«  (メール転送です) 児玉・清水・野口『放射線被曝の理科社会』について/検討の呼びかけ (私の少し長いコメント付きです) | トップページ | 本日(3/28)のいろいろ情報(メール転送を含む) (1)辺野古基地建設阻止ネット署名 (2)報道ステーションの「古賀茂明降ろし」 (3)街頭に出る山本太郎 (4)映画「A2-B-C」上映中止事件 他 »

2015年3月27日 (金)

(見逃せない重要論文(4)):小出裕章京都大学原子炉実験所助教 定年記念公演・定年インタビュー

前略,田中一郎です。

(別添PDFファイルは添付できませんでした)

 

「見逃せない重要論文(3)」は、この3月で定年退職となる小出裕章京都大学原子炉実験所助教です。小出裕章さんのことはみなさまがもうよくご存じでしょうから、私がご紹介申し上げるまでもありません。今から4年前の福島第1原発事故で、1号機に続いて3号機までが爆発を起こした時、これは大変なことになったと思い、その時、小出裕章さんがいらっしゃっていろいろとお話をされているのを聞いて、どれほど心強かったか知れません。TVや新聞などのマスごみに登場する、見るからに「こいつは原子力ムラの人間だ」と思わしき連中が発する言葉にはまったく信頼が置けず、原子炉のど素人にも、日に日に事態が悪化して緊迫度が高まっていく様子が感じ取れましたから、どうしたら危機から脱することができるのか、気が気でなかったことを思い出します。そんなとき、小出裕章さんの言葉が一言一言、非常に貴重に聞こえたものでした。

 

福島第1原発の事情が少し平衡状態に入り、事態の悪化や格納容器を吹き飛ばすような大爆発はさしあたり回避できた様子になってからも、小出裕章さんの様々なコメントには、必ずと言っていいほど耳を傾けたものです。早くも事故後数か月で、いわゆる原子力ムラの御用学者と言われた連中は、国民から完璧に信頼を喪失して、TV画面をはじめ、マスごみから姿を消しました。それから4年、小出裕章さんの大活躍が輝く中、それでも原子力ムラ・放射線ムラは死に絶えることなく、しぶとく生き残り、今、自民党の政権復帰とともにゾンビのごとくよみがえろうとしています。日本の国民というのは、福島第1原発事故という危機一髪の国家全体が滅亡しかねない大事故を目の前にしても、かような自民党に政権を託すほど、愚かでわけのわからぬ国民であったかと、がっかりもし、また、情けなくもなりましたが、その時も小出裕章さんの不屈の精神と、そのきらきらとした良心に励まされたものです。

 

その小出裕章さんが、残念ですが京都大学原子炉実験所を定年退職されます。さる2月末には、その小出裕章さんを迎えて記念講演がなされましたし、マスコミ各紙も定年記念のインタビュー記事などを掲載しております。別添PDFファイルには、そのうちの5つばかりを添付しておきました。なお、京都大学原子炉実験所には、かつて、たのもしい「熊取6人衆」が在籍しておられたのですが、今回の小出裕章さんの退職をもって、残るは今中哲二氏1人になってしまいました。

 

ところで、3.11以降の小出裕章さんのことで強く印象に残っているのは、2011年4月末に明治大学御茶ノ水校舎で開催された講演会に、会場に入りきれないほどの大行列ができたこと、それから、何度も小出裕章さんの講演を聞きに行き、時々、講演の後に質問に行くと、どんなトンチンカンな質問にも、それはそれは丁寧に答えてくださっていたこと、そして、何よりも、もう中止にされてしまっているけれども、関西の毎日ラジオ放送で連日放送されていた「たね蒔きジャーナル」を、毎日のように聞き漏らさずに、インターネットで耳を皿のようにして聞いていたことです。インタビューをなさっていた女性のアナウンサーもなかなか感度が良くて、この番組がTVの定番番組にでもなっていけばいいな、と思いながら聞きました。(しかし、残念なことに、多くの視聴者の「続けて」という声を踏みにじり、関西のラジオ局はこの番組をつぶしてしまいました。おそらくは原子力ムラからの圧力が水面下であったのでしょう。なさけないマスごみです。)できれば、ネットを通じた放送に詳しい方には、この小出裕章さんの「たね蒔きジャーナル」を復活させていただきたいものだと今でも思っています。そういう番組が絶対に必要な情勢になってきているような気がしています。

