前略,田中一郎です。
(別添PDFファイルは添付できませんでした)
1/16のメールの続きです。
ここまでの私のメールでは、福島第1原発事故後の対応・対策にかかる費用が膨大な金額に膨れ上がっていることについて、その対応・対策と今後の経費見積もりを見直すにあたり、この原発事故に責任のある組織や人間達が一切の責任も負担も負わずに(刑事責任、民事責任(賠償・補償)、行政法上の責任(免許取消など))、軽率にも背信的にもご都合主義的にも、ほとんどの負担を電力消費者・国民に押し付けていること、言い換えれば、加害者企業の東京電力だけでは負担しきれないとしても、その負担を消費者・国民に転嫁する前に、責任当事者や関係当事者でなすべきこと・負担すべきものがあるだろうということ、
そして、その従来の約2倍の金額に膨れ上がった21.5兆円もの巨額なカネの使い方(計画)の中身が、これまたいい加減で出鱈目であり、今日の困難な事態を改善するどころか、より事態を悪化させたり、問題を解決できないまま事実上先送りされてしまったり、無意味に費用だけがかさんだり、被害者を更に増やしたりし、他方、その影で、加害当事者である原子力ムラの関係組織や企業や人間達が、そのカネを私物化して湯水のごとく使っていくであろう、というようなことが見て取れるため、とても看過できるような内容ではないことを申し上げました。いわば、東京電力他の加害者を責任不問のまま救済し、他方で、何の罪もない多くの原発事故被害者を切り捨てるという、理不尽・不合理・不正義・不道徳で「悪」の固まりのような「見直し」であるということです。
合計金額の21.5兆円にしたところで、これで終わりというわけではなく、近い将来、更に数兆円、あるいは数十兆円の金額が再び必要となる可能性も高いのです。確かな見通しも、広く電力消費者・国民の合意もなく、その場しのぎの、場当たり的な、資金の逐次投入でお茶を濁し、目先の数年間だけ今のような形で何とか動いていればそれでいい、あとは後任の人間がやってくれるだろう式の、無責任極まりない対策・対応の「先送り」が今回の「見直し」の実体なのです。
しかし、出鱈目はそれだけではありません。今回のメールでは、その21.5兆円の調達の仕方=言い換えれば、誰がこの資金をどのような形で負担するのか・させられるのか、の問題について簡単に言及します。以下のレポートをご覧ください。
<これまでの私のメール>
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●これは原子力ムラの「クーデター」だ(1)=原発(推進)失敗のコストはすべて国民に押し付けても、これからもまだまだ続けます(1):市民団体抗議声明いろいろ
いちろうちゃんのブログ
http://tyobotyobosiminn.cocolog-nifty.com/blog/2016/12/post-00c0.html
●これは原子力ムラの「クーデター」だ(2)=原発(推進)失敗のコストはすべて国民に押し付けても、これからもまだまだ続けます(2):(報告)(12.14)院内集会・政府ヒヤリング:原発の事故処理・賠償費用・廃炉費用 誰がどのように負担するか いちろうちゃんのブロ
http://tyobotyobosiminn.cocolog-nifty.com/blog/2017/01/1214-cec1.html
● これは原子力ムラの「クーデター」だ(3):今般の福島第1原発事故の後始末費用の負担の決め方は、さながらアジア太平洋戦争時代の「ガダルカナル島攻略作戦」のごときです(その1) いちろうちゃんのブログ
http://tyobotyobosiminn.cocolog-nifty.com/blog/2017/01/post-4153.html
● これは原子力ムラの「クーデター」だ(4):今般の福島第1原発事故の後始末費用の負担の決め方は、さながらアジア太平洋戦争時代の「ガダルカナル島攻略作戦」のごときです(その2) いちろうちゃんのブログ
http://tyobotyobosiminn.cocolog-nifty.com/blog/2017/01/post-f0a2.html
● これは原子力ムラの「クーデター」だ(5):今般の福島第1原発事故の後始末費用負担の決め方は、さながらアジア太平洋戦争時代の「ガダルカナル島攻略作戦」のごときです(その3)
いちろうちゃんのブログ
http://tyobotyobosiminn.cocolog-nifty.com/blog/2017/01/post-4398.html
● これは原子力ムラの「クーデター」だ(6):今般の福島第1原発事故の後始末費用負担の決め方は、さながらアジア太平洋戦争時代の「ガダルカナル島攻略作戦」のごときです(その4)
