地球環境

2015年1月21日 (水)

広瀬隆さん著 『新エネルギーが世界を変える:原子力産業の終焉』(2011.8.15))=この書を読まずして再生可能エネルギーは語れない

前略,田中一郎です。

(別添PDFファイルは添付できませんでした)

 

みなさまご承知の通り、昨年暮れ、九州電力や北海道電力など、東京電力・関西電力・中部電力を除く地域独占の大手電力会社6社が、太陽光発電など、いわゆる再生可能エネルギーを源とする電力の買取を拒否し、福島第1原発事故後、せっかく盛り上がってきた我が国の再生可能エネルギー産業振興の大きな流れに水を差す、反国民的で許しがたい「権限の乱用」を行いました。その狙いは、大多数の有権者・国民がもはや不信の目で見ている原発を再び復活させるとともに、その妨げとなる再生可能エネルギーの台頭・普及を妨害するところにあり、まさに「政治的」で「不合理」で「理不尽」極まる、原子力ムラ・陰謀集団のなせる業でした。これは、再生可能エネルギーによる電力の優先的・悉皆的買取を定めた「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法」に違反する脱泡行為であるとともに、我が国の未来の可能性を踏みにじり、我々を放射能汚染による滅亡に導く反国民的暴挙であると言っていいと思います。

 

その後、この大手電力会社と、その代理店政府である経済産業省は、今後の再生可能エネルギーの買取ルールを見直すと称して、再生可能エネルギーの電力に対して様々な制約や規制をかけ、嫌がらせに近いような出鱈目なルール(案)を策定してパブリックコメントにかけています(他方で、原発については、稼働の見込みが立たないものまで、今後何年にもわたって、その「指定席」を空けて待ち続けるような、まさに「原発フル稼働」を前提にする、そんなふざけた「新ルール」になっています)。(それについては、先般、私のメールで、私の提出意見書も付して、みなさまにご案内申し上げております:下記「いちろうちゃんのブログ」参照)

 

しかし、今回このメールで私がご紹介申し上げたいのは、そのことではありません。今日のテーマは、この再生可能エネルギーと原発の問題を考え、議論する場合に、絶対に目を通しておかなければならない「必読の書」を1冊、ご紹介したいのです。それは作家の広瀬隆さんが2011年の夏(8月)にお出しになられた『新エネルギーが世界を変える:原子力産業の終焉』という本です。もし、みなさまがまだこの本に目を通しておられないのであれば、ぜひお買い求めの上、大至急お読みになってみてください。ここには、再生可能エネルギーと原発に関して、心得ておかなければいけない基本的な事実や知識、あるいは考え方などがしっかりと書かれています。たくさんの図表を使い、平易な表現で、誰にでもわかるように、かつ興味深く書かれていますので、読み始めますと引き付けられるようにして、一気に最後まで読破してしまえるだろうと思います。

 

別添PDFファイルには、この本の最初の部分で、私が重要と思った章を若干抜き出して添付しておきます。「原発がなくなれば、日々の電気が不足して、日本の経済や社会は立ち行かなくなる」「安価な原発を止めてしまうと電力料金が高騰して不況になってしまう・生活が苦しくなる」「原発・原子力は科学技術の粋を集めた未来発展型の先端産業である」などなど、原発・原子力の安全神話が崩壊してもなお、我が国では、かような愚か極まる「神話」、というよりも「悪質なデマ・でっち上げ」のたぐいの言論が(マスごみどものおかげで)世にはびこっております。私はよく街頭で、自分で作成した脱原発のレポートを配っておりますが、そうした時に、時折、この「悪質なデマ」に踊らされてなのか、上記のようなことを言って私につっかかってくる人に出くわすことがあります。私たち脱原発を志す者にとっては、こうした謬論は、もはや論ずるまでもないのですが、世の中では決してそうではなく、未だマスごみの垂れ流す「電力危機」の嘘八百や、「原発なくせば電気代が上がる」のインチキ論に洗脳されてしまっている人は少なくないのです。このことはきちんと認識しておく必要があります。原子力ムラ支配権力の一般有権者・国民に対するマインド・コントロールを甘く見てはいけないのです。

 

そして、そうした人と話をする際に、どうやって、そういう人の認識を転換していくか、その時の説明のシナリオを、私たち脱原発を志す者は心得ておく必要があるでしょう。この広瀬隆さんの著書は、まさに、その説得材料を見事なまでに完璧に用意してくれています。(そもそもこの広瀬隆さんの著書が、福島第1原発事故後の原子力ムラによる、嘘八百とデマの積み重ねによる「巻き返し」=原発は今後も必要不可欠である、に対して、それに(少なくとも議論上で)「とどめ」を刺すために書かれたものだと思われます。おそらく広瀬隆さんは超多忙の中で、たくさんの基礎データをお調べになり、お書きになったのだろうと推測しています)

 

