● 環境省_「東京電力福島第一原子力発電所事故に伴う住民の健康管理のあり方に関する専門家会議の中間取りまとめを踏まえた環境省における当面の施策の方向性(案)」に関する意見募集(パブリックコメント)について
http://www.env.go.jp/press/100098.html
今回の「施策の方向性(案)」も、そのベースになっている「(専門家会議)中間取りまとめ」も、いずれも福島第1原発事故で理不尽な被害を受け無用の被ばくを強いられた被害者の方々の期待や要望を裏切り、かつ、我が国の今後の放射線防護や被ばく医療の方向性を大きく歪めるものと考えられるため、全面的に白紙撤回を要請する。特に、専門家会議については、構成メンバーが偏っていて発足当初から(住民の被ばく評価も健康管理や医療対策のあり方などについても)まともな議論や検討ができておらず、その審議状況や「中間とりまとめ」の内容は「犯罪的」に近いものと言える。特に放射線被曝の危険性を矮小化・歪曲し、無用の被ばくを強いられた被害者の方々に対する背信的で「切り捨て」的なふるまいは断じて許されない暴挙であり、また、そのこと自体が、被害者の意向を十分にお聞きして、それを踏まえよ、と定めた「子ども被災者支援法」という法律(あるいは国際放射線防護委員会(ICRP)などの国際機関の勧告などにも)に真っ向から違反するものであることを指摘しておく。この専門家会議はただちに解散し、所管を環境省から厚生労働省へ移行させたうえで、新たに放射線被曝に厳しい見方をしている有識者や、疫学調査・研究に詳しい専門家らを招き、何よりも被害者の代表を多く入れて、再度、迅速かつ抜本的な見直し論議を進めるようにしていただきたい。
(「施策の方向性(案)」に対する私の意見の後に、「(専門家会議)中間とりまとめ」に対する批判=問題点を箇条書きメモの形で列記した)
1.「施策の方向性(案)」が初期被ばく評価に偏っている。住民の初期被ばく量は国や福島県庁(及びそれらの関係機関)、及び原子力ムラ・放射線ムラの人たちにより、その検査や調査が必要であった時期に、意識的・作為的に妨害されたり、回避されたり、不作為放置・放棄され、のちのち初期被ばく量がわからなくなることが意図されていた様子がうかがわれる。そしてそれらのことは、SPEEDI情報の隠ぺいや安定ヨウ素剤服用の妨害(他方で福島県立医大構成員たちだけで、その家族も含め密かに服用していた)、あるいは出鱈目な住民避難指示や被害者政策と裏腹の関係になっており、今日の初期被ばく量把握の困難は「未必の故意」による意図された結果であると言える。
従って、今になって「風が吹けば桶屋が儲かる」式の乱暴な屁理屈の積み重ねで初期被ばく量を推定することよりも(しかも、被ばく量をできるだけ小さく見せるための作為的な「仮定」「前提」を多く用い、歪められた「低線量被ばく」がでっち上げられている)、もっと別の観点から、福島第1原発事故による放射能汚染や住民被ばくの状況を把握して行くことが必要ではないか。(具体策の例は下記にいくつか列記しておくが、これも専門家会議の本来の検討事項の一つである)
しかし、専門家会議では、「統計学的な有意性」なる言葉を持ちだし、シロウトだましの議論で、あたかも初期被ばく量が小さく、健康被害は出るはずがないなどと、非科学的・非実証的で根拠の乏しい独断と偏見、あるいは政治的な思惑や作為で、結論や、それから導かれる今後の対応方策を歪めており、とても看過できるものではない。しかも、その歪んだ結論を補強するため、「国連科学委員会(UNSCEAR)」やWHOなどの、いわゆる「国際原子力マフィア」と言われる原子力推進機関の代表のような組織の作成したいい加減な報告書を、我田引水的に都合のいいところだけをつまみ食いしたり、内容を歪めて引用・紹介するなどしており、こちらも単なる「誤り」を通り越して卑劣極まりない背信行為と言わざるを得ない(専門家なら、その報告書を批判的に検討・吟味してしかるべきであるのに、しようともしていない)。こうした放射線被曝評価「詐欺」のような行為は、もういい加減にやめ、福島第1原発事故後に放射能汚染地域で実際に起きているさまざまな懸念事項に真摯に丁寧に目や耳を傾け、それらが住民の方々の今後の健康を害するものとなって行かぬよう、万全の対策を未然に打つ検討を始めねばならないはずである。