いちろうちゃんのブログ
http://tyobotyobosiminn.cocolog-nifty.com/blog/2017/01/post-d851.html
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<別添PDFファイル>
(1)特集ワイド:福島事故賠償
疑問だらけ、将来世代が「過去分」負担(毎日 2017.1.10 夕刊)
http://mainichi.jp/articles/20170110/dde/012/040/002000c?fm=mnm
(2)福島賠償 新電力も負担、政官業でツケ回し(毎日 2017.1.10)
http://mainichi.jp/articles/20170110/ddm/001/040/132000c
http://mainichi.jp/articles/20170110/ddm/003/040/115000c
(3)行き詰る東電支援(『週刊東洋経済 2016.12.10』)
http://news.infoseek.co.jp/eagles2013/article/toyokeizai_20161210_149084?p=1
http://mikke.g-search.jp/QTKW/2016/20161210/QTKW20161210TKW025.html
(4)原発事故費用・廃炉費用21・5兆円 ~東京電力が責任を取らないまま、国民負担は許されない(Foe Japan 2017.1.10)
http://www.foejapan.org/energy/stop_restart/161209.html
(5)福島原発事故処理費用のために電気料金が2020年から年間1,500円上がる!(『女性自身 2017.1.31』)
http://www.viewn.co.jp/magazine/detail/000002658801/
(6)原発 最後の選択(7):混迷する核燃料サイクル(イントロ部分)(『週刊東洋経済 2017.1.14』)
「kakunen_intro.pdf」をダウンロード
https://store.toyokeizai.net/magazine/toyo/20170110/
<関連サイト:政府決定など>
パブリックコメントにかけてその意見を反映させる前に早々に閣議決定をしてしまっています。もちろん巨額の負担押付けであるにもかかわらず、国会での審議などは皆無です。原子力ムラが支配する原子力ムラ代理店政府さながらの事の運びようです。
(1)(重要)閣議決定「原子力災害からの福島復興の加速のための基本指針について」(2016年12月20日)
http://www.meti.go.jp/earthquake/nuclear/kinkyu/pdf/2016/1220_01.pdf
(2)(重要)東電改革提言(「東京電力改革・1F問題委員会」 2016年12月20日)
http://www.meti.go.jp/committee/kenkyukai/energy_environment/touden_1f/pdf/161220_teigen.pdf
(3)東京電力:委員会提言(要旨) - 毎日新聞
http://mainichi.jp/articles/20161221/ddm/008/020/162000c
(4)福島原発事故の廃炉、賠償費用が倍増、毎月の国民負担はいくら? 広がる反発の声 ZUU online
https://zuuonline.com/archives/136497
(5)【声明】「原発コスト安」は嘘だった-国民への8.3兆円負担転嫁ではなく政策転換を|函南発「原発なくそう ミツバチの会」 ノブクンのつぶやき
http://ameblo.jp/kannami-boy/entry-12221745506.html?frm_src=thumb_module
(6)【声明】市民に原発費用を負担させる不当な方針に反対します 緑の党
http://greens.gr.jp/seimei/19046/
(7)福島原発事故の廃炉、賠償費用が倍増、毎月の国民負担はいくら? 広がる反発の声 ZUU online
https://zuuonline.com/archives/136497
(8)東電:傘下の送配電会社、3月にも社債発行を再開 - 毎日新聞(下段は朝日新聞)
http://mainichi.jp/articles/20170120/k00/00m/020/076000c?fm=mnm
http://www.asahi.com/articles/DA3S12754205.html?ref=nmail_20170119mo
<悪と無責任の巣窟:経済産業省の2つのトンデモ審議会>
