(他のMLでの議論です)松尾匡立命館大学教授との経済政策を巡る議論(その4):「公正な税制を求める市民連絡会設立3周年記念集会」講演を巡って
前略,田中一郎です。
(他のMLでの議論です)
●公正な税制を求める市民連絡会設立3周年記念集会での拙論に対するご批判に答える
http://matsuo-tadasu.ptu.jp/essay__180924.html
以下、上記サイトへの私の問題提起です。
(このメールの最後に松尾匡立命館大学教授の最初のメールを転記しています。
上記サイトの文章は、私の問題提起を受けて一部修正がなされています)
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松尾先生へ、いつもご苦労さまです。ありがとうございます。
今回も丁寧なご説明に感謝いたします。貴重な議論と心得て拝見いたしました。
せっかくの機会をいただきましたので、私よりいくつか問題提起をさせていただきます。
(国債の日銀直接引き受けや、その資金を企業設備投資補助金や個人向け一律給付金(ヘリコプターマネー)に使うというプランについては、既に申し上げましたように賛同できません。今回はそのことには触れないでおきます)
1.付加価値税としての消費税を奢侈品物品税とすることについて
消費税の欠陥は、一つには、逆累進型であることですが、もう一つが、付加価値税であるため、税を価格転嫁できない中小零細業者が泣かされるという点にあります。その「系」として、仕入れを買い叩いた輸出大企業が手にする輸出品にかかる消費税還付金が巨額で、輸出大企業にとっては新たな巨大収入源になっています(益税化)。この2つを解消するには、私は消費税を奢侈品物品税に転換するのがいいのではないかと思っています。また、その場合に、税率を今の8%から15%くらいに段階的に引き上げておけば、買い控えどころか買い急ぎが発生するでしょうし、生活必需品への消費税課税が消えますから、短期的には景気にはプラスに働くように思います。
2.政府・日銀のインフレのコントロール能力について
過去の例でいえば、少なくとも2回の大失敗があります。一つは、1960~70年代のクリーピングインフレを抑えられなかったこと、二つ目は、1985年プラザ合意からバブルに向かう時期の資産インフレを抑えられなかったこと、です。これらについて、しっかりとしたレビューなり反省なりがないと、また同じようなことを繰り返すような気がします。私は経済政策の決定権を持つ政治家どもは、日本においては当分の間「アホウ」だと見ていますので、政府・日銀のインフレのコントロール能力については過信しない方がいいと思っています。
3.スタグフレーションについて
松尾先生は、インフレ=景気過熱と一義的に見ておられるようですが、私は、不景気とインフレが同時並行的に起きるスタグフレーションが十分にありうると見ています。社会保障などで財政支出で大盤振る舞いをしても、今日の寡占資本主義の経済構造が変わらないまま、依然として労働者は低賃金・劣悪労働条件のままで、他方で、輸入品増大による貿易収支の悪化や円安が起きて、景気後退下の物価上昇が起きる可能性です。少し前の議論でも申し上げましたが、私は日本の技術力も意外と「ハリボテ状態」で、やがて技術力を高めてきているアジア諸国に追い付かれ・追い越される日が近いのではないかと考えています。昨今の、検査ゴマカシ・虚偽表示事件や原発関連産業のデタラメなどを見ていると、強くそう思います。そうした中で、スタグフレーション発生のリスクは私は低くないと思っているのです。日本はもう、かつての技術立国などではないのではないか(少なくとも技術・匠の文化を継承できていない)、と思います。
4.完全雇用概念について
これは松尾先生のおっしゃる通り、政府統計が労働者にとって決定的に不利になるように、きわめてずさんで片寄った統計の取り方をしていますので、アテにならないと思います。特にここ20年の間で、家族の在り方も含めて、日本社会は多様化が進んでいますから、失業統計の取り方を徹底して見直さなければならないのに、それを放棄して、大企業奉仕の労働法制改悪を虚偽の資料を作ってまでやっているのですから、怒り心頭です。つまり、政府の労働統計・失業統計や経済学者が言う「完全雇用」という概念は、学問上はともかく、政策実務上は全く信用できません・アテにできません。
それから、もう一つ申し上げなければならないのは、外国人労働者の移民としての受け入れです。私はこの外国人労働者の移民としての受け入れに対しては消極的ですが、しかし、今現在、政府や財界は、単純労働も含めて、いわゆる3K労働を低賃金・劣悪労働条件のまま、外国人移民労働者に押し付けるべく、大量に受け入れを画策しています。松尾先生の「完全雇用」をメルクマールにする経済政策のコントロールは難しいのではないでしょうか?
