ルポ・原発事故汚染土:リサイクル事業進める規制官庁、環境省の危ない役回り(杉本裕明『世界 2016.10』より)
前略,田中一郎です。
(別添PDFファイルは一部添付できませんでした)
(最初にイベント情報他です)
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●APAST主催の講演会です
一昨日(9/24)お伝えしたイベント情報の「チラシ」です。
(1)(別添PDFファイル)(10.10)原発は危うい積み木細工:なぜ原発が安全と言えないのか?
「tirasi_10.10.pdf」をダウンロード
2016年10月10日(月・祝日) 18:00~21:00
浦和コミュニティセンター(浦和パルコ10F) 参加費(一般1000円,APAST会員500円)
(2)(別添PDFファイル)(11.6)原発事故は爆発だ:水蒸気爆発と水素爆発を考える
「tirasi_11.06.pdf」をダウンロード
2016年11月6日(日) 12:30開場、13:00~17:00
加瀬の貸し会議室 入谷ホール 参加費(一般1000円,APAST会員500円)
●キャンペーンについてのお知らせ
· 【ご報告】「許さない!イスラエルとの軍用無人機共同研究」集会(9月17日)
· Change.org
●英ヒンクリーポイント原発計画、予測調査により原発よりも風力発電の方が安上がりなことが判明 - BusinessNewsline
http://business.newsln.jp/news/201608150209280000.html
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今月号の岩波月刊誌『世界』(2016年10月号)に、ジャーナリストの杉本裕明氏執筆の「ルポ・原発事故汚染土:リサイクル事業進める規制官庁、環境省の危ない役回り」というレポートが掲載されています。文章中には、ところどころ放射能汚染や被ばくに関して「甘い見方」を感じさせる記述があっていただけないのですが、しかし、全体的には、この放射能汚染土の公共事業におけるリサイクル利用という狂気のご都合主義事業について、関連事項も含めてよく調べられ、よく書けていると思われます。みなさまも、是非ご一読くださればと存じます(この機会に岩波月刊誌『世界』の定期購読も併せてお願い申し上げます=ちなみに私は岩波書店とは何の関係もございません、単なる岩波月刊誌『世界』の愛読者にすぎません)。
地域住民や有権者・国民・市民に説明も承諾も得ることなく、いつのまにやら放射能で汚染した災害廃棄物を堤防などの盛土材に使い、その場合には3000ベクレル/kgが限度、放射能汚染の田畑で農業を続ける場合には、田んぼの場合のみ5000ベクレル/kgが限度(下記注)、畑は制限なし、民間の事業者団体は3000ベクレル/kgがメドだと言い、福島県庁は放射能汚染物の利用は450ベクレル/kgまでだとし、南相馬の櫻井市長は3000ベクレル/kg以下で災害廃棄物を使わせてほしいなどと環境省など政府に陳情までしている。そして今回、環境省の「放射線影響安全性評価検討WG」とその親審議会である「中間貯蔵除去土壌等の減容・再生利用技術開発戦略検討会」が打ち出したのは8000ベクレル/kgだ。
まるでバナナのたたき売りか骨董品の入札値段のごとく、○○ベクレル/kgの数字が都度都度のご都合主義に担がれて飛び交っている。しかし、たとえば8000ベクレル/kgというのは面積基準に引き直せば×60で480,000ベクレル/m2、田んぼの5000ベクレル/kgでも300,000ベクレル/m2、3000ベクレル/kgなら180,000ベクレル/m2、福島県庁の450ベクレル/kgでさえ27000ベクレル/m2だ。こんな数字で、どこが安全か、どこが微量の放射線被曝なので安心か。一回でも地震や地滑り・がけ崩れ・洪水などがあれば、汚染した土は地表に遠慮なく現れる。土をかぶせて終わりの「安全対策」が、この日本で通用するはずもないのは小中学生でもわかる話ではないか。
(福島第1原発事故前は、いわゆる「クリアランス・レベル(足切レベル)」は100ベクレル/kgであり、それを超えれば「危険な放射能汚染物であることが一目瞭然であるような目印をつけ、ドラム缶に入れて厳重保管だった。それでも「足切り・一般廃棄処分」では危険だということで多方面から批判があり、100ベクレル/kg未満であってもリサイクルされる汚染物はほとんどない状態だった。そもそも膨大な量の放射能汚染ゴミやガレキは汚染濃度にムラがあり、わずかばかりのサンプリング調査では、その汚染実態は把握しきれない。ゴミやガレキの山には必ずと言っていいほど汚染のホット・スポットが存在している。つまり濃度管理は不可能だということである)
しかも、上記の環境省の「放射線影響安全性評価検討WG」は最初は秘密会議(後におしどりマコさんらの情報公開請求を受けて議事録を公開=その公開の仕方も大問題(おしどりマコさんのレポート参照))、更には、この8000ベクレル/kgまでの放射能汚染土壌をどこでどのように使ったかさえ公開しないつもりでいる。何かと言えば「風評被害防止」とでも言っておけばいいと安易に考えているようでもある。その汚染限度とされた8000ベクレル/kgでさえ、他の汚染されていない土などと混ぜれば基準以下となるので、もっと気軽に使ってもいいようなこともほのめかす(しかし、放射能汚染物が対象なのかどうかはわからないが、土壌汚染法その他の法規制では「希釈しての利用」は認められていない。但し、信じがたいことに農林水産省は、自身が定めるさまざまな農林水産物や農林水産資材(肥料・飼料・栽培度・原木等)などについて、福島第1原発事故直後から自治体や民間業者に対して、希釈することで限度基準をクリアしてほしいなどと「行政指導」しているから驚きである)。
