国際原子力機関(IAEA)の福島第1原発事故に関する最終報告について=「両刃の剣」の報告書,ご都合主義的な「つまみ食い」と,事故原因歪曲・被ばく影響過小評価に警戒を
前略,田中一郎です。(新聞をとるなら東京新聞です)
(別添PDFファイルは添付できませんでした)
みなさまご承知の通り,このほど,国際原子力マフィアといわれている原子力・原発の「平和利用」推進機関=国際原子力機関(IAEA)が,福島第1原発事故に関する報告書を各国に配布し,自身の理事会で議論したようです。新聞報道によれば,今後,各国からの意見や要望なども反映させ,9月の年次総会で正式決定されるとのことです。カナダなどからは,報告書の内容を一般市民にも説明する必要があるとの意見が出たようですので,日本国内でも,おそらく一般公開されるものと思われます。
しかし,現段階においては,新聞報道が一斉になされましたけれども,正式にはこの報告書は国際原子力機関(IAEA)では,まだ非公開だそうで,私から経済産業省に問い合わせしましたが,外務省に聞いてくれ,などのケシカラン「たらい回し」をされたあげくに,IAEAが非公開だから経済産業省では公表していない,とのことでした。(外務省の対応も,IAEAのサイトのURLなら教えます,といった,問い合わせした人間を馬鹿にしたような返答でした)(怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒)
このIAEA報告書を見たいと思って,いろいろな方に聞いていたところ,下記のサイトにあることを,ある方に教えていただきました。ただし,英語のままですので,ちょっと読み通すにはしんどいかもしれません。そもそも,かような報告書を非公開にしていること自体が,国際原子力機関(IAEA)の常日頃,一般論で言っていることとは正反対のことではないか,と思いますし,また,この報告書は,ほんとうに非公開なのかどうかも私は怪しいと思っています。
私が日本政府の人間であれば,あるいは政権の座にあれば,ただちに和訳をし,要約も付けて一般公開の上,多方面から意見を募り,それを整理して国際原子力機関(IAEA)に還元して伝えて行く,といった,ごくごくあたりまえのことをやっていたでしょう。日本の原子力ムラとその代理店政府の「ウマ並」人間達(他人の注告や提言などには馬耳東風なので「ウマ」並人間たちなのです)の基本スタンス=「(汚い金と権力と嘘八百で)ヨラシムべし,シラシムべからず」がここでも貫徹しているように思われてなりません。
以下,東京新聞の記事に沿って,この国際原子力機関(IAEA)報告書を簡単にご紹介いたします。このメールの表題にも書きましたように,新聞報道から判断する限りでは,その内容は「両刃の剣」であり,一方では,原子力・原発を嘘八百で塗り固めながら推進してきた国際原子力マフィアにしては,よく踏み込んで,今般の福島第1原発事故の原因者である東京電力や,責任者である日本政府,とりわけ原発規制当局だった経済産業省や原子力安全保安院の批判をしているな,という印象があります(ただ,原子力安全委員会=原子力ムラ御用学者や,事故原発を作った原子炉メーカーへの言及がないのはいただけません=おそらく,原子力ムラ御用学者が,原子炉メーカーの資金と協力を得ながら,この報告書を執筆したのではないかと推測します)。
福島第1原発事故被害者から,事故を引き起こした東京電力幹部や原子力安全保安院幹部の告発を受けてうろたえている日本の検察当局が,あの地震や津波は予測不可能で,従って罪に問えない・責任を問えない,などと,馬鹿丸出しのことを言っていることに比べれば,「他人ごと」だから気軽にモノが言える面はあるにしろ,このIAEA最終報告書は「よく踏み込んでいる」と言えなくもありません。ちなみに,この無様(ブザマ)な原子力ムラの下働き・小間使いとなってしまっている日本の検察ですが,実は,この東京電力の原発事故責任者の告訴告発を担当しているセクションが「公安部」(治安担当セクション)というのですから驚きです。これではまるで,原発事故の責任者の罪を問えと告訴告発をした人たち(私もその1人ですが)を,まるで「治安を乱す不逞の輩」扱いしていることになるではありませんか。日本の検察は,どういう神経をしているのかと,その常識を疑いたくなります。