(参考)政権交代実現と、そのあとに何を目指すのかの議論に最適=『終わらない「失われた20年」:嗤う日本の「ナショナリズム」・その後』(北田暁大著:筑摩選書) いちろうちゃんのブログ
http://tyobotyobosiminn.cocolog-nifty.com/blog/2018/09/20-c05f.html
5.松尾先生「無駄金のブタ積みのために日銀の国債買い入れの手段を使われて」
いわゆる「ブタ積み」は、日銀による国債の直接引き受けであっても、金融市場を通しての公開市場操作による国債の大量買入れによるものであっても、同じことではないかと思います。誤りは、不景気・デフレ時代の景気のテコ入れに「超」金融緩和という手段を使ったことと、国債でファイナンスされた財政資金の使い方がよろしくなかったということだと思います。「ブタ積み」は、こうした誤った経済政策の「結果」です。
(毎年、一般会計で100兆円・特別会計を入れたら200兆円以上の財政資金の使い方は、もっと徹底して吟味検討されるべきです。また、オンブズマン制度なども入れて、違法かつ無駄な支出がなされていないかも不断にチェックすべきです:会計検査院がまともに機能していませんから)
6.松尾先生がおっしゃる「企業設備投資補助金」ではなく、市民事業を含む「NEWビジネス」への補助と投資の方がいい
ズバリ申し上げて、内部留保を440兆円も積み上げている大企業に補助金なんか出す気にはなれません。そうではなくて、たとえば市民事業による再生可能エネルギー事業やコジェネ・ビジネスへの投資や補助、介護や保育や教育にかかる民間新事業への補助や投資、中小小売店や地場商店街・農林水産業への大きな補助・支援、などなど、これまで日陰にされてきた新時代のビジネスへの支援を中心に、「善玉」で「成功率が高い」事業へのテコ入れに使ったらいいのではないかと思います。この辺は「政策技術」の機微があり、これだけで大研究が必要ですが、方向としては既存の20世紀型産業を保護する形ではなく、新しい時代を切り開ける、特にローカルな産業への支援が必要だと思います。産業構造の転換は今の日本にとって重要な課題です。松尾先生がおっしゃる「問題は、民衆の手の中にあって使うことができるマネーの量ということです。」ということとも合致すると思います。
7.「国際収支の天井」について
自国通貨を買い続けると流通通貨が少なくなって金利が上昇する、というのは、金融政策で何とでもできますから、問題はそこではなくて、下落圧力を受けた自国通貨を買い続けるための外貨(ここではドル)の手持ちが枯渇してしまう・なくなってしまって自国通貨を買い支えられなくなる、という点に「国際収支の天井」があると考えるべきです。資本の大量輸入があれば、しばらくは持ちますが、経常赤字を続ける国に継続的な外国資本の流入は期待できません。1990年代後半のアジア危機や、そのあとのロシア危機や韓国危機などは、みな、外貨不足が混乱を生みました。過度に外資に依存することのツケが表面化したということです。愚かにも今日の日本が、この方向に向かいつつあります。松尾先生のおっしゃる「現代日本は変動相場制なのでこんな不利な制約はもうありません。」というのは正確ではなくて、「国際収支の天井」という観点から見た場合には「(極度の)円安という新たな制約」があるというべきではないかと思います。
8.欧米反緊縮左派
松尾先生「いずれにせよ、欧米反緊縮左派は、金融緩和志向もありますが、富裕層や大企業に負担をかける増税を志向していて、その点も含めて私は学ぶべきだと思っているのです。」=大賛成です。私は経済政策には「公正性」が必要不可欠だと考えていて、従ってまた、増税には「ものごとには順序ってもんがあるのだ」とも考えています。オール・フォー・オールが「Except 1%」である限り絶対に賛同できないということです。かつてのソ連もそうであったように、です。
(関連)内部留保が過去最高446兆円 貯め込んでいる大企業はココだ(日刊ゲンダイ)& 自工会、自動車税の大幅下げ要望へ(日経):この大企業たち、いったいどれくらい納税しているの?
