資本主義の未来(1)(2)(3)(NHKスペシャルより)、そして「BEPSプロジェクト」(租税回避行為への国際協調対応)の展開について
前略,田中一郎です。
(別添PDFファイルは添付できませんでした)
(最初にイベント情報その他です)
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1.TPP協定批准をめぐる動き
どうも野党の側の動きが一貫しません。そもそもTPP協定のすさまじいまでの「日本国破壊」の内容をどこまで追及しているのか、どれだけ有権者・国民にPRしたのか、極めて疑問です。先般の衆議院補選・東京10区の池袋駅前立会演説会でも、そろい踏みをした野党各党の幹部の方々のTPP協定への言及は貧弱なものでした。唯一人・山本太郎議員のインパクトのある話だけが印象に残った程度です。史上最悪の国際協定であるTPPを廃棄するため、地方の保守層のTPP反対とも連携して、徹底してアベ自民党政権と闘うという姿勢は、この与野党のボス交のようなやり取りからは全く感じられません。究極の国際市場原理主義の権化ともいうべきTPP協定が、今後どれだけ国民生活を破壊し多くの人々を不幸に陥れていくか、そもそも反対をしている野党各党がしっかり理解できていないのではないかと感じさせるに十分です。これでは政権交代後にこの協定を破棄することなど、夢のまた夢になってしまうでしょう。役に立たない野党なら、消えてもらってもいいではないですか。
(1)<TPP採決>与野党合意 衆院4日、参院審議入り7日
(毎日新聞) - Yahoo!ニュース
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20161101-00000042-mai-pol
(2)TPP委員会採決先送り、山本農水相が不用意発言(TBS系(JNN)) - Yahoo!ニュース
http://headlines.yahoo.co.jp/videonews/jnn?a=20161102-00000033-jnn-pol
(3)山本農相また失言…野党激怒で衆院TPP特別委の採決先送り 日刊ゲンダイDIGITAL
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/193096
(関連)【特集】IWJが追ったTPP問題 IWJ Independent Web Journal
(参考)(別添PDFファイル)TTIP
EU内に反発(朝日 2016.11.2)
http://www.asahi.com/articles/DA3S12637897.html
http://digital.asahi.com/articles/DA3S12637897.html?_requesturl=articles%2FDA3S12637897.html&rm=150
(市場原理主義に頭がイカれて未だに治らない日本と、国際取引自由協定が巨大資本など一部の人間や組織・企業の「商売の自由・利益独占の自由」であることを見抜く市民が多いEUとの違いを比べてみてください。タイムリーな記事です:田中一郎)
2.落合栄一郎先生の講演会を開催(#脱被ばく実現ネット(旧ふくしま集団疎開裁判の会))
http://fukusima-sokai.blogspot.jp/2016/10/blog-post_31.html
3.違法伐採問題に関する認識度アンケート調査 ご協力のお願い - FAIRWOOD PARTNERS 木の流れから、未来をつくる。フェアウッド・パートナーズ
https://www.fairwood.jp/news/pr_ev/2016/161026_pr_questionnaire.html
4.避難計画の問題点をわかりやすく書いたパンフレットを発行! 泊原発の廃炉をめざす会
http://tomari816.com/blog/?p=2017
5.【転載歓迎】 高木基金 助成応募受付開始のお知らせ
・受付期間:11月1日~12月10日
・助成総額:900万円
・募集要項ウェブサイト:http://www.takagifund.org/apply/
・募集要項PDFダウンロード:
http://www.takagifund.org/apply/data/yoko_2017.pdf
6.レポート「緊急!希望政策フォーラム『築地から東京が変わる』」 希望のまち東京をつくる会 宇都宮けんじ公式サイト
http://utsunomiyakenji.com/1450
7.(毎日新聞)リニア最難関トンネル着工 23年春貫通
