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2015年4月 1日 (水)

誰のための個人情報保護法なのか+「青森県小児がん等がん調査事業の報告書」

前略,田中一郎です。

 

(最初に「青森県小児がん等がん調査事業の報告書」です)

●「青森県小児がん等がん調査事業の報告書」(NO.12:2012年3月)

http://gan-info.pref.aomori.jp/public/attachments/article/1894/shounigan.pdf

 

この調査は、上記報告書に次のように書かれていることから、青森県六ケ所村の再処理工場の本格稼働を前に、そこから放出される大量の放射性物質を懸念して、その県民への健康影響が出ないかどうかを確認するために、再処理工場本格稼働前に、いわゆる「自然態」としての小児がんの発生状況を調べておき、これに対して本格稼働後の小児がんの動向を評価しようとしたもの、と考えられます。

 

「青森県小児がん等がん調査事業について

(1)趣旨

六ヶ所村の再処理施殴について、国との連携のもと、再処理施設操業開始前から県内の医療機関を対象として、小児がん等に関するデータを継続的に収集・蓄積し、他のがんデータと併せて総合的な分析・評価を行い、その結果を県民の皆様に公表するものです.

(2)調査の対象

県内に住所を有し、平成121月以降に悪性新生物(がん・肉腫等)と診断された満18歳未満の方.

(3)調査実施時期

平成121月から調査を開始しています.今回の報告では、平成121月から平成2312月までに報告されたデータを集計しています。」

 

なお、青森県六ケ所村の再処理工場は20063月から、いわゆるアクティブ試験が行われ、施設に実際に使用済み核燃料が入れられて試運転がなされたため、そのアクティブ試験の期間中は、大気中に、あるいは太平洋に、猛烈に大量の放射能が放出されました(クリプトン85、炭素14、トリチウム、放射性ヨウ素など)。しかし、試験はうまくいかずに途中で挫折、その後は、青森県六ケ所村の再処理工場はトラブルと不祥事が続き、(幸いにして)止まったままの「不動産」となっております。しかし、短い期間とはいえ、アクティブ試験中には大量の放射能が環境放出されているため、この健康影響についてはどう考えるのか、上記調査事業を担当する青森県庁に聞いてみましたが、試験期間が短いこともあってか、小児ガンの発生状況はアクティブ試験の前後で変わらなかったため、一応、無視できるものとみなしているようです。

 

ところで、上記の調査報告書のP4に「がんの部位別の患者数」の年度別集計が出ていて,調査が始まった平成12年から平成23年までで,「甲状腺およびその他の内分泌腺(甲状腺,副腎など)」でくくられた合計数は31人となっています。このうちのどれくらいが甲状腺ガンなのかは表を見ただけではわかりませんが,私が電話で担当セクションの青森県健康福祉部がん・生活習慣病対策課に電話で聞いたところ,子どもの甲状腺ガンはほとんどありません(直近の年度も入れて15年間合計で数名=3~4名),とのことでした。福島県の子ども甲状腺検査結果とは大きく違っています。「福島県民健康調査検討委員会」は,なぜ,青森県と福島県の小児甲状腺ガンの数字がこんなに大きく違うのか,説明する責任と義務があります。同検討委員会は「放射線被曝の影響は考えにくい」などと言い続けているのですが、放射線被曝の影響を考えないでは説明がつかないでしょう。少なくとも、その可能性は否定することはできず、従ってまた、日本の未来を担う子供たちの命と健康にかかわることですから、念には念を入れて、相応の被ばく防護や体内除染(放射能のないところに移る)を行って、将来後悔しないような対策に全力で取り組む必要があると言えます。

 

しかし、「福島県民健康調査検討委員会」は、それをかたくなに拒否しています。まったくおかしな態度・理不尽極まる対応と言わざるを得ませんまた、国の方も、福島県以外の都県地域での小児甲状腺ガン検査・その他の甲状腺疾患検査や、そもそも18歳で検査をする・しないを区切らずに、全年齢層に対して甲状腺ガン検査・その他の甲状腺疾患検査を行うとか、更には、チェルノブイリ原発事故の際に見られていた染色体の異常、あるいは心筋梗塞等による突然死多発(セシウム心筋症)などを未然に防止するための検査や調査、あるいはまた、内部被曝を正確に推測するための尿検査やバイオアッセイなど、被ばく防護のための各種検査・調査も充実させるべきなのです。