何が消費税増税だ! ざけんじゃねえ! いちろうちゃんのブログ
http://tyobotyobosiminn.cocolog-nifty.com/blog/2018/09/446-d702.html
9.ポピュリズム
松尾先生「ちなみに、「ポピュリズム」という言葉が悪口であった時代はもう終わったと思います。もともと、大不況のころのアメリカ人民党の思想をさす言葉で、エリートの支配に対して、大不況で苦しむ民衆の利益・要求を対置させた運動でした。ブレイディみかこさんによれば、コービン周辺やポデモスは左翼ポピュリズムと呼ばれることを「誇りにすら思っている」とのことです。右翼ポピュリズムに関しても、トランプ勝利、ブレグジット投票結果の経験を経て、排外主義やナショナリズムは理詰めて批判して解消できるものではなく、それをもたらした民衆の不安や経済苦境に応える解決策によってしか、すなわち、もっとポピュリズム的なポピュリズムによってしか解消されないというのが到達点になっていると思います。」=賛成です。現代版「土台上部構造論」ですね。私はこれを言い換えて、政治の転換は被支配者たちの「大きな自己利害」の覚醒により可能となるのであって、理屈や正義の旗だけでは社会は動かないと見ています。
10.現代の階級闘争
松尾先生「階級社会化の進む現代は、階級闘争モデルで税を位置づけることがふさわしいと思います」=賛成です。ただし、この「階級」は、19世紀のマルクスや20世紀初頭のレーニンらが提唱した、資本家・労働者・地主の3階級ではなくて、もう少し複層化しているのではないかと思います。当面は「1%」VS「99%」というレトリックでいいと思いますが、その先では、私は「パワーエリート」階級と「AI」の問題をよく見定めなければならないと思いますし、また、労働者階級というよりも零細業者を含む勤労者階級(プレカリアート)の「階級意識」の問題を社会心理学的にしっかりと押さえていくことも必要だと思います。まさに政治改革や市民運動・社会運動をどう展開するかとも密接に関連します。
11.最後に2つばかり
(1)国際市場原理主義のTPP協定・日欧EPAなどのメガFTAに反対を強めましょう
日本政府や自治体の経済政策を含む政策自由度が極度に低下し(忖度・自己抑制が広まります)、司法権を含む国家主権が一握りの巨大多国籍資本に奪われてしまいます。断固反対=政権交代後に脱退、の市民運動・社会運動を強めていきましょう
(関連)(報告)(9.20)通商交渉・グローバリズムを考えるシンポジウム:グローバリズムは私たちを幸せにするか? +
(メール転送です)水道民営化を推進するPFI法改悪案パブコメ中 いちろうちゃんのブログ
http://tyobotyobosiminn.cocolog-nifty.com/blog/2018/09/pfi-419a.html
(2)増税の仕方の具体策
増税をどう進めるかは別途、ていねいな議論が必要ですが、どういう増税方法があるかは例えば下記を考えてみました。下記はある方のメールに対して返信したものの一部です(一部加筆修正)。増税の場合のメニューを列記しています。私が当面懸念するのは、政治改革が幸いにして実行できる状態になった時の資本市場=特に株式市場の混乱です。愚かにもアベ政権が、日銀と公的年金基金に山のような株式を持たせてしまっており、容易ならざる事態になっているからです。政治改革や経済政策の進め方について最も悩ましい点です。
以下はメール転送です。
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とりあえず増税による財源確保の方法をいくつか挙げておきますと下記の通りです。
(ポイントは「公正」であることと「応能負担」の原則を徹底させることです)
(1)タックスヘイブン退治
(2)金融資産所得の分離課税をやめて総合課税に移行
(3)法人税の特別増税(大企業だけ、5%程度、とりあえず5年間)
(4)所得税・相続税の累進税率をアップさせる(さしあたり10%程度)
(5)租税特別措置その他の優遇をやめる・縮小する
(研究開発投資損金扱い縮小、損失繰り延べ期間の短縮、強制連結課税、自動車減税廃止、住宅取得減税縮小、など)
(内部留保課税は、課税ではなくて、内部留保があれば優遇をしない方式にする、仮に内部留保が配当に回っても、国内法人が受け取れば同じ、受け取り外国法人に対しては源泉課税35%、個人が受け取れば総合課税)