2027年のリニア中央新幹線開業を目指し、JR東海は1日、南アルプストンネル(約25キロ)の長野県側工区(8.4キロ)で工事を始め、起工式を同県大鹿村で開いた。同トンネル工事は昨年12月の山梨県側工区(7.7キロ)で着工済みで、23年春ごろの貫通を予定している。リニア工事の本格着工は、今年1月の東京・品川駅に続いて3件目。
▽リニア:最難関着工 南アルプストンネル長野側工区
(どうしてこうも、次から次へと、アホ丸出しの巨大巨額事業をやりはじめるのでしょう。しかも、関係当事者からは、そんなものはやめとけ、という者も出てこない。この国はすっかりおかしくなっている。当のJR東海だって、正直言って黒字の見込みのないこんな事業はやりたくないはずなのに、トップにいる葛西敬之の顔色うかがいしかできぬ腰抜け・ヒラメばかりの組織になっているから止まらない。リニアなんぞ、いらんのだよ。南アルプスを壊すな・汚すな:田中一郎)
8.福島原発告訴団からお知らせ
◆第5回 告訴団総会◆
例年より遅くなってしまいましたが、第5回の総会を、福島県いわき市の労働福祉会館にて行います。また、総会の後には同会場で、支援団主催の被害者集会も開催いたします。皆様のご参加をお待ちしております。
日 時 11月27日(日)10:30~
場 所 いわき市労働福祉会館 3階大会議室1
以下のアドレスより入場券を印刷し、記入してお持ちいただけると助かります。
https://goo.gl/wXAzzD (googleドライブへのリンク)
*印刷ができない場合、当日受付でお名前・ご住所の記入をお願いします。
*告訴団会員以外の方の傍聴も可能です。(議決権はありません)
◆一日も早く裁判を! 支援団被害者集会◆
今年2月に強制起訴となった福島原発刑事事件は、来年の年明けにも初公判が開かれるのでは、という報道もありました。原発事故の被害者の苦しみは、今もなお続いています。一日も早く裁判が開かれることを求め、また、被害の実態を確認するための集会を開催いたします。多くの方のご参加をお待ちしております。
日 時 11月27日(日)13:30~16:00
場 所 いわき市労働福祉会館 3階大会議室1(告訴団総会と同じ会場)
内 容 団長あいさつ・被害者の証言・弁護士の話・フルート演奏
参加費 無料
主催・お問合せ・・・福島原発刑事訴訟支援団
info@shien-dan.org 080-5739-7279 https://shien-dan.org/
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先月10月にNHKは3回にわたり「資本主義の未来」という「NHKスペシャル」番組を放送しました。爆笑問題の太田と田中の両氏がおもしろおかしく司会をつとめ、多くの具体的な事例を世界各国から集めて視聴者に「資本主義の現状とこれからのこと」を考えさせてくれる、比較的クォリティの高い番組だったように思います。下記にVTRのURLとともに、簡単にこの番組についてのコメントをさせていただきたいと思います。
世界に市場原理主義がはびこり始めたのは、ご承知の通り、英:サッチャー保守党政権と、米:レーガン共和党政権以降のことです。戦後経済成長を続けてきた世界資本主義は、1970年代に入り、アメリカの経済力や競争力の相対的な低下やオイルショックなど、さまざまな要因からくる停滞状況に陥っていましたが、この英米の保守政権によるドラスティックな市場原理主義的政策は、勤労者・国民がこれまで獲得してきた「成長の果実・成果」をつぶし、一握りの巨大資本や富裕層・資産家に「容易に金がもうかる」環境を再び創り出すことで資本主義の復権を目指したものでした。ここでは詳細には論じませんが、その結果は惨憺たるもので、格差の拡大や貧困の蔓延はもちろんのこと、人間社会や自然環境を支えてきた様々な社会制度や法規制、あるいは公共施設などが併せて破壊され、今日の「資本主義の危機」に至っているのです。
翻って日本でも、遅ればせながら1980年代の終わりごろ=バブル経済に悪乗りしつつ市場原理主義がはびこり始め、その後のバブル崩壊とその回復へ向けた試行錯誤の中で、市場原理主義はまるで経済や社会の「救世主」であるかのごとき扱いを受け、私がよく申し上げるところの「市場原理主義アホダラ教」信者があふれかえる事態に陥っていきました。今日でも、この「市場原理主義アホダラ教」という「邪教」は衰えを見せず、物事をきちんと考えずに「頂点盲従」と「同調圧力」と「総無責任」を繰り返す日本社会の中で、市場原理主義政策による失敗と不幸の拡大再生産が繰り返されているのです。規制緩和や民活・民営化、法人税減税と消費税増税の税制MIXに加えての不公正・不公平税制、そしてタックスヘイブン,更には国際貿易の自由化から資本自由化、更には国際金融の自由化とカジノ資本主義の跋扈、バブル形成とその崩壊など、役に立たないどころか、大多数の99%を痛めつけながら特権的な1%だけを富ませ栄えさせる市場原理主義という支配権力迎合のご都合主義の政策が、今でも大手を振ってまかり通っているのです。上記で少しふれたTPP協定などは、その究極の姿と言ってもいいでしょう。
