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2015年4月24日 (金)

福島第1原発2号機で何が起きていたのか=緊急炉心却装置(ECCS)の機能不全が原子炉破綻の最大原因の一つなのに、何故、誰もこれを語らないのか!!

前略,田中一郎です。

(別添PDFファイルは添付できませんでした)

 

(最初に重要情報を3つばかり)

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1.(新刊書紹介)原発地震動想定の問題点-内山成樹/著 七つ森書館

http://www.e-hon.ne.jp/bec/SA/Detail?refShinCode=0100000000000033224689&Action_id=121&Sza_id=G1

 

(私もまだ目を通していなくて、書店でちらっと立ち見しただけですが、一読に値する書籍のように思いました。現在、原発運転差止裁判で最も注目されている問題の1つである基準地震動についての解説です。全体のボリュームも大部ではなく、活字も比較的大きな字で書かれていましたから、気軽に読める雰囲気です。少なくとも、別添PDFファイルの日経記事(「原発の「基準地震動」」のようなニセモノ記事をしっかり見抜いて批判するリテラシーをつけるためにも、読んでおいた方がいいような気がします:田中一郎)

 

●原発の「基準地震動」、断層や地盤から最大の揺れ計算 不確実さの解釈で差  

 http://www.nikkei.com/article/DGKKZO86061710T20C15A4TJN000/

 

(基準地震動は「最大の揺れ」ではありませんよ。「最大の揺れ」を装っているだけです。だから,わずか数年の間に「基準地震動」を上回る地震が5回も起きるのです:田中一郎)

 

2.川内原発運転差止裁判に関する続報

 下記は『日刊アグリ・リサーチ』という業界誌に掲載されたコラム記事です。保守・反動・御用の牙城のような業界の冊子にこうした記事が載るということは、原発がいかに危なくて忌み嫌われており、かつ、先般の鹿児島地裁の腰抜け裁判長・前田郁勝(いくまさ)らによる判決内容が話にならないほどひどいものであって、万人の理解が得られていないことを、明々白々と示しているものと思われます。

 

(一部抜粋)

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<対照的な二つの司法判断>

 九電川内原発一、二号機の運転差し止めを住民らが求めた仮処分申請で、鹿児島地裁(前田郁勝裁判長)は二二日、訴えを却下する決定をした。関電高浜三、四号機の再稼働を認めなかった一四日の福井地裁(樋口英明裁判長)の仮処分決定とは判断が分かれた▼

 

  川内・前田判決は、住民側が負け続けてきた従来の原発訴訟の流れを汲むもので、国(原子力規制委)や電力会社の言を鸚鵡返しにし再稼働の露払い役に徹したためか、判決後、藤井俊嗣・火山噴火予知連絡会長から、火山学者が規制委の審査に加わっていたとする誤りなど「事実誤認」を指摘されるまで前のめりなものとなった。争点の一つとなった周辺自治体の避難計画についても、「現時点で一応の実効性を備えている」と評価したが、人の生命・財産にかかわる避難計画が「現時点で一応」では困るのではないか▼

 

 一方、高浜判決は、昨年五月の大飯判決を出した同じ樋口裁判長だけに、住民の素朴な疑問も採り入れ、事実に基づき裁判所としての判断を下すものとなった。最大の争点だった「基準地震動」(原発に到来することが想定できる最大の地震)について、全国二〇箇所にも満たない原発のうち四つの原発に五回にわたり、想定した地震動を超える地震が二〇〇五年以後一〇年足らずの間に到来している事実を重視し、高浜原発の地震想定だけが信頼に値するという根拠は見い出せないとした。科学的知見をもとに作られたはずの基準地震動が何故こうもやすやすと越えられてしまうのか、という疑問を投げかけた。

 

(以下、省略)

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なお、この鹿児島地裁の腰抜け裁判長・前田郁勝(いくまさ)らによる判決内容についての批判は、昨日ご紹介した満田夏花さんのコメントが非常に適切ですので、再掲載しておきます。私から、この満田夏花さんのコメントで漏れていると思うことを1点だけ下記に付け加えておきます。

 

