前略,田中一郎です。
(別添PDFファイルは添付できませんでした)
今月号の 『DAYS JAPAN』(2014年12月)に「(環境省)「東京電力福島第一原子力発電所事故に伴う住民の健康管理のあり方に関する専門家会議」で何が話されているのか:示唆される大規模検診の中止、住民の健康は守られるか」という特集が組まれました。久々の広川隆一氏取材・執筆の迫真の記事が充実した形で掲載されています。以下、それを簡単にご紹介するとともに、私のコメントをお送り申しあげます。(
『DAYS JAPAN』の記事から重要部分を若干引用しましたのでメールが長くなっておりますがご容赦ください)
別添PDFファイルは、この特集記事の3つの章のそれぞれの最初のページだけをPDF化したものです。著作権上の問題がありますので、転送転載はなさらないでください。みなさまには
『DAYS JAPAN』を直接お買い求めの上、全文を是非ともご覧いただきたいと存じます。放射線被曝問題についての見逃せない必読文献です。(別添PDFファイルはデータ量の関係で「白黒」にしていますが、原本はカラー刷りの見やすいきれいなページです)
● 『DAYS JAPAN』
http://www.daysjapan.net/about/index2.html
特集2:環境省「住民の健康管理の専門家会議」で何が話されているのか。(まとめ/広河隆一、DAYS
JAPAN編集部)
1 母親ら38団体が直訴 長瀧座長の解任を求める!
2 専門家会議報告 「専門家」たちは子どもたちにどのような未来をもたらすのか?
3 専門家会議委員・石川広己(日本医師会常任理事)インタビュー「検診は住民の方々にとっての『権利』だと思っています」
4 朝日新聞・甲状腺検診の中止路線を後押し?
<別添PDFファイル>
(1)健康管理専門家会議 (1)座長
長瀧重信氏の解任を求めます!( 『DAYS JAPAN』 2014.12)
(2)健康管理専門家会議 (2)「専門家」たちは子どもたちにどのような未来をもたらすのか(
『DAYS JAPAN』 2014.12)
(3)健康管理専門家会議 (3)専門家会議委員・石川広己(日本医師会常任理事)インタヒユー ( 『DAYS JAPAN』 2014.12)
< 『DAYS JAPAN』定期購読のお願い>
『DAYS JAPAN』jは、企業などからの広告に頼ることなく、みなさまの購読料のみにて運営されている、日本でも数少ない真実報道のフォト・ジャーナリズム雑誌です。みなさまの定期購読がこの雑誌を支えています。どうぞ、まだ定期購読されておられない方は、定期購読をお願い申し上げます。申し込みは、大手書店や下記サイトから可能です。
● 『DAYS JAPAN』HP
http://www.daysjapan.net/
(以下、田中一郎コメント)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
環境省「福島原発事故に伴う住民の健康管理のあり方に関する専門家会議」が強引に「結論ありき」を押しつける一連のやり方
2013年11月11日より始まった、この環境省所管の専門家会議は、当初から期待された役割・使命を果たすことなく、ただただ福島第1原発事故による放射能汚染とその被ばく被害を、可能な限り小さく見せ、従ってまた、現に発生し、将来はさらに多く発生してくるであろう放射線被曝による健康被害を、福島第1原発事故や放射能とは一切関係がない、とせんがための様々な伏線、事前準備、被害者切り捨て体制づくりのための議論にまい進している。下記は「放射線ムラ」の御用学者どもが多く参集した、この(似非)専門家会議において、そのインチキの手順というか、被ばく被害を切り捨てていく国家犯罪とでも言うべき「手口」の「あらまし」を略記したものである。ご参考までにご覧いただければ幸いである。