<山のように存在する低線量被ばくによる健康被害の報告書:最近のものの例>
● チェルノブイリ原発事故後25年以上が経過した段階でのウクライナやベラルーシの報告書
● 英国:小児のCT検査と脳腫瘍及び白血病の関係(2012年)
● 英国:自然放射線と小児白血病罹患率の関係(2012年)
● オーストラリア:小児のCT検査と発がんの関係(2013年)
● ドイツ:原発周辺における5歳以下の小児白血病の発生状況(2008年)
● 日本:放射線影響研究所(RERF)のLSS14報
● 日本:原発労働者20万人調査で10mSvでがん死亡リスクが3%増加
● カナダ:心筋梗塞時レントゲン検査(血管造影・CT等)でも10mSvでがん死亡3%増
従って、もう(似非)「専門家」の「初期被ばく評価」などといったインチキ行為は終わりにし、従って「施策の方向性(案)」の最初に書かれている「2(1)事故初期における被ばく線量の把握・評価の推進」は、とりあえず中止にすること。それに代えて、住民の放射線被曝状況のより正確な把握のため、下記のような取組(<違う観点からの住民被ばく量の把握への取組:例>)を行ってはどうか。しかし、いずれにせよ、今となっては住民の被ばくデータが存在せず、また今からでは入手することもできないのだから、その推定には限界がある。従って、大事なことは次の3点((1)~(3))であると考える。
(1)事故直後の初期被ばくを含む被ばく評価よりも、今現に進展しつつある(健康上あるいは遺伝上の)事態に着目し、それを正確かつ詳細・緻密に検査や調査で把握する(+体制を確立する)とともに、その結果に対して将来後悔しないための対策を先手・先手で打って行く、被害者住民の立場に立って施策を考えて実施する。
(2)初期被ばくよりも、今現に進行している追加被ばくに、より注目度を高め、それに対する放射線被曝防護と被ばく医療のあり方を早急に検討し打ち出すこと(恒常的な低線量被曝(外部被爆・内部被曝)の危険性と、それに対する万全の警戒)。放射線被曝に感受性が高い世代を中心に避難・疎開・移住や長期保養などの抜本的な対策も視野に入れるべきである。
(3)初期被ばくの把握ができなくなった原因と責任の究明を行うこと。別途、調査委員会を設け、過去にさかのぼって、初期被ばく検査の妨害や不作為の実態を明らかにし、再発防止策を検討すること。およそ、今後の放射線被曝防護や被ばく医療と住民の健康管理を考えていく上で、こうした放射線被曝の隠蔽・歪曲・矮小化の「土壌」「組織的体質」がある限り、いい仕事はできないし、いい結果を生みだすことは困難であるからだ。
<違う観点からの住民被ばく量の把握への取組:例>
(1)航空機による大ざっぱな放射能汚染状況の把握をベースに考えるのではなく、福島県を中心に、主な放射性核種ごとに早急に「汚染マップ」をつくり、住民の被ばく防護に役立てること、また、「系」として、この汚染マップから初期被ばく量を推定すること
(2)昨年12月末にNHKが放送した2つの番組「(「NHKスペシャル|メルトダウン File.5 知られざる大量放出」と「サイエンスZERO」=セシウム・ボール)について、研究を深化させること。前者で申し上げれば、たとえば事故直後の3/16(3月16日:以下同じ)の放射性ヨウ素放出は、それまでの10倍以上のものであった、などと放送されており、これまでの放射性ヨウ素のプルームの放出・移動状況と併せて、住民の被ばく評価に反映させる必要がある。また、放射性セシウムなど、他の放射性核種については、3/15以降の放出の方が量が多かった(75%は3/15以降)と放送されていたこともあり、再度、放射能プルームの動きに注目が必要である。
