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2014年10月13日 (月)

東京新聞・吉田調書シリーズ特集記事に見る福島第1原発事故(その実態と事故原因をさぐる):(9)東電「撤退」、首相本店へ、何を騒いでいるんだ

前略,田中一郎です。

(別添PDFファイルは添付できませんでした)

 

東京新聞が9/15よりシリーズで報道し始めた吉田調書(政府事故調による吉田昌郎福島第1原発所長(当時)証言記録)に関する特集記事「調書は語る:吉田昌郎所長の証言」を見ながら、福島第1原発事故の実態とその原因を探ってみたいと思います。第9回目の今日は下記の東京新聞記事です。なお、私のメールでは、このシリーズ特集記事にある、主として吉田昌郎所長証言のあいまいさや、証言から推察される福島第1原発事故深刻化の原因となったであろうことがらを取り上げて、簡単にコメントいたします。

 

 <別添PDFファイル>

● 調書は語る(9):東電「撤退」、首相本店へ、何を騒いでいるんだ(東京 2014.9.25

http://blog.goo.ne.jp/tanutanu9887/e/b34b70e92fa96d337199d2fdf4c18fcf

 

1.東京新聞記事

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十四日夜、東京電力福島第一原発2号機の周辺では放射線量が急上昇した。そのころ、官邸には東電が「撤退」を検討しているとの情報が駆けめぐっていた。翌朝、菅直人首相が東電本店に乗り込む事態に発展した。現場に踏みとどまった吉田昌郎(まさお)所長は聴取で、騒動への怒りを募らせた。(肩書はいずれも当時)

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(田中一郎コメント)

 福島第1原発事故の原因究明やその教訓を明確化させたくない原子力ムラの隠れ代理人のような人たちや、支配権力追従型の愚かな言論人士、あるいは一部のマスごみは、福島第1原発事故における最大の問題が、当時首相だった菅直人氏の一挙手一投足や朝日新聞の吉田調書報道であるかのごとき言論を振りまき、本来のあるべき福島第1原発事故へのアプローチを歪めている(ディスターブしている)ことをまずもって指摘しておきたい。

 

 朝日新聞の経営幹部達の今回の吉田調書報道の否定には大きな疑問を感じるが、しかし、そんなことは二の次の問題であって、福島第1原発事故の問題においては枝葉末節の話である(新聞ジャーナリズムのあり方の問題としてはいろいろ議論の余地はある)。また、菅直人氏の当時の挙動についても、彼個人の問題と言うよりは、総理大臣としての彼を取り巻いていた政府・霞が関の関係者一同の危機管理体制の問題、あるいは事故当事者の東京電力の対応の問題であって、ものごとの本質を総理大臣個人の資質問題にすり替えてはならないのだ。つまり、福島第1原発事故と原発問題の核心部分を、かようなことで見失ってはならないということだ。

 

2.東京新聞記事

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<東電撤退騒動は、後に国会でも大きな論点になった。確かに十四日夜のテレビ会議で、東電は下請け企業の作業員らの退避や、2号機の状況がさらに悪化した場合に備え、退避基準をどうするか議論している。しかし、はっきりしているのは、吉田氏をはじめ必要最小限の要員は現場に残ったことだ。吉田氏がいない所で、東電の清水正孝社長と官邸側とのコミュニケーション不全が、無用の混乱を招いたとみられる>

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(田中一郎コメント)

 上記に書かれていることはその通りなのだが、しかし、「はっきりしているのは、吉田氏をはじめ必要最小限の要員は現場に残ったことだ」に、いかほどの意味があるだろうか。先週号の『週刊金曜日』(2014.10.1)に掲載された伊田浩之氏のレポート「約650人の原発作業員の福島第2原発への退避を吉田所長は知らなかった」には次のような記述がある。

 

「東京電力のホームページによると、2号機については315日の午前720分から午前1120分まで事故の収束作業に不可欠なデータを記録できておらず、1・3号機も同様だった」

 

「そして所員の9割が福島第1を留守にしていた15日午前9時、福島第1正面付近の放射線量が最高値である毎時11.93ミリシーベルトを記録する。原子力資料情報室の伴瑛幸共同代表はこう話す。『100ミリシーベルトの被曝で急性障害がでる領域ですから、とてつもなく高い数字です。2号機近くではもっと高かったでしょうし、さらに有害な中性子線の線量も上がっていたと思います』」

 

 つまり、形だけ少人数の作業員を現場に残しても、ほとんど何の意味もなく、過酷事故を起こした原発は事実上無管理状態となって破綻を速めて行く、ということに他ならない。吉田昌郎所長も東京電力も、こうした少人数を残すことの実質的な意味について重々承知しながら、「残すのだから「撤退」ではなく「退避」だ」と言い張っている。私は、こうした言論は、不誠実に留まらず、事実の歪曲的説明ではないかと思う。