福島県ではもちろんのこと、福島第1原発事故後の日本では、脱原発=原発・核燃料施設の廃棄は国民的な共通認識となりつつある。もはや、あの原子力ムラのウソツキ人士たちの言うことをまともに受け取る有権者・国民はいなくなった。原発安全神話は福島第1原発事故とその後の対応の出鱈目という「厳然たる事実」により滅び去ったというべきである。(今なお原発推進が猛威をふるっているのは、民意を反映しないロクでもない政治家や官僚たちが、有権者・国民を無視・軽視して軽挙妄動を繰り返している結果である。愚かな一部マスごみや御用学者たちがこれをはやし立てる。こうしたことを転換できるかどうかは、日本の民主主義と政治の問題である)
しかし、その福島第1原発事故によってもたらされた放射能汚染や被ばくの問題(脱被ばく)や、その放射能・被ばくで被害を受ける方々の賠償・補償や再建支援の問題(被害者完全救済)については、この環境省の専門家会議に見られるごとく、「放射線安全神話」と「ALARA原則」(国際放射線防護委員会(ICRP))に牛耳られ、それをよしとしない脱被ばく派市民との間で、依然として激しいせめぎ合いの争点となっている。日本の市民運動・社会運動は、この脱被ばく並びに被害者完全救済の問題についても、判断を誤ることなく、原子力ムラ・放射線ムラ及びその代理店政府・自治体に対して、適切かつ有効に反撃を加えていく必要がある。第二の安全神話に振り回されてはならない。放射能や放射線被曝に「安全」など存在しないし、放射能汚染や恒常的な低線量被曝(外部被曝・内部被曝)と人間や生物・生態系は「共存」することなど不可能なのだ。
以下、環境省「福島原発事故に伴う住民の健康管理のあり方に関する専門家会議」が強引に「結論ありき」を押しつける一連のやり方を簡単に整理してご説明したい。
1.放射能汚染状況を隠蔽=住民に無用の被ばくを強いる(未必の故意)
福島第1原発事故直後から、この原発事故を極力より小さく見せ、やがて時間の経過とともに、たいしたものではなかったかの如く印象づけるためのさまざまな演出や伏線が用意されていた。原発そのものや原子力工学の分野では、「原子力ムラ」御用学者達があまりに幼稚な言論を展開したために、ほとんどの有権者・国民・市民からその正体を見抜かれ、福島第1原発事故後は発言権を事実上喪失した。しかし、「放射線ムラ」の方はそうではない。原発安全神話に代えて放射線安全神話が、また、原発との共存政策が原発過酷事故との共存政策に切り替えられ、原子力翼賛の体制がもたらされようとしている。
<放射能汚染状況の隠蔽行為の例>
住民に対する原発事故時及びその後の放射能回避の説明・案内・誘導・未然防止対策などが皆無(飲食品含む)、原発を監視する放射線量モニターの不適切設置(独立電源なし、津波かぶる場所など)、原発を監視する放射線量モニター情報の非公開・公開遅延、SPEEDI情報の隠蔽・非公表、避難指示範囲の狭さ・指示の極度の遅れ、ヨウ素剤服用妨害、放射性セシウム・放射性ヨウ素以外の放射性物質の無視・軽視、放射能汚染地域における農林水産業へのいい加減な対応、など
2.初期被ばく量計測の意図的放棄・サボタージュ(未必の故意)
のちのち、放射能汚染とそれによる住民の被ばくをごまかせるような用意周到な「不作為」や「検査・調査の放棄・サボタージュ」が事故直後から「未必の故意」によって継続されていた。まさに卑劣な行為=国家的犯罪と言わざるを得ない。「原子力ムラ」「放射線ムラ」とその代理店政府、及びその下請け自治体のなせる業である。
<初期被ばく量計測の意図的放棄・サボタージュの例>
WBC検査や尿検査を意図的に放棄・サボタージュ、あるいは妨害、民間・大学などの自主的調査・検査への妨害、いい加減で不正確な方法によりわずかばかりの実測値を確保し、その後、そのいい加減なデータを金科玉条のごとく「被ばく影響なし」の理由づけに使用、いつまでたっても健康調査・検査の充実した体制をつくらない、被ばくさせられた人々の健康被害の状況を記録し保存する体制もつくらない、など
(例えば、弘前大学被ばく医療総合研究所教授の床次眞司氏(とこなみ・しんじ)が進めていた住民被ばく調査を「不安拡大」を理由に福島県庁が妨害、多くの人々から提出されていた早急な尿検査による内部被曝調査を「福島県民健康管理調査検討委員会」が妨害・もみ消し)
(参考)弘前大学の床次眞司教授らが実施した調査には厳しい批判もある。私も彼らの「調査方法」や「結論」については納得していない。
