原発事業という斜陽産業に足をすくわれ経営破たんへと転落していく、見掛け倒しの「張りぼて」名門企業・東芝=現段階は決算粉飾・損失隠ぺいと監査法人への恫喝・そそのかしの段階の様子=日立、三菱重工も似たようなものではないか?
前略,田中一郎です。
(別添PDFファイルは添付できませんでした)
西田厚聡(当時社長)と佐々木則夫(当時副社長)という、愚か者の大企業経営者を絵で描いたような、しかも仲が悪いと言われる2人に引率・引きずられた東芝という名門企業が、よせばいいのにの斜陽産業=原発事業にのめりこんで、にっちもさっちもいかなくなってきているようだ。今般、経済週刊誌の『日経ビジネス』(2015.11.16)が「東芝、米原発赤字も隠蔽」というスクープ記事を載せている(別添PDFファイル)。驚くべき内容だ。ここでいう米原発赤字とは、ご承知の通り、東芝が数年前(2006年)に業界が仰天してしまうほどの破格の金額(6600億円)で買収したアメリカ原発メーカーのWH(ウェスチングハウス)のこと。このWHは、東芝がずっと扱ってきたGE仕込みの沸騰水型原発ではなく、それとは違う型の加圧水型原発を扱うメーカーで、大半の予想では三菱重工業が東芝の落札額の半額以下の3千億円程度で落札するであろうとの下馬評だった。それを、この愚か者の経営者2人を抱く東芝が、まるで「横取り」をするかのごとく破格の金額で買収劇を制覇し、沸騰水型と加圧水型という「両刀づかい」となることで世界原子力王国の覇者・原発ルネサンスの最高峰を夢見たという次第である。もちろん、沸騰水型原子炉の技術を持つGEは、この東芝のM&Aの振る舞いに「裏切り」を感じ取り激怒したことは言うまでもない。このことが、GEと(もう一つの日本の沸騰水型原子炉メーカーである)日立単独とのジョイントベンチャーにつながったのだろうと、巷では噂されている。
しかし、その後の経緯は、福島第1原発過酷事故により、大きく負の方向に転換してしまった。もともと原発事業(核分裂発電)は、純粋な民間事業としては経済性が極めて悪く、かつ巨額の投資が必要となって事業リスクが大きすぎ、割に合わない・採算に合わない事業だった。しかも、発電の後には始末におえない大量の使用済み核燃料や放射能汚染ゴミが残り、かつ、原発事業に従事する多くの作業員や職員が放射線被曝による健康被害を余儀なくされてしまうのだ。もちろん原発建設地元の反対(政治的に押さえつけられて表面化しにくい)も福島第1原発事故前から根強いものがあった。およそこんなものは、まともな神経や良識のある人間・経営者なら、手を出すことはない。だからこそ、将来の見通しが極めて暗い斜陽産業=原発事業のお荷物を、アメリカ資本が売りに出し、属国日本の「小金持ち」のバカ者どもに押し付けようとしたのだが(おそらく裏側ではアメリカ政府から日本政府に働きかけがあり、日本側でも政治家や霞が関幹部官僚たちが動いていた可能性がある)、そんな「スクラップ企業」を破格の金額で「横取り」よろしく落札したのが東芝である(私の推測は経済産業省の幹部官僚・有力者OBが買収推進勢力として背後にいたのではないか=経済産業省の「東芝びいき」はかねてより「噂」になっていた)。バカもここまでくると、もうどうしようもない。
福島第1原発事故後の原発・原子力事業の行き詰まりの表面化は、アメリカや日本だけの話ではなく、フランスの原発企業・アレバでも表面化するなど、世界に共通の事態になっている。カッコつきの名門企業・東芝も例外ではなく,WHだけでなく東芝本体の原発事業部門も含めて、福島第1原発事故後の収支状況は火の車の様子である。自民党のゴロツキ政治家どもが、躍起になって原発・原発とわめいているのは、地域独占の既存大手電力会社の経営不振のみならず、原発事業の中核=原子炉メーカーにも原発事業の凋落と経営不振が襲っているからに他ならない。そして、電力会社の方はともかく、この原発メーカーの方は、いわゆる軍事産業でもあり、アメリカ属国のプチ帝国としてアジアに君臨したがっている安倍晋三・チンピラおぼっちゃま連合にとっては、元気でいてくれなければ困る企業群なのだ。原発は軍事と裏腹の関係にあることは、こうしたことからも見て取れる。
その原発・軍事産業の盟主=三菱重工業は、アメリカ・カルフォルニア州のサンオノフレ原発における蒸気発生器の欠陥が発覚して廃炉となり、それに関して巨額の損害賠償訴訟の被告となった。同社製造の蒸気発生器の製品検査プロセスが出鱈目であったことも、同社工場へのアメリカ・原子力規制委員会(NRC)の抜き打ちの立ち入り検査で明らかになっている。この会社の幹部どもは、インチキは日本でしか通用しないということを理解できないでいたようだ。三菱重工業が原発事業で沈没の危機に陥るのは、私は時間の問題ではないかと思っている。もう一つの原発・軍需企業の日立製作所については、今のところ手元に経営状況の真相を示す資料や情報は持ち合わせないが、推測するに、おそらくは原発部門がお荷物となっているに違いない。過酷事故を起こした福島第1原発は、日立が扱ってきた沸騰水型の原発だ。