(6)脱税厳罰化(脱税相当額の3~5倍の罰金と自主申告の厳格化)
(7)マルサの男と女を大幅拡充し、大企業・超富裕層を個別担当させる、また、納税回避対策本部を創設し「先回り」体制をつくる
(8)非居住者・外国資本による国内源泉所得への課税厳格化(巨大多国籍企業など)
(9)くだらない財政支出カット(軍事費、巨大イベント、ダムや高規格道路などの巨大公共事業等々)
(10)社会保険料率の上限の廃止(高額所得者には高率を適用)
(11)有価証券取引税の復活
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消費税は奢侈品物品税へ(税率はアップ=これで輸出大企業の消費税還付も消える)
所得控除ではなくて、還付付き税額控除へ
人頭割型課税を極力、所得・資産割型へ転換
上記で問題となるのは「株価が下落してしまった」というのが大騒ぎになること
公的年金や日銀が山のように株式を持っているので厄介な話
資産効果による不景気の可能性
(上記で議論してみてはいかがでしょうか)
草々
-----Original
Message-----
From 松尾匡
Sent: Sunday,
September 23, 2018 9:46 PM
Subject:「公正な税制を求める市民連絡会設立3周年記念集会」について
やっと授業開始直前になって少し手があいたので、「公正な税制を求める市民連絡会設立3周年記念集会」の私の議論についての、対論者高端さんのフェースブック上でのご批判に答えておきたいと思います。
まず、高端さんの批判文を再掲します。
https://www.facebook.com/masayuki.takahashi.5030/posts/10156349379061166
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去る日曜日のイベント。ツイキャスしていただきましたので、シェア先のリンクからすべてお聞きいただけます。
せんじ詰めれば、反知性主義との闘いでした。
そして、私たち人間の尊厳を保障することに本当のところは関心のない人々との闘いでした。
講演とパネルで、松尾さんの自称「反緊縮」論の難点を指摘しました。
ざっと挙げれば
・財務省的な財政再建優先論を否定する点はまったく同意。
ただし、際限なき金融緩和は明らかに危険。
不確実性をあまりに軽視し、かつ政府・日銀のインフレコントロール能力を過信している。デフレのうちはたしかにOK。
しかしいったんインフレ局面に入れば、彼の理論は破綻する。
・不完全雇用状態だから緩和を続けよと言うが、労働力不足の深刻化をみるだけでも、現状認識が誤っているというべき。
問題はマネーの量ではなく、より構造的な要因にある。
・「反緊縮」の成功例として、戦後復興期のイギリス、近年のスウェーデン、ポルトガル、ハンガリーなどを挙げるが、これらはすべて今の日本とあまりに文脈が異なるし、そもそも「金融緩和+財政支出で経済を再建した事例」として明らかに不適切。
復興期のイギリスは増税もしているし、そもそも国際収支の天井に直面して金利を抑えることに苦悩した事例。
スウェーデンも増税しているし、ポルトガル、ハンガリーも含め、緩和の規模も期間も日本よりはるかに限定的。
「コービンやサンダースに学べ」という趣旨は分かるが、「だから金融緩和+財政支出+減税で行け」と言うのは完全なる飛躍。
ましてや「税はいらない。金を刷ればいい」と言わんばかりの主張は、市民の嫌税感につけこんだ危険なポピュリズムに他ならない。
・そもそも、歴史的にこのような極端な緩和政策が成功をもたらしたことはない。
経済を破たんに導き、そのツケを一般市民とりわけ脆弱な層に負わせる。経済学は、その歴史に学んで中央銀行の独立性確保などマクロ経済運営に節度を持たせる方向に進んできたのではないのか。
歴史的にも理論的にもリスクの大きすぎる政策を、あたかもバラ色の政策であるかのように喧伝することは、研究者のあるべき姿からかけ離れている。
さて、驚くべきは次の点です。
まず、松尾さんはこれらの8割にまともに答えない。痛いところはスルーです。
それなのに、最後の締めの言葉では、「増税なんてけしからん。消費税は廃止しましょう」とくる。
そしてフロアからも少なからぬ拍手。