(1)エネルギー・環境(METI-経済産業)=東京電力改革・1F問題委員会
http://www.meti.go.jp/committee/kenkyukai/energy_environment.html
(2)基本政策分科会(METI-経済産業省)=電力システム改革貫徹のための政策小委員会
http://www.meti.go.jp/committee/gizi_8/18.html)
(田中一郎コメント)
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5.すべての電力事業者の「共同施設」である送配電網(会社)を使って特定電力事業者や原発だけに「肩入れ」をするようなことは電力自由化の捻じ曲げ以外の何物でもない「市場破壊」「不公正」「不正義」「邪悪」の政策である。また、原発由来電力を避け再生可能エネルギー由来の電力を使うユーザーを含む電力消費者全体から託送料金を広く薄く剥奪して原発の損失補てんに使うなどということは、私有財産権の侵害であり、また、電力行政の濫用以外の何物でもない。
(1)必要な諸費用が東京電力だけでは負担しきれず、国が全面的に支援をし、立替ないしは費用負担をしなければならないというのなら、何故、国会でその是非や諸問題点を審議をし、費用の国民負担の方法を議決しないのか。有権者・国民に具体的な事情や所要金額の内訳・内容の詳細、及びここに至った責任の所在と今後の展望などを明確に示した上で、新たな税金とするのか、特別電力料金として国が徴収するのか、あるいはそれ以外の方法をとるのか、有権者・国民=電力消費者に明確にした上で事が決められるべきである。今回提示されている負担金額は、損害賠償負担だけでも「兆円」単位の巨額なモノであり、かようなものを経済産業省の一握りの役人たちだけで決めて、託送料金に上乗せして徴求するなど、許されるはずがない。経済民主主義の根幹にもかかわることである。閣議決定は撤回せよ。
(関連)行き詰る東電支援(『週刊東洋経済 2016.12.10』)
http://news.infoseek.co.jp/eagles2013/article/toyokeizai_20161210_149084?p=1
(関連)ガスエネルギー新聞:ニュース記事詳細:託送料上乗せに反発、エネ庁は押し切る構え/廃炉費用
https://www.gas-enenews.co.jp/news/?action=view&id=1771
この問題については、上記「別添PDFファイル(3)行き詰る東電支援(『週刊東洋経済 2016.12.10』)」の紙面に、日本消費生活アドバイザー・コンサルタント・相談員協会代表理事の大石美奈子氏が「託送料金への上乗せ」に強く反対して正論を展開されている。同氏は経済産業省の「電力システム改革貫徹のための政策小委員会」およびその傘下の「財務会計ワーキンググループ」の委員を務めておられる。以下はその一部抜粋なので、みなさまには『週刊東洋経済』の原本にあたって同氏の主張をご確認願いたい。
(一部抜粋)
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(中略)託送料金に上乗せして徴収するやり方には反対だ。廃炉・賠賞費用の中身が見えにくくなり、金額が青天井になる心配もあるからだ。いつまで徴収されるかもわからない。託送料金に上乗せした場合、原発の電気を使いたくないと考えて新電力に切り替えた消費者も負担を求められる。昔は原発の電気を使っていたのだから過去の分を払いなさいとの理屈だというが、電力自由化の趣旨とも相いれない。
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そもそも福島第1原発事故の直後から民主党政権下で進められてきた我が国の電力自由化が、最も肝心な送配電網(会社)の分離を「法的分離」(=既存の地域独占の大手(原発)電力会社9社の本体(本社)から切り離して送配電(所有)子会社にすること)にとどめ、「所有分離」(本体と完全に切り離し既存大手(原発)電力のグループから抜け出た独立の公的会社にすること)による送配電網(会社)の「共同施設」化=公的機関化を避けて通ったところに根本的な問題がある。福島第1原発事故で、電力自由化の本格的導入や再生可能エネルギーの普及推進は回避できないと見た電力業界や原子力ムラが水面下で動き回りながら、原発を守るための彼らの権力や権限行使の最後のよりどころである送配電網(会社)を「死守」せんと、必死に政治工作をしていた様子がうかがえる。
