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2015年1月 3日 (土)

こんなもののどこが「地方創生」なのか=失敗を重ねてきた、出来そこないの官僚制作の政策におんぶにだっこで、魂の入らぬ上っ面だけの「ゴマカシ政策」、これが安倍晋三政権の「地方創生戦略」だ

前略,田中一郎です。

(別添PDFファイルは添付できませんでした)

 

昨年末、安倍晋三政権の「目玉政策」である「まち・ひと・しごと創生長期ビジョン」「同総合戦略」(地方創生戦略)が明らかとなりました(下記サイト及び別添PDFファイルの新聞報道参照)。しかし、前評判で大騒ぎしていたほどの内容とはとても言えない、むしろこれまでの霞が関官僚が行ってきた「失敗証明付き」のガラクタ政策の寄せ集めのような観があり、やはり衆議院選挙対策(口先だけの大宣伝)の一つだったんだな、という印象を強くしました。加えて許しがたいことには、新年度予算での地方への対応や、各省ごとに行われる縦割り行政においては、依然として地方の活力や生活基盤を掘り崩すような「地方虐待政策」が続けられており、安倍晋三政権下では、かつての竹中・小泉改革時代と同様の「地方の一層の衰退」が進んで行きそうな気配です。以下、このバカバカしい「お粗末地方創生」を批判的にコメントいたします。

 

 <関連サイト>

(1)まち・ひと・しごと創生本部

 http://www.kantei.go.jp/jp/singi/sousei/

(2)まち・ひと・しごと創生本部 首相官邸ホームページ

 http://www.kantei.go.jp/jp/headline/chihou_sousei/

(3)まち・ひと・しごと創生「長期ビジョン」と「総合戦略」の全体像等

 http://www.kantei.go.jp/jp/singi/sousei/pdf/20141227siryou1.pdf

(4)日刊ゲンダイ「地方創生」を一斉にタレ流す大メディアの“政府PR報道”

 http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/155965

 

 <別添PDFファイル>

(1)地方で若者30万人雇用、政府、人口減対策案、実現性には疑問(東京 2014.12.26

(2)人口減対策 政府最終案 地方に若者雇用「30万人増」(朝日 2014.12.26

http://digital.asahi.com/articles/DA3S11525189.html?iref=comkiji_txt_end_s_kjid_DA3S11525189

(3)小中学校 統廃合促進へ、文科省方針 60年ぶり基準変更(朝日 2014.12.26

 http://www.asahi.com/articles/ASGDT4QZDGDTUTIL01B.html

(4)消費喚起型/地方創生型 新交付金4200億円(毎日 2014.12.25

 http://mainichi.jp/select/news/20141225k0000m020126000c.html

(5)片山善博の「日本を診る」:「地方創生」ではしゃぐ前に(『世界 2014.11』)

(6)「地方創生」という名の「地方切り捨て」(金子勝 『世界 2014.10』)

 

(田中一郎コメント)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

まず、上記の(1)(2)の新聞報道をご覧下さい。今般の「地方創生戦略」の概要がコンパクトにわかります。

 

「安倍晋三首相は地方創生のため「異次元の政策」に取り組む姿勢を強調していたが、各省庁の従来の施策を焼き直した内容も多く、実現可能性は見通せない」(東京新聞)と書かれているが、まさにそのとおりであり、これまでも何度も似たような政策が打ち出され、そのたびに霞が関官僚が役にも立たないガラクタ政策を並べ、失敗に次ぐ失敗を重ねてきた経緯を、再び繰り返そうとしている気配濃厚である。「異次元の政策」というよりは「低次元の政策」と言っていいものだ。

 

1.地方の雇用創出

 現状では「東京圏に毎年10万人の若者層の転入超過状態」に対して、この「地方創生戦略」では、15年度に地方に2万人の雇用創出以降、毎年2万人ずつ上乗せして5年間で30万人の雇用を地方に生み出す、という。しかし、これでは30万人ー10万人×5年=▲20万人で、地方から5年で20万人の若者が相変わらず東京圏へ流入してくることに変わりはない。それ以降も毎年10万人の雇用を創出するというが、それでも地方からの若者流出が止まる程度の話であって、地方が創生するほどの地方への若者の逆流が起きるわけでない。何と志の低い「戦略」なのか。

