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2015年9月25日 (金)

(報告)原子炉格納容器内の水蒸気爆発の危険性(現代技術史研究会+APAST共催勉強会:9/20)

前略,田中一郎です。

(別添PDFファイルは一部添付できませんでした)

 

去る9/20(日)、東京都中央区人形町区民館において、現代技術史研究会とAPASTによる共催勉強会「水蒸気爆発に関する研究会」が開催されました。みなさまご承知の通り、既に川内原発1号機が再稼働され、更に10月には同原発2号機も再稼働が計画されています。また、そのあとに続けて、伊方原発や玄海原発、更には大飯原発や高浜原発なども再稼働に照準を合わせて、ロクでもない政治工作が進められている現状があります。しかし、これらの加圧水型の原発原子炉は、水素爆発防止対策など、原子炉で起きうるいくつかの爆発対策が不十分であるだけでなく、いわゆる過酷事故対応が間に合わせ程度のずさん極まるものであることと並行して、水蒸気爆発の危険性を軽視・無視する軽挙妄動に基づいた原子炉安全対策が施され、あまりに楽観的でインチキ臭い水蒸気爆発の可能性評価の上に進められているのです。福島第1原発事故による悲惨な被害を経験した国のやることとは、とても思えないような、無謀で愚かで危険な原発再稼働への猪突猛進が、多くの警告や反対を無視して進められています。

 

今回の勉強会は、こうした原子力規制のでたらめを受けて、急きょ、それを何とかやめさせる意図から、原子炉格納容器内における水蒸気爆発の可能性と危険性を取り上げて専門家の目から分析をしたものです。一般論で恐縮ながら、高温の金属溶融物が低温の水や水蒸気に触れると、いわゆる「水蒸気爆発」と呼ばれる激しい反応を示すことは、たとえば金属工場の溶鉱炉や各種研究所の実験室などではよく知られていることです。原発・原子力の世界でも、水蒸気爆発の危険性については、原子炉開発の早い段階から既知のことでしたから、これが万が一にも起きることのないよう、様々な対応や対策が取られてきたと聞いています。

 

かつて1986年のチェルノブイリ原発事故の際には、事故を起こした原子炉の地下にあった水のプールが大問題となり、死を覚悟したソ連の若い兵士たちが致死量に近い放射能汚染水の中へ向けて突撃(水プールの栓を抜いて水を排水するのが目的)することにより水蒸気爆発が回避された、そういうチェルノブイリ原発事故の録画映像(事故経緯の推測ドラマ)を見た覚えがあります。それほど、原発・原子炉にとっては、過酷事故時における溶融核燃料と冷たい水や水蒸気との接触による水蒸気爆発は危険視されてきたのです。

 

その水蒸気爆発を、あろうことか、日本の電力会社や原子力規制委員会・規制庁は、科学的実証的な根拠のないままに、その可能性を否定して、原発過酷事故対策を安上がりに抑えるとともに、福島第1原発事故がもたらした緊急時の緊急炉心冷却装置(ECCS)の有効性や堅確性の実証的確認、ないしは再検討を棚上げにして、原発を再稼働しようとしているのです。信じがたいのですが、これはほとんど緊急時対策を放棄して「一か八か」に賭けるばくちのような、あるいはまるで自殺行為に近い愚かな行為であるといえるでしょう。炉心溶融を起こした川内原発が、格納容器内の水蒸気爆発で吹き飛ぶ姿など、想像したくもありません。

 

以下、当日配布の資料をご紹介するとともに、私の方からは、加圧水型(及び沸騰水型にも共通)原子炉がもたらすかもしれない「爆発事象」について、ごく簡単にコメントを付すことにいたします。

 

 <別添PDFファイル>

(1)水蒸気爆発のメカニズムと原発規制基準の問題(高島武雄 2015.9.20

「takasima_rejime.pdf」をダウンロード

(2)原子炉格納容器内の水蒸気爆発の危険性(イントロ部分)(高島武雄、後藤政志 『科学 2015.9』)

