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2019年7月31日 (水)

(報告)(7.29)オルタナティブな日本をめざして(第31回):「東日本大震災からの復興と人間の幸福」(五十嵐敬喜法政大学名誉教授:新ちょぼゼミ)

前略,田中一郎です。
(別添PDFファイルは一部添付できませんでした)


さる7月29日(月)、水道橋のたんぽぽ舎におきまして、五十嵐敬喜法政大学名誉教授をお招きし「新ちょぼゼミ:オルタナティブな日本をめざして(第31回):「東日本大震災からの復興と人間の幸福」を開催いたしました。以下、当日の資料や録画を添付して簡単にご報告申し上げます。


(イベント情報)(7.29)オルタナティブな日本をめざして(第31回):「東日本大震災からの復興と人間の幸福」(五十嵐敬喜法政大学名誉教授:新ちょぼゼミ)
 http://tyobotyobosiminn.cocolog-nifty.com/blog/2019/05/post-c68295.html

東日本大震災から早8年が経過しました。福島県を除く岩手・宮城両県について、本当に復興は終わったのでしょうか? あるいは終わっていいのでしょうか。このわずか八年間で、世界にも例を見ない驚異的な復興が多くの関係者の努力や取組により成し遂げられたに見える両県ですが、他方ではまた、これら「光」の部分とはまったく異なる「復興の闇」といったものも垣間見えます。例えばピカピカの街並みの中には人影がほとんどなく、巨大な防潮堤が海と陸とを切り裂きながら、復興を遂げた街が少子高齢化のために「自治体消滅」の危機にさらされるといった具合です。復興とは、物理的に震災前の状態に戻すだけではなく、災害による圧倒的な「不幸」を少しでも癒し、未来に向け「希望」を与えるものでなければならないのではないか、そんな疑問がわいてきます。今回は都市計画や災害復興の問題についてお詳しい五十嵐敬喜法政大学名誉教授においでいただき、原発震災ではなく地震・津波で大被害を受けた岩手・宮城の被災地域を念頭に置き、東日本大震災からの復興のあり方を改めて考えます。(岩波月刊誌『世界 2019.4』掲載の五十嵐敬喜先生の論文より一部引用しました)

講 師:五十嵐 敬喜(いがらし たかよし)さん
山形県出身、法政大学名誉教授、弁護士、菅直人内閣の内閣官房参与。不当な建築や都市計画による被害者の弁護活動に携わるとともに、従来の公共事業を批判、「美の条例」(神奈川県真鶴町)の制定を支援するなど、美しい都市創りを訴えている。また、最近は「人と人をつなぐ現代総有論」を提唱している。


(当日録画)20190729 UPLAN 五十嵐敬喜「東日本大震災からの復興と人間の幸福」 - YouTube
 https://www.youtube.com/watch?v=hPZN3lnm1pk


 <当日のレジメ:別添PDFファイル>
(1)(レジメ)東日本震災復興と幸福論(五十嵐敬喜法政大学名誉教授 2019.7.29)
ダウンロード - efbc88e383ace382b8e383a1efbc89e69db1e697a5e69cace99c87e781bde5bea9e88888e381a8e5b9b8e7a68fe8ab96efbc88e4ba94e58d81e5b590e695ace5969ce69599e68e88202019.7.29efbc89.pdf
(2)(レジメ図)我が国における総人口の推移(2019.7.29)
ダウンロード - efbc88e383ace382b8e383a1e59bb3efbc89e68891e3818ce59bbde381abe3818ae38191e3828be7b78fe4babae58fa3e381aee68ea8e7a7bbefbc882019.7.29efbc89.pdf
(3)復興政策を総点検する:復興庁の存続を(イントロ部分)(五十嵐敬喜『世界 2018.4』)
ダウンロード - e5bea9e88888e694bfe7ad96e38292e7b78fe782b9e6a49ce38199e3828befbc9ae5bea9e88888e5ba81e381aee5ad98e7b69ae38292efbc88e382a4e383b3e38388e383ade983a8e58886efbc89efbc88e4ba94e58d81e5b590e695ace5969ce3808ee4b896e7958c202018.4e3808fefbc89.pdf
https://www.iwanami.co.jp/book/b355412.html
(4)被災地復興と幸福感(イントロ部分)(五十嵐敬喜『世界 2019.4』)
ダウンロード - e8a2abe781bde59cb0e5bea9e88888e381a8e5b9b8e7a68fe6849fefbc88e382a4e383b3e38388e383ade983a8e58886efbc89efbc88e4ba94e58d81e5b590e695ace5969ce3808ee4b896e7958c202019.4e3808fefbc89.pdf
https://www.iwanami.co.jp/book/b442808.html


(田中一郎コメント)
 世界3大漁場の1つであり、リアス式海岸の見事な風景が残る岩手・宮城の三陸海岸を襲った東日本大震災と大津波は、1つ1つの入り江で漁業やその関連事業を営みながら暮らしてきた人々の生活と生存基盤を壊滅状態にしてしまいました。気仙沼市などでは、地震と津波の被害を受ける中で燃料タンクの大火災も起き、多くの地域住民が犠牲になるとともに、震災の後にはまさに廃墟の街の残骸だけが残されました。東日本大震災からの復興は、こうして「ゼロからのスタート」となったのでした。