 

 そもそも、この「弱気のバナナのたたき売り」のような地方における雇用創出プランだが、具体的に方策はあるのか。朝日新聞の「地方創生の主な目標」で箇条書きに整理されているのを見てみると、①海外企業の直接投資、②農業の「6次産業」の市場規模拡大、③在日外国人旅行者の消費増、④在宅勤務導入企業増加、などが挙がっている他、就職情報提供の強化だの、就職あっせん強化だのといった、新味のない、今やっている事業の看板の付け替えのような施策が並んでいる。全くバカバカしいことに加えて、海外企業や特権的企業の投資の草刈り場にするとか、6次産業化によって地産地消型地場産業としての農業を食品産業資本の食いものにするプランまで「滑り込ませ」てあって、まことに地方を馬鹿にしたような腹立たしい施策の陳列という他ない。

 

 こんなもので地方に若者の(ちゃんとした魅力的な)雇用が新たに創生できるはずなどない、と断言できる。事が進めば、今以上に地方はひどいことになる可能性もある。若者が地方にいることができないのは、まともな職場、魅力ある就職先がないからであって、それをきちんと用意もせずに、就職あっせんなどいくらやっても問題が解決するはずもない。安定した職についている霞が関の官僚達にとっては、地方の雇用難など、所詮は他人事であるに違いない。そんな官僚達に具体的な施策を丸投げをするから、こういう施策しか出てこないのだ。地方の声は聞いたのか? 地方振興で頑張っている民間団体(役所の外郭団体や大学教授=特に経済学者は駄目だ)や企業の方が、より、現実性のあるいいプランを持っているはずだ。

 

 私なら、たとえば次のようなことを掲げるだろう。

 

(1)地産地消型地場産業としての農林水産業と、その関連産業(農・水=食品産業など、林=住宅産業(大工・左官育成含む)など、農林水共通=レジャー・観光など)の完全復興、そのための万全の方策=市場原理主義政策(TPP推進や低米価放置政策や規制緩和政策などがその典型)との決別や、国産農林水産品・食品需要の開拓(学校給食、食育、都市部でのマルシェ事業他)、農林水産業そのものへの支援の強化(4つの優先農業政策(①アメリカ優先,②WTO・FTA・EPA優先,③財政再建優先,④政治家・官僚・食品関連産業の利権優先)をやめる) ⇒ その結果、この分野に大規模な地方の仕事が生まれる。

 

(2)地場産業の育成と地場建設土木業者の育成による生活密接関連の公共事業拡充や、既存の産業インフラ・生活インフラの選択的・計画的メンテナンス事業の本格展開、地場産業は技術支援や販売支援などとセット ⇒ ここでも、郷土の誇りとともに、たくさんの雇用が生まれてくる。

 

(3)そして、過疎地域支援としては、「若者ふるさと支援事業(ふるさとニューディール政策)」とでも称して、全国10地域くらいに分けて「地方振興公社」(仮称)を創設し、ここで若者を数十万人単位で正規雇用した上で、過疎地域の「応援隊」として現地に居住して、様々な形で創意工夫して支援してもらう。人件費など、費用は兆円単位となるが、法人税減税など、馬鹿丸出しの政策に同額の財政資金が使われるくらいなら、こちらの方がはるかに有意義だ。

 

(4)安易に外部からの企業誘致などは期待しないし、政策的な促進もしない。また、危険極まりない原発・核燃料施設立地地域については、原発・核燃料施設の即時廃棄とともに、一方では立地自治体への、廃炉前と同水準の財政支援を行って、ポスト原子力の地域振興のモデルをつくり、他方では、電力会社より、その廃炉原発等を有償で買い取って、国として責任を持って始末をつける。電力自由化は、送配電の「所有分離」を行うこととし、再生可能エネルギー産業の地方での一大ブームを創造すれば、これにより、更に大きな雇用が地方で生まれることになる。

