVのエネルギーを持つベータ線で、体内では0.01mmほどしか飛ばない。エネルギーが低いベータ線の特徴はエネルギーの高いベータ線より相互作用が強く、電離の密度が10倍ほどにもなる(電離とは分子切断のこと)(矢ケ﨑克馬琉球大学名誉教授)。

 

・内部被曝の場合には、放射線が直接、細胞内の組織や生命秩序を、そのすさまじいエネルギーで破壊することに加え、細胞内で活性酸素を生み出し、その活性酸素(主としてヒドロキシルラジカルで、これに対抗する抗活性酸素向け酵素は人体内には存在しない)が化学反応によって体内で悪い影響を及ぼす作用もある。

 

・なお、内部被曝の定量的把握に放射線被曝の評価単位である「シーベルト」は使えないので(内部被曝の実態を反映していないため過小評価がはなはだしい)、ベクレル単位で量を把握したのちは定性的に判断していくことをお勧めする。

 

(1)自由水型トリチウム (Free Water Tritium:FWT)

・トリチウムは酸素と結合してトリチウム水(HTO)の形をとることが多く,人体の特定の組織や臓器には濃縮しない。

 

・体内に水として存在しているトリチウムは、比較的早く体外に排出されるようだが、ここでも恒常的な低線量被曝(内部被曝)の場合には、毎日のようにトリチウムが体内に取り込まれるため、結果として一定量以上のトリチウムが常に体内に存在し続けることになってしまう。

 

・トリチウムがトリチウム水として人体に取り込まれた場合でも,その一部が細胞核の中にまで入り込んで,DNA(遺伝子)を構成する水素と置きかわる可能性がある。その場合には,トリチウムからの飛ぶ距離が短いベータ線が遺伝子を直接傷つけるため非常に効果的に作用し,ガンマ線よりも危険性が高いと思われる。

 

(2)有機結合型トリチウム(Organically Bound Tritium:OBT)

・トリチウムが有機化合物になると(有機物の水素と入れ替わる)、人体に吸収されやすくなり、細胞核の中に入ってDNAを傷つけやすくなり、かつ体内に長い間留まるので極めて危険

 

・トリチウムのきわだった特性として、環境中の普通の水素と非常に早く入れ替わるという特性がある。これは体の中の水素とも速やかに入れ替わるということを意味する。また、トリチウムは、新陳代謝や細胞の再生の過程で炭素と強く結びつき、有機結合型トリチウム(OBT)を形成する傾向を持っている。

 

・植物中に取り込まれたトリチウム水は、光合成により有機化されると、葉、実および根などの組織中に蓄積される。

 

・マウスの実験ではトリチウムが脳内に脂質成分として長く残るため、脳腫瘍などの危険性が高い

 

7.有機結合型トリチウムの人間体内への取り込み

人間は2 通りのやり方で有機結合型トリチウム(OBT)を体内に蓄積する。なお、有機結合型トリチウム(OBT)が食物連鎖を通じて生物体内で濃縮していくかどうかはよくわかっていないが、理論的にはあり得ない話ではない。

 

(1)1 つは、原子力施設から出るトリチウム水(HTO)の水蒸気によって汚染された土地で育った野菜や、穀物や、蜂蜜や、ミルク(そして日本では魚介類)などの食べ物を摂取することによる。

 

(2)もう1 つは、トリチウム水(HTO)を飲んだり、食べたり、呼吸したり、皮膚から吸収したりすることによって、人体が必要とする有機分子の中にトリチウムを新陳代謝して摂り込み、新しい細胞に組み入れることによってである。

 

8.トリチウムの除去

・トリチウムは水素(の放射性同位体)なので、化学的性質は普通の水素と同じ。従って、トリチウムの化学的性質を利用しての分離は基本的にできない。

 

・莫大な費用をかけてウラニウムを濃縮するのと同じプロセス、ガス拡散法やガス遠心分離法などで何十段階も繰り返していくとトリチウムだけを取り出すことは可能。トリチウムを除去するために莫大な費用をかけて対策するよりも、原子力発電をやめてしまったほうが賢い。

 

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(参考)カナダにあるCANDU 炉(キ ャンドゥ)や,日本の2003 3月に運転停止し現在解体工事中の新型転換炉「ふげん」は,中性子の減速材として重水を用いており,重水の放射化によって大量のトリチウムができる。また,イギリスにある改良型ガス冷却炉(AGR)では,燃料の被覆管にステンレスを採用しているのだが,トリチウムがステンレスの被覆管を通過してしまうため,環境中に大量のトリチウムが放出され問題になっている(トリチウムは物質透過性が高い?)。

 

(こうした原発(特に加圧水型)や核施設の周辺では、子どもの白血病や脳腫瘍が多発傾向を示し問題となっている。日本でも加圧水型の原子炉がある泊(北海道)、玄海(佐賀)などでは周辺地域の白血病多発が目につく他、伊方や川内、あるいは若狭湾の原発銀座などでもトリチウムの被ばく被害が今後懸念される)

 

(人口10万人あたりの白血病による死者数)

この5年では、原発がある玄海町の白血病による死亡者は、全国平均の6~7倍ということになる。

         <1998~2002年の平均>   <2003~2007年の平均>
全国平均        5.4人              5.8人     
佐賀県全体       8.3人              9.2人
唐津保健所管内    12.3人            15.7人
玄海町         30.8人            38.8人

 

(参考文献)

●福島第1原発のトリチウム汚染水(上澤千尋 『科学 2013.5』)

●事故を起こさなくてもトリチウムを大量に放出する四国電力・伊方原発(原田二三子 20153月)

●核燃料サイクル施設批判(高木仁三郎:七つ森書館)

 

(参考サイト)

(1)【トリチウム安全神話】三重水素の本当の正体とは? 矢ヶ崎克馬教授

 http://www.sting-wl.com/yagasakikatsuma11.html

 

(2)<参考資料>日本の発電用原子炉トリチウム放出量 (2002年~2012年度実績)

 http://www.inaco.co.jp/isaac/shiryo/genpatsu/tritium_3.html

 

(3)六ヶ所再処理工場 7・8月の放射能海洋放出

 http://www.jca.apc.org/mihama/reprocess/tritium_jul-aug.htm

 

(4)事故を起こさなくてもトリチウムを大量に放出する四電・伊方原発

 http://hiroshima-net.org/yui/pdf/20150314.pdf

 

(5)福島第1原発のトリチウム汚染水(上澤千尋 『科学 2013.5』)

 http://www.cnic.jp/files/20140121_Kagaku_201305_Kamisawa.pdf

以 上

2015年3月24日 (火)

(メール転送です) トリチウムについて(第60回 伊方ウォークの報告〈広島〉)

前略,田中一郎です。

 

最初にネット署名へのご協力をお願い致します。

 

●「上関自然の権利訴訟」 公正な判決を求める要請書(署名)

 http://media.wix.com/ugd/c0e668_85de06dd2e9c495f86e8b6b0a0a7e8e5.pdf

 

●上関原発用地埋立禁止住民訴訟の会

 http://umetatekinshi.wix.com/juuminsoshou

 

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下記はある方からいただいた伊方原発とトリチウムに関するメールです。

非常に重要な内容であるように思いましたのでご紹介申し上げます。

 

特に下記サイトにはご注目ください(メールの中にも出てきます)

●事故を起こさなくてもトリチウムを大量に放出する四電・伊方原発

 http://hiroshima-net.org/yui/pdf/20150314.pdf

 

ここから本文:以下はメール転送です。

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みなさま

お騒がせします。

 

314日(土)に第60回伊方原発再稼働反対ウォークを行いました。その報告をさせていただきます。15001600、広島の元安橋東詰めを出発し、本通り・金座街を往復するコースで行いました。5人が参加しました。テーマは、「事故を起こさなくてもトリチウムを大量に放出する四電・伊方原発」です。

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チラシはこちらをご覧ください。

 ↓

http://hiroshima-net.org/yui/pdf/20150314.pdf

 

プラカードは広島1万人委員会のこちらのページをご覧ください。

 ↓

http://hiroshima-net.org/yui/1man/

 

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伊方原発は広島市民の最大のリスク。広島市から100kmのところにある四国電力伊方原子力発電所は、広島市民にとって大きなリスクです。原子力規制委員会は全国の原発で福島並みの苛酷事故が起こった場合の放射能拡散シミュレーションを行っていますが、伊方原発から100km離れた地点の被曝線量は、めやすとして、1週間で4ミリシーベルト、1時間あたりの空間線量率に直すと、約40マイクロシーベルト/時となります。伊方原発が苛酷事故を起こした場合、広島市は帰還困難な避難対象区域となる可能性が大です。

 

伊方原発は、来る南海トラフ大地震では、最大震度が「震度7」となることが想定されている伊方町に建っています。同時に、大断層帯「中央構造線」のほぼ真上と言っていい地点に建っています。伊方原発には、「蒸気発生器」という、厚さわずか1.3ミリの1万本以上の金属細管の中を放射能を帯びた高圧の水蒸気が駆け巡っている機器もあり、わずかな揺れでも脆弱化した細管が破断して、冷却水漏れが生じる可能性が大です。つまり、伊方原発で福島並み、あるいは、それ以上の苛酷事故が起こる可能性は、かなり高いといえます。

 

伊方原発が通常の稼働で放出してきたトリチウム。しかし、伊方原発は、たとえ苛酷事故を起こさなくても、危険な原発です。伊方原発は、通常の稼働でも、大量のトリチウムを環境中に放出しているからです。

 

現在は原子力規制委員会に吸収された、旧「原子力安全基盤機構」という独立行政法人が出していた、『原子力施設運転管理年報』という文書には、各原発が各年度に環境中に放出した放射性物質の量が記録されています。これを見ると、各原発は、通常の稼働時でも、ヨウ素、希ガス、トリチウム等々、さまざまな放射性物質を環境中に放出していることがわかります。

 

『原子力施設運転管理年報』によると、伊方原発が2002年から2011年までの10年間に放出した「放射性液体廃棄物中のトリチウム」の量は、568兆ベクレルです。平均すると毎年約57兆ベクレルの液体トリチウムを放出し続けてきたということになります。東京電力の発表によると、事故を起こした福島第一原発が20115月から20137月までの27ヶ月間に放出した液体トリチウムの量は約40兆ベクレルです。1年あたりの平均放出量に換算して比較すると、伊方原発は、通常の稼働時でも、事故を起こした福島第一原発の約3倍の量のトリチウムを、瀬戸内海に放出し続けてきたということになります。

 

伊方原発が稼働を止めた後の、2012年度の液体トリチウム放出量は、18000万ベクレルに下がっています。伊方原発は、大気中にも大量の気体トリチウムを放出し続けてきたはずですが、気体トリチウムについては、『原子力施設運転管理年報』には記録がありません。

 

トリチウムはどのようにして人体に影響を及ぼすか。トリチウム(3H)は、水素(H)の放射性同位元素です。崩壊するときにベータ線を発しますが、そのベータ線のエネルギーは、他の放射性物質が崩壊するときに発する放射線のエネルギーに比べると小さく、しかも、あまり遠くまで飛びません。このような性質から、トリチウムは、外部被曝について考えれば、確かにそれほど危険な放射性物質ではないかもしれません。

 

しかし、内部被曝について考えると、話は違ってきます。(以下、イアン・フェアリの『トリチウム・ハザード・レポート』(2007年)を参考にしています。チラシをご参照ください)

 

トリチウムは、気体の形でも、液体の形でも、きわめて高い浸透性を持っています。気体トリチウムは、鋼鉄でさえも比較的容易に透過します。また、トリチウムは、水素の同位体で、化学的な性質も水素と変わらないので、環境中の普通の水素ときわめて速く入れ替わります。これは、人体の中の水素とも速やかに入れ替わるということを意味します。また、トリチウムは、新陳代謝や細胞の再生の過程で、炭素と強く結びつき、「有機結合型トリチウム」を形成する傾向を持っています。

 

危険なのは、この「有機結合型トリチウム」です。「有機結合型トリチウム」は、水の形のトリチウムに比べて、はるかに長く体内に留まります。体内に摂り込まれ、細胞内の重要な有機分子(例えば、DNA)の近くに留まった「有機結合型トリチウム」は、長時間、細胞内の重要な有機分子に、至近距離からベータ線を照射し続けることになります。このようなトリチウムの影響を小さく見積もることはできないでしょう。さらに、「有機結合型トリチウム」そのものが、細胞内の重要な有機分子を構成してしまう場合もあるでしょう。

 

カナダの原子炉周辺の健康損傷。カナダの原発周辺では、原発から放出されるトリチウムが原因と見られる健康損傷が問題となり、いくつもの研究が行われ、その結果が発表されています。カナダの原発の原子炉は、トリチウムを特にたくさん放出する「重水炉」という型の原子炉だったからです。『トリチウム・ハザード・レポート』に紹介されている研究のいくつかを挙げてみると…

 

例えば、1989年と1991年に発表されたクラーク他による研究結果によると、カナダのオンタリオ州にあるブルース原発とピカリング原発の16の原子炉から25km以内の地域で、1971年から1987年までに白血病で亡くなった0歳から14歳までの子どもの数は、期待値25.7人に対して、実際には36人でした。約10人が、過剰に死亡しているということになります。

 

この研究によれば、原子炉が運転を始めて以降の白血病死が、それ以前よりも高くなっています。また、「原子炉から25km以内」という場所を、「死亡した場所」でカウントした場合よりも、「出生した場所」でカウントした場合の方が、死亡数が大きくなっています。ブルース原発とピカリング原発の運転が小児白血病の死亡率増加に関係していることが、強く示唆されます。

 

ジョンソンとルーローという研究者は、ピカリング原発から25km以内における先天性異常、死産、周産期死亡、新生児死亡、乳幼児死亡を研究し、1991年にその結果を発表しました。それによると、ピカリング原発から最も近いピカリング群区では、ダウン症が有意に増加しました。ダウン症の発生と、空気によって運ばれるトリチウム放出物の量との間には、統計的には有意ではないものの、相関関係が認められました。

 

ピカリング群区よりもピカリング原発からわずかに遠いアジャックス群区では、ダウン症の発生自体には超過が認められなかったものの、ダウン症の発生と、空気によって運ばれるトリチウム放出物の量との間に、正の相関関係が認められました。この研究では、特に空気によって運ばれるトリチウムへの曝露とダウン症との関連性が、明確に観察されています。ダウン症の発生率上昇は、チェルノブイリ原発事故でトリチウムを含む放射性降下物に曝されて地域についての研究でも示されているとのことです。

 

日本の原発周辺の健康損傷。日本の原発も、特に「加圧水型」の原発は、カナダ型原子炉ほどではないにしても、大量のトリチウムを放出します。日本では、関西電力、九州電力、四国電力、北海道電力が、加圧水型原子炉を採用しています。四国電力伊方原発の液体トリチウム放出量は、先に見たとおりです。

 

日本の原発の中で、特にトリチウム放出量が多いのが、九州電力の玄海原発です。液体トリチウムだけでも、2002年から2011年までの10年間に826兆ベクレル、1年平均83兆ベクレルを海水中に放出しています。

 