 

●小出裕章 (京大助教) 非公式まとめ(かつては「たね蒔きジャーナル」の録音サイトでした)

https://hiroakikoide.wordpress.com/tag/%E3%81%9F%E3%81%AD%E8%92%94%E3%81%8D%E3%82%B8%E3%83%A3%E3%83%BC%E3%83%8A%E3%83%AB/

 

以下、簡単に昨今の小出裕章さんの書かれたものやインタビュー記事等をご紹介し、あわせて小出裕章さん関連のサイトもいくつかご紹介しておきます。定年退官記念講演での小出裕章さんへの会場からの質疑応答に関する記事によれば、小出裕章さんは、退職後、「仙人」になられるのだそうです。当面は求められれば講演等に応じますが、徐々に徐々に自分はそうしたことから身を引いて行って、最後は山にこもって仙人におなりになるとか。私たちとしては、小出裕章さんには、仙人は仙人でも、脱原発「専任」の仙人でいらしていただきたいですね。これからもご活躍を期待しております。

 

 <別添PDFファイル>

(1)原発廃炉への道筋(小出裕章 『都市問題 2015.3』)

(2)小出裕章・京大助教 定年インタビュー、反原発 私自身のため(東京 2015.3.23

(3)京大原子炉実験所助教 小出裕章さん最終講義(毎日 2015.3.6 夕刊)

(4)風知草 去っていく男(毎日 2015.3.2

(5)住民に中間貯蔵を引き受けさせてはいけない(小出裕章『週刊金曜日 2015.3.6』)

 

 <関連サイト>

(1)2015-02-27 【大阪】京都大学原子炉実験所助教・小出裕章氏、在職中最後のゼミ講演で「原子力廃絶」を力説──原発に警告を発し続けてきた半生を語る IWJ Independent Web Journal

 http://iwj.co.jp/wj/open/archives/235922

 

(2)みんな楽しくHappyがいい♪ 小出裕章先生

 http://kiikochan.blog136.fc2.com/blog-category-15.html

 

(3)小出裕章ジャーナル 独立系ラジオ番組・ラジオフォーラム

 http://www.rafjp.org/koidejournal/

 

(4)京都大学原子炉実験所助教 小出裕章氏講演会情報

 http://healing-goods.info/koide/

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

上記のうち、1.原発廃炉への道筋(小出裕章 『都市問題 2015.3』)を以下に簡単に要約

 

1.はじめに

(1)ついに日本でも起きた原子力発電所の破局事故

(2)原子炉という機械の宿命

(中略)そして、長期間運転され、炉心に核分裂生成物が十分に蓄積した状態の場合、原子炉内の発熱の7%分は、核分裂生成物自体が発している。その発熱を「崩壊熱」と呼ぶ。ウランの核分裂反応は制御棒を挿入することで止められるが、「崩壊熱」は核分裂生成物がそこにある限り止められない。つまり、原子炉という機械は、何かトラブルがあった時に、原子炉を停止する、つまりウランの核分裂反応を止めたとしてもなお、7%分の発熱は止められない。熱出力300万KWの原子力発電所であれば、崩壊熱は21万KWになる。その発熱は約80kgの冷水をl秒ごとに蒸発させるほどのもので、もしその発熱を除去できなければ、炉心が熔けることは必然である。すなわち、原子炉とはいついかなる時にも冷却できなければ熔け落ちてしまう宿命を持った機械である。

