福島第1原発事故被害者の切捨てを画策し始めた自民党・政府、そして福島県庁、これは明らかな国家犯罪だ、が更に、新たな責任回避を「制度化」せんとする原子力ムラの厚顔無恥
前略,田中一郎です。
(別添PDFファイルは一部を除き添付できませんでした)
今月(2015年5月)中旬、福島第1原発事故の被害者に対する重大な人権侵害政策が検討されていることが大きく報道された。別添PDFファイル、及び下記URLはその関連の情報である。その一つは、いわゆる「自主避難者」に対する住宅支援の打ち切りであり、もう一つは、原発事故被害者に対する賠償の打ち切りである。信じがたいことながら、こうしたことが、厚顔にも破廉恥にも、福島第1原発事故の責任者でもある日本政府及び自民党と、福島第1原発事故後、終始一貫して県民の命と健康と生活を守らずに、政府・原子力ムラの手下となって県民に放射線被曝を押し付けつつ、政府から交付される復興資金による利権・土建事業への「タカリ」行為を続ける福島県庁である。
福島県を本当の意味で復興させるためには、何よりも、その復興を担う人間=県民が復興されなければならないことは自明のことである。また、その場合に、福島第1原発事故でひどく放射能に汚染された地域からは、住民を避難・疎開・移住させ、万が一にも命や健康に支障が出るようなことがあってはならない。そのことを最も重視する基本方針の下で、まずもって原発事故で全てを奪われてしまった被害者の方々が経済的に追い詰められたり、精神的に苦境に陥ったりすることがないように、すみやかに万全な賠償・補償が実施されるとともに、従前の生活・くらし、仕事や家業、教育・子育てなどが,被害者の方々の意見や意向が十分に反映された形で様々な政策的支援をもって復旧・復興されなければならないはずである。「子ども・被災者支援法」は、そういう基本的な考え方に基づきながらつくられた法律である。
しかし、事態はほんとうに情けないくらいに出鱈目の展開を見せ、日本の政治に寄生するゴロツキ・ゴキブリ政治家どもによってメチャクチャな状態に陥りつつある。国会で全会一致で可決されたはずの「子ども被災者支援法」は,とうの昔に棚上げにされてしまって,法の主旨とは違う勝手な基本方針が霞が関の背信官僚達によって策定された。多くの原発事故被害者が路頭に迷い、あるいは粗末な仮設住宅に長期間にわたり閉じ込められ、将来への展望も希望も見失って、悲しい苦しいつらい状態に陥れられてしまっているのである。家族や地域のコミュニティが引き裂かれ,被ばくによる健康への懸念が日増しに大きくなり,収入の途絶ないしは大幅減少により生活苦も襲いかかる。原発事故が起きる前は、原発には事故がないかのごとき嘘八百の安全神話を流布して地域住民をたぶらかし、さんざん自分たちの原子力推進に利用しておきながら、その原発が、いい加減な安全管理が原因で大事故を起こすや否や、今度は、それによって被害を受けた方々を、「費用が掛かりすぎる」「財政負担が大変だ」などといった理由から、全く不誠実にも理不尽にも、はした金と交換に切って捨てようというのだ。こんなことが、人間として、人間社会のこととして、法治国家の出来事として、許されるはずもない。原発事故被害以外の場合には、それぞれ相応の賠償・補償や被害者支援がなされているというのに、何故、原発・原子力についてだけは、かような無法極まる暴挙が許されるのか。
以下、可能な限り簡潔に、この福島第1原発事故被害者切り捨ての問題を下記にまとめ、日本社会への告発メールとしたい。私たち東京に住む者も福島第1原発事故の被害者であり、また、無用の被ばくを強要され、かつ今も引き続き被曝させられている被害者だが(福島第1原発からは今も放射能が放出されていることに加え、既に環境放出された放射能によって、主として継続的な内部被曝を余儀なくされている=二次被害)、しかし、幸いにして東京は福島第1原発から少し距離が離れていたことにより、深刻な被害に陥ることはなかった。しかし、だからこそ、上記で申し上げたような、福島第1原発事故で深刻な被害を受けられた方々(福島県民だけではなく、その周辺の県の住民の方々も含む)に対するあまりにひどい仕打ち=政府や自治体による人権侵害行為に対して、「やめろ」「きちんとしろ」「被害者の方々を完全救済せよ」の声を上げていくことは、同時代を生きる人間として、同じ国の国民として、良識を持つ人間としての道であり,義務であり,使命であり,倫理・道徳ではないかと思う次第である。
