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2020年11月11日 (水)

(福島原発事故)生業(なりわい)訴訟仙台高裁判決をどう見るか:「責任論」ではほぼ完勝(但し、予見・回避義務は依然不問)、「損害論」では一歩前進あるも依然として敗訴

前略,田中一郎です。
(別添PDFファイルは一部添付できませんでした)


(最初に若干のことです)
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1.イベント情報
(1)(予約必要)(11.12)オルタナティブな日本をめざして(第52回):「感染症利権と新型コロナワクチンの危険性」(天笠啓祐さん:新ちょぼゼミ)- いちろうちゃんのブログ
 http://tyobotyobosiminn.cocolog-nifty.com/blog/2020/09/post-89177c.html

(2)(11.13)第10回【核ごみに関する政府との会合】質問内容とタイムテーブル - becquerelfree’s blog
 https://becquerelfree.hatenadiary.jp/entry/2020/10/31/085541

(3)(予約必要)(11.17)オルタナティブな日本をめざして(第53回) 「再び戦場の島とさせないために:沖縄・南西諸島への自衛隊基地建設を巡って」(伊波洋一参議院議員:新ちょぼゼミ)- いちろうちゃんのブログ
 http://tyobotyobosiminn.cocolog-nifty.com/blog/2020/10/post-58d8da.html

(4)(11.27)原発・核燃サイクルの即時中止を! 省庁・議員・全国市民の院内集会(参議院議員会館)
 http://www.labornetjp.org/EventItem/1604619732111matuzawa

(5)(11.27)日本原電 東海第二原発を止めよう! 集会(文教区民センター)
 https://cutt.ly/agVVn76

(6)(11.30)学術会議任命拒否 緊急院内集会(衆院第1議員会館 地下大会議室)
 https://cutt.ly/jgVnvCC


2.新刊書ご案内:新型コロナ禍の交通-上岡直見/著(緑風出版)
 https://cutt.ly/QgXRVRu
 http://sustran-japan.eco.coocan.jp/datafile/mokuji.pdf

(関連)池袋暴走事故に関する早川芳夫氏の記事を読んで気づいたこと(たんぽぽ舎MG)
 |  重大交通事故の人的要因は7%だけ
 |  不適切な道路構造や制限速度の設定が62%、
 |  車の安全装備不良が15%
 |  行政・メーカーなどの責任が問われないように
 |  ドライバー個人の問題に押しつけているのではないか
 └──── 上岡直見〔環境経済研究所(技術士事務所)代表〕

◎【TMM:No4051】(2020年10月12日)の池袋暴走事故に関する早川芳夫氏の記事を読んで気づいたことがあるので補足したい。最近の車はやたらと電子装置がついているだけにトラブルも発生しやすい。高速道路で車間距離維持機能を使用して走行していると、ブレーキランプが頻繁に点灯するため後続車から嫌がらせと思われて脅されたというトラブルも報告されている。

しかし、ディーラーに持ち込んでも異常はないとして相手にされず、「国民生活センター」に持ち込んでも「説明書をよく読んで利用して下さい」という無責任な回答で門前払いされた。「国民生活センター」の自動車担当の職員は自動車メーカーからの出向だという。このメルマガは原子力のテーマが中心だが、こうした日本の「無責任文化」が原子力などあらゆる分野に共通して国民の安全を妨げているのではないか。

◎外国ではもっと科学的な分析がされている。スウェーデンで「ビジョンゼロ」というプロジェクトがある。人間が運転している以上ミスは避けられないという前提で、ミスがあっても死亡・重傷に至らない対策をすべきだという発想である。

多くの死亡事故を科学的に分析したところ、人間の重大なミスに起因するのは7%に過ぎず、不適切な道路構造や制限速度の設定が62%、車の安全装備の不良が15%、残りは複数の要因が複合という結果が得られた。車の基本的な構造は世界共通であり、日本にも適用できるはずだ。

◎これに対して日本では「加害者がけしからん」「被害者がかわいそう」という感情論に持ち込まれて科学的な分析がされない。重大な事故が起きたら、予断を持たずあらゆる可能性を検討すべきだ。もっと踏み込んでいえば、道路構造や制限速度(行政)や車の安全装備(メーカー)などの責任が問われないようにドライバー個人の問題に押しつけているのではないか。

◎こんな状態で自動運転が拡大したら重大事故が続発して大変なことになる。現に米国では、自動運転中に前方のトレーラーを認識せず衝突、歩行者を認識せず衝突、分離帯に激突など重大事故が発生している。この比率を当てはめると自動運転が拡大したら現状よりはるかに交通事故死者が多くなる。この問題は拙著(※)で取り上げているので参照していただきたい。

◎(※)上岡直見『自動運転の幻想』緑風出版
 http://www.ryokufu.com/isbn978-4-8461-1911-9n.html


3.(他のMLでの議論)日本学術会議:注目すべきは6人ではなくて99人です(6人の方のうち4人は既に闘っています。問題はあと残り101人です)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
みなさま、今回の菅義偉スカ政権による日本学術会議人事への政治介入=政府に対する異論排除の動きについて、大事なことは、抗議活動を開始している4人(新聞報道やネットで具体的な動きを見てください。とりあえず抗議集会などに出られています)ではなくて、態度がはっきりしない2人を含む残り101人が、どういう振る舞いをするのかが重要なのです。

かつて戦前の滝川事件では、大日本帝国の治安維持法体制下にあり、既に昭和ファシズムの動きが顕著になってきていたにも関わらず、時の文部大臣=鳩山一郎の京都大学への権力的介入に対して、当時の京大法学部は全教授が抗議をして立ち上がっています。また、京大の学生たちもそうで、教授たちに続いて文部省・文部大臣に対して怒りのこぶしを挙げました。

しかし、今回の日本学術会議問題ではどうでしょうか? 曲がりなりにも日本国憲法で基本的人権はかろうじて守られているにもかかわらず、101人は何をしているのでしょう? 新聞報道では、既にへたれ牛会長と共に、菅義偉スカ政権に言われるがままに、日本学術会議の組織の在り方や運営の仕方などについて検討を始めるようなことが伝えられています。政府の人事への不当介入問題を棚上げにしたい・話をそらしてうやむやにしてしまいたい、そんな菅義偉スカ政権や自民党らの思惑に沿って動き始めているではありませんか。なぜ日本学術会議は、一致団結して、今回の人事介入に対して組織を挙げた強い抗議行動をとらないのでしょう?