● 東京電力(株)・福島第一原子力発電所事故:専門家インタビュー:床次眞司氏(テキスト)
http://www.jaero.or.jp/data/02topic/fukushima/interview/tokonami_t.html
● 福島県民62人の甲状腺被ばく調査 床次眞司・弘前大教授ら ― その詳細と疑問 -
Togetterまとめ
http://togetter.com/li/338805
3.この専門家会議が開催された目的は何だったのか
この専門家会議が開催された第一の目的は、福島県以外の放射能汚染地域において、甲状腺検査をはじめ、被ばくさせられた住民の健康調査や今後の健康管理をいかに進めて行くか、健康障害が出た場合の医療施策をどうつくっていくか、その費用負担の問題も含めて、被害者住民の声を反映させながら検討し結論を出すことであったはずである。それが、ふたを開けてみると、福島第1原発事故の放射能汚染と被ばくを矮小化し、小さく見せるための小細工を、屁理屈をこねまわして打ち出すための「陰謀会議」と化し、まるでおかしな陳腐化した議論が展開されている。
4.「あらかじめ用意された結論」を導くための茶番劇
福島第1原発事故後、放射性ヨウ素131が完全に消えてから検査などをやり始め、その後、初期被ばく量は「たいしたことはない」「健康被害を及ぼすレベルではない」と、科学的実証的根拠が乏しい中で断定的に言い始める。それはまるで「放射線ムラ」御用学者達の「データがないのだから(データはつぶしておいたのだから)、反論するなら、してみればいい、できるわけがないだろう」と言わんばかりの態度である。
また、住民の初期被ばく線量が健康被害をもたらすほどではない小さなものである、という「あらかじめ用意された結論」を導くための論証は、実証数字が存在しないことをいいことに、初期被ばくの被ばく量をいい加減で強引な方法で「推測」することにより、まるで「風が吹けば桶屋が儲かる」式のバカバカしい議論で、「懸念するには及ばない程度の被ばく線量にすぎない」という結論を導いている。もちろん、こうした結論に科学的実証的な根拠などあるはずもない。
この専門家会議では、最初から「あらかじめ用意された結論」を押し付けるべく、議論を初期被ばく線量の推計と、その線量を前提にした健康影響の度合いの議論に終始し、期待されていた福島県以外の地域における健康調査管理や被ばく医療体制の構築や、福島県で現状進められている健康調査管理や被ばく医療体制の改善や更なる拡充は、全く検討されることはなかった。いったい、この専門家会議の委員達は、被害者の健康のことや人権をどう考えているのだろうか。また、その議論の過程では、聞く者の耳を疑わせるような、あるいは聞くに堪えない歪みきった強引な結論誘導が多く見られ、いわゆる「放射線ムラ」の御用学者達のあまりのひどさ、なりふりかまわぬ醜態に唖然とさせられるものだった。繰り返しになって恐縮ながら、これはもう「専門家会議」などではなく、「放射線ムラ」の被ばくもみ消しのための「陰謀会議」である。
●「結論ありき」の「結論」とは
福島第1原発事故による放射能汚染や住民被ばくは懸念するほどのことはない、大した被曝ではない。心配しなくてもいいから普通に暮らせばよい。福島第1原発事故のような原発過酷事故(シビア・アクシデント)があっても、行政や住民が適切に対処し、被ばく量を自主測定したり、上手に除染をしたりすれば、多くの費用を掛けることもなく、原発の過酷事故や放射能汚染と共存して暮らしていくことが可能である。放射線被曝がもたらす健康被害は、被ばくの直接被害よりも、過剰な心配をすることによる精神的ストレス=過剰反応によるところの方が大きい。
5.専門家会議の「放射線ムラ」御用学者達が展開するトンデモ議論(事例として『DAYS
JAPAN』の記事から、ほんの一部を抜粋:下記は連続した文章ではなく、各段落ごとに「中略」で転機している)
(1)事故直後の2011年3月下旬にいわき市、川俣町、飯館村の小児1149人に実施された甲状腺被曝線量の測定結果と、事故後4カ月の県民46万人の外部被曝調査推計データのみをもって、住民の初期被ばくは懸念するに及ばない、たいしたことはない被ばくだったと断定