 

2.廃炉工程の現状と問題点

(1)これまでの歩み

(2)現在存在する困難

<1>放射能汚染水

<2>労働者の被曝

<3>放出された放射能と周辺の汚染

(中略)そのセシウム137について、日本国政府が国際原子力機関(IAEA)に提出した報告書に基づけば、大気中に放出した量は15ペタベクレルである。広島原爆が大気中にばらまいたセシウム137の量は0.089ペタベクレルであるから、図1に示すように、福島第一原子力発電所事故で大気中に放出されたセシウム137は広島原爆168発分に相当する。そのほとんどは偏西風に乗って太平洋方向に流れた。日本の東北地方、関東地方に降下したセシウム137の量を各県別に図2に示す。その総量は2.4ペタベクレルである。それによる汚染についても日本政府が地図を作成しており、それを図3に示す。濃密な汚染を受けた約1,000km2(琵琶湖1.5個分)から10万人を超える人たちが故郷を追われて流浪化した。また全部で14000km2の地域は、日本が法治国家だというのであれば、「放射線管理区域jに指定して、人々の立ち入りを禁じなければならないほど汚れている。そんな深刻な汚染を引き起こしたセシウム137の量は重量にすればわずか750gしかない。放射能は五感に感じられないというが、感じられるほど放射能があれば、人間は簡単に死んでしまうからである。

 

3.廃炉に向けて今後歩むであろう(歩むべき)道筋

(1)使用済み燃料プール

(2)放射能汚染水の管狸

(中略)破綻を回避するためには、2つのことを行うしかない。まずーっは炉心の冷却に水を使うことをやめることである。炉心に留まった核分裂生成物のうち寿命の短い核種は次々と減衰して無くなってくれており、事故直後に比べれば、崩壊熱はすでに数百分の1に減っている。図4に示す通り、現在ではせいぜい数百KWである。水は最高の冷却材ではあるが、水での冷却は諦め、スズ、鉛など低融点の金属での冷却、あるいは空冷も可能だろうと私は思う。

 

(中略)今回福島第一原子力発電所で作ろうとしている遮水壁は深さ30m、長さ1.4kmものものであり、そんな凍土壁を作った経験はない。そして、凍土壁は冷却が断たれれば崩壊してしまう。今後何年、何十年にわたって一刻の冷却の途絶えも許されないという技術が成り立つ道理がない。結局、鋼鉄とコンクリートによる遮水壁を作らざるを得なくなる。

 

(3)熔け落ちた炉心の始末

(中略)東京電力と国は、破壊されている格納容器を補修し、全体に水を張ったうえで、上方向につかみ出すという工程表を書いている。しかし、おそらくそれはできない。格納容器の補修そのものが難しいだろうし、仮にそれができても熔け落ちた炉心はすでに分散してしまっていて、上方向から格納容器の底を覗いて取り出すことはほぼできない。仮に50%を取り出すことができたとしても50%は残ってしまう。そうであるなら、多大な被曝をしながらつかみ出し作業をするよりは原子炉建屋全体を、かつてチェルノブイリ原子力発電所事故の時に行ったと同じように「石棺」で封印するしかない。

 

(中略)福島第一原子力発電所l号機から3号機の使用済み燃料プールからの燃料の移動がいつになったら終わるか分からないが、それが終わるまでは石棺化はできない。石棺ができるとしても、それができた暁にはおそらく私は死んでいるだろう。そして、第2石棺を作るころには、今現在生きている人のかなりの人たちが死んでしまっているだろラ。

 

(4)放射能の永続的な管理

(中略)気の遠くなるような作業が予測できない未来にわたって続く。

 