(この協定がスタートすれば、有権者・国民は時間をかけて「ゆでガエル」にされつつ、日本の経済・社会は主として米系の多国籍企業群に支配されていくことになります。近未来の日本の国民は米系多国籍企業のための「働きバチ」「使い捨てのゾウキン」「踏みつけ台」とされていくでしょう。しかし、こんなものに賛成したり、あるいは反対をしない「愚か者」が日本には山のようにいるのです)
(下記は昨今放送されたTBS「報道特集」の番組ですが、その内容はひどいものでした。日本の農業をこれまで支えてきてくれた生産者・農家を、おそらくはバカにしているのでしょう。しかし、現在の日本農業衰退の主たる原因は日本農業内部にあるのではなく、私が常々申し上げてきた「4つの優先農業政策」(①アメリカ優先,②WTO・FTA・EPA優先,③財政再建優先(安上り農政),④政治家・官僚・食品関連産業の利権優先)のロクでもない政治にあったのであって、まさに「人災」そのものです。それを厳しく批判しないでいて、崩壊寸前にまで追いやられている日本農業や生産者・農家を叩く形で、TPP協定を「日本農業再起」の契機にしろといった調子の、この「他人事・お気楽無責任番組」には腹立たしさを感じました。しかし他のマスコミの報道も似たようなモノです。要するに報道する側が、TPP協定こそ、これまで30年近くにわたり、日本をボロボロにしてきた市場原理主義の最たるものであることを全く理解していないということなのです)
(関連)報道特集 TPPと日本農業の未来 - Dailymotion動画
こうした経済・社会情勢の下で、行き詰まりを見せる今日の日本や世界のこれから=「資本主義の未来」を考えるには、今回のNHKスペシャル3回はちょうどいい番組のような気もします。たとえば、3回のそれぞれ各回について、下記のような注目点が列挙できます。
(1)では資本主義とフロンティア開拓(技術革新等)の問題
(2)では「ISDS条項」や「経済特区」(国家戦略特区など)の問題
(3)ではパナマ文書に代表される国際租税回避行為の問題
また、たとえば(2)の後半に出てくる「競争を一部制限した」スペインのマリナレダ村とその村長さんの「福祉思想」などは、市場原理主義に対峙する小さな試みとして注目に値するように思われます。
ただ私は、下記の「他のMLに発信した私の感想文です」でも書いているように、この番組についてはいささか物足りなさを感じています。簡単に言えば、資本主義を巡って議論されてきた過去のやり取りや考え方が、ほとんどレビューされないままに、再び同じような内容で議論が繰り返されている部分が多いからです。私は資本主義を語るのなら、20世紀の世界を大きく揺り動かした巨大思想と社会実験であったマルクス主義や社会主義・共産主義をきちんと取り上げて批判的にレビューすべきだったでしょうし、また、資本主義の側からも、たとえばケインズ主義・修正資本主義・混合経済体制など、今や見向きもされなくなった「ひと昔前」の経済思想や考え方についても、きちんと整理しておくべきだったでしょう。
(参考)混合経済 - Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B7%B7%E5%90%88%E7%B5%8C%E6%B8%88
(参考)修正資本主義 - Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BF%AE%E6%AD%A3%E8%B3%87%E6%9C%AC%E4%B8%BB%E7%BE%A9
(関連)(別添PDFファイル)AT&T買収がむしばむ経済の活力(日経 2016.11.1)
http://www.nikkei.com/article/DGXMZO08994630R31C16A0FFB000/
(英『エコノミスト』誌の和訳記事ですが、ここではアメリカ経済を蝕む「寡占化」と、放任される巨大M&Aの問題が論じられています。私が若いころは、この寡占・独占がもたらす政治・経済・社会上の弊害の問題は経済学を志す者が避けては通れない大問題でした。しかし、その後の日本の経済学の堕落と迷走に伴い、こうした議論は日本では皆無となってしまっています。独禁法の問題も公正取引委員会のありようも、全く問題にされないまま、今日に至っているのです。その公正取引委員会ですが、肝心の独占・寡占や巨大資本の優越的地位の乱用には口出し一つしない「鳴かず飛ばず」の委員会のくせに、たとえば下記のように、時の支配権力に尻尾を振るかの如く、重箱の隅を突っつく「弱者いじめ」の「介入」には積極的な様子です。日本の公正取引委員会から役人を追い払い、リベラルな民間人士で構成される「機能する公正取引委員会」を創っていかねばなりません)