●満田夏花さん:「要旨」を読んだ範囲で、気になった点を下記にまとめましたので、ごらんいただければ幸いです。

https://www.facebook.com/permalink.php?story_fbid=1425519691097615&id=100009187927595

 

(満田夏花さんのコメントを転記)

「福島第一原発における事故の経験等をも考慮した最新の科学的知見および安全 → 目標に照らして、その内容に不合理な点は認められない」

 福島原発事故の検証は十分ではありません。規制基準に十分反映されたとはいえません。安全目標については、パブコメにすらかけられず、たかだか5回くらいの短時間の審議で原子力規制委員会内部で決められました。国民の合意を得たものではありません。

 

(田中一郎コメント)

 川内原発が「最新の科学的知見および安全」を十分に反映しているなどというのは嘘八百です。例えば、過酷事故時には(福島第1原発事故時にしたように)炉心を冷却することをあきらめて溶融するに任せ、それを格納容器下部に水を貯めて落下してくるのを待ち受ける、などという、考えられないような過酷事故(無)対策を用意しておきながら、ヨーロッパなどの原子炉では設置済みのコア・キャッチャー(高温に耐えられる溶融炉心の受け皿)は設置しないとか、格納容器下部に水を貯めるための専用注水設備を用意しないとか、高性能のフィルターのついたベント装置も設置を猶予するとか、信じがたい手抜きを行っています。また、アメリカのウェスチングハウス社の原子炉AP1000のような格納容器(圧力容器内の炉心ではなく)を強力に冷却する装置もなければ、緊急炉心却装置(ECCS)の過酷事故時における機能の有効性に関する科学的検討もなされていなければ、更には水位計や圧力のがし弁や制御系配管などの過酷事故時における機能の堅確性・耐震性などについても、ノーチェックのままなのです。いわば川内原発の再稼働審査は、「非科学の粋」を集めたインチキ・似非知見と、安全対策にカネがかからないで済むようにでっち上げられた、偽りの「現状追認儀式」であるといえるでしょう。

 

●ウィキペディア AP1000

 http://ja.wikipedia.org/wiki/AP1000

 

3.特措法成立 武器購入の契約 最大10年に延長(東京 2015.4.23

 http://www.sankei.com/politics/news/150422/plt1504220016-n1.html

 

(田中一郎コメント)

 東京新聞の記事がネット上に見当たらないので、御用記事ですがサンケイ新聞の記事URLを書いておきます。アメリカの手下として軍事大国化に邁進する安倍晋三政権の下で、この武器購入予算の「タガ外し」は、東京新聞の記事が書いているように「武器の大量購入を既成事実化」することになるでしょう。大企業や富裕層に減税をしすぎて財政難に陥り、私たち一般有権者・国民・市民から消費税をまきあげながら毎年大赤字の予算を組み続ける日本政府、そんな政府が有権者・国民・市民のための様々な政策費用はそっちのけ・先送りで、軍事大国化のための武器購入の予算を将来の財源を先食いしながらどんどんやっていく、これがこの法律の正体です。

 

 それを、今国会では「長期契約を現行の5年から10年まで可能とする特別措置法案が22日の参院本会議で自民、民主、公明、維新の党などの賛成多数により可決、成立した。」というのです。自民や公明はともかくとして、民主や維新の党も賛成に回っていることに注目しておいてください。この連中は、野党でもなんでもない、ただの自民党補完勢力であり、維新の党については、それに「ちんぴら右翼」という「もう一つの本性」がついて回ります(かような国会議決は他にも山のようにあります:例えば特定秘密保護法など)。つまり、世直しを期待して、民主や維新などの政治家に選挙で投票してみても、何にも変わることはない=次の自民党政権ができるまでの「つなぎ」「ふくらし粉」「下準備」程度のことにしかならないということを意味します。臭いにおいは元から断たなきゃダメ、なのです。

 

(ここから本文)