結局は「法的分離」にとどまって、我が国の電力自由化は中途半端に終わり、何事につけても中途半端な民主党の政治・政策を象徴するような「不十分な改革」に終わってしまったのだが、その「効果」が、ここにきて効いてきたということだ。既存大手電力に肩入れした経済産業省の「努力」の結果でもあるといえる。いずれにせよ、今後も、この大手電力の持ち株会社の支配下に置かれた送配電網(会社)がテコに使われ、原子力ムラ支配の電力業界の横暴は続いていくことになるだろう。本来なら、こういう時にこそ力を発揮して、この出鱈目にストップをかけるべき「電力・ガス取引監視等委員会」は無言のままである。まるで経済産業省の下請「御用」委員会で、全くと言っていいほど役に立たない。金融庁の「証券取引等監視委員会」と同様である。我が国の電力自由化が、実はハリボテの茶番にすぎず、形だけの組織や仕組みをつくって、さも電力が自由化されているかのような体裁がつくられているだけであるということを、今回の「東京電力改革・1F問題委員会」や「電力システム改革貫徹のための政策小委員会」の諸報告・提言、及びアベ政権の反国民的な閣議決定は示していると言っていい。ビョーキの根は深いのだ。
(関連)電力・ガス取引監視等委員会
http://www.emsc.meti.go.jp/
(2)既に2つのインチキがまかり通っている
(2-1)原子力損害賠償・廃炉等支援機構
実は、福島第1原発事故への対応費用の負担に関しては、今回の出鱈目な電力消費者・有権者・国民への押付けと同じことが、既に原子力損害賠償・廃炉等支援機構を通じて実施されている。東京電力が原発事故被害者に支払う賠償・補償金は、まずは国が交付国債や貸付、あるいは債務保証(民間銀行などからの借入)などの形で原子力損害賠償・廃炉等支援機構を通じて東京電力に資金を交付し、そのカネが使われる。国はそれを東京電力への貸付金・仮渡金であるとし、いずれ東京電力から返済してもらうものだと説明しているが、当の東京電力の方では、このカネは「もらったものだ」として特別利益に計上しているのである。この両者の態度の違いは看過できない。どちらかがウソで、どちらかが本当なのだが、どうも東京電力の経理の仕方の方が正しいようである。つまり、国は東京電力が支払うべき福島第1原発事故の賠償・補償費用を、東京電力及びその関係者・株主・大口債権者等の責任を問うこともなく肩代わりをし(もちろん国会の承認も得ていない)、その非を問われることを避けるため、嘘八百の説明を有権者・国民に対して行っているということである。
しかも更に許しがたいことは、そのカネは東京電力が直接返済するのではなく、東京電力を含む既存の地域独占の大手原発電力会社9社が「一般負担金」として毎年一定金額を「原子力損害賠償・廃炉等支援機構」に納めることで返済原資とされることになっている。東京電力だけは「一般負担金」の他に「特別負担金」も追加で負担する(その金額については下記サイトを参照)。しかし、その「負担金」については、今現在も続けられている電力料金の総括原価制度にもとづき、一般の小口消費者向けの電力料金の中に組み込まれ、私たち一般個人の電力消費者が、それとは知らずに負担させられているということだ。これは「電力詐欺」以外の何物でもない。
今回の託送料金に組み込む話は、送配電網(会社)が子会社として分離される2020年以降の話なので、それまでは、この「一般負担金」「特別負担金」の形で我々小口の電力消費者が負担させられ(大口の電力消費者=つまり大企業や大事業者に対しては電力価格が自由化されており、事実上負担しない・させられない)、更に2020年以降は託送料金の形ですべての電力消費者が負担させられるということを意味している。冗談ではないし、ふざけるなという話である。念のために申し上げておけば、福島第1原発事故の賠償・補償費用は、きちんと支払えば天文学的な金額となり、今回打ち出されている7.9兆円などという金額では到底足りないのである。先行き、託送料金がどこまで引き上げられるかはわからないが、こういう仕組みをつくれば、原発事故負担の押付けによって電力自由化の主旨はグチャグチャになる。
(関連)原子力損害賠償・廃炉等支援機構
http://www.ndf.go.jp/gyomu/gyoumu_gaiyou.html
(関連)平成27年度 一般負担金・特別負担金について
http://www.ndf.go.jp/gyomu/futangaku_h27fy_bt.pdf
(2-2)核燃料サイクルとバックエンド費用