聞くところによると、福島県をはじめ東日本の汚染地域から他の都道府県へ避難された方々に対して、民間ベースでの自主的な救済の手を差し伸べるのではなく、福島第1原発事故責任者の政府や、愚かで無責任な自治体の意向を背景にして、いわゆる被害者いじめ・被害者バッシングをする大馬鹿者が少なからずいるという。これも信じがたい話だが、故中沢啓治著の漫画「はだしのゲン」に描かれる「非国民よばわり」を続ける「民衆」「大衆」を思い出すと、さもありなん、とも思われる。日本という国は,古来の悪癖とも言うべき「頂点同調主義」「無限の同調圧力」「ムラ社会体質」のようなものが根強く残り、結果的には自分で自分の首を絞めるようなことになっているにもかかわらず、まるで「原子力翼賛社会」のごとく、原発事故で追い詰められた人々に対して鞭打つ大馬鹿者が絶えないようだ。この国は、政府や権力の歪みが、民衆によって増幅されるという重大な欠陥を抱えている。
しかし、被害者の方々を含め、私たちには望みも希望もあるし、それを具現化せんとする大きな動きも出始めた。既に、福島第1原発事故で深刻な被害を受けた方々が、あまりの理不尽で無責任で自分勝手で冷酷極まる政府や自治体の対応に対して,怒りをもって損害賠償請求に立ち上がる、大きなまとまった動きが目立ち始めている(いわき市、浪江町、飯館村、南相馬市など)。更に,さる5月24日には、「原発事故被害者団体連絡会(ひだんれん)」の設立総会が成功裡に開催され多くの人々が参集した。被害者の方々は、苦境を乗り越えるべく、手をつなぎ、肩を組み、お互いを励ましあって、この21世紀最大級の人権侵害事件=国家権力犯罪に対して「NO」を申し立て始めている。その人数は既に1万人を超えた。今後1000万人規模による巨大損害賠償訴訟によって,福島第1原発事故での一人の「泣き寝入り」も許さない、完全完璧な被害者の救済が強く望まれる。そして,これからこれを実現していくことが、私は最も大事な私たち同時代に生きる有権者・国民・市民の課題であり責任ではないかと思っている。何故なら、危機にある日本を救うための脱原発は脱被ばくと表裏一体であり、その脱被ばくのためには被害者が完全に救済されなければならないからだ。脱原発と脱被ばくと被害者完全救済は、まさに三位一体なのである。
<別添PDFファイル>
(1)自主避難 住宅提供終了へ、福島県調整 16年度で(朝日 2015.5.27)
(2)自民復興5次提言 原発慰謝料18年3月終了 避難指示は17年に解除(東京 2015.5.22)
(3)自民「18年に賠償打ち切り」提言 消えぬ不安(東京 2015.5.25)
(4)原発営業賠償を延長、2017年2月まで一括払い(福島民報
2015.5.19)
(5)賠償の底流 第3部課税
その1,その2(福島民報 2015.5.17.18)
(6)賠償の底流 第3部課税
その3,その4(福島民報 2015.5.19,20)
(7)原発賠償見直し 初会合、結論は越年(毎日 2015.5.22)
(8)原発被害 救済続けて、国会へ署名12万筆(東京 2015.5.27 夕刊)
(9)(ちらし)南相馬・避難20ミリシーベルト基準撤回訴訟支援の会にご参加を!!(2015年5月)
(10)(参加申込用紙)南相馬・避難20ミリシーベルト基準撤回訴訟支援の会(2015年5月)
1.今般打ち出されようとしている「福島第1原発事故被害者切り捨て」
内容は2つ:(1)いわゆる「自主避難者」への災害救助法にもとづく避難先での住宅支援の「打ち切り」と、(2)福島第1原発事故被害者(但し「避難指示解除準備区域」と「居住制限区域」の住民について)に対する精神的損害賠償(慰謝料)の打ち切りと、反対が多くて一旦引っ込めた「営業補償」の終了の示唆(賠償・補償の「打ち切り」)、の2つの「打ち切り」である。
(その1):自主避難 住宅提供終了へ、福島県調整 16年度で(朝日 2015.5.27)
http://www.asahi.com/articles/ASH5J5H83H5JUTIL00M.html
(一部抜粋)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
東京電力福島第一原発事故後に政府からの避難指示を受けずに避難した「自主避難者」について、福島県は避難先の住宅の無償提供を2016年度で終える方針を固め、関係市町村と調整に入った。反応を見極めた上で、5月末にも表明する。故郷への帰還を促したい考えだ。だが、自主避難者からの反発が予想される。原発事故などで県内外に避難している人は現在約11万5千人いる。このうち政府の避難指示の対象外は約3万6千人。津波や地震の被災者を除き、大半は自主避難者とみられる。
県は災害救助法に基づき、国の避難指示を受けたか否かにかかわらず、避難者に一律でプレハブの仮設住宅や、県内外の民間アパートなどを無償で提供している。期間は原則2年だが、これまで1年ごとの延長を3回し、現在は16年3月までとなっている。今回、県はこの期限をさらに1年延ばして17年3月までとし、自主避難者についてはその後は延長しない考え。その際、終了の影響を緩和する支援策も合わせて示したいとしている。国の避難指示を受けて避難した人には引き続き無償提供を検討する。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(その2)自民復興5次提言 原発慰謝料18年3月終了 避難指示は17年に解除(東京 2015.5.22)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2015052202000117.html