 

(5)評論家内橋克人氏の言う「FEC自給圏」の創生(=FOOD,ENERGY,CARE)こそが大きな目標。そのためには、介護や医療、それに教育・保育に関する政策の抜本見直し=無駄なダムや高速道路づくりをやめて、その資金を介護・医療や教育・保育分野に投じていく、抜本的な財政支出構造改革も必要だ。特に、地方における介護、医療、教育、保育に携わる若手人員を大幅に増やす計画(もちろん介護や医療や教育や保育の賃金や雇用条件の抜本改善が前提)をたてて、数年計画でやっていく。

 

2.地方への人の流れをつくりだす(地方への移住政策)

 上記1.と似たり寄ったりの施策で、東京から地方へ移住する人を、出入りネットで純増させようという。しかし、今東京圏など大都市圏から地方へ出て行く人の多くは、いわゆるリタイアー組で、まもなく介護が必要となる高齢者層が主である。そんな人を地方に行くように仕向けたところで、地方が活性化するとはとても思えない。むしろ、地方の潜在的な負担が大きくなるだけではないのか。

 

 首都圏への一極集中をストップし、分散型で持続可能な社会やに地方経済をつくっていくには、まず、上記1.で申し上げた、地方での雇用と地域振興のセット推進に全力を挙げるとともに、頓挫して久しい首都移転をまじめに考えよということだ。更にまた、事実上、第1次地方分権改革以降、改革が止まっている地方分権自治の第二次改革をスタートさせなければならない。その際には、竹中・小泉政権下で進められた「三位一体の改革」を根本的に反省し(=何だかんだで地方から約8~9兆円/年の財政資金(地方交付税他)が召し上げられ、削減になった)、地方から吸い上げた財政資金を自主財源として地方に戻す他、平成の市町村大合併についても、地方衰退の一大要因としてその欠点を反省し、市町村を時間をかけてコミュニティレベルのまとまりで再編していくような、新しい「平成の市町村分割」をスタートさせる必要がある。もちろん、道州制など、論外中の論外である。

 

 そして、当面の目標としては、地方分権分散型で持続可能な、重厚長大・大量生産大量消費型の成長至上主義経済を脱却した、文字通りの「コンクリートから人へ」の政策と経済と、それを支える地方・地域社会を築く、ということが掲げられなければならないだろう。新聞報道されている今般の「地方創生戦略」は、こうした日本のあり方を根本から見直す「異次元」政策を避けて通り、小手先の、表面的なことだけをいじくりまわしている、まことに劣化はなはだしき地方向け場当たり政策の固まりという他ない。

 

3.結婚・出産の希望実現

 朝日新聞記事には「女性の第1子出産前後の継続就職率」向上や、「男性の育児休業率」の向上などが挙げられている。これらはまあ、言ってみれば、余計なお世話であって、こんなことを掲げるよりも、政治や行政がしなければならないのは、保育所の即時全面拡充であり(つべこべいわずに金を出して、さっさとちゃんとした保育所をつくれよ、オスプレイを買うのをやめればいいんだよ)、また、会社における女性差別の根絶のための法整備であり、更に抜本的には、若者世代の非正規雇用の原則禁止であり、全国一律1000円の最低賃金の実現であり、労働基準法他、労働関係法の抜本改正による労働保護の強化である。人間を人間として働かせよ、という若者の当たり前の願いを聞き入れないで、何が「結婚・出産の希望実現」か!!

