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2016年1月11日 (月)

日本漁業を衰退させるもの=昨今のマスコミ報道から垣間見る日本漁業の実態、そこには「事なかれ政策」と流通を寡占化した企業・資本に苦しめられる日本漁業の姿があった(その1)

前略,田中一郎です。

(別添PDFファイルは添付できませんでした)

 

 別添PDFファイルは、昨今の日本漁業・水産業に関係するマスコミ報道です。世界3大漁場の1つを抱え、世界に冠たる「漁業大国」の日本ですが、その基幹産業の一つである漁業・水産業が衰退の道を歩んでいます。そのもっとも典型的な表れが「後継者難」=つまり親の仕事である漁師の家業を継いでくれる若者がほとんどいないという悲しい現実です。その理由は簡単で、漁業では食べていけない、将来の見通しも暗い、収入が少なく割に合わない、ということが目に見えるからです。今や日本漁業・水産業の荒廃・衰退は深刻で、「食べていけない仕事」「板子1枚・命を懸ける危険な仕事」「きつくてつらい大変な仕事」とされたまま、改善の様子は見られず、年々事態はひどくなっているように見受けられます。その危機的な状況は農業の比ではありません。今回から何回かに分けて、その日本漁業・水産業の実態を、若干の直近マスコミ情報から垣間見ることにします。

 

 漁業・水産業は申し上げるまでもなく、地域の基幹産業の一つで、その業態によって、沿岸漁業(漁船漁獲、養殖、採貝採藻)、沖合漁業、遠洋漁業、の3つに分けることができます。水産業では、これに水産加工や水産流通も加わります。漁業は農業とともに、日本人が日本列島に住みついて以降、営々と続けられてきた伝統産業でもあります。また、原発などの立地の際には、沿岸漁業の「漁業権」の去就が大問題となることで、私たちも少しは関心がある産業ではないかと思います。しかし、食卓を見れば、家畜肉や穀物・野菜・果実などと並んで魚介類・水産物は、私たちの日々の食事には欠かすことができない貴重な素材であることは申し上げるまでもありません。そんな宝物と言っていいほどの日本の漁業・水産業が、どうして今日では産業として苦しめられ、後継者も確保できないほどに衰退の一途をたどっているのでしょうか。

 

●2014年度 水産白書(水産庁)概要版

 http://www.jfa.maff.go.jp/e/annual_report/2014/pdf/26suisan-gaiyou.pdf

(さしあたり、最初の部分の目次と、P15くらいから数ページをご覧になってみて下さい。概要が分かります)

 

 結論から端的に申し上げます。実は、日本の漁業・水産業は、事なかれ主義の悪政=市場原理主義や流通を寡占化する大資本優先の政策、あるいは工業優先の政策に苦しめられ、衰退の一途をたどっているのです。少し前に農業のお話をした際に、日本農業の衰退の原因は、農業それ自体や生産者・農家にあるのではなく、ひとえに「4つの優先政策」= ①アメリカ優先,②WTO・FTA・EPA優先,③財政再建優先,④政治家・官僚・食品関連産業の利権優先 の政策にあり、まさに「人災」であると申し上げました。日本漁業・水産業の衰退の原因も、基本的には、また、同じであり、「人災」なのです。しかし、農業とは少し違ったところがあり、私が特に感じるのは、農業は農林水産省本省が所管して大きな政治力や経済力を保持してきたのに対して、漁業・水産業の方は、政治力や経済力にも乏しく、所管する官庁も農林水産省の外局=水産庁で、その体制が漁業者の団体である漁協なども含めて脆弱である点です。(漁協系統の経済力は農協系統の経済力の1/40~1/50くらいです)

 

 水産政策を担う役人たちは、それを反映してか、伝統的に「事なかれ主義」の無責任人間たちが多く(中央も地方も)、また、水産族と言われる政治家達も水産政策については「片手間」「ついで」のような関わり方をするものが多いため、結果的に日本の漁業・水産業は、さまざまな政策的しわ寄せを農業以上に受けてきたと言えるでしょう。

 