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 福島第1原発事故の実態解明において、最も奇妙なのは2号機である。2号機は1,3,4の各号機とは違い、爆発を起こさなかったにもかかわらず、福島第1原発事故では最も大量の放射能を環境に放出したと言われており、また各号機の中では最も危機的な状態にあったとも言われている。いったい何が2号機で起きていたのか。過酷事故時の原子炉の事態を実証的に把握するためにも、この問題を、先般既にご紹介した書籍=『福島第一原発事故7つの謎』(NHKスペシャル『メルトダウン』取材班:講談社現代新書)(以下『7つの謎』)の説明を参考に、下記で少し考えてみたい。

 

 私はNHK著作のこの書籍については、全面的な信頼を置いているものではない。いや、むしろ、この書籍は、そのベースが政府事故調の報告に無批判に依拠するところが多く、どちらかといえば批判的な目で見ている次第である。しかし、福島第1原発事故を顧みた場合に、誰が見ても、あのような原子炉の緊急事態において、きちんと想定された役目を果たすはずであって緊急炉心却装置(ECCS)が、その機能を十分に果たせなかった、あるいはほとんど機能しなかったことが、私は福島第1原発事故を深刻な事態に至らしめた大きな理由の一つではないかと思っている。SBO(全電源喪失)という想定外の事態はあったものの、下記に見るように、1号機はともかく、2号機、3号機については、まがりなりにも緊急炉心却装置(ECCS)は動いていたのである。SBOを緊急炉心却装置(ECCS)の機能不全の最大理由にすることは、私は理由のすり替え=ゴマカシであって、何が原因でどういうことが起きていたかの解明にもつながらないし、今後の原子炉の安全性を高めるための検証にもならない謬論であると考えている。

 

 以下、少し長くなるかもしれないが、福島第1原発事故時における2号機の議論を私なりに展開してみたい。それにしても、私がつくづく思うのは、何故、私のような原子力工学のど素人が、かような原発過酷事故の実態解明や分析のようなことをしなければいけないのかということだ。それは、福島第1原発事故後4年以上の月日が経過したというのに、日本の原子力関係の科学者や技術者が、誰一人として、一般の有権者・国民・市民が理解可能な形で、福島第1原発の各原子炉の事故実態や、深刻化した原因究明の結果の説明を、(現段階で考えられることという「推測」でもいいので)やろうとしないためである。いったい、日本という国の科学(者)や技術(者)はどうなっているのだろうか。一口に御用化というのはたやすいが、起きたことの説明さえできないどころか、しようともしない、この「事なかれ主義」の体たらくを、私は許すことができないと思っている。原発・原子力・核の世界は、この不透明かつ不誠実極まる状態1つをとってみても、撲滅しなければならない「暗黒の帝国」であることは明らかであるように思うのだ。

 

 <別添PDFファイル>

(1)(第4章表紙)爆発しなかった2号機で放射能大量放出が起きたのはなぜか?(『福島第一原発事故7つの謎 』(NHK:講談社現代新書より)

(2)最大の危機にあった2号機(同)

(3)なぜ、ベントができなかったのか(同)

(4)思わぬ地震の影響(同)

(5)検証:三者三様のトラブルが起きた格納容器ベント(同)

(6)(原子炉の図)ベント配管、主蒸気逃がし安全弁(同)

 

 まず最初に、2号機以外の爆発した2機(1号機と3号機)について、簡単におさらいをしておこう。まず、1号機については、地震直後のスクラムによって、緊急炉心却装置(ECCS)である非常用復水器(IC)が稼働したものの、その動きがおかしいために現場作業員が何度かのストップ&ゴーを繰り返したのちに、その稼働を止めてしまっている。1号機原子炉の様子を記録した圧力容器内の水位や圧力の動き、あるいは過渡現象記録などを見ると、非常用復水器(IC)系配管や再循環器系配管などで地震の揺れによる破損と冷却水漏れ(LOCA)を起こしていた可能性が高く、1号機については緊急炉心却装置(ECCS)の耐震性不足による機能不全が起きていた疑いが強い。

 