排除された6人の教授が在籍する大学もそうです。それぞれの大学での教員や学生は何をしているのでしょう? 全学抗議集会でも開催されましたか? 大学の教員と学生が共に手を取り合って立ち上がる時ではないのですか? 日本学術会議のヘタレ牛会長に続けとばかりに、われ関せず、の態度ではないのですか? 自分たちの学問の自由が脅かされ、菅義偉スカ政権はもちろん、今後は政府に逆らえば排除する、という見せしめのようなことが行われていても、抗議の声一つ上げられないのでしょうか? それは今日の大学が、まさに腐っていて、政府の御用聞きのようなことしかできなくなっている明白な証拠ではないのですか。

上野千鶴子氏 「日本学術会議から「学術」を取れば日本会議」
田中一郎   「日本学術会議あらため日本処世術会議へ」

(関連)前川喜平氏「腰砕け」学術会議会長の首相への対応に - 社会 - 日刊スポーツ
 https://www.nikkansports.com/general/nikkan/news/202010170000554.html

腐った大学には、似非学問・似非科学が繁殖し、それはゆくゆく軍学共同や研究の支配権力・大資本下請け化を経由して、人類や地球の破壊・破滅へとつながっていくのです。原発・核とゲノム編集などのバイオテクノロジーがその典型です。

日本国憲法には、よく知られた次の条文があります。
第十二条 この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。

この憲法の条文に自ら率先して違反をし、「不断の努力」を放棄し、自ら進んで時の支配権力や大資本に額づいて、わずかばかりのカネと、みすぼらしいプライドや世俗的栄誉にしがみついている、それが今日の日本の大学教授・教員たちではないですか? ならば、自滅していくしかないでしょう。日本の大学はいまこそ解体せよ、それが私の当面の結論です。

違うというのなら、大学人たちは、学生も含めて、行動で示せ!


4.ワセクロ探査報道ジャーナリスト養成学校が開校、1期生は全国の若手記者やNGO職員ら43人ーニュース:ワセダクロニクル
 https://www.wasedachronicle.org/information/c20201107/


5.菅義偉スカ政権
(1)<野蛮な米国にも驚かされるが、この国はそれ以上>安倍、菅がやってきた周到 狡猾 言論統制 おぞましい全容(日刊ゲンダイ) 赤かぶ
 http://www.asyura2.com/20/senkyo277/msg/196.html
(2)米国は4年でトランプ追放 日本は安倍継承のスッカラカンでいいのか(日刊ゲンダイ)赤かぶ
 http://www.asyura2.com/20/senkyo277/msg/216.html
(3)スッカラカン答弁は早くも限界 国民は支離滅裂の新首相に愕然としている 日刊ゲンダイ 赤かぶ
 http://www.asyura2.com/20/senkyo277/msg/165.html
(4)【森友学園】真実知りたいが…誰も夫のように追い詰められませんように|日刊ゲンダイDIGITAL
 https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/280959
(5)【菅義偉】菅首相魂胆透ける 学術会議任命拒否“黒幕クビ”のシナリオ|日刊ゲンダイDIGITAL
 https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/280898
(6)室井佑月「声をあげよう」〈週刊朝日〉(AERA dot.) - Yahoo!ニュース
 https://news.yahoo.co.jp/articles/eb55b9af247aa89d91471a305065cf4ac832eae1
(7)誰も語らない日本学術会議に政府が介入する理由。それは「核ゴミ処理」問題だ!|週プレNEWS
 https://wpb.shueisha.co.jp/news/politics/2020/10/27/112302/
(8)浜矩子「信じるところが語られず、自助頼みの所信表明演説は僭越極まりない」 〈AERA〉|AERA dot. (アエラドット)
 https://dot.asahi.com/aera/2020110400054.html


6.「いちろうちゃんのブログ」より
(1)本日(10/31)のいろいろ情報:(1)デジタル監視社会(2)立憲民主党・枝野幸男氏の代表質問(3)菅政権が目指す恐るべき「反知性主義的統制」(4)11/1大阪市破壊構想住民投票(続)他- いちろうちゃんのブログ
 http://tyobotyobosiminn.cocolog-nifty.com/blog/2020/10/post-e2996a.html

(2)本日(11/7)のいろいろ情報:(1)外環道陥没事故(続報:巨大空洞見つかる)(2)製薬会社と大学教授(3)人骨問題を考える公開学習会@京都大学(4)アメリカ大統領選挙 他- いちろうちゃんのブログ
 http://tyobotyobosiminn.cocolog-nifty.com/blog/2020/11/post-4c3a28.html

(3)全員アベ友裁判官の最高裁以下、日本の裁判所に生息する腐ったヒラメ裁判官が下した「ヘドロ判決」陳列台=衆院選時の最高裁判事の国民審査では、候補者全員に「×××××」をつけ続けましょう- いちろうちゃんのブログ
 http://tyobotyobosiminn.cocolog-nifty.com/blog/2020/10/post-f89fc8.html

(来たる11/12の「新ちょぼゼミ」(上記)から複数回にわたり、「有権者・国民のための裁判所を目指して(第二次司法民主化)」をテーマにプレゼンを始めます。丁寧に、しかし、しっかりとご説明したいと考えています。是非ご参加ください。日本国憲法問題にも関連しています。:田中一郎)
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「東京電力福島第一原発事故時に住んでいた福島県、隣接する宮城、茨城、栃木3県で被災した約3650人が国と東電に損害賠償などを求めた訴訟の控訴審判決で、仙台高裁(上田哲裁判長)は9月30日、国と東電に対し、原告3550人に計約10億1000万円を賠償するよう命じた。約2900人への計約5億円の賠償を命じた1審福島地裁判決より救済範囲を広げた。」(東京新聞 2020.10.1)

福島第一原発事故をめぐる損害賠償裁判でも最大規模の訴訟の判決が仙台高裁で下され、控訴審では初めて東京電力や国の事故責任を完全な形で認める、これまでの判決では「もっともいい判決」となりました。原告団・弁護団をはじめ、全国の支援者の方々からも「完全勝訴」との声が上がるほどで、「福島地裁への提訴から約7年半と長い闘いの末に勝ち取った司法判断に、原告らは涙を流して喜んだ。」(毎日新聞 2020.10.1)とあります。記事を読んでいるだけで目頭が熱くなります。きっと私も判決日に仙台高裁に駆け付けていたら、原告の方々と共に涙していたように思います。

まだ最高裁での上告審があり、裁判闘争はこれからも続きますが、原告のみなさまには引き続きお元気でご奮闘されんことを祈願いたしております。また、馬奈木厳太郎弁護士をはじめ、この訴訟の原告弁護をお引き受けされた弁護団のみなさまには、心より敬意と感謝の意を表したいと思います。本当にご苦労様です。上告審においても何卒よろしくお願い申し上げます。

