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2018年5月19日 (土)

松尾匡立命館大学経済学部教授の「レフト3.0の政治経済学」(新刊書)や「反緊縮政策論」(『週刊金曜日』)のどこに問題があるのか

前略,田中一郎です。

(別添PDFファイルは一部添付できませんでした)

 

(最初に若干のことです)

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1.岸井成格(しげただ)さん死去:時代と向き合い 戦った人 人脈、視点 - 毎日新聞

 https://mainichi.jp/articles/20180516/k00/00m/010/107000c?fm=mnm

 

(関連)(別添PDFファイル)岸井成格(しげただ)さんが命を賭して訴えてきたこと、それは政権の言論弾圧とメディアの腐敗(日刊ゲンダイ 2018.5.18

 http://www.asyura2.com/18/senkyo244/msg/697.html

 

(日本のマスコミが「ごみ化」して報道や言論状況がボロボロになっていく中で岸井氏の死去は誠に残念でならない。日刊ゲンダイが上記の記事で書いているように、生前の岸井氏を封じ込めて言論封殺をしていたのは、とりもなおさず今のマスゴミたちであり、その連中が岸井氏の死後にいくら岸井氏を持ち上げるようなお世辞を言ったところで吐き気を催すだけの話である。今日の日本はいたるところでネジがおかしくなってしまっていて、マスゴミは重大なファクターではあるが、その中の1つにすぎない。結局は有権者・国民が、こうしたマスゴミを含む日本の言論や日々生起する政治や経済や社会の事件について、きちんと判断できるかどうか、そういう情報選択・判断のリテラシーを持っているかどうかにかかっている:田中一郎)

 

2.(メール転送です)高嶋伸欣さんより:野党議員・マスコミに喝! 加戸・前愛媛県知事の「大本営発表」発言を放置しているのか?

 

皆さま、高嶋伸欣です

1 9日以来様子を見てきましたが、誰もどこの政党・メディアも問題視していないので、<喝!>を送ります。

2 9日の加計問題の参考人質疑で、自民党推薦の加戸・前愛媛県知事は、柳瀬首相秘書官とのやり取りを記録した愛媛県庁職員の記録について、次のように発言したと『産経』(10日朝刊)でさえ報道しています。

 

3 「県のメモはアバウトな流れとして雰囲気は伝えているが、一一句その通りであるはずがない。職員の気持ちとして、東京まで出張したのだからこういう戦果はありました(と言いたい)。例えば駆逐艦を撃沈しても『戦艦を撃沈しました』と」

4 「駆逐艦」は艦隊の主力艦である「戦艦=大和、武蔵級のことで、現在で言えば空母に当たる」を護衛するために潜水艦などに備えるレベルの随伴艦にすぎません。つまり「『駆逐艦を撃沈しても戦艦を撃沈した』というくらいの虚偽報告を、愛媛県庁の職員はやるに決まってますよ」と前愛媛県知事が、国会で断定的に公言したことになります。

 

5 中村知事は前職への遠慮か、この点を問題にはしないで専ら柳瀬氏の発言に異を唱えていますが、県庁職員に対する前知事の暴言にも怒りを感じているのではないでしょうか。

6 全国紙・TV局の愛媛県庁担当記者はこの点について、中村知事に見解を求めていないのでしょうか?

 

7 それに、国会で上記の加戸発言が飛び出したのは、自民党の塚田一郎議員とのやりとりにおいてです。その後で、野党各党の議員が質問をしているのですから、この点をなぜ突かなかったのでしょうか?

8 それに、「駆逐艦を撃沈しても戦艦を撃沈しました」という例えを聴いた時、私は「あ、大本営発表だ!」とすぐに連想しました。けれども、この点についても追及した野党議員は誰もいませんでした。臨機応変に追及する瞬発力のある野党政治家はいなかったのでしょうか?

 

9 昨年6月以来の森友・加計問題での野党の追及の甘さを痛感させられています。『朝日』が1212日朝刊の「特別国会 記者が振り返る」という記者座談会記事で「野党の質問力衰えを感じた」と見出しで強調している状況が今もそのままではないか、と思えます。

10 さらにそうした記事掲載した『朝日』を含め、他の新聞・TVの 怠慢ぶりも同様です。9日以来、新聞報道やTVのコメントで、上記の加戸発言を問題 視した指摘については寡聞にしていき当たっていません。

 

11 「大本営発表」発言や「私の常套手段だった虎の威を借る狐の手法を内閣府も巧みに駆使してくれた」発言の問題性、反社会性について鈍感な社会に、日本はいつからなってしまったのでしょうか。麻生大臣の暴言もこうした状況から生まれているように思えます。

