(報告)高浜原発運転差止仮処分決定 緊急報告集会(2015年4月17日):田中俊一さん,事実誤認はあなたの方ですよ,そんなことより,再稼働を認可した原発が大事故を起こしたら,どう責任をとるんですか?
前略,田中一郎です。
(別添PDFファイルは一部添付できませんでした)
去る4月17日(金),衆議院第2議員会館多目的会議室において,「高浜原発運転差止仮処分決定
緊急報告集会」が開催されました。当日は緊急な集会であったにもかかわらず,たくさんの人が会場に集まり,熱気のある集会となりました。集会では,今回の福井地裁・樋口英明裁判長による高浜3,4号機の運転差止仮処分決定の判決内容について,原子力規制庁の若い役人たちが招かれ,事前に渡してある質問事項について原子力規制委員会・規制庁としての回答が求められました。しかし,この判決が出ても原子力規制委員会・規制庁の態度や方針は従来と変わる様子はなく,当日の規制庁の役人の回答に対して,多くの集会参加者があきれはて,あるいは怒りを感じ,そして「悶絶」しました。
特に,田中俊一原子力規制委員長の態度の悪さは目に余り,規制当局のトップとしては自分達の判断や評価に対する謙虚さに欠けていて,失格と言えるのではないでしょうか。判決翌日の4月15日の定例記者会見では「この裁判の判決文を読む限りにおいては、事実誤認、誤ったことがいっぱい書いてありますので」(速記録より)などと述べ、判決内容を批判することにより,これを貶めよう,影響力を削いでしまおうと必死のようです。しかし,判決文をよく読むと,事実誤認は田中俊一委員長の方であることが明らかとなっています(愚かにも安倍首相は、事実誤認があると田中俊一が述べていると、国会での答弁でとりあげ,この田中俊一発言を政治利用する始末です)。
裁判でいろいろな観点から高浜原発の再稼働の是非=安全性について検討がなされ,実直な裁判長・裁判官が,それでもなお,安全性が確保されていない故に再稼働はまかりならぬ,との仮処分決定をしたわけですから,本来であれば,事業者の関西電力も,規制委・規制庁も,一旦はこの判決を真摯に受け止め,判決文の中で指摘を受けているさまざまな安全上の弱点や欠点を再度見直し,改めて原発の安全性を堅固なものにする対策や対応の検討を行ってのちに再稼働の判断をし直すべきものです(安全対策を万全にするためには費用が膨大となり,再稼働する意味がなくなる可能性が高いですが)。また,政府や立地自治体(福井県,高浜町)も,安全性の確認も十分にしないまま,まるで政治判断で早々に再稼働を決めてしまっていた暴挙を心から反省をし,改めて関係当事者の安全性の確保の状況を見守るべきです。
しかしながら,信じがたいことに,関西電力は不満たらたらのまま即控訴,原子力規制委員会・規制庁は「訴訟当事者ではないのでコメントする立場にない」(にもかかわらず,田中俊一委員長や原子力規制庁は,判決内容への批判については能弁に記者会見その他で語っています),政府もまた「原発再稼働を粛々と進める」などとして,今回の福井地裁判決がせっかく提起してくれた高浜原発3,4号機の安全上の諸問題を無視してしまおう,いや,「事実誤認だ,非科学的だ,ゼロリスク論だ」などなど,御用学者やマスごみなども動員して,その政治的抹殺を図ろうとしている様子がうかがえます。信じがたい狂気の沙汰であり,また,地域住民や有権者・国民・市民に対する背信行為であり,福島第1原発事故で被害を受けた方々の脱原発の願いを踏みにじるものです。
以下,集会の模様と,その際の資料,及び関連サイトを,簡単なコメント付きでご紹介いたします。
<集会案内:パンフ等>
●(別添PDFファイル)4-17 高浜原発差止仮処分報告集会(東京 衆議院第二議員会館) 原子力資料情報室(CNIC)
<判決文,弁護団声明サイト:判決要旨,判決文,弁護団声明などがアップされています>
●脱原発弁護団全国連絡会 速報:高浜原発仮処分決定!
