米大型減税が議会通過 10年1.5兆ドル「史上最大」 大統領署名はずれ込み(日本経済新聞より)
前略,田中一郎です。
米トランプ政権と共和党議会が法人税・所得税の超大型減税に踏み切りました。ゴロツキ大統領と盗っ人議会の結託による税金泥棒と見て、ほぼ間違いありません。米民主党議員は全員が反対し、一部の共和党議員も反対に回ったようです。これほど米国の支配者たちの正体を赤裸々に表すものはありません。ラストベルトの元ブルーカラーたちは民主党エスタブリッシュを嫌って、自分たちのために政治をしてくれることを期待してトランプに投票をしたと言われていますが、まさしく愚か者がまんまと騙されて、エスタブリッシュどころか、超エスタブリッシュの巨大企業や超大富豪たち(トランプはその世界の人間です)に、巨額の税金=つまりは米国の全国民のために使われるべきカネが、この巨額減税法でかっさらわれることになったということです。
この後やってくるのは、哀れな元ブルーカラーを含む圧倒的多数の米国民のために行われていた社会政策などが大きくカットされていくということです。そもそも超大富豪の世界のトランプが、没落したブルーカラーのために仕事をしてくれると思う方がどうかしているでしょう。残酷な言い方で申しあげれば、資本主義社会では、お人好しは食い物にされるということです。
なお、財政悪化を防ぐための「ペイ・ゴー原則」(財政赤字を発生させる新法や法改正を1年間分合計し、それと同額を他の歳出予算から削減するというもの)をこの減税法案では「例外」とするため、その法案審議を翌年行う時間を確保する目的で、減税法案成立のための大統領署名は来年に持ち越しと予想されています。
(今回の米国の大型減税を最も詳しく伝えているのは日本経済新聞ですので、最低限、下記の2つの記事はご覧になっておかれるといいでしょう。しかし、その記事の内容はまさに「御用」どころの話ではない支離滅裂の噴飯ものです。経済専門新聞の記者達・編集デスク・論説委員たちが経済や税制というものについて、ほとんどまともに理解していないことがよくわかります。市場原理主義アホダラ教です)
●米大型減税が議会通過 10年1.5兆ドル「史上最大」大統領署名はずれ込み(日経 2017.12.21 夕刊)
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO24895790R21C17A2MM0000/
●米減税 景気の起爆剤 企業に恩恵6500億ドル 金融・小売り
追い風(日経 2017.12.22)
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO24945460S7A221C1EA2000/
(関連)米国:大型減税、財界は歓迎 法人税35%から21%、議会を通過 -
毎日新聞
https://mainichi.jp/articles/20171222/ddm/008/030/044000c
(関連)米減税法案が議会通過 トランプ氏「大きなXマスプレゼント」 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News
http://www.afpbb.com/articles/-/3156135?cx_position=1
(関連)米議会、上下両院で大型減税案を可決 富裕層と企業優遇で活性化:イザ!
http://www.iza.ne.jp/kiji/world/news/171221/wor17122107580002-n1.html
以下、私のコメントを箇条書きにします。
(1)共和党主導による「減税法」という「税金盗っ人法」は過去に3回あり、レーガン、ブッシュ・ジュニア、そして今回のトランプ政権の3つです。日経12/21夕刊1面を見ますと、この3つの減税の「経済への影響」が比較した表が掲載されており、それぞれレーガン政権では「歳入は当初想定通りに推移するも、歳出削減が進まず財政赤字がさらに拡大」、ブッシュ・ジニア政権では「個人消費の押し上げ効果小さく景気の低迷続く、財政収支は赤字に転落」、とあります。ところがトランプ政権のところには「企業の国内投資を促し、経済成長3%に高めることを目指す」となっていて、あたかも過去2回の大型減税はダメだったが今回はうまくいく、と言わんばかりです。しかし、そんなことには何の根拠もありません。むしろレーガン政権時代には、米国のブルーカラーの没落は決定的となり、ブッシュ・ジニア政権の時代には貧富の格差が極度に開いた時代です。そしてそれぞれの大型減税は、一方で巨大企業や富裕層に対して決定的な巨額ボーナスとして、他方では、財政難への転落から社会政策が思うように打てなくなり、そのしわ寄せが貧困層に対する財政支出カットとして現れました。米国経済や米国社会に対しては、マイナスの影響だけが深刻に響いていたということです。