 政府事故調などでは、SBOに伴い非常用復水器(IC)は自動停止した、などと報告されているが、電源喪失によって駆動動力が失われる中で、はたして自動停止が実現したのかどうかは極めて怪しいし、そもそも自動停止していたのなら、まさに原子炉の緊急事態時において緊急炉心却装置(ECCS)を機能させなくしてしまう欠陥設計であると言わざるを得ない。いずれにせよ、1号機では非常用復水器(IC)という緊急炉心却装置(ECCS)が期待されていたようには機能しなかったために、福島第1原発の全6機の中では最も早く炉心溶融を起こし、水素爆発に至ってしまった。一方で、現場作業員の努力によって格納容器ベントは成功したため、格納容器の破壊までには至らず、その後は、炉心がメルトダウンしたあとの穴の開いた圧力容器へ向けて、消火系配管(これも低圧系の緊急炉心却装置(ECCS)である)を通じた注水が行われた。しかし、この注水も、消火系配管の欠陥設計のために大半の水が炉心に向かわずに復水器の方に行ってしまうなど、緊急炉心却装置(ECCS)の機能不全が後々まで尾を引く事態となってしまった。

 

(それから、元GEの原子炉技術者である佐藤暁氏は、仮に非常用復水器(IC)が正常に稼働していたとしても、やがて炉心からくる大量の水素ガスによって非常用復水器(IC)の配管が詰まり、冷却機能がマヒしてしまうであろうと論じている。おそらくその通りだろうと思われる。非常用復水器(IC)には、発生してくる水素ガスを逃がす、水素ガス逃し弁のようなものが必要ではないか)

 

(参考)記者会見:「福島第一原発の水素爆発は地震が原因で起こった」(田中三彦氏)再稼働阻止全国ネットワーク

 http://saikadososhinet.sakura.ne.jp/ss/archives/3500

 

 次に3号機だが、3号機は1号機とは違い、緊急炉心却装置(ECCS)としては非常用復水器(IC)ではなく、原子炉隔離時冷却系(RCIC)と高圧注水系(HPCI)という2つの装置が取り付けられていた。これは2号機も同様である(*)。この2つの機器が非常用復水器(IC)と違うのは、いずれも電源なしで稼働するものの、RCICもHPCIも、ともに最初のスタート時には電源が必要である=人間が人為的にスイッチを入れる という点だった。そして、3号機の場合には2号機とは違い、非常用のバッテリーが津波が来た後も生きていて、容易にこの2つの緊急炉心却装置(ECCS)を稼働することができたということだ。

 

(*)昨日(4/23)、たんぽぽ舎で行われた物理学者の槌田敦氏を招いての勉強会で、同氏は「福島第1原発2号機、3号機についても、もともとは非常用復水器(IC)が取り付けられていたが、浜岡原発の非常用復水器(IC)で起きた水素爆発を受けて、極秘裏に非常用復水器(IC)が取り外された」と説明した。真偽のほどは私には判断できないが、事実なら重大問題であり、また、福島第1原発1号機については、非常用復水器(IC)が設置されたまま放置されて、新たな緊急炉心却装置(ECCS)が追加手当されなかったことも大問題である。下記はネット検索したら出てきた関連サイトです。参考までにご覧ください。これについても真偽のほどは私にはわかりません。

 

●恩人菅さんに唾する東電メディア官僚そして民間事故調(8)原発非常時冷却システムを撤去していた勝俣会長

 http://members.jcom.home.ne.jp/u33/i%20think%20120312onjinnkantuba8.htm

 

 原子炉隔離時冷却系(RCIC)は、もともと緊急時対応に特化した装置で、あらかじめ専用のタンクにためてある冷却水を供給し尽くすと停止してしまい、そのあとを高圧注水系(HPCI)に引き継ぐという設計になっているようである。ただ、いずれの装置についても、用意した冷却水が足りなくなった場合には、格納容器下部にある巨大なドーナツ型の水のプールである圧力抑制室(SC:サプレッション・チェンバー)の水を使って、かなり長期に原子炉の冷却を続けられる仕組みになっていた(水源を自動、または手動で切り替える???)。

 