(3)放射性ヨウ素や放射性セシウム以外の放射性核種の放出状況や汚染状況にも着目する必要がある。特に、NHKが放送した「サイエンスZERO」=セシウム・ボール)=ホット・パーティクル については、もっと詳細な分析が必要だ(放射性セシウム以外の他のさまざまな放射性核種が含まれているので「セシウム・ボール」というネーミングは不適切である)。また、呼吸被曝の危険性、アルファ核種(プルトニウム、ウランなど)やベータ核種(放射性ストロンチウム、イットリウムなど)の影響、あるいは、放射性セシウムや放射性ヨウ素129などによる長期にわたる恒常的な低線量被曝(外部被爆・内部被曝)の危険性についても慎重な評価が必要で、特に今現在の各地域の汚染状況が住民の健康を害する可能性をもっと厳格・慎重に評価する必要がある。事故後約4年がたとうというのに、未だ20ミリシーベルト以下なら何の問題もないかのごとき言動は厳に慎み、少なくとも旧ソ連諸国のチェルノブイリ法で定める5ミリシーベルト/年以上(これは概ねわが国の放射線管理区域指定基準でもある)は原則として避難・疎開・移住が必要であり、また1ミリシーベルト/年以上は、さしあたり危険である(少なくとも安全ではない)という評価を示して、ものごとを進めるべきである。
(4)家畜や微生物・昆虫を含む様々な野生生物とその生態系、更には海洋生物と海洋生態系における放射能汚染と、その生物に与える健康影響を、もっと大規模に、綿密に、長期にわたり観察し、情報を共有化して人間の放射線防護に役立てるべきである。家畜や野生生物の被ばく評価は人間の被ばく評価に役に立つ。(たとえば人間に近い阿武隈山系に生息するニホンザルの観察などは非常に重要である)
2.「2(2)福島県及び福島近隣県における疾病罹患動向の把握」は重要な部分だが、ここでも、被害者住民の健康検査・調査を頭から否定して、実態の把握をやりもせず、「住民の健康被害は予測しにくい云々」で、新たな取組を門前払いしている。これでは、被害者住民の納得も得られないし、今後の放射線被曝対策を鑑みた場合、広く有権者・国民の理解も得られないだろう。(たとえば栃木県北部や千葉県北西部などでは、福島県よりも高い汚染度の地域が散在しているし、その他の地域でもホット・スポットはいたるところにある)
主として政治的な意図から発せられる科学的実証的根拠の乏しい「健康被害は予想しがたい云々」のゴタクを並べるのはもうやめよ。まず、そんな先見・偏見よりも、福島第1原発事故で放射能汚染に見舞われた東日本の広い地域で充実した健康調査・検査を実施し、今実際に現場では何が進行しているのかを、誰もが納得できる形で、実証的に示せるよう、そのための体制をつくることが最大の重要課題であるはずだ。
そして、そのためには、これまで約3年間にわたって行われてきた「福島県民健康調査」のあり方を抜本的に見直し、多くの有識者から提案されていた改善事項を直ちに実施に移していく必要があるし、それをまた、上記の福島県以外の地域における新たな健康管理調査・検査にも取り入れていく必要があると思われる。また、「福島県民健康調査検討委員会」のメンバーも、再度、全面的に入れ替え、ここにも住民の代表を多く入れて(他方で、長崎大学、広島大学や福島県立医大あるいは放射線医学総合研究所などの放射線ムラの方々には退陣していただき)、被害者の立場に立った充実した検査・調査ができるようにしていくことが必要である(下記に具体的提案を付記した)。(福島県以外でも住民の健康管理・検査・調査を実施していくのだから、そもそも「福島県民健康調査検討委員会」は厚生労働省所管の国の委員会に切り替えることも必要ではないか)
それから、次の3点((1)~(3))は、当面の「福島県及び福島近隣県における疾病罹患動向の把握」において、国が責任を持って施策すべき必須の最重要な対応事項である。初期被ばく量評価云々の、意味の乏しい、無用の検討をしているヒマはない、というのが偽りのない現状のあり様である(福島第1原発事故後、放射線被曝対策が手抜きされ、歪められてきた結果としてこうなっている。国や関係省庁の責任は重大だ)。
(1)今現在の「福島県民健康調査」や、福島県以外の周辺都県での住民の健康管理や健康政策で欠けている重大な点は次の5点(a.~e.)である。従って早急かつ抜本的な改善が望まれている。
a.放射性ヨウ素(131)や放射性セシウム(134、137)だけでなく、それら以外のいろいろな放射性核種にも着目し(放射性ヨウ素129、放射性ストロンチウム、プルトニウム、トリチウム、キセノンなど)、かつ、その形態(ホット・パーティクル(セシウム・ボール)、ナノサイズ放射性物質など)にも万全の注意を払い、福島第1原発から放出された全ての放射性物質のもたらす全ての健康被害を視野に入れる必要がある。セシウム134,137とヨウ素131だけが危険な放射性物質ではない。