また、別添PDFファイルには、この本の目次を付けておきましたが、それをご覧になるとお分かりのとおり、再生可能エネルギーと原発に関連して、コンバインドサイクル、燃料電池、コジェネ、マイクロガスタービンなどの、再生可能エネルギーに関する基礎的な知識の説明や、地球温暖化説に対する広瀬隆さんの考え方などが盛り込まれ、この本1冊で、多くのことが理解できるように書かれているのです。一部の人が誤解しているかもしれませんが、広瀬隆さんは決して再生可能エネルギー反対論者ではありません。それどころか、日本の滅亡危機を救う「脱原発」=原発・核燃料施設の即時廃棄とともに、再生可能エネルギーを正しく適切に導入していくことにより、日本のオルタナティブな未来社会や未来経済を切り開いていこうと主張されていますので、安心してお読みいただけると思います。

 

太陽光発電よりも太陽熱湯沸しの方が重要であること、原発を再生可能エネルギーに単純に入れ替えるという主張は「きれい」だけれども非現実的であること、エネルギー消費の9割は産業界であり、家庭部門はわずか1割に過ぎず、家庭内消費者個々人の「電力節約」などはほとんど何の効果もないこと=言い換えれば、エネルギー問題は産業部門で考えないと解決しないこと、電力の供給体制は十分すぎるくらいあって、電力はむしろ余っている(火力・水力は原発のために意図的にストップされている、自家発電がたくさんある、揚水発電はほとんど使われていない他)、電力の不足があるとすれば、それはさしあたり「ピーク電力」の問題であること、などなど、傾聴に値する日本のエネルギー政策抜本改革のエッセンスが説かれています。

 

私は、その広瀬隆さんのご説明に加えて、次の1点を強調して付け加えたいと思っています。

 

再生可能エネルギーの広範かつ大規模な導入は、エネルギーの供給サイドに着目するだけでなく、需要サイドについても、その「抜本改革」を考え着手しなければいけない。簡単に言えば、エネルギーの無尽蔵・無際限の消費を経済成長と称して手放しに「善」とする発想を捨て、エネルギーの消費を必要な限りでのものに抑えるとともに、そのエネルギーの効率的で安価な生産のみならず、効率的で安価な電力を可能とする「消費の在り方」を合わせて考えるべきであること、そのためには、エネルギーの消費を分散型でオンサイト型で、エネルギー効率の高いものにしていく必要があり、その実現のためには、我が国の産業構造を転換して「ソフト・インダストリー」経済を興隆させていくとともに、東京一極集中の経済社会構造を地方中心の分散型社会に転換し、更に私たちの会社や仕事の在り方=ビジネス社会の在り方を変えていく必要があります。

 

(エネルギーの消費構造を変えずに、エネルギーの供給サイドだけを再生可能エネルギーに入れ替えるという発想は、私は早晩行き詰まると考えています。再生可能エネルギー導入は、その消費構造の抜本改革とセットでなければ持続可能ではないのです。そして、そのエネルギー消費構造の根幹部分は産業界であり、ビジネスの世界の在り方がポイントであり、また、私たちの日常の消費生活の在り方は、今申し上げたビジネスの在り方を変えることによって変わってきます。ビジネスの世界をそのままにして、エネルギー節約のために禁欲する、などというのは「愚の骨頂」の典型で、日本人が大好きな「ほしがりません、勝つまでは」「ぜいたくは敵だ」の「負け戦」の伝統の現れのようなものです)

 

そして、このエネルギー革命とともに進展させるべき経済・社会の構造的変革は、長い期間をかけて、少しずつ少しずつ、匍匐前進をするように着実に実現していく必要があります。大規模で不可逆的な社会の変革ですから、1朝1日では実現はかないません。もちろんその過程で原発・核燃料施設は使用済み核燃料や放射能汚染物という重たい「負の遺産」だけを残してスクラップされますし、石炭火力なども、徐々に徐々に、そのシェアを小さくしていくことになるでしょう。そして、エネルギー革命とともに進捗した消費革命=新経済・社会の実現の暁には、放射能におびえる必要のない、地域資源豊かな、循環型で持続可能な経済や社会、仕事や生活が、私たちを迎えてくれるであろうと私は推測しています。(原子力ムラとともに原発を抱きしめて滅び去るか、それとも、新しい経済や社会を展望して未来に向けて出発するか、その分岐点にいる私たちの選択の基本の基本は「原発・核燃料施設の即時廃棄」以外にありません)

 

では、どうぞみなさま、広瀬隆さんの名著を手におとりになり、読み始めてみてください。

 

●『新エネルギーが世界を変える 原子力産業の終焉』(広瀬隆著:NHK出版)

http://www.e-hon.ne.jp/bec/SA/Detail?refShinCode=0100000000000032627523&Action_id=121&Sza_id=C0

 

 <別添PDFファイル>

(1)目次 (広瀬隆 『新エネルギーが世界を変える:原子力産業の終焉』(2011.8.15))

(2)原発は電力供給に不可欠な設備か (広瀬隆 『新エネルギーが世界を変える:原子力産業の終焉』(2011.8.15))

(3)電力会社はなぜ電力不足を訴えるか (広瀬隆 『新エネルギーが世界を変える:原子力産業の終焉』(2011.8.15))

 

(参考)「いちろうちゃんのブログ」より

● 再生可能エネルギーを押さえつけて、滅びゆく恐竜=原発にしがみつく地域独占の電力会社と経済産業省:再生可能エネルギー買取制度の改悪を許すな  いちろうちゃんのブログ

http://tyobotyobosiminn.cocolog-nifty.com/blog/2014/12/post-04ce.html

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