実は、原発関連の負担の一般電力消費者への押付けは、もう一つ、既に存在している。それは核燃料サイクル事業に伴う再処理費用と、使用済み核燃料の最終処分費用=いわゆるバックエンドコストである。これについては、下記の『週刊東洋経済』の核燃料サイクル特集でコンパクトに説明がなされているので、みなさまも是非、原本を入手の上、ご覧になっていただければと思います。以下は、その一部抜粋である。バカバカしくも、原発の使用済み核燃料の後始末の費用を、原発を使っていない新電力会社にまで負担させているわけである。もちろん、このことについての大手(原発)電力会社9社による電力消費者・国民への丁寧な説明など全くなく、電力料金の領収書にもその説明の記載はない。黙って取られっぱなし状態が何十年間も続いている。
(関連)(別添PDFファイル(6))原発
最後の選択(7):混迷する核燃料サイクル(イントロ部分)(『週刊東洋経済 2017.1.14』)
https://store.toyokeizai.net/magazine/toyo/20170110/
(一部抜粋)
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(中略)再処理事業が計画された1970年代、再処理費用は、(中略)電気料金の原価には含まれていなかった。しかし、81年には早くも、「現在すでに再処理費用は回収されるウラン及びプルトニウムの価値を大幅に上回ることは明らか」(旧通商産業省の電気事業審議会・料金制度部会中間報告)とされ、経済性のないことがこの時点で明らかとなった。このとき、費用を電気料金に上乗せして回収する道が開かれたのである。
04年には再処理事業の費用総額が40年間で11兆円、高レベル放射性廃棄物の処分などを含めた原発事業の「バックエンド(後処理)費用」全体では18兆8000億円になるとの試算が電気事業連合会(電事連)から示された。それを踏まえて05年には再処理引当金の対象費用が拡大され、原発を持たない新電力会社の利用者にも負担が上乗せされた。
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(3)信じがたい「賠償負担」原資の「過去分」押付け
すでに多くの方々が批判をしているので繰り返さない。「過去にさかのぼって取り損なっていた経費を払え」「当時は電力消費者でなかった者も等しく払え」「原発由来電力を拒否しているものも払え」=こんなもの、常識で考えても通用しない、バカぬかせ! である。ここでは、上記でご紹介した毎日新聞記事をご覧いただきたいと思う。この記事にある「市民電力連絡会」会長の竹村英明氏の批判的コメントが的を得ているのでご紹介しておきたい。
<必見の毎日新聞記事2つ>
●特集ワイド:福島事故賠償
疑問だらけ、将来世代が「過去分」負担(毎日 2017.1.10 夕刊)
http://mainichi.jp/articles/20170110/dde/012/040/002000c?fm=mnm
●福島賠償 新電力も負担、政官業でツケ回し(毎日 2017.1.10)
http://mainichi.jp/articles/20170110/ddm/001/040/132000c
http://mainichi.jp/articles/20170110/ddm/003/040/115000c
(一部抜粋)
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(中略)「経産省は、商用原発が稼働した1966年度から震災前の2010年度まで、電力会社が仮に毎年『賠償への備え』を積み立てていたら、いくらになるか試算しました」
結果は約3・8兆円。提言ではこの額を「事故前から確保されておくべきだった」ものと位置付け、ここから大手電力が11~19年度に納付することが決まっている額(約1・3兆円)を差し引き「20年度からの負担分を2・4兆円」とはじき出したのだ。
竹村さんは「『事故は起きない』と言って備えてこなかった大手電力の責任や、制度を作らなかった国の責任は一体どこへいってしまったのか。根拠となる数字も計算方法も極めて大ざっぱで、ご都合主義の最たるもの」と憤る。
(中略)竹村さんは「過去の世代のツケを将来世代に回すというおかしな理屈だ。震災まで『原発は安い電力』と言われてきたが『過去に負担すべきコストがあった』ということは、『原子力はコストのかかる電力だった』と図らずも証明している」と指摘する。それでもなお、経産省は「原発のコストは高くない」との姿勢を変えない。世耕弘成経産相は昨年12月6日の記者会見で「(賠償費や廃炉費など)いろいろな費用を全部含めたとしても、発電単位当たりのコストは原発が一番安いと考えております」と述べている。
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また、出鱈目は、この「払え」とされた「過去分」の金額の「3.8兆円、2.4兆円」の根拠についてもそうである。下記は東電株主代表訴訟の堀江鉄雄さんからいただいたメールのコメントだが、併せてご紹介しておきたい。