「kagaku_ronbun_intoro.pdf」をダウンロード

(3)北九州市消防局が一斉指導 若松の工場爆発受け[福岡県](西日本新聞 2015.9.8

「kitakyuusyuu_suijoukibakuhatu.pdf」をダウンロード

 <関連サイト>

(1)APAST HP(後藤政志さん、筒井哲郎さんが主催)

 http://www.apast.jp/

 

(2)現代技術史研究の紹介(3)

 http://blog.goo.ne.jp/kasiwam/c/2b9795e6b417c09fc605b2b4af5491ab

(このサイトに「なお現代技術史研究会のホームページはありません」と書かれています:田中一郎)

 

 <勉強会の案内>

川内原発が再稼働し、さらに新規制基準を通った原発の再稼働が粛々と準備されている。原発事故で炉心溶融後に溶融物と水が接触すると溶融物周囲の水が急激に蒸発し、水蒸気爆発を発生することが懸念される。川内原発をはじめ、加圧水型原発では炉心溶融時に原子炉下部キャビテイに水をはり、溶融物を冷却する方針である。こうした原発の過酷事故対策がいかに無謀なことであるか長年水蒸気爆発の研究をされてきた高島武雄さんをお呼びして、水蒸気爆発のメカニズムと原発事故についてじっくりお聞きする。

 

共催:NPO法人APAST

発表者は、3人ともAPASTに関係しておりますので、例会はAPASTと共催という形にします)

 

発表者の紹介

【高島武雄氏】

水蒸気爆発(あるいは蒸気爆発ともいう)の研究者。横浜国立大学出身、元小山高専教授。工学博士。

著作:『蒸気爆発の科学』高島武雄・飯田嘉宏共著 裳華房  1998

   岩波雑誌科学9月号に水蒸気爆発の論文を掲載(後藤と共著)

 

【筒井哲郎氏】

プラント技術者の会会員。 APAST理事、原子力市民委員会原発問題を中心にプラントエンジニアの視点から活発に活動している。

 

【後藤政志氏】

現技史研会員、 APAST理事、原子力市民委員会

 

現技史研は通常は少人数の小さな研究会ですが、今回は「炉心溶融時における水蒸気爆発のメカニズムとPWR原発におけるその対策がいかに間違っているか詳しく報告する重要な内容ですので、関係各位にご参加を呼びかけるものです。

 

原発過酷事故が起きると『溶融物が水に触れて水蒸気爆発を発生し易い。冷却ために水を入れるため水蒸気爆発を起こす危険性がさらに増す』しかし、『水を入れないとコアコンクリート反応を起こし、どこまでも侵食し、水素爆発も誘発する危険性が高まり事故が収束できない』という原子力安全の究極の選択の問題です。

 

 その科学的メカニズムを研究者の口から直接聴ける貴重な場であり、さらに、先月はじめには北九州のアルミメッキ工場で水蒸気爆発が起きたとのニュースも踏まえて議論する場になるかと思い、日ごろ交流のある方々にご案内するものです。

 

(以下、田中一郎が執筆いたします)

======================

1.加圧水型原子炉の過酷事故対応と水蒸気爆発

 福島第1原発事故の教訓は、一つは、全電源喪失を招いた場合などの緊急時に炉心を冷却するための装置である緊急炉心冷却装置(ECCS)がきちんと働かなかったこと(設計上の欠陥の可能性大)、従って、事故の早い段階で炉心溶融を招き、更にそれが水位計や蒸気逃し安全弁(SRV)、あるいは空気圧制御配管などの破損ないしは機能不全を伴いつつ(この機能不全は、炉心の状況把握や制御ができなくなるとともに、ベントなどの格納容器破損防止対策もまともにできなくなることを意味している)、早期の段階で原子炉建屋の水素爆発を招いてしまったことである。格納容器内に窒素ガスが充てんされていたため、格納容器内で水素爆発が起きなかったことが不幸中の幸いであった。

 