さすがに耐えかねました。今後、莫大な社会保障支出の自然増があり、加えて人々の尊厳を満たす社会保障を目指すなら、増税で私たちが痛みを分かち合うことは絶対に不可欠です。もちろんそれは消費税だけじゃないけども、消費税なしにまかなうなど無理。
それを分かってて消費税廃止を言うことは許されない。
目の前で苦しんでいる人々への思いはそこにはない。「自分は税を払いたくない。いい思いをしている金持ちに払わせろ」という思いを満たしたいだけ。
私からすれば、そんなの偽善者です。
、、、という趣旨の、パネルの最後での私の発言をさえぎったフロアのとある方。
いわく「消費税廃止なんて痛くもかゆくもない。通貨取引税で40兆は取れる」。
ネットですぐに調べられますが、そんなの無理です。しかもグローバルタックスとして通貨取引税を導入して開発援助や地球温暖化対策に充てるというならわかるけど、一国の社会保障に充てるって、課税の根拠もない。
結局、税への憎しみから、「自分以外の税を取れるところ」を探して、吟味もせず飛びついているだけです。
丁寧に、説いていく。そのことの大事さと、分断を乗り越えることの難しさを、改めて実感させられました。
これからも、がんばります。
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最初に、以前も書きましたが、
> 最後の締めの言葉では、「増税なんてけしからん。消費税は廃止しましょう」とくる。
の部分についてです。私が消費税引き上げに反対したら選挙に勝てるという選挙戦術の話をしていたとき、消費税を廃止しろとのフロアからの声があがり、私は「そんな生ぬるいスローガンではだめだ。消費税全廃を掲げるべきだ」とのご批判をいただいたものと受け止めて、なだめた上、選挙のスローガンとしては無理だという選挙戦術上の応答をしたつもりでおります。
これをツイキャス動画で確認しました。こんなふうになっていました。
https://twitcasting.tv/kimchan0213/movie/481698735
(松尾) やっぱり選挙ゆうことになると、安倍さんが消費税上げますゆうとるのは、明らかにチャンス…チャンスゆうたらいかんのか。でも消費税上げたら不況になりますよ。もしかしたら職が危ないかもしれませんよと。今の大学生の新入生はちょうど五輪が終わったあとに就職活動することになる。大変そのへん危機意識がありますから、キャンパスの前で、消費税を上げると就職できなくなりますと宣伝したらすごい効くんじゃないかと思います。それが一番自民党を追い詰めるにはいいんじゃないか。もしかしたら…(叫び声重なる)
え?
——廃止!
(松尾)…ありがとうございます!
ありがとうございます。それは言いたいところですが、なかなかそれでは野党共闘するのは難しいところがあります。ぜひ言いたいところなんですけど。
それで、それぐらい追い詰めると、安倍さんも…(以下略)
というわけで、私から消費税廃止を積極的に主張したわけではありません。
まあ、消費税廃止は、実際筋論だし「言いたいところ」ですが、以前も書きました通り、「すぐに」というのは現実問題として難しいので、将来下げていくぞということにならざるを得ないわけですが、それが人々の予想になると、買い控えが起こって景気が悪くなるという問題があります。買い控えは起こらないというご批判もこのメーリスでいただきましたが、住宅建設とか、自家用車などの耐久消費財については、やはり買い控えは起こって、景気への影響は大きいと思います。
当日は、将来景気が十分に万全になって、他に手を尽くしてもやはり消費税を上げるしかなくなったときには、消費税を上げることになることもやぶさかではないが、「そのときには民意を問う」ということをあらかじめ約束しておくべきだと発言しました。先に高度な福祉体制を人々にまず経験してもらって、そのあとで、どうしても消費税を上げないとこれが維持できないので、上げていいですかと民意を問うのが正しい順番だと述べたわけです。
だから、高端さんのおまとめは、だいぶ、私が当日言ったことを反映せず、別の印象を与えるもののように感じます。
では、このフェイスブックに書かれた高端さんのご疑問に一つ一つお答えしようと思います。
以下に書きますように、かなりのものは、すでに当日のプレゼンや答弁でお答えしているつもりです。もちろん、時間がなくて十分お答えすることができなかったことはとても残念に思っています。