(上記についての田中一郎コメント)
小児の甲状腺検査はバックグラウンドが高い環境下で、サーベイメータをのどの甲状腺の部分に押し当てて計測するという、全くいい加減な検査で、こんなものは参考程度にしかならない。そもそも、実施した人数が少なすぎて、福島県やその他の放射能汚染地域を代表させることなど、とうていできない。また、県民46万人の外部被曝の推計も、各人の記憶があいまいなことに加え、その記憶に基づく行動結果から被曝量を算定する根拠が全く薄弱で、過小評価の前提の上で行われている=住民の行動から被曝量を算定する方法について、厳密な第三者検証もなければ、そのデータ根拠もいい加減なものである。環境放射能汚染の実態からかけ離れた数値が使われ、ホット・スポットの存在も無視され、また、内部被曝はノーチェックであるなど、こんな「推計モデル」は使えない。
(2)「石川委員や春日委員に続き、本間俊充委員(日本原子力研究開発機構安全研究センター長)も、被爆線量を確定するには不確実性が大きいことを指摘した。それに対し長瀧座長は「(病気の)発症に至るには(今回の被曝は)線量が少ないと明らかにしないと、住民は被爆のせいで甲状腺がんが出る! と心配する」と述べた。さらに「すでにがんの患者さんがどんどん見つかっておりますので、住民の方の恐怖といいますか、心配は非常に大きくなってきていますので・・・・・」とも述べている。
(上記に対する広河隆一氏のコメント)
「こうした長瀧座長の発言は、私には理解しがたい。彼は甲状腺がんが多く見つかっていて、人々の不安が広がっていることを認めているのに、その不安を払拭するためには、病気が放射能のせいではないという立証を急ぐべきだと言うのだ。住民はがんの発症に不安を覚えているのだから、検診体制をより充実して、早期治療の対策をたて、長くケアするというのが、人々の不安を鎮める常識的な方法ではないか。石川委員も「被ばく手帳」あるいは「健康手帳」のようなものを作り、将来にわたって、長く住民を医療で支えていくべきだと語っている。〉
(3)「ここで祖父江友孝委員(大阪大学大学院医学系研究科環境医学教授)が、長瀧座長の発言を援護するかのように、驚くべき発言をした。彼は、「多くの検査を行えばいいのかというと、そうでもなくて、検査を行うことによって、むしろご本人のためにならないというようなこともあり得る。放置しても、それほど大きな健康の影響をもたらさないようなものまで掘り起こして見つけることが、かえって不安を生じさせるということもあります・・・・・」と言うのだ。
(上記に対する広河隆一氏のコメント)
「これには耳を疑った。多くのがんが見つかることは、その人にとって確かにショックだが、見つからないより見つかった方が不幸中の幸いであるのは当然だ。治療の対策が立てられるからだ。人々は本当のことを知りたいのだ。」
(4)「長瀧座長はここで、委員に対し、次のように話し始めた。「関係した方は皆さん、もうご存じのとおりでありますけども、『人間ではまだ(放射能による)遺伝的な影響が認められていない』ということが意外に世の中に知られていなくて。例えば、動物実験であるとか、昆虫の実験を聞いて、被曝すると遺伝的な影響、あるいは子どもができないとか、福島でもテレビの前で中学生が、『私は子どもができないのだから』というようなことを非常に悲しそうな顔をして言われているのを見て、本当にどこまでこういう状況が続くんだろうかと…・」
(上記に対する広河隆一氏のコメント)
「長瀧座長は、放射能による遺伝的影響はないと断言している。因果関係が「確定されていないもの」を彼が「ない」と言っているにすぎないが、それでも、放射能とは遺伝子を傷付けるもので、チェノレノブイリでは、原発事故で被爆した女性が大人になり出産をした時にも、その影響を調べ続けていることを見てきた私は驚いた。それに、ベラルーシのミンスク遺伝性疾患研究所ではすでに、放射線による妊婦の染色体異常や、子どもへの遺伝的影響について発表している。」