(建屋内での水素爆発防止は、建屋の横についているブローアウトパネル(窓)を開くだけで防げるのに、その手当もしていなかった。1号機の爆発により、その衝撃で2号機のブローアウトパネルが開き、2号機の建屋の水素爆発は免れた事故の経緯がある)

 

 当然ながら、福島第1原発事故が一定の平衡状態になって以降、そもそもの事故苛酷化の原因となった非常時における炉心冷却の失敗=緊急炉心冷却装置(ECCS)機能の有効性や堅確性の実証的確認や再検討が始まるものと、私は思っていたが、考えが甘かった。何故なら、信じがたいことに、原子力ムラのインチキ人間達は、今後、全電源喪失+冷却装置大破損または機能不全の場合には、炉心の冷却をあきらめて、炉心の核燃料が溶融するに任せると言いだした。そして、その溶けた炉心が圧力容器を突き抜けて格納容器の下部に落ちてくるのを、その格納容器の底部にバケツのような容器(キャビティ)を置いて、そこに水を溜めておいて、溶融炉心核燃料デブリが落ちたら、その溜めた水が冷やしてくれる、などと、信じがたいようなことを言うのである。

 

(福島第1原発事故時の緊急炉心冷却装置(ECCS)の機能不全問題については、脱原発・反原発派の市民らが、これを徹底して追求・広報してこなかった経緯がある:例外は元日立バブコック技術者の田中三彦さんの非常用復水器(IC)破損に関する東京電力追及である=すばらしい!! しかし、本来は、2号機、3号機の主たる緊急炉心冷却装置(ECCS)だった、原子炉隔離時冷却系(RCIC)や高圧注水系(HPCI)についても、その機能不全を徹底調査し、その有効性を徹底検証すべきだった=「だった」というよりも、今からでも遅くないから「すべきである」というべきか)。

 

(参考)ウィキペディア:日立バブコック

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%90%E3%83%96%E3%82%B3%E3%83%83%E3%82%AF%E6%97%A5%E7%AB%8B

 

 炉心が解け始めたら、冷やすのはやめて、炉心の真下にバケツに水を入れて落ちるのを待っております、そんなことを原発過酷事故対策として、真顔で言い放つ電力会社と、それを平々凡々とOKしてしまう原子力規制委員会・規制庁だが、福島第1原発事故の時は、消防車などを使って何とか炉心溶融を防ぐ、あるいは溶融した炉心が暴れ回らないように水を注いで冷却を何とか続ける、という努力を現場関係者が必死にしていたのである。しかし、そんなことは無駄なことであった、だからうまくいかなくても、どうということはない(むしろ、炉心冷却は水素大量発生を加速化するのでやめた方がいい、とまで言う)と開き直る、それが、今の電力会社と原子力規制委員会・規制庁の考え方なのだ。そしてその時に決定的なのは、灼熱状態に溶けた炉心が格納容器の底に置いた水入りのバケツに落ちた時に起きる可能性がある水蒸気爆発の危険性の無視・軽視なのだ。(これ以降は別添PDFファイルをご覧ください)

 

2.原子炉の4つの爆発について

 原子炉が全電源を喪失し過酷事故事態に陥った場合に、可能性のある爆発の種類は下記の4つである。福島第1原発事故の際には、水素爆発以外に,下記のうちの別の爆発が起きていた可能性は大いにある。特に3号機の爆発の形態が、典型的な水素爆発の形態である1号機爆発とは全く違う点が、大きな疑問として残されたままだ(核爆発、ないしは一酸化炭素爆発の可能性あり)。いわば原子炉は「核時限爆弾」とほぼ同じものと考えていいと思われる。これらの絶対に起こしてはならない危険極まる諸爆発は、原発・原子炉の運転とともに必然的に起きてくる事故であると認識しておくのがいいだろう。 

 