ところで、話はそれるが、1990年代初頭のバブル崩壊以降、日本の産業や大資本の経営者どもが、あまりにお粗末すぎる醜態を表すことが多くなった。かつての日本の大企業や名門企業では、あまり見られなかったことである。かつては、不祥事や醜態が隠されていて、右肩上がりの経済成長によってそれが自然解消していたのかもしれないが、私はそれ以上に、日本の大企業経営者どもの質の低下が著しいように思う。私の推測の域を出ないが、どこの大企業も下請けや系列企業の上に君臨する巨大な官僚組織(テクノクラート)となり、日々、事業現場やプロジェクトの実態を知らぬままに、つじつま合わせと夢物語の書類作りと小田原評定会議を続け、誤った判断を繰り返しながら、そんなくだらない社内文化の中で処世術だけにたけた小賢しい馬鹿者たちが会社幹部になっていったからではないか(人事の「縮小再生産」というのもある=自分よりも少しだけ劣る人間を最優秀だと思い込んでしまう人間の習性だ=その習性に無反省に人事を長期間続けると、気が付いたら幹部はバカばかりということになる)。結局、そうした「放漫経営」のツケは、一般従業員や下請け・系列、並びに、何よりも非正規労働者の労働条件切り詰め・賃金抑え込み・解雇自由、あるいは地域住民・自治体への損害の押付けと踏み倒し、などの形で、立場の弱いものへと押し付けられていく。福島第1原発事故は、まさにその典型であるように思う。
現代日本の経済的な苦境の一つ=労働法制改悪をはじめとする「働きにくさ」「住みにくさ」「生きづらさ」や、デフレ経済や経済環境・経済状態の年々の悪化と貧困や欠乏の蔓延、の原因と責任の多くは、この日本の大企業の経営者どもの質的劣化にあるように思われる。私は、日本をいい方向に転換するためには、産業の構造やビジネススタイルを変えつつ、このどうしようもなくなってきた「無能の大群」の日本の大企業経営者どもを時間をかけて入れ替えていく必要があるのではないかと思っている。(もちろんこの劣化経営者群と、今の安倍晋三一派に率いられたゴロツキ集団の自民党政治家どもが「グル」であることは言うに待たない。日本における「本当の意味での」政権交代がなければ、日本はいつまでたっても変われない)
以下、『日経ビジネス』(2015.11.16)の当該記事の重要個所を抜粋して、下記にご紹介しておく。また、東電株主代表訴訟の堀江鉄雄さんが、タイムリーで非常に鋭い分析をしておられるので、そのメールも下記にご紹介しておきたい。それから、別添PDFファイルの朝日新聞や毎日新聞の記事にあるように、今般、東芝自身が設置した「役員責任調査委員会」が出した報告と、それに基づく東芝の損害賠償訴訟は、今回の事件の大きさに比較して、まさに悪質巨大な粉飾決算事件の「もみ消し」にも近い「犯罪隠ぺい的」ともいえるほどの、事件の矮小化が行われている。そもそも事件の大きさに比較して、損害賠償金額(総額3億円)が小さすぎることに加え、請求した旧役員の範囲も狭すぎるのだ。これでは、株主代表訴訟による同様の損害賠償訴訟を、東芝サイドが先手を打って妨害するために起こした訴訟と言われても致し方ないのではないか。
にもかかわらず、金融庁も、証券取引等監視委員会も、監査法人業界も、東京証券取引所も、この不正適正化のために動こうとはしていない(もちろん経済産業省が動くはずもない。この経済産業省は、かつての大蔵省と同様に解体あるのみだ)。この日本という国では、上場企業(公開企業)の粉飾決算がきちんと取り締まられることがなく、安心して投資すらできない状態に陥ってきている。出鱈目もここまで来たらもう限界である。この東芝事件を今進められているような形で矮小化し、火消しをした後に来るのは、日本の資本市場=証券市場=株式市場への不信と長期低迷であることを、当の日本資本主義の幹部たちはよく心得ておくことだ(アメリカで今回の東芝のようなことをやれば、ただでは済まない)。インチキ市場に未来はないのである。
<別添PDFファイル>
(1)東芝、米原発赤字も隠蔽(『日経ビジネス 2015.11.16』)
(2)東芝 役員93人提訴せず(朝日 2015.11.10)
http://www.asahi.com/articles/DA3S12058609.html