 ということで、3号機は1号機とは違い、3.11以降も最初は原子炉隔離時冷却系(RCIC)、そのあとを高圧注水系(HPCI)が引き継いで、炉心冷却を続けていたので、かろうじて原子炉の緊急事態への転落は避けられていたのである。ところが、その3号機の命綱ともいうべき高圧注水系(HPCI)の注水を現場作業員が3月13日の早朝夜中(午前3時前ごろ)に手動で止めてしまうのである。この動作は全く理解不能であるが、事故調査などでは、この点がとことん追求されていない。私の推測は、(現場作業員は馬鹿ではないのだから)3号機の高圧注水系(HPCI)という緊急炉心却装置(ECCS)もまた、1号機の非常用復水器(IC)と同様に、その配管に地震の揺れによる亀裂か破損が生じており、稼働を続けるうちにそれが徐々に徐々に大きくなって無視できなくなり、このまま稼働を続けると冷却水が炉心に行かずにじゃじゃ漏れになってしまうと判断したために、高圧注水系(HPCI)による注水を止めてしまったのではないか、ということである。

 

 いずれにせよ、3号機はこの高圧注水系(HPCI)を停止させて以降、炉心の冷却ができなくなって一気にメルトダウンに至り、翌日の14日午前11時頃には1号機爆発を上回る大爆発を引き起こして、建屋がボロボロになってしまった。なお、この爆発については、その形状から鑑みて単純な水素爆発とは考えにくく、一説では、使用済み核燃料プールの核燃料が引き起こした即発臨界による核爆発である、という説が広まっている。(核爆発であったか否か、くらいは、どうして未だに実証的に明らかにされないのか、私にはまったく理解できない=「しない」ということは「隠したい」ということを意味するので、益々、核爆発説は有力になっていく。また、3号機がプルトニウムを燃料に使う危険なプルサーマル炉だったことも状況証拠として挙げられている)

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 さて、上記の1,3号機とは違い、2号機はSBOの直後から一切の電源がなくなってしまい、原子炉がどうなっているのかが全く見えなくなってしまった。計器類でさえもが全停止状態だった。しかし、幸いにして、津波に襲われてSBOとなる直前に、現場作業員がたまたま原子炉隔離時冷却系(RCIC)の稼働スイッチをオンにしたため、2号機は(吉田所長以下、原発の現場にいる人たちには認識されなかったが)その後、最も長く緊急炉心却装置(ECCS)が働いて、炉心を冷却し続けたのである。上記でも申し上げたように、原子炉隔離時冷却系(RCIC)は、あらかじめ用意されたタンクの冷却水がなくなれば機能は停止するハズだが(だいたい12~24時間くらいで終了)、それが3月14日の午後くらいまでは冷却が続いていたのは、おそらく圧力抑制室(SC)にある水を使っての冷却だったのではないかと想像するが、その事情はよくわからない。ともあれ、この原子炉隔離時冷却系(RCIC)が14日夕方くらいから機能不全になって、2号機の原子炉の様子がおかしくなってくる。別添PDFファイルにある『7つの謎』は、この炉心がおかしくなり始めて以降について詳しく説明がなされているものである。

 

 それから、この2号機については、1号機が水素爆発を起こしたその際に、原子炉建屋の壁に据え付けられていた「窓」(ブローアウトパネル)が風圧で吹き飛んでオープンになってしまったため、1号機や3号機のように建屋に水素ガスがたまって爆発するという事態は起きなくて済んだという点も重要である。=つまり、原子炉建屋のブローアウトパネルを非常用独自電源で動くようにしておき、いざとなったら「窓」を開けてやれば、少なくとも原子炉建屋の爆発は防げるということである(但し、建屋の中に漏れ出ていた放射能は環境に出ていってしまうが)。

 

 それにしても解せないのは、この原子炉隔離時冷却系(RCIC)の動きである(高圧注水系(HPCI)に引き継ぎできなかったのはSBOのため最初の稼働用の電源がないから)。何故、数日間にもわたり原子炉隔離時冷却系(RCIC)が動き続けたのか、また、吉田所長以下、現場の人たちが2号機の原子炉隔離時冷却系(RCIC)が動いていることを知ったのはいつごろか、更に、原子炉隔離時冷却系(RCIC)を継続的に使いながら高圧注水系(HPCI)を何とか稼働させようとしなかったのはなぜか、という点が、私にはよくわからない。