それにしても、何の非もない福島原発事故の被害者の方々が、何ゆえに理不尽極まる困苦にさいなまれ、何年もかかる裁判まで起こして自分たちの権利を守らなければいけないのでしょうか? 原告の方々の求めるものは、原発事故前に戻してほしい、原発事故で奪われた平穏な生活やふるさとを返してほしい、という、ごくごく当然のつつましいものです。その求めを(いい加減な原発管理をしていた)加害者・東京電力や事故責任者・国が、原発事故後において真摯に対応することなく、責任を背負うこともなく、誰一人として罰せられることもなく、まるで被害者を踏みにじるようにして再びの原発・核燃料サイクル施設再稼働に踏み出していることはみなさまご承知の通りです。原発や核燃料サイクルなら何をしてもいいとでも言うのでしょうか? この国は明らかに狂っています。今回の仙台高裁判決は、その歪んだ日本社会に一石を投じるものとなったように思います。

しかし、事はそれでは済みそうにありません。メールの表題にも書きましたように、この裁判は福島原発事故にかかる刑事責任を追及する裁判ではなく、事故による被害の賠償・補償を求める民事裁判であり、その観点から見た場合には、依然として賠償・補償を受ける金額が少なすぎて、とてもこれでは被害者の生活や人生を再建することはかないません。その金額算定の根拠となっている理屈は不当なものと言わざるを得ません。

また、福島原発事故の責任に関しても、裁判の争点となった事項については原告側の主張を全面的に認めてはいるものの、しかし、真の事故の責任は、それで完全に追及されたとも言えないのです。また、裁判所は、原発事故の損害賠償額を極端に絞り込むことにより、いわば「名を捨てて実を取った」とも言えなくはなく(加害者・東京電力や事故責任者・国の原発事故に関する責任を認めながらも、それに反して「逆方向に」東京電力や国の損害賠償額を極小化した)、依然として、有権者・国民や原発事故被害者の基本的人権を守る姿勢において、消極的であり不十分な判断を続けています。許せんな、というのが正直な印象です。

以下、私から見た「生業(なりわい)訴訟」仙台高裁判決についての問題点を、簡単な形で箇条書きにし、みなさまに問題提起したいと思います。私は原発・核燃料サイクル施設の過酷事故を二度と起こさないためにも、福島第一原発事故にかかる刑事および民事の裁判は非常に重要であると考えており、被害を受けられた方々の救済のみならず、将来へ向けての(再発防止の)「布石」としても、まっとうな判決をしっかりと勝ち取り、正すべきものは正していくべし、と考えています。


 <別添PDFファイル>
(1)2審も国の責任認める「規制役割果たさず」高裁初判断 福島原発被災者訴訟(東京 2020.10.1)
http://genpatsu.tokyo-np.co.jp/page/detail/1694
ダウンロード - efbc92e5afa9e38282e59bbde381aee8b2ace4bbbbe8aa8de38281e3828b20e3808ce8a68fe588b6e5bdb9e589b2e69e9ce3819fe38195e3819ae3808de9ab98e8a381e5889de588a4e696adefbc88e69db1e4baac202020.10.1efbc89.pdf
(2)東日本大震災、原発事故、高裁も国に責任初認定 福島集団訴訟(毎日 2020.10.1)
 https://mainichi.jp/articles/20201001/ddm/001/040/172000c
(3)生業訴訟仙台高栽判決を読む(京都民報 2020.11.1)
ダウンロード - e7949fe6a5ade8a8b4e8a89fe4bb99e58fb0e9ab98e6a0bde588a4e6b1bae38292e8aaade38280efbc88e4baace983bde6b091e5a0b1202020.11.1efbc89.pdf

 <福島原発訴訟原告団・弁護団>
(1)【勝訴】仙台高裁 判決要旨
 https://cutt.ly/YgVmf7V
(2)【勝訴】仙台高裁【勝訴】 - 2020年度 - 生業訴訟原告団・弁護団
 http://www.nariwaisoshou.jp/progress/2020year/entry-845.html
(3)【勝訴】仙台高裁 判決文【勝訴】 - 2020年度 - 生業訴訟原告団・弁護団
 http://www.nariwaisoshou.jp/progress/2020year/entry-846.html
(4)『生業(なりわい)を返せ、地域を返せ!』福島原発訴訟原告団・弁護団
 http://www.nariwaisoshou.jp/

(参考)【速報!国と東電に勝訴!】判決要旨・骨子 - 2017年度 - 生業訴訟原告団・弁護団(一審福島地裁判決)
 https://cutt.ly/PgVDg53


 <関連サイト>
(1)「完全勝利」原告団長中島さん 原発頼みの国に怒り<原発被災者訴訟>:東京新聞 TOKYO Web
 https://www.tokyo-np.co.jp/article/58870
(2)「国の責任明確」「賠償基準の不十分」認める画期的な判決 原発被災者訴訟 東京新聞TOKYO Web
 https://www.tokyo-np.co.jp/article/58877
(3)「止めよう!再処理」天恵の海 第211号
 http://sanriku.my.coocan.jp/no.211.pdf
(4)原発事故で国の責任認める 仙台高裁 2審で初めて - NHKニュース
 https://cutt.ly/ZgVmxzs
(5)生業訴訟の高裁判決について報道(東京合同法律事務所)
 https://www.tokyo-godo.com/blog/2020/10/post-180-752870.html
(6)福島原発集団訴訟、控訴審で初の「国に責任」認める判決(週刊金曜日) - Yahoo!ニュース
 https://news.yahoo.co.jp/articles/b3e918b431cdfdcd94dfc051e5dbd72e4810d53c
(7)福島原発訴訟、国と東電が「全面敗訴」の衝撃 - 災害・事件・裁判 - 東洋経済オンライン
 https://toyokeizai.net/articles/-/380187
(8)9月30日 原発事故の責任はどこにあるのか。国と東電を訴えた「生業訴訟」判決の行方  #福島を忘れない - YouTube
 https://www.youtube.com/watch?v=WqNwfL-fMLE&feature=youtu.be

◆日刊IWJガイド・非会員版「福島第一原発事故をめぐる『生業訴訟』で第2審判決!! 仙台高裁は『国が東京電力に対策を求める権限を行使しなかったのは違法』として、総額10億1000万円の支払いを命じる!」2020.10.1号~No.2940号 - What's New お知らせ
 https://iwj.co.jp/info/whatsnew/guide/47529

◆仙台高裁勝訴の生業訴訟原告団が東電、原子力規制委員会、国に上告断念を要請! しかし原子力規制庁は原告団庁内立ち入りを拒む非礼!~10.7 #生業訴訟 #国と東電は上告するな 生業訴訟原告団・弁護団 による申し入れ・座り込み - IWJ Independent Web Journal
 https://iwj.co.jp/wj/open/archives/482265