 

以上 高嶋の私見です。転載・拡散は自由です

 

3.こんなデキソコナイの野党はいりません=国民民主党:支持率は限りなくゼロへ

 党首が「支持率、ゼロではなくてよかった」などと言ってますが、まもなくそうなるんですけどね。

 

(1)「国民民主党」は支持1%、期待しない7割超。安倍内閣は3ヶ月連続「不支持」上回る|5月 初旬 世論調査まとめ | 日本最大の選挙・政治情報サイトの選挙ドットコム

 http://go2senkyo.com/articles/2018/05/17/35783.html

(2)「対決より解決」は首相にかわされ 国民、結党初の質疑:朝日新聞デジタル

 https://www.asahi.com/articles/ASL5G54K3L5GUTFK01F.html

(3)国民・玉木共同代表「支持率、ゼロではなくてよかった」:朝日新聞デジタル

 https://www.asahi.com/articles/ASL5G6HHWL5GUTFK025.html

(4)国民民主党は中途半端、蓋を開ければ「第2自民党」のお粗末

 https://web.smartnews.com/articles/28cD3yUtvJD

(5)(別添PDFファイル)国民民主が総務会新設、分裂回避へ自民の知恵、政策決定システム整える(日経 2018.5.17

 https://www.nikkei.com/article/DGKKZO30576070W8A510C1PP8000/

(6)(別添PDFファイル)野党再編の「猥雑物」、希望・玉木(『FACTA 2018.3』)

 https://facta.co.jp/article/201803039.html

 

4.公有財産をめぐり麻生財務相の周辺でも疑惑が! 麻生グループ傘下の企業に不自然な無償貸し付けが行われたことを麻生氏の地元・福岡県飯塚市の川上直喜市議が追及! 川上市議にIWJが直撃取材! IWJ Independent Web Journal

 https://iwj.co.jp/wj/open/archives/421516

 

(また出てきたぞ、まるでゴキブリの巣のようではないか)

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昨今、注目を集めつつある松尾匡立命館大学経済学部教授の(左派)経済政策論について、若干の議論をしたいと思います。

 

1.(メール転送です)「反緊縮」を唱える人たちへの批判(白川真澄さん)

 松尾匡・北田暁大・プレイディみかこの対談本『そろそろ左派は〈経済〉を語ろう』批判

 

●(別添PDFファイル)「反緊縮」を唱えることの問題点(白川真澄さん 2018.5

「hankinsyuku_mondaiten_sirakawamasumi.pdf」をダウンロード

みなさまへ

このほど下記メール及び別添PDFファイルが私宛送られてきました。興味深い注目すべき議論だと思います。そして、結論の部分である次の記述=「私たちの政策主張は、消費増税ではなく(国債の事実上の日銀引受でもなく:田中追記)公正な増税で社会保障と教育への財政支出を増やせ!」は私と同見解です。

 

別添PDFファイルのレポートでも指摘されていますが、松尾氏の議論にはいくつかの弱点、ないしはよろしくない点があります。その最大のものは「日銀による事実上の継続的な国債の大量引受で財政をファイナンスし続ける」という点です。これは禁じ手です。黒田日銀政策の追認のようなもので、財政のモラルハザードの他、多くの弊害をもたらします。そして何よりも日本経済が、いつ破裂するかもしれない「時限爆弾」を抱え込むことになります。

 

それ以外にも、日本経済とその政策の国際的な観点からの見直しや、税制とその所得再分配機能への着眼が弱い、あるいは財政支出を単に社会保障や福祉・生活関連というだけで、それ以上の「何にどのように財政を使うか」の構想が弱い点、などです。多くの働く者が賃金奴隷化して「新しい階級社会」が生れてきている今日の日本社会・日本経済で、主としてケインズ的なスペンディングポリシーの合理化(つまりは経済の量的調節)だけでは、うまくいかないだろうと思われます。今日では、財政政策は、その量的問題や発動タイミングだけでなく、質的内容も問われるのです。また、普遍主義的政策への批判的な観点も弱い。

 

それから、誤解のないように付記しておきますが、別添PDFファイルのレポートの著者の白川真澄さんは、レポートの題名を「「反緊縮」を唱えることの問題点」、あるいは「「反緊縮」を唱える人たちへの批判」と書いておられますが、しかし「いわゆる緊縮政策そのものには反対」の見解であるという点では松尾氏と同じであることに留意しておいていただければと思います(私もいわゆる緊縮政策には断固反対です)。つまり、このレポートは、反緊縮政策の議論の考え方の違い、あるいは進め方の違い、を論じておられるとご覧になるのがいいと思います。