この玄海原発周辺での白血病による死者数を、厚生労働省の「人口動態統計」(1998年~2007年)を資料として調べた人があります。

 ↓

http://www.windfarm.co.jp/blog/blog_kaze/post-4139

 

中村隆一氏の調査によると、人口10万人あたりの白血病による死者数は、全国平均では56人なのに、佐賀県では89人、さらに、唐津保健所管内では1216人、玄海町では3139人になっています。玄海原発に近い所にエリアをしぼるごとに、白血病による死亡率が跳ね上がるという傾向が、はっきりと認められます。玄海原発から放出される放射性物質が、周辺住民に健康損傷を引き起こしていることが、強く示唆されます。

 

伊方原発周辺では健康損傷は起こっていないのか? 周辺住民の健康損傷を引き起こしているカナダの重水炉は、五大湖という湖のほとりに立ち並んでいますが、伊方原発がまた稼働を始めれば大量のトリチウムを放出し始める瀬戸内海も、湖に似た条件を持つ半閉鎖水域です。伊方原発周辺では、伊方原発の運転が始まって後、何度か、魚の大量死が発生していますが、この現象にも、伊方原発から放出される放射性物質がなんらかの形で関与している可能性があります。

 

伊方原発の稼働による健康損傷についての研究はまだありませんが、その大量の放射性物質放出量と、トリチウムなどの放射性物質が体内に摂り込まれるしくみを理解すれば、伊方原発の稼働による健康損傷は、過去にもあったし、再稼働が行われれば、これからも生じ続けると考えるのが妥当ではないでしょうか。

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草々

 

何度でも申し上げます = 木質燃料が危ない!木材も危ない! (「ママレボ通信」サイトの記事より) :「薪」の放射能汚染と,それを巡る国,自治体,そして東京電力の態度

前略,田中一郎です。

 

昨今,「ママレボ通信」のサイトに,木質燃料である「薪」の放射能汚染の話が載りました。読んでみましたら,驚くべきようなことが書かれていて,看過できないと思いましたので,皆様に広くお知らせ申し上げます。可能な限り,この「ママレボ通信」掲載の「薪の放射能汚染と,それを巡る国,自治体,そして東京電力の態度について,広めて下さい。こんなことを許していたら,日本は早晩おかしくなってしまいます(もうおかしくなっているかも?)。

 

ご紹介するママレボのサイトは平易に書かれていますので,そのままお読みいただくのがいいと思います。私の方では,強く印象に残る部分だけを若干,ピックアップしておきます。申し上げるまでもありませんが,これまで何度にもわたって書いてきました通り,福島県のみならず,東日本一帯の山林から産出される木材や林産物は危険です。丸太,材木類,木質燃料(薪,炭,ペレットなど),キノコ・山菜などの特用林産物,木の葉っぱなどを入れた堆肥・肥料・栽培土,小さなところでは,杉の葉っぱから造る線香などなどです。

 

そして,このママレボ通信にもあるように,国や自治体は木材や木質燃料などの放射能汚染に対して適切に対応しようとする姿勢は皆無に近く,その無責任体質を丸出しにしておりますし,放射能汚染管理を行政から「丸投げ」された木材・木質燃料業界も,そのぜい弱な体制や業界としての根強い体質などから,どこまで放射能汚染管理ができているのか,ほとんどわからない状態です。本当の意味での第三者のチェックなど,3.11以降,一度も入ったことはありません。そして,きわめつけは,ママレボ通信にあるように,加害者・東京電力や事故責任者・国による木材・木質燃料の放射能汚染被害者に対する賠償・補償の踏み倒しです。

 

農林水産業の「農」「水」「林」と3つあるうち,この「林」に対する放射能汚染管理と放射線被曝防護・回避の取組は最悪・最低です。みなさまには,くれぐれもお気を付けなさるとともに,一刻も早く,福島第1原発事故による放射能汚染の被害者の方々の救済=賠償・補償・再建支援を実現することが重要だと思っております。もちろん,森林・林業・木材産業・木質燃料業界の方々も,真っ先に賠償・補償が受けられなければなりません。そのことが,何よりも,放射能に汚染した木材や木質燃料,あるいは林産物の流通を止めることができるのだと思います。

 


 <ご紹介するサイト>

(1)ママレボ通信 放射能と薪の話(1)――知らされざる薪の汚染

 http://momsrevo.blogspot.jp/2015/01/blog-post_31.html

 

(2)ママレボ通信 放射能と薪の話(2)――棄てることもできない

 http://momsrevo.blogspot.jp/2015/02/blog-post.html

 

(3)ママレボ通信 放射能と薪の話(3)――ADRに訴える

 http://momsrevo.blogspot.jp/2015/02/blog-post_28.html

 

(なお,このシリーズは,まだ継続中ですので,この後も続いていくようです。時折,このサイトをご覧になって続きをご確認ください:田中一郎)

 

(一部抜粋)

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◆公開されない「薪」と「原木」の放射能測定データ

 ごく最近の、薪はどのくらいの数値なのか、ウェブで薪の測定データを検索してみました。しかし、公開されている放射能測定データのなかに、「薪」や「原木」のものが見あたりません。福島県の林業推進課に問い合わせをすると、「測定はしているが、公表していない」といいます。「公表する予定もない」らしいのです。細かくしやすい食材などの放射能測定はできても、粉砕できない木材の放射能測定をすることは住民にとってむずかしいことです。せっかく測定しているにもかかわらず、なぜ公表していないのでしょうか。

 

◆現在も40ベクレル/kgを超える薪がある――開示請求した薪のデータから

 公表しない、というので、2014(平成26)年12月、薪と原木の測定値を開示請求しました。出てきたデータには、「規制値以上」という数値がいくつも並んでいました。最近の――2014(平成26)年11月のデータですら、40ベクレル/kgを大きく超える、8500ベクレル/kg3000ベクレル/kgという数値があるのです。

 

◆安心して使えるものが出荷されているのか――

 福島県庁に電話をし、現在、薪の出荷についてどういう規制がされているのか、あらためて聞いてみました。林業振興課によると、「林野庁から薪の安全確保の方針が出ているが、規制する法的根拠がない。『出荷しないで』という『お願い』をしているという状況。食品であれば、食品衛生法の規定があるが、薪についてはない」と話します。震災直後から現在まで、福島県の薪の測定検体数は約300。そもそも測定じたい義務ではなく、任意です

 

◆「薪を洗って使ったらどうですか?」

ある日、福島県に住む知人から「自宅の薪ストーブの灰の数値が1キログラムあたり1万ベクレルを超えた」という話を聞いて驚き、すぐに自宅の薪ストーブの近くで放射線量を測定してみたそうです。使いつづけていた薪ストーブの灰の近くは、16マイクロシーベルト/hありました。20116月のことです。

 

 Nさんは、16マイクロシーベルト/hという高い線量に驚き、郡山市の市役所に出向いて訴えました。自分たちは、室内で、無用な被ばくをしているのではないか。灰を処理するとき、危険ではないのか。薪ストーブを使用禁止にしなくてもいいのか――。Nさんの問いに対して、市の職員は「そんな話は聞いたことがありません」と、とりつく島もありませんでした。

 

 Nさんは、めげずに東京電力にも問い合わせの電話をします。すると、窓口の職員は「前例がないのでわからない」と説明したあとに、こう言ったそうです。「薪を洗って使ったらどうですか?」

 「さすがに絶句しました」と、Nさん。それらの薪は、今も使えないまま自宅敷地内に残しています。

 

◆少しずつゴミに混ぜて捨ててください・・・!?

Nさんの薪の測定結果は470ベクレル/㎏。使用してよいとされる基準値、40ベクレル/kg(以下)の、10倍以上です。Nさんはその測定結果をもとに、再度,市にかけあいました。きちんと数値を証明したのだから、片づけてほしいと訴えたのです。

 

 郡山市の職員は、測定値を見てふたつの選択肢を提示しました。ひとつは、「民間の業者を派遣する」ということ。もうひとつは、「少しずつゴミに混ぜて棄てる」ということ。前者は、お金がかかります。しかも、みずからお金を払って廃棄せよということです。後者は、焼却灰の放射性セシウム濃度が8000ベクレル/kgを超えると指定廃棄物として国が処分しなくてはならないので、薄めてしまいましょう、という発想です。Nさんは、あっけにとられたといいます。「そんなことを言われても、どちらも選べませんよね……」

 

◆誰のため、何のための「除染」なのだろう

 2014年の秋、Nさんのお宅に「除染」作業の順番が回ってきました。事故から3年以上たちましたが、これでも「比較的、空間線量の高い地域」として、早いほうなのだといいます。廃棄すらできない薪は、Nさんの敷地内に、まだありました。Nさんは、除染に来た業者に、「薪を何とかしたいのですが・・・」と相談しました。すると、「除染は、敷地や宅地の『地面』だけが対象であって、その上にあるものは対象ではないのでわかりません」という、驚くべき返事が返ってきました。

 

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「(3)ママレボ通信 放射能と薪の話(3)――ADRに訴える」は,そのままお読みください。東京電力の対応に対して,物を投げつけたくなるくらいに腹立たしく感じますが,くれぐれも冷静にお読みください。東京電力という会社の正体が,福島第1原発事故の前も後も,全く変化がないことが良くわかります。こんな会社は,今からでも遅くないので,解体すべきなのです。

 

 なお,この「薪の放射能汚染」の話は,(3)以降も続いていくようですので,引き続き,このサイトにご注目ください。 

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 <おまけ>

●ホーム - momsrevo ページ!(「ママレボ通信」関連書籍の購入申し込みサイト)

 http://momsrevo.jimdo.com

 

「ママレボ通信」は,サイト情報だけではありません。季刊(1年に4回)の定期的発行の冊子や出版物もありますので,上記サイトから申し込んで入手されてみてください。必読の情報が満載です。

 

 それから下記は,森林,木材,木質燃料などの放射能汚染と,それに対する国や行政の対応・対策の出鱈目を批判して書いた私の文章です。併せてご参考にしていただければ幸いです。何度でも申し上げますが,木質燃料が危ない! 木材も危ない! のです。木造住宅を購入される時に十分に気をつける,放射能汚染の東日本産の炭や薪やペレットは使わない,キノコ・山菜は日本のどこでも危険(原木や栽培土が汚染されたまま出回っています,検査もろくすっぽされておりません),その他木材・木質関連製品に注意,そして何よりも,汚染森林の中に入っての林業労働やキノコ作りはやめる,放射能汚染した木材を扱う労働・産業はやめるなどです。

 

 <関連サイト:いずれも少し前に書いたものです>

●木質燃料が危ない(森林と木材の放射能汚染) いちろうちゃんのブログ

http://tyobotyobosiminn.cocolog-nifty.com/blog/2013/07/post-844d.html

 

●偽りの「復興」は、もういい加減にしてくれ(1):汚染森林で林業をしたら被ばくする、林産物は汚染している いちろうちゃんのブログ

http://tyobotyobosiminn.cocolog-nifty.com/blog/2014/08/post-6577.html

 

●森林・木材の放射能汚染 :木材汚染の拡散を防ごうとしない国・東京電力、これは氷山の一角だ いちろうちゃんのブログ

http://tyobotyobosiminn.cocolog-nifty.com/blog/2014/05/post-3766.html

 

●木材が危ない!(続)(森林バイオマス発電他):森林や木材の汚染を軽視してはいけない いちろうちゃんのブログ

http://tyobotyobosiminn.cocolog-nifty.com/blog/2013/04/post-45b9.html

 

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草々

 

 

2015年3月18日 (水)

放射能モニタリングさえもまともにできない人間たちが原発をコントロールできるはずもない:原発敷地及び周辺地域の放射能モニタリング体制を再点検・監視しましょう

前略,田中一郎です。

(別添PDFファイルは添付できませんでした)

 

別添PDFファイルは、今般発売された新刊『福島第一原発事故7つの謎』(講談社現代新書)の一節です。NHKスペシャル『メルトダウン』取材班がまとめたこの本の第2章「ベント実施はなぜかくも遅れたのか?」の一角ですが、お伝えしたいのは「ベント」をめぐる諸問題ではなく、この第2章に出てくる原発敷地及び周辺地域の放射能汚染・放射線モニタリングのことです。下記に見られるように、原発・核燃料施設を稼働・運営している原子力ムラの連中は、その原発・核燃料施設敷地及びその周辺の放射能汚染状況でさえ、地震その他の緊急時・過酷事故時においては、まともに計測・記録ができる体制になっていません。

 

更に申し上げれば、原発・核燃料施設を地震が襲った際の震度、その他の地震の観測・記録や、原発・核燃料施設全体の外からの映像把握・記録さえも、ロクすっぽできていないのです。前者で申し上げれば、2007年の柏崎刈羽原発を襲った中越沖地震の際に、柏崎刈羽原発に備え付けられていた地震計の記録用紙が不足して、既に記録された地震波形の上に新たな波形記録が時間経過とともに上書きされて、わけがわからなくなったり、後者について言えば、福島第1原発事故の際には、原発施設全体を映像としてつかまえて記録するTVカメラや録画装置も取り付けられていませんでしたので、施設に爆発が起きても何が起きているのかが現地や東京の事故対策本部にはわからなかったり、爆発の様子も2,4号機については未だにわからないままであるなど、原発全体をとらえる映像モニターでさえ、まともにできていないのです(1,3号機の爆発も、たまたまあるTV局がカメラを設置して遠くから映像をとらえていたから残っているだけの話で、偶然と言ってもいい結果にすぎません。東京電力や原子力安全保安院が福島第1原発モニター用に用意したTVカメラではないのです)。

 

それでいて、原子力ムラの連中は、一方では、周辺立地に対する対策、あるいは原発・核燃料施設のモニターの拡充などと称して、SPEEDIやERSS(下記サイト参照)などの、数百億円もの費用のかかる巨大な危機対策対応システムを「開発」し、巨額の予算を投入しているのです。しかし、これらの大掛かりな危機管理システムや原発・放射能モニターも、福島第1原発事故の際には、意識的に止められたか、あるいは停電という当然に予想される事態に対応できずに停止してしまったか、いずれなのかははっきりしないまま、全くと言っていいほど機能しませんでした。まさに、原子力利権事業が、住民や国民のためではなく、彼ら原子力ムラの「食い扶ち」仕事として、バカバカしい形で行われていることが明らかになったわけです(何故、SPEEDIやERSSが福島第1原発事故時に機能しなかったのか、徹底した原因分析や責任の追及は行われておりません。ゆゆしきことです。「巧言令色鮮仁」そのものです)。

 

もちろん、こうしたことは、福島第1原発事故の原因究明や原発危機対応の適正化の一環として、まずもって原子力「寄生」委員会・「寄生」庁が真っ先に取り上げて対応しなければいけない仕事なのですが、ご承知の通り、彼らは福島第1原発事故を棚上げにしたまま、原発・核燃料施設再稼働に猪突猛進中です。

 

そして、そうした原発再稼働の動きの中で特に強調しておかなければならないことは、今後の原発・核燃料施設過酷事故時においては、住民への避難命令や被ばく回避対策などは、SPEEDIやERSSを使うのではなく、放射能汚染の実測値を使って原子力「寄生」委員会・「寄生」庁が判断するなどと言われています。これ自体が、全く福島第1原発事故の教訓を踏まえない出鱈目な話なのですが、さて、その「実測値を踏まえる」という場合に、原発・核燃料施設周辺地域に置かれた放射能モニタリング機器類や組織的なモニター体制はどうなっているのでしょうか? 