文中スライドは、当日使ったものが、下記URLのところに入っていますので、ご関心がありましたらダウンロードしてご確認ください。
http://shiryouoki.sdbx.jp/20180729/
<ご疑問>
> ・財務省的な財政再建優先論を否定する点はまったく同意。ただし、際限なき金融緩和は明らかに危険。不確実性をあまりに軽視し、かつ政府・日銀のインフレコントロール能力を過信している。デフレのうちはたしかにOK。しかしいったんインフレ局面に入れば、彼の理論は破綻する。
<お答え>
「際限なき金融緩和」という表現は、拙論を表現するには明らかにあてはまらないと思います。インフレ局面(歯止めとしてのインフレ目標超え)に入った時に、金融引き締めを行うことはプレゼンで説明しています(スライド37枚目、日銀保有国債の一部の借換停止と売りオペ)。
インフレの状況に合わせてどのようにスムーズにコントロールするかについての工夫についてもプレゼンで私案を提案しました(スライド57-59枚目)。つまり、(高度な社会保障支出を実現して恒常的に高い総需要圧力がかかる中で)景気過熱時にも、十分デフレ圧力が強くかかってインフレを抑えるように、法人税や所得税の累進度などを十分に重く設定しておきます。社会保障支出や税制自体は、景気の状況に合わせてスムーズには増減できませんので、不況のときには、国債を日銀が引き受けることで作った資金で民間企業への設備投資補助金や個々人への一律給付金を出して、課税によるマイナス効果を打ち消すようにします。そしてこの設備投資補助金や一律給付金を、景気の動向に合わせて機敏に増減させ、インフレが目標値を超えたら停止するようにすれば、課税による景気引き締め効果が大きく出て、インフレを抑えることができるというアイデアになります。
このときの設備投資補助金や一律給付金の資金は、今述べたように国債の日銀直接引き受けで作るのが望ましい(国債市場の短期的動揺がない、日銀が額面割れで国債を買い取る必要がないなど)のですが、それが政治的に難しいのならば、政府が民間の銀行に向けて国債を発行して資金を得て、他方でそのことで利子率が上がらないよう、日銀が民間の銀行から国債を買って資金を出すという、債券市場を間に挟んだ「玉突き的」方法でも構わないと思っています。
<ご疑問>
> ・不完全雇用状態だから緩和を続けよと言うが、労働力不足の深刻化をみるだけでも、現状認識が誤っているというべき。問題はマネーの量ではなく、より構造的な要因にある。
<お答え>
どんな水準をもって「完全雇用」とするかは学問的に確定しているものではなく、多分に政治的判断が入る問題です。資本側にとっては、失業者がある程度いてくれた方が、賃金も上がりませんし、「いつでも取り替えられるぞ」と脅しが効くので労働強化しやすくて都合がいいです。だから、なるべく高い失業率の値で、「完全雇用」だと言いたがります。
逆に労働者階級の側としては、なるべく低い失業率を「完全雇用」と設定することが都合がよく、両者が綱引きをして政策的判断がなされるものだと思います。
しかも日本の失業率統計は、他の国と比べて厳しすぎて、本来は失業者のはずの人をカウントしていないと言われます。その上に、本当は働きに出たいのに、主婦や就学者、退職者などの形をとって、求職活動をあきらめた大勢の人たちが、潜在的失業者として存在してきました。低賃金の不安定な仕事をしている人で、もっとまともな職に就きたいと思っている人たちは、やはり失業者同然だと思います。
こういう人たちが尽きたら、さすがに賃金は目立って上昇しはじめると思います。このかん、「完全失業率は3%台半ば」などと言われながら、実際にはそれを割ってどんどん下がり続けました。統計外の失業者がいかにたくさんいたかということだと思います。まだ賃金上昇が本格的でないということは、まだ少し余裕があるということだと思います。
しかしそれももう尽きつつあるのはたしかに間違いないと思います。それは高端さんのご質問に対してはっきりとお答えしたとおりです。そのときもうしましたように、かつてデフレ円高真っ盛りの民主党政権時代に、国債の日銀直接引き受けで緩和マネーを財源に使い、公約や震災復興に使っていたら、公約は実現でき震災復興はでき、おまけにひどいインフレの心配何もなく景気は良くなって雇用は増え、民主党政権は続いていたことだと思います。安保法制も秘密保護法も共謀罪法もなかった。そのチャンスをみすみすふいにして、安倍政権登場を許し、無駄金のブタ積みのために日銀の国債買い入れの手段を使われて、資本側ばかり一方的にもうかる景気拡大の末、とうとう期限切れを迎えつつあるわけです。