(一部抜粋)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
自民党の東日本大震災復興加速化本部(額賀福志郎本部長)は二十一日、総会を開き、震災からの復興に向けた第五次提言を取りまとめた。東京電力福島第一原発事故による福島県の「避難指示解除準備区域」と「居住制限区域」の避難指示を二〇一七年三月までに解除するよう正式に明記し、復興の加速化を政府に求めた。賠償では、東電が避難指示解除準備区域と居住制限区域の住民に月十万円支払う精神的損害賠償(慰謝料)を一八年三月に一律終了し、避難指示の解除時期で受取額に差が生じないようにする。既に避難指示が解除された地域にも適用するとした。
(中略)また一六年度までの二年間、住民の自立支援を集中的に行うとし、商工業の事業再開や農業再生を支援する組織を立ち上げる。その間、営業損害と風評被害の賠償を継続するよう、東電への指導を求めるとした。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(関連)自民「18年に賠償打ち切り」提言 消えぬ不安(東京 2015.5.25)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/tokuho/list/CK2015052502000170.html
(関連)原発営業賠償を延長、2017年2月まで一括払い(福島民報
2015.5.19)
(関連)福島原発事故の被害補償に関連する記事一覧 - Yahoo!ニュース
http://news.yahoo.co.jp/related_newslist/fukushima1np_compensation/
2.被害者がいかに苦しめられているかの事例(福島民報「賠償の底流
第3部課税」より)
「所得税や法人税などの申告・納付の延長措置が(2015年)3月末で切れた」で始まるこの特集記事、読んでみると、胸が悪くなるくらいに、この国の税制のひどさが見て取れた。福島第1原発事故の被害者(今のところ物損被害,これから健康被害が追いかける)に対してろくすっぽ賠償・補償も再生支援もしないのに、税金だけはなんだかんだと言って取り立てる。福島第1原発事故によってすべてを奪われてしまった人たちは、これでは生きていくことができないではないか(被害者への賠償金に課税するとはいかなることぞ。常識的に考えても、被害という「税法上の損害」と差引されて、課税所得はゼロというのが常識的な判断ではないか)。他方では、加害者側にいる大企業・大資本や財界人たちは海外のタクス・ヘイブンなどを使って税金をほとんど納付していない。日本の国税当局は,税金を取り立てる相手を間違っているのではないのか。また,政治家どもは,何故,特別立法で被害者救済のための税制特例法を制定しないのか。
(その1)賠償の底流 第3部課税
その1,その2(福島民報 2015.5.17.18)
(1)https://www.minpo.jp/news/detail/2015051722849
(2)http://www.minpo.jp/pub/topics/jishin2011/2015/05/post_11781.html
(その2)
(3)http://www.minpo.jp/pub/topics/jishin2011/2015/05/post_11783.html
(4)http://www.minpo.jp/pub/topics/jishin2011/2015/05/post_11785.html
(関連)「賠償の底流-東京電力福島第一原発事故」アーカイブ 東日本大震災 福島民報
http://www.minpo.jp/pub/topics/jishin2011/2014CompensationNA/
3.原発・核燃料施設の過酷事故賠償制度の見直し
原発・核燃料施設の過酷事故に伴う賠償・補償責任や、除染、あるいは廃炉の財務負担に耐えられない原子力ムラが画策している原発事故「賠償制度の見直し」とは、まさに「無責任の制度化」=倍賞・補償や除染・廃炉の費用は国庫負担とし、事故を起こした原子力産業=電力会社等の負担は「有限」=つまり上限金額を設けて、それ以上の負担がかからないようにする、ということのようだ。この似非専門家会議は、そのための屁理屈探しの委員会となりそうである。
●原発賠償見直し 初会合、結論は越年(毎日 2015.5.22)
http://mainichi.jp/shimen/news/20150522ddm008010154000c.html