 

大型バッテリーや自家発電機などの独自電源を兼ね備え、記録装置も適切にセットされ、常時適正にモニター機器類を稼働させるための人的メンテナンス体制も整った形で、かつ、相当広範囲なエリアに(少なくとも80km圏内)、それこそきめ細かく放射能汚染の状況を観測できるだけの数のモニターが設置されているのでしょうか。また、そのモニターがキャッチした放射能汚染のデータは、どのようにして放射能計測の集約センターへデータ輸送されるのでしょうか? データ輸送のための回線は、地震や津波や火事などの災害に対して頑丈にできているのでしょうか。福島第1原発事故の際には、下記に見るように、停電その他の理由で、データ伝送そのものもストップしてしまっています。こんな状態で、はたして原発・核燃料施設の過酷事故に対応して、周辺地域の放射能汚染状況が適切かつタイムリーに捕捉され、それが住民対策のために使われうると断言できるのでしょうか。

 

私は、再びの(原発・核燃料施設を再稼働すれば必ず起きるであろう)原発・核燃料施設の過酷事故の際には、やはり福島第1原発事故時と同じように、原発・核燃料施設の敷地内やその周辺の放射能汚染の状況を正確・タイムリーに把握することができず、住民の避難や被ばく防護は後手後手に回って、住民はおそらく福島第1原発事故時以上に被曝させられるであろうと思っています。そしてその際の、あのホラ吹き・チョロ吉の田中俊一原子力「寄生」委員長がするであろう言い訳記者会見の発言内容まで想像することができます。よーするに、地域住民や広く日本国民の安全のことなど二の次にしか考えていない連中が、危険極まりない「大人のおもちゃ」である原発・核燃料施設にしがみつき、屁理屈を放ちながら、再びその利権拡大に邁進しようとしているということです。

 

当然のことですが、原発・核燃料施設敷地及び周辺の放射能モニタリングさえもまともにできない人間たちが、その原発・核燃料施設を制御=コントロールできるはずもないのです。全国各地の原発立地のみなさま、原発・核燃料施設敷地並びに周辺地域の放射能モニタリング体制を再点検・監視し、地域の問題としてクローズアップしていきましょう。

 

 <別添PDFファイル>

●原発周辺の放射能モニタリングもまともにできない人間たちが原発を鮮魚できるはずもない(NHK『福島第一原発事故7つの謎』:講談社現代新書より一部抜粋)

 

 <関連サイト>

(1)福島第一原発事故7つの謎-NHKスペシャル『メルトダウン』取材班/著 本・コミック : オンライン書店e-hon

http://www.e-hon.ne.jp/bec/SA/Detail?refShinCode=0100000000000033203896&Action_id=121&Sza_id=A0

 

(2)ERSS:緊急時対策支援システム - Wikipedia

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%B7%8A%E6%80%A5%E6%99%82%E5%AF%BE%E7%AD%96%E6%94%AF%E6%8F%B4%E3%82%B7%E3%82%B9%E3%83%86%E3%83%A0

 

(3)SPEEDI:緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム - Wikipedia

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%B7%8A%E6%80%A5%E6%99%82%E8%BF%85%E9%80%9F%E6%94%BE%E5%B0%84%E8%83%BD%E5%BD%B1%E9%9F%BF%E4%BA%88%E6%B8%AC%E3%83%8D%E3%83%83%E3%83%88%E3%83%AF%E3%83%BC%E3%82%AF%E3%82%B7%E3%82%B9%E3%83%86%E3%83%A0

 

(『福島第一原発事故7つの謎』(講談社現代新書)より一部抜粋) MP=モニタリング・ポスト

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 3月11日午後2時46分、東日本大震災が発生。福島県浜通り地方は震度6強の揺れに襲われたが、データの伝送記録システムは稼働し続け、測定データにも異常は見られなかった。ところが、午後3時34分を最後に、突然、大熊町熊川と富岡町仏浜のデータが途絶え、3時36分に浪江町請戸、3時38分には浪江町棚塩のデータも途絶えた。津波が次々とMPを襲ったのだ。その後、通信回線の途絶などにより、11日午後6時以降は津波の被害を免れたMPからのデータも原子力センターのMPを除いてリアルタイムに得られなくなってしまっていた。

 

 一方で、福島県は、地震に対して、事前に対策を取っていた。きっかけは、2007年7月に起きた新潟県中越沖地震だ。この地震で東京電力柏崎刈羽原子力発電所では火災が発生。地震による停電のために原発周辺のMPが機能せず、新潟県は必要な情報が得られないという事態に陥った。その教訓から、福島県では、各MPに停電に備えて自家発電機め設置を始めていたのだ。

 

 津波の被害を受けなかったMPは、原子力センターにデータを送信こそできなかったものの、発電機の燃料が失われるまでの問、自動で測定を続け、データを記録し続けていた。データが残されていたのは地震発生からおよそ3日間。情報が極めて限られている事故初期の状況を知る上で極めて貴重なデータだ。

 

(中略)福島県が午後3時のデータとして公表しているのは、午後2時から午後3時までの放射線量率の平均値であった。意外なことに、1号機の原子炉建屋が水素爆発する前から、福島第1原発の周辺には、大量の放射性物質が拡散していたのだ。

 

(中略)12日午後3時からの政府の記者会見では、原子力安全・保安院の担当者が次のように述べている。「外部被ばくによる影響は、南西の1キロの地点で、実効線震は0.019ミリシーベルト(と推測される)」 ところが、福島第1原発から5.6キロメートルも離れた上羽鳥で実際に記録されていた線量は1時間で1.6ミリシーベルト。試算結果よりも100倍以上も高かったのだ。

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(田中一郎コメント)

 上記の文章から、私は次の2つのことを読み取った。第一に、原発周辺で放射能をモニターすることになっているMPは地震で停電が発生すれば停止してしまう、各立地自治体が気を利かせて独自電源を用意しても、データの記録はせいぜいが数日間で、その後のメンテナンスもロクすっぽされない、データの送信もできなくなる、場所によっては津波をかぶって完璧に故障する。つまり、ちょっとした地震や津波が来れば、原発周辺では放射能はモニターできなくなるということだ。

 

 第二に、原子力安全保安院=原子力「寄生」庁など、原子力ムラが牛耳っている組織が発表する放射能汚染状況についての発表内容は(特に「シーベルト」単位で発表されるものは)、全く信用ができない。福島第1原発事故時の上記一事例では、5.6kmも離れたところで1.6mSv/時なのに、発表されるのは1km離れたところで0.019mSv/時だった、というものである。80倍以上も違うではないか。

 

 いずれにせよ、原発・核燃料施設の敷地及び周辺地域での放射能汚染計測体制は、本当に脆弱極まりない出鱈目状態のようです。

 

(上記関連サイト)(一部抜粋)緊急時対策支援システム - Wikipedia

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%B7%8A%E6%80%A5%E6%99%82%E5%AF%BE%E7%AD%96%E6%94%AF%E6%8F%B4%E3%82%B7%E3%82%B9%E3%83%86%E3%83%A0

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●概要

 緊急時対策支援システム(ERSS) 緊急事態において、国が原子力災害応急対策を実施するに当たり、必要となる事故進展予測を支援するために、電気事業者 から送られてくる情報に基づき、事故の状態を監視し、専門的な知識データベースに基づいて事故の 状態を判断し、その後の事故進展をコンピュータにより解析・予測するシステム。チェルノブイリ原発事故などを受け、原子力事故が起きた際の国の対応を迅速化する目的で導入された。全原発55基の原子炉の圧力や周辺の放射線量などの状況を一元的に把握し、事故状況を予測することなどができる。これまでに国が155億円以上を投じ開発・運用してきた。

 

●開発・運営の主体

20039月まで()原子力発電技術機構が実施してきたERSSの開発、運用は200310月 以降独立行政法人原子力安全基盤機構が引き継ぐ。201431日、原子力安全基盤機構が原子力規制庁と統合、原子力規制委員会が引き継ぐ。

 

●福島第一原子力発電所事故における使用[編集]

総理大臣官邸危機管理センターには23号機の緊急時対策支援システム(ERSS)の予測が送付されている。地震により外部電源を喪失した[2011]311日午後247分ごろにデータの送信が停止。(外部リンク参照) ERSSを所管した経済産業省原子力安全・保安院は「非常用電源が接続されていればデータが受け取れた」と認めており、本震から余震で国の通信網がダウンする311日午後443分ごろまでの約2時間、本震直後のデータを生かすことができた可能性が高い。

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草々

 

2015年3月13日 (金)

(報告)原発汚染水問題に関する緊急政府交渉:「世界最高水準の原子力規制」という「世界最大水準の嘘八百」の下、「世界最低水準の原子力規制当局」のありようがよく見えた

前略,田中一郎です。



昨日(3/12)、参議院議員会館において、複数の市民団体が主催する「原発汚染水問題に関する緊急政府交渉」&院内集会が開催されました。下記は、当日の配布資料、及び関連サイトです。「世界最高水準の原子力規制」という「世界最大水準の嘘八百」の下、「世界最低水準の原子力規制当局」(原子力「寄生」委員会・「寄生」庁・経済産業省)のありようがよく見えた政府交渉でした。以下、簡単にご報告いたします。(詳細なものは、追って主催者団体のHPに掲載されると思われます)

 

 <別添PDFファイル>

(1)原発汚染水問題に関する緊急政府交渉:当日配布資料(「原子力規制を監視する市民の会」・美浜の会他:2015312日)

「osensui_seifukousyou_rejime.pdf」をダウンロード

(2)福島第一原子力発電所の排水路データ公表の遅れについてのお詫び(東京電力 2015.3.12

「toudenn_osensuisiryou.pdf」をダウンロード

(3)原発事故被害者の住宅・健康・保養支援の立法化と完全賠償の実現を求める請願署名(20153月)

「fukusimagenpatujiko_higaisyakyuusai_syomei.pdf」をダウンロード

(4)貯水タンクの欠陥工事(川井満さん(会場参加者)提供 2015.3.12

「osensuitanku_tenuki.pdf」をダウンロード

 

 <関連サイト>

 

(1)(当日録画)▶ 20150312 UPLAN【緊急政府交渉・事前学習集会】汚染水問題 - YouTube

 https://www.youtube.com/watch?v=g1kYSl-KuBI

 

(2)(当日録画)▶ 20150312 UPLAN【後半・わけのわからん緊急政府交渉】汚染水問題 - YouTube
 https://ww.youtube.com/watch?v=Sh9qu6PS2EY

 

(2)美浜の会HP

 http://www.jca.apc.org/mihama/

(上から2番目:ここに政府関係省庁への事前質問書などがあります)

 

 

(4)3-12【緊急政府交渉】汚染水問題@参議院議員会館…ぜひご参加を! - 原子力規制を監視する市民の会

 http://www.kiseikanshishimin.net/2015/03/05/osensui/

 

 

(5)<政府交渉報告>汚染水放出しないで!対策は「ざる」でもいいの?再稼働もやめて! 原子力規制を監視する市民の会

 http://kiseikanshi.main.jp/2015/03/13/kosyohokoku/

 

 

(6)やいちゃんの毎日 規制委員会がアクセルを踏む原発政策!

 http://blogyai.blog48.fc2.com/blog-entry-1999.html

 



 <簡単な田中一郎コメント>

 当日の仔細は上記(1)の録画をご覧ください。また、詳細な報告は、追って主催者団体のHPに掲載されると思われますので、そちらをご覧ください(上記(2)(3))。全般的に見て、交渉に出てきた原子力「寄生」庁の役人たちは、どうしようもないほどのお粗末な発言=回答を繰り返し、おそらくは自分でも「こりゃ、ひどいなあ」と思いつつ、田中俊一原子力「寄生」委員長という「ホラ吹き・チョロ吉」(嘘八百を垂れ流しながら泉田裕彦新潟県知事や福島県民・原発立地周辺住民らからチョロチョロと逃げ回っている)のために、一生懸命、その出鱈目をエクスキューズしている様子が痛ましいほどでした。

 

他方、東京電力から来ていた担当者は、一応、真摯に回答していたように見受けられましたが、会社上層部・幹部の福島第1原発事故に臨む姿勢が出鱈目・なってないので、この担当者ではどうにもならない様子がうかがえました。ともかく、この汚染水問題は東京電力自身が引き起こしている問題であり(事故直後に早期に適切に対応していれば、引き起こす必然性はなかった)、それについての説明を、こうした何の権限も持たないメッセンジャーのような担当者にさせているところに、その根本姿勢の歪みがあると言わざるを得ません(例えば、「排水路からの放射能汚染水海洋排出問題が片付くまでは、タンクの汚染水を薄めて海に放出することはしないと約束できますか、との問いに対して、東京電力担当者は「答えられません」と回答した=つまり、やるかもしれない、ということです)。やはり東京電力もまた、経済産業省・資源エネルギー庁とともに「原子力・核アンシャンレジーム」の悪質組織の一つとして解体されるべきです(東京電力よ、たまには権限を持った役員クラスが交渉に出てこいよ!!)。

 

1.経済産業省・資源エネルギー庁:交渉のインターネット放送を拒否するこのサイテーの役所は、約20年前の大蔵省と同様に「解体」しなければいけない(この役所が解体されるかどうかが、近い将来できるであろう脱原発政権の真価を評価する1つのメルクマールとなる)。

 

 汚染水問題に関する政府交渉の場を設けるべく、関係省庁と折衝をして下さった社民党・福島みずほ議員にさんざん説得された経済産業省・資源エネルギー庁は、インターネット放送をしない、という約束を取り付けて、やっとのことで交渉の場に登場した。福島議員によれば、最初は「ネット放送はいやや」「参加者の数を10人くらいにしてくれ」などと駄々をこねていたが、やがて前言を少し変えて「交渉の場に出るのが管理職ならいいのだけれど、今日は日程の都合でヒラ職員が出るので、ネット放送はご容赦願いたい」などと言い訳していたそうである。

 

 さて、すったもんだして現れたこの経済産業省・資源エネルギー庁の若い官僚だが、ほとんど何もしゃべることはなく黙っていたが、交渉の途中で「それは私が説明します」などと言って割って入り、何を言うかと思いきや、「福島第1原発沖の海水の放射性セシウムの濃度は高くない」ので「安倍晋三首相が言うように、汚染水はアンダー・コントロールです」などと発言した。これには唖然とさせられた。これが経済産業省・資源エネルギー庁の「ご見解」なのか。ネット放送されたくないのがよく理解できた。サイテーだ。(太平洋の海水が、目に見えるようになるまで汚染されたらどうなるのか、わからんのかね? こんなことでだまされるアホウはいませんよ。ウソ・ハッタリをつくにしても、もっと上手なつき方があるでしょうに)

 