検察庁も,一定の自治権はあるとはいえ,日本政府の法務省という役所の一角ですから,近未来において,私たち良識市民の代表が政権の座に着いた際には,この検察庁を「公安部」も含めて,徹底して解体し,根性をたたき直さなければいけませんね。他方では,冤罪ばかりを大量生産したり,異議申し立てする市民を不当逮捕したりしていますから,まさに「巨悪の巣窟」のようになっています。臭いにおいは元から立たなきゃだめですから。
それと,この法務省・検察庁に関連して,2つだけ申し上げておきますと,一つは,IAEA報告書には,(当然ながらでしょうが)原発事故責任者の責任明確化や責任追及のことについては,何の報告もありませんし,福島第1原発事故を引き起こした国=日本政府の役所の一部である法務省・検察庁の意図的な不作為=原発事故原因をつくった責任者の責任のあいまい化・実態を隠したままの無罪放免措置が,今後の原発過酷事故再発に深刻な影響を与えるということ,についての切り込みが皆無であるということ,です。原発過酷事故の報告書としては,(再発防止にネガティブな影響をもたらすという意味で)重大な欠陥報告と言わざるを得ません。
もう一つは,この法務省・検察庁の役人や検事たちが,あの政府事故調の事務局を構成していたということ,従って,政府事故調の内容については,原発事故の真の原因を隠しておきたいという,当時の(民主党政権)政府の「悪の魂」が相当程度ビルトインされているということです。少し前に,吉田調書から福島第1原発事故の原因をさぐる院内集会があった際にも,吉田調書から読み取れる「誘導尋問」的性格(福島第1原発所長の吉田昌郎氏をヒヤリングしたのは政府事故調の事務局員だった霞が関官僚=法務省役人や検事たちです)が問題視されておりました。政府事故調をそのまま信じ込む(その典型がNHKスペシャル「メルトダウン」取材班)ことは危険だということを意味しています。
しかし,この国際原子力機関(IAEA)の福島第1原発事故最終報告書は,他方において,その事故原因や,事故による影響がもたらす深刻で重大な問題=特に放射能汚染と放射線被曝の問題について,チェルノブイリ原発事故後における報告書と似たような,ひどい歪曲を行っていますので,これは看過するわけにはいきません。さしあたり,このメールでは,東京新聞で紹介された報告書の要約をベースにして,いくつかの点について「これはおかしい」ということを下記に列記しておきます。
また,報道で伝えられている限りでの話ですが,全般的に事故実態や事故原因の究明・解明に具体性や「突っ込み」が乏しいこと=一般論的・抽象論的であり,その内実の掘り下げが浅いような感じが強くします。それが故に,たとえば下記サイトにあるように「4年3ヶ月めにやっとこの程度しか言えないIAEA」といった批判が出てきているのでしょう。いずれにせよ,一般論・抽象論をいくら繰り返しても,具体的な事故再発防止にはつながりませんし,事故を引き起こした責任の所在さえも明らかになりません。事故後4年以上を経過した,原子力・原発の自称「プロ」の書いた報告書にしては,少しお粗末なような印象もぬぐえないのです。
皆様におかれましては,このIAEA報告書を,そのまま信頼されることのないように,また,ご都合主義的な報告事項の「つまみ食い」や,福島第1原発事故原因の歪曲・被ばく影響の過小評価に対して万全の警戒をお願い申し上げたいと思います。国際原子力機関(IAEA)は,所詮は原子力を推進する国際原子力マフィアのメンバーであり,原子力・核・放射能・被ばくに関して,真実を語ることはあり得ません。彼らに対する厳しい視線を緩めてはならないと思います(IAEAと抱きつきあっている福島県庁よ,早く目を覚ませ!!)。
ところで,並ある新聞の中で,最も熱心かつ詳細に,この報告書を報道してくれたのは東京新聞でした。私は3.11以降,東京新聞の原発・原子力報道を高く評価していますが,今回もまさに快挙の報道であったと思います。東京新聞のみなさん,どうもありがとう。それから,この非公開と言われているIAEA報告書を「すっぱ抜き」で,自身のサイトに公表して下さったグリーンピースのみなさまにも,心より感謝いたします。