 

(以下は、白川真澄さんのレポートへの私からの補足です)

*タックスヘイブンをはじめ、日本の税制の歪みが激しく、それを是正する形での

増税と民生政策への支出は、景気に対してはプラスにはたらくと思う。

 

*巨大企業の内部留保(400兆円超)に対して何らかの対応が必要

 

*市場原理主義アホダラ教にもとづく国際経済協定(その典型はTPP)を

拒否し、ガット・ウルグアイラウンドの産物であるWTO体制についても、

その抜本改正へ向けて、したたかな政策対応が必要。

 

*先ほどの中学校の学校給食の話もそうですが、生活苦で大変な人が

急増していますから、この「緊急生活対策」の施策が一刻の猶予もないと思います。

(毎年、数兆円~十数兆円の規模の追加財源が必要でしょう)

 

*原発・核燃料サイクル施設を直ちにやめさせ、更に、アメリカから巨額の

武器購入をやめること=これで数兆円が浮くでしょう。

 

(他にもまだ多くあります)

 

(関連)普遍主義的政策だ・ベーシックインカムだ、などと「空理空論」をするよりも、たとえば中学校の学校給食を何とかしろ! いちろうちゃんのブログ

 http://tyobotyobosiminn.cocolog-nifty.com/blog/2018/05/post-7e62.html

 

(関連)財源確保の怪しい普遍主義的な社会保障政策でごまかさず、「生存権」保障の理念を柱にし「今、目の前にある生活危機」解決のため現場からの声を生かした各論積み上げによる「総合政策」を打ち立てよう(その1) いちろうちゃんのブログ

 http://tyobotyobosiminn.cocolog-nifty.com/blog/2018/02/post-271a.html

 

(関連)井出英策氏の議論(=「普遍主義的社会保障福祉政策」)に賛成できない理由:教育無償化は格差を広げる愚策だ(中室牧子 『文藝春秋 2017.8』)より いちろうちゃんのブログ

 http://tyobotyobosiminn.cocolog-nifty.com/blog/2017/07/20178-3438.html

 

(関連)政府・厚生労働省は、「普遍主義的社会保障福祉政策」よりも、「貧困の連鎖」を止めるための「ターゲット施策」の拡充を、まず真っ先に行え(本日付けの毎日新聞記事より)+ 若干のいろいろ いちろうちゃんのブログ

 http://tyobotyobosiminn.cocolog-nifty.com/blog/2017/07/post-60b4.html

 

(関連)(再論)ベーシックインカムについて(他のMLでの議論です:勘違いしてはいけない=「ベーシックインカム」は「生活保護」や「社会保障制度」とは似て非なるものです) いちろうちゃんのブログ

 http://tyobotyobosiminn.cocolog-nifty.com/blog/2017/02/post-5603.html

 

以下はメール転送です。

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From: 白川真澄

Sent: Wednesday, May 16, 2018 3:41 PM

Subject:「反緊縮」を唱える人たちへの批判

 

白川真澄です。松尾匡氏が北田暁大氏・プレイディみかこ氏との対談本『そろそろ左派は〈経済〉を語ろう』という本を出しました。

 

プレイディみかこ氏はイギリスの反緊縮運動に現場から優れたレポートをしている人ですが、北田氏は以前から脱成長論を罵倒する粗雑な議論をしてきました。松尾氏が「反緊縮」(消費増税と財政削減の緊縮政策に反対する)をアベノミクスに対する対抗軸として打ち出すことを提唱しています。この「反緊縮」は、「緩和マネー」(異次元金融緩和に支えられた借金)で社会保障への財政支出を拡大する、という相変わらずの主張とセットです(ただし、すでに「デフレでない状況」の到来で、賞味期限切れになるかもしれない、と言っているのが面白いですが)。わざわざ買って読むほどの本ではありませんが、松尾氏の議論を持ち上げる人間も散見されるので、「反緊縮」でアベノミクスと対抗するという主張に対する批判を書きました。関心のある方はご一読ください。

 

付け加えますと

1 松尾氏の議論にはいつもそうですが、急速な人口減少や企業のビジネスモデルの転換(海外で稼ぐ)といった構造的な変化のリアリティを組みこんだ議論が見られません。ケインズ主義に依拠した理論モデルを提示し、景気回復のためのマクロ経済政策の議論に終始しているのが、私には不思議です。

 

