三木義一氏(青山学院大学学長)の税制改革の議論:重箱の隅とまでは言いませんが、重箱の端の方の議論ではなく、まさに重箱のど真ん中の「歪み切った日本の税制・徴税行政」を根本的に正す議論をお願いしたいものです。
前略,田中一郎です。
(別添PDFファイルは一部添付できませんでした)
別添PDFファイルは、本日付の日本経済新聞の「経済教室」欄に掲載された青山学院大学(学長)の三木義一氏の論稿です。以下、簡単にコメントいたします。
●(別添PDFファイル)税制改正 残された課題(上):所得控除より税額控除を、「給付付き」で低所得者支援(三木義一
日経 2018.1.23)
https://www.nikkei.com/article/DGXKZO25895680Z10C18A1KE8000/
(田中一郎コメント)
1.三木氏がこの論稿で主張されている3つのポイント=(1)基礎控除上げは評価できるがなお不十分、(2)税額控除は複雑ながら低所得者には有利、(3)税を通じた格差縮小の是非を国民に問え、は全くその通りだと思います。特に税額控除については「給付付き」として低所得者支援を強化せよ、という点も賛成できます(給付の仕方は受益者に事務負担がかからない年末調整のような形が望ましいと思いますが)。また、給与所得者には給与所得控除か、または本格的な必要経費実額控除の選択制度を導入せよという三木氏の意見にも賛成です。
2.この記事にある各論で私が三木氏に賛成できない点は、(1)基礎控除の金額を「理論的には生活保護の生活費にあたる生活扶助の平均額と同額(現行80万円程度)にすべきだろう」という主張です。生活保護の水準とリンクさせよという点は賛成できますが、私はそもそもこの80万円という金額が小さすぎると思います。「生活保護の生活費にあたる生活扶助の平均額」と「基礎控除金額」、および最低賃金を「三位一体」でもっと引き上げるべきです。つまり、低所得者層への課税をやめよ、ということです。そして、その財源は1000万円以上の高額所得者の累進税率を高めることなど、いわゆる不公平税制を改めることによりねん出すべきです。
(2)「さらに健康で文化的な最低限度の生活費支出に含まれる消費税分についても所得税の税額控除に含めてみる」についても賛成できません。私は消費税は廃止して奢侈品物品税に転換すべきと考えていますので、そうなれば所得税の税額控除の対象にする必要はなくなるでしょう。なお、奢侈品物品税の税率は20%くらいでもいいのではないかと思います。消費税の弊害は所得税での税額控除だけでは解消できません。中小・零細の企業や事業者が大企業などによる優越的地位の乱用によって「販売価格への消費税の転嫁」ができず、泣き寝入りをさせられるからです。(他方で輸出企業は多額の消費税還付を受けられますから、まさに輸出企業にとっては消費税は「益税」です)
(3)やはり三木氏の議論の問題点は、この論稿で申し上げれば最初の部分「本稿では、税制と負担能力調整装置としての各種「控除」のあり方に絞り課題を述べたい」にあると私は思います。つまり、税制や徴税行政で問題とすべきことはたくさんあるのに、それを取り上げないでおいて、何故、こういう問題をあえて優先して取り上げて論じているのか、という点です。
三木氏は皆様ご存知のように、下記の2冊の岩波新書に代表されるように、税制や徴税行政に関しては我が国では著名な第一人者的存在で、ここ数十年の間、税の問題ではオピニオンリーダーとしての役割を発揮されてきた方です。いわば税金論議の世界の「大御所」的存在ですが、その「大御所」が、例えば今回の日経経済教室での論稿のように、まるで税の研究を始めて間もなくの大学院生か大学助手程度の内容の議論をしてお茶を濁している=つまりは、もっと重要・重大・不可欠な諸問題に言及せぬままに、あまり今日の税の根本的な「体制」に影響がない、どちらかといえばあたりさわりのない、軽率・お気楽な馬鹿マスコミが追いかけがちなテーマをあえて選んで「おしゃべりをしている」、そういう印象を受けるのです。
ついこの間(2017年12月3日)、三木氏の大学(青山学院大学)で行われたシンポジウム「正義と税/パラダイス文書、グローバル・タックス、税制改正」でも、三木氏の講演内容はその域を出るものではありませんでした(上記の日経記事の論稿で言えば、基礎控除額=課税最低限をいかほどにするかや、給与所得における必要経費の実額控除(確定申告が必要となる)は重大な問題ですが、それ以外は重要度から見れば2番手以下になります)(⇒ 下記の2017.12.3の私のメール及び別添PDFファイルを参照)。
また、私が聞いたところでは、三木氏は日本における歪んだ税制を公正なものに転換するために創設された市民団体「公正な税制を求める市民連絡会」にも参加されず、どちらかといえば体制迎合・追従的な「民間税制調査会(民間税調)」に参加されたようで、この民間税調もまた、急所はずし・注目そらしのような議論を展開して、有権者・国民・納税者を煙に巻いているような様子がうかがえるのです(下記に最近の新聞報道をご紹介)。
(関連)日本の税金-三木義一/著(岩波新書)
(関連)日本の納税者-三木義一/著(岩波新書)
(関連)(別添PDFファイル)(レジメ)三木義一さん(2017.12.3 の青山シンポジウム)
(関連)(別添PDFファイル)森林、出国税、再検討を提言、民間税調「無駄遣いに終わる」(東京 2018.1.19)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/list/201801/CK2018011902000138.html
(関連)日本の税制にもの申す組織 民間税制調査会(民間税調)