4.知っておいていただきたいこれまでの簡単な経緯
(1)福島第1原発事故での住民対策で最優先されたのは、事故の実態隠しと放射能の危険性の隠蔽である
連日のようにTVに登場していた原子力ムラの無能なインチキ似非学者たちは、口をそろえて「大丈夫」「心配ない」を繰り返し、すでにメルトダウン状態にあった福島第1原発事故の実態隠しを続けていた。もちろん政府の黙認の下でである。一方、原子力安全委員会は斑目(でたらめ)春樹原子力安全委員長以下、福島第1原発の水素爆発を見て「あわわわわわ・・・」と腰を抜かしてしまい、他方で、原子力安全保安院や経済産業省は真っ先に福島第1原発事故の現場から逃げ出して避難をしていた。東京電力も首相官邸からの強い制止を無視し、一時福島第1原発現場での事故後対応を放棄して、現場作業員を福島第2原発に撤退させていた。
また、真っ先に放射能から守られるべき住民の命と健康も、ご承知の通り、巨額の費用をかけて開発されたSPEEDI情報の隠蔽・非公開(放射能の拡散予測は計算されていたし、在日米軍(真っ先に報告した相手)や福島県庁など、複数の部署や組織にはその結果が伝えられていた)、ヨウ素剤の配布・服用は指示されず、あるいは妨害し(県民を守るべき立場にある福島県立医大では家族を含む自分達だけでヨウ素剤を服用していた)、初期被ばく検査の意図的サボタージュや妨害、放射線防護措置の放棄ないしは手抜き、環境放射能測定のサボタージュないしは隠蔽などなど、住民に放射能汚染の深刻な状況を知らせまい・危険性を悟られないことが最優先にされ,事実上,後回しにされてしまっていたのである。原発・原子力が地域住民や国民のためのものではないことがこの原発事故ではっきりし、原子力ムラ連合の反国民性も明らかとなり、原発・原子力が国家滅亡・故郷壊滅をもたらす超危険物であることも明白となった。
(2)賠償負担の抑え込み・圧縮・切捨ては福島第1原発事故直後の「避難指示」の時から最優先されてきた
福島第1原発事故の深刻化に伴い、周辺住民の避難指示が出されたが、その特徴は、事故後の賠償負担をにらみ、それを極力抑え込み、圧縮・切捨てすることを念頭に置いた,きわめて不十分かつ不適切なものだった。まず第一に、避難指示の範囲が狭すぎる・小さすぎるため、深刻な放射能汚染状態にある地域が「避難指示されない」ままに放置され、その結果その地域は、損害賠償・補償の対象外地域とされた(中通地方や南相馬市など)。第二に、避難指示が遅く、かつ,その避難指示を情勢の後追いで小出しにしたため、住民は無用の大量被ばくをさせられてしまった(飯館村など)、第三に、避難指示区域は「一つの一律的な区域」とすればいいものを、下記のように、わけのわからぬ官僚用語をくっ付けて「細切れ」の分断区域にされてしまった。後日、住民が賠償・補償を求めて統一的な動きがとりにくいよう「分割し統治せよ」が文字通り実践された。
<福島第1原発事故に伴う旧避難区域の区分=再編前>
●「警戒区域」(20km圏内:強制避難)
●「緊急時避難準備区域」(20~30kn圏内:屋内退避・20mSv/年未満)
●「計画的避難区域」(20km圏外で20mSv/年以上)
●「特定避難勧奨地点」(20km圏外で20mSv/年以上)
注1:アメリカ政府は福島第1原発の80km圏を避難指示区域に指定し、自国民にその圏外に退去するよう勧告を出していた。
注2:「特定避難勧奨地点」がひどいのは、地点指定が個別の家屋ごとになされるため、同じ地域にあって、同じような汚染状態にあっても指定される家とされない家が出ていること、加えて、放射能汚染の測定の仕方が出鱈目で(マニュアル違反)、放射能汚染の実態とは違うインチキの測定結果で判断がなされている点である。また、昨年12月に住民一同の強い反対を押さえつけて南相馬市の「特定避難勧奨地点」が解除されたことにより、全ての「特定避難勧奨地点」の解除が終わったが(他に伊達市や川内村)、実際の現場はひどい放射能汚染のままに放置されており、あまりに理不尽な措置に対して、住民からは地点解除撤回と賠償の提訴がなされている。
<避難指示区域の再編後>
●「帰還困難区域」(年間50mSv超)
●「居住制限区域」(年間20超~50mSv以下)
●「避難指示解除準備区域」(年間20mSv以下)
注:田村市都路地区や川内村などが避難指示区域再編を経て避難指示区域解除となった。避難指示が解除されると、その地域の放射能汚染や生活基盤整備や営業基盤回復の実態如何にかかわらず、精神的賠償(毎月10万円)が解除後1年間を経過したのちに打ち切られる。
(3)役に立たなかった原子力損害賠償法