(3)東芝 9役員は不問(毎日 2015.11.10)
http://mainichi.jp/graph/2015/11/10/20151110ddm008020101000c/001.html
(上記(1)を一部抜粋)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
東芝、米原発赤字も隠蔽
東芝が2006年に買収した米原子力子会社で、計1600億円の減損が発生していたことが内部資料で判明した。子会社単体では2年連続で赤字に陥っていたが、本誌が指摘するまで東芝は事実を開示しなかった。東証は内部管理体制に問題があるとして調査に乗り出す方針で、東芝の不正会計問題は新たな局面を迎えた。
東芝の中核子会社で原子力発電所の建設や保守を手掛ける米ウエスチングハウス(WH)が、計1600億円の減損処理を行っていたことが本誌の取材で分かつた。東芝経営陣の電子メールのやり取りなどを記録した内部資料から判明した。WHは原発の新規建設が不調だったことなどを受け、単体決算で2012年度に9億2600万ドル(約1110億円)、2013年度に約4億ドル(約480億円)を減損処理した。資産価格を大幅に切り下げたことが損失となり、2012年度と2013年度はWH単体で赤字に転落している。」
だが、東芝は「当社の連結決算には影響がなく、会計ルール上も問題がない」(広報)として、本誌の指摘があるまで開示してこなかった。東芝はこれまで、ほぼ一貫して原発関連事業は好調だと説明してきた。しかし、対外的な説明と内情が全〈違っていたことが明らかになった。これに対して東京証券取引所の幹部は「WH単体で巨額の減損があったのなら、今までの説明とは食い違う。企業ぐるみの隠蔽と言わざるを得ない」と指摘する。
(中略)もくろみは2011年の東日本大震災で大きく揺らぐ。新規の受注実績は、2015年に至っても計10基にとどまる。それでも東芝は、WHを含む原子力事業で5156億円の「のれん及び無形資産」を9月末時点で計上している。一方でWHの売上高や利益、資産状況は明らかにしていない。東芝は、WHのピジネスは好調だと説明し続けている。11月7日に開かれた2015年4~9月期決算会見で、上席常務CFO(最高財務責任者)の平田政善は「サービスや燃科事業が着実で、福島第1原発事故以降は安全対策というビジネスが伸びている」と述べた。だが平田は直近の利益額など、主張を裏付ける数字は提示しなかった。
内部資料は、WHの実情が凍芝の説明と乖離していたことを示している。経営不振を続けるWHの処理に苦慮した経営陣が、様々な手法を駆使して本体への飛び火を防いできた姿が、克明に記されている。仮に東芝本体が抱えるWHののれんの減損につながれば、「配当の財源がなくなる」(内部資料から)などの可能性があるからだ。
(記事では、この後、次のような記述と、その詳しい説明が続いていく:下記は抜粋)
●WHの経営不振が明るみに出ると、東芝の連結で計上するのれんの議論につながりかねない。滅損が1000億円規模と巨額なだけに、影響をWH単体だけにとどめたかったはずだ。
●減損に対するEY(WHの監査法人でアーンスト・アンド・ヤングのこと:田中一郎)の見解を変えたかった。その期待に応えられなかった新日本に対して、「ビット」(監査法人契約変更のための入札のこと:田中一郎)という言葉で契約打ち切りを示唆したのだ。東芝が新日本に支払う監査費用は毎年10億円程度。大口顧客として圧力をかけた。(中略)その後、EYにおけるWH監査担当者はKという日本人に代わり、東芝と密接に連携を取るようになっていく。
●その後もWHのビジネスは好転せず、東芝幹部の聞では緊迫したメールがやり取りされるようになる。
●2014年3月、東芝の財務部門で「連結ベースでの影響極小化に向けた対応」が始まった。●●も「非常事態としての対応よろしくお願いします」とのメールを部下に送信した。その後、東芝社内では「新日本が受け入れるための“屁”理屈」(電力部門幹部のメール)を考える動きが活発化する。
●束芝経営陣が最も恐れていたのが、WHの巨額減損が本体に飛び火すること。東芝は、WHが計1600億円も減損したにもかかわらず、連結決算に反映していない。
●2012年度末、東芝の利主主剰余金は約1017億円だった(不正会計による修正前)。これに2013年度の利益を積み上げたとしても、確かに配当原資は吹き飛ぶ可能性が高い。無配転落は東芝も避けたかったはず。