 

(注:オバカな経済学者の中には、地方では物価が安いから全国一律の最低賃金は実態に合わないとか、適切ではない、とか言うとるのがいる。典型的な財界御用学者である。ものごとは逆で、地方の賃金が安いから購買力が低下して物価が安くなっているのであって、物価が安いから賃金を低くしていいということではないのだ。賃金と物価の負のスパイラルにストップをかけるには、全国一律で1000円の最低賃金を即時に導入し、経営体力の乏しい中小企業には経過措置として、経営支援をしていく、そういう政策を早く実現することが、地方活性化の第一歩である。)

 

4.まちの活性化

 朝日新聞記事にある「中古住宅のリフォーム市場の拡大」や、「ふるさとづくり推進組織数の拡大」などが悪いわけではないが、いかにも小粒で迫力がない。まちづくりについては、少し前にご紹介した、五十嵐敬喜元法政大学教授らが、今般、国会の衆議院法制局と協議の末、まとめられた「都市改革・都市計画制度等改革基本法(案)」をきちんと法制化のスケジュールに位置付け、今後展望される人口減少社会における、住民参加のまちづくり基本法として、その導入・定着を図ることが最重要である(2014118日の私のメールを参照)。地価が上昇をし続け、公共事業を湯水にように財政資金を使ってやっていく、徹底した規制緩和で不動産業者や建設業者、ディベロッパーの金儲けを優先させる、都市計画は後回しにして、商売や事業の邪魔にならないように骨抜きにする、そんなことを今までさんざんやってきて、それを反省することも改めることもしないまま、地方の「まちの活性化」など、出来るはずもない、と思った方がいいだろう。また、上記の都市計画法改正案では取り上げられていない農村部や山村地域での乱開発防止等を念頭に、農地法(たとえば農地転用の原則禁止)、森林法(たとえば保安林解除の厳格化)、国土計画法(たとえば土地利用規制の原則見直し)など、幅広い関係法律を変えていく準備も必要だ。

 

5.「地方創生戦略」をよそに、繰り返される省庁縦割りの「地方衰退促進政策」

(1)小中学校 統廃合促進へ、文科省方針 60年ぶり基準変更(朝日 2014.12.26

 http://www.asahi.com/articles/ASGDT4QZDGDTUTIL01B.html

 

 小中学校など、学校施設は、各地方やコミュニティの中核をなす施設であり、絶対になくしてはならない生存・生活インフラの一つである。それを文部科学省は、費用がかさむなどと言いつつ、地方から廃止・削減・撤去しようとしている。こんなことをしていて、何が地方創生か。

 

 郵便局、役所、公民館、農協、学校、雑貨・飲食品小売店舗、ガソリンスタンドなどなど、生活のインフラとなる各施設がそろっていてこそ、人間は人間らしい暮らしができるのだ。公共交通などの交通手段もそうだ。高齢化してくる地方を苦しめるようなことはやめて、逆方向の政策を熟慮せよ。

 

(2)消費喚起型/地方創生型 新交付金4200億円(毎日 2014.12.25

 http://mainichi.jp/select/news/20141225k0000m020126000c.html

 

「地域内の消費を促すため、商品券の価格より利用可能額が大きい「プレミアム付き商品券」や、地域外の需要を取り込むためインターネット上などで販売する「ふるさと名物商品券・旅行券」の発行を支援する。このほか、低所得者向けの灯油購入費や、バスの利用などに使えるサービス購入券などへの助成も想定している」などと、毎日新聞は報じている。

 

 熟慮した結果がこれか、まことに嘆かわしいという他ない。もはや安倍晋三政権や自民党、あるいは霞が関の官僚達には政策能力がなくなってしまったに違いない。かような4200億円は、無駄遣い以外の何物でもない。「地方創生戦略」だって? 寝言は寝て言え、である。

 

6.岩波月刊誌『世界』掲載の2つの論文

 上記にご紹介した2人の慶応大学教授、片山善博氏(元鳥取県知事)と金子勝氏(元東京大学教授)の安倍晋三政権の地方政策・「地方創生戦略」に対する批判が、鋭く的を得た内容になっているので添付しておきます。ぜひ、ご一読されてみてください。

 

 <最後に>

 安倍晋三政権の自民党政治家諸君、あなたたちに地方再生・地方創生の政策能力がないことが今般よくわかったので、もう税金の無駄遣いになるから、この政策は「お開き」にして下さい。そして、しかるべき有識者をご紹介するので、その方々の指示に従って動いてくれませんか? 霞が関の官僚達は、上層部を中心に、一度、がらがらぽんで入れ替えた方がいいと思いますよ。

草々

 

 

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