●グリーンピースがIAEAの未発表「福島第一原発事故レポート」を独占入手・Webで公開 国際環境NGOグリーンピース
http://www.greenpeace.org/japan/ja/news/blog/dblog/iaeaweb/blog/53006/
<別添PDFファイル>
(1)「福島事故 政府・東電の対策不足」、IAEA報告
各国評価(東京 2015.6.11)
(2)IAEA福島事故報告書
「想定外」否定 刑事責任に影響も(東京 2015.6.12)
(3)IAEA福島原発事故最終報告書、国・東電の安全神話指弾(東京 2015.6.12)
(4)原発事故教訓 共有化が責務、IAEA理事会、福島報告書討議で日本(福島民報 2015.6.11)
1.「福島事故 政府・東電の対策不足」、IAEA報告
各国評価(東京 2015.6.11)
(一部抜粋)
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国際原子力機関(IAEA)定例理事会は十日、東京電力福島第一原発事故を総括した最終報告書について議論した。メルトダウン(炉心溶融)や放射性物質の拡散を招いた事故をめぐり、日本政府代表は「経験と教訓を加盟国と共有することがわれわれの責務」と述べ、世界の原発の安全強化に貢献する姿勢を示した。IAEAは最終報告書で、東電や日本政府の安全対策が不足していたと批判。各国からは内容を評価するとともに、世界の原発の安全性の向上が引き続き必要との意見が相次いだ。
外交筋によると定例理会で、カナダなどから、報告書の内容を一般市民に説明することが必要との意見が出た。報告書は理事会での議論を踏まえ、九月の年次総会に提出される予定で、福島第一原発事故の国際的な検証は大きな節目を迎える。
日本は、独立性を高めた原子力規制委員会の設立や原発の新規制基準の策定、過酷事故対策の強化など事故後の安全確保への取り組みを説明。汚染水問題の解決や廃炉に向けた措置も進めていると述べた。一方、韓国は大気中に拡散した放射性物質の国際的なモニタリングが必要だと訴えた。
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<この記事の続き「IAEA福島事故報告書の要旨:「原発は安全」過信が主因 東電、津波対策を取らず」で明らかにおかしい点を指摘しておきます>
●「第一原発で記録された地震の加速度は想定を大きく超えていたが、地震動で安全関連の構造やシステム、部品が大きく損したことを示唆するものはない。」
⇒ 緊急炉心冷却装置(ECCS)(非常用復水器(IC)や原子炉隔離時冷却系(RCIC),高圧注水系(HPCI)など)や再循環系配管,あるいは高圧空気による制御系配管や非常用電源(ディーゼル発電機や配電盤)が地震の揺れで破損した可能性がある(それを実証する有力な証拠も存在する)他,炉心溶融に伴い,水位計等の原子炉モニター機器類が正常に動かない,あるいはSR弁(主蒸気逃がし安全弁)の機能不全(いずれも格納容器内の背景圧力・温度上昇によるもの),サプレッション・チェンバー(SC)の機能低下やベント管の機能不全,更には,復水器の海水ポンプのちょっとした津波での破損(これで原子炉は冷却不能となる),非常用ディーゼル発電機などのための燃料タンクの津波被害(桃太郎の「桃」のように「どんぶらこ」状態),外部電源供給基地の立地のあまりのひどさ(地震の揺れで液状化・がけ崩れ・地盤崩壊など)による応急回復の不可能,原発敷地内外の放射能モニター装置群や緊急時対策支援システム(ERSS)の機能停止(停電・津波・意図的な停止?)や などなど,それほど極端に大きいとは言えない地震の揺れや(震度6),たいしたことのない波高の津波(数~十数m)により,福島第1原発の重大施設が,かくももろくに崩壊してしまった事例は,わかっているだけでも枚挙にいとまがない。そうしたものを丁寧に拾い上げ,一つずつ丁寧に,再発防止を視野に入れながらチェックしていかないと,本当の意味での事故報告書にはならないではないか。
(参考)ウィキペディア 緊急時対策支援システム(ERSS)
(参考)庶民の弁護士 伊東良徳のサイト 福島原発1号機の全交流電源喪失は津波が原因ではない!