 しかし、逆に、日本の漁業・水産業は、その経済的なスケールが小さい分だけ、あまり重大な政治問題にはならずに「ほったらかしにされた」面もあり、農業の被ってきた「人災」とはまた別の「人災」が続いていたというべきです(たとえば、農林水産省の予算の中で、最も土建色・利権色が強いのが、林業政策と並んで、この水産政策なのです。これは意外だと思われるかもしれませんが、漁港整備だとか、漁場整備だとか、護岸工事だとか、なんだかんだと理屈をつけては、特定の業者に特化した「水産関連土建」の利権グループが存在し、もちろんそういう連中が自民党の政治家や官僚達ともつながりあって、未だに水産予算に「寄生」している様子がうかがえるのが水産予算や水産政策の特徴です。

 

 かつては高度経済成長期に公害や公共土建事業の乱発によって大切な漁場や干潟環境が破壊され、海は工業廃水や産廃・生活ごみなどで汚染されました。アジア太平洋戦争直後は、日本漁業が戦後の食糧難の時代の大切な食料源でしたが、狭い漁場に大勢の漁師がひしめき合って漁業を営むことにも限界があり、やがて日本の漁業は国内の沿岸・沖合漁業から遠洋漁業へと、押し出されるように外延的な発展をしていきました。しかし、遠洋漁業もまた、国連海洋法条約=いわゆる200カイリ経済水域時代に突入して、大幅な撤退を余儀なくされています。

 

 更にその後は、市場原理主義政策による悪政により経済的に苦しめられ、激しい円高とも相まって輸入水産物や水産加工品の破格の安値での輸入や、寡占化する流通大資本による国産魚介類の買い叩きなどにより、国内の漁業経営は衰退の一途をたどっています。生鮮農産物などの場合は、最終末端価格のだいたい40~50%くらいが生産者・農家の懐に入ると言われていますが、漁業・水産業の場合には、それがわずか20~25%程度でしかなく、漁業の水揚げの大半が、流通・加工業者に持っていかれてしまうということが今でも続いているのです。養殖漁業などではもっと状況はひどく、生産者=養殖漁業者は、漁協を含むエサの供給資本(企業)にほぼ完ぺきに支配・包摂されており、まるで「賃金奴隷」のように生計を立て経営を維持するのがやっとという状態で多額の負債を抱え込んでいる場合がほとんどです。商品として販売される養殖魚はエサ業者が引き取り、その養殖魚は、もはやエサ供給資本(企業)の「担保」のようなものです。漁業の世界は、どこを見ても経済的困窮が蔓延しているように見えます。

 

 そして昨今では、市場原理主義政策の究極的な措置として、一方では、水産特区による漁業権漁業と「浜の協同」である漁協自治の破壊=漁場のプライベートビーチ化(沿岸漁業)や、ITQ(譲渡可能漁獲割当制度)による水産資源の囲い込みと大資本への事実上の「集中化」(沖合漁業)、そして輸入自由化の拡大からTPP協定へと、これまでの漁業破壊=生産者抑圧型の市場原理主義漁業政策に拍車がかかっています。農業や漁業を農業や漁業の外から資本主義的な形で再編すれば、それが農業や漁業の再生と復興につながるという、まったく過去と海外の実態を知らぬまま、バカ丸出しの市場原理主義アホダラ教の考えが、日本のすぐれた農業や漁業=つまりは伝統的な創意工夫に富む家族経営型の生産者を没落・廃業に追い込んでいるのです。アジア太平洋戦争前の、寄生地主と網本・羽織漁師が支配する、貧困と前近代的社会関係と暴力が支配していた、あの時代に先祖返りさせる政策、それが農業・漁業の市場原理主義的再編なのです。

 

 こうしたことのしわ寄せは、国内外において漁業・水産資源を乱獲する非持続型の漁業の横行や、食品としての水産物の安全性を脅かす危険な商品の氾濫などにつながり、結局は私たち消費者の食生活の貧困化や無用のリスクの意図しない取り込みに結果しているのです。そしてみなさまご承知の通り、今から5年前の3月11日には東日本大震災と福島第1原発事故が日本の漁業・水産業のメッカでもある三陸海岸地方や福島県・宮城県・茨城県・千葉県などを襲い、壊滅的な打撃を与えています。とりわけ福島第1原発事故による東日本の太平洋側の海洋の放射能汚染は今も続き、このままでは取り返しがつかない事態に追い込まれようとしています。原発推進という愚か極まる政策が日本漁業を絶滅に追いやろうとしているのです。

