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2014年10月 2日 (木)

東京新聞・吉田調書シリーズ特集記事に見る福島第1原発事故(その実態と事故原因をさぐる):(5)忘れられたプール、水が蒸発していく

前略,田中一郎です。

(別添PDFファイルは添付できませんでした)

 

東京新聞が9/15よりシリーズで報道し始めた吉田調書(政府事故調による吉田昌郎福島第1原発所長(当時)証言記録)に関する特集記事「調書は語る:吉田昌郎所長の証言」を見ながら、福島第1原発事故の実態とその原因を探ってみたいと思います。第5回目の今日は下記の東京新聞記事です。なお、私のメールでは、このシリーズ特集記事にある、主として吉田昌郎所長証言のあいまいさや、証言から推察される福島第1原発事故深刻化の原因となったであろうことがらを取り上げて、簡単にコメントいたします。

 

 <別添PDFファイル>

●調書は語る(5):忘れられたプール、「水が蒸発していく」(東京 2014.10.2

http://blog.goo.ne.jp/tanutanu9887/e/1ceaeb74fa60dc9aaca0a76f6dbbb91e

 

1.東京新聞記事

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「原発事故というと、炉の状況に目が向きがちだが、東京電力福島第一原発の事故では、使用済み核燃料プールが同等かそれ以上に重大な危機にあった。吉田昌郎(まさお)所長はプールの危機を十分認識していたが、かき消すように急報が入り、ほとんど対策が取れないまま時が過ぎていった。(肩書はいずれも当時)」

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(田中一郎コメント)

 使用済み核燃料プールの危険性を私が知る限りで下記に列記しておく。上記にもある通り、現状のままでは、原子炉そのものよりも危険だ。

 

(1)使用済み核燃料プールは、核燃料を入れる圧力容器や、それを外側からカバーして、もしもの際の放射能漏れを防ぐ目的の格納容器の外側にあり、薄っぺらい建屋の壁や天井で囲われているだけの設備である。その中に、原子炉の中から取り出した、猛烈な熱を発散し続けている使用済み核燃料を水に”どぼん”と漬けて、そのまま冷やしている。何らかの理由で、このプールの(冷却用の)水がなくなれば、あっという間にとんでもない破局にいたる。それが福島第1原発事故直後に近藤駿介元原子力委員会委員長が菅直人(当時首相)に報告した「最悪のシナリオ」(下記)である。

 

(2)使用済み核燃料プールのある場所が「空中」=つまり、原子炉建屋の3~5階に設置されていて、その重たいプールをその下にある構造物で支えている構造になっている。今回の福島第1原発事故で大問題となったのは、たいして大きくもない東日本大震災の地震の揺れ(震度6程度)で、その使用済み核燃料プールを支えていた構造物が痛めつけられ、余震や次の地震が来たときに、使用済み核燃料プールが崩壊してしまうのではないかと懸念された。

 

 特に、地震時に運転停止中で、まもなく運転再開となる予定だった4号機の場合には、使用済み核燃料と使用前の核燃料とがごっちゃにされてプールの中に入れられており、その本数は1,535体と、他の号機に比べてダントツに多かった。その結果、4号機の使用済み核燃料プールは、プール自体が重くなってしまっていることに加え、3/14昼の3号機の爆発で横から強い衝撃を受けていること、さらに翌日の3/15には自らも爆発を起こして大きな衝撃を受けてしまっていることもあり、追加的な地震の揺れによるプールの崩壊が、他の号機のプール以上に懸念されたのである。

 

 東京電力は、もちろんこのことを承知していて、東日本大震災後に4号機の使用済み核燃料プールの下部構造物を補強する工事を突貫工事で行ったとしているが、それがプールの耐震性や堅固さをどこまでプラスしたかは定かでない。今現在は、この危険極まりない4号機のプールから使用済みを含む核燃料を取り出して別の場所に移す作業をしている最中だが(進捗率は7割程度という)、今仮に、福島第1原発を震度7クラスの直下型地震が襲った場合には、この4号機のみならず、1~3、及び6,7の各号機、更には、福島第2原発の各号機の使用済み核燃料プールも危険な状況に陥ってしまうことになる。

 

