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2017年10月23日 (月)

福島原発事故損害賠償「なりわい訴訟」福島地裁判決:この判決のどこが問題か=日本の司法・裁判所は、何故、原発事故被害者をきちんと救済しないのか!?

前略,田中一郎です。

(別添PDFファイルは一部添付できませんでした)

 

(最初に若干のことです)

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1.(10.25)「福島原発被害東京訴訟第25回(結審)」東京地裁103

 http://www.labornetjp.org/EventItem/1507377747131staff01

 

2.(10.27)東京地裁103号法廷を満席に! 安保法制違憲訴訟 第5回差止訴訟傍聴(東京地裁)& 報告集会(参議院議員会館)

 http://www.labornetjp.org/EventItem/1508485455308staff01

 

3.(別添PDFファイル)(12.8)「エネルギー基本計画を脱原発・脱石炭・再エネ大幅導入で! 政府交渉にむけて市民の意見をまとめる関西討論集会」の賛同人を募集しています。

「kihonkeikaku_kansaisyuukai_yobikake.pdf」をダウンロード

4.(別添PDFファイル)(チラシ)(12.9)映画「イラク チグリスに浮かぶ平和」上映 & 講演:綿井健陽氏「報道は嘘をつくのか」(『DAYS JAPAN』)

「tirasi_129_eigakouen_deizu.pdf」をダウンロード

5.オルタナティブな日本を目指して(企画一覧:第1回~4回) いちろうちゃんのブログ

 http://tyobotyobosiminn.cocolog-nifty.com/blog/2017/07/post-6da3.html

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皆様ご承知の通り、さる20171010日、最大の福島原発事故損害賠償訴訟と言われる「なりわい(生業)訴訟」についての判決が福島地裁で下されました。以下、それについて簡単にご報告いたしたいと思います。また、あわせて、この判決について私が思うところを若干申し上げます。判決の評価については、大きくわけて、福島原発事故の責任の有無や所在についての問題と、その事故に伴って被害者らが被った損害の賠償・補償に関する問題の2つに整理できます。このうち前者、つまり責任論については、このメールではごく簡単に若干のことを申し上げ、もっぱら賠償・補償のことについてコメントしたいと考えています。

 

簡単に結論だけを申し上げれば、損害賠償訴訟としては原告・被害者らを全面的に敗訴させた不当判決=福島原発事故という理不尽で社会的に不正義な事故の被害者を救済し、原発事故後の政治や行政の不当極まる被害者(救済)政策の違法性や反社会性・反国民性を断罪する、という司法・裁判所の本来の使命を棚上げにして逃亡した「ヒラメ判決」の一種であるということです(例:「子ども・被災者支援法」に違反していて違法です)。そもそも被害の実態に即していない賠償額の決め方がなされ、こんな金額では被害者の生活や人生の再建などは全く不可能なレベルにまで判決は賠償額を抑え込んでしまっています。人権侵害そのものであると言わざるを得ません。

 

そして私が加えて危惧するところは、この判決が前橋判決と同様に、原発事故被害に対する賠償・補償請求をこれから提訴しようと考える被害者の方々に対して大きな抑止効果を持ち、結果として、加害者・東京電力や事故責任者・国を経済的・社会的に救済するとともに、逆に原発事故被害者を切捨てていくことにつながるのではないかという点です。日本の司法・裁判所は、何故、原発事故被害者をきちんと救済しないのか!? 何故、加害者にきちんと賠償・補償をさせないのか!? 今から60年以上も前に起きた水俣病の悲劇・国家的犯罪行為に対する判決よりも、この福島原発事故にかかる「なりわい訴訟」判決は後退してしまっています。

 

そして、原発・核燃料施設の過酷事故再発防止の観点から見ても、今回の判決は看過できない愚かな判決だろうと私は思っております。手抜きの安全管理の結果、原発や核施設の過酷事故を起こした者は、その責任をしっかりと問われ(刑法・民法・行政法の3つのレベルで)、厳しく裁かれる・巨額の賠償をさせられるということが、規制当局や国を含む関係当事者の今後の安全対策を強化させ事故の再発を防止するからです。こんな愚かな判決を出す司法・裁判所なら必要ない、いや、必要ないどころか「存在悪」にまで転落していると言っていいのではないかと思います。