 

 私のこのメールが、日本の漁業や水産業へのみなさまの関心が高まるきっかけになることを期待いたしております。既に申し上げました通り、日本は世界でも有数の漁業大国であり、日本の近海は、かつては水産資源豊かな「世界3大漁場」の一つでありました。200カイリ時代に突入してからは、日本の排他的経済水域は従来の何倍もの面積で拡大し、潜在的にはより大きな水産立国となる可能性を保持しています。しかしながら、私が見るところ、本当に愚かな漁業・水産政策や食料政策、あるいは食の安全と表示、漁業・水産業を含む食料産業に対する消費者・国民の関心の低さから、せっかくのこの日本漁業・水産業が持っている「潜在的可能性」が打ち消されてしまっているのです。まことに惜しい、残念なことです。

 

 事なかれ主義の悪政=市場原理主義と流通を寡占化する大資本優先の政策、によって苦しめられ衰退する日本漁業・水産業、その追い討ちとなった福島第1原発事故による海の汚染と史上最悪の国際協定・TPPが、この日本漁業・水産業にとどめを刺そうとしています。本来ならば、産業振興の責任官庁として、こういう時こそ頑張らなくてはいけない農林水産省・水産庁などは、今日においても全く頼りにはなりませんし、もちろん自民党の政治家どもは、マイナスにこそなれ、プラスの働きなど期待することもできないありさまです。漁業・水産業よりも、原発とその利権の方が重要である、などと本音で思っている自民党政治家どもがほとんどではないかと思われます。

 

 みなさまの漁業・水産業へのまなざしの強さが、今後の漁業・水産業の復興・再生につながっていくであろうことを信じて、昨今のマスコミ報道から、いくつかの問題をピックアップして送りします。

 

 <別添PDFファイル>

(1)水産資源新時代(日経 2016.1.5.6

(2)村井宮城県知事の肝いりでスタートした水産復興特区の波紋(内原英聡『週刊金曜日 2014.3.14』)

(3)韓国ノリ 輸入枠 2倍超(日経 2015.12.10

(4)鳴門ワカメ、また産地偽装判明(水産経済 2015.12.21

 

1.水産資源新時代(日経 2016.1.5.6
 http://www.nikkei.com/article/DGKKZO95744630U6A100C1QM8000/

 http://www.nikkei.com/article/DGXNASFS0202X_S3A900C1EE8000/

 

(田中一郎コメント)

 前半がクロマグロとウナギ、後半がサバ、サンマ、タラ、そしてTAC(トータル・アロウワブル・キャッチ)と言われる魚種別の総漁獲高上限規制の話です。記事をご覧いただくのが一番早いのですが、、それぞれについて、ワンポイント・コメントをしておきます。

 

●クロマグロ 

 2000年前後から大手資本がクロマグロの「畜養」を日本列島沿岸で事業(金儲け)としてやるようになり、そのための稚魚確保でクロマグロの稚魚(ヨコワとかメジマグロとか言われている)が巻網漁船に乱獲されるようになった。水産庁は早い段階でそれを知っていて、クロマグロの稚魚の漁獲高をクロマグロ養殖業者に報告までさせていたが、長い間ずっとひた隠しに隠してきた。バレると大手資本によるクロマグロ事業ができなくなるからだ。数年前から、その乱獲状態があまりにひどくなったので、ようやく重い腰を上げて漁獲規制に入ったが、なんとその漁獲規制の具体的な数字は、どんなにたくさん取ろうとしても、既に資源が枯渇し始めているため、絶対にこんなにたくさんは獲れないぞ、という水準に決めて、その範囲内の漁獲ならOKです、などという「アリバイ規制」をやり始める始末。このままでは日本近海のクロマグロは絶滅するでしょう。

 