(3)更に、日本全国各地の原発では、ここ数年、使用済み核燃料の数が増え続けたため、その保管場所が手狭になってきていて、それを極力経費をかけないで何とかしようとして、使用済み核燃料プールを「リラッキング」して使うという「つなわたり」まで始めてしまっている。「リラッキング」などといえば耳触りがいい言葉だが、何のことはない、当初の予定以上にプールに使用済み核燃料を突っ込んで、「イモ洗い状態」で保管を続けているということだ。これは非常に危険なことで、一歩間違うと、プールの中で「臨界事故」さえ起こしかねない、危険で愚かな行為と言わざるを得ない。

 

(4)更に更に、昨今は、上記に加えて、いわゆる「(よせばいいのに)プルサーマル」という、もともと予定していなかったプルトニウムを原料に使った、通常のウラン原料の核燃料よりも危険で汚くてコントロールが厄介なMOX燃料までが使われるようになった。そんなもの(使用済みを含む)を「リラッキング」して「イモ洗い状態」で保管すれば、従来の使用済み核燃料プールの危険性が何倍にも高まるのは、素人の人間にも容易に理解できることである。そして、その懸念は、福島第1原発事故時において、3号機の使用済み核燃料プール内の核燃料が即発臨界による核爆発を起こしていたかもしれないという形で、リスクの顕在化の可能性が「論じられるようになっている(マスコミは全く報道しないが、福島第1原発3号機は事故当時プルサーマル炉であった)。

 

(5)使用済み核燃料は行き場がない。もちろん、保管場所を新たに受け入れるような自治体などは存在しない。他方で、既に青森県六ケ所村の再処理工場の保管プールには約3,000トンという、とてつもない量の使用済み核燃料がプールの水の中に沈められ、予定容量限度に達している。困った電力業界や政府は、同じ青森県のむつ市に、新たに中間貯蔵用の施設をつくったが、その施設についても問題が噴出し始めている状態だ。そもそも、地震と火山のメッカのような下北半島に、かような危険極まりない核施設を建設すること自体が「狂気の沙汰」なのだ。青森県六ケ所村の再処理工場及び使用済み核燃料プール、あるいはそれ以上に高レベル放射性廃棄物貯蔵管理施設・高レベル放射性廃液格納プールなどが大地震や大津波でやられると、この狭い島国の日本は、もちろん東日本を中心に猛烈な手に付けられないような放射能汚染に見舞われて、国として滅亡すること必定である(放射能汚染は、泣いてもわめいても、絶対に消えることはない)。

 

 ちなみに、むつ市の中間貯蔵施設には、まもなく再稼働されようとしている柏崎刈羽原発の使用済み核燃料が運び込まれる計画になっている。信じ難くも許しがたい、不道徳極まりない話である。(柏崎刈羽原発の使用済み核燃料プールが満杯になりつつある)

 

(6)海外では主流となっている使用済み核燃料の「乾式貯蔵」への移行が言われ始めている。それはその通りだが、金がかかるためか、電力業界や政府・原子力「寄生」委員会などの動きは極めて鈍い。福島第1原発事故後においても、4号機で見られたような、間一髪・スレスレセーフで助かった使用済み核燃料プールが、全国各地の原発や青森県六ケ所村の再処理工場内にあるというのに、一向にその安全対策に手を付けようとはしない。もちろん、新規制基準の中で、使用済み核燃料プールに焦点を当てて、その危険性除去のための施策や規制が真剣に検討され議論された形跡もない。今、巨大地震が各原発を襲えば、再稼働をしていないにもかかわらず、その原発・核燃料施設は破局的な事態になりかねないのである。平和ボケとは、まさにこのことではないか。

 

●福島原発事故の最悪シナリオ「近藤駿介原子力委員長のメモ」・転送転載可|脱原発の日のブログ

 http://ameblo.jp/datsugenpatsu1208/entry-11153640117.html

 

2.東京新聞記事

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(問い)「使用済み核燃料プールに何らかの手だてを講じなければと思ったのか。

「これは最初から思っていました。原子炉を何とか制御しなければいけないというのは一番高いんですけれども、当然、核燃料プールも冷却ができていないわけですから、使用済み核燃料の崩壊熱ですね。温度が上がってきて水が蒸発していくだろうと。手を打たないといけないというのは並行して思っておりました」