(5)「しかし鈴木委員からは、検診のあり方に対して、リスクリテラシーの意見が出された。「不安を持っている人たちに、じゃあ、がんの検診をやりましようというのが本当のベストアンサーになるのかどうか。やっぱりリスクリテラシーというのをどう醸成していくかという中で、総合的に考えていかないといけない。何で今まで線量の話をやってきたかというと、『この線量レベルで、どういうリスクがあるか』を押さえた上で、どういう対策を考えていくか、総合的に考えるのだろうと思います。決してそれが検診という形に直結するとは、私は思っていません」
(上記に対する広河隆一氏のコメント)
「彼のこの発言によって、これまでなぜ長い時間かけて被爆線量の把握問題を議論してきたのかが、あらためて明らかになる。つまり、住民たちの健康支援については、線量から考えられる健康影響について情報を一元化し、検診をおこなうことで住民の不安を解消するのではなく、「影響はない」ということを伝えていくことが不安の解消には必要だ、としていくことである。」
(6)「検診が必要だと考え、検診によって人々を守るという石川委員たちの意見に対して、ここから祖父江委員が中心となり、検診の「不利益」論が展開される。「(検診によって)頻度的に多いのは、偽陽性といいますか、疾患がないのに検査の結果は陽性になったということです」(祖父江委員)。つまり、検査の頻度や対象者を増やすことによって、誤って陽性だと判断されることも増える。そうすると、がんではないという検査結果が判明するまで、がんではないかという不安が生じたり、検査を受けるための身体的負担が生じたりすることで不利益になる、というのだ。そしてこの祖父江委員の見解も、環境省が第12回専門家会議で出す「中間とりまとめ(案)」の中にしっかりと記載されることとなる。」
(上記に対する広河隆一氏のコメント)
「検査をすると間違った判断がされることもある。それは不利益だ。しかしだからといって検査をしない方がいいと考える人はいるだろうか。間違った判断をする場合の方が多ければそうだろうが、検査は病気を見つけるためにおこなうものだ。では検査をしないで何をしろと言うのだろう。」
(7)「長滝座長「がんが増えているということが、ここの委員会の結論になると、大変なまま・・・・・」
(上記に対する広河隆一氏のコメント)
「これは、甲状腺がんの増加も専門家会議としては非常に重要な議論課題であるはずなのに、この段階で、あたかも増えていないということを結論として決めていることを口にしたもので、座長としては不適任ととられても仕方のない言動である。」
6.上記の「放射線ムラ」御用学者による「トンデモ」議論に対する専門家会議でのそうでない委員の反論の例(事例として『DAYS
JAPAN』の記事から、ほんの一部を抜粋:下記は連続した文章ではなく、各段落ごとに「中略」で転機している)
(1)「制面についての議論が長く続くなか、石川委員が、肝心の健康管理の議論にならないことに疑問を投げかけ「今の議論はこれで終了して、次(具体的な支援についての議論)に進んだほうがいいのではないか」と発言した。」
(2)「崎山比早子氏は次のように言う。非がん性疾患も線量に応じて増加します。線量と疾患の関係は被曝後15年ではまだはっきりせず、53年経ってようやくわかってきたということです。福島の被曝影響、がん及び非がん性疾患に関しては、早急に結論を出さずに、長い期間調べなければならないとい」「現在の状況は、この原発事故を起こした責任を問われるべき東電が何らの責任も取らず、その東電から利益供与を受けている専門家が、事故の被害者である県民や市民の健康管理のあり方などを決める審議会のメンバーになっているという異常な状態にあります。これは正していただきたいと思います」
(3)「ここで清水一雄委員(日本医科大学名誉教授)は、「『チェルノブイリ事故後の住民に比べて福島県の被爆線量はかなり低く、甲状腺がんが大幅に増加するとは予想されない』と言い切っていいものでしょうか」と疑問を出した。石川委員も、「(この報告書で)一方では不確定要素があると述べながら、一方では、事故の影響の増加について断定的な表現で否定しているのはおかしい」と発言した。」