●さらに東芝本体にはリーマシショックが起きた2008年度から財務制限条項が付いている。これは銀行などが、貸し付けの際に借り手に対して付ける条件である。自己資本比率などの指標が約束値を下回ると、借り手に債務の返済を即座に迫るというものだ。2013年度末の東芝の長期借入金は約6000億円。巨額減損で財務制限条項に触れる事態も避けたかったはずだ。
●瀬戸際の危機を前に、東芝は2つの「奇策」打った。一つは、減損判定の際の手法を変えること。(中略)もう一つの奇策は、収益の日米合算化である。
(そして記事の最後の部分)
だが奇策を駆使して「見栄え」を良くしてみても、WHの苦しい経営状況が好転するわけではない。2015年4~9月期決算では電力・社会インフラ、電子デバイスなど5つの事業セグメントがすべて前年同期に対して営業減益になった。このタイミングで、過去9年間、社運を賭けて取り組んできたWH事業の不振が表面化すれば、東芝の経営は根幹から揺らぐことにもなりかねない。
WHに関わる一連の会計処理を新日本は「適正」と認めているが、結果はすべて東芝に都合のいい形になっている。内部資料からはWHの減損が本体に燃え移らないよう必死に「努力」する東芝と、その気迫に押されて「譲歩」してきた新日本の姿が読み取れる。総額2248億円の東芝の利益水増しについても新日本の「譲歩」があったのではないか。疑念を抱いた金融庁は現在、新日本の調査に入っている。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(確かに監査法人も問題で、それは特定の監査法人が悪いというよりも、現在の上場企業や公開企業の監査の仕組み=ルール=法制度の方に問題がある。そもそも監査を受ける企業が金を払って監査法人を雇うという形をとる限り、まともな監査など期待できない。何故なら、利益相反行為そのものだからだ(ここでは多言しないが、監査を「共同利用施設」化して、証券取引等監視委員会などの公的機関が監査法人を雇って監査をさせる、費用はその公的機関が「課金」として徴求する、ような形にしないとだめだろう)。しかし、問題の核心は監査法人ではない。まさに東芝自身が問題なのである。:田中一郎)
★(以下はメール転送です)堀江鉄雄さんのメールをご紹介します。
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堀江鉄雄です。重複ご容赦ください。転送・利用可です。
日経ビジネスオンラインのスクープです。これに日経、毎日などが続いたようです。東芝の米原子力子会社ウエスチングハウス(WH)で、計1600億円の巨額減損が発生していたことが日経ビジネスの取材で分かった。WHの単体決算は2012年度と2013年度に赤字に陥っていたが、本誌が指摘するまで東芝は事実
を開示しなかった。
これまで東芝は、原子力事業については一貫して「順調」だと説明し、WHの売上高や利益、資産状況については明 らかにしてこなかった。5月に発足した第三者委員会もWHの減損問題については踏み込んでいない。
本誌(日経ビジネス)が独自に入手した内部資料によると、WHの実情は東芝の説明とは大きく乖離している。経営 陣の電子メールなどを基に、東芝とWHが抱える“秘密”を明らかにしていく。
日経ビジネスオンライン:スクープ 東芝、米原発赤字も隠蔽
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/110879/111100135/?n_cid=nbpnbo_mlpa13&rt=nocnt
東芝:原子力事業に関する一部報道について(恥ずかしい東芝の言い訳)
http://www.toshiba.co.jp/about/ir/jp/news/20151113_1.pdf
東芝は、これらの内容を否定せずに連結決算では事業部門全体の評価をしているので計上しなかったとしています。問題ないとしているのです。
1 東芝の闇原子力事業にメスが入ったこと
このスクープの大事なところは、東芝の不正会計の源である原子力事業部門を開示させる突破口となることです。東芝の決算書、有価証券報告書を見ても「電力・社会インフラ部門」としか報告されていません。原子力事業は勿論のこと、新規建設、燃料、メンテナンス、海外取り分けWH(ウエスチィングハウス:WEC)についての資産、売上及び損益についての報告はありません。
このスクープにより東芝が順調だと説明をし、隠し続けたていた原子力事業の実態の一部が明るみに出たのです。このことで東芝は、さらなる説明をしなければなりません。米国会計基準の減損テストで1600億円の減損処理、損失計上しています。しかし、東芝は、国内連結ベースでの減損テストでは事業部門別で収益が上がっているから減損処理、損失計上はしないと言っているのです。この論理で行けば、黒字の事業あるいは会社では減損処理はあり得ないことになります。