1.責任論
 一審福島地裁判決のように、国の責任は認めたものの、その重さは東京電力の1/2だなどという、まるでトンチンカンのバカバカしい忖度ヒラメ判決ではなく、加害者・東京電力と事故責任者・国の福島原発事故にかかる責任を等しく認めたことは、大いに評価されていいと思われる。しかし、この責任論についても、今回の判決をもってしても、まだ問題点として、下記のような諸点が指摘できる。

(1)刑事上、民事上、行政法上の責任と再発防止
 福島原発事故は文字通り国を滅ぼしてしまいかねない大事故であり、それまでの原発推進派たちが提唱していた「絶対安全」(過酷事故は起きない)は真っ赤な大ウソであったことが明らかとなった。また、事故に至る過程を検証してみると、東京電力や原子力安全保安院あるいは原子力安全委員会など、原発推進関係当事者・責任者たちの実にいい加減で弛み切った管理姿勢が明白となった。従って、当然のことながら、この福島第一原発事故にかかる責任を追及し、その償いをさせるための営みは、刑事、民事、行政法の3つの次元で徹底してなされる必要があり、それがまた原発・核燃料サイクル施設の過酷事故再発を防ぐ最も重要な取組の1つでもあるが、しかし、この国での事故後のあり様は、そうした必須事項を避けて通る「総無責任体制」を追認するようなありさまとなっている。まるでアジア太平洋戦争敗戦後の日本社会の対応の仕方と酷似している。今回の裁判は、この3つの次元の責任のうちの民事責任の追及とその償いを求めるものであるが、下記にも見るように、主に「損害論」(賠償補償論)で不十分なままである。

また、他の2つ、①刑事責任については、福島原発の運営維持や規制管理、あるいは製造に関係していた責任者たちの多くが起訴されなかったことに加え、起訴された唯3人の東電幹部の刑事裁判でさえもが、永渕健一裁判長、今井理、柏戸夏子という典型的な腐ったヒラメ裁判官達によって無罪放免とされ(東京地裁判決)、また、東京電力という会社自体の組織的犯罪性も不問状態となっている。要するに、今のところ、福島第一原発事故というとてつもない巨大事故についての刑事的責任をだれも取らない状態に陥っており、日本という国のデタラメな無法状態が放置されているということだ。

また、②行政法上の責任についても、原発過酷事故を引き起こした東京電力については、原発の運転免許は当然のごとく剥奪されてしかるべきが、これを許認可官庁の経済産業省は放置したままにし、逆に、今やその経済産業省の出先機関・下請組織のようになってしまった原子力「寄生」委員会・「寄生」庁が、逆に東京電力に柏崎刈羽原発の再稼働を認めるという、トンデモ決定を行って居直っている状態である。こうした事態を鑑みれば、原発・核燃料サイクルをめぐる情勢は、福島第一原発事故前よりも一段とひどくなり、ハチャメチャの状態にあると言っても過言ではないのである。再びの原発・核燃料サイクル施設過酷事故が現実味を帯びてきている。

(関連)東電福島原発事故刑事裁判 東京地裁判決は「全員無罪」=日本の司法は「暗黒時代」へ突入(その2):東電幹部3人を最初から無罪放免する方針で起訴・裁判に臨んでいた日本の司法・裁判所・検察- いちろうちゃんのブログ
 http://tyobotyobosiminn.cocolog-nifty.com/blog/2019/10/post-3ee520.html

(2)証明責任
 裁判官の訴訟指揮において、被告(東京電力と国)に「福島原発事故の責任がある」ことを原告側に立証させるよりも、原発に関する情報を独占していた被告側に「福島原発事故の責任はない」ということを実証させる説明責任を大きく背負わせたことは実に適切な判断だった。かつて1970年前後の公害裁判においても、たとえば富山「イタイイタイ病」の原因物質がカドミウムであることについて、「そうだ」という説明を原告側がするのではなく、原告側は「そうだと思われる一般的な蓋然性・妥当性を示せばよい」とされ、それ以上のことは、つまり「カドミウムが原因ではない」ということは、情報を独占している被告企業側に立証責任を負わせた「判例」が定着していた。これが今回の裁判で踏襲されたことは大きな前進であった。

(3)予見可能性・回避可能性
 問題は、この裁判の「責任論」が、一般の業務上過失事故の場合と同じように(事故の)「予見可能性」と「回避可能性」という「可能性」の是非について争われた点である。原発・核燃料サイクル施設は、万が一の過酷事故を引き起こせば、深刻な放射能汚染が広域にわたって広がり、一国を滅亡させるほどの被害や損害をもたらすが故に、絶対に引き起こしてはならない事故でもある(そんなものを発電用に使うこと自体が犯罪であるが、それはさておき)。であればこそ、こうした施設に関しては、一般の施設よりもより厳格な責任論が適用されなければ、万が一の事故も起きかねない故に、この裁判を含めて福島第一原発事故の責任を問う裁判では「予見可能性」ではなく「予見義務」、「回避可能性」ではなくて「回避義務」が、事故前に十全に果たされていたのかどうかが問われなくてはならない。

従って、この裁判で「予見可能性」と「回避可能性」という「可能性」の是非について争われたこと自体が、既に被告を無罪放免せんとする隠された意図を半分実現しているようなものと言えなくもない。これはこの裁判への批判というよりは、東京電力刑事裁判を含むすべての福島原発事故関連の裁判の「責任論」に共通したことであり、つまりは日本の法曹界の原発・核燃料サイクル施設への危機感の欠如と批判力の乏しさ、あるいは従来踏襲主義の悪弊を示していると言える。

この点に関して適切な対応をしておられるのが、井戸川裁判(福島被ばく訴訟)の弁護団長を引き受けておられる古川元晴弁護士である(下記参照)。なお、昨今では、いくつかの福島原発事故関連裁判で、被告側が「原発の危険性とそれが大事故につながるリスク」に関する情報について、もっと十分に注意を払う必要と責任があったという「関連情報注意義務」論を原告側が展開し始めている様子もあり、一歩前進かなと思っているところである。

(関連)井戸川裁判(福島被ばく訴訟)を支える会
 http://idogawasupport.sub.jp/
(関連)福島原発、裁かれないでいいのか-古川元晴/著 船山泰範/著 本・コミック : オンライン書店e-hon
 https://cutt.ly/2gVQ1Oc

(関連)東電福島原発事故刑事裁判 東京地裁判決は「全員無罪」=日本の司法は「暗黒時代」へ突入(その3):真相究明も、社会正義の実現も、日本を亡ぼす原発・核施設過酷事故再発防止も実現できない日本の裁判- いちろうちゃんのブログ
 http://tyobotyobosiminn.cocolog-nifty.com/blog/2019/11/post-679855.html