 

この国の、そしてその下請けとなってしまっている自治体の、福島第1原発事故後の放射線被曝防護や被害者対応・対策は、あまりにひどすぎます。

 

(参考)青森県がん情報サービス - 青森県小児がん等がん調査事業報告書

http://gan-info.pref.aomori.jp/public/index.php/s14/c54-001/1894.html

 

(参考)排出放射性物質影響調査について - aomori-hb.jp

http://www.aomori-hb.jp/index.html

 

●原発事故の対応「国ひどすぎる」 松本市長、批判 - ニュース - アピタル(医療・健康)

http://apital.asahi.com/article/news/2015031100022.html

 

(一部抜粋)

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東京電力福島第一原発事故から4年を前に、松本市の菅谷昭市長は10日の記者会見で、政府の対応などを厳しく批判した。

 

除染地域などに住民の帰還を進めていることについて、「特に子どもが、長期にわたって低線量被曝(ひばく)する状況が何をもたらすのか分かっていない。国として今の対応はひどすぎる」と話した。汚染された雨水が大量に海に流れ出している問題は、「こういう状況で、どこぞの総理大臣が『アンダーコントロール』なんてことを平気で言うようなことは、非常におかしい」。

 

 日本の原発事故後、ドイツが全ての原発を2022年に廃止する方針を決めたことに触れ、「日本はどうでしょうか。再稼働の動きは、福島の皆さんから見れば、なんだということになる」と国の姿勢を批判した。(朝日新聞 2015年3月11日掲載)

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(次におすすめ図書のご紹介です)

● 秘密保護法対策マニュアル(巻頭部分のみ)(海渡雄一 『岩波ブックレット』 20153月)

http://www.e-hon.ne.jp/bec/SA/Detail?refShinCode=0100000000000033229233&Action_id=121&Sza_id=B0

 

(活字を見ると逃げ回っている、私と同じタイプのみなさま、この本だけは読んでください。暗黒社会・現代日本を生きるためのマニュアルです。なお、海渡雄一さんには下記の近著もあります。平成の「白虹事件」の舞台裏解説です。「迷走する朝日新聞」=そうです、朝日新聞グループの経営陣・幹部達は、腰が抜けたまま迷走・酩酊して、戦前の戦争賛美の翼賛行為と同じようなことを再び繰り返そうとしている様子です。数日前のTV朝日・報道ステーションにおける古賀茂明さん降ろしもしかりです:田中一郎)

 

● いいがかり 原発「吉田調書」記事取り消し事件と朝日新聞の迷走-『いいがかり-原発「吉田調書」記事取り消し事件と朝日新聞の迷走』編集委員会/編 本・コミック : オンライン書店e-hon

http://www.e-hon.ne.jp/bec/SA/Detail?refShinCode=0100000000000033234843&Action_id=121&Sza_id=A0

 

(ここから本文)

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<(毎日新聞)■注目ニュース■ ベネッセ漏えい 名簿業者を書類送検>

 

 通信教育大手「ベネッセホールディングス」の顧客情報漏えい事件で、警視庁生活経済課は30日、不正競争防止法違反容疑で逮捕・起訴された元システムエンジニアの松崎正臣被告(40)から情報を買い取り転売したとして、東京都江東区の名簿業者「セフティー」の社長(45)と法人としての同社を同法違反(営業秘密の取得・開示)容疑で書類送検した。社長は「営業秘密との認識はなかった」と容疑を否認しているが、同課は起訴を求める「厳重処分」の意見を付けた。東京地検立川支部が刑事処分を判断する。

 

 ベネッセ:名簿業者を書類送検 不正競争防止法違反疑い

 http://mainichi.jp/m/?ntRQHu

 

(田中一郎コメント)