来年の参議院選挙のときには、もう我々の立場からしても完全雇用に到達しているかもしれません。そうなると安倍首相哄笑のときです。もはや日銀マネーをあてにできないのに、安倍さんの側が圧倒的に有利な中、私たちは次の手を考えなければなりません。しかしもしそうならず、その時点でもなお賃金上昇がのろのろしていたならば、そのことを責め立てて、最後の一押しを有効に使うことを訴えればいいと思います。
問題はまさにマネーの量だったと思います。民衆の手の中にあって使うことができるマネーの量ということです。
<ご疑問>
> ・「反緊縮」の成功例として、戦後復興期のイギリス、近年のスウェーデン、ポルトガル、ハンガリーなどを挙げるが、これらはすべて今の日本とあまりに文脈が異なるし、そもそも「金融緩和+財政支出で経済を再建した事例」として明らかに不適切。復興期のイギリスは増税もしているし、そもそも国際収支の天井に直面して金利を抑えることに苦悩した事例。スウェーデンも増税しているし、ポルトガル、ハンガリーも含め、緩和の規模も期間も日本よりはるかに限定的。
> 「コービンやサンダースに学べ」という趣旨は分かるが、「だから金融緩和+財政支出+減税で行け」と言うのは完全なる飛躍。ましてや「税はいらない。金を刷ればいい」と言わんばかりの主張は、市民の嫌税感につけこんだ危険なポピュリズムに他ならない。
<お答え>
戦後イギリスの福祉国家建設の例は、あくまで国の借金の多さを福祉抑制の口実にしなかった例として、プレゼン冒頭で出したものです。プレゼンスライド7枚目にも書きましたとおり、戦後イギリスが日本の消費税にあたる付加価値税を導入したのは1973年のことです。公的純債務GDP比215.5%で福祉国家建設に乗り出した時にはまだ影も形もなく、四半世紀以上もたってできた話です。
なお、「そもそも国際収支の天井に直面して金利を抑えることに苦悩した事例」とおっしゃるのが、どんなロジックで今の議論に効いているのかよくわかりませんが、この件について解説しておきます。
この当時は固定為替相場制がとられていました。しかもまだ資金の国際移動が今ほどはげしくなく、復興のためには、資材を輸入に頼る必要がありました。このような時代には、景気がよくなって生産活動が拡大すると、輸入が増えて貿易赤字が拡大しますので、外貨(ドル)の受け取り(供給)より支払い(需要)の方が多くなって、何もしなければドルの価値が上がり、ポンドの価値が下がってしまいます。それでは固定相場が維持できませんので、そうなると固定相場を維持するために、イングランド銀行は固定相場でポンドを買い入れなければなりません。これは市場から通貨を吸収することですから、金融引き締めと同じで、金利が上がります。あるいは金利を上げることによって、外国からの資金の流入を促し、ポンドの価値を上げて固定相場を維持するという理解でもいいです。
これが「国際収支の天井」という問題で、公的債務が拡大するのを防ぐには、金利を下げたいところ、どうしても金利を上げざるを得ない制約がかかって苦労したということです。つまりこれは、固定相場制下で不利な条件があるにもかかわらず、公的債務の拡大は抑制できたという事例になります。言うまでもなく、現代日本は変動相場制なのでこんな不利な制約はもうありません。
ポルトガルはユーロですので「限定的」も何も、そもそも金融政策はとれません。借金だらけだと叩かれながらも財政拡大を始めて、逆進性の高い増税案も破棄して、景気がよくなってかえって財政赤字が減ったケースとして出しています。
スウェーデンについてお示しした2014年からの左派政権については、「増税している」とのご指摘でしたが、消費税にあたるものが増税されたという情報は聞いていません。もしそれが増税されていたらご存知のかたはご教示ください。私見の及ぶかぎりでは、所得税や銀行税などが増税されたように理解しています。
いずれにせよ、欧米反緊縮左派は、金融緩和志向もありますが、富裕層や大企業に負担をかける増税を志向していて、その点も含めて私は学ぶべきだと思っているのです。「税はいらない」というのは、拙論のまとめとしては誤解であると思います。