 

(注)福島原発事故の「責任論」については、井戸川裁判(福島被ばく訴訟)の原告弁護団長をなさっている古川元春弁護士が、下記の非常に優れた(かつ平易に書かれた)著書を出しておられます。ですので、これを参考にさせていただいて、改めてまとめて別メールにて論じたいと考えております。

 

(関連)朝日新聞出版新書『福島原発、裁かれないでいいのか』(古川元晴/船山泰範著)

 https://publications.asahi.com/ecs/detail/?item_id=16722

 

(関連)井戸川裁判(福島被ばく訴訟)を支える会

 http://idogawasupport.sub.jp/

 

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●『生業(なりわい)を返せ、地域を返せ!』福島原発訴訟原告団・弁護団

 http://www.nariwaisoshou.jp/

 

(1)判決 骨子・要旨(20171010日)

 http://www.nariwaisoshou.jp/progress/2017year/entry-752.html

(2)判決(20171010日)

 http://www.nariwaisoshou.jp/progress/2017year/entry-755.html

(3)「生業を返せ、地域を返せ!」福島原発訴訟判決を受けての声明(20171010日)

 http://www.nariwaisoshou.jp/activity/entry-753.html

 

●福島原発事故で国の責任を認める判決〜県外にも賠償命令 OurPlanet-TV:特定非営利活動法人 アワープラネット・ティービー

 http://www.ourplanet-tv.org/?q=node/2174

 

●原発被害者訴訟原告団全国連絡会

 http://www.jnep.jp/genzenren/

 

 <別添PDFファイル>

(1)福島地裁,生業訴訟判決についての声明(原発被害者訴訟原告団全国連絡会 2017.10.10

「nariwaisosyou_fukusimatisaihanketu_genpatusosyouzenkokuren.pdf」をダウンロード
 http://www.jnep.jp/genzenren/saiban/171010nariwai-seimei.pdf

(2)ご支援をお願いします(原発被害者訴訟原告団全国連絡会 20176月)

「gosienwo_genpatusosyouzenkokuren.pdf」をダウンロード
 http://www.jnep.jp/genzenren/saiban/nariwai-hanketu.html

(3)おしどりマコ・ケンの実際どうなの!?:津波対策ができなかったのは仕方ない? 「忖度判決」もいい加減にしろ(イントロ部分)(『DAYS JAPAN 2017.11』)

「osidori_sontakuhanketu_deizu.pdf」をダウンロード
 https://daysjapan.net/

(4)福島原発事故の「生業訴訟」、津波と浸水の予見可能性を認定、地裁が国と東電に5億円支払い命令(藍原寛子『週刊金曜日 2017.10.20』)

 http://www.kinyobi.co.jp/

(5)原発被災3800人福島訴訟、国の責任 再び認定、「津波予見できたのに対策怠る」(東京 2017.10.11

 http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201710/CK2017101102000127.html

(6)原発事故 国の責任認定、福島地裁判決「原状回復」は却下(朝日 2017.10.11

 http://www.asahi.com/articles/DA3S13174048.html

(7)原発事故「国・東電に責任」、計5億円 避難区域外も賠償(毎日 2017.10.11

 https://mainichi.jp/articles/20171011/ddm/001/040/182000c

(8)自転車保険、高額賠償請求に備え加入を(東京 2017.10.19

 http://www.tokyo-np.co.jp/article/living/money/CK2017101902000186.html

 