電力事業者への賠償責任の集中によって、原子炉・原発メーカーを免責してしまっている、この「原子力ムラ保護法」は、原子力損害賠償遂行の法規制としても全く有効に機能しなかった。肝心要の被害者に対する賠償責任履行の財源となるべき「原子力損害賠償責任保険契約、及び原子力損害賠償補償契約」は、いずれも金額が小さく(1200億円)、福島第1原発事故のような原発・核燃料施設過酷事故に対しては金額的に全然不足していて、全く無力・無意味である。言ってみれば、日本の原発・核燃料施設は、福島第1原発事故の前も後も、その過酷事故(シビア・アクシデント)発生リスクに対する損害保険費用を払わないまま、偽りの原発コスト安価の「見せかけ」の上で稼働され推進されているわけで、その結果としての損害負担踏み倒しの「ツケ」は、すべて原発事故被害者に一方的に押し付けられているのである。ゴロツキ・ゴキブリ政治家たちが約束した原子力損害賠償法の抜本見直しが始まったけれども、その状況は上記「3.原発・核燃料施設の過酷事故賠償制度の見直し」のとおり、あきれることか、反国民性をより一段とひどくする方向で、原子力ムラの無責任をさらに助長する形で,まさに「原子力ムラ焼け太り」の形で、この原子力損害賠償法が見直しされようとしている。
(関連)原子力損害賠償法
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S36/S36HO147.html
(4)賠償・補償の「瀬戸際政策」
原発の過酷事故被害に関する損害賠償・補償であっても、他の賠償・補償事件と基本的な考え方は変わらないはずである。要するに、被害が出ていれば、全て賠償・補償されなければならないし、被害の金額は、その賠償される被害に応じて、それが完全に償われるだけの金額でなければならない。原発事故で被害者の方々が何らかの負担を負わねばならないというのは許されず、負わされた負担はすべて償われなくてはいけない。精神的被害への賠償(慰謝料)も、悪質な交通事故被害の際に支払われる金額以上のものが支払われなければいけないし(先祖代々の故郷喪失に対する慰謝料)、営業補償についても、原発事故前の状態に戻るまでの間、その減収分については満額支払われなければいけない。もちろん実際に支払われるのが遅くなれば、電力料金遅延損害金と同じ利率(10%)の遅延損害金付で、加害者・東京電力から徴収する必要があるのである。
しかし、福島第1原発事故後は、そうはならなかった。まずもって、原子力損害賠償法を根拠にして「原子力損害賠償紛争審査会」なるものが、世にいう御用学者ばかりを集めて設置され、そこで下記のような「損害賠償指針」なるものが策定された。複数回にわたって答申されているが、いずれもひどい内容で、簡単に言えば、原発事故による被害・損害の「踏み倒しマニュアル」のようなものである。その2011年8月に公表された「中間報告」には次のような驚くべき記載がある。
「また、原賠法における原子力損害賠償制度は、一般の不法行為の場合と同様、本件事故によって生じた損害を塡補することで、被害者を救済することを目的とするものであるが、被害者の側においても、本件事故による損害を可能な限り回避し又は減少させる措置を執ることが期待されている。したがって、これが可能であったにもかかわらず、合理的な理由なく当該措置を怠った場合には、損害賠償が制限される場合があり得る点にも留意する必要がある。」(被害者から見ても、また私たち一般の有権者・国民・市民からみても、かような記載は「ふざけるな!!」ではないか。「原子力損害賠償紛争審査会」の「正体」をいみじくも現した記述と言える)。
その後も、この「原子力損害賠償紛争審査会」の御用委員たちは、被害者救済のために何の働きも機能も発揮することなく今日に至っている。この反被害者・反国民の態度をとって居直り続けている「原子力損害賠償紛争審査会」は、ただちに解散されなければならないし、そもそも政府の原子力推進政策の総本山である文部科学省(旧科学技術庁)が、こうした原発事故の損害賠償の所管をしていること自体が「利益相反」そのもので不当である。文部科学省から原発事故損害賠償の所管を切り離せ。
(関連)原子力損害賠償紛争審査会:文部科学省
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/kaihatu/016/
(関連)東京電力株式会社福島第一、第二原子力発電所事故による原子力損害の範囲の判定等に関する中間指針(平成23年8月5日)
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/kaihatu/016/houkoku/1309452.htm
肝心の被害者に対する東京電力の賠償・補償については、手続き情報の案内が不親切で、かつすべての被害者に行き届いていない、手続きが煩雑すぎる(書類整備等)、時間がかかりすぎる・意図的に遅らせている、そもそも多くの場合屁理屈を付けて支払わないし、支払っても満額払わずに値切る、など、さまざまな苦情が寄せられている。また,賠償・補償をめぐる裁判などでは,福島第1原発事故で環境に放出された放射能は,もはや誰のものでもない「無主物」であるから,放出元の自分達東京電力はこれに対して責任を持たないなどとうそぶき,自分達の原発事故による加害責任=汚染者負担の原則の否定を平然と主張してみせる厚顔ぶりを発揮している。