 

 様々な情報源からの話では、吉田昌郎所長以下の人たちがやろうとしたのは次の2つ、①圧力容器内の圧力を下げて、消火系配管(低圧系の緊急炉心却装置(ECCS)の一つ)経由で炉心に冷却水を注水すること、②格納容器の圧力が高くなってきて危険(放置すれば格納容器が破裂して大変なことになる)なので、ベントを行って格納容器内圧力を下げようとしたこと(2号機の場合には圧力抑制室(SC)の水を原子炉隔離時冷却系(RCIC)経由で炉心冷却に大量に使ってしまったので、ベントといっても1号機、3号機のようなウェットベント(圧力抑制室経由)ではなく、格納容器から直接、外部環境に放射能まじりの気体を放出するドライベントだった)、であり、それは基本的に高圧系の緊急炉心却装置(ECCS)の炉心冷却機能を放棄してしまうことを意味していた。

 

 更に、原子炉の設計では、圧力容器のみならず格納容器の内部圧力についても、主蒸気逃がし安全弁(SR弁、SRV)のような「自動弁」が自動的に開いたり閉まったりすることにより、その圧力(水蒸気などの気体)を圧力抑制室(SC)に逃がしてやることで、原子炉全体の安定が保たれる=破壊的な高圧力の発生が抑えられるはずだった。しかし、これもまた簡単に放棄され、放射能を外部環境に放り出してしまうようなベントが選択されているのである。つまり、どんな原子炉にも備え付けてある、この内部圧力調整のための「逃がし安全弁」というものは、過酷事故のような場合に本当にきちんと正常に機能するのかという、もう一つの重大な問題が福島第1原発事故によって提起されたということを、しっかりと認識しておかなければならないということだ。

 

(このことは、ウェットベントが成功したとはいえ、ベント作業に忙殺された1号機や3号機についても同様に言えることである、「逃がし安全弁」が正常に機能し、圧力を下げる圧力抑制室(SC)が正常に働いていれば、かような作業は不要だった:特に1号機については、圧力容器内の高圧水蒸気を圧力抑制室(SC)へ逃がすための主蒸気逃がし安全弁が全く動いた形跡がないことが重要で、それにもかかわらず、圧力容器内の圧力が低下する事態が起きていたことも重要である=どこかが地震で壊れて破損していて、そこから水蒸気が漏れていたということ)。

 

(ちなみに『7つの謎』には、主蒸気逃がし安全弁(SR弁)に関して次のような記述がある。「2号機では、この頃、ベント弁の操作とは別に、SR弁を開いて原子炉の圧力を抜く作業も同時に進められていた。14日の夕方6時すぎ、SR弁が開いたためか、一気に原子炉の圧力が下がった。しかし、不運にもこの時間帯、2号機へと注水していたはずの消防車が燃料切れのため止まっていたのだ」。・・・・・・・・・・・・これは、とりもなおさず、2号機の逃がし安全弁が設計想定通りには動かずに、コントロールできない状態に陥っていたことを示している。本来は、炉内圧力や格納容器内圧力の大きさに自動的に対応して開いたり閉じたりするはずのものが動いていない、従って、炉心や格納容器内圧力のコントロールができない事態に陥り、過酷事故の深刻さが深まっていったということである)

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 さて、以上のことをご説明したうえで、この『7つの謎』が提起した問題と、本書がそれに対して出した回答を下記にごく簡単にご紹介しておきたい。私が見たところ、この本のこの章でのテーマは次の2つであり、その結論は次のようなものである。私にとっては初耳で、かつ驚くべき内容だった。私には、(もし書かれていることが真実なら)いずれもが傾聴に値する原子炉施設の重大な欠陥ではないかと思われ(沸騰水型に限られない)、当然のことながら、こうした原子炉施設の弱点については、明確な対応策=再発防止策が必要のはずである。しかし、残念ながら(この書籍を世に問うたNHK取材班の意図にも反して)、こうした原子炉の欠陥とでもいうべきものが、上記で申し上げてきた様々な問題とともに、ほとんど手が付けられないままに放置され、まるで福島第1原発事故の経験と教訓を無視して猪突猛進するがごときに原発再稼働が強引に押し進められているのである。電力会社と原子力産業、原子力規制委員会・規制庁、政府、それに無責任極まる御用学者や、この出鱈目をきちんと報道しようとしないマスごみの態度は、日本を亡国に導く行為として厳しく糾弾されなければならない。

 

(テーマその1)爆発しなかった2号機で放射能大量放出が起きたのはなぜか?