●「IAEAの安全基準で勧告された確率論的安全評価(PSA)による審査は十分実施されず、非常用ディーゼル発電機の浸水対策などが欠けていた。」
⇒ 「確率論的リスク評価(PRA)」は,原発などの巨大過酷事故を引き起こすような設備や事業に対して使うことは許されることではありませんし,そもそも,その考え方が,確率論としても明らかな間違いを犯しています(下記サイト参照)。また,非常用ディーゼル発電機については,福島第1原発事故前に4つの同じような事故(*)が他の原発施設で起きているにもかかわらず,ちょっとした津波でたちまち浸水して機能不全となるのは誰にでもわかる状態で放置していたわけですから,「確率論的リスク評価(PRA)」など持ち出さなくても自明なことです。海抜数mのところにある地下室に,非常用電源を2つならべて置いておくという,その感覚が,原発の安全性を軽視している典型的な現れでしょう。ちょっとした津波が来たら,この電源はアウトになることは,子どもにでもわかることです(しかも,うすうす危ないと感じながらも,津波対策をしたり,非常用電源を動かせばカネがかかるので,先送りして放置したということも明らかになっています)。
(*)福島第1原発事故前の同じような原発浸水事故4つ(東京新聞記事より)
①1991年 福島第1原発1号機:海水配管からの水漏れで非常用発電機や配電盤が水没
②1999年 フランス・ルブレイエ原発2基が河川増水で浸水
③2004年 インド・マドラス原発がスマトラ沖地震による津波で海水ポンプが水没
④2007年 柏崎刈羽原発1号機が新潟県中越沖地震で地下の消火配管が破損,建屋地下に浸水
(参考)確率論的リスク評価(PRA)を原発・核燃料施設に用いることのどこがおかしいか
いちろうちゃんのブログ
http://tyobotyobosiminn.cocolog-nifty.com/blog/2015/05/post-0f79.html
●「緊急時の対応計画では、緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)による放射線量の予測に基づき、どこで、どんな住民防護対策が必要かを決める仕組みだった。事故初期の対応は(冷却機能の喪失など)原発の状態に基づいて決める必要があるとしたIAEAの安全基準に沿っていなかった。」
⇒ ことの本質は「SPEEDIによる放射線量の予測に基づく」のか「(冷却機能の喪失など)原発の状態に基づく」のかにあるのではなく,地域住民を無用の放射線被曝にさらすことなく,迅速に避難誘導,かつ支援することがポイントのはず。その観点から見ると,当時の(民主党政権)日本政府の被害者・地域住民の避難対策・対応は,たとえば,避難地域を妙な官僚用語を付けて細切れにして,あまりに狭く遅すぎる避難(地域)指示を出して見たり,安定ヨウ素剤の服用を指示しないばかりか,服用を指示した自治体の妨害までするなど,事故後の損害賠償・補償負担を極力抑え込むことと,放射能や放射線被曝の危険性を地域住民や有権者・国民に対して徹底して隠し通す・隠蔽することが最重点に置かれた,背信的で非人間的で,犯罪的な対応であったことを告発する必要があるはずである。国際原子力機関(IAEA)の,かような「的はずし」「本質はずし」の住民防護対策論に惑わされてはいけない。
●「甲状腺被ぱくを防ぐ安定ヨウ素剤の服用は、適切な事前の取り決めがなく、一律ではなかった。安定ヨウ素剤を配ったが服用しないよう助言した自治体もあれば、服用を勧めたり、政府の指示を待ったりした自治体もあった。」
⇒ 福島第1原発事故直後における安定ヨウ素剤の服用に関しては,まず,その指示を出すべき総理官邸(原子力災害対策本部)がいつまでたっても指示を出さなかった点に大問題がある。更に,地元自治体のうち,三春町や双葉町など,緊急時の責任ある態度で服用を住民に対して指示した,まっとうな基礎自治体もあったが,多くの自治体は「責任回避」態度をとって住民の無用の放射線被曝回避を最重点に置かなかった無責任行政集団であったこと(いわき市などもそのたぐい),また,福島県庁に至っては,三春町の安定ヨウ素剤服用指示を妨害し,その責任も棚上げにするなど,目を覆いたくなるような反県民的な対応をしてしまっていた。日本の行政が,自治体も含めて,放射能汚染と放射線被曝に対して,全くの出鱈目組織であることが明らかになったのが今回の福島第1原発事故である。
●「子どもの甲状腺被ばく線量は低く、甲状腺がんの増加は考えにくい。胎児などに被ぱくの影響は見られず、被ばく線量が十分低いため、今後も影響はないと予想される。」
⇒ 冗談ではない!!,とだけ申し上げれば,さしあたり十分だろう。たとえば下記サイトを参照されたい。ひょっとすると,今回の国際原子力機関(IAEA)の最終報告書は,この部分だけを強調したいがために創られたのかもしれない。その他の記述は,そのために「お飾り」「魂の入らない修飾ことば」なのかもしれない。まさに「巧言令色鮮仁(こうげんれいしょくすくなしじん)」である。