(自転車に乗る場合でも、私たちに対してなら、上記のように万が一の事故とその賠償責任に備えて「保険に入れ」と勧誘がなされる。ならば、原発に対しても同じようにしてくれませんか! 原発もまた、万が一の事故とその賠償責任に備えて「保険に入れ」と電力会社に言うべきでしょう(保険金額無制限の損害保険付保を「原発規制」として義務化すべきです)。しかし、福島第1原発事故を経てもなお、電力会社は何処もかしこもみな、何の「保険」にも入っていないし「賠償準備」(賠償準備金の積立など)にも着手しておりません。おかしいでしょう! :田中一郎)

 

 <関連サイト:「いちろうちゃんのブログ」>

(1)福島原発事故損害賠償訴訟 前橋地裁判決:日本の裁判所・裁判官は、何故に理不尽極まる原発事故の被害者に対して人権救済の道を開かぬのか!? これは明らかに「不当判決」である いちろうちゃんのブログ

 http://tyobotyobosiminn.cocolog-nifty.com/blog/2017/03/post-fcf7.html

 

(2)(報告)(9.28)原発損害賠償請求 千葉訴訟判決報告集会:許せない判決です=衆院選時に実施される最高裁判事の国民審判では候補者全員に「×××××」を! 「国民審判」一揆を起こしましょう!  いちろうちゃんのブログ

 http://tyobotyobosiminn.cocolog-nifty.com/blog/2017/10/post-a750.html

 

 <関連サイト:一般>

(1)東京新聞 国の責任認定 原発福島訴訟 「元の生活を」決意新た 社会(TOKYO Web)

 http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201710/CK2017101602000239.html

(2)原発事故訴訟:国と東電に賠償命じる 福島地裁判決 - 毎日新聞

 https://mainichi.jp/graphs/20171010/hpj/00m/040/002000g/1?fm=mnm

(3)東日本大震災:福島第1原発事故「国・東電に責任」計5億円,避難区域外も賠償 地裁判決 毎日新聞

 https://mainichi.jp/articles/20171011/ddm/001/040/182000c?fm=mnm

(4)<原発事故訴訟>一部に「平穏に生活する権利」侵害を認定(毎日新聞)Yahoo!ニュース

 https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20171010-00000062-mai-soci

(5)<福島原発訴訟>賠償拡大、可能性開く (毎日新聞) - Yahoo!ニュース

 https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20171010-00000079-mai-soci

(6)原発事故、国の責任認定 「原状回復」は却下 福島地裁判決:朝日新聞デジタル

 http://www.asahi.com/articles/DA3S13174048.html?ref=nmail_20171011mo

(7)福島判決の意義を説明 生業訴訟原告・弁護団 (福島民報) - Yahoo!ニュース

 https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20171012-00000532-fminpo-l07

 

 (田中一郎コメント)

1.まずもって判決文が法曹界だけで通じるジャーゴンだらけで、読んでいても何が書いてあるのかよくわからないところがたくさんある。このこと自体が、裁判や裁判所が、裁判を提訴してくる有権者・国民や企業などのために仕事をしていない決定的な証左と言えるのではないか。私が上級裁判所の判事なら、かようなジャーゴンだらけの判決文はそれだけで「書き直し」を命じて、原審裁判所へ差し戻していただろうと思う。どうしても専門用語を使いたいのであれば、その説明を原文に注書きして使い(当該ジャーゴンが書かれている場所付近に)、判決文は文章が全体を通じて世の中一般に使われているような明確・明快な文章で書き抜かれていなければならない。

 

さらに申し上げれば、今日の裁判所・裁判官どもは、まずもって法廷からTVカメラを追い出して法廷を事実上の非公開法廷としているし(憲法違反につき国会が弾劾裁判を提起せよ)、本来は裁判は口頭弁論による原告・被告の相互やりとりで進められなければいけないにもかかわらず大半を書類審査のみに終始して、法廷では、ほとんどの時間を事務打ち合わせのようなことで費やす低レベルの振る舞いを関係者一同で行っていたりと、今日の日本の司法・裁判所は、裁判の体すらなしていない。この体たらくを、どこかでだれかが抜本的にひっくり返して「適正化」手術をしなければいけないのではないか。何度も申し上げるが、司法・裁判所は、本来は有権者・国民のために仕事をする「もう一つの役所」であることを忘れてはいけない。「適正化」されるまでの間、最高裁判事の「国民審査」では、候補者全員に「×××××」をお忘れなく。