あれから早くも8年半、はたして震災復興は成功したのでしょうか? 五十嵐敬喜先生のお話を聞いていて、素朴に「ああ、また日本の政治や行政は、震災の復興に失敗をして、誰のための、何のための復興なのかわからなくなりながら、巨大防潮堤や区画整理事業や高速道路建設事業に代表される巨大土建事業だけが、「復興を急げ」の大義名分のもとに推し進められたのだな、という印象を強くしました。巨大な防潮堤が海に向けての人間の視界を遮り、まっさらでピカピカの街並みやハコモノは出来上がったけれども、人影が見当たらない「無人化した復興の街」、巨額の税金を投入しながら出来上がったのは「人間の街」ではなく「コンクリートの街」だったというわけです。

「コンクリートから人へ」は、どこぞやの政党のマニフェスト文句でしたが、実際に行われていたのは「人からコンクリート」であり、「国土強靭化」という「ゼネコン土建屋強靭化」の政策でした。この国は「いつまでたってもだめな私」の国だということでしょうか? (質疑応答の時間に私から阪神大震災からの復興と比べて東日本大震災からの復興で特筆すべき進歩のようなものはあったのでしょうか、とお聞きした答えが「ない」でした。そうだろうな、とは思っていましたけれど、先生からはっきりと「変わらない」と回答されると、やはり力が抜けてしまいます。また、如何に激甚の災害被害を受けていようとも、国は個人に対して資金や財物の直接の供与支援は行わないという、誰が言い出したのかもわからない、ふざけた「復興方針」が今回も貫かれていました。)

おそらく、しばらくすると、また再び同様の大震災・大津波が襲ってくるでしょう。それは今度は東南海・南海や北海道東海岸かもしれません。しかし、その場合もまた、今回の東日本大震災の時と同じように、被災者住民が蹴散らされ、コンクリートと土建屋が跋扈する、グロテスクな災害復旧復興が行われていくに違いありません。国民・住民を震災から救うこともできず、復旧・復興もきちんとできずに、苦難と悲しみを押付けてくる政府・政治・行政、もうこうしたことは一掃してしまいたいものです。

そして、今回の五十嵐敬喜先生の話はそうした震災復興の話にとどまりませんでした。実は、東日本大震災からの復興の困難さの大きな原因の一つに、人口減少と高齢化があり、さらにその高齢化が「個化老衰」(孤独化老衰)と「孤独死」「孤立死」を伴うところまで追いつめられていたことがあります。コミュニティが崩壊し、その復活・再生があまり意識されないままに復興住宅の手当てなどが行われ、阪神大震災のときにもあれほど問題化していたにもかかわらず、またも日本の政治や行政は同じ失敗を繰り返して、「人間の復興」を放棄してしまったというわけです。

しかし、この人口減少、高齢化、孤独老衰、孤独死という悲しい社会現象は、実は東日本大震災被災地だけの話ではなく、これから首都圏の一部を除く日本全国各地域が出くわすであろう近未来のことではないか、ということは、少し想像力が働く人なら容易に理解できると思われます。五十嵐敬喜先生がお持ちになった「我が国の人口数の推移グラフ」を見れば、私たちの社会がこれから大変な時代に差し掛かっているのだということがよく見て取れます。この人口減・高齢化の社会や経済では、これまでの右肩上がりでピラミッド型の人口構成を前提にしたような政策思想や法体系ではやっていけない、ましてや「コンクリ―ト至上主義」のようなことをやっていては話にならない、ということが説得的に伝わってきます。

五十嵐敬喜先生は、今回の東日本大震災被災地が日本の近未来を「先取り」していると認識され、この震災復興を何とか成功させて「人間が豊かで幸せに生きていく」ための「まちづくり」「地域づくり」をどうすればいいかをお考えになられていたようです。そして、その一つの方法論的結論が「現代総有に基づいて強すぎる所有権を抑え込み、総有地の上に定期借地権などの「土地使用権」を「特区的に優先させて設定」することで、復興と街づくりのスピードアップや、行政と住民との対話・意思疎通の促進、つまりは災害復興を含む「まちづくり」を行政と住民が一体となってやっていく、そんな新時代の「あり方」をお考えになっておられるようです。まさに目からウロコの発想ではないかと思います。

あまり上手な解説ではありませんが、以上が私からの今回の五十嵐敬喜先生のご講演へのコメントです。講演が終わった後、若干名の方に感想をお聞きしてみましたが、「日頃、今日のようなお話のことを考えていなかったので、とても新鮮な感じがした」「日本が急速な人口減少・高齢化という大問題に直面し始めていることがよくわかった」「三陸の震災後が、いわば日本の近未来を示しているような気がする」などの発言がありました。もっともな感想です。