(一部抜粋)
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(中略)<不足分3.8兆円の根拠は何か?>
貫徹委員会「中間とりまとめ」では、「過去分は、原賠機構法が設置されていなかったために生じたものであることから、その規模の算定にあたっては、現行の一般負担金の算定方式を前提とすることが適当と考えられる」として「過去分(3.8兆円)」の算出は、昨年度の一般負担金1600億円を全設備容量で割りKW当たりの単価を出し、累積設備容量(経年)を掛けたもの」となっています。
この支援機構の一般負担金は、毎年度の運営委員会で決められます。1600億円/年というのは、2012年11月07日の東電「再生への経営方針」で、当時の東電への「交付金5兆円」の「返済期間23年」を前提とした「特別負担金」500億円/年、「一般負担金」1600億円/年の額です。これは5兆円の返済金額の試算です。保険料の試算ではありません。
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(「「交付金5兆円」の「返済期間23年」を前提」が既に吹き飛んでいるではないか。要するに、テキトーな理屈をつけて「取れるところからできるだけ取ってしまえ」「個々人の負担の金額を小さくして、広く薄く取れば、そうたいした抵抗は出ないだろう」、くらいのセンチメントである。これもまた、ふざけるな、バカ野郎、ではないか。:田中一郎)
(4)一般原発の「廃炉」前倒し費用
既に報道されている通りであるが、東京電力・福島第1原発の「廃炉」にとどまらず、その他の一般電力会社の原発にかかる「廃炉」についても、予定されている原発の使用期間40年よりも前倒しで「廃炉」にする場合には、再生可能エネルギー由来の電力のみを扱う電力事業者を含むすべての電力事業者に、託送料金上乗せの形で、その費用の一部を負担してもらうことにした、という。ここでも送配電網(会社)と託送料金が使われている。送配電網(会社)の権限濫用であり、電力自由化をゆがめるものでしかない。「廃炉」前倒しをする場合の費用負担については、その原発電力を使っていた電力消費者から取るか、当該原発電力会社が自己負担するしかない、というのが世の中の常識である。
また、一般の原発電力会社の「廃炉」にかかる費用については、従来の「一括償却」(損金処理)経理ではなく、減価償却不足分を含めて(繰延)資産として計上した上で数年間にわたり少しずつ償却(損金処理)していくという経理を認め、電力会社の毎年の収支負担を軽くするという「粉飾経理」を国・経済産業省が認めてしまっている(少し前に経理基準を改悪)。嘘八百と出鱈目は、ついに原発の経理にまで及んでしまった。
(5)東京電力の廃炉費用は子会社である送配電会社の利益から吸い上げるという「どんぶり勘定」
上記でも申し上げたが、送配電網(会社)はすべての電気事業者が利用する「共同施設」である。それ故、その会社が挙げた利益は、その会社の施設の拡充のための投資その他か、そうでなければユーザー電力会社を通じて電力消費者に還元されるべきものである。それを何ゆえに、東京電力という特定の会社の、しかも福島第1原発という特定の電源に対して(その「廃炉」費用の原資として)使うというのか。これも看過できない重大な権利の濫用である。これではまるで「廃炉」を口実にした原子力ムラの「廃炉ビジネス」のために、一般の電力消費者が託送料金の形で負担させられることと何ら変わりがないことになる。国の説明も、マスコミ報道なども、福島第1原発の「廃炉」費用は東京電力が自己努力で負担することにいたしました、などと説明するが、とんでもない嘘八百である。
送配電網(会社)とその託送料金を使って、原発電源や事故原発へのテコ入れ・費用注入をやめよ。福島第1原発事故への対応・対策費用が東京電力だけでは負担しきれないのなら、責任追及も含めて国会による精緻な審議・検討ののち、しかるべき負担のあり方と事故対処の体制や方法を決めていくべきである。今回の「東京電力改革・1F問題委員会」や「電力システム改革貫徹のための政策小委員会」の提言、ならびにアベ内閣の閣議決定は、我が国の電力自由化と電力市場を原発・原子力に大きく肩入れする形で歪めるものであり、看過するわけにはいかない。強行するのなら、政権交代を実現させ、直ちにこの制度・仕組みをスクラップするまでである。また、送配電網(会社)の分離は、2020年を待つまでミオなく早期の段階で、「法的分離」ではなく「所有分離」の形で実現させ、その運営の「公正」が図られる仕組みを構築すべきである。
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