http://www.datsugenpatsu.org/bengodan/news/15-04-14/
<別添PDFファイル:当日配布された資料(但し,重複を避けるため関連サイトのアップされたものを除く)>
(1)(パンフ)高浜原発運転差止仮処分決定
緊急報告集会(2015年4月17日)
「panfu_takahama34hanketuhoukoku.pdf」をダウンロード
(2)高浜原発3'4号仮処分決定をうけて申立人声明 「山動きたる日来たる」(2015年4月17日)
「mousitatenin_seimei.pdf」をダウンロード
(3)原子力規制委員会・規制庁への質問事項(高浜原発差止仮処分弁護団・申立人 2015.4.16)
「siryou_2.pdf」をダウンロード
(4)高浜原発3・4号機の運転差止決定を受け,基準適合性審査等の中止を求める緊急申入書(申立人・弁護団 2015.4.15)
「siryou_3.pdf」をダウンロード
(5)関西電力への申し入れ書(申立人・弁護団 2015.4.15)
「siryou_4.pdf」をダウンロード
(6)関西電力殿 原子力発電を直ちに取り止め、安全・安心なエネルギー供給を要望します(申立人 2015.4.16)
「siryou_5.pdf」をダウンロード
(7)原子力規制委員長 田中俊一宛 要望書(申立人 2015.4.17)
「siryou_6.pdf」をダウンロード
(8)関連新聞記事 (愛媛新聞(2014.3.29),福井新聞(2015.4.15))
「siryou_7.pdf」をダウンロード
(9)規制委員長「事実誤認ある」:高浜仮処分決定に反論(東京 2015.4.16)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2015041602000137.html
(10)高浜原発再稼働差し止め 菅官房長官 「厳粛」ではなく「粛々」と(東京
2015.4.17)
http://p.twpl.jp/show/orig/HtlLc
<当日の録画:是非ご覧下さい。特に規制庁の発言がよろしくありません>
(1)20150417 UPLAN【悶絶規制庁交渉】高浜原発3号、4号機再稼働差し止め仮処分決定
https://www.youtube.com/watch?v=sfiE6roCGCY
(2)20150417 UPLAN【記者会見・緊急報告集会】高浜原発3号、4号機再稼働差し止め仮処分決定
https://www.youtube.com/watch?v=xoNLgUzqqbo
● 河合弘之映画監督(兼弁護士)の規制庁への質問
上記(1)の1時間6分のところで出てくる「原子力規制委員会・規制庁が原発再稼働を合格をさせた結果,福島第1原発事故のような過酷事故が起きたら,原子力規制委員会・規制庁は,どう責任をとるのですか」という質問は,この原子力推進の口実づくり委員会である原子力規制委員会・規制庁の正体を浮き彫りにする重要な質問です。それに対して原子力規制庁の役人はどう答えたか,VTRをご覧下さい。
● 私の質問
上記(2)の1時間30分のところ,鎌田慧さんの発言の後の会場からの質問・意見の時間で発言しました。よかったらご覧になってみてください。(質問は3つ,①高浜原発再稼働審査の出鱈目や新規制基準の不十分を国会の中でクローズアップして全国の有権者・国民に見えるようにしていただけないか,その際に,弁護団が国会議員のブレインとして背後についていただいて,精緻で鋭い質問をぶつけていただけないか,②原子力規制委員会・規制庁を被告とする裁判を起こせないか(注),③河合弘之映画監督に,この歴史的な名判決である福井地裁高浜3,4号機仮処分判決や,上記の河合弘之映画監督の鋭い質問などを盛り込んだ,第2弾の「日本と原発」の映画をお作り願えないか)
● 原子力規制委員会・規制庁を被告とする裁判提訴と行政手続法について
集会で教えていただいたが,まず,このタイプの行政法裁判は,行政手続法上の異議申し立てをした人でないと原告になれないこと,従って,原告の数が限られてしまうとのことだった。更に,原子力規制委員会・規制庁の場合には,異議申し立てをする先もまた原子力規制委員会・規制庁という,まことにおかしな仕組みにされていて,かつ,その異議申し立て公聴会は完全非公開で,ただ原子力規制委員会・規制庁が「聞き置くだけ」という形式的なもので,しかも,いつまでにそれに対する審判をしなければならないという決まりもないという。なんだこれは,というのが,この行政手続法で定められた訴訟への手続きなのだそうである。まさに主権者たる有権者・国民をないがしろにする,傲慢きわまりない官僚帝国のための行政手続法である。早く国会議員を入れ替えて,かような法律は抜本改正するとともに,今の裁判員制度を刑事事件から,今回のような行政法事件に切り替えて,司法官僚の手から有権者・国民の手に行政法裁判を取り戻す必要がありそうだ。
<関連サイト:その1
田中俊一発言>
(1)<高浜仮処分決定>誤認は原子力規制委員会・規制庁の側 原子力規制を監視する市民の会
http://kiseikanshi.main.jp/2015/04/17/gonin/
(2)高浜原発の運転差止め仮処分~田中俊一委員長の「事実誤認」は2重の意味で事実誤認~元原子力安全委員会参与の滝谷氏より 原子力規制を監視する市民の会
http://kiseikanshi.main.jp/2015/04/16/goho/
(田中一郎コメント)
