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2020年7月21日 (火)

松尾匡立命館大学教授「大西つねきさんの発言をめぐって」に関する私からの若干のこと

前略,田中一郎です。


●大西つねきさんの発言をめぐって(松尾匡立命館大学教授)
 http://matsuo-tadasu.ptu.jp/essay__200718.html

(田中一郎コメント)
 上記について、若干のコメントをいたします。「命や人間の選別は絶対に認めない」という基本スタンスは私と同じですから、大きな方向性のところは依存がありません。しかし、下記の3点については私は違和感を感じます。経済学者が論じるとこうなるのかもしれませんが、やはり、チトおかしい、と思えてなりません。

(1)「命や人間の選別なし」=反緊縮論者、「命や人間の選別あり」=緊縮論者・財政規律論者、という図式がおかしい。命や人間の選別と緊縮・反緊縮の財政論は次元の異なる別物であって、これを結びつけて論じるのはおかしい。特に後者の「「命や人間の選別あり」=緊縮論者・財政規律論者」というのは、緊縮論者・財政規律論者に対して大変失礼な話で、言われたら怒りを覚えるのではないかと推察します。私は「命や人間の選別」論者が、財政制約だとか労働制約だとかを、自分の主義主張を根拠づけるためにご都合主義で持ち出しているに過ぎないと見ていて、「命や人間の選別」の非を批判したり論じたりするのに財政論は必要ないと考えています。言い換えれば、財政がどうだろうが、労働制約がどうだろうが、命や人間には最高の価値があり、その尊厳は何よりも最優先して守られなければいけないということです。日本国憲法が言うところの基本的人権の尊重とは、つまるところそういうことだと私は解釈しています。(従ってまた、私有財産権の尊重とか、象徴天皇制とかは、命や人間に劣後させるべき権利や制度だと考えます)

また、「命や人間の選別」論が、あたかも「理性優先主義」であるかのような言い回しもありましたが、それもひっかかります。あえていうなら「資本の社会的文化的包摂に毒された似非理性の展開=資本増殖や資本主義体制維持を至上の価値とする人間切り捨て論の亜種」とでも表現しておくべきでしょう。かれら「命と人間の選別」論者に「理性一般」をくれてやってはいけないのだろうと私は思います。何故なら、経済政策の有効性や妥当性(一種の技術論)を考え抜くためには、それこそ(人間価値観と階級的利害に覚醒した)「理性と知性」が必要となるからです。

(2)「財政に制約などない」というのはおかしな議論で、また他方では「労働制約」については受け入れるかの論理展開になっている点で、主義主張が矛盾しています。財政制約は厳然としてあります。MMTにおいてさえ、インフレにならない限り、という不適切表現でそれが規定されています。労働制約だって当然あります。問題は、制約の有無ではなくて、それが現状どうなっているかです。また、上記で申し上げたように、それと「命や人間の選別」とは、もともと関係がありません。財政制約や労働制約は経済や経済政策の問題であって、目的とする政策目標を実現するにあたっての技術的可能性や妥当性を考えているものです。他方、命や人間の選別の問題は、そうしたこととは切り離された次元での哲学や倫理の問題です。両者を直接結びつけて行う議論は、どっちに転んでもご都合主義的で、欺瞞的になってくるであろうと私は思います。

(3)山本太郎「れいわ新選組」について申し上げれば、その高き理想や目標を実現するための手段としての「反緊縮」のスタンスはいいのですが、その具体策がよろしくない、①スケールの大きいバラマキ中心型で効果が薄い中、巨額財源の浪費につながる(そのベースには、何と、お粗末な市場原理主義的な認識が無意識に存在している=大衆社会における「ドン底」へ向けての競争)、②こうした政策が出てくる背景には、具体的な社会政策や経済政策の各論への無知、ないしは不勉強があり、それはまた、山本太郎「れいわ新選組」の「人脈不足」(教えてくれる人がいない)にあると言えるでしょう、③財源調達のための手段である国債や税制の使い方がよろしくない(MMTや中野剛志氏は、税や国債はマクロ経済調整の手段に過ぎないと言っているようですが、それも一面的な極論です)、などの点が指摘できます。これまで私から何度も申し上げてきたことです。

山本太郎「れいわ新選組」の経済政策については、来たる7/28と8/25の「新ちょぼゼミ」と、8/6の意見交換会で私の方からご説明いたします。お時間とご関心のある方はご参加ください、いずれも「3密」(密閉、密集、密接)防止のため、参加者数制限を行いますので、予約を必要としています。

1.「新ちょぼゼミ」と意見交換会
(1)(予約必要)(7.28)オルタナティブな日本をめざして(第49回):「霞が関改革をどうする:日本の官僚組織」(前川喜平さん:新ちょぼゼミ)- いちろうちゃんのブログ (当日は最初の1時間で「山本太郎「れいわ新選組」の経済政策」についてコメントします)
 http://tyobotyobosiminn.cocolog-nifty.com/blog/2020/06/post-ed9e26.html

(2)(予約必要)(8.6)少人数意見交換会(次期衆議院選挙へ向けて)
 中央区明石町区民館において、標記意見交換会を実施いたします。「3密」(密閉、密集、密接)防止のため、参加人数を絞りますので、参加ご希望の方は私宛ご連絡ください。どなたでも参加可能です。(現在のところ11名様が参加予定)

*日 時:2020年8月6日(木) 午後1時~5時 希望者のみで二次会の予定あり(当日決めます)
*場 所:東京都中央区明石町区民館3号室(下記) 
 http://chuo7kuminkan.com/about/akashi.html
*参加費:特にありませんが、当日会場費(2500円)と資料印刷費を参加人数で折半します(数百円)

(3)(予約優先)(8.25)「山本太郎「れいわ新選組」の経済政策と衆議院選挙」(ちょぼゼミ:田中一郎)- いちろうちゃんのブログ
 http://tyobotyobosiminn.cocolog-nifty.com/blog/2020/07/post-dda34a.html


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(関連)「命や人間の「選別」は絶対に許さない」=「れいわ新選組」の大西つねき氏除籍処分と山本太郎代表記者会見録画=世の中よりも高いモラルや規律水準をもち、初心を忘れずに「世直し」に邁進してください- いちろうちゃんのブログ
 http://tyobotyobosiminn.cocolog-nifty.com/blog/2020/07/post-2dfe11.html

(関連)オルタナティブな日本を目指して(新ちょぼゼミ バックナンバー)- いちろうちゃんのブログ
 http://tyobotyobosiminn.cocolog-nifty.com/blog/2019/10/post-cddae1.html
(経済政策に関するものは、このサイトの下の方にあります:田中一郎)
草々 

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