 本書のP130には、「東京電力の広報担当であった松本純一は、「全体の放出量のうち、1号機からは2割程度、2号機は4割強、3号機からは4割弱が放出されたとみている」と発表した。」との記述がある。また、小出裕章京都大学原子炉実験所助教は自身の講演会で、福島第1原発が環境に放出した放射能は2号機が最も多く、日本政府による国際原子力機関(IAEA)宛の事故報告書では、全体の80%以上を占める、とまで説明した。爆発もしていない2号機が(3/15早朝に、圧力抑制室(SC)付近で爆発音がした、などと伝えられているが、それがどういうことだったのか、いまだにはっきりしない=おかしな、おかしな、まったくおかしな話である)、何故、かくも大量に放射能を環境放出し、他の号機を上回るまでに高濃度に汚染されてしまったのか、その理由は何か。

 

 (本書P146以下)

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 放射性物質を含んだ蒸気は、どこから漏れてきたのか。(中略)計装線図の読み解きから、専門家たちが漏えいを疑ったのは、意外な抜け道だった。それは、RCICを通るルートだった。2号機がほかの号機に比べて想定外に長く冷却機能を維持し、危機的状況に陥るのを遅らせる立役者ともなった最後の冷却手段が、皮肉にも放射性物質の漏えいに絡んでいるというのだ。RCICは、格納容器の外側にある地下1階の原子炉建屋に設置されている。専門家が疑ったのは、RCICのタービンを回す蒸気は原子炉から直接流れ込むため、そこが放射性物質の漏えいルートになるのではないかということだった。可能性が高いとされた場所は、RCICのタービンの軸の部分だ。しかし、軸は円盤形の4重のパツキンで厳重に塞がれている。果たして、RCICの軸から漏れることはあり得るのだろうか。

 

(模擬実験をしてみたら:田中一郎注)すると、圧力の上昇に伴って、軸の隙間の部分から大量の蒸気が噴き出し始めたのだ。刑部(人の名前:田中一郎注)は、思わず言葉を漏らした。「私が思っていたよりもかなり多い蒸気の量だ。放射性物質がかなり出てきた可能性がある。」

 

 実はパツキンの間には、軸を回転させるために、わずかな隙間が作ってあり、ここから蒸気が漏れ出る可能性があった。しかし、RCICの軸には、蒸気が漏れ出すことのないように入念な対策が施されていた。パッキン部分は、パロメトリック・コンデンサーと呼ばれる装置に繋がっていて、配管を通して蒸気を吸い出すことで軸の隙聞を負の圧力に保つ仕組みになっている。

 

(中略)しかし、RCICには死角があった。このパロメトリック・コンデンサーは、電気がなくなると止まってしまうのだ。蒸気を吸い出す配管の圧力を下げられないまま、原子炉から来る蒸気の圧力だけが高まると、蒸気はRCICの軸の隙聞から一気に漏れ出してしまう。本来は吸い出した蒸気を運ぶ先となるサプレッシヨン・チエンバーの圧力は、通常は大気圧と同じ1気圧程度だが、当時は、原子炉から出た蒸気によって、4気圧を上回る高い値になっていたため、蒸気は外に漏れざるを得なかった。RCICから蒸気が漏れ出すと、そこはもう格納容器の外であり、通常、作業員が行き来する原子炉建屋の中の空間だった。