(もともと日本の大手資本は、漁労と言われる「魚獲り」=漁業からは撤退をしてしまった経緯がある。要するに、労と危険多くして利益少なし、ということなのだろう。なので、昔、小林多喜二が「蟹工船」という小説で描いたような漁船漁業は、少なくとも大手資本は手を出さない。もっぱら流通と加工で儲けを出すというのが大手資本のやり方だった。養殖漁業でも同じで、大手資本が自ら養殖場を経営するというのはめったになかった。しかし、クロマグロは「儲かる」というので、日本でも海外に真似て、クロマグロの養殖を今から20年くらい前から多くの大手資本が、西日本のあちこちの沿岸漁場でやりだした)

 

(ところで、その「畜養」マグロですが、その身は全身がトロ状態(脂身)という、非常にいびつで不自然な育ち方をします。そしてマグロやクジラ、サメやメカジキなどもそうですが、こういう魚類は、体内の「脂身」のところに生息環境にある油に溶けやすい毒物(たとえばダイオキシンやPCBなど)を集めやすく、一般的に「脂身」は危ないと言われています。クロマグロの「畜養」の場合には、抗生物質や、エサや糞が海底にたまっておかしな物質が出てくる、使われるということも無きにしも非ずで、私は「畜養」マグロも脂身のトロも食べないことにしています。マグロは昔は赤身しか食されなかったと言います。私もマグロは赤身しか食べません。(クジラなどもPCBや水銀などが心配です。給食などでクジラ肉は食べない方がいいでしょう)

 

●ウナギ 

 ウナギは、河川・湖沼の淡水域と海の間を行ったり来たりしている魚ですが、日本では、ウナギの生息域が環境破壊でメチャクチャにされたことと、漁師たちのウナギの親魚と稚魚=シラスウナギの乱獲で、ここ30年くらいの間に絶滅寸前にまで個体数が減少しています。日本国内のウナギ需要は旺盛であるため量が足りず、10年以上も前から、台湾や中国本土からもウナギが大量に輸入されるようになりました。台湾産は生きたウナギ、中国産は、生きたウナギよりも加工・半加工品が多いようです。その結果、台湾や中国でもウナギが乱獲され、アジア産だけでは足りなくなってヨーロッパウナギまで輸入して日本へ輸出していましたが、そのヨーロッパウナギも、ワシントン条約の絶滅危惧種となって貿易ができなくなったのです。今は、アジア産のウナギ=ジャポニカ種をワシントン条約の絶滅種にするかどうかが注目になっています(今年の夏にワシントン条約の定期総会があるそうです)。先般、日本、中国、台湾の水産政策当局があつまって、それぞれ自主的なウナギ資源管理・保護を取り決めたようですが、その実効性は極めて乏しく、これでウナギの乱獲や密猟が止まるかどうかは非常に疑わしいのです。早くワシントン条約で絶滅危惧種に指定して、厳しい罰則付きでウナギの漁獲をやめた方がいいでしょう。そうしないとニホンウナギは絶滅してしまいかねません。昨今では福島第1原発事故の影響で、関東や東北の汽水域に生息する天然ウナギから放射性セシウムが検出され、出荷停止になっています。(流通しているウナギの大半は養殖もの(国内外)ですが)

 

(参考)水産庁-ウナギに関する情報

 http://www.jfa.maff.go.jp/j/saibai/unagi.html

 

(参考)絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約 - Wikipedia(ワシントン条約)

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%B5%B6%E6%BB%85%E3%81%AE%E3%81%8A%E3%81%9D%E3%82%8C%E3%81%AE%E3%81%82%E3%82%8B%E9%87%8E%E7%94%9F%E5%8B%95%E6%A4%8D%E7%89%A9%E3%81%AE%E7%A8%AE%E3%81%AE%E5%9B%BD%E9%9A%9B%E5%8F%96%E5%BC%95%E3%81%AB%E9%96%A2%E3%81%99%E3%82%8B%E6%9D%A1%E7%B4%84

 

2.村井宮城県知事の肝いりでスタートした水産復興特区の波紋(内原英聡『週刊金曜日 2014.3.14』)
「suisantokku_syuukannkinyoubi.pdf」をダウンロード

http://www.kinyobi.co.jp/tokushu/000305.php

http://eichi.library.pref.miyagi.jp/eichi/detail.php?type=0&literatureId=1000156

 