(関連)農協の囲い込み、監視強化 出荷強制疑い、大分のJA検査:朝日新聞デジタル
http://www.asahi.com/articles/DA3S12629859.html
そして何よりも、市場原理主義とその政策が、とりもなおさず巨大資本とその買弁政治家達による「資本主義のフロンティアの社会的開拓」であったこと=それは言い換えれば、巨大資本が政府権力を自身の支配下に置き、これまでの経済成長の下で拡大されてきた(圧倒的多数の)勤労者・労働者の権利や生存条件の剥がし落とし=賃金や雇用条件・労働条件の大幅な引き下げ、どん底への競争環境の創設などを意図したものであり、また、他方では「福祉国家」と言われた政府による公共政策の破壊と、企業減税ないしは納税回避の黙認による巨大企業や富裕層などの税負担の大幅軽減をはかるものだったことを忘れてはなりません。しかし、残念ながらわが国ではこれを見抜けずに、「自由」や「均等」や「自己責任」などのゴマカシ言葉に振り回されてきた愚かさの25年間のツケが、今日の日本を覆い尽くしていると言っていいでしょう。
こういう観点からこの番組を見ますと、やはり「物足りない」のです。資本主義停滞ないしは資本主義の矛盾の噴出に対する本当の処方箋のありかが、この番組からでは想像しにくい・たどり着きにくい・見出しにくいからです。私は、資本主義は必ずや克服されて別の経済体制に移行する=もっと多くの人々が公正で公平で豊かに平穏に持続可能に暮らせる社会がやってくるだろうと思っています。できればそうした経済や社会を一刻も早く実現したいと思いますが、私はその処方箋の根幹が、有権者・国民一人一人が自分の「大きな利害・利益」をきちんと把握することから始まるのだ、と考えています。「大きな利害・利益」とは「目先の小さな利害・利益・自己満足・独りよがりの優越感」とは違うものです。後者は人間の愚かな「性(さが)」に足をすくわれて「どん底へ向けての競争状態に陥る阿鼻叫喚の行動パターン」です。
番組の最初に出てきた英国のAスミスは「個々人が自分の利益を求めて自由競争することが(神の見えざる手に導かれて)経済や社会の発展につながる」と提唱しましたが(そして忘れてはいけないことは、彼は同時並行で、人々の「共感」を社会的調和の基礎と考えました)、それは封建時代や絶対王政の時代の不合理な社会制度のくびきから人間経済の解放を提唱する、スミスの時代にはふさわしい提言だったのです。それを21世紀の今日においても同じように提唱していたのでは話になりません。今日に見合った形で、それをもじって申し上げれば、「現代社会では、有権者・国民各人が「大きな自己利害」をしっかりと自覚し、その利害に沿った政治行動を積極的に行うことにより、政府=政治権力の行使を通じて、新しい経済や社会の制度や仕組みの実現が可能になる」ということです。つまり今度は「見えざる神の手」ではなく、みなさま一人一人の「自己利害を自覚した民主主義の「見える手」」で「資本主義の未来」が変わる・変えられるということです。
<VTR:資本主義の未来>
(1)世界の成長は続くのか(資本主義の未来①)
https://www.youtube.com/watch?v=hS93UG6oNPE
(2)国家VS超巨大企業(資本主義の未来②)
https://www.youtube.com/watch?v=GYhHkOheKgs
(3)巨大格差 その果てに(資本主義の未来③)
https://www.youtube.com/watch?v=SHMxnarAPyM
<推薦:金子勝慶應義塾大学教授の著書>
病める現代資本主義=経済体制に対する「処方箋」はどこにあるのか、本来ならば、この問題こそ経済学者たちが必死に考察して適切かつタイムリーに打ち出さなければならないはずの仕事ですが、今日の日本の経済学は既に崩壊していて、まるで「市場原理主義アホダラ教」のお経か曼荼羅のようになっております。私の若いころには現代資本主義論争も盛んで、多くの優秀な経済学者が優れた議論をしていた記憶があるのですが、今では、経済学者どもの行う議論ほど、現実の経済や社会の実態を知らぬ「専門ともいえぬほどの専門バカならぬバカ専門」に成り果てています。ですので、皆様にご推薦申し上げる経済書がきわめて貧困ですが、私が注目する唯一人と言ってもいいかもしれませんが、また、ご本人は「自分は経済学者ではない」とおっしゃっている金子勝慶應義塾大学教授の著書を3冊ばかりお勧めしたいと思います。