今現在進められている東京電力による福島第1原発事故の賠償・補償で,最大の問題というか理不尽なことの一つは,いわゆる避難指示区域以外の放射能汚染地域に居住していた被害者への対応である。こちらは避難指示区域とは違い,精神的被害については,1人一律,たったの8万円(妊婦・子どもは40万円,のち60万円に増額)が1回限り支払われるのみで,あとは個別事情に応じて原発事故が原因の費用増加に対して,加害者・東京電力の判断に基づき是々非々で賠償が行われている(許されない「利益相反行為」である)。しかも,避難指示区域以外の地域から放射能汚染・被ばくを避けて避難している被害者に対しては,「自主避難者」などという失礼極まりないワッペンを張り付けて,「必要もないのに放射能を過剰に恐れている非科学的な人間」という,いわれなき差別的・偏見的ニュアンスを含みながら,ほとんど何の支援もサポートもされないまま,まるで棄民であるかのように放置されているのである。何という国なのか,何という自治体か。そして,この方々に唯一に近い,災害救助法という原発事故に特定されない一般法を根拠にした避難先での住宅支援が,このほど「打ち切り」の検討俎上に挙げられたというのである。
なお,避難指示区域以外の被害者に対する営業保障については,賠償・補償の適用が極めて理不尽で範囲が狭く,金額も小さく,報道などでは,わずかに農林水産業と観光業くらいが,不本意な金額で東京電力から賠償・補償を受けている程度である。原発事故により勤め先が倒産したり廃業したり長期休業したりした場合の「休業補償」も,少し前に打ち切りとなってしまったようである。これでは,避難指示区域以外にたくさん存在している深刻な放射能汚染地域に住む人々は,危険な恒常的な低線量被曝(外部被爆・内部被曝)をし続けるか,路頭に迷うかの選択しかできない,非常に理不尽かつ重大な人権侵害状況に置かれていると言える。
もう一つの大きな理不尽・不合理は,原発事故による損害賠償の中でも,最も金額が大きくなる不動産等の賠償については,原子力損害賠償紛争審査会が指針を出すのではなく,東京電力と経済産業省が談合しあってその基準を決めたというから驚きである。言ってみれば,加害者が被害者に対して,お前の財産の価値はこんなものだ,と申し送りするようなものである。しかし,これほど下劣かつ醜態極まる「利益相反」行為に対しても,原子力損害賠償紛争審査会は素知らぬ顔をし,福島県庁をはじめ原発事故被害自治体からもさしたる異議申し立ては出ず,被害者からの異議は無視されて,かような出鱈目な損害賠償がまかり通っているのである。
(関連)東電からの賠償について - yamagatahinanhaha ページ!
しかし、東京電力の大株主であり監督官庁でもある政府は、この状態をいつまでたっても改善しようとはせず、むしろ、放射能汚染地域への住民の帰還を促す効果もあるなどと評価して、その改善のための手を打とうとしないのである。いわば、加害者・東京電力の原発事故賠償踏み倒し行為を、陰ながら歓迎し、応援している様子さえ見受けられる。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
●「賠償・補償・再建支援:5原則+α(同時代に生きる人間としての使命・倫理)
賠償・補償・再建支援が全く不十分で出鱈目=21世紀最大の人権侵害事件
賠償・補償・再建支援がきちんとならないと被害者はいつまでも救われない
(1)全ての被害者の全ての被害・損害が何の留保条件を付けられることなく全額賠償または原状復帰されること(逸失利益含む)
(2)全ての被害者の生活及び経営が再建されること(費用,段取り,その他の負担のすべてを加害者が負うこと)
(3)上記②の再建が確認できるまでの間,全ての被害者の生活及び経営を補償すること
(4)2011年3月11日以降,上記の賠償・補償・再建費用が実払いされるまでの間,電気料金遅延にかかる「遅延損害金」と同利率(10%)の「遅延損害金」が被害者に支払われること
(5)悪質な交通事故被害の場合以上の慰謝料(迷惑料)が被害者に支払われること
(6)(+α)被害者の被害は「お金」に変えられないものも多い。その部分を加害者・東京電力(及び原発メーカー)や事故責任者・国が万全にフォローすること
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(5)原発ADRと「原子力損害賠償紛争解決センター」のインチキ
原発事故の損害賠償・補償の問題を裁判で解決しようとすると、原告側=被害者側に大きな経済的・心理的負担がかかるので、できるだけ速やかに簡潔に事態の解決を図るべく、被害者と加害者・東京電力とが話し合いでこの問題を解決できるようにと設けられた「損害賠償に関する仲裁機関」が、この原発ADRを所管する「原子力損害賠償紛争解決センター」である。