(田中一郎コメント)

 伝統産業である日本の沿岸漁業は、長い間、いわゆる「浜の総有」に基づく「協業」として営まれてきました。明治政府の時代に「漁業近代化」と称して私的所有に基づく資本制漁業の仕組み作りが試みられましたが、漁業紛争が多発してうまくいきませんでした。他方では、戦前日本の半封建的な遅れた社会構造を反映し、漁業でも農業と似たような歪んだ漁民からの収奪構造が出来上がり、いわゆる網元や「羽織漁師」と言われる「直接漁業をしない資本家・資産家」達や流通資本による浜の実質支配も蔓延しました。それが戦後の民主化の下で改められ、曲がりなりにも対等な身分に置かれた漁業者たちの自治組織としての漁業協同組合が再構築され、漁業者の参加による民主的な運営体制がつくられ、その漁協が漁業権を手にして法的にバックアップを受け、沿岸漁業や漁場の管理と漁業紛争の自主的解決を担うことになったのです(必ずしも、このことがすべての沿岸漁業や漁協で理想的な形で実現したわけではありません)

 

 しかし、宮城県知事と市場原理主義者たちの暗躍で漁業者たちの反対を押し切って導入された水産特区と漁業権の一部漁協からのはく奪=漁業外の資本や企業(外国を含む)への漁業権の付与は、こうした日本の沿岸漁業の伝統と秩序を悪い方向で破壊するものに他なりません。一つの湾や浜の漁場に、法的に裏付けられた漁業権が2つ以上存在すれば、それは相互に排他的となり、近い将来の漁業紛争は避けられないでしょう。県庁などの役所には漁業紛争を解決する力も気力もありません。また、沿岸漁業や漁場における漁業者の「総有」が解体されて、協業としての漁業が困難となり、いわゆる「浜のプライベートビーチ化」が進んでしまうことになります。言い換えれば、漁業や漁場の大資本による囲い込みと、漁業者の賃金労働者化です。

 

 こうしたことが日本の沿岸漁業に広がれば、日本漁業の優れた点がことごとく破壊され、将来は低賃金・劣悪労働条件で雇用された外国人による漁業が、この日本の沿岸漁業で現れてくることになるでしょう(すでに遠洋漁業や沖合漁業では現れています)。その結果、儲かる漁業だけが生き残り、水産資源と海洋環境と地域社会が徹底的に破壊され、資源収奪型の漁業が展開されたのち、荒廃した漁村と漁場が残されていくことになります。それは、ちょうど、企業や資本に農地を大規模に所有させ、市場原理主義的な日本農業の再編を企てている現在の農業政策と共通する、文字通りの(伝統産業である)農林水産業破壊政策=農林水産業の大規模資本制化に他ならないのです。

 

 こうしたことは、本来、保守政党である自民党が徹底して反対をしなければいけないはずです。何故なら、伝統と文化を守ることこそが保守の真骨頂なわけですから。しかし、今日の自民党は、もはやかつての保守政党などではなく、ご都合主義的ないい加減な人間たちが多く集まり、1%のために99%を支配・収奪する政策を展開して、そのおこぼれにあずかろうとする出鱈目な政治家たちの溜まり場となっており、今日の日本にとっては一刻も早く除去すべき「害悪集団」なのです。現在の安倍晋三政権がその筆頭格であることは申し上げるまでもありません。

 

 なすべきことは、水産特区による漁協や漁業者以外への漁業権の付与なのではありません。漁協という協同組合組織が、その期待された本来の役割や使命を発揮できるよう、県や市町村などの自治体も一緒になり、漁協運営の抜本的改革と経済基盤の強化でなくてはならないのです。しかし、漁協の腐敗・堕落と特定の人間達による私物化も、少なからぬ漁協で進んでしまっています。なによりも長い間の経済的な苦境により、若くて優秀な人材が乏しくなっています。日本の沿岸漁業の苦悩は容易には解決しがたいでしょう。しかし、東日本大震災の際にも、この漁協の本来の役割と使命を厳しい状況下で担い通した立派な漁協もあります。それは重茂漁協という岩手県宮古市の漁協です。全国の漁協は、たとえば重茂漁協を手本として、その体制と体質を抜本改善していただきたいものです。原発・核燃料施設などは、地域漁業が本来の漁業の形で元気よく営まれておれば入り込む余地などはなく、事実、重茂漁協は青森県六ケ所村再処理工場の建設や稼働に強く反対をしているのです。