上記2つのサイトをご覧いただければ,「判決には事実誤認がある」と記者会見した田中俊一委員長の方にこそ,事実誤認があり,かつ,他の言及事項などについては「誤認」を超えて,悪質な判決内容の歪曲と言うか,貶め言論である,ということがわかります。「冷却」設備はBクラスだが,「給水」設備は既にSクラスだと,田中俊一や規制庁の役人は鬼の首でも取ったように「誤認,誤認」と言い立てていますが,使用済み核燃料プールの「給水」か「冷却」かの表現の問題は瑣末な話で,判決文全文のP42~P44にかけてを読み込んでいけば,P44の文章で指摘されている「給水」設備(⇒
田中俊一はこれをBクラスではなく既にSクラスだと指摘して,判決が誤認識だと批判している),の「給水」とは,広義の意味での使用済み核燃料プールを「冷却」する全体の設備のことを意味していることは自明だと思われます。
むしろ,この問題で言えば,河合弘之映画監督(兼弁護士)が今回集会において指摘しているように,裁判において被告の関西電力の説明が悪くて,「給水」設備と「冷却」設備とをしっかり区別して裁判官に説明をしていないことが,こうした表現上のまぎらわしさをもたらしているのであり,責めるのなら裁判官ではなく,被告の関西電力であること,また,使用済み核燃料プールの冷却に関して,給水設備やタンクやプールなどはSクラスで耐震性は高いが,冷却設備についてはBクラスでしかない,というような,耐震強度の違うものをセットしてしまっている設備については,全体としてはBクラスと,低い方に見るのが安全の考え方だと言えるのではないか。たとえば,大地震・大津波の後の過酷事故状態の中で,Bクラスだった冷却設備が破壊され,かつ,水の確保が困難な状態に陥った場合,使用済み核燃料プールは冷却できなくなって,短時間のうちに大惨事になってしまうのではないか。原子力規制委員会・規制庁は,書類のシミのような間違い探しをするのではなく,判決の骨太部分をしっかりと読み取り,自分達の使命である原発の安全性の評価に「スキ」や「見逃し」や「根拠のない楽観」などがないかどうか,しっかりと見直しする作業に着手すべきである。
<関連サイト:その2>
(1)主給水ポンプ
https://www.nsr.go.jp/archive/nisa/word/7/0220.html
(加圧水型原子炉では「復水器で凝縮回収された復水を高圧給水加熱器を経て、PWRの蒸気発生器へ送水するためのポンプのこと」と説明がなされている。これはいわゆる2次冷却系を正常に駆動させるための心臓のような役割を果たすポンプであり,これが破損したらPWR原子炉は炉心の冷却ができなくなる(代替手段として緊急炉心冷却装置(ECCS)があるが,それがあるからといって,この主給水ポンプが脆弱なものでいいということにはならない)。何故,このような重要な設備がSクラスでないのかが理解できない:田中一郎)
(ついでに今回の集会でも議論になった外部電源のことを申し上げておくと,判決は外部電源もまた地震に対して脆弱で,そのことが原発の過酷事故を招く一因になりかねないとしている。実際問題として,福島第1原発事故では,外部電源が地震で決定的なダメージを受けて修復できす,SBO(全電源喪失)を招いてしまった。しかも,この福島第1原発向けに用意されていた外部電源の心臓部にあたる変電所は,それほど古い施設でもないのに,地震による液状化・地滑り・がけ崩れなどが重なるような,とんでもない場所に立地していたことが後日明らかになっている。結局,この変電所を修復するのに丸2年もかかるような,そんなメチャクチャな破壊状態だったという。ちなみに襲った地震は震度「6」クラスで,とりたてて破格に大きい地震だというわけでもなかった。
集会での議論では,外部電源などはSクラスになんか出来っこない,で終わってしまったが,それにしても,Sクラスにできなければ,後は皆同じではなく,もっとまともな場所に立地させて少しでも地震・津波の影響を回避する,そういうきめ細かな外部電源対策が必要なはずではないかと思われる。これは原発が再稼働しなくても,使用済み核燃料プールがある限り,その冷却が必要で,今後も全ての原発・核燃料施設に言えることではないかと思われる:田中一郎)
(2)原発の規制基準、「見直す必要性ない」原子力規制委員長 OurPlanet-TV:特定非営利活動法人
アワープラネット・ティービー
http://www.ourplanet-tv.org/?q=node%2F1903
(3)田中規制委員長の「事実誤認」発言こそ『誤り』との報道を求める 高浜原発運転差止仮処分弁護団が会見
れんげ通信ブログ版-ウェブリブログ
http://rengetushin.at.webry.info/201504/article_11.html
(4)2015-04-15 「新規制基準自体にノーをつきつけた」 高浜原発再稼働禁止の仮処分、何が画期的だったのか~弁護団共同代表の河合弘之弁護士に岩上安身が聞く IWJ Independent Web Journal
http://iwj.co.jp/wj/open/archives/242735
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(関西電力は控訴する構えです。国や規制委・規制庁,立地自治体は判決無視の姿勢です。多くの御用学者とマスごみは,判決のあらさがしに熱中の気配です(たとえば,別添PDFファイルの地元福井新聞(4/15)は実にひどい記事を書いていますし,その記事に出てくる入倉孝次郎とかいう学者もひどいことを言っています)。闘いは続きます。高浜原発3,4号機が危険なのは判決に書かれていることだけではありません。例えば,原発・核燃料施設の集中立地の危険性,あるいは避難計画の実効性の乏しさ,緊急炉心冷却装置(ECCS)が過酷事故時に機能しない,などなどですが,そうしたことも含めて,今後は今回の判決をてこにして,広く全国の有権者・国民に訴えて行く必要があると思われます)
草々
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