いずれにせよ、自然災害はこれからも日本を襲ってくるでしょう。その時に備え、一刻も早く、法制度の整備や行政側の態勢の確立、あるいはコミュニティ形成における地域住民の主体性を高めていく努力が必要なように思えました。そして、来るべくしてやってくる急速な人口減少社会と高齢化社会について、官民政治家の従来型発想を切り替える必要性があると強く感じました。

(「人口グラフを見ていただいてお分かりいただいたと思いますが、日本は「右と左」「資本と市民」といった構図をはるかに超える、全く次元の違う局面に猛スピードで入っていきます。その際、私の射程距離の範囲内でいうと、成長型縦社会の縦の構造(憲法を含む)を縮小型社会の横の構造(これが取りあえず現代総有論)に転換を、キーワードにしなければならない、というのが問題意識です。しかし、宿題は途方もない。」(五十嵐敬喜先生より))

 <五十嵐敬喜先生のご著書>
(1)現代総有論序説-五十嵐敬喜/編著(ブックエンド)
 https://00m.in/ijZOp
(2)現代総有論-五十嵐敬喜/編著(法政大学ボアソナード記念現代法研究所)
 https://00m.in/i6GBd
(3)「国土強靭化」批判 公共事業のあるべき「未来モデル」とは-五十嵐敬喜著(岩波ブックレット)
 https://00m.in/6M9wB
(4)国立景観訴訟 自治が裁かれる-五十嵐敬喜・上原公子/編著(公人の友社)
 https://00m.in/KdxtR
(5)道路をどうするか-五十嵐敬喜/著 小川明雄/著(岩波新書)
 https://00m.in/wjezi

*五十嵐敬喜先生には、1990年代から岩波新書でたくさんの名著があります。上記はその1つです。「五十嵐敬喜」(敬称略)と「岩波新書」をKEY WORDにして図書検索をしてみてください(都市計画や公共事業関係のご著書が多いです)。

(関連)都市改革・都市計画制度等改革基本法(案)に注目しよう (画期的な都市計画制度(まちづくり)改革法案ができました) いちろうちゃんのブログ
 http://tyobotyobosiminn.cocolog-nifty.com/blog/2014/11/post-cc7b.html


 <復興庁>
(1)復興庁 HP
 https://www.reconstruction.go.jp/
(2)復興庁 - 震災関連死の死者数等について
 http://www.reconstruction.go.jp/topics/main-cat2/sub-cat2-6/20140526131634.html
(3)復興庁 - 全国の避難者の数(所在都道府県別・所在施設別の数)
 http://www.reconstruction.go.jp/topics/main-cat2/sub-cat2-1/hinanshasuu.html

 <関連情報:別添PDFファイル>
(1)復興庁を存続へ、政府・与党方針、新組織見送り(朝日 2019.7.27)
 https://www.asahi.com/articles/DA3S14115378.html
(2)近づく「復興バブル」終焉、被災地の建設業は正念場へ(イントロ部分)(『週刊東洋経済 2019.4.6』)
 https://premium.toyokeizai.net/articles/-/20280
(3)自宅が残った被災者も苦悩、大震災から8年後の現実(イントロ部分)(『週刊東洋経済 2019.5.11』)
 https://premium.toyokeizai.net/articles/-/20492
(4)震災被害広げた過信、復元力が試される(外岡秀俊『アエラ 2019.4.1』)
 https://dot.asahi.com/aera/2019032700023.html
(5)津波被害宅地区画整理事業の14%、整地後の利用めど立たず、岩手・宮城・福島(朝日 2019.5.13)
 https://www.asahi.com/articles/DA3S14011848.html
(6)復興まちづくりの経験から:外部者として大事にしたいこと(宮定章『住民と自治 2019.3』)
 https://www.jichiken.jp/jaj/201903/

 <関連サイト>
(1)東日本大震災から8年3か月 | レスキューナウ
 https://this.kiji.is/510831519837881441
(2)仮設住宅での40代孤独死、なぜ防げないのか-震災と復興-東洋経済オンライン
 https://toyokeizai.net/articles/-/198596
(3)震災8年 街と経済、まだまだ遠い「元通り」(日経ビジネス)
 https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00005/030700006/
(4)メディアで報じられない「金と欲」に翻弄された東日本大震災被災地の現実(ニューズウィーク日本版) - Yahoo!ニュース
 https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20190403-00010003-newsweek-int
(5)津波避難所は標高46m 高齢者「階段上れるわけない」:朝日新聞デジタル
 https://www.asahi.com/articles/ASM3L4GFNM3LUTIL01Z.html?ref=mor_mail_topix2
(6)<東日本大震災>被災3県15市町村で応援職員なお454人必要 復興・創生期間後の21年度(河北新報)
 https://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201904/20190429_73019.html
(7)<安住の灯>仙台の災害公営住宅、家賃上昇176世帯 収入超過で10万円増も 子育て世代退居の動き(河北新報)
 https://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201907/20190707_13022.html


(参考)オルタナティブな日本を目指して(バックナンバー)- いちろうちゃんのブログ
 http://tyobotyobosiminn.cocolog-nifty.com/blog/2019/03/post-99f4.html
草々 

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