(問い)「三月十四日未明、4号機の核燃料プールの温度は八四度というが、その前は測っていないのか。」

「測れなかったんですね。人の問題があるし温度計そのものも生きていないんですね。何とかして測れという指示はしていたんです」

(問い)「いつ頃から指示を」

「結構早い時期にしていましたよ。4号機は、少なくともその時点で原子炉建屋に入ることが全然問題なかったはずですから。3号機の影響でちょっと線量は上がりますが、建屋そのものの中に線源があるわけではない。一番問題なのは温度ですから、温度を見てきてくれと。実際3号機にかかり切っていたので、どれぐらい人を割けたかよく把握していないんですが」

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(田中一郎コメント)

 1~3号機の使用済み核燃料プールについての発言なら理解できる。そして、この吉田昌郎所長の証言が、今ある休止中の原発・核燃料施設も含めて、その安全対策にどこまで活かされているのか。よく、福島第1原発事故の教訓が活かされていないと言われるが、それはこの使用済み核燃料プールの問題に端的に現れていると言える。

 

 しかし、4号機の使用済み核燃料プールについては全く理解できない。4号機は動いていないし、少なくとも、隣接の3/14の3号機爆発、あるいは翌日の4号機爆発までは温度計も健在だったはずだ。上記のような言い訳は通用しない。

 

3.東京新聞記事

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(問い)「1~3号機のプールの監視が必要との思いは」

「同様です。ただし一番厳しいのは、4号機は定期検査が始まってすぐですから、五百四十八体の核燃料を全部、一年間燃えた核燃料を核燃料プールに入れています。プールの条件として一番厳しいわけです。1~3号機は、ある程度冷却されたものが入っているわけです。ですから温度の上がりしろから考えると、4号機が一番クリティカル(危機的)になる」

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(田中一郎コメント)

 吉田昌郎所長の認識は正しい。そして、新聞記事には書かれていないが、先般ポレポレ東中野で上映された編集録画「東電テレビ会議49時間の記録」によれば、吉田昌郎所長は東京電力本社に対して、使用済み核燃料プール対策の依頼を3/13段階でしていた(タイミングとしては遅いかもしれない)。しかし、それに対する本社からの明確な回答は帰ってこなかったようである。もちろん、プール対策用の人員の補給もなしのつぶてだった。4号機を含め、使用済み核燃料プールがよく崩壊しなかったものだと、今さらながら思う。福島第1原発事故は不幸中の幸がたくさんあるのだ。

 

4.東京新聞記事

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<十五日朝、4号機の原子炉建屋で火災が発生。十六日、ようやく使用済み核燃料プールへの対応準備が始まる。一方、1~3号機は消防車での原子炉への注水が続いていた>


(問い)「優先順位の中で2号機の使用済み核燃料プールの冷却がないのはなぜ」

「1、3、4号機は(水素爆発で)上があいているので、外から注水する方法がある。2号機はつぶれていないから外から注水できない。外から注水する方法を考えましょうといった時に、2号機はもともと対象外になる。2号機は何とかして中のシステムや配管を生かし注水できることを考えていくということです」

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(田中一郎コメント)

 「十五日朝、4号機の原子炉建屋で火災が発生」=これがよくわからない。これはいったいなぜ起きたのか? しかも、マスコミ報道によれば、猛烈な放射能が出ていたらしい(下記)(更に、3/16にも4号機で火災が起きた)。また、私が聞いた話では、この火災は米軍が消し止めたという。本当なのか? 本当なら、米軍が福島第1原発の現場までやってきたということか。もしそうなら、それはそれで大問題だ。この3/15の4号機火災の話は「まったく???」である。しかし、何故、こんなことが、事故から3年半もたっているのに、わからないままに放置されているのだろうか。

 

 それから2号機については、吉田昌郎所長が言うことはわかるが、実際問題、2号機は他号機に比べて放射能の量が猛烈に多く、他号機以上に近づけなかったのではないのか。建屋が壊れていないので、外から水や氷を入れるわけにもいかず、お手上げだったのではないのか。これもまた、今後の教訓にしなければならないはずである。(簡単に言えば、既存の原発・核燃料施設の使用済み核燃料プールの設計や構造を抜本的に変えて改築しなければならない、ということである)

 

● 福島第一原発に米軍部隊が投入された機会:4号機で15日に起きた火災(爆発)の“消火活動” あっしら 

 http://www.asyura2.com/12/genpatu26/msg/102.html

 