2.(海に放射能を垂れ流し続けている)排水路問題

 汚染水発生の原因を「2号機建屋大物搬入口屋上」の汚染に特定することはしない、との東京電力の言質は得たものの、原子力「寄生」庁の説明は次の通りでした。①雨水は原子炉等規制法の対象外で仮に放射能で汚染していても原則は管理しない、②但し、排水路等に入った汚染雨水などは管理しようと思えばできるので、それについては管理せよと約1年前に指示した、③しかし、指示した後は、東京電力がどう対応しているか(きちんと管理しているか)は確認もせず放置しておいた(何が悪いんだ、東京電力の問題だ、規制当局はカンケーネー、箸の上げおろしまで面倒見てられるか(田中俊一)との主旨:口先ではいろいろエクスキューズしているが)、④指示した後、きちんと管理できるまで時間がかかるという面もあるので、約1年間は経過期間にして海に放射能が垂れ流しになっても致し方がなく、今年3月にようやくきちんと管理させる体制とすることにした、ETC。(冗談じゃねーよ、まったく)

 

 原子力「寄生」庁の役人たちの発言は「居直り」そのものというべきでしょう。規制すべき組織が「何にも専務」をして、東京電力に汚染水管理を押し付けたままにしているからこうなったのです。

 

3.タンク汚染水の海洋放出問題

 原子力「寄生」委員会・「寄生」庁の考え方・方針は、「ホラ吹き・チョロ吉」の田中俊一原子力「寄生」委員長が、何度も何度も記者会見等で発言しているように、タンク貯留の放射能汚染水は「薄めて海に捨てればいい」というもの。それでは福島県民や多くの漁業者、それに多くの有権者・国民が納得しない、と何度言っても馬耳東風で態度を改めようとしない(原子力ムラの人間たちは、つまり「馬」(並)だということです)。今回の政府交渉でも、原子力「寄生」庁の役人は、会場からの激しい抗議をもろともせず、「タンクに高濃度の汚染水を入れておく方が危険だ、排出基準以下に薄めて海に捨てればいい」を繰り返していた。東京電力や経済産業省・資源エネルギー庁の方が、逆にタンク汚染水の海への廃棄については慎重な態度を取っており、どちらが規制する側で、どちらが規制される側なのか、わけがわからなくなっている。原子力「寄生」委員会・「寄生」庁は解体すべし(設置法を廃止する法律を国会が議決すればいい)ということは、この1点でも見て取れる。交渉主催者側の市民団体からは、濃度規制ではなく(排出される放射能の)総量規制を導入せよ・早く検討せよ、との申し入れを厳重に原子力「寄生」庁の役人たちに伝えていた。

 

それと、安倍晋三・自民党政権の閣僚や自民党政治家たちは、口を開けば「政府が前面に出て汚染水問題の解決にあたる」などと、テキトーなことを言うておりますが、出てきたためしはないし、責任を取ったためしもなく、原子力「寄生」委員会・「寄生」庁や東京電力の周りをブンブン言いながら飛び回る「ハエ」のような存在でしかありません。みなさま、こんな連中は、選挙で全員落選させましょうね。

 

それともう一つ、東京電力が言っている「放射性ストロンチウム(だけを)処理した」とされる汚染水ですが、処理前の放射性ストロンチウムの汚染濃度は「4×10の6乗ベクレル/リットル」で、処理後になると「1.7×10の6乗ベクレル/リットル」だそうです。もちろん放射性ストロンチウム以外の放射性物質は、有毒トリチウムを含めてたっぷり入っていますし、いわゆるALPSによる処理済み水にしたところで、有毒トリチウムがたんまり含まれています(それどころか、どうもALPSでは、複数の種類の放射性核種は除去できないようです)。こんなものは「処理済み」とは言わない(「処理途中」と表現せよ)。

●福島第一原子力発電所における高濃度の放射性物質を含むたまり水の貯蔵及び処理の状況について(第191報)|東京電力)

http://www.tepco.co.jp/cc/press/2015/1248573_6818.html

http://www.tepco.co.jp/cc/press/2015/1248573_6818.html

 

 

(添付資料に汚染水の概要が書かれていますが、複雑怪奇で、パッと見ただけでは全然理解できません。かようなことになっていること自体が、危機管理・汚染水対策が失敗を続けていることの1つの明々白々の証拠ではないでしょうか。東京電力には、もっとわかりやすい資料をつくっていただきたいです)

 

4.高浜原発再稼働問題と汚染水対策

 高浜原発3,4号炉の再稼働がもくろまれ、今現在、工事計画等の認可手続きが進んでいるが、福島第1原発事故の大きな教訓の一つというべき汚染水対策が全然手についていない。原発過酷事故を起こし炉心溶融が起きると、一方では、炉心を洗った汚染水が格納容器から漏れ出して来ることに加え、今般、新たに追加された「砲水」によって格納容器に外から「砲水」された水が敷地に落ちて、それが汚染水となって海に流れ出ていくという、新たな汚染水源が生まれている(ちなみに、この「砲水」の目的は、過酷事故時の放射能の拡散防止だそうです。こんなもので放射能の拡散が防止できるとは思えませんがね)。この2つの汚染水に対して高浜原発はどういう「汚染水対策」をとっているのかを市民団体側が追及した。根拠は下記の「設置許可基準規則55条」である。

 

 原子力「寄生」委員会・「寄生」庁が定めている「設置許可基準規則55条」(工場等外への放射性物質の拡散を抑制するための設備)には次のように書かれている。「第五十五条 発電用原子炉施設には、炉心の著しい損傷及び原子炉格納容器又は貯蔵槽内燃料体等の著しい損傷に至った場合において、工場等外への放射件物質の拡散を抑制するために必要な設備を設けなければならない。」

 

 これに対して原子力「寄生」庁の役人は「シルトフェンス」の設置でOKとしたと回答。市民団体側から、シルトフェンスは網の目が大きなザルのようなもの、どの程度(何割程度)、汚染水の拡散が防げるのか、実証的な数字を示せ、と迫ったが、原子力「寄生」庁は「そんなものはない、シルトフェンスが設置されるから、必要な設備は設けられている」と居直った。再び唖然である。会場からは、実証的な根拠のないシルトフェンス設置でいいというのなら、私たちの家庭で使っているザルでも何でもいいということか、とヤジが飛んだ。家庭用のザルもシルトフェンスも、汚染水を止められないことには変わりはない。

 

●<福島第一原発ルポ>新型タンクや高性能ALPS……汚染水対策の現状は THE PAGE(ザ・ページ)

http://thepage.jp/detail/20141105-00000008-wordleaf?pattern=1&utm_expid=90592221-29.uzRA2AXrScmfXlXFfeP6qg.1&utm_referrer=http%3A%2F%2Fsearch.yahoo.co.jp%2Fsearch%3B_ylt%3DA2RhPBQZZQJVCm4A5oeh_Op7%3Fp%3D%25E3%2582%25A2%25E3%2583%25AB%25E3%2583%2597%25E3%2582%25B9%25E3%2580%2580%25E6%25B1%259A%25E6%259F%2593%25E6%25B0%25B4%26search.x%3D1%26fr%3Dtop_ga1_sa%26tid%3Dtop_ga1_sa%26ei%3DUTF-8%26aq%3D8%26oq%3D%26afs%3D

 

 <私から発言したこと>

 当日、会場から発言できる時間があったので、下記を発言しました。

 

(1)福島第1原発の専用港の防潮堤はテトラポットを積み上げたようなラフなもので、その港湾内に汚染水が排出されても、まもなく外洋に出て行ってしまう。港湾の内と外では、常に海水は入れ替わっている。港湾内に排出すれば比較的安全だ、などとは思わない方がいい。逆に、港湾を取り囲む防潮堤を、港湾内汚染水を外洋に出ていかないような頑丈なものに造りかえさせる必要がある。

 

(2)地下水は福島第1原発敷地の地下深くを流れ、専用港の真下の地下を通って海底に出て、沖合で湧水していると思われる。今建設中の「遮水壁」は、この放射能汚染地下水の海底での湧水をどれだけ防げるものなのか。地下深くの、地下水に混じった汚染水の海へ出ていく流れを止められるのか。

 

(3)東京電力は、福島第1原発事故で環境にまき散らした放射能が降雨によって汚染水になっても、降雨は自分たちの管理するものではない、などという、信じがたいような「降下放射能並びに降雨による汚染水は無主物である」との見解を取り続け、原子力「寄生」委員会・「寄生」庁は、それを追認するような形で汚染水管理の指示通達を出している様子がうかがえる。許されない態度だ。

 

(4)ALPSはトリチウムを除く62種類の放射性物質を除去すると言われているが、実はALPSでは除去できない放射性核種がトリチウム以外に数種類あるようだ(東京新聞記事より)。それがいったい何の核種で、どれくらいの量なのかを知りたい。また、ALPSが放射性物質を除去するというのは、どういう原理を利用したものか、その仕組みが知りたい。

 

(5)高浜原発3,4号炉の運転差し止め仮処分の判決が、今月下旬にありそうだというメールが井戸謙一弁護士より来ている。福井地裁の樋口裁判長が、高浜の仮処分判決は自分が判決を下すとおっしゃっていて、今般結審となった。樋口裁判長は、この判決を出した後、転勤となる。他方、大飯原発3,4号炉の方は裁判継続で、次回の公判は5月20日となった。高浜原発仮処分判決の日程は、決まり次第ご連絡したい。

 

●『大飯原発の再稼働認めず!』樋口英明裁判長の判決要旨の全文です。ぜひ読んでください! - ウィンザー通信

 http://blog.goo.ne.jp/mayumilehr/e/c23cee97b8aefb95b510b0505f9c6072

 

 <会場参加者(川井満さん)の重要発言>

 汚染水を貯めてあるタンクが手抜き工事で危険である旨の発言があった(別添PDFファイル)。私も同感である。このたくさんのタンク群は、基礎工事がいい加減なまま、手抜き工事で安上がりにつくられているものと思われ、直下型地震をはじめ、大きな地震や津波が来ると、ほぼ間違いなく二次災害を引き起こすものと考えられる。私は、再び津波に襲われた福島第1原発から、高濃度汚染水の入れられたタンクが、次々と、どんぶらこ、どんぶらこ、と海に流れ出ていき、やがてその汚染水が全部海に流出して「一巻の終わり」となるような気がしてならない。

 

 ひょっとすると、原子力「寄生」委員会・「寄生」庁や安倍晋三・自民党政権は、そうなってくれることを密かに祈願しているのかもしれない。太平洋に汚染水が流れ出れば充分に薄まるだろうから、彼らの思惑通りということだ。しかし、たとえば放射能は生物体内で濃縮されるということを忘れてはいけないし、そもそも放射能は、薄めようが、どうしようが、消えてなくなることは絶対にない。物理的な法則に従って、気の遠くなるような時間をかけて減衰していくだけである、ということも常に念頭に置いておかなければいけない。

 

(不愉快極まる長時間の政府交渉でした:「世界最高水準の原子力規制」という「世界最大水準の嘘八百」の下、「世界最低水準の原子力規制当局」(原子力「寄生」委員会・「寄生」庁・経済産業省)のありようがよく見えた政府交渉でした)

草々

 

2015年2月12日 (木)

飲食物の放射能汚染と新基準値の問題点(生井兵治先生講演資料:元筑波大学教授)他

前略,田中一郎です。

(別添PDFファイルは一部添付できませんでした)

 

別添PDFファイルは,2015年2月7日()の 午後1時30分~ 4時,文京区アカデミー音羽1階において開催されました生井兵治先生(元筑波大学教授)の講演の際のレジメです。ご参考までにお送り申しあげます。

 

 <別添PDFファイル>

● 飲食物の放射能汚染と新基準値の問題点(日本科学者会議2015 2 7)大幅改良縮減完成版

「namai_sensei_1.pdf」をダウンロード
「namai_sensei_2.pdf」をダウンロード
「namai_sensei_3.pdf」をダウンロード
「namai_sensei_4.pdf」をダウンロード
「namai_sensei_5.pdf」をダウンロード
「namai_sensei_6.pdf」をダウンロード

 

(生井兵治先生からのコメント)

内容を講演題目に矮小化せず、関係する足回りのことを盛りだくさん組込みましたので、PDFファイルをご覧頂くだけで私の意図するところが正しく伝わるか、いささか不安です。

 

(田中一郎コメント)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

申し上げるまでもありませんが,福島第1原発事故に伴う飲食品の放射能汚染問題は,まだ解決をしておりません。半減期の短い放射性ヨウ素131や放射性セシウム134の汚染は低減してきておりますが,それ以外の半減期の長い放射性物質については,依然として不安なままの状態が放置されています。そもそも,厚生労働省が20124月から適用している「新規制値」(一般食品で100ベクレル/kg他)には,安全である実証的な証拠も,規制値に使用するだけの科学的な根拠も,他の放射線防護の関連法令との整合性も,何もありません。放射線被曝に感受性の高い子どもや妊婦に対する配慮さえ不十分なままの,犯罪的と言えるほど,危なっかしいものにすぎないのです。(だからこそ,米国や韓国をはじめ,世界の多くの国々が日本産の飲食品の輸入に対して厳しい規制を掛け続けています:下記サイトを参照してください)

 

おまけに,飲食品の検査体制が貧弱なまま,わずかばかりの一定の生鮮品の放射性セシウムだけを検査して,安全だ,安全だ,と愚か極まる「安全安心キャンペーン」を展開しているにすぎません。特に,毎日のように福島第1原発から海に汚染水が垂れ流されている東日本の太平洋側海域で獲れる魚介類については,放射性セシウム以外の様々な放射性物質=たとえば放射性ストロンチウムやトリチウムや放射性銀などの汚染への懸念が高まっており,とてもではありませんが,飲食に供することなどできそうもありません。安全とは言えないようなものを,安全だ,安全だと,嘘八百をいいつのって,一般消費者・国民に食べさせ,それによって福島第1原発事故を引き起こした加害者・東京電力や事故責任者・国の責任と賠償・補償を軽減したいがための,ためにする方便でしかないのです。

 

みなさま,放射能で汚染された危険性のある食品は,きっぱりと購入や消費を拒否いたしましょう。それが福島県をはじめ,被害を受けた地域の抜本的な救済につながり,かつ放射能汚染と被ばくの拡大を食い止める最も適切な手段です。汚染されたものを,福島県やその他の被害都県の方々のためにと思って買って食べても,そんなことで被害者は救済などされることはありません。むしろ逆で,この飲食の放射能汚染が農林水産業や食品産業にもたらす被害と諸問題の解決を長引かせ,責任の所在をあいまい化してしまうことで,問題解決を困難にしてしまうのです。放射能汚染による被害と損害は,全て加害者・東京電力や事故責任者・国が負担し,被害者に迷惑をかけることは許されないのです。汚染物は,すべて加害者・東京電力や事故責任者・国が責任を持って,有償で引き取ればいいですし,そもそも放射能汚染地域では,被害者に対する万全の賠償・補償と,希望者には避難・疎開・移住を行ったうえで,全産業の活動を停止すべきです。責任をどこかへ押しやってしまうような,一億総ざんげ,ならぬ「一億総被ばく」方式による福島第1原発事故の後始末を,断固として拒否いたしましょう。

 