(1)新・反グローバリズム 金融資本主義を超えて-金子勝/著 本・コミック : オンライン書店e-hon
http://www.e-hon.ne.jp/bec/SA/Detail?refShinCode=0100000000000032365233&Action_id=121&Sza_id=C0
(2)日本病 長期衰退のダイナミクス-金子勝/著 児玉龍彦/著 本・コミック : オンライン書店e-hon
http://www.e-hon.ne.jp/bec/SA/Detail?refShinCode=0100000000000033383218&Action_id=121&Sza_id=B0
(3)資本主義の克服 「共有論」で社会を変える-金子勝/著 本・コミック : オンライン書店e-hon
http://www.e-hon.ne.jp/bec/SA/Detail?refShinCode=0100000000000033233571&Action_id=121&Sza_id=C0
(他のMLに発信した私の感想文です)
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さきほど私も録画をしておいた第3回目のマネー・ワールド・資本主義を見てみました。いろいろ考えさせられましたが(その意味で比較的いい番組でしたが)、私には、たとえば下記の3点において、少しもの足りなさを感じさせるものでもありました。
1.資本主義の経済発展、あるいは展開が、あたかも避けられない自然現象であるかのように描かれていること
しかし、そんなことはないのであって、資本主義という経済制度を選ぶか選ばないかは、基本的には主権者の総意で決められるということです。また、少し前には、修正資本主義だとか混合経済だとかいう言葉が一般的になっていましたが、それがいつの間にか消えてしまい、資本主義一本槍になっていることにも違和感があります。資本主義とは、まさに資本の多寡が投資活動の決定権を持つという=「資本」を「主」とする制度ですが、それは必然でも何でもないのです。広い意味での人間・人類の(投資という)意思決定が、所有するカネの多寡で決められていいはずはないでしょう。たとえば福島第1原発事故後の東京電力の株主総会を思い出していただければと思います。あるいは強度組合という組織形態もあります。
2.議論の内容が古い(19世紀~20世紀前半くらいの議論)
経済成長がトリクルダウンを生むから貧困層にもプラスだとか、貧困者は努力が足りないとかチャンス(機会)を与えればいいとか、資本主義は豊かさをもたらしてきたとか、どうも議論の内容が古く、かつ「資本主義防衛型」であるような印象を強く受けました。こんなに古い議論を持ち出すのなら、そういうのはインチキだと告発してきた資本主義批判の古い議論もきちんと紹介すべきでしょう。私は、この番組が、何故、格差を生み出すのか、その格差は一時的なのか相続されて永続しているのか(永続しているのなら階級社会が生まれているということです)、格差は特に所得獲得の面でどのような形で現れているのか、それは昔とどう違うのか、それとも同じであって先祖返りしているだけなのか、などなど、最も肝心の部分をえぐっていないことによるのではないかと思います。
3.資本主義生産の社会的性格と資本所有の私的排他的独占との間の矛盾という資本主義の根本問題が提起されていない
加えて、その資本所有が巨大化し寡占・独占化するとともに、企業活動もまた巨大で、その人類に及ぼす影響は過去とは比較できないまでに至っているにもかかわらず、それが野放図に、無政府的に放置されていること、そこに現代経済や社会の根本的な問題があるということを指摘すべきです。
明日以降、1回目と2回目も、遡ってみてみます。私は資本主義をTVでやるのなら、マルクス特集でも組んで、しっかりやってみたらどうかと思いますね。(NHKでは無理かもしれませんが)
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(市民が集まって「資本主義研究会」ないしは「資本論から資本主義を考え直す」のような連続勉強会を開催してもいいように思います。その気のある方は、ぜひ、お声をかけてください。10人くらい集まればできるでしょう:田中一郎)
<追>
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● 税逃れ防ぐ国際ルール始動、日本企業
対応大詰め(日経 2016.10.31)