 

 さらに、吉田所長はともかく、東京電力の本社経営幹部達については、吉田昌郎所長の意向も無視して全面撤退を考えていた節がある。当時の清水正孝東京電力社長の、首相官邸や閣僚への説明の仕方がおかしいことに加え(はっきりと「全面撤退ではない」と言っていない)、3月15日午前8時30分の記者会見では、福島第1原発の作業員の大半が福島第2原発に行ってしまっているにもかかわらず「福島第1原発の安全な場所に一時的に移動を開始した」などと説明したり、3/15の事態の推移を東京電力TV会議の録画で検証しようにも、3/15の録画は「録音ミス」で丸丸残っていないなどと、証拠隠滅行為のようなことをしているのである(上記『週刊金曜日』記事より)。

 

 海渡雄一弁護士は次のように推測しているという(上記『週刊金曜日』)。「私の推測では、東京電力最高幹部らは、吉田所長の指示とは別に、70人程度の要員を残し、緊急事故対策にも必要な者を含む650人を福島第2に退避させたのではないか」。

 

 いずれにせよ、誰が福島第1原発の所員を(少なくとも形式上は吉田昌郎所長の指示に反して)福島第2に移動させたのかは不明のままである。しかし、これは調査の仕方次第では判明する話ではないか。

 

 それから「吉田氏がいない所で、東電の清水正孝社長と官邸側とのコミュニケーション不全が、無用の混乱を招いたとみられる」にある、当時の東京電力社長の清水正孝だが、ネット上のウィキペディアには次のように書かれている。

 

●ウィキペディア:清水正孝は慶応大学経済学部卒業の文化系の人間のようです

 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B8%85%E6%B0%B4%E6%AD%A3%E5%AD%9D

 

3.東京新聞記事

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吉田昌郎所長「細野(豪志首相補佐官)さんに電話をして、『プラントはものすごい危ない状態です。ぎりぎりです。水が入るか入らないか、賭けるしかないですけれども、やります、ただ、関係ない人は退避させる必要があると考えています。今、そういう準備もしています』という話はしました」

 

(問い)「菅首相が来る前、細野首相補佐官なりに、撤退もあり得ると言ったのか」

 

吉田昌郎所長「全員撤退して身を引くということは言っていませんよ。私は残りますし、当然、操作する人間は残すけれども、最悪のことを考えて、これからいろんな政策を練ってくださいということを申し上げたのと、関係ない人間は退避させますからということを言っただけです」

 

「細野氏にも電話があったが、同じ内容だと思い電話に出なかったという。「海江田さんは完全に撤退すると解釈していた。電話後、海江田さんがそういう話をしていた。(官邸に詰めていた)武黒一郎・東電フェローもしょんぼりして『もう何もできません』みたいな話をした」と説明。政府事故調の質問者が、吉田氏は全員撤退指示を否定していると指摘すると、「吉田さんが言っているのならば信じるが、(当時の官邸は)そうはとっていなかった」と答えている。」

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(田中一郎コメント)

 吉田昌郎所長と細野豪志首相補佐官とで言うことが食い違っている。私は吉田昌郎所長の発言の方に信頼を置く。当時、吉田昌郎所長と清水正孝社長の言うことが違うことを細野豪志は知っていたのではないか。知っていたのに、この両者の仲立ちして、どっちが本当なのかを問い詰めず、確認せず、菅直人を含む閣僚のなすがままに任せていたのではないか(無責任)。

 

4.東京新聞記事

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「その時に、私の伝言障害も何のあれもないですが、清水社長が撤退させてくれと菅さんに言ったという話も聞いているんです。それは私が本店の誰かに伝えた話を清水に言った話と、私が細野さんに言った話がどうリンクしているのか分かりませんけれども、そういうダブルのラインで話があって」

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(田中一郎コメント)

 『週刊金曜日』で海渡雄一弁護士もおっしゃっていますが、「そういうダブルのラインで話があって」というのは、東京電力歩車幹部が、現場を無視して、勝手に福島第1原発からの撤退を画策していたということではないかと考えても不思議ではありません。

 

5.東京新聞記事

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<十五日六時ごろ、2号機の炉圧が一気に低下し、衝撃音もした。4号機の原子炉建屋がぼろぼろになっているとの情報も現地対策本部に入った。福島第一からは要員が減った>

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(田中一郎コメント)

 3/15の早朝から正午まで、福島第1原発の2号機と4号機に何があったのか、さっぱりわからない。当日の2号機、4号機の映像もなければ、当日(3/15)の東京電力TV会議の録画もない、というのです。ああそうですか、ですむ話ではないでしょう。何故、ないのか、徹底追及する必要があります。また、2号機の現状・現況が、事故後3年半もたつというのに、未だ全くわからない、現場検証もなされない、などというのは、本当におかしな話、マスコミは何をしているのでしょう? 原子力「寄生」委員会・「寄生」庁は何をしているのでしょう。おそらく東京電力は隠しごとをしているに違いありません。

 

 3/15 午前6時ごろ 4号機建屋爆発 爆発の原因は何か=3号機からの水素ベントの逆流か、それとも使用済み核燃料プールからの水素か

      同6時10分 2号機の原子炉下部で大きな音、つづいて圧力抑制室の圧力がゼロ(大気圧と同じ)に:何が起きてどうなったか未だに不明 

      午前9時ごろ 4号機建屋で火事(または爆発)⇒ 米軍が消化したというがほんとうか?