(参考)第19回「福島県民健康調査検討委員会」(2015年5月18日) 結果について
いちろうちゃんのブログ
http://tyobotyobosiminn.cocolog-nifty.com/blog/2015/06/2015518-87c5.html
●「汚染された原子炉建屋への地下水流入を抑えることが依然必要。汚染水問題では全ての選択肢を検討することが必要。浄化設備で取り除けないトリチウムを含む水の海洋放出の影響について評価するよう東電に助言した。」
⇒ 危険なトリチウムその他の放射能を含む汚染水を海に捨ててしまうための準備をしなさい,という主旨の内容だ。ふざけるな,というべきである。トリチウムは半減期がそれほど長くはないから,タンクに入れて,その減衰を待ち,しかる後にその処分方法を検討すればいい。また,福島第1原発から出てくる汚染水は,必ずしもトリチウム以外の放射性物質が完璧に除去されているとは限らないので,多核種除去設備ALPSが「放射性セシウム及びトリチウム以外の62種類の放射性物質を除去」というのは,あくまで「建て前」「理想状態での話」くらいに受け止めておくべきである=除去後の海洋放出については,放射性セシウムやトリチウム以外の核種が本当に除去されているかどうかの厳しいチェックが必要であるということ,である。
2.IAEA福島事故報告書
「想定外」否定 刑事責任に影響も(東京 2015.6.12)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/kakushin/list/CK2015061202000167.html
(一部抜粋)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
国際原子力機関(IAEA)が作成し、理事会で議論された東京電力福島第一原発事故の最終報告書。福島第一を襲った巨大地震や大津波は「想定外」だったとする東電と国の主張を真っ向から否定し、対策を怠ってきたことを強く批判しているのが特徴だ。今後、東電幹部への責任追及や、各地の原発訴訟に影響を及ぼす可能性もある。
(中略)巨大な自然の力の前では人間の力は小さい。危険と隣り合わせの核分裂を伴う以上、原発には故障や運転ミスだけではなく、地震や津波、洪水などに対しても万全の対策が求められる。それでも対策は突破され、重大事故は起き、最終的には周辺住民を避難させ放射能から守るしかない事態も想定した対策が不可欠。これが「深層防護」と呼ばれるIAEAの基本的な考え方だ。
報告書は、福島第一の対策は、巨大地震など可能性は低いものの、襲われれば脅威となるものを十分に考慮せず、重大事故が起きる可能性や、外部支援が難しい状況を想定していなかったと結論づけた。
(中略)事故発生当時、東電も国も大津波は「想定外」を連発した。だが、報告書はマグニチュード(M)9クラスの地震が太平洋各地で起きているほか、建屋地下の非常用発電機や配電盤には水没の危険があると警告するような事態が国内外で何度も起きていたことを紹介。にもかかわらず、東電などは十分な対応をしなかったとし、「想定外」を否定した。
(中略)(東京)地検は事故当時、今回のような巨大な地震や津波を予測できる知見はなく、津波は想定を大きく超えていたため、機器の高台移転や建物の防水化などでは事故の回避は困難だったと結論づけた。IAEAの指摘を受け、地検の判断の適否があらためて問われる。
(中略)原発事故で避難生活を余儀なくされたなどとして、福島や東京、名古屋など十八地裁・支部に計八千二百人が国家賠償を求める訴訟を起こしている。これらの訴訟でも国側が津波を予測できたかどうかが焦点になっており、報告書が新たな判断材料の一つになることも考えられる。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(田中一郎コメント)
この記事はよく書けています。必読です。
3.IAEA福島原発事故最終報告書、国・東電の安全神話指弾(東京 2015.6.12)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/feature/nucerror/list/CK2015061202000214.html
(田中一郎コメント)
この記事も必見です。今年の新聞報道大賞に推薦したいですね。上記サイトに全文が掲載されています。
4.原発事故教訓 共有化が責務、IAEA理事会、福島報告書討議で日本(福島民報 2015.6.11)
(このあやしげな新聞社は,この記事をネット上で公開しておりません。おかしな話です)
草々
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