2 なお、「レフト1.0 → レフト2.0 → レフト3.0」という主張は、悪くないと思います。この見方は、リーマンショックを転機にして「階級闘争」的な要素(資本主義のもたらす巨大格差や貧困に対するたたかい、「反資本主義」や「社会主義」が叫ばれる)が民衆運動を新しく特徴づけている、という私たちの見方(『脱成長を豊かに生きる』第Ⅱ部第1章)と合致しています。

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2.『週刊金曜日』掲載の松尾匡論文「日本の左派がとるべき道:欧米反緊縮左翼台頭の背景とその政策」のどこが問題なのか=内部留保400兆円を積み上げている大企業に補助金を投じてどうする他

 

別添PDFファイルは今週号の『週刊金曜日』に掲載された松尾匡立命館大学経済学部教授の論文です。当然ながら先般の『そろそろ左派は〈経済〉を語ろう レフト3.0の政治経済学』(下記)と同内容の松尾氏の立論が展開されていますが、やはり議論が甘い点やよろしくない点が散見されますので、下記にごく簡単にコメントしておきます。この問題については、来たる5/24と6/14、それに7/5のそれぞれの日程で開催いたします「新ちょぼゼミ:オルタナティブな日本を目指して」でも取り上げて少し詳しく解説をしたいと思っていますので、よかったらご来場ください。このメールの最後尾にご案内を付記しておきます。

 

(関連)(別添PDFファイル)日本の左派がとるべき道:欧米反緊縮左翼台頭の背景とその政策(一部抜粋)(松尾匡『週刊金曜日 2018.5.18』)

「matuo_sahakeizaiseisaku_kinn.pdf」をダウンロード
 http://www.kinyobi.co.jp/tokushu/002561.php

 

(関連)(別添PDFファイル)TARO PRESS(2018年新春):経済、そして持続可能な社会の在り方について:松尾、朴、山本太郎

「taros_press_matuo_keizaiseisaku.pdf」をダウンロード
 https://www.taro-yamamoto.jp/national-diet/date/2018/03?post_type=national-diet

 

(関連)そろそろ左派は〈経済〉を語ろう レフト3.0の政治経済学-ブレイディみかこ 松尾匡 北田暁大/著(亜紀書房)

 http://urx3.nu/K6XT

 

1.松尾匡氏の議論に対する私の基本的な考え方

 まず、日本の経済学者どもの大半は、現実の経済の仕組みや実態を知らないままに、それを調べようともせず、机上の空論や屁理屈をこねくり回し、現実の経済そのものが経済学者の立論とは正反対の事態が生じていても、一向にその議論を修正・転換しようとしないデクノボウの人間集団であること、更に追記すれば、昔はマルクス経済学者を中心に古典文献を読み漁ってそれで事足れりとする「訓詁学者」たちが繁殖して(宇野派経済学もその過渡的亜種)、現実の経済=宇野派経済学でいうところの「現状分析」をさぼりにさぼって、まるでヨーロッパ中世の教会のごとくスコラ的教条学に堕してしまったこと(だから今日ではマルクス経済学は日本の大学からほぼ消滅した)、あるいは今日では、近代経済学者を中心に、世界的な市場原理主義の思潮に乗り遅れながらも日本の政治権力や財界資本の御用学として、アメリカ・シカゴ学派などのいびつな経済理論を日本へ持ち込むことが使命であると勘違いをした連中が、霞が関の官僚や大企業などのパワー・エリートを洗脳しつつ日本に「布教」を始めて久しい、そんな状況です。要するに今日の日本における経済学なんぞは、現代社会を分析し理解する学問としては、とうの昔に崩壊してしまっているということです。

 

そんな中でも、今日の日本の経済学者の中で御用学者ではない学者=自分の頭で考えて議論・立論をする学者が数は少ないけれどもいらっしゃるのですが、私はそんな中の一人が松尾匡氏であり、また今般、私たちの連続講演会にお招きをした金子勝慶應義塾大学名誉教授だと考えています。その意味で、今日の日本の経済学界では貴重な存在です。しかし、そのことと、ではそういう御用学者ではない学者が言うことが全て正しいのかといえば、それはそうではありません。その一つの典型事例が松尾氏の議論だろうと思っています。

 