それからもう一つ申し上げておくべきは、(事故の)「予見可能性」と「回避可能性」を追及するため、原告側がこの2つを立証せんとして、東京電力の内部資料や政府事故調査委員会の証言録など、あらゆる資料を使って論陣を張ったことについてである。私はこの努力自体を高く評価していて、こうした裁判での取組によって、福島第一原発事故の実態やその原因と結果について、私たち一般市民にも詳しく「見える」形にしてくれたことが非常に重要で価値のあることだったと認識している。膨大な資料を読み解き、まるでジグゾーパズルをつなぎ合わせるかのようにして真相の解明にあたってくれた多くの弁護士やジャーナリストには心から感謝している。また、その中で併せて、原発事故後も原子力ムラ勢力に占拠されている原子力規制当局その他の政府関係機関が、口先では耳障りのいいことを繰り返しながらも、実際は安全対策の手抜きを隠蔽したり、なすべきことの歪曲・矮小化・先送りなどを繰り返してきたあり様も明らかにされ、福島第一原発事故の全貌が浮かび上がってきたのである。

しかし、残念ながら他方では、これが裁判での証拠として提出されることにより、上記の「2つの義務」論とも関連して、原発過酷事故を引き起こした犯罪者たちを有罪に追い込むための「立証ハードル」が結果的に高くなってしまうことを恐れるのだ。つまり、「ここまで立証しないと有罪には追い込めない」という判例というか、既成事実が出来てしまうということだ。

これは実にマズイ。何故なら、今回は「初めての原発過酷事故」だったために被告たちが混乱し、その事故に至るまでの経過を示す証拠類が残存していたのだけれど、次回以降は「福島第一原発事故の教訓」として、被告=原子力ムラ連合は、事故後に責任追及の材料となるであろう資料類はさっさと破棄してしまうと考えられるからである。事実、既に福島県庁は、その出鱈目極まる原発事故後の振る舞いが事後的に検証されないよう、関係する公文書類を廃棄してしまっており、さながら森友文書を廃棄していた財務省顔負けの状態にある(東京新聞「こちら特報部」2020.11.8記事)。

つまり、(事故の)「予見可能性」と「回避可能性」の追及のための立証活動が、原発事故責任者の有罪ハードルを引き上げてしまうという皮肉な結果となるということである。従ってまた、古川元晴弁護士がなさっているように、「可能性」ではなくて「義務」の追及=過酷事故を予見して防止するという「原発・核燃料サイクル施設運営者・監督者の順守すべき義務」が十全に果たされたのかどうかを、原告側ではなく、事故を引き起こした被告側が立証しなければ有罪となる、という「判例」を、原発事故をめぐる裁判では積み重ねなければならないのである。私は日本の法曹界に「早く目を覚ませ」と申し上げたい。

(5)原発メーカーの責任
 福島第一原発事故の責任論で欠落していることの一つに、過酷事故を引き起こして深刻化させてしまうような欠陥原発を造った原発メーカーの製造物責任がある。このメーカー責任は原子力損害賠償法という歪み切った法律により(アメリカからの技術輸入で原発実用化が始まった1960年代に、アメリカの原発メーカーを免罪するために創られた法律で、原発過酷事故の責任は原発運営を行う電力会社に無過失無限責任として集中させるという違憲立法)、あらかじめ「免罪」されているというのが法曹界の一般的な認識であるという。しかし、この法律が違憲立法であるのだから、当然、免罪してはいけない。しかし残念ながら、既に、この原発メーカーの責任を追及した「メーカー訴訟」は最高裁で敗訴してしまっている。従って、今後のことを念頭に、原子力損害賠償法の改正は必要不可欠である(無限責任とされながらも、電力会社がその責任を遂行する・できるための保険付保義務など、損害賠償規定についても全くの形だけの法律になっている点も改正が必要だ)。

(6)原発事故後の対応のひどさへの責任
 この点も被告の東京電力や国の責任論から欠落している点である。具体的な事例は山ほどある。SPEEDIの情報隠し、スクリーニングをはじめとする初期被ばく測定の妨害、避難指示の出し方の決定的なおかしさとその範囲の狭さ、除染事業のデタラメ、ADR拒否など賠償・補償への不誠実と水面下での賠償額つぶしの動き、放射能汚染地帯の学校教育現場での子どもたちの放射線被曝回避の取組の欠如、事前の原発防災訓練や緊急時の申し合わせ事項(約束)を一方的に反故にしてしまったこと、東京電力の株主や大口債権者の責任免罪などなど、許しがたい「総無責任体制」という国策遂行の犯罪性と、原告を含む原発事故被害者へのひどい「しうち」などが挙げられる(生活の再建もままならないままに原発事故被害者・避難者への支援住宅を取り上げるなど言語道断の人権侵害だ)。これらの「原発事故後責任」の追及も欠かせない点である(上記でご紹介した「井戸川裁判(福島被ばく訴訟)」や「子ども脱被ばく裁判」が、この原発事故後の政府や東京電力のひどい対応責任を追及している)。


2.損害論
(1)原状回復義務と損害額算定
 この裁判の「判決要旨」を見ると、原告側は損害賠償として、具体的に①「原状回復請求」②「平穏生活侵害に基づく損害賠償」③「ふるさと喪失による損害賠償」の3つを求めていたとある。このうちの「原状回復請求」については、この判決では「被告らに求める作為の内容が特定されていないから不適法な訴えだ」として門前払いを食らわせた。ふざけるなという話である。「具体的な作為は被告側で考えて、一刻も早く原状回復を計れ」とするのが正当な判決である。そしてそれに付け加えるとすれば、放射能汚染が深刻で原状回復がかなわない場合には、原状回復に相当する状態を原告各位に保障できる金銭的補償をもってそれに代替することができる、とすべきである。

また、この①「原状回復請求」は、②や③の賠償請求とセットになって初めて、理不尽な原発事故の被害を受けた方々の救済が可能となるのであって、①だけを切り離して、まともな検討もせずに切り捨てることは、裁判所自らが人権侵害を追認することになる。賠償・補償とは、あくまで被った被害を回復させることが主目的であり、それに迷惑料や慰謝料や悪質性加算などが加わる。この①は、まさに「被った被害を回復させること」を表現した請求なのであって、ここを切り捨てたら損害賠償訴訟は否定されたも同然となる。何度も申し上げるが、裁判官どもよ、ふざけんじゃねーぞ、ということだ。お前たちも同じような目にあってみればよく理解できるだろうということだ。

(2)賠償すべきは直接損失の全て(再構築コスト)と機会費用
 上記で申し上げた「被った被害」とは、被害者の全ての被害でなければならず、その損害額の算定は「時価」ではなく「再構築コスト」(同様のものを同様のレベルで回復させるために要する費用)でなければならない。たとえば(減価償却が終わった)中古の農機具が放射能汚染などで使えなくなれば、それと同等の農機具を用意する(できなければ新品で代替する)ことが必要で、間違っても減価償却終了後の二束三文の時価では「償う」ということにはならない、ということだ。