4.根本問題

(中略)事故を収束するためにまず必要なことは、無責任体制を改めることである。人々にどんなに苦難を与えても、事故対応にどんなに失敗しても誰も責任を負わないようなら、今後の事故処理対策もうまくいく道理がない。また、現在、原子力発電所の再稼働が企てられているが、それは、再稼働後に事故が起きたとしても、だれも責任を負わずに済むことが、今回の事故で示されたからである。事故が起きた場合に、責任ある組織と個人を正当に処罰することができるなら、原子力発電など誰にも運転できない。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

草々

 

 <追>

最後に、小出裕章さんについて、申し上げにくいことを1つばかり申し上げなければいけない。それは、別添PDFファイルの『週刊金曜日』記事にある次のような小出裕章さんの発言のことである。

 

「(問)年配者は汚染品も食べようと提案し、反発も受けられましたね。

 

(小出裕章さん)本来は住んでも農業もやっていけない場所に捨てられた人は、そこで作物を作るしかない。「東電に買い取らせろ」という人もいるが、買っても捨てるだけ。仕事に誇りを持つお百姓さんや酪農家は初めから捨てられる物を生産できますか。被曝しながら作って下さる農作物をどうするか。50代から放射能への感受性は著しく鈍くなる。感受性の強い子どもは絶対避けるべきですが、原発を作ってきた責任のある大人は分担して食べるしかないと思います。」

 

私はこれには残念ですが賛成できません。「原発を作ってきた責任のある大人」をごくごく限定し、自民党・民主党の政治家や経済産業省の幹部官僚、あるいは原子力産業や原子力推進の立場だった御用学者や御用マスごみ幹部くらいの範囲内であれば、それもありでしょう。しかし、そうした「福島第1原発事故の責任者」の範囲を超えて、広く一般の国民の大人を意識しての発言であれば、受け入れることはできません。

 

基本は、小出裕章さんがいつもおっしゃっているように、「放射線管理区域指定基準」を超える地域からは、全ての人々がすべての産業とともに移転・移住・避難をするのです。汚染地域は無人化させ、放射能の自然減衰を待ち、放射能が拡散しないように閉じ込める努力を不断にしていく以外にありえないと思います。除染など、できるはずもありません。そして、そうしたことの基礎に、被害者への万全の賠償・補償と再建支援政策がなくてはなりません。事故後4年間、このあたりまえのことが、歴代の政府・政権によってサボタージュされ、加害者の原子力ムラが再建されるとともに、他方で、被害者が踏みにじられて放射能汚染地帯に居住を余儀なくされ、無用の被ばくを押し付けられているのです。これをひっくり返すには、被害を受けたもの同士が手を結びあい、一般の国民とともに立ち上がって、原子力ムラ連合軍と闘う以外に解決できる道はないのだと思います。選挙、裁判、社会運動、請願、ありとあらゆる手を使って闘う以外に、この理不尽な状態を突破する方法はありません。年取った大人は放射能汚染物を食べて死んで行け、これは話が違います。そんなことよりも、福島第1原発事故の加害者・東京電力や事故責任者・国を徹底追及し、被害者・被災者への償いをさせることに全力を挙げるべきです。

«  (メール転送です) 児玉・清水・野口『放射線被曝の理科社会』について/検討の呼びかけ (私の少し長いコメント付きです) | トップページ | 本日(3/28)のいろいろ情報(メール転送を含む) (1)辺野古基地建設阻止ネット署名 (2)報道ステーションの「古賀茂明降ろし」 (3)街頭に出る山本太郎 (4)映画「A2-B-C」上映中止事件 他 »

脱原発」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

«  (メール転送です) 児玉・清水・野口『放射線被曝の理科社会』について/検討の呼びかけ (私の少し長いコメント付きです) | トップページ | 本日(3/28)のいろいろ情報(メール転送を含む) (1)辺野古基地建設阻止ネット署名 (2)報道ステーションの「古賀茂明降ろし」 (3)街頭に出る山本太郎 (4)映画「A2-B-C」上映中止事件 他 »

最近の記事

無料ブログはココログ