(4)「本問委員も続く。「これを読むと、極めてミスリーディングな印象を与える部分があります。『100ミリシーベルトを超える被曝を受けた住民がいたとは考えられず』と書いてある一方で、『100ミリシーベルト以上の被曝を受けた者がいる可能性を否定するものではない』というのは、科学的にあり得ない文章です。それから外部被爆について、この線量は一体いつの期間の線量なのかということが、この文章からは全然わからないです。だから、こういうまとめ案をつくること自身が、僕は果たしていいのかどうかというのが、ちょっと自信がないです」
(5)「ここで石川委員が「健康支援というのは、健康調査をもっと広げる、そういう方向での議論でよろしいですね?」と発言。するとまた祖父江氏が検査の不利益をあげ、「受診率を向上させるというところにはあんまり反対させる人はいないと思うのですが、検診の項目を増やすということには、利益・不利益等のバランスとかいうのもありますので、一概に増やす方がいいという判断ではないと思います」と述べた。」
「この発言に対し、石川委員が続ける。「いま(祖父江)先生おっしゃったような利益・不利益というのは、まったく視点が違うことをおっしゃっていると思います。とくに福島の方は不安があって、がん検診を受けたいというのであれば、アクセスできる門戸を広げてやるべきだと思います。どうしても不安だということであれば、どんどんやっていただくことは必要だと思います。そのことで、利益・不利益なんてことはないと思います。いったい誰にとっての不利益なのか、そのところのバランスとは一体なんなのか。非常に理解不能です。」
7.持ち出された2つの「国際原子力マフィア」報告書
上記の出鱈目な議論を「権威付け」するために下記の2つの「国際原子力マフィアの手による報告書が(おそらく裏では「放射線ムラ」の御用学者や原子力ムラ代理店の日本政府とツーカー状態で作成されているはず)持ち出されている
(1)「世界保健機関(WHO)」
「福島原発事故WHO健康リスク評価専門家会合報告書」(2013年2月)
(解説紹介)
http://www.pref.gunma.jp/contents/000268504.pdf#search='%E3%80%8C%E7%A6%8F%E5%B3%B6%E5%8E%9F%E7%99%BA%E4%BA%8B%E6%95%85%EF%BC%B7%EF%BC%A8%EF%BC%AF%E5%81%A5%E5%BA%B7%E3%83%AA%E3%82%B9%E3%82%AF%E8%A9%95%E4%BE%A1%E5%B0%82%E9%96%80%E5%AE%B6%E4%BC%9A%E5%90%88%E5%A0%B1%E5%91%8A%E6%9B%B8%E3%80%8D'
(解説)
http://www.gepr.org/ja/contents/20130304-01/
(2)「国連科学委員会(UNSCEAR)」報告書(2014年4月)
「2011年東日本大震災後の原子力事故による放射線被ばくのレベルとその影響」
http://www.unscear.org/docs/reports/2013/14-02678_Report_2013_MainText_JP.pdf#search='%E3%80%8C2011%E5%B9%B4%E6%9D%B1%E6%97%A5%E6%9C%AC%E5%A4%A7%E9%9C%87%E7%81%BD%E5%BE%8C%E3%81%AE%E5%8E%9F%E5%AD%90%E5%8A%9B%E4%BA%8B%E6%95%85%E3%81%AB%E3%82%88%E3%82%8B%E6%94%BE%E5%B0%84%E7%B7%9A%E8%A2%AB%E3%81%B0%E3%81%8F%E3%81%AE%E3%83%AC%E3%83%99%E3%83%AB%E3%81%A8%E3%81%9D%E3%81%AE%E5%BD%B1%E9%9F%BF%E3%80%8D'
(要約)