 

(TPP協定後は、この水産特区制度を利用して、外国資本が日本の沿岸漁業・漁場に参入しようとしてくる懸念が大きくなります。事実、大分県や宮崎県などの沿岸では、ブリやタイの養殖漁場をめぐり、オランダ・ノルウェー資本が日本の資本との合弁で参入してきた実績もありますが、その際も地元漁協ともめ事になった経緯があります。そうした動きがTPP後は活発化してくることが予想されます。その狙いが、実は養殖や漁業ではなく、原発・核施設立地に際して漁業権を高く売りつける狙いがあるようなものも、おそらくは紛れ込んでくることでしょう。史上最悪の協定=TPPとは、日本の農林水産業を含むあらゆるものを外国資本=とりわけ「日本の宗主国アメリカ様」に投げ渡す、無節操そのものの売国奴・亡国協定です。日本の沿岸漁業が狙われればひとたまりもありません。TPP協定には、外国資本を国内資本と区別させないためのISDS条項があり、日本側が外国資本の参入を拒否すれば、敗訴必至のISDS条項発動裁判となるでしょう。そして日本側の敗訴は必至です)

 

●重茂漁協 HP

 http://www.jfomoe.or.jp/outline/

 

(別添PDFファイルの『週刊金曜日』の記事は内容がピンボケです。しかし、水産特区制度でどこで何が起きているかは簡単にわかりますので、ご参考までにご覧ください:田中一郎)

 

3.韓国ノリ 輸入枠 2倍超(日経 2015.12.10

 http://mainichi.jp/articles/20151210/ddm/008/020/133000c

 

(田中一郎コメント)

 海苔産業も日本の伝統産業の一つで、世界でも海苔を養殖している国は、日本の他には韓国と中国しかありません。その中国の海苔産業は名古屋の日本のある企業が中国に進出して、外々で事業をする、つまり中国から日本以外の国々へ輸出するために起こした産業です。その韓国と中国から日本の海苔市場が狙われています。海苔はいわゆるIQ(輸入割当)を行っている数少ない貿易品目で、日本に自由に持ち込むことはできません。韓国や中国から値段の安い海苔が大量に入ってくれば、日本の海苔産業はひとたまりもないでしょう。海苔養殖もまた寒くてきつい仕事で(海苔の仕事では冬場に海の浅瀬に腰までつかりながら仕事をしなければいけません)、その割には実入りが少ない、割に合わない仕事になっていて、多くの生産者で後継者が確保できていないのです。

 

 日本の海苔産業が厳しい情勢の中にある時に、何ゆえに、かようなことをする必要があるのでしょうか。韓国産の海苔は日本産の海苔よりも品質が悪く、主に加工用やコンビニおにぎりなどに使われます。しかし、今や海苔の需要の大半は加工用ですから、それが韓国産に奪われてしまうと海苔産業は産業・家業として成り立たなくなるのです。中国産に至っては、あのヘドロの固まりの様な中国沿岸の海で養殖されていて、加工された状態で輸入されることもありますから、品質のみならず、食品としての安全性にも大きな懸念があります。

 

 日本の伝統食の海苔は、米食とぴったり合った美味で素晴らしい食材です。昔は「板海苔」が主で、海苔は焼いて食べるものでした。これを知っている人も昨今では少なくなっているでしょう。今日では、板海苔の販売はほとんどなくなり(旅館や割烹・料亭くらい)ほぼすべてが焼海苔の状態で販売されています。しかし私は、ぜひ、昔の「板海苔」が大きく復活し、それを焼きながら、日本の生産者・農家がお作りになった「宝石」にも近しい芸術品と言っていい「お米」を食べ続けたいと願っています。「食いものの恨みこそ恐ろしけれ」であって、日本の素晴らしい伝統食である海苔と米を汚すもの、破壊するものは断固として排除したい、そう思っています。