放射能汚染物を買ったり食べたりするのはやめましょう。

「安全・安心キャンペーン」は福島第1原発事故の責任をあいまいにし,被害者への賠償・補償負担を軽減するための詐欺的キャンペーンです。

とりわけ妊婦や子どもたちに放射能汚染物を食べさせることは危険です。

学校給食は,いわゆるゼロベクレル以外は拒否いたしましょう

外食や加工食品はノーチェックですから要注意です。信頼のおける店・商品以外は避けて通りましょう。

残留放射能の検査体制を抜本的に拡充させましょう。

そもそも福島第1原発事故で環境に放出された放射性物質の種類とその特性,推定される放出量などを公表させましょう。

飲食品の周辺物の放射能汚染にも要注意(食器,炭・薪とその灰,花木,タバコ,つまや添え物,エサ・ペットフード,栽培土,肥料,線香など)

国産物が不安だからと輸入食品に走ることは,別の意味で危険です(遺伝子組換え,食品添加物,衛生上の問題,残留有害物質他)。

安全で安心な食べものの確保に努力いたしましょう。

食品表示を適正化させ,それを担保するための実効性のある仕組みをつくらせましょう。

そのためにも,もう原発の再稼働などは絶対にご免こうむります。

 

●(別添PDFファイル)茨城全域のヒラメ 制限解除,出荷可能(水産経済 2015.2.9

http://www.suikei.co.jp/%E8%8C%A8%E5%9F%8E%E7%9C%8C%E5%85%A8%E5%9F%9F%E3%81%A7%E3%83%92%E3%83%A9%E3%83%A1%E5%87%BA%E8%8D%B7%E5%88%B6%E9%99%90%E3%81%8C%E8%A7%A3%E9%99%A4%E3%80%81%E5%87%BA%E8%8D%B7%E3%81%8C%E5%8F%AF%E8%83%BD/

 

(これでヒラメは当分の間,食べないことを決めました。この人達,放射性ストロンチウムについては,どう考えているのでしょう? また,水産物流通は,産地を含む食品表示偽装のデパートのようなところですから,出荷先がよほど確かなところでなければ,食品表示は信用できません。そもそも,水産庁や消費者庁などは,水産物を含む食品の表示偽装を取り締まろう,根絶しよう,という姿勢はありません。彼らは,消費者のためではなく食品産業のために存在しています:田中一郎)

 

(関連サイト1)農林水産省-東京電力福島第一原子力発電所事故に伴う各国・地域の輸入規制強化への対応

 http://www.maff.go.jp/j/export/e_info/hukushima_kakukokukensa.html

 

●「諸外国・地域の規制措置(平成2719日現在)(PDF259KB)」

 http://www.maff.go.jp/j/export/e_info/pdf/150109_kakkoku_kisei.pdf

 

(関連サイト)農林水産省-東日本大震災に関する情報

 http://www.maff.go.jp/j/kanbo/joho/saigai/index.html

 

(関連サイト)報道発表資料|厚生労働省

 http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/

 

(ここに週1回程度の頻度で飲食物の残留放射能検査結果が掲載されます。少し前は毎日発表されていましたが,昨今は「手抜き」されて,公表頻度がおとされてしまっています。検査の対象品目も限られたものに絞られています。安易・軽率極まりないと言っていいでしょう。下記は直近のものです:田中一郎)

 

●食品中の放射性物質の検査結果について(第916報) |報道発表資料|厚生労働省

 http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000073714.html

草々

 

2014年12月24日 (水)

政府の原子力災害現地対策本部による南相馬市の「特定避難勧奨地点」解除に抗議します=損害賠償打ち切りと被害者住民への被ばくの押し付けを許すな

前略,田中一郎です。

(別添PDFファイルは添付できませんでした)

 

下記の新聞報道で伝えられていますように、このほど政府の原子力災害現地対策本部は、南相馬市の「特定避難勧奨地点」の解除を決めました。しかし、それらの地帯は、今もなお依然として高い放射能汚染と空間線量の状態が続いており、また政府・自治体によってなされた除染も不十分・かついい加減で、住民が帰還して生活するには危険極まりない状態になっています。そもそも解除の前提となる汚染状況調査も出鱈目極まりないやり方で実施され、関係する住民の強い抗議にもかかわらず、その出鱈目な対応を改めようとする気配はありません。理不尽かつ不誠実そのものです。

 

こうしたことの背景には、福島第1原発事故に伴う損害賠償の打ち切り(東電負担や財政負担の軽減)と被害者住民への被ばくの押し付けを前提に、福島の「復興」を企業・団体・組織・資本優先、土建事業・利権事業優先のものとし、最も肝心の(被害者の方々一人一人の)「人間の復興」を棚上げにして「福島県の復興」を演出するものに他なりません。まさに偽りの、「虚飾」としての「復興」です。(そして、先般の総選挙で小選挙区制度の「トリック」を悪用して政権を維持した安倍晋三・自民党政権が、いよいよ原発震災被害者無視、有権者・国民・市民無視の「暴走政治」の第2幕をやり始めたと見ておいていいでしょう)

 

(南相馬市の「特定避難勧奨地点」の現場実態は、今回の政府がやることとは逆のことをすべきであることを示しています。つまり、放射能汚染状況の実態把握をもっと綿密に正確に行い、「特定避難勧奨地点」という「スポット地点」の指定ではなく、地域一帯をまとめて「避難区域」に指定し、避難させられる住民の方々には万全な形で賠償・補償・生活再建支援を実施すべきなのです。そして、それが解除される場合には、空間線量が全域にわたって1ミリシーベルトを大きく下回るなど、少なくとも健康上の懸念が完全に払しょくされてからとされなければなりません。それだけ、この「特定避難勧奨地点」とその周辺地域は、むごいまでに放射能に汚染されてしまっているということです。これを隠したり、ごまかしたり、もみ消したりすることは許されません)

 

大半の住民の反対を押し切って、今回の南相馬市の「特定避難勧奨地点」解除を強引に強行する政府=原子力災害現地対策本部や、その「下請け組織」のごとく追従する福島県庁、あるいは南相馬市当局の姿勢は、被害者住民の命と健康、そして生活や人生を切り捨てていくという、許すことのできない重大な人権侵害行為=国家犯罪であり、未必の故意の障害・殺人未遂行為であり、また道徳的・倫理的にも看過できない暴力行為という他ありません。

 

いったい何のための、誰のための「復興」なのでしょうか? 同時代に生きる私たちは、かようなことを断固として許すべきではありません。皆様のご協力とご支援を強くお願い申し上げる次第です。(なお、別添PDFファイルおよび下記には、関連する直近の新聞報道を添付しておきます)

関連サイト)女性自身|最新号|雑誌|光文社

 http://www.kobunsha.com/shelf/magazine/current?seriesid=101001


上記には

[南相馬市“怒り”の現地ルポ]自民圧勝で…避難指定解除をなぜ急ぐ!

「安倍総理、ここに住めと言うなら被爆者手帳を出してくれ!」

と題が載ってます。

 

 <別添PDFファイル>

(1)南相馬の避難勧奨解除 政府、最後の142地点、28日に(東京 2014.12.22) 

http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2014122202000122.html

 

(2)南相馬の避難勧奨地点 152世帯 28日解除(福島民報 2014.12.22

 http://www.minpo.jp/news/detail/2014122219970

 

(3)1巡目検査「甲状腺異常なし」、福島の子4人 がん疑い(東京 2014.12.24):下記URLのうち、上の2つは見ておいていただくといいです。

 http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2014122301001939.html

 http://saigaijyouhou.com/blog-entry-4925.html

 http://yuzawagenpatu.blogspot.jp/2014/12/blog-post_86.html

 http://www.nikkei.com/article/DGXLZO81242910U4A221C1000000/

 

(田中一郎コメント)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 これまでも何度も申し上げておりますが、こども甲状腺がんに関して、下記に再度整理して列記しておきます。

 

●子供のがんは大人のがんとは違い、成長・拡大が速く、転移や浸潤もひどいことが多いので、放置しておくと致命的になる危険性が高い。このことは子ども甲状腺がんについても同様に考えておいた方がいいでしょう(少なくとも今のところは)。

 

●福島第1原発事故による環境放出放射能の影響は否定できないどころか、現段階では、その可能性は高いとみておいた方がいい。また、甲状腺がんの原因となる放射性物質は、放射性ヨウ素131だけではなく、放射性セシウム(134、137、及び135)も甲状腺に集まってくる傾向が強いため、今後の放射能汚染地域では大きな危険要因となりうる。特に放射性セシウムの呼吸被ばくに対しては万全の警戒が必要である。また、量的には放射性ヨウ素131(半減期8日)ほどではないが、放射性ヨウ素129(半減期1570万年)もかなりの量で環境放出されており、放射能汚染地域に永住している場合には、それによる被ばくも無視できない。いずれにせよ、福島第1原発事故による放射能汚染の状況も、放射線被曝の度合いも、これまできちんと測定・検査されたことは一度たりともないという異常事態が続いていることを忘れてはならない。(それどころか、環境省の(似非)専門家会議などは、今ある貧弱な放射線被曝検査体制でさえ、つぶそう・縮小しようと画策している状態である)

 

*ヨウ素-129(129I) 原子力資料情報室(CNIC

 http://www.cnic.jp/knowledge/2595

 

3800万ベクレル- kgの放射性ヨウ素129は葉野菜、福島の大地から59キロで発見 - 原発問題

 http://blog.goo.ne.jp/jpnx05/e/384f93ec78bb9b7ded55446c1341d550

 

*環境省_放射線健康管理 東京電力福島第一原子力発電所事故に伴う住民の健康管理のあり方に関する専門家会議

 http://www.env.go.jp/chemi/rhm/conf/conf01.html

 

●福島県の18歳以上の方々や、福島県以外の放射能汚染地域に居住し続ける方々(特に妊婦さんや子供たち)の放射線被曝による甲状腺がん・健康被害が非常に懸念される。放射能汚染に「県境」はない。従って、福島県以外でも、ただちに検査体制を構築し、行政主導で健康管理や被ばく医療の体制を創る必要あり。

 

●チェルノブイリ原発事故後においては、4年経過後からこども甲状腺がんが増大したとされているが、それは事故直後の4年間は甲状腺検査のための機器が旧ソ連諸国にはほとんどなかったことが原因である可能性が高く、こども甲状腺がんは事故直後の早い段階から「多発」していた可能性が高い。

 

●原子力ムラ・放射線ムラや、その代理店政府・代理店自治体である福島県庁らが、国際原子力マフィア(「国連科学委員会(UNSCEAR)」や国際原子力機関(IAEA)、国際放射線防護委員会(ICRP)やWHOなど)らの「国際的権威」を借りながらPRしている「初期被ばく量は大した量ではない」には全く科学的実証的根拠が乏しい。そもそも初期被ばく量の測定検査を意図的にサボタージュないし妨害していたのが彼等達であって、「わからなくなってしまった」ことをいいことに、屁理屈をこねて「初期被ばく量は大したことはない」と虚偽宣伝しているに近い。まさに「仕組まれた福島第1原発事故や、それによる放射能汚染・被ばくの矮小化・歪曲行為」そのものです。

 

(4)東電が音頭 福島産品「応援」 原発企業、印象アップが目的?(東京 2014.12.24

 こちらも、これまで何度も申しあげてきたところですが、いわゆる食べ物に関する「安全安心キャンペーン」には、何の根拠もない=流通するほとんど全部の飲食品が未検査のままであること(例外は福島産米の放射性セシウム検査だけ)こと、また、日本の食品流通は「食品表示偽装」「産地偽装」が横行し、これに対して政府や自治体などの行政がきちんとした対応を取らず、罰則もほとんどないに等しいため、いつ何時、放射能汚染物を食べさせられるかわからない状態が続いています。食べ物の放射能汚染問題は終わっていないのです(アメリカをはじめ世界の多くの国々が、今でも依然として日本産の飲食品を厳しい目で見ていて、厳しい輸入規制をかけています)。

 

 従って、「食べて応援・買って支援」などの軽率な宣伝には乗せられない方がいいと思います。また、この「食べて応援・買って支援」キャンペーンには、その背景に、、①加害者・東京電力や事故責任者・国の責任をあいまいにする、②福島第1原発事故に伴う加害者・事故責任者の賠償・補償負担を軽減する(消費者に転嫁する)、③偽りの「震災復興」を演出し、放射線被曝(恒常的な低線量被曝(外部被曝・内部被曝))を被害者住民や全国の一般有権者・国民・市民に押し付ける、④放射能汚染と被ばくに有権者・国民・市民を「慣れさせる」=感覚麻痺させる、などの狙いがあり、原子力ムラ・放射線ムラにとっては、願ったりかなったりの歓迎政策なのです。行ってみれば「原子力ファシズムが”善意”に担がれてやってくる」状態が創られつつあるのです。

 

 みなさま、「食べて応援・買って支援」宣伝や「安全安心キャンペーン」に乗せられて、福島県やその周辺の放射能汚染地域の産品・加工品を買って食べるのはやめておきましょう。そんなことをしてみても、福島県をはじめ原発震災被害を受けた地域の本当の意味での「復興」はできません。そんなことよりも、この放射能汚染で被害を受けるすべての方々に対して、万全の損害賠償・補償や、営業・家業・生活の再建支援がなされるよう、政府や自治体を動かしていきましょう(例えば、東京電力の損害賠償・補償の進め方はどうなのでしょうか、原発ADRの現状は? あるいは「子ども・被災者支援法」はどうなっていますか?)。

 

 私たち福島第1原発事故による被害が軽微であった同時代人は、福島第1原発事故の被害者の方々のすべての損害を償い、かつこれからの人生の再出発がきちんとできるよう、そして放射能汚染によって健康被害が出ることのないよう、万全の体制づくりに尽力することが求められているのです。財政負担は相当巨額なものとなっていきますが、そのことに対して私たちの「覚悟」を決めることこそが求めらています。決して放射能汚染物を食べる「覚悟」が求められているのではありません。

 

 今般の政府=原子力災害現地対策本部による南相馬市の「特定避難勧奨地点」の強行解除に対する抗議集会が下記のとおり開催されます。皆様、ご参集をお願い申し上げます。

 

以下,メール転送です。

=================================

みなさま(拡散歓迎、重複の場合は申し訳ありません)、FoE Japanの満田です。南相馬市避難勧奨解除に関して、1226日(金)下記の通り、緊急記者会見と抗議集会を開催します。

 http://hinan-kenri.cocolog-nifty.com/blog/2014/12/post-cbde.html

 

13:30から参議院議員会館で記者会見&集会(どなたでもご参加いただけます)、18時からは参議院議員会館前で抗議集会を開催します。たくさんの方が参加することで、連帯の意を示し、南相馬のみなさんを激励しましょう!

 

1226日(金)

13:30~14:30:記者会見&集会 

14:30~15:30:署名提出および政府交渉

18:00~18:30:参議院議員会館前抗議集会 

 

※13時からロビーにて入館証を配布します。

※記者会見の間、質疑はメディアの方優先となります

※いずれも、どなたでも同席いただけます。

 

◆参議院議員会館 B107 

◆資料代 500円

◆主 催 : 南相馬・避難勧奨地域の会、南相馬特定避難勧奨地点地区災害対策協議会

◆共 催 : 福島老朽原発を考える会(フクロウの会)、FoE Japan、避難・支援ネットかながわ(Hsink)、ひまわりプロジェクト南相馬

◆問い合わせ先: FoE Japan 満田/090-6142-1807

 

☆署名も継続中です。ぜひご協力をお願いします!