2 減損処理
東芝の減損処理で分かり易いのは、11月09日公表された「役員責任委員会の報告書」p11のG案件(STP:サーステキサスプロジェクトだと思う)です。2007年に受注した原発建設工事で、設計変更等により2013年度には見積工事原価総額が4億100万米ドル増加しているから「工事損失引当金」を計上すべきと米国会計事務所から指摘されていた。しかし、2億9300万米ドルしか計上しなかったことが「善管注意義務違反」だとしています。
つまり減損処理は、部門別などではなく具体的かつ実態的なプロジェクトで行うものだと分かります。G案件で赤字だけどH案件で黒字だから良いということではないのです。この米会計も国内会計も同じだと思うのです。また、東芝は、この「善管注意義務違反」をどう捉えているのでしょうか。少なくとも東芝は、米会計基準規則を採用していると高言しているのに恥ずかしくないのでしょうか。
3 のれん代処理
このプロジェクト毎の減損処理とは別にのれん代の処理があります。これも具体的にWHののれん代を考えれば、15年までには売上1兆円、30基の原発建設受注とした「事業計画」が達成できたか否かの検証をしなければなりません。つまりWHの毎年度の売上、損益の実績と今後の見通しを「事業計画」と比較(減損テスト)し、落ち込んでいれば、その分を減損処理する必要があります。
不正会計処理を受けての臨時株主総会への事前質問でも、WHの売上、損益、のれん代は全く説明していません。説明出来ないから「隠ぺい」したと言うことです。WHの事業の売上と採算性が悪いとなれば、4000億円からののれん代を損失処理しなければなりません。そして、繰延税金資産の取り崩しとなれば、東芝の主力事業の原子力事業だけではなく、東芝そのものが崩壊することになるのです。
4 新日本有限責任監査法人も“屁”理屈に荷担した責任
スクープのメールには「連結の評価を行うことを新日本(監査法人)が受け入れるための“屁”理屈をアピールすることが必要となっている。」とあります。新日本は、米会計規則でSTPの損失計上を知っていながら、連結では損失計上しなかったのです。まさに部門全体の“屁”理屈を受け入れたのです。
新日本は、2013年度に「STP減損▲310億円」、不正会計発覚後の見直し修正では2014年度分で「STP減損▲410億円」減損処理をしています。これは何なのと聞きたいところです。また、のれん代の減損処理は、何故しなかったのか。新日本の責任は大です。
5 第三者委員会の責任と役員責任調査委員会
第三者委員会は、当初より5年間、監査法人対象外と限定していたものの原子力事業についての制限はありませんでした。しかし、原子力事業での指摘は前項で出たSTP1件だけです。他のSPT及び原子力事業の減損処理は全くありませんでした。2012年度の1100億円も知っていたはずです。東芝の屁理屈に同調するべきではありません。
また、WHの減損処理の事実を明らかにした上で、WHののれん代の減損評価をするべきであり、隠ぺいした責任は大です。本当の第三者委員会で調査するべきです。
役員責任調査委員会は、第三者委員会の報告そのままに原子力事業における元役員の賠償責任も1件のみとなっています。支払能力があるか否かではなく、まずは会社の損失、損害額をすべて明確にするべきです。
6 田中社長も、財務担当者も、原子力担当者も「隠ぺい」に必死だった。
この関係者の「隠ぺい」メールは、株主代表訴訟の保安院「津波評価の隠ぺい」メールに酷似しています。東電にも同様のメールが存在しているはずです(処分していなければ)。これを見れば「部門別とか」「連結決算だから」の言い訳は通用しません。まずは「損失の隠ぺい」ありきです。東電も東芝も同じ国策会社であり、同じ体質だと言うことが良く分かります。
ここまでの醜態を東芝、監査法人、第三者委員会は晒しながら「WH損失隠ぺい」を謀っているのです。以前、私が予想したように役員の損害賠償訴訟も、株主代表訴訟になれば全てのことが法廷で明らかにされてしまうので、自ら損害賠償請求をしたのです。「隠ぺい」ありきです。
この「隠ぺい」を剥がしましょう。事前質問の未回答分の説明を要求する手はずでした。今回のことで再質問を逃れることは出来なくなったと思います。
以上
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草々
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