私は松尾氏と同様に市場原理主義を伴う「緊縮政策」に対しては断固として反対です。その意味では松尾氏とは見解を同じくします。今回の『週刊金曜日』の記事についても多くの点で賛同できますし、特に安倍政権・自民党政治に代わって政権を担おうとする野党勢力が、まともに経済政策を考えていないことについては実に腹立たしい思いでいる点も松尾氏と同じでしょう。若い世代の安倍政権支持・自民党支持は経済政策に原因があるという松尾氏の議論には私はちょっと異論があるのですが(私の見方は、若い世代が物事を見抜くリアリティや判断力を喪失し、バカみたいな話にコロっと騙されて、しかもその自己判断に相対性を持たせず、いわば自己閉塞のカベ(バカの壁)を創ってしまっているところに原因があると見ています。日本の教育の在り方に大きな問題があるのですが、ここでは多言しません。しかし、このままでは日本の将来は暗い)、しかし、経済政策が野党側に欠如して、旧態依然のイデオロギーのようなものに突き動かされている様子がうかがえることは、私は改革を求める主体性の問題として、やや情けない思いがしています(「反戦左派」のみならず「政治的カマトト主義」もまた旧態依然の脱イデ・イデオロギーです)。その意味では、松尾氏の議論がそうした現状を突破していく契機になればいいとも思います。

 

が、しかしです。その経済政策を誠実に希求する松尾氏の議論の具体的な中身が間違っていたら、あるいは甘かったら、それをそのまま実践に移していくと新たな困難が発生し、たちまちそれを上げ足にとって「為にする議論」を展開するデマゴーグたちが出てこないとも限りません。今の日本社会の不機嫌な世相は、こういうわけのわからない破壊的な扇動に弱い面がありますから、そうした悪質雑音を極力排除する意味でも、どうせ政権交代をして安倍政権や自民党政治とは違う経済政策をしていくのなら、できるだけ正論に近いものでスタートしていった方がいいでしょう(それでも安倍政権や自民党政治の負の遺産は巨大で、これをアンワインドするのは容易ではない状況になっています=この辺は7/5の金子先生のお話の前段で私からご説明します)。ということで、松尾氏の議論の問題点を指摘します。

 

2.『週刊金曜日』掲載の松尾匡氏の議論の問題点

 既に言及しておりますが、下記の諸点が松尾氏の議論の弱い点・よろしくない点です。簡単に箇条書きにいたします。

 

(1)黒田バズーガ日銀政策を追認するような「日銀による継続的な国債の事実上の巨額引受」は経済政策としては邪道であり持続可能性がありません。それどころか、日銀の資産・負債を際限なく膨張させることは日本経済がいつ破裂するかもしれない時限爆弾を内部に抱え込むことになり、問題解決の先送りに過ぎません。また既にマイナス金利や超低金利による金融機関や年金基金などの運用難に加えて、ボンクラ・ゴロツキ政治家どもの財政モラルハザードも生み出して、日本の財政支出の中身までが出鱈目を極めるという、多くの弊害が生じでいるのです。

 

(なお、そもそも日本経済は、1990年代の後半くらいから超金融緩和を無反省にずっと続けてきて、その政策にはデフレ解消効果がないことは既に実証済みです。また、同時期より巨額の財政赤字が指数級数的に積み上がり続け、特にこの10年くらいはそれが一層ひどくなっていますが、他方で、そこまで大きな財政赤字を毎年毎年出してまでも景気のテコ入れを続けているにもかかわらず、日本の名目GDPは1990年代後半以降、ほとんど増加していない(ゼロ成長=金子勝慶應義塾大学名誉教授はこれを称して「永遠のゼロ」と皮肉っておられました)というのが現状です。いわゆる先進国ではこうした事態に陥っているのは日本だけではないかと思います。失われた30年です。つまり、ケインズ政策的な超金融緩和や超財政赤字だけでは、日本経済の現状の病理は解消されないことは、これまでの経験から明らかなのです。これまでのやり方を変えなければ、こうした事態は改善されません。)

 

(2)松尾氏が上記のような考え方をとるのは、松尾氏に国際経済の中の日本経済という視点が弱いせいなのかもしれません。まずもって日銀資産の膨張による日銀信用の低下は、ある分水嶺を超えると一気に円という通貨への信頼が崩壊し、おそるべき勢いで底なしの円安を招く可能性があります。今日の日本は食料自給率でさえ38%程度であり、極度の円安やそれに伴う輸入インフレが日本経済を襲った際のパニックは想像を絶するものがあります。そんなことはあり得ない、などと思われるかもしれませんが、たとえば原発・核燃料サイクル施設が再びの過酷事故を起せば円安が一気に襲ってくるかもしれません。何が契機になるかはわからないのです。それから、松尾氏にもう一つ足りないのは、国際経済に関係した点でいうと、WTOやTPP・日欧EPAなどのいわゆる国際市場原理主義=グローバリズムという巨大寡占企業群による世界経済支配にどう対抗するのかという視点です。これは下記で申し上げる財政支出の内容=質の問題や、日本国内の経済・社会制度の在り方と密接に関係します。