【応援の署名を!】南相馬市で住民無視の避難勧奨解除が進められようとしています。

 http://hinan-kenri.cocolog-nifty.com/blog/2014/12/post-45b6.html

 

以下開催に至った経緯と開催の詳細です。

-----------------------------

南相馬市の特定避難勧奨地点が、1228日、住民の強い反対の中で解除されようとしています。南相馬市で特定避難勧奨地点に指定された住民向けの説明会が開催されました。出席した住民は、全員、強く反対。

 

「指定時、【解除の際には住民の理解を得ること】との約束があった。確認の上解除の話をして欲しい。」

「家の中でも空間線量率は0.8マイクロシーベルト」

「こんな環境に子どもを帰せない」

「ストロンチウムやプルトニウムなども飛散している」

「これで、”公平性”はないだろう」

「いくら除染しても、農地や山林から線量がくる」

「避難区域よりも放射線量は高い」

「再度の説明を求める」

 

などの発言が相次ぎました。最後に、行政区長が、「地域全体を下げてから解除でしょう。同じ人間として話をしてほしい。無理を通して、道理を引っ込めるのか」

と述べました。高木経済産業副大臣は、「川内や伊達との公平性を保つ」「積算線量20ミリシーベルトを下回っており、健康への影響は考えられない」とし、一方的に指定解除を決定しました。

 

今回の解除に至るまでにも10月の時点で、指定解除の説明会が開かれたのですが、住民の強い反対にあい、解除は延期。「不安をしずめるため、掃除を行う」としました。しかし、「掃除」後、大量のゴミ袋を置き去りにされ、ゴミ袋は2μS/h超え、宅地内に10μSv/h超えの場所も残っています。

 

その後も、住民は1,000筆を越える住民署名を国に提出し、何度も解除に反対する意思表示を行ってきました。しかし、それらの住民の意向はすべて無視されてしまっています。今回、たまりかねた住民のみなさんが、東京にて、抗議の記者会見と集会を開催します。また、この間、みなさまにご協力いただいた署名を、国に提出します。南相馬の住民を応援するため、一人でも多くのみなさまのご参加をお待ちしております。

=================================

草々

 

 

2014年12月 2日 (火)

未だ安心も油断もできない放射能汚染=関東・東北は依然として深刻な放射能汚染地帯である:ホット・スポット居住の方は一刻も早く避難・移住を!

前略,田中一郎です。

(別添PDFファイルは添付できませんでした)

 

別添PDFファイルは、昨今の新聞報道から放射能汚染やその除染に関係する新聞記事を拾ったものです。福島第1原発事故から39カ月が経過しましたが、事故による放射能汚染の深刻な状況は依然変わっておりません。半減期が2年の放射性セシウム134が半分以上消滅したことくらいが放射能汚染の低減理由にすぎず、政府や自治体が進めている「除染」なるものは、汚染地帯に居住し続ける者にとっては、ほんの気休めになる程度のもので、費用がかかる割には実効性の乏しいものにすぎません。そもそも、「地域住民の命と健康を守るために「除染」をしているのか」、「除染する気が本当にあるのか」と、疑いたくなるような、いい加減な仕事ぶりも目につきます。

 

局所的に汚染度が高いホット・スポットは、依然あちこちに散在して地域住民を知らない間に被ばくさせていますし、厚生労働省が定める科学的な根拠のない飲食品の放射能残留規制値を上回る食品が、依然としてパラパラと発見され、また、その根拠レスな規制値を下回ってしまうと、その飲食品の汚染度合い(ベクレル値)は表示も開示もされないまま、食品流通に乗せられていきます。放射能汚染地域の住民は、外部被曝に加えて、飲食品と呼吸による内部被曝で、常に放射線被曝の状態を余儀なくされているのです。この状態(恒常的な低線量被曝(外部被曝・内部被曝))は非常に危険です。早くおやめになって、移住・疎開・避難・保養など、放射線被曝状況下から、ご自身を「救出」された方がいい。特に、日常的な呼吸被ばくは、いわゆる微量のアルファ粒子なども含めて、将来に向けて、非常に懸念されるところです。

 

東日本一帯、特に、福島第1原発直後に放射能のプルームが通過して、かなりの濃度で汚染されてしまった地域では、まだまだ安心も油断もできません。政府や自治体、あるいは放射線ムラの御用学者の言うことなど、まったく信用できませんから、ご自身がご自身とその家族を、まずは無用の放射線被曝から守る以外に、当面の対応方法はありません。財産や物品なら、極論をすれば、取り戻すことはできても、自身と家族の命と健康は、放射線被曝によって失われてしまいますと、取り返しがつきません。くれぐれも、「ためにする甘言」=たとえば「食べて応援、買って支援」などにだまされることなく、放射能汚染とそれによる恒常的な被ばくに対して警戒を高めてください。日本という国は、その政治家と政治と官僚どもを「チェンジ」しない限りは、国民・住民の命と健康よりも、原発・核燃料施設を大事にする国のようです。だまされてはなりません。(以下、簡単に新聞記事をコメント付きでご紹介申し上げます)

 

 <別添PDFファイル>

(1)海洋汚染、収束せず(東京 2014.12.1

(2)試験操業実績拡大 福島・相双地区(水産経済 2014.10.10

(3)あんぽ柿と干し柿、3市町で基準値超(福島民報 2014.10.2

(4)コメ汚染「がれき撤去原因」、規制委、否定的な見解(朝日 2014.11.27

(5)除染 104市町村は今、霞ヶ浦「収束待つしか」(毎日 2014.9.27

(6)除染 104市町村は今、作業阻む 別荘地の壁 栃木・那須町 実施は2割弱(毎日 2014.11.7

 

1.海洋汚染、収束せず(東京 2014.12.1

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2014120102000160.html

 

(田中一郎コメント)

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 記事の副題には「本紙調査でセシウム検出、福島第1、低精度の測定で、東電「安全」強調」とあります。要するに、福島第1原発沿岸・沖合の海水と海底土の放射能汚染状況のモニタリングが全くの出鱈目であることが報じられています。

 

第一に、海洋汚染の調査が当事者能力のない、利益相反丸出しの、東京電力に丸投げされていること。環境省や水産庁は何をしているのでしょうか?

第二に、案の定、その東京電力は、精度の低い、手抜き検査をして「検出限界値未満」などとし、いい加減なことを繰り返して「安全」を強調している。

第三に、放射性セシウム以外の放射能汚染については、見向きもしないし、触れもしない。放射性ストロンチウム、放射性銀、トリチウム、プルトニウム・ウランなど、危険な放射性物質は、わんさと海に放出されているというのにである。

 

 繰り返しになりますが、福島第1原発から、今もなお、海に放射能が出て行くルートを確認しておきますと、第一が、地表表面や排水溝を雨水などとともに流れて海に出て行く場合、第二が、福島第1原発の海岸壁の海水面下からにじみ出て行く場合、第3に、そして絶対に忘れてはいけないのが(おそらく放射能の量としては、これが一番多い?)、地下深くの地下水流を海に向かって流れ、海底のどこかで湧水となって海中に湧き出ている場合、そして第4に、山林や平野に降った放射能が川に集約され、川の流れに乗りながら、放射能汚染土砂とともに海に流れ出て行く場合、最後に、大気中へ日々放出されている放射能が風に乗って太平洋へ出て、そこで海に落ちる場合、の5つです。

 

 そして、特に第二や第三の場合は、その大半が溶融核燃料を直接洗った汚染水が海に出ている可能性が高く、従ってその汚染度は非常に高く、また汚染する放射性核種の種類も、放射性セシウムに限らず、短い半減期のものも含めて多種多様であろうと推測されることです。福島第1原発からは、日々、大気中に、そして太平洋に、放射能が撒き散らかされていることを忘れてはなりません。

 

2.試験操業実績拡大 福島・相双地区(水産経済 2014.10.10

http://www.suikei.co.jp/%E7%A6%8F%E5%B3%B6%E3%83%BB%E7%9B%B8%E5%8F%8C%E5%9C%B0%E5%8C%BA%E3%81%AE%E8%A9%A6%E9%A8%93%E6%93%8D%E6%A5%AD%E3%80%81%E5%A0%B1%E9%81%93%E9%96%A2%E4%BF%82%E8%80%85%E3%82%92%E6%8B%9B%E3%81%8D%E3%83%A1/

 

(田中一郎コメント)

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 こんな海で獲れた海産物は危なくて食べられません。わずかばかりのサンプルで放射性セシウムだけを調べても、安全確保はできません。試験操業などはやめるべきです。そうしないと、今度は、被害者だった漁師さんたちが加害者となってしまうでしょう。福島第1原発近海の海産物は危険です。

 

 このことは、福島県沿岸・沖合に限りません。広く東日本に降った放射能が川を流れ下っている地域、つまり南は千葉県から、東京湾を含め、北は宮城県牡鹿半島くらいまでは、漁業は当分の間禁止すべきです。もちろん、潮干狩りや海水浴などもダメです。なすべきことは、まずは福島第1原発からの汚染水の海への流出を完全にストップさせ、それとともに、海洋生物やその生態系の放射能汚染状況とその影響を徹底して調査することです。しかも、福島第1原発からの今も続く日々の放射能の放出や、川を下り下りる放射能の海洋流出も続きますから、相当長期にわたり、放射能汚染の海洋環境・生物生態系調査を続けて行かなければなりません。

 

 漁師の方々には、その間、この海洋環境モニタリングをお手伝いいただきつつ、賠償・補償を万全に行わなければなりません。また、引き続き、海に出て漁業がしたい方には、他の地域への移転・移住を、新天地での漁業再開・経営再建支援とともに、政府や自治体(送り出し側・受け入れ側)が責任を持って対処すべきです。今現在のように、福島第1原発事故で被害を受けた漁師の方々を経済的・金銭的に追い込んで、苦し紛れの試験操業に追いたてることなどあってはならないことです。

 

 それから、あまり申しあげたくはありませんが、水産物の流通の世界は「表示偽装」のデパートのようなところです。福島第1原発沖合で獲れた海産物は、量的に多くないので、主に地場の福島県及びその隣接地域で販売・消費されていると思われますが、その際の産地表示が誤魔化されていないとは限りません。また、それは、量的には少ないと思いますが、東京などに送られてくる福島県沖産の海産物についても同様です。

 

(3)あんぽ柿と干し柿、3市町で基準値超(福島民報 2014.10.2

 http://www.asyura2.com/14/genpatu40/msg/549.html

http://blog.goo.ne.jp/kentyan_040741/e/ae4e45901a3cd8489c579b60af2e714d

 

(田中一郎コメント)

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 柿は果実の中でも放射性セシウムが蓄積しやすい方であること、しかも、あんぽ柿を含めて干してあるので、大気中の放射性セシウムがくっつくことに加え、乾燥することで濃縮されてしまう。そのため100ベクレル/kgの規制値を超えてしまったのだろう。3市町で規制値が越えたというのは、やや驚きである。

 

 福島第1原発事故直後は生産をやめていたあんぽ柿の生産を再開するというのは無理がある。生産者・農家自身も農作業で被ばくしてしまう。柿はあんぽ柿や干し柿も含めて、当分の間、生産をやめるべきである。生産地域が県北の放射能汚染がひどいところだからだ。全額、賠償・補償に切り替えるべきである。

 

 ちなみに、同地域で獲れる、かんきつ類(ゆずなど)、栗やクルミ、なども放射能を蓄積しやすいので要注意である。

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(4)コメ汚染「がれき撤去原因」、規制委、否定的な見解(朝日 2014.11.27

 http://www.asahi.com/articles/DA3S11476834.html

 http://togetter.com/li/752186

 

(田中一郎コメント)

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 放射能汚染の原因は福島第1原発のがれき撤去によるものではない、ということだけを、根拠なく強調することが、私たち原子力「寄生」委員会・「寄生」庁の役割であり、使命であり、期待されていることなのだ、とのご認識でいらっしゃるようです。さすがは、「規制」ではなく「寄生」の委員会であり役所です。

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(5)除染 104市町村は今、霞ヶ浦「収束待つしか」(毎日 2014.9.27

 http://mainichi.jp/shimen/news/20140927ddm041040130000c.html

 

(田中一郎コメント)

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「国内第2位の湖沼面積を誇る茨城県・霞ケ浦。東京電力福島第1原発事故後、同県では霞ケ浦周辺を含む20市町村が「汚染状況重点調査地域」に指定された。公共施設や住宅などの除染は終えたが、広大な霞ケ浦の底土汚染については「自然に収まっていくのを見守るしかない」と指摘する有識者もいる。」

 

 上記記事にある放射能汚染の湖沼の底土については、除染はめどが立っていません。これは霞ケ浦に限った話ではありません。「できもしない除染」の一例です。

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(&)除染 104市町村は今、作業阻む 別荘地の壁 栃木・那須町 実施は2割弱(毎日 2014.11.7

 http://mainichi.jp/shimen/news/20141107ddm041040099000c.html

 

(一部抜粋)

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国内有数の別荘地・那須高原を抱える栃木県那須町は、東京電力福島第1原発事故に伴い町内約2万戸の住宅除染を計画したが、実施済みは2割弱の3361戸(今月4日現在)にとどまっている。北海道から沖縄まで全国に散らばる別荘所有者と連絡が取れず、同意が得られないことが大きく影響している。別荘が建ち並ぶ丘陵地では、未除染の土地から雨水などが斜面を流れ下るため、地元住民は「何とかしてほしい」と悲鳴を上げている。

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(田中一郎コメント)

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 「できもしない除染」のもう一例です。「できもしない」というよりも「やる気もない」と言った方がいいかもしれません。

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草々 

 

2014年9月 3日 (水)

ついに 「ホット・パーティクル」 が表面化 : 茨城の「ちり」にウラン 東京理科大と気象研究所 溶融燃料が拡散

前略,田中一郎です。

(別添PDFファイルは添付できませんでした)

 

 別添PDFファイル、及び下記サイトは、昨今の放射能汚染と被ばくに関するものです。以下、簡単にご紹介するとともに、「放射能・放射線は心配するほどのことではない」(放射線安全神話)にだまされないためポイントを簡単にご説明したいと思います。マスごみ各社の報道は、確かに原発・原子力や放射能汚染・被ばくに関して、おかしなものが多いのですが(特にNHKを含むテレビがひどい)、かといって、ネット上の情報が正しいという保障はありません。ネット上の情報はまさに玉石混交であり、中には無責任なものや、出鱈目八百のものもたくさんありますから、それを見る方は、相応の「リテラシー」(読解力・判断力)をもって臨まないと、マスごみ以上にだまされ、振り回されてしまうことになりかねません。

 