 以前にも私のメールでご案内申し上げております通り、日本の個人情報保護法は、真の意味で個人情報を保護するのが目的ではなく、個人情報を適法だろうが不法だろうが、適切であろうが不適切であろうが、おかまいなしに、個人情報を使って商売や事業・ビジネスをする者たちを保護することが隠された目的となっています。その最も露骨なる法制度の部分が、この「個人情報の第三者取得者」について、ほとんど何の義務も規制も罰則も課せられていないということです。つまり、個人情報を不正・不法に横流ししたものは当然ながら罰せられますが、それを取得したものは、その個人情報について、出所がどこなのかや、それが適切・適法に転売されたものであるのかを、確認する義務もなければ責任もありません。それ故、取得した個人情報が不適切・不法なものであっても「そんな事情は知りませんでした」といえば、原則として無罪放免されるような、そういう法の仕組みになっているのです。

 

 ですから、一方では、ペーパーカンパニーのようなダミー会社を間に入れて、個人情報を管理する人間をそそのかして不正・不法に個人情報を入手し、その後は「知らぬ・存ぜぬ」で、いわゆる「第三者」の手を転々として転売されていったとしても、今の個人情報保護法では法的に手が付けられないことになっています。従ってまた、他方では、この個人情報の売買については、今回のベネッセ事件で見られたように、得体のしれない魑魅魍魎の「名簿業者」がブドウの房のように数珠つなぎにつながり、不正・不法に流出した個人情報にわんさとたかる、そういう状態になっているのです。こんなことは、少しこの業界のことを知っているものであれば容易にわかることですが、この法律を作った役人や政治家や学者たちは、素知らぬ顔をしている、のが現実です。

 

 「知らぬ存ぜぬ」といえば免罪されるって、少し前にもありました。そうです、国から補助金をもらっている会社から政治献金を受けた政治家は、その会社が国から補助金を受けているということを「知らぬ存ぜぬ」といえば、それでOKだということにされています(これは法の解釈としてはおかしいと思いますが、検察は動きませんし、ドアホのマスごみは、この歪んだ法解釈を大宣伝しています)。

 

つまり、自民党や民主党の政治家が創りだす世界や法の秩序は、こうした一部の(特権的)組織や人間の商売や事業が最優先され、それを合理化するために、御用学者を大量動員して、もっともらしい屁理屈やポーズや美辞麗句で飾り立てる、そして事故や不祥事が起きれば「知らぬ存ぜぬ」「不可抗力」「予想困難」などと言い訳をして誰も責任を問われない、そのための「抜け道」も用意してある、そういう「無限の無責任の体系」そのものだということを意味しています。信ずる者こそ背かれる、です。要するに、有権者・国民・市民を馬鹿にしているのです。

 

 今回のこの名簿業者の書類送検も、個人情報保護法違反容疑ではなく、不正競争防止法違反容疑であることにご注目ください。そして、この名簿業者の更に下流=つまり、このベネッセから不正・不法に流出した個人情報を使って商売をした連中=大企業等は、一切、罪を問われることはありません。そのためにこそ、日本の個人情報保護法は制定されているからです。ともあれ、この書類送検された名簿業者が今後どうなるか(私は不起訴処分になるような気がします)、更には、私が上記で申し上げた日本の個人情報保護法の致命的欠陥を、これからロクでもない国会議員どもがきちんと修正・改正するのかどうか、厳しく見ていく必要があります。

 

 個人情報保護法においては、大企業を中心にした個人情報活用ビジネスに対して「あまあま」の法規制を敷いて個人情報を「食い物」状態に放置し、他方では、特定秘密保護法等において、支配権力や大企業・大資本の抱える情報や利権を囲い込んで徹底して保護する、この自民党・民主党のゴロツキあるいは詐欺政治家どもがなす「情報政治」のでたらめが、目に余る時代になってきました。この連中は、今から15年くらい前は、政治はガラス張り=情報公開を徹底しよう=それが政治改革の大きな目標の一つです、などと、TV・新聞・雑誌その他で、やかましいほどに騒いでいた連中です。だまされて、こんな連中に選挙で投票をした、あなたも悪いのです。

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草々

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