 

(3)松尾氏の『週刊金曜日』の論文(一部抜粋)の2枚目を見ていただきたいのですが、その左上に「政府の取るべき政策」として図が書かれています。だめなのは、まずこの図の「日銀の緩和マネー」というところがいけません。但し誤解のないように申し上げておけば、だめなのは、これを半恒久的に使おうとしているところが駄目=黒田バズーガ政策をきちんと批判できていない点が駄目なのであって、マクロ経済政策で日銀が金融調節を量的に行うということそれ自体は否定されるものでもありません。また、日銀は通貨の番人として成長のための通貨の供給増の使命もありますから、日銀が通貨供給政策を適切に続けることや、不況下で金融緩和政策を続けることに問題があるのではないのです。簡単に言えば、金融緩和のやりすぎ・依存しすぎ・効果がないのに意地でやっている、そんな政策が駄目だということです。これに対する批判的観点が弱い。言い換えれば、松尾氏は日銀を金融政策機関としてではなく、政府の「振出の小づち」のような「魔法の財布」とみなしている点が問題だということです。森永卓郎氏らと同じような議論です。

 

(参考)消費税は下げられる! 借金1000兆円の大嘘を暴く-森永卓郎/〔著〕(角川新書)

 http://urx3.nu/K70d

 

(4)次にその図でいけないのは、その日銀の金融緩和マネーが「設備投資等補助金」として大企業に流れ込んでいるところです。これは多言を要しないでしょう。今や働く者たちを絞りあげて、日本の一握りの大企業群が積み上げてきた内部留保は400兆円を超えています。その大企業群に何ゆえに補助金などを交付する必要があるでしょうか。あるべき政策はその逆です。一つは、その巨額内部留保を使わせる制度や仕組み、あるいは政策を考えること、もう一つは、企業内部留保のように表出しされている過去の利益の蓄積以外の「隠蔽された埋蔵金」(企業のみならず超富裕層を含むタックス・ヘイブン資産他)を吐き出させることや、その「埋蔵金」を毎年蓄積し続けることができる歪み切った税制の抜本改正を行う必要があるということです。従って、大企業に設備投資等の補助金を投ずるなどと言うことは論外であって、なすべき政策対応としては、まずは不公正不公平税制の抜本改革の上で、産業構造の転換(その典型は原発から分散型オンサイト・コジェネ電源(天然ガス)や再生可能エネルギーへのシフトなど)、地域経済や生活関連ビジネスへのテコ入れ・支援、独占・寡占の排除と小規模零細事業の企業支援、労働法制の抜本改革や最低賃金の大幅引き上げ、などです。一刻も早く、20世紀的な重厚長大産業からの脱却、大量生産大量消費大量廃棄の克服、高度経済成長の夢よもう一度の放棄に基づくニュー・ニューディール政策が求められています。そして働く者が主役の経済が築かれなければなりません。

 

(5)その図でもう一つ申し上げておきたいのは「家計向けの一律給付金」と書かれている点です。これも問題で、この典型が今まで私がさんざん批判をし続けてきたベーシック・インカムであることは申し上げるまでもありません。また、これと表裏一体となっているのが、図の右上の社会福祉に向けられる財政支出です。これも私が今まで申し上げてきたように、松尾氏にその充実とはどういう社会福祉政策なのかの具体的イメージが薄いということです。社会保障や社会福祉が松尾氏の専門ではないのはわかりますが、そうであれば、その分野の専門の学者とチームを組んで、この部分を具体化をしていただきたいものです。その際に大事なことは、既に申し上げたように、安易な普遍主義的政策を財源の確保もせぬままに振り回すのではなく、社会保障や福祉の現場によく目を向けて、現場の担い手や受益ユーザーの声をよく聞いて、きめ細かな効果の高い政策や施策を積み上げていくべきであるという点です。この部分が今の日本の政治や行政では全くと言っていいほどダメな場合が多いですから、要注意だということです。普遍主義的政策に安易に走るな、身近なところの政策をしっかりときめ細かく見直してそれを積み上げろ、ということです。私はおそらく教育政策なども含めて、このミクロ政策の積み上げが毎年数兆円~十数兆円の財源を必要とするであろうと予測しています。少子高齢化社会に突入していく日本にとって、この社会保障・福祉政策をどう創っていくかはよく考えないと失敗します。

 