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 つまり、2号機の大量の放射能漏れを引き起こしていたのは、緊急炉心却装置(ECCS)の原子炉隔離時冷却系(RCIC)だったというのだ。私は、環境放出量の多さから見て、この原子炉隔離時冷却系(RCIC)からの漏出だけでは説明がつきにくいのではないかと思うが、しかし、2号機の建屋内の放射線量が他の号機と比較して非常に高いことの理由の説明にはなるのではないかと思うし、おそらくNHKが取材で突き止めたこの原子炉隔離時冷却系(RCIC)からの放射能漏れという欠陥構造は、ただちに改善されるべきものではないかと思われる(私は、全くの推測ながら、「2号機大量放射能放出」は、15日の「2号機圧力抑制室付近での爆発音」とともに、3号機の核爆発による放射能の大量拡散をカモフラージュするための「作り話」ではないかと疑っている。今のところ、なんとも言えないが、この「作り話」説を完全否定できる物証は見いだせていない)。

 


(テーマその2)なぜ、ベントができなかったのか

 話が長くなったので、ごく簡単に箇条書きすると、「20125月の東京電力の会見で、広報担当であった松本は2号機のベントができなかった理由について、AO弁と呼ばれる空気で動くベント弁を開けるための電磁回路に不具合があった可能性を指摘する一方で、「AO弁を開くための、空気圧が維持できなかった」とも述べている。」(P153)に従い、次のようになる。

 

(1)AO弁と言われる空気圧駆動のベント弁を開くための電磁回路の不具合(ベント弁を動かす電気回路が故障してしまったということだが,これがどんな回路なのかはよくわからない。ひょっとすると下記の(2)を誤魔化すためのインチキ説明の可能性があることは念頭に置いておいた方がよい)

 

 (2)AO弁と言われる空気圧駆動のベント弁を開くための制御系配管が地震の揺れによって破損したために高気圧の空気が漏れ、ベント弁の開閉操作ができなくなってしまった(ベント弁を動かす空気圧制御配管が破損した)

 

 要するに、地震の揺れで、原発施設の制御系配管が壊れて、装置が動かなくなったということである。空気圧を使って動かすような原発装置の制御系配管は、ベント装置に限らず、全て危ないことを物語っている。

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 最後に大事なことを一つだけ申し上げておくと、上記で申し上げた、消火系を含む緊急炉心却装置(ECCS)の耐震性や過酷事故時における機能不全も、逃がし安全弁が設計想定通りに機動しないことも、ベント装置が自在にならないことも、制御系配管の耐震性についても、いずれについても、原子力規制委員会・規制庁は、その具体的実証的な検証と原因究明を行わず、従ってまた、こうした福島第1原発事故時の経験が新規制基準や原発・核燃料施設の再稼働審査に全くといっていいほど生かされていないことである。

 

 彼らがやったことは、福島第1原発事故で生じた様々なトラブル経験に対する対応や対策の検討を可能な限り避けて通り、今ある古い既存の原発・核燃料施設をできる限りそのまま使うための手抜き・低コスト対策を、悪知恵を振り絞ってあみだしたうえで、それに屁理屈や回りくどい説明や大言壮語などで虚飾して、オバカな自民党や民主党の政治家たちをたぶらかしたのである。だからこそ、福井地裁・樋口英明裁判長の高浜原発3,4号機運転差止の仮処分判決が、新規制基準は甘すぎると判定を下しているのだ。かような新規制基準に適合するかどうかだけがチェックされている今の原子力規制委員会・規制庁の「適合性審査」なるものが、全く原発・核燃料施設の安全性を担保するものではないことは言うまでもない。

 

 福島第1原発事故の経験と教訓が生かされない原発=安全性が全く確保されていない原発の再稼働を認めてはならないことは申し上げるまでもない。マスごみ諸君には、上記で申し上げたことをご理解いただいたうえで、安倍晋三や自民党の馬鹿者政治家たちが騒ぎ立てる「世界一、厳しい新規制基準で安全が確認された原発」という天下の大嘘を、「根拠がない」「事実に反している」と報道していただきたい。何故なら、それが乱暴極まりない原発・核燃料施設の再稼働にストップをかけ、近未来における日本の原発・核燃料施設過酷事故の再発と、日本の国としての破滅を防ぐ大きな第一歩となるに違いないからだ。

草々

 

 

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