b.従ってまた、注目すべき健康被害は甲状腺がんだけではなく(甲状腺なら、がん、以外の甲状腺機能の障害疾患(橋本病など)も考慮に入れる)、チェルノブイリ原発事故後に旧ソ連諸国に現れている様々な健康被害や病気・疾患等も考慮に入れ、それらを適切にタイムリーに把握していける体制と検査・調査を実施することが重要である。(考えられる検査項目は、甲状腺エコー検査に加え、血液検査・白血病検査、7Q11染色体異常検査、白内障検査、エピジェネ異常検査、心電図、尿検査、高性能WBC、バイオアッセイ(歯、大便、毛髪他)、等が必要)
c.福島県においては、18歳以上の成人男女についても、甲状腺エコー検査に加え幅広い検査を実施すること。また、放射線感受性の高い妊婦さんや乳幼児への検査については、拡充方向で丁寧な見直しが必要
d.福島県以外の東日本一帯に広がる放射能汚染都県での健康管理や検査・調査の(福島県と同レベル・同内容での)実施も必要不可欠である。何故なら、福島第1原発から放出された放射能は県境で止まっていはいないからだ。こんなことは議論するまでもなく自明なことであり、これに対する住民や関係自治体の要請も強い。にもかかわらず、これを踏みにじることは、重大な人権侵害であり、また、背信行為であることは申し上げるまでもない。
e.万が一の放射線被曝による健康被害が出た場合の医療体制を、被害者に費用負担をさせないという点を含めて、しっかりと構築しておく必要がある。医療関係の情報を統制するために福島県立医大に検査情報を集中させたり、診断を独占させたりする作為は無用・有害であり、やめること。また、被害者の検査結果や診断結果・カルテなどが散逸しないよう、その保存体制をしっかり作っておくことも重要だ。
(2)放射線被曝による健康被害を適切に把握するためには、がん統計や死亡統計(死因の正確な把握と死者数)が適切に運営されなければならない。これについても改善すべきことが多いはずである、また、死因究明のための「死体解剖」の医療機関等での体制と法的整備も必要である。
(3)申し上げるまでもないが、一部の御用学者・似非委員から出されていた「過剰診断・過剰診療」の議論は、福島第1原発事故後の住民の健康管理や検査・調査における議論の場ではやめること(被害者に対して無礼であり背信的である)。やるなら、例えば学校や職場の健康診断や、医療機関における日常的な「検査漬け」「薬漬け」に対して問題提起せよ。
3.「2(3)福島県の県民健康調査「甲状腺検査」の充実」についても、上記で申し上げたことと同じことが言える。初期被ばく量云々の根拠の乏しい予断と偏見と、何よりも、被ばく矮小化・歪曲の政治的プロパガンダをやめ、被害者の立場に立って甲状腺検査の拡充に取組む必要がある。甲状腺検査のやり方(もっと丁寧に)、検査体制・人員:検査機器類の一層の充実、検査を受けた被害者へのフィードバックの充実や手続きの抜本改善(検査時において手交せよ)、検査や診断や診断結果への情報統制をやめる、などなど、検査を受ける被害者の方々の要望や声をよく聞き、それを検査の仕方に反映させることが肝要だ。
また、昨年末(2014年12月25日の第17回「福島県民健康調査検討委員会」)に、第2巡目の甲状腺がん検査で、第1回目の検査では「問題なし」とされた子ども4人に、新たに甲状腺がんが発見された。このことは、少し前に鈴木真一福島県立医科大学教授が明らかにした「手術した子どもたちの甲状腺がんは悪性のものが多く、手術はやむを得なかった」と併せて、非常に重い意味を持っており、早急にこれまでの「福島県民健康調査検討委員会」のいい加減で無責任極まる姿勢や方針を変える必要のある発見である。今のままでは福島県や、その他の都県の放射能汚染地域の子どもたちが危ないと言わざるを得ない。