https://www.env.go.jp/chemi/rhm/conf/conf01-08/ref01_2.pdf#search='%E3%80%8C%E7%A6%8F%E5%B3%B6%E5%8E%9F%E7%99%BA%E4%BA%8B%E6%95%85%EF%BC%B7%EF%BC%A8%EF%BC%AF%E5%81%A5%E5%BA%B7%E3%83%AA%E3%82%B9%E3%82%AF%E8%A9%95%E4%BE%A1%E5%B0%82%E9%96%80%E5%AE%B6%E4%BC%9A%E5%90%88%E5%A0%B1%E5%91%8A%E6%9B%B8%E3%80%8D%EF%BC%882014%E5%B9%B42%E6%9C%88%EF%BC%89'
(国際原子力機関(IAEA)と世界保健機関(WHO)の間には1959年に下記のような協定が結ばれ、事実上、世界保健機関(WHO)は国際原子力機関(IAEA)の支配下に置かれ、「国際原子力マフィア」の意向に反した発表はできない組織となっている。今日では、放射能と被ばくの問題を扱える知識・経験や能力のあるスタッフも散逸してしまい、事実上、世界保健機関(WHO)は放射能と被ばく問題から逃避してしまっている)
● WHOとIAEA間の協定 - IndependentWHO - 原子力と健康への影響
http://independentwho.org/jp/who%E3%81%A8iaea%E3%81%A8%E3%81%AE%E5%8D%94%E5%AE%9A/
他方で、同じ時期に提出された下記の報告書の方は無視されている。このチェリーピッキング(都合のいいものだけをつまみ食いすること)は一体何を意味するのか?
● 国連特別報告者アナンド・グローバー氏の国連人権理事会への報告書の暫定版が公開されました
「避難の権利」ブログ
http://hinan-kenri.cocolog-nifty.com/blog/2013/05/post-05d7.html
8.そして、この「専門家会議」の結論は「中間とりまとめ」へ
この(似非)「専門家会議」の「中間とりまとめ」は実にバカバカしい結論であり、非科学的・反医学的であるだけでなく、反道徳的・反倫理的で社会的正義に欠けている。科学的実証的根拠に乏しく、被害者を無視軽視した許しがたい「報告」と言える。「とりまとめ」というよりは「押しつけ」であり、この(似非)「専門家会議」は、この「中間押しつけ」を最後に解散されるべきである。この会議に代わって、福島県以外の放射能汚染地域での健康管理調査や被ばく医療体制づくりの議論・検討と、福島県における「県民健康調査」及び「福島県民健康調査検討委員会」の抜本的な改善・拡充が議論・検討される委員会が改めて設置されるべきである。その際の1つのポイントは、「放射線ムラ」御用学者を「利益相反」として退ける委員人選を行うとともに、被ばく被害者の代表を委員に加えて、被ばく被害者の意見や考え方を大きく反映させる運営に切り替えることである。
特に、今回の「中間とりまとめ」に見られるような、甲状腺検査を「任意にする」ことをことさら強調するようなことは、これまでの政府や福島県庁・福島県立医大等が進めてきた「放射線安全神話」づくりのための世論誘導・デマゴーグ宣伝と相まって、被ばくさせられた被害者を、より一層危険な情報遮断状況に置き、被ばくへの警戒を結果的に緩めさせることとなり、健康リスクを高めることにつながりかねない。
また、福島県以外の放射能汚染地域について、「中間とりまとめ」が言うように、事実上、現状以上の何らの対策も対応を取らないということは、多くの住民や自治体からの要請を踏みにじり、根拠薄弱な「初期被ばくを含めて被ばく量はたいしたことはない」を理由に、健康調査検査や管理体制、あるいは被ばく医療体制の確立を妨害する行為に他ならない。許しがたい犯罪的行為であり、この専門家会議にこれ以上の存在意味はなくなったと言うべきである。
( 『DAYS JAPAN』(2014年12月号)より引用)
「資料説明が終わり、ここから第11回専門家会議の議論が始まったが、ここでの議論もやはり、放射線の影響による病気よりも(それは長瀧氏や環境省にとってはありえないのだから)心理的なダメージの方を問題にしたいという意図が見てとれた。そして議論これまでのように、検査をすると、異常が見つかる→不安が増す→マイナス面が多い→検査をしない方がいい」という方向につながっていく。」