(2)日経記事によれば、法人税減税の総額が10年間で約6500億ドル、個人税制では同じく10年間で1兆ドルを超える、とありますが、見出しにある減税総額は「10年1.5兆ドル、「史上最大」」と書かれています。勘定が合いません。これはどうも、企業の海外留保金への一時課税によるものと思われます。しかし、法人税減税額はそれを大きく上回ります。それから米国にも連邦税(国税)の他に州税(地方税)があり、両方を合わせた法人への税率は28%程度のようです。日本の現状とほぼ同じくらいです。ストレートに法人税負担率が21%になるわけではありません。
(3)これまで法人税率を引き下げずに頑張っていた米国が、大きく法人税率を引き下げたことにより、おそらくは国際的な法人税率引き下げ競争に拍車をかけることになるでしょう。いわゆる「ゼロ税率へむけての競争」ということです。愚か極まりないという他ありません。
(4)個人税制では、所得税の最高税率は39.6%から37%への引き下げにすぎないのに、減税額は10年間で1.12超ドルと巨額です。何故なのでしょう? 記事を丁寧に見ますと、日経12/22の3面に「概算控除」倍増の記事があります。私はこの仕組みを知りませんが、これで巨額減税になるのでしょうか? 今後の注目点の一つです(何故なら、日本はすぐに米国のまねごとをするからです)
(5)日本経済新聞記事には、巨大企業群が海外に巨額の利益を蓄積して米国に還流させていなかったものが、この大型減税で戻ってくるかもしれない、などと書かれていますが、そんなことはほぼありえない、と申し上げておきましょう。以前から申し上げているように、一部の特権的多国籍巨大企業の海外留保利益の課税については「強制連結課税」(実質支配基準)を行うとともに(できれば数年さかのぼって)、タックスヘイブン指定を行った地域での利益留保については割増税率をかけるなどしておけばいいでしょう。とにかくタックスヘイブンの(非)課税主権は否認することが重要。
(6)設備投資が米国経済を押し上げる=虚偽です。投資は税金次第では全然決まらない。所得減税が米国経済を押し上げる=超富裕層の「ゼニガメ」に減税分のカネが入るだけで、彼らの消費が増大するわけではないから、経済には何の効果もない。むしろ減税による財政難が財政支出カットに結びつき、米国経済にマイナスに働き、かつ貧富の格差を拡大して社会情勢がますます不穏となるでしょう。
(7)企業の生産性向上をもたらす=南無阿弥陀仏・南無妙法蓮華経・アーメンソーメメのたぐい、設備投資は増えないし、サービス業の生産性向上はそう簡単ではないし、かつ、減税などとは全く関係がない。根拠ゼロないしマイナスだ(社会情勢悪化で逆効果かも知れない)。また、賃上げで労働者への還元が進む=アホかと言いたくなる話。還元される金額はスズメの涙で、かつ巨大企業などの労働貴族など、ごく一部に限られる。
(8)トランプ政権にしがみついている米国の愚かなる労働者諸君、早く目を覚ますことだ、ゴロツキを支持して何かを変えてもらおうなどという甘い考えは捨てることだ。このままいけば、さらにむしり取られて、更にボロボロにされていくことになる。民主党エスタブリッシュが気に入らないのは同感だ。ならば、バーニーサンダースに結集して、そこから新世代の「改革者」を育てていけばいいではないか。
草々
« 公益通報者保護制度の改正案=これでは抜本的な改革にはならない(小手先改善ではダメ)+ 若干のこと(イベント、軍学共同、水俣病他) | トップページ | (12.25)「第29回福島県民健康調査検討委員会」結果および関連情報 + (12.25)原子力市民委員会「『原発ゼロ社会への道 2017 ― 脱原子力政策の実現にむけて』発表のつどい」 »
« 公益通報者保護制度の改正案=これでは抜本的な改革にはならない(小手先改善ではダメ)+ 若干のこと(イベント、軍学共同、水俣病他) | トップページ | (12.25)「第29回福島県民健康調査検討委員会」結果および関連情報 + (12.25)原子力市民委員会「『原発ゼロ社会への道 2017 ― 脱原子力政策の実現にむけて』発表のつどい」 »


コメント