発足当初は期待されたが、時間が経過するにつれて、だんだんと被害者救済のためとは思えないようなADR対応が目立ち始め、今では被害者救済=倍賞・補償の完全履行に対して、さしたる付加価値のある機能を果たしているとは言えない状況になっている。このことについては、少し前の毎日新聞が「ゆがんだ償い」という特集記事を組んで、その歪みきった実態を告発する記事を掲載した。簡単に言えば、原子力損害賠償法や「原子力損害賠償紛争審査会」、「原子力損害賠償紛争解決センター」を所管している文部科学省が、裏で陰に隠れて、原子力損害賠償や原発ADRが十分には機能しないように=言い換えれば、賠償金額が可能な限り小さくなるように(交通事故等の場合の損害賠償額の半額以下へ)様々な形で現場に干渉をし、あるいは被害者を切り捨ててしまうよう、上から権力的にふるまっていたことが暴露された。
(関連)(毎日新聞)ゆがんだ償い:切り捨てられる原発被害者=その背後でうごめいていたのは文部科学省(下村博文文相)と自民党政権だった
いちろうちゃんのブログ
http://tyobotyobosiminn.cocolog-nifty.com/blog/2014/10/post-c237.html
(6)被害者を切捨て加害者を救済するスキームである「原子力損害賠償支援機構」
上記で見たように、福島第1原発事故の被害者である東日本の地域住民に対して、きちんとした賠償・補償を行わないまま、加害者・東京電力を事故責任者の国(菅直人民主党政権)が、下記の原子力損害賠償支援機構(今は廃炉事業が合体されて「原子力損害賠償・廃炉等支援機構」となっている)を設立して、事実上救済し、青天井の損失補てんと実質的な賠償・補償資金の拠出、及び除染や廃炉費用の負担肩代わりを実施している。加害者・東京電力に巨額出資をして最大の大株主となった政府は、東京電力に対しては、経費削減と徹底した合理化をさせるとともに、国が肩代わりした費用については超長期の期間をかけて、すべて国に返済させるとしているが、怪しい限りである。既に、放射能汚染ゴミの中間貯蔵施設は国庫負担(約1兆円)で建設されることになっているし、廃炉費用についても、今後いかほどの費用がかかるのか、見当もつかない状態である。損害賠償についてもしかりである。
本来は福島第1原発事故を引き起こしたことにより、事実上破たん会社となった東京電力は、一旦会社更生法を適用して破綻会社として整理し、少なくとも株主や大口債権者に応分の負担をさせて負債サイドを身軽にし、かつ減資も行い、しかる後に政府の管理会社として復活させるべきなのである。それをしないで、事実上、当事者能力も喪失してゾンビ状態にある東京電力に、ずるずると巨額の税金の投入を続けて、半ば死に体のまま組織と経営を存続させることが、必然的に東京電力と電力業界他社の経営陣にモラル・ハザードを生み出し、それが日常の原発管理の手抜きやずさんさ、あるいは安易軽率な原発再稼働への道につながって、次の過酷事故を用意していくのである。
東京電力には直ちに会社更生法を適用して、その負の遺産・巨額負債を、それぞれの債権者や株主の負担で整理・処分すべきである。そして、しかるのちに、発送電分離や地域独占解消のための発電部門や小売部門の会社分割・分離独立など、東京電力があまりに巨大・強大であることの害悪を取り除き,電力の消費者・ユーザーが自由に電力を選択できる,適切に管理された競争条件の整った新たな時代の電力供給体制を,他の地域に先駆けて創設していくようにしなければならない。
(関連)ウィキペディア 原子力損害賠償・廃炉等支援機構
(関連)原子力損害賠償・廃炉等支援機構 HP
5.被害者の団結・絆の構築,そして人間としての尊厳と暮らしを取り戻す闘いの立ち上げ
それぞれ別添PDFファイル,及び下記のサイトをご覧下さい。
(1)5.24「原発事故被害者団体連絡会」(ひだんれん)設立集会
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150525-00000018-khks-l07
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150524-00000036-mai-soci
(関連)【ライブ配信】24日13時〜原発被害者団体連絡設立総会 OurPlanet-TV:特定非営利活動法人
アワープラネット・ティービー
http://www.ourplanet-tv.org/?q=node/1919
(関連)原発事故で全国組織設立 - 「尊厳取り戻すため闘う」マイナビニュース
(関連)原発被害糾弾 飯館村民救済申立団「原発事故被害者団体連絡会設立集会」関連 - kyusaimoushitatedan ページ!