(1)水素爆発

 過酷事故時等において、炉心の核燃料を包むジルコニウム合金と高温水蒸気が反応して水素を発生させる他、溶け落ちた高温高熱の炉心デブリが格納容器下部のコンクリートと反応して水素を発生させる(「コア・コンクリート反応」)。沸騰水型の原子炉(福島第1原発他)の場合には、格納容器内に不燃性の窒素ガスを充満させてあるので、格納容器内での水素爆発は起きにくい。しかし、加圧水型の場合には、窒素ガスは格納容器内には入れられていない。加圧水型の場合には格納容器が大きいから大丈夫だと、慢心の状態で物事を考えており、従ってまた、水素爆発防止の対策も甘い。特に、水素ガスを発生し始めの早い段階で、イグナイタ(点火プラグ)で水素を燃やしてしまう、などと説明されるのでは、ますます懸念は高まる。その点火プラグが、格納容器内部での水素ガス大爆発の契機とならぬとも限らないからだ。その場合には、加圧水型は格納容器が大きい分だけ、爆発の程度も巨大なものになってしまうだろう。いずれにせよ、加圧水型の水素爆発対策は「手抜き」に近い。

 

(2)水蒸気爆発

 今回の勉強会のテーマ。上記、及び別添PDFファイルを参照(なお、主催者は、今回のテーマで、今度は大人数参加を前提にした講演会を開催予定しているそうです)

 

(3)核爆発

 福島第1原発3号機の使用済み核燃料プールが原子炉建屋の水素爆発とほぼ同時に核(臨界)爆発を引き起こしたのではないかとの疑いが出ている。原因は、簡単に申し上げると、最初に水素爆発が起きた際に、使用済み核燃料プール内の「バブル(泡)」が爆風圧で押しつぶされ、それが契機となって「イモ洗い状態」にまでギューギュー詰めにされた使用済み核燃料プール内の核燃料(特にプルトニウム燃料)が臨界を引き起こして爆発したというもの。(しかし、東京電力や政府や原子力規制委員会・規制庁のせいで福島第1原発がいまだに非公開とされ(放射能汚染がその口実)、3号機の現地実態調査がままならない。福島第1原発を広く科学者や技術者やジャーナリストに公開をして、全世界の英知を集めながら、廃炉や汚染水・放射能対策に尽力していくべきである)。

 

(参考)(別添ファイル)福島3号機爆発が核爆発である証拠(20130907 北広島医師会講演会:西尾正道氏)

「KAKUBAKUHATU.jpg」をダウンロード

(4)一酸化炭素爆発

 溶融炉心が格納容器下部のコンクリートと反応(「コア・コンクリート反応)すると、大量の水素のほかに、コンクリートに含まれている石灰質が分解されて一酸化炭素も大量に発生する。昨今では、3号機爆発と1号機爆発の違いが、3号機=一酸化炭素爆発である、として説明されることもある。この炉心溶融時の一酸化炭素爆発の可能性・危険性については、ほとんどきちんとした検討が加えられていないのではないか。しかし、爆発性のガスとしては、この一酸化炭素が我々一般人には最もなじみがある。

 

3.一度事故が起きたら絶対逃げられない! パニック時にあなた自身にふりかかること――広瀬隆×堀潤対談<後篇>|東京が壊滅する日 ― フクシマと日本の運命|ダイヤモンド・オンライン

 http://diamond.jp/articles/-/77432

 

(一部抜粋)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

(中略)この8月に川内原発に行ったとき、バスの運転手さんと、事故が起きたとき周辺の住民が逃げられるかどうかの話をしました。そのとき彼が「できるわけない。俺たちが行かないんだから」と言うのです。「救済になんか行けないよ。事故が起こったら、まず自分が逃げなければならないから」と。これが現実ですよ。

 

(中略)浜岡原発の反対運動の集会で、集まった人たちに私が言ったのは、「事故が起きたら、道路が渋滞するので絶対に逃げられない」ということでした。

その話をすると、全員が下を向いてしまいました。人間は本当のことを言われると、聞きたくなくなるものです。

 

 ところがその直後、2007716日に新潟県中越沖地震が起きて、柏崎刈羽原発が大破壊されたとき、私の言ったとおりになった。自動車がみな同じ方向に走っていくので、大渋滞になってまったく動かない。反対車線はガラガラなのに。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

草々

 

 

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