そして更に申し上げておくべきは、理不尽な原発事故に突然巻き込まれたが故に、多くの時間や機会を奪われたこと、それに対しても機会損失の賠償を受ける権利がある。例えば、レンタカーで事故を起こせば、そのレンタカーの修理代金に上乗せして「休業補償」が請求される。それと同様のことを申し上げている。しかし、日本のクソ裁判所・裁判官どもは、どういうわけか原発・核燃料サイクル施設からみの賠償や補償では、こうした「機会費用」を全く払わせようとはしていない。判断を政治的にしていて、弱い立場で従順な被害者・住民を踏みにじっても問題にはならないだろうとタカをくくっているということだ。

ここでも「裁判官どもよ、ふざけるな」と申し上げなければいけない。(農業者の所得機会損失を補償するのに、放射能で汚染された農地で耕作を継続していなければ、賠償・補償をしない、などという許しがたい人権侵害も行われている!! どうなっとんダ、この国は!!)

(3)無用の放射線被曝をさせられたことへの慰謝料(被ばくをしない権利の侵害)
 「NO NUKES RIGHT」という言葉で福島第一原発事故後に市民運動・社会運動に広がった概念であり、全く当然のことである。自然態で既に存在している放射能や放射線被曝に少したりとも原発推進に伴う放射線被曝を上乗せされること(追加被ばく)は拒否する権利、言い換えれば、加害者がいて、その追加被爆を広範な人々にさせることで巨額の利益まで得ている状態などは許さない、という権利の主張のことである。これはこれからの日本や世界では重要な人権の1つとなっていくだろう。この裁判で言えば、「平穏生活侵害に基づく損害賠償」の中に包含されていると言ってもいい。

(4)地域全体が居住困難になるなどコミュニティ喪失の損害(ふるさと喪失)
 ③「ふるさと喪失による損害賠償」がこれにあたる。今回の裁判では、②「平穏生活侵害に基づく損害賠償」とともに一定程度が認められた。大きな前進の1つである。また、多くの原発事故損害賠償裁判で、この損害賠償を原告側が主張しているが、そこでもこの生業訴訟の判例が踏襲されていくことを強く望む。私はそれだけでなく、原発事故後の被害者救済を含む大震災・大災害の事後支援政策において、このコミュニティの可能な限りでの維持や、培われてきた人間関係の継続などが、十分すぎるくらいに配慮され尊重されることを強く望みたい。

昨今の劣化した無責任な自治体行政では(災害復旧の仕事は自治体の仕事)、事なかれ主義や形式的平等主義がはびこり、仮設住宅や災害復興住宅への入居を単純抽選で決めたりしていて、どうもそのサービスの質的低レベルに苛立ちを覚える。東日本大震災の場合は、その前の阪神淡路大震災の時の教訓が有効に活かされていないのだ。また、お粗末仮設住宅の問題や、その仮設に超長期間放置される理不尽、あるいはそうした避難所施設にはコミュニティ活動を担保するものが何もない問題、などなど、有権者・住民をないがしろにするような災害行政は、もういい加減にしろ、と言いたい現状がある。

(5)原子力損害賠償紛争審査会の賠償指針とその位置づけ確認
 原子力損害賠償紛争審査会の賠償指針については、審査会自身が「これは最低限度の共通事項を書いたもの」であって、実際の賠償はその被害実態に合わせて柔軟に増額すべきである、と何度も表明しているにもかかわらず、加害者・東京電力や事故責任者・国は、これを無視して、賠償指針をあたかも「最高限度額」であるかのように扱っている。ここでも、ふざけるな、である。この裁判では、原告への賠償・補償について、この賠償指針を超えて、その地理的範囲や金額を上回るものを認めており、一定程度評価できる。

しかし、そもそもこの賠償指針の内容自体が事実上、被害者切捨て的な内容となっており、原発事故に伴う被害実態とは大きくかけ離れている状態にある。これを適正化することこそが物事の本命である。現行の賠償指針(中間報告など)を廃棄し、原子力損害賠償紛争審査会のメンバーを総入替して新たな賠償指針を策定し、被害者救済に国として全力を挙げる必要がある。にもかかわらず、下記の原子力損害賠償紛争審査会の鎌田薫会長は「直ちに指針を改定するものではない」などと消極的態度を示しており、大問題である。(特に避難指示区域外への賠償・補償がひどい)

(関連)国指針、強まる見直し要求 広範に賠償認定―福島原発事故避難訴訟・仙台高裁判決:時事ドットコム
 https://www.jiji.com/jc/article?k=2020093001272&g=soc
(関連)復興拠点の整備状況確認 原賠審委員、浜通り3市町視察 - 福島民報
 https://www.minpo.jp/news/moredetail/2020090378627

(6)避難指示区域 
 賠償金額が小さすぎることについては、これまでも繰り返し申し上げてきたが、更に問題は、その賠償金額が事故後の避難指示区域の区分けに従って決められていることである。国が賠償金額の極小化を強く意識して事故直後に決めた「警戒区域」「計画的避難区域」「緊急時避難準備区域」「特定避難勧奨地点」及び福島県内・県外と、その後それを再編した「帰還困難区域」「居住制限区域」「避難指示解除準備区域」については、その区分けに科学的根拠はない。放射能の汚染はこうした区分けとは無関係に、県境を越えて広範に広がっており、従ってまた、被害者の損害・被害の度合いも、この区分け線引きによっては合理的に区分できない。しかし、これまでの福島原発事故損害賠償裁判では、この非科学的で無意味な「区分」「線引き」に従って賠償金額が決められていることに異を唱えた判決は、今回の仙台高裁判決を含めて皆無である。これは全くいただけない。損害論を矮小化する不当判決と言わざるを得ない。

(関連)避難区域の変遷について-解説- - 福島県ホームページ
 https://www.pref.fukushima.lg.jp/site/portal/cat01-more.html

なかでも「特定避難勧奨地点」をめぐるデタラメぶりはすさまじく、それについては「南相馬・避難20ミリシーベルト基準撤回訴訟」において告発され、責任追及されているので、詳しくはそちらの裁判状況をご覧いただきたい(下記サイト参照)。

(関連)南相馬・避難20ミリシーベルト基準撤回訴訟支援の会
 http://minamisouma.blogspot.com/

(7)無過失、過失、未必の故意
 民事・民法上の損害賠償訴訟において、原発以外の事件における訴訟の場合と同様に、加害者・東京電力や事故責任者・国は「無過失なのか、過失なのか、未必の故意なのか」が厳しく問われなくてはならない。そして当然ながらその結論が、支払われるべき損害額や補償金額に反映されて、無過失よりも過失、過失よりも未必の故意、の方が金額が大きくなってしかるべきである。しかし、この裁判でも、他の多くの裁判でも、このことが厳しく問われた様子はうかがえない。明らかにおかしい。私は、東京電力も国も、原発安全神話に立脚して、総無責任体制の下で、地域住民のことを甘く見て、未必の故意でやっていたと考えている。許せんワ、こんなもの!