(2)原発被害 救済続けて、国会へ署名12万筆(東京 2015.5.27 夕刊)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2015052702000229.html
http://blog.goo.ne.jp/tanutanu9887/e/a7aba0dbeaa68218b9c258b6d14cdb5c
(関連)原発事故被害者の救済を求める全国運動 - ホーム
http://act48.jp/index.php/2014-01-07-02-41-36.html
(3)(別添PDFファイル)
●(ちらし)南相馬・避難20ミリシーベルト基準撤回訴訟支援の会にご参加を!!(2015年5月)
「minamisouma_tirasi.pdf」をダウンロード
●(参加申込用紙)南相馬・避難20ミリシーベルト基準撤回訴訟支援の会(2015年5月)
(関連)南相馬の地点解除訴訟(20ミリ基準撤回訴訟)支援の会(準備会)
https://www.facebook.com/minamis20wg
(関連)全国の原発事故集団訴訟を闘う皆様へ(南相馬・避難20ミリシーベルト基準撤回訴訟支援の会(略称20ミリ撤回訴訟の会)代表世話人・坂本建)
https://www.facebook.com/minamis20wg/posts/788654951251347
(関連)FoE Japan:ついに提訴へ!南相馬地点解除訴訟(20ミリ撤回訴訟)を応援しよう
http://www.foejapan.org/energy/action/150416.html
(4)「ふくしま集団疎開裁判」
●▶ 20150513 UPLAN 子ども脱被ばく裁判新宿デモ - YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=9kLBVUy71zU
●▶ 20150521 UPLAN 柳原敏夫「子ども脱被ばく裁判-福島の最大の問題を正面から問うた裁判」ほか - YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=bvNW1f_doio
(関連)ふくしま集団疎開裁判の会 活動ブログ 子ども脱被ばく裁判
「子ども脱被ばく裁判」5.23新宿デモ 子どもが「爆弾が埋まっているようだ」と庭に置き去りの除染土50袋のことを言いました。
http://fukusima-sokai2.blogspot.jp/2015/05/52350.html
(関連)「ふくしま集団疎開裁判」ブログ
http://fukusima-sokai.blogspot.jp/
草々
« 総括原価制度に加えて「電源構成変分認可制度(電変)」とかいうインチキの二段重ねで,高すぎる電気代を払わされているのに,原発の電力が一番安いやなんて,何ゆうてはりますのん??? +若干のα | トップページ | 確率論的リスク評価(PRA)を原発・核燃料施設に用いることのどこがおかしいか »
「福島原発事故」カテゴリの記事
- 国や自治体は、被ばく押しつけの「帰還」強制政策をやめ、原発震災被災者を差別・区別することなく、あらゆる方法で支援・救済せよ、加害者・東京電力は何をしているのか(2015.06.17)
- 福島第1原発事故被害者の切捨てを画策し始めた自民党・政府、そして福島県庁、これは明らかな国家犯罪だ、が更に、新たな責任回避を「制度化」せんとする原子力ムラの厚顔無恥(2015.05.28)
- 原発はいい加減な管理をして他人様に大迷惑をかけても、賠償も補償も謝罪もしないのか=踏み倒される原発震災被害者の損害賠償・補償(2015.05.12)
- 原子炉過酷事態時に減圧装置=SR弁(主蒸気逃がし安全弁)は,何故,開かなかったのか(NHK『福島第一原発事故7つの謎』より) :5号機も危機一髪だった!! わからないこと山積みです(2015.05.09)
- (報告)福島第1原発1号機 原子炉建屋4階現場調査報告(田中三彦氏講演会:東電株主代表訴訟 公判報告会)(2015.05.01)
トラックバック
この記事へのトラックバック一覧です: 福島第1原発事故被害者の切捨てを画策し始めた自民党・政府、そして福島県庁、これは明らかな国家犯罪だ、が更に、新たな責任回避を「制度化」せんとする原子力ムラの厚顔無恥:
« 総括原価制度に加えて「電源構成変分認可制度(電変)」とかいうインチキの二段重ねで,高すぎる電気代を払わされているのに,原発の電力が一番安いやなんて,何ゆうてはりますのん??? +若干のα | トップページ | 確率論的リスク評価(PRA)を原発・核燃料施設に用いることのどこがおかしいか »
コメント