 

2.福島原発事故の責任論については下記の3点だけを申し上げ、全般的な議論は別稿とします。

(1)今回の福島原発事故に限らず、国や行政機関、あるいは大企業が加害側に回る場合の事故や過失、事件や犯罪については、「具体的予見可能性」説や「回避可能性」説が乱暴かつ無原則に持ち込まれ、加害行為の刑事的・民事的・行政法的な責任を回避させるか軽課させるための方便として使われている。しかし、上記でご紹介した古川元春弁護士が自著で述べられているように、役所や企業などの営みが広範囲で重大な影響を多方面にわたって複雑に及ぼす可能性が高い現代社会においては「未知の危険であっても事前の慎重な態度によって予防可能なものが少なくないので、かような場合にも刑事責任が問われてしかるべき」である。ましてや、一たび過酷事故ともなれば回復不可能な深刻な影響が未来永劫にわたり広がる原発・核燃料施設については、いわゆる「危惧感説(合理的危険説)」(起きる可能性が合理的に予測できる危険については、その責任を問える)で裁いていく以外にない。「具体的予見可能性」については「(危険)予見義務」、「回避可能性」については「(危険)回避義務」と書き換えて、刑法理論を再構成すべきである。「可能性」(が具体的になければ責任は問わない=責任回避のための方便)ではなくて、あくまでも「義務」(をどこまで果たしたか、不十分ならば責任を問う=原発では義務の免除は容易にはできない)である。

 

 

注:日本の刑法学界では「具体的予見可能性」説が支配的であるというから驚きである。日本の刑法学界・法学界が、いわゆる「御用の学」であり、また時代遅れの存在であることの1つの証左ではないか

(2)裁判が「津波の予見可能性」だけの観点で加害者・東京電力や事故責任者・国の責任の有無を判断しようとしているのは、如何に裁判とは言え容認しがたい(裁判の場合は争点を広げると判決までに時間がかかるので、シロクロがはっきりしやすいものに争点を絞り込む。従ってまた、裁判などでは物事の真相がすべて明らかになるなどとは思わない方がいい)。少なくとも次の点については、物事が明確であり、当然ながら東京電力や国の責任が問われてしかるべきである。

 

●外部電源の供給施設があまりにお粗末だったためSBO(全電源喪失)に一気に至ってしまった(福島第1原発に送電する送電線鉄塔の場所や変電所のある土地の地盤、あるいは施設の耐震強度が、震度6程度の地震で液状化や地滑りを起こす軟弱地盤であったり、狭隘でアクセスの不便な場所にあったり、また施設の耐震強度が不足であったりして倒壊し、その後の復旧にも多大な時間と労力が必要になってしまった)。

 

●もしものための非常用電源設備(2つの非常用電源と配電盤)が、標高の低い原発施設の地下に全部まとめておかれていて、しかもその地下室には防水対策の装備さえなされていなかった。これでは複数の手段による非常時用の予備電源対策とは言えない。まさに「手抜き」そのものである。

 

●福島第1原発では、1号機の非常用復水器(IC)を除き、その他の号機の緊急炉心冷却装置(ECCS)は、すべてその稼働に電源を必要としていた。つまりSBO(全電源喪失)への備えが皆無だった。

 

●SBO(全電源喪失)も含めて、日ごろの非常事態に対する訓練が全く不足しており、福島第1原発事故時においても、その対応が東京電力も国も支離滅裂だった。とりわけ、事前に用意されていた3つの事故対応マニュアルが全く無視されていたこと(元(独)日本原子力研究開発機構の技術者である田辺文也氏が岩波月刊誌『世界』に、これに関する論文を掲載している。明確な原子炉等規制法違反である)、スリーマイル島の経験から水素爆発の危険性が十分にあったにもかかわらず、その防止対策が全くできていなかったこと、あるいは周辺住民を含む広域住民の避難指示や情報提供も出鱈目で(SPEEDI情報などは住民に対して提供されないまま在日米軍に提供されていた事実など、その出鱈目・背信行為の事例は数多くある)、安定ヨウ素剤すら服用させないまま事故原発からの放射能による無用の大量被ばくを余儀なくさせた。