(8)証明責任
 損害の有無や損害額算定の証明は簡素なもので良い。東京電力は、賠償請求の際には詳細な資料を被害者に要求して、請求そのものを抑止する姿勢にあるが、許されることではない。簡素な事実の証明で事足りる。それ以上のことは(賠償しない根拠など)、加害者・東京電力や事故責任者・国の側で立証せよということである。

(9)経過時間の問題(法定利息以上の利率で払え)
 裁判の長期化に伴う賠償金の遅延利息については、既に原告側が請求をしているが、これがきちんと扱われた様子はない。私は福島第一原発事故が被害者らにもたらした悲惨な現実を鑑みた場合、この賠償・補償支払いの遅延・長期化については、法定利率を上回る「加害者加算利率」で計算すべきであると思う。


3.最高裁での上告審
 既に申し上げてきたように、アベ政権長期化の帰結として、最高裁判事が全員「アベ友」となってしまっており、中には元加計学園の監事だった人物までいる状態だ。上告審における審理と判決に対しては万全の警戒と全力投球が必要である。特に、今回の仙台高裁の生業訴訟判決を下回るような判決は出させないような、広範な世論の喚起が必要不可欠である。市民運動・社会運動は、福島第一原発事故に伴う被害者救済の運動は、これからが本番、と考えるべきである。われら支援者は、つまらぬことでもめている場合ではなく、一致団結・一丸となって、この最高裁上告審を応援・支援しなければならない。また、日本の司法改革については11/12から複数回にわたり、私の方からご説明したいと考えている。

(関連)生業訴訟原告団が上告しました(東京合同法律事務所)
 https://www.tokyo-godo.com/blog/2020/10/post-188-754214.html
(関連)生業訴訟最高裁へ 国と東電、住民双方上告 - 福島民報
 https://www.minpo.jp/news/moredetail/2020101480005

(関連)原発事故「生業訴訟」最高裁へ 原告一部と国、東電が上告:福島民友新聞社
 https://www.minyu-net.com/news/sinsai/news/FM20201014-546563.php
(関連)東京電力 控訴審判決は不服 原発事故をめぐる集団訴訟で最高裁判所に上告へ FNNプライムオンライン
 https://www.fnn.jp/articles/-/94829


4.福島原発事故損害賠償裁判に関連した今後取り組むべき課題
(1)原発・核燃料サイクル施設の過酷事故への備え
 原発・核燃料サイクル施設の立地条件や原子力工学上の安全の確保、避難計画の実効性の確保や事故後の被害者の適切な疎開・移住の補償・支援体制、原発事故被害者の実態把握(避難した人としていない人について、その実態把握をきちんとしなければいけないのだが、福島第一原発事故の場合は、今日に至るも避難した人々の実態把握どころか、その人数さえも把握されていない状態だ=国や福島県及びその隣接被害都県の怠慢と不作為に強い憤りを感じる)、事故後の賠償・補償に関するきちんとした取り決め、事故後の被害者の生活フォローやメンタルケアー、放射能汚染防止法の制定(環境法制上で放射能汚染防止をきちんと定める=現状は原発・核燃料サイクル推進法制の中での決め事しかない、また、過失又は未必を含む故意により放射能汚染をもたらした者を法律で罰するという刑事罰法を含む)、放射線被曝に伴う健康への影響への対応(被ばく手帳の配布や定期的健康診断・医療の無料化など)などである、そしておそらくは、こうした決め事をきちんと作れば、そんなことをしてまで原発・核燃料サイクルを推進する意味はないということになり、我が国の脱原発を促進する最も有力な決め事になるものと推測される。

(関連)制定しよう放射能汚染防止法 総理!逃げた後はどうなりますか-山本行雄/著(ブイツーソリューション)
 https://cutt.ly/JgVPw1Y

(2)原子力損害賠償法の改正
 原発・核燃料サイクル施設過酷事故被害者の救済がきちんと進まない大きな原因の1つに「原子力損害賠償法」のおかしな取り決めがある。これについては、既に過去に「新ちょぼゼミ」でも取り上げて、竹村英明さんに詳しくご説明いただいている(下記)。それらを参考に、今後は脱原発の市民運動・社会運動も真剣に取り組んでいかなければならない課題である。

私が念頭に置く原子力損害賠償法の改正事項とは、例えば次のようなことである。①被害実態把握の適正化(放射能汚染や被害実態に対応した損害賠償の規定)、②無限責任を担保する保険などの義務化、③メーカー責任の明記、④無過失、過失、未必の故意で差を設ける、⑤原子力損害賠償紛争審査会の抜本改善、⑥原発事故損害にかかるADRの改善(加害者・東京電力や事故責任者・国のADR提案への服従義務)などだ。これを実現していくには、脱原発と同様に、どうしてもホンモノの政権交代が必要となる。今日の原発推進・容認政党である自民党、公明党、日本維新、国民民主党などにはとても遂行出来ない課題である。

(関連)(報告)オルタナティブな日本をめざして(第23回):「これでいいのか!? 原子力損害賠償法」(福島原発事故の教訓から)(竹村英明さん)(2019年1月30日)- いちろうちゃんのブログ
 http://tyobotyobosiminn.cocolog-nifty.com/blog/2019/02/23-2019130-d8a3.html

(関連)福島第1原発事故 中間指針見直し否定的 原賠審会長「直ちに必要なし」毎日新聞
 https://mainichi.jp/articles/20190126/ddl/k07/040/154000c
(関連)原発賠償 救済進まず 東電、和解案を次々拒否 - 毎日新聞
 https://mainichi.jp/articles/20190304/k00/00m/040/172000c

(関連)福島:中間指針見直し踏み込まず 原賠審:朝日新聞デジタル
 https://www.asahi.com/articles/ASN1Y5X2YN1YUGTB00M.html
(関連)原発をなくす湯沢の会- 原陪審は何故中間指針を見直そうとしないのか
 https://yuzawagenpatu.blogspot.com/2019/02/blog-post_90.html