(それから、青森、長崎、山梨で実施された数千人規模の疫学的な甲状腺がん調査は、福島県での甲状腺がん検査と比較するには、①人数が少なすぎる、②検査対象性別や年齢構成が違う、③検査の仕方も違う、などの理由から、直接比較するのは難しい。せっかく疫学的な調査をやるのであれば、福島第1原発事故による放射能の影響が小さいと思われる西日本で、もっと大規模に実施されるべきである)
4.「2(4)リスクコミュニケーション事業の継続・充実」については、既に被害者住民をはじめ、多くの有識者や関係者からの批判にあるように、環境省を含む政府が実施している「リスクコミュニケーション」なるものが「コミュニケーション」でも何でもなく、ただ政府の(政治的に歪められた、聞く方にとっては理解し難い)一方的な見解や評価の押し付け、ないしは宣伝にすぎず、従ってまた、典型的な「ワンウェイ」的営みに終始している(「リスクコミュニケーション」=「リスコミ」ではなく「スリコミ(刷り込み)」=「スリコミニュケーション」だと揶揄されている)。
従って、当面はこの「リスクコミュニケ―ション」なるものはやめにして、まず所管省庁(今までなら環境省、今後は厚生労働省)の幹部クラスの人間が参加して、被害者の方々と協議ないしは対話を行い、その要望や意見を自分達の施策に反映させていくことが肝要である。また、今回の「専門家会議」のような審議会等にも被害者の代表に多く参加してもらい、報告書や提言にその声が反映されていくよう、所管省庁が尽力する必要がある。現状のように、被害者との対話の場に幹部クラスは絶対に出てこない、被害者の声や要望は聞き置くだけで施策に全く反映しない、神経を逆なでするような政府の見解や方針が一方的に伝えられるだけで、それに対する被害者側からの質問や疑問にもまともに答えない、こんな調子で、リスクコミュニケーションが成立するはずもない。
また、「福島県及び福島近隣県の各地域の状況や自治体としての方向性を尊重し、地域のニーズに合ったリスクコミュニケーション事業の推進に取り組んでいきます」などと称して、被害者住民の健康管理や検査・調査を実施しない理由を地方のせいにするようなことはやめていただきたい。何故なら、福島第1原発事故とその放射能汚染の全責任は加害者・東京電力や事故責任者・国にあるのであって、それゆえにこそ、その結果として必要不可欠になっている被害者住民の健康管理や検査・調査も、国が責任を持って実施すべきことだからである。福島第1原発事故の被害を受けた地方に対して、国は自分達の後始末の責任を転嫁するな、ということである。
それから、新聞報道その他で伝えられるところでは、「福島県民健康調査検討委員会」が定期的に公表している子ども甲状腺がん検査の結果など、健康調査の結果について、肝心の福島県民の多くが知らないでいる様子がうかがえる。これはゆゆしき事態であって、国や福島県庁、ならびに「福島県民健康調査検討委員会」の責任が問われてもいたしかたないだろう。早急に、健康調査結果の県民へのフィードバックのあり方を見直すべきである(例えば、子ども甲状腺がんの発生数が112件にのぼり、そのうちの4人は第1巡目では「問題ない」と判定されていた、ということを福島県民のどれだけの方がご存じだろうか?)
<具体的な「福島県民健康調査」の改善事項:例>
(1)「福島県民健康調査」の抜本改革
福島県以外の汚染された都県でも実施すべき
子どもだけを対象にするのではなく全年齢層で実施すべき
検査すべきは甲状腺ガンだけではない
(甲状腺エコー,尿検査,血液検査(染色体異常・エピジェネ異常他),心電図,
WBC検査,バイオアッセイ(検便・脱歯・髪の毛他:ストロンチウム,α核種)他)
「7q11」染色体の検査・異常確認
全国で,ワンストップで,上記の全部の検査を同時にやる体制づくり
各検査の内容充実(甲状腺検査はスクリーニングではなく,いきなり本検査でいい)
検査頻度を増やす(2年に1度ではなく受検者の状況に応じて3~12か月に1度)検査結果やカルテを含む全記録類の永久保存
セカンド・オピニオンの利用充実とその活用
健康保険対象+補助金で受検者は無料化 ⇒ 東京電力負担
各検査について比較可能とするための西日本や北海道での疫学的大調査の実施
体制の抜本改革(政府が前面に出よ,「福島県民健康調査検討委員会」のメンバーの更なる刷新,医療関係者・団体の救国的一致団結,財政サポート他)