 

(2)上記のような不十分さがあるが、この判決では、津波に関しては国の責任を真正面から認めている。しかし、東京電力の責任については、過失はあるが故意や重過失までは認められないとし、東京電力の事故責任を半分免罪しているのである。事実に基づかずに、何をおバカなことを言っているのかということだ。詳細は下記の海渡雄一弁護士の力作著書をお読みいただければよい。また、更に昨今では東京電力幹部3人の刑事裁判が始まったことにより、下記の著書以上のことが検察審査会や検察役の弁護士団の手で明らかにされており、東京電力に重過失や故意はない、などということが根拠のない戯言であることが明らかとなっている。

 

(関連)市民が明らかにした福島原発事故の真実 東電と国は何を隠ぺいしたか-海渡雄一著 福島原発告訴団監修(彩流社)

http://www.e-hon.ne.jp/bec/SA/Detail?refShinCode=0100000000000033394716&Action_id=121&Sza_id=C0

 

(関連)(私の感ずるところ仔細:改めて怒りがこみ上げる)(6.30)福島第1原発事故 東電元幹部3人に対する刑事裁判 初公判=問われる司法・裁判所の真価、加害者・東京電力や事故責任者・国が責任を問われなくてどうする!! いちろうちゃんのブログ

 http://tyobotyobosiminn.cocolog-nifty.com/blog/2017/07/post-dc5d.html

 

3.原発事故に対する損害賠償裁判の判決としては、少なくとも次の3点について、まさに出鱈目判決であり、加害者・東京電力や事故責任者・国を救済しつつ、他方で被害者を切捨てていくという、まさにアベコベ・サカサマの政治や行政の大筋をほとんどそのまま追認する典型的な「ヒラメ判決」と言える。これでは被害者は救われない。司法・裁判所は何のために誰のために存在しているのかが問われている。

 

(1)賠償の金額の多寡を決めるのに、事故当時、政府や自治体が行った避難指示や屋内退避指示の区域分けが、無批判にそのまま使われている。これがそもそもの大間違いである。これまでも言われてきたとおり放射能プルームに市町村境界や県境はない。放射能は広く国などが指示した区域を越えて福島県内外に広がっており、従ってまた、放射能汚染による被害も避難指示の区域や福島県に限らず広く広範囲に広がっている。それどころか、事故当時国は、事故後の損害賠償の負担が大きくならないことを最優先にして、避難や屋内退避の指示を「極力狭く」「細切れにして」出していた様子がうかがえ、「何とか地域」「何とか地点」などというわけのわからない地域区分は、その最たる証拠と言っていいものである。そこには何の根拠も放射能汚染実態もない。

 

更に許しがたいのは、その後、こうした避難指示や屋内退避指示の区域が3つに再編されているが、その場合も、各地域の土壌汚染を含む放射能汚染の状況をきちんと調査することなく、いい加減な線量測定をわずかばかり行って、これまた出鱈目な地域再編を行っている。共通して言えることは、こうした国や行政による地域区分は、放射能汚染の実態や被害者の被害の実態とはかけ離れており、こんなものを賠償や補償の金額の多寡を区分ける基準にされたのでは被害者はたまったものではない、ということである(副作用として、原発事故まで存在していた地域コミュニティが賠償問題を契機にして分断され、バラバラになり、気まずい雰囲気が支配するようになっている)。本来は、被害者のいた・いる各地域の土壌と空間の両方の汚染状況を詳細に調べ上げ、更に被害者が受けた無用の被ばく量を勘案して、賠償額が決められていくべきであり、また、個々人によって被害の受け方も違うため、被害実態に即した賠償・補償額が決められてしかるべきである。その意味で、この判決は、損害賠償請求裁判の判決としては出鱈目の極みと言える。