まさに日本は福島第1原発事故を契機に放射能や被ばくの危険性に対する警戒心を喪失し、福島県を始め、東日本の放射能汚染地域において、「官民一体」の「放射能汚染不感症」症候群の病状を呈している。全く節操のない無責任な政府や自治体行政に、地域住民や有権者・国民・市民が無批判に、無邪気に、盲従しているためである(もちろん、その背後にあって、御用学者や御用マスごみが、毎日のようにその愚かな行為を礼賛し合理化し推奨しているのだけれど)。こんなことでは日本はゆくゆく取り返しのつかない放射能汚染列島になってしまうに違いない。
今回、このレポートが伝えてくれた、この環境省の愚かな「放射能汚染物リサイクル」は、地域住民のみならず全国の有権者・国民・市民が力を合わせて、実施出来ない事業にしていく、みんなから嫌われる事業にしていく、やめさせていく事業にする取組を強めなくてはならないと思われます。(環境省は「汚染土壌の再生利用は世界に前例の無い一大ナショナル・プロジェクト」だなどと言うておるようです。お前ら馬鹿か!! ですよ)
(注)田んぼの5000ベクレル/kg限度(放射性セシウム)
福島第1原発事故直後に、厚生労働省により、食べものの残留放射能の暫定規制値が一般食品の場合は、放射性セシウムで500ベクレル/kgと決められました。他方、農林水産省によると、農作物の中で放射性セシウムの移行係数(土壌の放射性セシウムが作物の体内へ移行する割合)が最も高いのがコメで、その数字が「0.1」だというので=つまり土壌の汚染度が5000ベクレル/kgなら、その×0.1(10%)が作物に移行するので、MAXで500ベクレル/kgの農作物汚染が発生する可能性があるが、それが厚生労働省の定める上限規制値の500ベクレル/kgに一致する。つまり、農地の5000ベクレル/kg汚染限度は厚生労働省の食品残留規制値から逆算された数字だった。しかし、その1年後、厚生労働省は一般食品の残留規制値を100ベクレル/kgと、1/5の数字にまで厳しくしたが、農林水産省は農地の汚染限度の5000ベクレル/kgを変えることはなかった。全くおかしな話で、まさにご都合主義そのものである。また、この農地の汚染限度は、その農地で農作業をする生産者や、その手伝いをする子どもたちの農作業放射線被曝については全く考慮されていない。
<別添PDFファイル>
(1)ルポ・原発事故汚染土:リサイクル事業進める規制官庁、環境省の危ない役回り(杉本裕明『世界 2016.10』)
「osendo_risaikuru.pdf」をダウンロード
https://www.iwanami.co.jp/sekai/2016/10/186.html
(2)「知る権利」で得た汚染土壌「新基準」のカラクリ(イントロ部分)(おしどりマコ
・ケン『DAYS JAPAN 2016.10』)
https://www.daysjapan.net/about/index2.html
(3)8000 Bq/kg以下の除染土壌を再生利用すべきではない(片岡遼平『原子力資料情報室通信 NO.505 2016年7月号』原本
(4)除染・帰還政策にお墨付きを与える「環境放射能除染学会」(まさのあつこ『週刊金曜日 2016.8.26』)
http://img.fujisan.co.jp/images/products/backnumbers/1413997_l.jpg
(5)国の責任による福島原発事故被害住民と被ばく労働者の健康・生活保障と原発再稼働中止を求める要請書」に係る質問書(2016.8.23)
「YOUSEISYO.pdf」をダウンロード
http://www.cnic.jp/7120
(6)クローズアップ2016:集中除染 線引き課題。帰還困難区域に「復興拠点」(毎日 2016.8.29)
http://mainichi.jp/auth/guide.php?url=%2Farticles%2F20160829%2Fddm%2F003%2F040%2F073000c
<関連サイト>
(1)原発汚染土、「8000ベクレル以下」なら再利用を決定
http://mainichi.jp/articles/20160701/k00/00m/040/063000c
(2)汚染土壌の再生利用は世界に前例の無い一大ナショナル・プロジェクト 最新記事 OSHIDORI Mako&Ken Portal - おしどりポータルサイト
http://oshidori-makoken.com/?p=2059
(3)【声明】環境省:除去土壌の再生利用
二重基準隠しに抗議 原子力資料情報室(CNIC)
<参 考:ドイツ・アッセ=放射性廃棄物・放射能汚染物をいい加減に扱った結果はこうなるの典型事例>
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●ドイツ : アッセ放射性廃棄物貯蔵所に浸水
: 二進も三進もいかない核のゴミ : 埋めるも地獄、掘り出し返すも地獄 妹之山商店街
http://www.asyura2.com/12/genpatu21/msg/824.html
●ドイツ-古きアッセ核廃棄物貯蔵施設の悩み ちきゅう座
http://chikyuza.net/archives/26762
●ドイツ:アッセ核廃棄物貯蔵所に浸水:二進も三進もいかない核のゴミ - YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=-3Ur6FxmVKo
●かつて最終処分場があった
私設原子力情報室
http://nucleus.asablo.jp/blog/2014/02/16/7224473
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草々