(4)では、日本の税を巡る重大で改革不可欠な問題とは何か、それは会計原則で申しあげれば「重要性の原則」に従って判断すべしということになるでしょうか。私は下記の4点が、ただちにその改革に着手すべき重大事項=「重箱のど真ん中」ではないかと考えています。
(参考)重要性の原則
http://financial.mook.to/accounting/02/kg/kg-k10.htm
<1>巨額の所得や資産を持っているにもかかわらず、現在の税法に従って素直に納税義務を果たさず、タックスヘイブンその他の複雑・多岐にわたる方法を使い、巧みに秘密裏に納税を回避したり脱税したりしている国内外の巨大企業・超富裕層があまた存在していること。この国際納税回避行為がわが国の税収にもたらしている損害は毎年2桁兆円にも上る可能性がある。
<2>上記<1>以外にも、法人税については、租税特別措置や法人税法上の優遇措置、あるいは特別法などにより、巨額の納税が猶予・免除されており、今日では多くの巨大企業が納税をほとんどしていない状態が恒常化している。(毎年、数兆円の税収減)
(関連)税金を払わない巨大企業-富岡幸雄/著(文春新書)
<3>富裕層についても、いわゆる資産所得(利子、配当、キャピタルゲインなど)に関する優遇税制(分離課税など)などにより、総所得が2億円弱くらいより以上の高額所得層では、実質的に所得が増えれば増えるほど税負担率は低下していくという逆累進の税負担率となっている。加えて、大企業オーナーや大規模土地所有者などの富裕層・資産家層は、たとえば一時的な国外脱出などの方法で相続税・贈与税の巨額な納税を回避する行為も見られ、富裕層・資産家層の相続税・贈与税の徴税に大きな疑義が出ている(例:武富士の例)。これについては、合田寛氏の著書から別添PDFファイルに一部抜粋をさせていただいたので、みなさまにも是非ご覧いただきたいと思います。(毎年、数兆円の税収減)
(関連)(別添PDFファイル)相続税・贈与税の納税回避(武富士の例)(合田寛著『タックスヘイブンに迫る』:新日本出版社)
「souzokuzeikaihi_goudasann_tyosyo.pdf」をダウンロード
(関連)タックスヘイブンに迫る 税逃れと闇のビジネス-合田寛/著(新日本出版)
<4>欧米系の多国籍巨大企業(非居住者・外国企業)が、日本国内で事業・営業を行った結果得られた「日本国内源泉所得」に対する日本税務当局による課税を様々な形で逃れており、その金額が巨額なものになっている。そして、この非居住者や外国企業による納税回避行為についてもタックスヘイブンが密接に関係している。いわば日本の税務主権が侵害されているが、日本の税務当局はこれに対して毅然と対決する姿勢にない。特に米系の多国籍巨大企業に対しては、情けない限りの態度のように思える。事例として、アップルとアマゾンの事例を、同じく合田寛氏の著書から一部抜粋させていただき別添PDFファイルで添付しました。(おそらく毎年1兆円を超える税収減)
(関連)(別添PDFファイル)外国企業による日本国内源泉所得の納税回避(アップル及びアマゾンの例)(合田寛著『タックスヘイブンに迫る』:新日本出版社)
「gaikokukigyou_zeikaihi_goudasan_tyosyo.pdf」をダウンロード
(5)私は三木氏から、タックスヘイブンの話や欧米系の多国籍巨大企業の国内源泉所得に対する課税回避についての話や議論を、これまでお聞きしたことがない。何故、三木氏は、上記で申しあげたような4つの日本の税金・税制・徴税行政の上での大問題を積極的に取り上げてお話されないのでしょう? まことに残念なことだと言わざるを得ません。三木氏は日本の税金のことについては「大御所」として、ぜひとも勇気を奮って、その核心部分=「重箱のど真ん中」=「重要性の原則」のまさに最重要部分について、問題提起していただき、その処方箋を描いて見せていただきたいと願うものです。今や高齢となっても、上記でご紹介した「税金を払わない巨大企業」をお書きになり、多方面からの誹謗中傷ももろともせずに、悠々と戦っておられる富岡幸雄先生(中央大学名誉教授)のように、私たちに進むべき税制改革の路をお示しいただければと思います。
(参考)以下、私の2017.12.3のメールの記載です。三木義一氏のレジメだけを別添PDFファイルに添付しておきます。
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(追)(12.3)シンポジウム:「正義と税/パラダイス文書、グローバル・タックス、税制改正」:資料・関連サイト
http://isl-forum.jp/archives/1941
(本日12/3、青山学院大学で標記シンポジウムが開催されました。別添PDFファイルおよび下記URLサイトをご覧ください)
<別添PDFファイル:当日配布資料>
(1)(12.3)シンポジウム:「正義と税/パラダイス文書、グローバル・タックス、税制改正」(PROGRAM)
(2)(レジメ)伊藤恭彦さん(2017.12.3)
(3)(レジメ)津田久美子さん(2017.12.3)
(4)(レジメ)三木義一さん(2017.12.3)
(5)どうなる?税の見直し|NHK NEWS WEB
https://www3.nhk.or.jp/news/special/zeisei2018/
<関連サイト:主催団体>
(1)国際連帯税フォーラム NGO Forum for International
Solidarity Levies
(2)グローバル連帯税フォーラム(@acist)さん Twitter
https://twitter.com/acist?lang=ja
(3)日本の税制にもの申す組織 民間税制調査会(民間税調)
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