http://www.nikkei.com/article/DGXLZO08902960Y6A021C1TCJ000/
巨大企業や富裕層・資産家による国際的な税逃れに対する対策については、だいぶ前からOECDなどを中心に、関係各国の協調体制の構築が模索されてきましたが、先般発覚した「パナマ文書」により、この対策の必要性が世界各国の有権者・国民に決定的に痛感され、いよいよ制度が実施される段階になってきました。その新制度の総体は「BEPS」(Base Erosion and Profit Shifting:税源浸食と利益移転)と呼ばれています。
(関連)パナマ文書とオフショア・タックスヘイブン 改革は可能か-合田寛/著
http://www.e-hon.ne.jp/bec/SA/Detail?refShinCode=0100000000000033486423&Action_id=121&Sza_id=C0
(関連)新たな国際課税ルールを策定「BEPSプロジェクト」の取組と概要(風間立信(株式会社表参道総合研究所))
https://www.mof.go.jp/public_relations/finance/201511b.pdf#search='BEPS'
(関連)BEPSって何!? BEPS対策による国際課税への影響 会社設立FirstStepのスタッフブログ
https://www.firstep.jp/blog/archives/7958/beps%E5%AF%BE%E7%AD%96
今回ご紹介するこの日本経済新聞記事は、そのBEPSがいよいよ実施段階に入り、日本の大企業などが各国の税制やBEPSルールの導入状況への関心を高めつつ、自社から日本を含む各国税務当局へ提出する資料類の準備を始めているという内容の記事です。加えて「BEPSプロジェクト」のこれまでの動きの簡単な整理や、BEPS対応の「先進地」であるEUの動き、更には、国際税務問題では核心部分ともいうべき「移転価格」問題や「タックスヘイブン税制」の問題について、ごく簡単に報道されています。
私は、この「BEPSプロジェクト」が、今後どこまで「国際納税回避行為」を退治できるのか、いささか疑問の目を持ちつつ事態の推移を見守っています。先般も財務省の若い官僚の書いた「BEPSプロジェクト」の論文をご紹介しながら、よくできた整然とした官僚の文章でまとめられたプロジェクトは、たいていの場合、見かけ倒し・期待外れ・その通りに行ったためしがない、という経験から、今後の推移を厳しい批判の目で追いかけましょうと申し上げています。
たとえば、移転価格やタックスヘイブンの問題にしても、記事にあるような「詳細な資料」(作業負担が大きいということで企業から不満が出ている)を収集しても、肝心の税務当局がその内容をしっかりと見定め、税逃れをやめさせられるようしっかり監視し、見つけたら告発・追徴課税し、かつ、再発防止のために「痛い目にあっていただく」(遅延金や重加算税他)などの「厳しい措置対応」をとらないと、有効に機能しないでしょう。しかし、貧弱な日本の税務当局の人員体制で、巨大な企業から出てくる膨大な資料を読み込んで、どこまで租税回避行為を捕まえ、適正化させていけるでしょうか。私は下手をすると、「やってまっせ」の恰好だけのセレモニーになりかねないと見ています。まして、権力者周辺の不正には官僚は近づこうとはしませんから、支配権力と結びついた国際租税回避行為は依然として生き延びていくような気がしています。
また、移転価格税制にしても、タックスヘイブン税制にしても、グループ内取引の詳細を捕まえずとも、いわゆる「連結課税制度」を拡充してやれば、グループトータルで利益を捕まえ、グループトータルから納税をさせることができるようにも思うのですが、それについては言及がありません。「みなし連結」課税制度でも創設しておいて、グループ間取引を使った納税回避があったと判断したら、それを使って「グループ全体」を1つとみなして課税してしまえばいいようにも思うのですが、いかがでしょうか?
いずれにせよ、BEPSプロジェクトについては、まだまだその実態的なところがよくわからないことが多く、従ってまた、納税回避の中でも「巨悪」の部分は未だ手つかずで野放しになっているように感じますので、これからも徹底して調査し、追求し、解明していきたいと思っています。
早々
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アメリカの本質をえぐる素晴らしい記事を有難うございます。私も、アメリカの格差は人為的に政策によって作られたと確信しています。
貴方様の記事が全日本国民に読まれることを希望します。
投稿: アメリカ在住者 | 2016年11月 3日 (木) 13時16分