 ネット情報リテラシーについては1冊の本ができてしまうほどいろいろありますが、簡単にコツを申し上げれば、信頼できる「コア・サイト」をみつけて、それを必ず定期的に見るようにすること、結論が分かっている一つのテーマでいくつか検索して出鱈目を言うサイトを退けておく、霞が関官庁が言うことを(悪い)ベンチマーク(標準)にしてそれと比べる、脱原発・脱被ばくの運動をしている信頼できる人に聞いてみる、信頼できる文献が紹介するサイトを確保する、サイトや他人の言うことを100%は信じ込まない(常に、そういうこともありうる、というスタンスで、真実率○○%、くらいの評価付けをして仮置きの認識をしておく、その後、それに反対の事象が出てきたら、自分の頭でよく考えて従来の見方を検証する)、などです。

 

 特に最後の「100%は信じない」が重要で、ものごとを相対化して暫定的に認識し、100%これだ、とは決めつけない、常に「修正可能状態」に自分を置いておく、という「精神的不安定」を甘受しつつ(我慢しつつ)、考え続けること・行動することが大事です。多くの人間は、日々、そういうことを無意識に実践していますが、社会が危機的状況になると、この態度が危なくなります。デマゴーグ達の「ものごとの単純化」と「大声での断定」に引きずられ(たとえば、民族や国家や宗教(信心)などを持ち出してくるのは大抵がこの類です)、何かを・誰かをスケープゴートにしたり崇拝したり、乱暴であることが力強いと受け止めてしまったりしてしまう、そういう人間が増えてくるのです。

 

 リテラシーとは、必ずしも知識量の多さを言うものではありません。一人ひとりの人間は、その知識や力においても小さな存在であり、人間はみな「ちょぼちょぼ」なのです。その「ちょぼちょぼ」が、バランス感覚を持ち、危機だらけの現代社会をなんとか生きていくには、知識とともに知恵が必要であると言ってもいいかもしれません。

 

 <別添PDFファイル>

● 茨城の「ちり」にウラン 東京理科大と気象研究所(福島民報 2014.8.28

 http://www.minpo.jp/globalnews/detail/2014082701001722

 http://www.47news.jp/CN/201408/CN2014082701001722.html

 

(一部抜粋)

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東京電力福島第1原発事故直後に約170キロ離れた茨城県つくば市で採取した大気中のちりから、核燃料や原子炉圧力容器の材料のウランや鉄などを検出したとの研究結果を東京理科大と気象庁気象研究所のチームが27日までにまとめた。

 

 事故で溶けたウラン燃料が原子炉内の他の物質と混ざった状態で外部に放出されたことを裏付ける結果で、同大の中井泉教授は「事故直後の炉内や放射性物質の放出状況の解明につながる」とさらに詳しい分析を進めている。

 

 チームは、2011年3月14日夜から翌朝にかけてつくば市の気象研究所で採取された高濃度の放射性セシウムを含む粒子に着目し分析してきた。

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(下記サイトは必見です)

●【ヤバイ】茨城県で検出されたウラン、原発事故の溶融燃料だったことが判明!大気中のちりから格納容器の材料! - 真実を探すブログ

 http://saigaijyouhou.com/blog-entry-3640.html

 

(一部抜粋)

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茨城県のつくば市で検出されたウランですが、東京理科大や気象庁気象研究所などのチームが詳細分析をした結果、ウランを検出した「チリ」から原子炉格納容器の材料などが検出されました。発表によると、福島原発事故で溶けた核燃料に含まれているウランと格納容器などの機材が溶け合わさった物だと推測され、それが爆発時に170キロ先の茨城県まで飛散したとのことです。

 

これでこのチリとウランが福島原発事故由来であることがほぼ確定し、改めて福島原発事故の放射能汚染が広範囲に広がっていることを証明したと言えます。事故直後に「ウランは重いから飛ばない」とか言っていた学者が居ましたが、それも嘘だったということです。

 

放射性ヨウ素は甲状腺がんを引き起こすことで知られていますが、ウランのような高線量の物質は白血病などの重い病気を誘発することが指摘されています。また、遺伝子障害などを発生させる力も強く、イラクなどで「劣化ウラン弾」による被害報告が相次いでいるのは有名です。

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(上記サイトの動画参照:東京のベットタウン・守谷市での環境放射能測定の数値が驚くほど高い。測定している人のそばで幼い子どもの声が聞こえている。この国はいったい何をしているのだろうか:田中一郎)


(以下、田中一郎コメント)

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1.茨城の「ちり」にウラン 東京理科大と気象研究所(福島民報 2014.8.28

 こうした複数の放射性物質が混じり合って固まった「チリ」状態の浮遊物を「ホット・パーティクル」と言います。非常に危険です。

 

(1)まず、記事の次の記述にご注目ください。

「チームは、2011年3月14日夜から翌朝にかけて、つくば市の気象研究所で採取された高濃度の放射性セシウムを含む直径2マイクロメートル程度の粒子に着目」(中略)「燃料のウランや圧力容器の材料の鉄、クロムなど14種類の元素が検出され、全てが原子炉の構成物質だった」「さらに粒子は水に溶けにくいガラス状と判明。溶けた状態で大気中に放出された後、急速に冷やされて固まり、拡散したとみられる」

 

(2)私がまず真っ先に、この記事を見て感じたことは「なんで今頃、こんな発表がなされているの?」ということだ。「ホット・パーティクル」が大気中や水の中を飛びまわっている話は3.11福島第1原発事故直後から認識していたが、それがまた、何で今頃「新発見であるかのごとく」発表され、報道されているのだろうか。

 

 私の推測は2つ。その1は、発表機関性善説で、これを発表した東京理科大や気象研究所とその研究者たちは、もっと早い段階で発表したかったが、「上からの鶴の声」によりそれがかなわなかった。事が鎮まるのを待ち、「上の鶴」の目の間隙をついて、一気に発表した、というもの。その2は、発表機関性悪説で、「ホット・パーティクル」の危険性を知るがゆえに、福島第1原発事故とその放射能汚染対策で世の中が騒がしいうちは、騒ぎに火を付けることになり、原子力推進権力から睨まれることになるので、発表しなければならないことが分かっていながら、ずっと先延ばしを続けていた、というもの。

 

 さて、どっちかな? 私はいずれにせよ、発表のタイミングを操作している、という世論誘導を強く感じる。また、マスごみの、これに関する報道や記事があまりに小さすぎる。新聞なら1面トップ、TVならトップニュースで報じられ、その危険性が注意喚起されなければならないことである。

 

(3)茨城県で発見されたということは、福島県のみならず、その他の県でも「ホット・パーティクル」が飛びまわり、水中を泳ぎまわっているということだ。しかし、政府も自治体も、この「ホット・パーティクル」に対する中長期的な警戒態勢を取ろうとはしない。国民・住民を深刻な放射線被曝から守ろうという気がないということだ。申し上げるまでもないが、「ホット・パーティクル」を構成している放射性核種は、いずれも長い半減期のものばかりで、事故から3年がたっていようとも、その危険性については何ら変わるところはない。煮ようが、焼こうが、放射能は消えることはないのだから。

 

(4)ここで、「ホット・パーティクル」の特性と、その危険性について、簡単にまとめておく。

a.さまざまな放射性物質・核種が混然一体となっているということ。言ってみれば、いろいろな放射性物質・核種の「カクテル」であり「ミックス焼きそば」のようなもの=表面には「ドクロ・マーク」がついていると思えばいい。従って、現状のように放射性セシウムだけに警戒をしていればいいというものではない。私が思いつくものだけでも、ウラン、プルトニウム、放射性ヨウ素129、放射性セシウム、放射性ストロンチウム、イットリウム、放射性ジルコニウム、鉄、コバルト60、クロム、などが挙げられ、これらは、放射性セシウムのようなガンマ核種(電磁波)だけでなく、放射性ストロンチウムのようなベータ核種(電子線)や、危険極まりないウランやプルトニウムなどのα核種(ヘリウム原子核線)が、複雑にまじりあっている。各放射性核種の混合割合はいろいろ・まちまちで、放射性セシウムがわずか数%しか含まれていない場合もよくあることである。

 

b.、「ホット・パーティクル」は、飲食よりも、呼吸被ばくが懸念される。そして、呼吸被ばくの場合には、α核種が非常に危険である。量的には、ほんのわずかで、目には見えない、人間の五感ではとらえられないくらいに微量であっても、それが一旦人間の肺の中に入ってしまうとやっかいなことになる。α核種による呼吸被ばくの内部被曝は、そのアルファ線のエネルギーが巨大であるために、人間を破壊するパワーは並大抵ではなく、がん発症の確率も他の種類の放射線・放射性物質に比べて非常に高い。

 

 こういうことは既に分かっていることだから、原発施設や研究所などで、α粒子が飛び交うエリアには、かなり厳重な防護マスクをしてからでないと入れないことが法律で決められている。しかし、福島第1原発事故の後は、福島県を中心に広がる、そうした「ホット・パーティクル」汚染地帯に、何の防護機器を装着させることもなく、平気の平左で子どもたちを遊ばせ、妊婦を生活させ、避難した人々を強引に帰還させようとし、外部被曝のみならず、呼吸を通じての恒常的な低線量被曝(外部被曝・内部被曝)にさらし続けているのである。まさに狂気の沙汰であり、許しがたい「未必の故意」の殺人・傷害是認行為である。

 

 3.11福島第1原発事故後、しばらくして、あの「ただちに健康に影響はない」の民主党・「口先やるやる詐欺」の枝野幸男が福島県を訪れた際、何の装備もしていない地元の人々の前に、厳重な放射線被曝防護服を身につけて現れたことを記憶されているでしょう。しかし、その時と今とでは、放射能の汚染や放射線被曝の危険性について、大きな変化はないのです。枝野幸男が、いかに福島県民を馬鹿にしているか、この挙動を見れば明らかです。いや、枝野幸男というよりも、民主党の政治家ども、と言った方がより正確です。

 

c.「ホット・パーティクル」の大きさも重大な問題です。記事では、直径2マイクロメートルと書かれていましたが、「ホット・パーティクル」には、それよりも大きなものもあれば、小さなものもあります。より危険なのは小さなもの=つまり「マイクロ」サイズよりもさらに小さい「ナノ」サイズの「ホット・パーティクル」が、きわめて厄介で危険な代物です。詳細は申し上げませんが、ナノ物質は、マスごみどもは、その「光」の部分にだけ焦点を当てて、次世代の技術で夢開くかのごとく報道していますが、その「影」の部分=危険性については、ほとんど伝えられることはありません。

 しかし、「ナノ物質」は、かなり危険であることが分かってきています。人間が呼吸や飲食などによって体内に取り込むと、脳や生殖器や、その他様々な臓器に蓄積・濃縮する傾向がみられ、それが中長期的に深刻な健康障害をもたらすのです。イメージとしては、アスベストを想像してみてください。それと、ナノサイズのちりやほこりは、マスクをしていても効果はなく、呼吸によって人間の体内に入ってきます。防ぐには、厳重な防護マスクが必要ですが、そんなものをして生活するわけにはいきません。

 

 そんな危険性が判明してきた「ナノ物質」が、更に放射性を帯びていた=放射性ナノ物質だった、ということであれば、その危険性は倍加します。放射性物質としての危険性に加え、その化学的性質(電気的性質)や物理的形状が、人間や生物の体にさまざまな悪影響を及ぼすことになるからです。

 

●(セミナー報告)PM2.5とナノ粒子=次世代へのリスクを減らすために知っておきたいこと (& ナノサイズの放射性物質=ホットパーティクルの危険性を推測する)  いちろうちゃんのブログ

http://tyobotyobosiminn.cocolog-nifty.com/blog/2014/06/pm25-e3f5.html

 



(5)放射能汚染地帯でのα核種の継続的調査の実施、「ホット・パーティクル」対策の真剣な検討、少なくとも子ども・若者・妊婦の放射能汚染地域からの避難・疎開・移住の国家的保障、広範囲の地域での健康管理の導入と放射線防護のガイダンスなどが急務だと思われます。児玉龍彦東京大学アイソトープ総合センター長流に申し上げれば、「日本の国や自治体などの行政は、いったい何をしているのか!!」ということです。

草々

 

(このサイトは「「放射能・放射線は心配するほどのことではない」(放射線安全神話)にだまされないために」に続いていきます)

2014年9月 2日 (火)

食べものの放射能汚染:食べてもらえぬ米の山(読売 2014 8 27 より)

前略,田中一郎です。

(別添PDFファイルは添付できませんでした)

 

別添PDFファイルは、昨今、読売新聞が特集してシリーズで報道する「原発と福島 風評の現実」の「その2」=「食べてもらえぬ米の山(読売 2014 8 27)」です。福島県産の米などの農林水産品が消費者に避けられてしまって売れない事態を「風評被害」などと報じていることがそもそもの間違いですが、以下、簡単にコメントいたします。

 

 <別添PDFファイル>

● 原発と福島 風評の現実(2) 食べてもらえぬ米の山(読売 2014 8 27

 http://premium.yomiuri.co.jp/pc/#!/list_%2523IMPTNT

 

(一部抜粋)

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「天井まで10メートルはある農協の冷蔵倉庫に、60キロ入りの米袋が高々と積まれていた。「こんなに売れ残っているのか」。福島県相馬市の農家・・・は、米袋の壁の前でうめいた。」(中略)「すべての米が放射性物質の検査をパスしている。それでも食べてもらえない。「風評」がもたらした厳しい現実が、・・・の目の前にあった。」

 

「震災後の相馬市内の米の作付面積は、津波被害に加え、原発事故で多くの農家が避難したこともあり、大幅に減少した。12年に地元農協「JAそうま」が農家から販売を委託された米の量は約5400トン。事故前の4分の1を下回った。」

 

「農家に事故のしわ寄せが行かないように、JAが価格の下落による損失分を肩代わりし、まとめて東京電力に賠償請求していた。」

 

「収種した米を近所に配りにいくと、「私はいいんだけど、小さい孫には食べさせたくない」と受け取ってもらえなかった。知り合いの農家も孫のために他県産の米を買っていると知った。」

 

「「精魂込めて米を作っても、食べてもらえない」。大きな矛盾を抱えたまま、・・・は農作業を続ける。」(中略)「隣に座っていたJA幹部に、自分たちの米がどこへ行くのか尋ねた。「飼料用や加工用に使われるんだ」。幹部は諦め顔でそう答えた」

 

「「米穀安定供給確保支援機構」(東京都)は4月、米価維持を目的に、供給過剰だった13年産の主食用米35万トンを市場から買い取ることを決めた。販売が難しい産地の米を買い取り、家畜の餌や加工品原料として売却する。そのうち福島県産は全国最多の5万3000トン。JAそうまからは、13年産の85%にあたる5600トンが買い取られた。」

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(田中一郎コメント)

(1)米は福島県産であれば全袋検査である(それ以外の放射能汚染県の米はそうではない:危ない!!)。放射性セシウムについては、一応悉皆的なチェックは入っている。検査の仕方や検査機器類に問題がなければ、放射性セシウムについては問題がなさそうに見えるが、そうではない。単に、安全基準としては根拠の乏しい厚生労働省の飲食品にかかる残留放射性セシウム規制値=100ベクレル/kgを下回っていると言うだけのことで、それが実際、いかほどの汚染状況なのか、ベクレル表示はなされないからわからない。しかし、同じ100ベクレル/kg以下だと言っても、99ベクレル/kgと1ベクレル/kgでは、雲泥の差がある。米は主食であり、日々たくさん食べるもの。もっと厳しい規制値や厳しい表示義務が課されて当然である。また、検査の仕方や検査機器類の適正性については、適宜、利益相反のない組織によって、定期的に抜き打ちで点検されるべきである。