 

 市場原理主義アホダラ教に頭がイカれた自民党の政治家と霞が関の無責任官僚たちが、日本の海苔産業を破壊するのなら、その連中を政治や行政の場から除去する必要があると、私は考えております。そうすることが日本の沿岸に原発や核施設をつくらせない、最も有力な手段ともなるのです。農業や漁業が、その本来の在り方で元気に健全に創造的に営まれている地域に、原発や核施設が持ち込まれることはありません。日本の農業や漁業を断固として守ること、それが原発や核施設の根絶につながり、同時に私たち消費者・国民の利益や安全につながっていくのです。

 

4.鳴門ワカメ、また産地偽装判明(水産経済 2015.12.21

 http://www.topics.or.jp/editorial/news/2009/07/news_124839617476.html

 

(田中一郎コメント)

 これで鳴門ワカメの産地偽装は私が知る限りで3度目です。もう絶対に許しません。鳴門産のワカメは絶対買わない、を徹底します。みなさまも、当分間、そうして下さればと思います。偽装されていた中国産のワカメは、おそらく理研資本が大連・遼東半島で養殖を始めたワカメだろうと想像します。品質は国産に比べてかなり落ちます。そんなものを鳴門産だ、国産だと偽って、顧客を騙して売るなど許し難しです。今回は警察・検察が入って刑事告発するだろうということになっているようですが、偽装した悪質業者を執行猶予の懲役刑にしてみてもほとんど無意味です。こういうモラルハザードの金儲けだけが目当ての悪質商売に対しては、みなし利益の没収と巨額罰金を支払わせるのが最もいい「再発抑止力」になります。

 

 かようなことは、正直に商売をしている他の鳴門のワカメ産業の同業者にとっても迷惑至極でしょう(しかし、業界ぐるみでやっている場合もあります)。いわゆる内部告発の仕組みをしっかりつくり、告発した人をきちんと保護する仕組みをもつくって、信賞必罰の厳しい体制を敷いておけば、根絶は出来なくても、こうした食品の偽装表示は相当数減少すると思われます。しかし、現在のことなかれ主義の無責任官庁である消費者庁、農林水産省・水産庁、厚生労働省などは、そもそもきちんとした食品表示を実現させていこうという気力も責任感もありません。ですので、私たち消費者が、「おかしな表示のものは買わない」を徹底することで偽装表示などのインチキ行為を撲滅していきましょう。ゆくゆくは、こうしたロクでもない霞が関の役人どもも、大掃除をしなければいけませんね。

 

 ワカメについては、海苔や昆布とは違い(いずれもIQ品目)、ずいぶん前に輸入自由化をされてしまいました。おかげで日本産ワカメの最大の産地である三陸海岸地方(岩手県、宮城県)が大打撃を受けました。おまけにそのあとを韓国産ワカメが三陸産ワカメに偽装されて大量に販売されるという事件も起き、三陸地方の漁業者の怒りはいかばかしかと想像します。この韓国産の偽装事件を契機に、三陸では出荷するワカメの包装や表示を工夫し、偽装品が紛れ込むことがないように様々な対策を打ちました。これを消費者庁や農林水産省や厚生労働省が「支援した」という話はあまり聞きません。返す返す腹立たしい限りですが、しかし、ワカメ産地の三陸地方の漁業者の方々は、東日本大震災の被害や、こうした産地偽装などの悪質な犯罪行為にもへこたれず、ワカメ産業の復活復興に取り組んでいます。もちろん重茂漁協さんもその1つです。鳴門も、この三陸の漁師の方々を見本にして、ワカメ産業を1から立て直すつもりで取り組めばいいでしょう。

 

 産地偽装は絶対に許されない悪質な犯罪行為である、これを私たち消費者も徹底いたしましょう。そのためには、私たちが食べものと、そのよって立つ所以に対してもっと関心を高める必要があります。消費者の高い関心と適切な消費選考が、結局は健全で豊かな産業を創りだしていくということを強く認識すべきなのです。

草々

 

 

 

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