まだ、いくつかあると思いますが、さしあたりこれくらいにして、残りは下記の「新ちょぼゼミ」で「オルタナティブな日本」を目指す政策論としてご説明したいと思います。どうぞお気軽にふるってご参加ください。」

 

3.(別添PDFファイル)TARO PRESS(2018年新春):経済、そして持続可能な社会の在り方について:松尾、朴、山本太郎

 自由党の山本太郎議員が松尾氏の経済政策論に「はまって」いるようです。景気が良くない時に財政再建だ、緊縮だなどと言うのはナンセンス、というのはその通りですが、しかし、この別添PDFファイルでも松尾氏の議論の弱い点がいくつか出ていて、山本太郎議員があまりこの議論にのめり込まないことを望みます。特に、日銀を財源確保のための「振出の小づち」とみる見方はいけません。不幸は善意に担がれたとき、より一層深刻化しますから。

 

(一部抜粋)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

朴 私たちは、まだ物価安定目標が達成されていないので消費税は上げるべきでないという立場です。しかし、物価安定目標を越えたインフレーションが起こった場合には、その歯止めのためになんらかの増税が必要になる。その時に本当の意味での財政の健全化が必要になる。インフレを止めるために増税するんです。そのための税金は必ずしも消費税である必要はない。私が環境経済学者として優先的に考えているのは環境税ですね。エネルギーに課税しましょうという。そしてやはり、今格差が広がっている時代なので、所得税の累進制を強める。あるところからしっかり負担してもらう。

 

松尾 なんで税金をかけるかと言ったら、総需要を抑えるために税金があるんです。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

(田中一郎コメント)

「所得税の累進制を強める。あるところからしっかり負担してもらう」はいいですが、しかし、上記のような議論は典型的な経済学者の議論であって、ダメなのです。要するに、ケインズ経済学的なスペンディングポリシ―しか視野に入っていない。言い換えれば、税制や財政支出の中身、その「質」を問う姿勢が弱いのです。税や財政には複数の役割や目的があります。釈迦に説法ですが「総需要を抑えるために税金がある」だけではありません。しかし、今日の日本資本主義や世界経済の病理は、こうした経済の「量的制御」では、もう如何ともしがたいところまで来ています。

 

(ご案内)(5.24)「日本国憲法と学校教育ー主権者教育の実態を問う」(高嶋伸欣さん)(オルタナティブな日本を目指して:第11回目(新ちょぼゼミ)) いちろうちゃんのブログ

 http://tyobotyobosiminn.cocolog-nifty.com/blog/2018/03/11-e0d3.html

 

(ご案内)(6.14)「(医療現場から見る)日本の医療政策と厚生労働省=どこにどのような問題があるか」(西尾正道(独)国立病院機構北海道がんセンター名誉院長)(オルタナティブな日本をめざして:第12回新ちょぼゼミ ) いちろうちゃんのブログ

 http://tyobotyobosiminn.cocolog-nifty.com/blog/2018/03/12-ec55.html

 

(ご案内)(予約優先)(7.5)(カネコノミクスが導く)日本経済再生への道:金子勝慶應義塾大学名誉教授(オルタナティブな日本を目指して:第13回新ちょぼゼミ) いちろうちゃんのブログ

 http://tyobotyobosiminn.cocolog-nifty.com/blog/2018/05/13-455c.html

 

(参考)リーマン前と酷似…米国の金利上昇はバブル崩壊の前兆か|金子勝 日刊ゲンダイDIGITAL

 https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/228238

(参考)「モリカケよりも」の安倍応援団 政策論争で困るのは誰か|金子勝 日刊ゲンダイDIGITAL

 https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/229076

 

(私たちが開催いたします上記イベントでは、会場参加者によるチラシの持ち込み配布や署名集めなど、市民運動・社会運動として当たり前の活動につきましては一切自由といたしますので、マナーをわきまえた上で、どうぞご自由になさっていください(「市民の社交場」としての市民運動・社会運動)。但し、公序良俗のものであることや、イベントの進行の妨げにならない限りでお願い申し上げます。また、暴力を是とする方々につきましてはご来場を固くお断り申し上げます)

草々

 

 