(3)「子ども・被災者支援法」
 今現在、事実上の棚上げ状態となっているこの法律を再び再生させる必要がある。賠償や補償とは別動の仕組み・制度として機能させ、被害者=特に子どもたちに対して万全の対応をしなければいけない。今日の日本は、ゴロツキどもが政治や政権を牛耳っており、憲法守らない、法律守らない、自己都合優先と縁故主義的不正の横行が目に余る事態となっている。この「日本版トランプ現象」を解消するためにも、「子ども・被災者支援法」の再生は必要不可欠である。

(4)損害賠償請求権時効
 最後に、来年2021年3月に、福島第一原発事故による損害賠償請求権の時効が到来する。多くの被害者が当面の生活苦に追われて原発事故の償いを受けられない・請求できない状態が続いている中、このことは由々しき事態と言わざるを得ない。東京電力は、時効に関係なく原発事故の賠償を行うなどと、殊勝なことを言っているが、こんなものは全く信頼が置けない。私はずいぶんと前から、福島第一原発事故に伴う賠償・補償を万全な形で実施させるために、福島県を中心に、その周辺の被害都県の住民が100万人単位で損害賠償訴訟を提訴することをお勧めしており、そうすることが原発問題の様々な点で、大きな前進を実現することができるだろうと思っている。

(関連)原子力損害賠償債権の消滅時効に関する当社の考え方について|プレスリリース|東京電力ホールディングス株式会社
 https://www.tepco.co.jp/press/release/2019/1519277_8709.html

日本全国の弁護士たちは、あと残された数か月間、全力で「福島原発事故損害賠償請求訴訟」の新追加訴訟原告団を結成するよう、PRや訴訟相談その他に取り組んでいただきたいことと、国会議員には時効の再延長の法制化をお願いしたい。また、各自治体は、住民を代表して損害賠償訴訟の組織づくりに尽力し、一人の「泣き寝入りも許さない」体制を構築していただきたいと思う。そして、福島第一原発事故をめぐり、その教訓をしっかりと活かしながら、脱原発・脱被ばく・被害者完全救済の三位一体の実現に、これからも取り組んでいきたい・いただきたいと考えている。何卒よろしくお願い申し上げます。


5.最近の原発事故賠償関連の報道
 全部ではありませんが、いくつかご紹介しておきます。日本の司法・裁判所のデタラメぶり・腐ったヒラメ裁判官ぶりが赤裸々に顕在化しています。情けない限りです。かような司法・裁判所は、必ずや我々の手で叩き直しましょう。

 <別添PDFファイル>
(1)原発事故訴訟 福島地裁判決「農地所有者が汚染除去を」(東京 2019.11.10)
 https://lituum.exblog.jp/29769231/
(2)福島原発事故、農地回復訴訟コメ農家、2審も敗訴、仙台高栽(毎日 2020.9.16)
 https://mainichi.jp/articles/20200916/ddl/k07/040/046000c
(3)原発避難 札幌地裁「国と東電責任」164人棄却 原告「不当」控訴へ(東京 2020.3.11,10夕)
 https://www.47news.jp/news/4600511.html
(4)原発避難賠償 ほぼ認めず、山形地裁判決 80億円請求、44万円のみ(朝日 2019.12.18)
 https://www.asahi.com/articles/DA3S14298429.html
(5)東電が和解勧告拒否の訴訟、住民側の賠償請求認める、福島地裁判決(朝日 2020.2.20)
 https://www.asahi.com/articles/DA3S14372211.html
(6)原発で自主避難、国の責任認めず、千葉地裁判決、原告「納得できない」(朝日 2019.3.15)
 https://www.asahi.com/articles/DA3S13933950.html
(7)群馬訴訟での国の主張に対する抗議声明(4団体:2019.12.10)
http://www.mdsweb.jp/doc/1602/1602_07g.html
ダウンロード - e7bea4e9a6ace8a8b4e8a89fe381a7e381aee59bbde381aee4b8bbe5bcb5e381abe5afbee38199e3828be68a97e8adb0e5a3b0e6988eefbc88efbc94e59ba3e4bd93efbc9a2019.12.10efbc89.pdf

(いくら裁判とは言え、言っていいことと悪いことがある。こうした無礼千万の主張をして居直る被告国側の弁護士たちは懲罰にかけるべきである:田中一郎)

(参考)原子力損害賠償群馬弁護団
 https://gunmagenpatsu.bengodan.jp/


 <関連サイト>
(1)【福島原発】汚染農地回復訴訟「呆れた判決」の全容|月刊 政経東北|note
 https://note.com/seikeitohoku/n/nb67b60689301
(2)東電、原発避難住民との和解拒否 福島地裁の訴訟、2月の判決へ(共同通信)Yahoo!ニュース
 https://news.yahoo.co.jp/articles/7a97eb9fc62a3bc2f32192233791992b4712bdaf
(3)原発事故の賠償費、負担額を申請 大手9社、新電力からも回収(共同通信)- Yahoo!ニュース
 https://news.yahoo.co.jp/articles/9ab1b5059b70ea4270adfef9c9467a379b44f047
(4)原発賠償訴訟・京都原告団を支援する会 9-5 アンコール講演会
 http://fukushimakyoto.namaste.jp/shien_kyoto/event/2000905gakushukai.html
(5)原発避難、東電に賠償命令 国の責任は認めず、仙台地裁(共同通信) - Yahoo!ニュース
 https://news.yahoo.co.jp/articles/4534eb3266284ea8d04b6453fba5143ed0bb788c

(6)原発避難、二審は賠償大幅減額 福島・南相馬の住民ら、東京高裁 - 琉球新報
 https://ryukyushimpo.jp/kyodo/entry-1091753.html
(7)原発避難者九州訴訟 東電に賠償命令、国への請求は棄却 福岡地裁判決 - 毎日新聞
 https://mainichi.jp/articles/20200624/k00/00m/040/241000c
(8)東電に4億3千万円請求 原発事故後の放射能対策費 我孫子市(千葉日報オンライン) - Yahoo!ニュース
 https://news.yahoo.co.jp/articles/c08f9a8aa859bd7e6354b930f208fd2eee6dd93c
(9)福島の409世帯、原発ADR打ち切り 東電が和解拒否 - 毎日新聞
 https://mainichi.jp/articles/20200425/k00/00m/040/060000c
(10)福島第1原発事故 ADR 相馬・玉野で打ち切り 和解案、東電4回拒否- 毎日新聞
 https://mainichi.jp/articles/20191224/ddl/k07/040/116000c

(重要必読)福島第一原発事故の賠償負担金と廃炉円滑化負担金の託送料金への上乗せ開始、2020年10月1日から|FoE Japan
 https://www.foejapan.org/energy/eshift/200831.html

(↑ こんなふざけたことを平然とやっているのが、今日の自民党・菅義偉スカ政権であり、それに知恵出しをしているのが経済産業省です。解体いたしましょう。:田中一郎)

草々
 

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