「しかし案の定、環境省と長瀧座長の意向が色濃く反映され、次のようにまとめられていた。」
・「専門家会議はWHOやUNSCEARの評価に同意する」
・「福島県の県民健康調査は、意義を捉え直し、改善に向けた調整を図るべき時期に来ている」
・「発見された甲状腺がんについて、原発事故による放射線被爆の影響ではないかと懸念する声もあるが、原発事故由来のものとは考えにくい」
・「症状のない人に対する甲状腺検査は、第一に、死亡にはつながらなかった可能性のある甲状腺がんを発見することにより、心身の負担につながる結果となることが懸念される。第二に、検査の頻度や対象者を増やすことで擬陽性が増加する。そして、がんではないという検査結果が判明するまで身体的負担や精神的負担が生じる。第三に、甲状腺検査でA2と判断され、異常がないと言える範囲であるのにも関わらず不安を感じて、医学的に妥当な頻度を超えて検査を強く求める住民があることへの懸念がある」
・「よって、甲状腺検査は任意で行なうべきではないかとの意見もあった」とまとめられている。」
9.傾聴に値する石川広己専門家会議委員(日本医師会常任理事)へのインタビュー
最後に広河隆一氏が石川広己専門家会議委員(日本医師会常任理事)にインタビューをしているが、この記事は傾聴に値する重要なコメントに満ちている。以下、その中の若干をご紹介しておきますが、みなさまも、ぜひ、原本に目を通されるといいと思います。
(1)石川「私たち臨床医はそんないい加減にやっているわけではありません。患者さんにどのように説明するかということを、ずっと訓練されているわけです。だから住民との信頼関係でやっていくしかないと思うんですよ。
私は今日、難しいことはあまり発言しなかったんですけど、今いちばん困っている例でいうと、膵臓の膵管に、IPMN(膵嚢胞性腫瘍)という嚢胞のようなものができる問題があります。エコーの性能が良くなって、小さなものでも発見されるようになったのです。これは、良性で終わる人もいる一方で、悪性の前兆かもしれない。こういう場合、半年に1回ぐらいはMRIをやらないと、医師側は心配でしょうがない。ですから、患者さんにはそのときのご説明で、『がんになる可能性もあります』と伝えます。もちろんまだがんではありませんが、『十分に調べ、がんではないことを確認したいので、お金を使わせることになるかもしれないけど、MRIをやってください』とお願いするわけです。この状況は仮に甲状腺のエコー検査であやしい所見があった時も同様だと思います。
確かにそう言われれば、患者さんは不安だし、いやだなと思うかもしれませんけれども、それが現実であれば、膵臓がんば本当に早期発見が難しいですから、もし早期発見で見つかったら、その方にとつては大助かりになると思いますしね。
あるいはずっと検診し続けても全然変化しないで、良性のまま終わることになったら、そのことで私たちが何も責任を関われることではなく、むしろその方にとって運がよかったということだと思います。だからきちんとご説明するという能力をつけるための訓練を私たちは受けているわけで、こういうことはちゃんと知っていただきたいと思います。」
(2)広河「チェルノブイリの医学者の発言で、「医者の務めは子どもを治すことであって、汚染地に子どもをおいて研究材料とかデータを集めることではない。一刻も早く子どもたちを出すべきだ」という言葉がありました。環境省専門家会議の方向では、この医学者が警告していることが進められているように思います。専門家会議は、本来の目的であったはずの「子どもたちを助ける」という方向に行くよりは、心理的な不安という問題を盾にとって、これから現れる病気の兆候を早期発見することを不可能にしてしまいかねないと思います。
石川「会議で「症状のない方たわちに検査するのは問題だ」と言う発言がありましたが、あれはまったく変な表現です。ひとつは、症状がないうちに見つけなきゃ意味がないんです。」
以 上