ちなみに、「ポピュリズム」という言葉が悪口であった時代はもう終わったと思います。もともと、大不況のころのアメリカ人民党の思想をさす言葉で、エリートの支配に対して、大不況で苦しむ民衆の利益・要求を対置させた運動でした。ブレイディみかこさんによれば、コービン周辺やポデモスは左翼ポピュリズムと呼ばれることを「誇りにすら思っている」とのことです。右翼ポピュリズムに関しても、トランプ勝利、ブレグジット投票結果の経験を経て、排外主義やナショナリズムは理詰めて批判して解消できるものではなく、それをもたらした民衆の不安や経済苦境に応える解決策によってしか、すなわち、もっとポピュリズム的なポピュリズムによってしか解消されないというのが到達点になっていると思います。
<ご疑問>
> ・そもそも、歴史的にこのような極端な緩和政策が成功をもたらしたことはない。経済を破たんに導き、そのツケを一般市民とりわけ脆弱な層に負わせる。経済学は、その歴史に学んで中央銀行の独立性確保などマクロ経済運営に節度を持たせる方向に進んできたのではないのか。歴史的にも理論的にもリスクの大きすぎる政策を、あたかもバラ色の政策であるかのように喧伝することは、研究者のあるべき姿からかけ離れている。
<お答え>
歴史的例としては、拙著『この経済政策が民主主義を救う』でご紹介しましたが、大不況時から第二次大戦にかけてのアメリカでは、金本位制を廃止して今で言う量的緩和を行い、マネタリーベース(中央銀行の出したおカネ)を13年間で5倍近くに増やして、ニューディール政策や戦争の政府支出を支えました。もちろんこれだけではなくて、民間からの借金もしているのですけど。
これを追いかけて物価は上がりましたが、ハイパーインフレはおろかマネタリーベースの伸びの5倍にもはるかに及ばず、1.5倍になっただけでした。年率にすると約3%のマイルドなインフレです。
なお、有名なドイツのハイパーインフレは、中央銀行が政府から独立していたために起こったことです。
当日お答えした中では、リスクの問題ならば、例えば、今消費税を上げて不況に戻って失業者が出て、教育を受けられない人が出たり、少子化が進んだりするリスクの方が、もっと現実的で高いと思いますと述べました。
さて、本来当日私がちゃんともうしあげておくべきだったことは、税金をとるということについての私の哲学的位置付けだったろうと思います。高端さんが、「痛みを分かち合う」という哲学的位置付けを強調していたのに対して、私が経済学的機能論に終始していたことが、根本的にはフラストレーションのもとで、行き違いを生んでいるのだと思います。
高端さんの「痛みを分かち合う」税の位置付けは、国家共同体モデルを前提に、同胞は助け合うべきだという共同体倫理に訴えるものだと理解しています。
しかし国家共同体モデルは、進行する階級社会化の現実を覆い隠すおそれがあるし、安倍さんはじめ日本会議的なナショナリズム志向を後押ししかねない危険があると思います。
やはり、階級社会化の進む現代は、階級闘争モデルで税を位置づけることがふさわしいと思います。
とはいえそれは21世紀的に、個人主義をベースにアレンジする必要があると思います。拙著『自由のジレンマを解く』で提起したその位置付けは、このようなものです。
すなわち、自己決定の裏には、その結果他人に被害を及ぼしたら補償する責任が伴うが、経営者や政治エリートなどの影響力の大きい決定は、責任を確定できず、したがって補償の責任を果たせない被害を、多くの他人に及ぼす可能性がある。したがって、税という形で一種の賠償保険を公的にとっておいて、助けを必要とするケースを解決するのに使うという位置付けです。
一般庶民も日々の決定で、例えば温暖化を進めて被災者を作るのにささやかに加担しているかもしれないので、一応税を払う。だけど、決定の影響力の大きい者はそれに応じて高い税をはらわなければならない。影響力を直接測ることはできないので、所得など適当な代理変数を物差しにつかう(炭素税のケースなど、直接測れるケースはそれを使うのにこしたことはない)。決定の影響力は、個人より組織の力に依存する比重が大きいので、法人税も正当化されるというわけです。
まずは富裕層や大企業に主に負担させる増税を目指せという私の主張は、経済学的機能論からの合理化はプレゼンで述べたとおりですが、哲学的正当化は、今述べたロジックでなされると考えています。
松尾匡
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