 

(2)判決では、事実上(リップサービスは別として)、避難・疎開・移住の権利を認めず、また、放射能に汚染された土地への帰還を経済的に被害者を追い詰めることで強制している今日の国の政策を暗黙裡に追認している。これは明確に「子ども・被災者支援法」違反の違法行為であり、また、日本国憲法上の基本的人権の侵害行為そのものである。裁判所が真っ先にこれを指摘して国を断罪しないのは全く理解できないことである。チェルノブイリ原発事故後の旧ソ連諸国でも、かようなひどい政策はとられていない(チェルノブイリ法)。司法・裁判所が、国や自治体のこうした出鱈目行政にストップをかけなければ、いったい誰がそれを行うのか。「ヒラメ裁判官」が司法の使命を放棄していてどうするのか。

 

更に許しがたいのは、今回の判決文の中で、被害者・原告側から出されていた「原状回復」の請求も却下されたことである。判決文には「原告らの旧居住地の空間線量率を本件事故前の値である0.04S vh以下にせよという原状回復請求は.被告らに求める作為の内容が特定されていないから,民事訴訟として不適法である」などと書かれている。「作為の内容」は原状復帰請求を受けた国と東京電力が考えればいい話で、何ゆえに被害者側が考えて具体的に指摘しなければならないのか。被害者側は、ただ単に、事故の前の状態に戻せと、ごく当たり前のことを請求しているだけの話であり、元の状態に戻すためには、除染をはじめ、さまざまな諸施策をしなければ戻すことは難しいだろう。しかし、それこそがまさに原発過酷事故がもたらした被害の実態であり、その実態に即した賠償や補償を加害者側にさせるためには、まず加害者側にこの「原状回復」の義務を課してその責任を明確にさせなければ、物事は前には進まない。個々の作為をどうのこうのと言っていたのでは、時間ばかりが経過して、被害者はその被害を回復することはできないのである。

 

とは言え、除染も含めて原発事故による放射能で汚染された旧居住地の原状回復は、事実として極めて難しいことは明らかである。それ故に、「原状回復の義務」を加害者側の国と東京電力に対して課した上で、次の2点が重要なポイントとなる。(1)原状回復が直ちには事実上できないがゆえに、万全の賠償・補償を行うことを条件に避難・疎開・移住により「事実上の代替措置」を被害者個々人に受け入れていただき、その間に時間をかけて被害者が旧居住地に帰還できるような対策をしっかりとやっていくことを約束する(加害者側の法的な債務とする)、(2)原発・核燃料施設の過酷事故を起こして環境の放射能汚染を引き起こせば、事実上、底なし沼の「原状回復義務」が否応なく課される、という「実績」を作ることにより、原発・核燃料施設の安全管理の失敗は絶対に許されないということが身にしみて理解される=安全対策の手抜きや軽視を未然に防ぐことができる=過酷事故の再発防止に大きく役に立つ。つまり、「原状回復の義務を認めない」などという判決は二重の意味で反被害者的であり、反有権者・国民的なのである。

 

3.損害賠償・補償の金額があまりに少なすぎて、これでは被害者は救われない。生活も仕事も教育も人生の再出発も、なにもかも、できないまま理不尽な被害・損害の苦しみの底に放り出されてしまう。一部の議論では、いわゆる「原子力損害賠償紛争審査会」が出した「指針」の範囲を超えて賠償を認めた点を評価しているが、しかし、それでも金額が少ないままであれば、指針を超えていようがいまいが結果は同じである。

 