(2)放射線被曝の未然予防
まず避難,除染するにしても,まず一時避難
放射線管理区域指定基準(5.2mSv/年以上)は全員避難
1mSv~5.2mSvは「避難の権利」
子どもは集団疎開,大人も子供も「コミュニティごとの移転」
汚染地域に残る人にも「無用の被曝回避」のガイダンス徹底
飲食品の検査体制の抜本改善と規制値の更なる厳格化,放射性セシウム以外の核種検査
政府が前面に出よ:被害者への万全の賠償・補償・再建支援,「原子力事故による子ども・被災者支援法」及びその基本方針の拡充方向での見直し他
自然環境モニタリングの拡充(野生生物の変化をつかまえよ)
(「中間とりまとめ」はここがおかしい)
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環境省「東京電力福島第一原子力発電所事故に伴う住民の健康管理のあり方に関する専門家会議」の「中間とりまとめ」について
1.放射能汚染から住民や子どもたちをどう守るかの議論が全くないまま、初期被ばく線量を含む被ばく線量の推定評価に終始、最初から被ばく防護の観点ゼロ
しかも、委員の人選を見ると、原子力ムラ・放射線ムラの「仲良しクラブ」
福島第1原発事故の放射能汚染と被ばくは大したことはないの「結論ありき」
審議の途中で多くの市民や被害者住民から長瀧重信座長解任要請が出たのは当然
2.福島県の子ども甲状腺がん(112件)について、多発ではなく「スクリーニング効果」だとの、おかしな「見解」に固執、被ばく被害を頭から否定(まるで、あらかじめ放射線被曝の健康被害は認めず、被害者は切捨て、と決めているかのようだ)
(その根拠)
(1)甲状腺がんは成長・拡大が遅い
⇒ 多く発見しているのは「スクリーニング」効果だ
*それは大人の乳頭がんの話、子どものがんは違う(速い)、かつ(悪性度の高い)低分化がんあり(米CDC(疾病管理予防センター):甲状腺がんは、子ども1年、大人2.5年の潜伏期間)
*「スクリーニング」効果なら、手術しなくてもいい静かなガン(通常は成人になって相当時間がたってから発見されるもの)が多いはずだ
⇒ しかし実際は、ほとんどが手術が必要=しかも、他臓器やリンパ節へ転移、周辺部位へ浸潤、反回神経(声帯)が危険なものも多い(鈴木真一福島県立医大教授が「過剰診断・過剰診療」批判に反論して隠していた事実を暴露)
(2)チェルノブイリ原発事故では子ども甲状腺がん多発は4年目以降
発見が遅れた理由は下記、4年目以降から多発したのではない、発見が遅れただけ
*甲状腺の検査機器類がなかった、
*ソ連の医師たちが甲状腺を見ようとしなかった
(3)被ばく線量が小さい、100ミリシーベルト以下は放射線被曝原因のがんを「統計的に有意」な形で把握できない=大した被ばくではないと説明
根拠なし、国や福島県庁・健康管理委が検査を妨害・未必の故意による不作為、SPEEDI隠蔽、安定ヨウ素剤服用させず、放射能モニター実態示さず、初期被ばく検査妨害、WBC等機器類用意せず=ごく少人数をいい加減な検査
⇒ 一貫した「被ばく隠蔽・もみ消し」の姿勢
200万福島県民、それにその周辺都県の各個人の被ばく線量は、結局、(意図的・作為的に)ほとんど計測されなかったから「わからない」、それでも甲状腺等価線量で50ミリシーベルト以上の被爆者(子ども)がいる(発がん可能性)
(一般論として)100ミリシーベルト以下でのガンその他の疾患の多発証拠は山ほどある(小児・妊婦のCT、原子力施設労働者、航空機乗務員、原発周辺住民など)
そもそも「統計学的有意性がない」=「被害がない」ことではない(シロウトだましの議論のすり替え)
(4)食べ物の汚染度は低い
チェルノブイリ原発事故では汚染ミルクやキノコなどを食べていた、日本は違うなどというが飲食品の汚染状況もよくわからない、人それぞれ、ホット・スポット的な飲食物があり危険
(5)チェルノブイリ原発事故では5歳以下の小児が多かった
チェルノブイリ原発事故では、5歳以上の甲状腺がんも増大した(山下俊一論文)。また、検査対象者や検査の仕方が違う(アクセスの仕方が違う)ので発見タイミングが違う=単純に比較できない