      午前11時ごろ 4号機で再び火事、またもや米軍が消化したというがほんとうか?

 

 まず、2号機については、大きな音と言うのはウソで、ベントできなかったというのもウソで、周辺住民に何のアナウンスもせずに、今までのウェットベントとは違い、放射能を猛烈に含んだ炉心気体をそのまま環境に放出するドライベントに成功していた。3/15の東日本の猛烈な放射能汚染は、この秘密裡に行われたドライベントが原因。その証拠に、1・2号機共通のベント管を支える排気棟の周辺が人間の致死量を超える猛烈な放射能汚染の状況にある。また、福島第1原発敷地で観測された放射能の最高値は、爆発音がしたという午前6時過ぎではなく、午前9時過ぎのこと。これも2号機が爆発だったとしたら説明がしにくい話である。東京電力は、これをひたすら隠しに隠している、という説がある。

 

 4号機の爆発の原因や米軍の出動などについては、その真偽も含めて不明のまま。

 

6.東京新聞記事

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「官邸側の各氏の証言に共通しているのは、事故発生当初から東電からは十分情報が来ず、いらいらが募り不信感を強めていた点。また、2号機の危機は、それまでよりずっと深刻だと受け止め、緊張が頂点に達していたこともうかがえる。」

 

「「撤退」騒動は、官邸と東電の意思疎通がうまくいかない中、清水氏のあいまいな電話を発端とする誤解の連鎖が引き起こしたとみられる。騒動をきっかけとして、東電本店内に政府と東電の統合対策本部が設置された。東電に任せきりにしない仕組みができたが、高濃度汚染水問題をはじめ福島第一の事故収束にはほど遠い。

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(田中一郎コメント)

 どうみても東京電力本社と首相官邸の間で情報の共有化などはできていないことは明確。菅直人元首相が東京電力本社へ乗り込んだことも適切な判断、というよりは、やむを得ない判断だったと思われる。東京電力の事故直後の振る舞いには、何の正当性も感じられない。こういう会社に、もはや柏崎刈羽原発など、所管させるわけにはいかないのではないか。

 

 <最後に>

 再び、上記『週刊金曜日』に書かれている重要な指摘を3つばかりご紹介しておきたい。みなさまには、ぜひ、『週刊金曜日』(2014.10.10)を購入の上、お読みいただければと思う次第である。

 

(1)「理由は分からないが。福島第1正門付近の放射線量は正午ごろから下がり始める。このため、作業に必要不可欠な要員を少しずつ呼び戻すことができ、必死の冷却作業が続いた」

 

 ⇒(田中一郎)つまり、福島第1原発事故が何故収束に向かったのかの理由は未だにわかっていない、ということである。まさに「神風」なのか?。しかし、この「神風」は地獄からの「神風」になりそうな気配である。何故なら、日本を支配する愚かもの達が、再び、福島第1原発事故の原因もわからぬままに、軽率にも原発の再稼働を始めようとしているからだ。

 

(2)原発に深刻な事故が起きれば、指揮命令系統は混乱し所長にも把握不可能な事態が生じる。

 

 ⇒(田中一郎)それだけにとどまらない。福島第1原発事故の場合には、いわゆる最悪事態は、かろうじて、訳は分からないけれども、回避された。しかし、次回勃発する原発・核燃料施設の過酷事故ではそうはいかないだろう。福島第1原発事故を上回る超過酷事故となり、現場を含めて日本は阿鼻叫喚の海に沈むことになる。愚かな原発再稼働はやめることだ。

 

(3)大勢の作業員が命をかけなければならない状況は杞憂ではなく、命をかけたとしても事故収束の保障はない、ということである。労働者には「逃げる権利」もある。

 

 ⇒(田中一郎)原発・核燃料施設過酷事故の際には、現場作業員が命をかけるのではなく、電力会社幹部・原子炉メーカー・政府・経済産業省・文部科学省の幹部、原発推進の政治家たち・原子力ムラ御用学者たちが事故現場にやってきて、主に作業員の指示に従って単純作業に従事すればよい。そういう法律を制定しておけばよい。そうすることで、原発・核燃料施設は簡単に停止・廃棄することができるように思う。何故なら、原発は「差別」の上に成り立つものだからだ。

草々

 

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