損害賠償の金額の考え方は難しい話ではない。次の3つについて、それぞれ、次のような考え方で算定すればいいだけの話である。実際問題、賠償・補償で難しいのは、次の3つではなく、今後発生してくるであろう放射線被曝による健康被害の賠償である(既に子ども甲状腺ガンや甲状腺疾患、あるいは白血病や白内障などの病気が出てしまっている、これをどうするかが非常に難しい)。しかし、下記のような、これまでの前例もあってほぼ自明なことを、加害者・東京電力や事故責任者・国と司法・裁判所がグルになって被害者切り捨てのようなゴマカシをしていて、いったいどうするのかということだ。

 

(1)不動産を含む物損 いわゆる時価評価ではなく、再構築費用(同じレベルの生活や仕事などを再建する費用)で賠償額を算定する

(2)収入の機会損失  上記の仕事や営業などが回復するまでの間、機会損失として所得補償を行う

(3)慰謝料(精神的損害) ⇒ 悪質な交通事故の慰謝料を最低下限に置き、今回原発事故の重大性・結果永続性・悪質性・過失性を鑑みて、これを何倍の金額にするかを勘案する

 

上記の基本的考え方は、原発事故以外の一般の損害賠償額算定の際に用いられる考え方である。しかし、判決文をみなさまにもお読みいただきたいが(全文ではなく要旨でいいです)、読んでいて怒りがこみ上げてくるくらいに「この裁判官は何を書いておるのか」という内容である。

 

(具体例)

●「将来の損害までは払う必要はない(将来請求としての適格性を満たしておらず民事訴訟として不適法である)」

 ⇒ 原状回復がなるまで月額いくらの少額賠償金(5万円)を払えという請求に対して裁判官が下した却下判決、しかし、被害者・原告の請求は当然の請求である。

 

●「放射性物質による汚染が社会通念上受忍すべき限度を超えた平穏生活権侵害となるか否かは・・・等の諸般の事情を総合的に考慮して判断」

 ⇒ 法律では1mSvが一般公衆の被ばく限度、5.2mSvまたは4万ベクレル/m2以上は放射線管理区域、1万ベクレル/kgの物質は隔離して厳重管理、100ベクレル/kg以下がクリアランス基準、などなど、既に福島第1原発事故以前に決められた法律や決まりがある。これらを超えれば当然に「社会通念上受忍すべき限度を超えた平穏生活権侵害となる」。裁判官がこうした法律や決まりに反して物事や被害の基準を相対化して、原発事故被害をごまかすようなことをしていてどうするのだ!

 

●「国が規制権限不行使により国賠法上の責任を負う場合においても、その賠償すべき責任の範囲は、被告東電の負う責任の1/2でよい」

 ⇒ 意味不明。規制権限不行使により事故防止を怠り、被害者に多大な損害と迷惑をかけた罪は重く、東京電力と同罪かそれ以上である。国と東京電力は、少なくとも慰謝料については別々に独立して支払うべきである。

 

●「栃木県や宮城県の被害者には(「原子力損害賠償紛争審査会」指針以上には)払わなくていいし、茨城県北茨城市や東海村は1万円」

 ⇒ 論外。この裁判官どもは被害者や有権者・国民をバカにしているのではないか。

 

4.最後に、

 我が国は原発・核燃料サイクル施設の安全管理すらまともにできないまま、福島第1原発事故後においてもなお、原発・核燃料サイクル施設の再稼働を画策するありさまである。その背後には、原子力ムラ・放射線ムラの利権があるのは自明ながら、他方では、必然の結果として起きた福島第1原発事故の責任=刑事・民事・行政法の各法的責任が全くと言っていいほど問われないまま、福島第1原発事故を引き起こした連中が、再び原発を再稼働しようとし、あるいはまた、その原発・核燃料サイクル施設を規制・監督しようとしているのである。こうしたことは今回の裁判の裁判官にも十分に認識されていたはずなのに、今回の判決もまた不十分なまま、事実上、加害者を助け被害者を切捨てる内容に終わっている。

 

 私からは、福島地裁においてこの判決を下した3人の裁判官に対して、最後に次のように申し上げようと思う。「ふざけんな、バカヤロー」。

草々

 

 

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