文脈破壊・短文化・ワンフレーズ化という、ものごとの「単純化」は、ネオ・ファシズムの萌芽である
前略,田中一郎です。
(別添PDFファイルは添付できませんでした)
別添PDFファイルは、昨今、東京新聞の「こちら特報部」に掲載された時事批評の記事です。現下における社会情勢・政治情勢を非常に適切、かつ鋭くとらえた、いい記事ですので、ご紹介申し上げます。私の若い頃には考えられなかったような歪んだ文化(カルチャー)が日本社会のみならず、市民運動・社会運動の一部にも広がり始めていることに、私は強い危機感を感じています。
様々な社会問題には、その背景事情として、場合によっては複雑な関係や絡み合いや利害の対立、あるいは過去の経緯などがあります。また、同じ問題について、肯定的・建設的な方向においてさえ、考え方ややり方が複数存在する場合もあるでしょう。そうした、ものごとの複雑さや多様性を「腕力的」に捨象してしまい、自分の関心がある側面からのみ単純化して、問題をワンフレーズ化、あるいは短文化し、複雑なことがらを「単純化」して宣伝・扇動するやり方が、この日本社会に蔓延するようになってきています。返す刀は、議論の打ち切り、対抗言論・異見言論の封じ込めです。
こうした社会風潮の契機は、2001年から始まる小泉純一郎政権時代のいわゆる「劇場政治」でしたが、当時のスケープゴートを創作=でっちあげてのバッシングとともに、この劇場政治とセットのワンフレーズ文化・短文化・単純化が、その後も日本にはびこり続けているのです。ネトウヨやそれに親近性のある安倍晋三政権の言動などは、その一事例だと言えそうです。要するに、単純化により、できる限り多くの人々を、わかりやすく、自分達の提示する(たいていは偽りの)処方箋になじませ、往々にして人間のもつ弱点である「劣情」に依拠し、自分達の(たいていは歪んでいる)思う方向へと、一気に誘導していきたいという「衝動」に基づくものと推測します。
そして、こうしたことは、ネット上でのツウィッターをはじめ、ブログやメールやその他の言論・表現ツールの上で、より一段と顕著になって、いわゆるネット言論の陳腐化、ないしは大きな歪みをもたらしていくことになります。議論を封殺した単純化フレーズなど、なんの価値もないことを悟るべきですが、しかし、多くの人々を自分の持つ「将棋の駒」のごとくに、自在に、スピーディに、大挙して、戦略的に動かしたいという野心をもつ者は、この「議論封殺の単純化、文脈破壊」の誘惑に耐えられないようです。まさに、ファシズムの萌芽と言っていい社会的センチメントが形成されているというべきでしょう。この次に来るのは、様々な口実を付けての言論・表現の自由の妨害であり封殺であり弾圧です。こ
権力者による、こうした「横暴」とも言える振る舞いに対しては厳しく批判していかねばならないと思いますが、私たち自身も、市民運動・社会運動を進めるにあたり、お互いに気をつけたいものだと思います。(昨今、集会やデモなどの時に、参加者の自由な言論・表現活動や当たり前の市民活動(署名やカンパ集めなど)を妨害する主催者が少なくないことに私は閉口しております。日本国憲法が危機下にあるというのに、何をやっとるのか、という感じです。一部の不心得者の市民運動・社会運動のリーダーや事務局の人間に対して、馬鹿なことはやめよ、と申し上げたいですね)
<別添PDFファイル>
● 衆院選の争点を決めるのは有権者、文脈破壊で議論封じ込め(東京 2014
12 4)
<上記の関連サイト>
●菅官房長官は「何で信を問うかは政権が決める」と言ったが、衆院選の争点を決めるのは有権者 今回の解散は「文脈破壊」で議論封じ込め——「小泉政権の郵政民営化」「安倍政権のアベノミクス」ワンフレーズ看破の1票が必要【東京新聞特報12-4
(一部抜粋)
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「何で信を問うのかは政権が決める」ー。安倍首相の解散会見翌日の先月十九日、菅義偉官房長官はそう発言した。この言葉に、現政権の二年間が集約されている。民主主義は国民による議論が土台だ。だが、その欝論自体を埋没させる傾向が強まっている。自らの欠点をさらす政権はない。信を問うべき論点は、国民自らが見抜かなければならない。総選挙は有権者の姿勢をも問うている。
「今回の解散は、脈絡もなく現状をリセットしてしまおうという独り善がりな試み。『究極の文脈の破壊』とも言える手法だ」大阪府立大の酒井隆史教授(社会思想史)はそう語る。
(中略)酒井教授の示す「文脈の破壊」とは何か。同教授によれば、国民の憤りを正面から受け止めず、不誠実な態度でかわし、議論自体を封じ込める手法という。つまり、議論と思考を妨げる手段といってもよい。「安倍政権はこれを駆使してきた」。例えば、福島原発事故。汚染水対策が行き詰まっているにもかかわらず、首相は五輪招致の場で〔コントロールされている」とうそぶいた。
秘密保護法には反発がわき上がったが、政権はこれに取り合わず、すぐさま集団的自衛権の行使容認を閣議決定した。沖縄県知事選では、米軍飛行場の辺野古(同県名護市)移設を争点ではないと明言した。
酒井教授は「次々に文脈を破壊すれば、その衝撃ばかりが強く、憤りの記憶が抹消されてしまう。これが文脈の破壊のたちの悪さでもある」と指摘する。その延長線上で解散総選挙が持ち出されたという。
(中略)さらに酒井教授は、現代のコミュニケーション手段も、この状況を悪化させているとみる。ツイツターなどの短文投稿サイトの広がりは、文脈の破壊の浸透を促進しているという。「百数十字程度の文章では、熟慮した考えを論理的に記したり、互いの意見を吟昧し合ったりすることは脇に追いやられてしまう。代わりにやじや罵倒、レッテル貼りといった行為が顕著になる。そこでは相手をやりこめることだけが目的だ。いわゆる『ネトウヨ(ネット右翼)』はこうした手法を駆使してきた」
文脈の破壊には全体主義の臭いがする。酒井教授は「フランスの哲学者サルトルは、ドイツのナチスによる反ユダヤ主義の特徴を『差別への抗議や真摯な憤り自体を侮蔑し、そこに愉快を感じさせた』点にあると分析した。この特徴は、現在の日本社会にも通じていないか」と話した。
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(田中一郎コメント)
少し前には、佐高信氏と辺見庸氏の対談記事(『週刊金曜日』)の中で、辺見庸氏がツウィッターに関して酒井教授と同じことを指摘していました。ちなみに私はツウィッターはやりません。辺見庸氏や酒井教授と同じ考えだからです。
草々
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