 

 それから、さらに重大な問題は、放射性セシウム以外の危険な放射性核種=たとえば放射性ストロンチウムなどが検査されていないということである。何故、検査しないのか。チェルノブイリ原発事故後の旧ソ連諸国では、放射性ストロンチウム検査はなされているではないか。要はやる気の問題だ。検査しなければ、安全であるなどとはとても言えない。放射性ストロンチウムは物理的半減期が長い他(約30年)、体内に入ると骨や歯などの特定部署に集中的に蓄積・滞留して対外には出てこないし、昨今では、体内のさまざまな重要な機能を担っているカルシウムとも入れ替わる可能性があることもわかってきて、放射性セシウムに比べてはるかに危険である(放射性ストロンチウムの有害性がいかほどのものなのかは、詳細・正確にはわかっていない)。

 

 放射性ストロンチウムなどのベータ核種やウラン、プルトニウムなどのα核種について、どのように検査・調査するのが効率的で有効かについて、真剣に議論された様子は、2011年3月11日以降、まったくと言っていいほどうかがえない。放射性セシウムの1/10の量で見ておけばいい、などと勝手に決め付けている。こうした非科学的な、危険を甘く見る態度の後には、必ずと言っていいほど大きな危険性が顕在化してくるものだ。従って、一般の消費者・国民が福島県産のみならず、広く東日本の放射能汚染地域産の農林水産品やその加工品を避けているのは、しごく当然の適切な消費選択である。風評被害などでは全くない。

 

 ちなみに、米以外の農林水産品については、そのほとんどがノーチェックである。流通する量のわずか0.1%でさえも、検査されておらず、検査されているのは、サンプル抽出の仕方や、検査の仕方に疑義がある形で、ほんの僅かばかりが、放射性セシウムだけに限って検査されているにすぎない。加工食品は業者に丸投げ、流通している品物を無作為抽出で抜き打ち検査することも、東京などの大都市を除いて、ほぼ皆無である。こんな状態で、どうして福島県を含む放射能汚染地帯の農林水産品や加工食品・外食などが安全だと言えるのか。無理・無茶を承知で、安全、安全と、パフォーマンスするため、3年前の福島第1原発事故以降、ほんとうに無残にもバカバカしい「安全安心キャンペーン」が繰り返されている。ロクすっぽ、検査も調査もしないでである。そのようなことをしているヒマと金があったら、食品の検査体制・検査機器類・検査要員や態勢を拡充させ、根拠のある「安全性立証」をお見せいただきたいものである。

 

(2)農地の放射線汚染地図が、いつまでたってもきちんと作成されない。放射性セシウムについてでさえ、そうなのだから、他の放射性核種については、汚染状況が全く分からない中で、農林業が再開されている。また、米についても他の作物についても、放射能検査の結果と農地の汚染状況調査=汚染マップ作製とがリンクしていない。通常の常識は、検査でひっかかった作物の産生場所を調べ、その周辺も含めて綿密に農地の汚染状況を調べ、汚染が発見されたら除染を行う、という形で、繰り返し試行錯誤で農地がきれいにされていくものだ。しかし、今現在、そのようなことをしている生産者・農家はいないだろうし、放射能検査結果の具体的なデータなどが、きちんと生産現場に還元されていない可能性もある。要するに、農産物検査と農地検査、及び除染はリンクしていない。

 

 農地は一般的に森林や林など、樹木に囲まれている場合が多いが、福島県他の放射能汚染地帯では、その森林や林も放射能で汚染されていて、日々、放射性物質を周辺環境に拡散していることが多い。また、福島第1原発からは、毎時間ごとに1000万ベクレル超の放射性物質が放出されているため、農地の汚染状況を一度調べるだけでは、まったくの片手落ちである。毎年、定期的な農地の汚染状況調査が必要であり(α核種、ベータ核種、ガンマ核種のそれぞれ別々に)、汚染マップは塗り替えられる。更に、農業用水の汚染も懸念されるものの一つである。特に、ため池や湖沼の水が利用される場合には要注意ということになるだろう。(報道によれば、政府・環境省は、放射能で汚染された池や湖沼の底の除染を(費用を惜しんで)拒否しているという。信じがたい話である)

 

 そもそも何故に、上記のようなことをしてまで、農業が続けられているのだろうか。農林水産省は、2011年の事故直後の2011年5月に、早くも作付可能な田んぼの汚染限度は 5000ベクレル/kg以下だとして発表した。その根拠は、厚生労働省が決めた米などの一般食品の暫定規制値が500ベクレル/kgで、米=稲の「移行係数」が最大でも0,1(10%)だというところから、5000ベクレル/kgとなった(5000ベクレル(農地)×0.1=500ベクレル(稲):なお、「移行係数」とは、土壌汚染の何%くらいが作物に移行するか、その割合のこと)。5000ベクレル/kg以下の汚染された田んぼであれば、米の「移行係数」から考えて、500ベクレル/kgの厚生労働省の規制値を超える米はできないだろうという見通しに基づいている。なお、その他の作物については、麦も大豆も、野菜も果実も、一切の作物について、汚染農地の作付制限を決めなかった。これも信じがたい。

 

 実に乱暴な方法である。そもそも5000ベクレル/kgというのは、土1kgあたり5000ベクレルという意味だから、これを面積基準に換算すると×60で、なんと300,000ベクレル/m2にもなる。こんな放射能汚染農地で稲作をやれというのだろうか。しかも、米以外の小麦や大豆やその他作物については「制限なし」だというから驚きである。全くの出鱈目と言っていい。また、この5000ベクレル/kgの米の作付制限については「落ち」があって、その後、厚生労働省は飲食の放射能残留規制値を1/5の100ベクレル/kgにしたので、本来なら、米の作付制限規制値も1/5にしなければおかしいところだが、農林水産省は未だに5000ベクレル/kgのままで放置している。つまり農林水産省は、そもそも、汚染地域での農業を規制する気もなければ、放射能で汚染された農林水産品や食品を供給しないようにする意思も気力も責任感もないことがはっきりしたということである。要するに、消費者・国民をだまして売り飛ばしてしまえばいい、ということだ、そうすれば、対策費用も不要となる。

 

(3)生産者・農家とその家族が、農作業によって、あるいは汚染地帯での居住によって被ばくしてしまうことについての注意喚起も、被ばく防護策も、その危険性についても、事後的な被ばく検査体制についても、何の手当ても言及もない。つまり、福島県民をはじめ、放射能汚染地域の生産者・農家は、消費者・国民に厚生労働省の規制値以下の汚染農林水産品・食品を出荷すればそれでいいのであって、それによって被ばくをしようが健康を害しようが、そんなことは政府も農林水産省も自治体も、知ったことではない=自己責任でやれ、ということに他ならない。全く許しがたい、ふざけた話である。

 

 そして、ことは放射性セシウムだけの話ではないことを付記しておきたい。放射能汚染地帯での農作業で最も危険なことは、私は外部被曝ではなく、呼吸による内部被曝だと考えている。そして、この呼吸被ばくの場合には、ガンマ核種=放射性セシウム等以外にも、ウラン・プルトニウムなどのα核種や、さまざまなベータ核種にも万全の注意をしなければならない。そうしたことが全く告知されないままに、福島県や放射能汚染地域の農林水産業の「復興」だけが叫ばれるという状態になってしまっている。

 

(4)昨年2013年秋に収穫された南相馬市の米から、規制値を上回る放射性セシウムが検出された。いろいろ調べているうちに、その原因が、同年8月中旬に行われた福島第1原発3号機での汚染がれきの撤去作業に伴う放射性物質の周辺環境への拡散であることが分かってきた。しかも、約20km離れた南相馬市だけでなく、50km以上離れた福島市やその周辺でも、空間線量が上昇するなど、福島第1原発からの放射性物質拡散の影響が出ている。福島第1原発各号機の汚染がれきの撤去や除染作業は、今後も適宜実施されていくものと思われるので、通常ベースの毎時1000万ベクレルに加えて、桁違いの放射性物質があたり一帯の周辺環境に今後もばら撒かれること必定である。

 

 許しがたいことに東京電力は、1号機から猛烈な放射性物質が出ていることを知っていながら、外部から指摘されるまで、そしらぬ顔をしていた。福島第1原発での作業を優先するためである。報道によれば、このがれき撤去作業で環境放出された放射性物質は2800ベクレル/時間、合計で1兆1千億ベクレルである。こんなところで農林水産業が行われていいはずがない。

 

● 農林水産省-福島県南相馬市の25年産米の基準値超過の発生要因調査について

 http://www.maff.go.jp/j/kanbo/joho/saigai/fukusima/index.html

 

25年産米の放射性セシウム:南相馬市旧太田村の基準値超えの真の理由は? 3.11東日本大震災後の日本

 http://tsukuba2011.blog60.fc2.com/blog-entry-778.html

 

● がれき撤去で米汚染の可能性 JA関係者が東京電力に抗議文(福島14-08-05) - YouTube

 http://www.youtube.com/watch?v=BjBsMvSBd4g

 

(5)読売新聞の記事によれば、生産された米を集荷する農協は、引き取りの価格を原発事故前よりも落とさないようにして、(値下がりしてしまった)福島県産米の時価との差額を一時的に負担して(???)、東京電力にその分を賠償金として請求しているという(しかし、農協の米の「共同販売」の場合には、農協は差額負担をするのではなく、低めの金額の仮渡し金を生産者・農家にいったん支払い、東京電力からの賠償金収入を待って、後日「清算」するという形をとっているように思うので、農協の差額負担はないはず)。しかし、いずれにせよ、米の倉庫保管料などを含めて、現場の生産者・農家や農協などの集荷業者に、米の放射能汚染と、売れ行きの悪化にともなう経済負担が覆いかぶさっていることは事実である。何故、国は、現場に負担がかからぬよう、万全の対策を打たないのか。

 

 そもそも、放射能に汚染された生産者・農家の方々には、一時的にでも、恒久的にでも、一旦は放射能の汚染のない地域に、農場ごと避難・疎開・移転をしてもらい、降り注いだ放射能が十分に自然減衰するのを待って、農林水産業再開の準備を始めればいいのだ。その間は、国が責任を持って、汚染されていない土地で、被害者の生産者・農家のために農地を確保し、農業所得を補償し、避難・疎開・移転先での生活や子どもの教育などで困ることのないよう、被害者対策として万全を尽くすのが国のなすべき施策ではないのか。それを全部すっ飛ばし、被害者への賠償・補償も、出鱈目な方法で大幅にカットして、要するに、加害者・東京電力とグルになって被害者を切り捨てようとしているのである。許しがたいことではないか。生産者・農家は、好き好んで、猛烈な放射能汚染農地で、猛烈な放射線被曝を覚悟しながら、農業をしているわけではない。被害者を愚弄するのもいい加減にせよ。

 

(6)読売新聞の記事によれば、大量に売れ残ってしまった米は、飼料用や加工用として、安い値段で引き取られていくという。国の支援で創設された業界団体の「米穀安定供給確保支援機構」(東京都)が今回買い取る米も同様であるという。しかし、汚染米を加工用や飼料用に使ったからと言って、それで放射能が消えてなくなるわけではない。それどころか、家畜という動物の体を通して放射性セシウムなどの放射性物質が濃縮され、人間の口に畜肉や酪農製品として入る頃には、それが何倍もの汚染となっている可能性もある。人間が食えないから、家畜や養殖魚の餌にすればいい、などというのは、サイテーのご都合主義であるし、加工食品の原材料にするというのでは、単に放射能汚染を見えなくして、いわば消費者・国民をだまして放射能汚染物を食べさせているようなものである。

 

 こういうことをしていると、米を餌とした畜産酪農製品や、米を原材料に使う加工食品に消費者・国民の不信感が広がり、それらが売れなくなってしまう危険性さえある。愚かなことはやめることである。また、県外に売れにくい米や自県産農林水産品を、ことさらに地産地消を強調して、学校給食の食材として使わせようとする強引な動きも散見される(さしあたり、いわき市の県産米の学校給食への使用は、一時STOPとなった様子、しかし、油断はできない)。売れ残りを消費させ、価格の下落に歯止めをかけるとともに、子供を「だし」に使って、安全性が確認されていない県産食品の「安全安心アピール」に使おうという魂胆である。教育委員会の中に、こうしたことを強引に推し進めようとする人間がいるようだ。まさに、教育者の風上にも置けない人間たちである。

 

 ちなみに下記に公表されている農林水産省の家畜及び養殖魚の飼料に関する放射性セシウム規制値についても、人間の飲食品にかかる規制値と同様、「科学的実証的根拠」に乏しく、とても安全と言えるような代物ではないことも付記しておく

 

● 農林水産省- 放射性セシウムを含む肥料・土壌改良資材・培土及び飼料の暫定許容値の設定について

 http://www.maff.go.jp/j/syouan/soumu/saigai/supply.html

 

(7)すべての問題は、放射能汚染地域で農林水産業を行うことから生まれている。福島第1原発事故による放射能汚染地地域(さしあたり空間線量で1mSv,ベクレル単位で300~500ベクレル/kg程度以上=18,000~30,000ベクレル/m2以上)での農林水産業を含むすべての産業活動をいったん停止し、汚染状況の低い地域から、綿密に、かつ慎重に、徐々に除染を進めていき、線量が下がったところで農林水産業を含む諸産業を再開するようにすべきである。

 

 その間は、汚染地域の住民には、一時的または恒久的に避難・疎開・移住をしてもらい、その間の仕事、生活、学校、ケアなどを国が補償する措置をとればいいのである。そうした、ごく当たり前の原発事故後対策を国や東京電力が、費用負担などを理由に拒み続けていることがものごとを難しくし、健康被害などの二次災害をもたらしつつ、多くの人々を不幸と苦しみのどん底に突き落としているのである。

 

 もういい加減にして、国はそろそろきちんと原発事故後対策・対応を実施したらどうなのか。

草々

 

(追)それから、「追撃」をかけるようで恐縮ながら、日本の米や食品の流通過程は、昨今では、政府・農林水産省・厚生労働省などの政策や監視・管理状態がひどいために、産地偽装をはじめとする偽装表示や格上げ混米などが横行しており、信用のおけない粗悪品や危険な飲食品が、たくさん流通・外食に出回るようになっている。産地表示で食品を買う場合も、偽装されている疑いがあることを十分に念頭において、商品選択を間違えないよう心掛ける必要がある。そして、ロクでもない、産業寄り・企業擁護の消費者行政や食品安全・表示行政を転換しようとしない日本の政府・政治、自民党や民主党の政権・政治に対して、私たちは厳しい審判を下すべきである。私たち有権者・国民は、私たち有権者・国民のために政治をしない人間達・行政をしない人間たちを、あらゆる権利を行使して、追放・交代させていく努力をする必要があるように思われる。

 

 

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