3.「国連科学委員会(UNSCEAR)」やWHOのいい加減な放射能汚染・被ばく状況調査報告に寄りかかり、専門家として、その内容を吟味・検討しない。しかも、自分たちに都合のいい部分だけを引用したり(不都合部分は無視)、自分たちの都合のいいように書き換えて嘘八百の内容にして引用、
例:「国連科学委員会(UNSCEAR)」は「LNT仮説まで否定している」などと引用=嘘八百、「統計学的有意性がない=しかし被害はありうるし、それを極小化すべく被害者の現状把握や意向を反映させ被ばくを小さくせよ」の部分は無視
4.12月25日の「福島県民健康調査検討委員会」で発表された2巡目検査で4人の子どもたちに新たに甲状腺がん発見
⇒「中間とりまとめ」に反映せず
意味するところは、(1)子どもの甲状腺がんはわずか2年で大きくなり悪性だ、(2)最初の診断がいい加減だった、(3)初期被ばくだけでなく、その後の放射性セシウムや放射性ヨウ素129などによる被ばくの可能性 ⇒ このままでは危ない
5.12月末の2つのNHK番組:(「NHKスペシャル|メルトダウンFile.5 知られざる大量放出」と「サイエンスZERO」=セシウム・ボール)も「中間とりまとめ」に反映せず
3/15以降に75%の放射能放出 特に3/16に放射性ヨウ素を通常の10倍以上放出
⇒ 3/16の放射性ヨウ素のプルームの動きが重要
ホット・パーティクル(セシウム・ボール)の危険性(内部被曝、特に呼吸被曝)=「セシウム・ボール」などというネーミングはおかしい(放射性セシウム以外のさまざまな危険な放射性物質が含まれている)
6.甲状腺がん以外の疾患や遺伝的障害の可能性を頭から否定して観察も検査も調査もしない=もみ消してしまえ、のスタンス
(血液検査・白血病検査、7Q11染色体異常、白内障検査、エピジェネ異常検査、心電図、尿検査、高性能WBC、バイオアッセイ(歯、大便、毛髪他)、等が必要)
7.その結果、下記のようなトンデモ方策が打ち出されてくる
(1)「福島県民健康調査」の抜本的見直しと拡充は検討もされない
⇒ それどころか、被害者本人の健康管理のためではなく、疫学追跡調査を主目的に切り替えるような方針(まるで県民をモルモットにするような扱い・発想)
<検討すべき拡充内容>
検査項目の拡大、検査結果の被害者へのフィードバックの充実、検査記録の保存堅確性
18歳以上住民への検査や調査・健康管理の拡大、
放射線被曝防護(避難・疎開・移住や長期保養の保障等)、
被ばく医療充実(体制=病院・人員、費用負担無料化)
(2)福島県外への健康調査・管理・被ばく医療の拡大は絶対にしない(多くの自治体や住民からの要請は無視=蹴飛ばす)
(3)今行われている(不十分極まりない)「福島県民健康調査」を「過剰診断・過剰診療」などと誹謗中傷し「つぶそう」という執拗な悪意、ためにする議論
「偽陽性」判断の危険があるから検査・調査をやめろという暴論
実際は「偽陽性」はわずか1人だけ、むしろ「偽陰性」の疑いの方が4人で多い
「過剰診断・過剰診療」批判は今の学校や職場での健康診断などに振り向けよ
(4)福島県内外の被害者の方々の意向・意見・願い・要望・期待・怒り・反発・不信などを一切聞こうとしないし、反映もさせようとしない。(このことは国際放射線防護委員会(ICRP)勧告や「国連科学委員会(UNSCEAR)」報告に違反しているし、「子ども・被災者支援法」にも明確に違反)
(5)(似非)専門家会議に招かれた多くの専門家の意見や議論が全く無視され結果に反映されない=原子力ムラ・放射線ムラだけの議論と検討(これも上記違反)
8.なぜ、所管が厚生労働省ではなくて環境省なのか(そのココロは)
放射線被曝原因とはいえ健康と医療の問題=本来は厚生労働省の所管、しかも様々な疾患や病気と関連、かつ病院や診療所、介護施設とも関係、厚生労働省でないと実質的に対応ができない
(1)最初から「やる気がない」⇒
環境省を「前座」として使っておいて、内閣府・首相官邸や厚生労働省が拒否権を持つ
(2)情報を統制一元化しやすい
⇒ 環境省は御しやすい
(3)厚生労働省が所管を拒否している?
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草々