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コメント

松尾さんの意見は、人民のための量的緩和に近い考えで、私と近いところもあるのですが、「通貨発行権」のことを明確にしないことと、経済成長主義の残滓があるため、かならずしも、同意見というわけではありません。「インフレ抑制のための税」という考えは、アメリカで有力な議論のひとつ、ランダルレイらのモダンマネーセオリーの議論で、通貨発行権をきちんと国家が把握すれば、租税国家は必要なく、税ありきの予算ではなく、最初に、支出ありき、というかたちの議論のパクリだと思います。レイの議論は、租税で国家予算を回していくという欺瞞を批判しているわけです。その延長の議論でもあるのですが、私が、この3年ほど、教育雑誌WEに連載している「お金リテラシー入門」の原稿の草稿の一部(完成品はすでに出版されています)をご参考までに以下にはりつけます。あの「津久井やまゆり園事件」に関してのものです。

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄以下、はりつけ~~~~~~~~~~~~~~~~~
お金リテラシー入門~~お金にふりまわされないものの見方・考え方㉓
「相模原津久井やまゆり園事件容疑者の主張を批判する」

 昨年の9月、栃木県内のある社会福祉法人において年に一度開催される実践報告会の場で講演をさせていただいた。講演の内容は「低成長時代における福祉制度」ということで、通貨改革とベーシックインカムに関したものだったが、その施設を利用されている多くの障害者やそのご家族も聞いてくださった。私の話の中で「相模原津久井やまゆり園事件」にも言及したところ、講演後の質疑で障害のあるお子さんのお父さんが次のように話された。「優性思想批判だけでは、容疑者の主張に対抗できないと思っています。こちら側の対抗言論の力不足を悔しく思う」という内容だった。その通りだと思う。私の講演でも容疑者への対抗言論をどのように構築していくべきかを探るために、以下の容疑者の発言を中心に批判した。
 「~~心ある人間も殺す優性思想と私の主張はまるで違います。赤ん坊も老人も含め全ての日本人には一人800万円の借金があります。戦争で人間が殺しあう前に、まず第一に心失者(容疑者の造語/編集部注)を抹殺するべきです。~~」(月刊『創』編集著篠田博之さんと容疑者の往復書簡の容疑者返信部分、『創』2017年10月号から)
上記の発言に関係する容疑者への私の批判的論点は次の四点である。①人の幸不幸を他人が上から目線で判断するな。②すべての人は、ケアなしでは生きられない存在である。③そのケアを支える基盤にベーシックインカムがあると良い。④容疑者は、その発言で度々「財政難」を取り上げている。そして、財政難だから「お荷物の人間」を殺すという短絡な発想になっているが、その前提である「財政難」という認識が間違っている。
この四番目のところが重要である。なぜ、重要かというと「事実認識」として間違っているからだ。このことは容疑者のみならず多くの国民も騙されている点である。 
以下のグラフをみていただきたい。これは、国の一般会計と国の特定の事業を行うために設定されている特別会計のうち相互に重複計上されているものを相殺してまとめたものである(この点に関する詳細は、財務省HP「平成28年度版特別会計ガイドブック」P10あたりを参照)。ここでは、毎年公表される一般会計に加えて特別会計の数字も併せて国の全体的な歳出構造を明確にしている。歳出の合計は238兆円だが、その最大の支出部分は、90.1兆円(全体の37.9%)を占める「国債費」である。国債費とは、国の借金の元金とその利子払いの合計である。この連載でも何度もとりあげているが、国は、借金を重ねその利子払いも含む返済を、あらたな借金で埋め合わせている。もちろん、そこに私たちの税金も投入される。この国の借金構造を容疑者のように個人や世帯の家計の借金と同様に語るのは大きな間違いだ。個人や世帯の場合、当然のことながら収入は限られている。したがってその収入に見合った支出をするか、あるいは、収入で返済可能な借金に頼る場合もあるというわけだ。しかし、国家は全く違う。国家には、「通貨発行権」というものがあり、お金は国の富に応じていくらでも発行できる(現在の理論的推測では、GDPの500兆円から世帯と企業の預金総額の1300兆円あたりまでと考えられる)。国家の通貨発行権の実際例は歴史上にたくさんあるが、たとえば江戸時代の藩札の例がある。藩札は地方政府であった藩の権威と権力で流通させた地方通貨だった。これと同様に国家が自ら通貨を発行すればよい。そうすれば現在の国の予算規模である90兆円ぐらいはすぐにまかなえる。それが、なぜ、借金になっているかというと通貨の発行が銀行という金融システムを通して実行される仕組みになっているからだ。言い換えると、お金の発行には「直接国家が発行する方法」と「銀行を通して発行する方法」の二種類があり、前者は借金にならない方法で、後者は借金が増えていく方法ということになる。後者の銀行システムによるものは欠陥品で、それを我々は「財政難」と思わされている。このトリックに津久井やまゆり園事件の容疑者もふりまわされているのだ。「財政難」とはインチキ話!である。

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