● 福島第一原発4号機、超高濃度放射能が拡散(20113151350分 読売新聞)

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 東京電力は15日、東日本巨大地震で被災した福島第一原子力発電所4号機(福島県)の原子炉建屋内にある使用済み核燃料を一時貯蔵するプール付近で、同日午前9時38分頃に火災が発生、同日午前10時22分には毎時400ミリ・シーベルト(40万マイクロ・シーベルト)の放射線量を観測したと発表した。

 同日午前11時過ぎに記者会見した枝野官房長官は「身体に影響を及ぼす可能性があることは間違いない」と述べた。(中略)

 

 東電などによると、原発周辺で同日午前10時22分に、高い放射線を観測した。2号機と3号機の間で、毎時30ミリ・シーベルト(3万マイクロ・シーベルト)、3号機付近で同400ミリ・シーベルト(40万マイクロ・シーベルト)、4号機付近で、同100ミリ・シーベルト(10万マイクロ・シーベルト)で、枝野長官は「従来発表してきた『マイクロシーベルト』とは単位が違う。身体に影響を及ぼす可能性のある数値」と話した。

 

  400ミリ・シーベルトは、がんになる確率が高まる100ミリ・シーベルトの4倍で、一般人が1年間に浴びていい放射線量(日常生活と医療目的を除く)の400倍にあたる。4号機の火災で、東電は福島県と国に通報するとともに、自衛隊と米軍に消火活動への協力を要請したが、同日午前11時ごろ自然に鎮火したのが確認された。

 

  東電によると、地震発生時に、4号機は定期検査で運転を停止していたが、使用済み核燃料一時貯蔵プールの冷却水を、循環させる電源を失っていた。燃料棒の余熱で、通常40度程度の水温が85度にまで上昇し、水位が低下していた。専門家は、「プールの水位低下でむき出しになった燃料の被覆管と蒸気が反応し、水素が発生して、爆発火災に至った」(京都大原子炉実験所の今中哲二助教)と分析する。プールの中には、使用済み燃料棒783体が保管されていた。4号~6号機は定期検査中だったが、4号機の冷却機能が失われていた。使用済み核燃料は1~3号機にも約300~500体保管されている。

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5.東京新聞記事

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(問い)「3号機プールの冷却は、高圧放水車がやるという話だったが、ヘリコプターが先になった」

「セミの小便みたいですね」

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(田中一郎コメント)

 なかなかいい表現だ。「セミの小便」では、原子炉も使用済み核燃料プールも冷やすことはできない。

 

6.東京新聞記事

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「まず機動隊さんは最初に来てもらったが、あまり役に立たなかったんです。それも来るまでにすったもんだして。要するに効果がなかった。水が入らなかったということです」


(問い)「自衛隊は」

「はっきり言って、今から申しますと、すべて意味がなかったです。注水量的に全部入っても十トンとか二十トンの世界ですから、燃料プールの表面積から考えて意味がない。届いているものがどれくらいあったか疑問です。消防庁は特にそうですが、最初はこういくんですけれども、だんだんホースの先が落ちてくるんです。落ちてきているといっても直しに行かない」


(問い)「あまり消防庁のものは効いていないんですね」

「まったく効いていないです。ヘリコプターも効いてないし、自衛隊さんも申し訳ないけれども、量的には効いていないし、消防庁も効いていないし、機動隊はもともとまったく効いていなかったと思います」

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(田中一郎コメント)

 機動隊、消防庁、自衛隊、すべて役に立っていなかった。ショックだけれども、これが実態だった。作業者が被ばくしただけに終わっている。原発過酷事故時の人間の無力と、安全神話を語り続け国民をだまし続けた原子力ムラの犯罪性が浮かび上がっている。

 

7.東京新聞記事

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(問い)「高圧放水車は一定の効果はあるのか」

「あるだろうと思っていました。ある意味そのときはこれしかなかった。だから、本当はそれこそ筒先を内側に何とか持って行って、ドボドボと上から注水したいんですが、揚程(ポンプが水をくみ上げられる高さ)も高さも足りない中で、やらないよりはいいだろう、極端に言うとそのぐらいの感じでいたということです」

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(田中一郎コメント)

「揚程(ポンプが水をくみ上げられる高さ)も高さも足りない中で、やらないよりはいいだろう」という吉田昌郎所長の証言も「教訓」の一つである。海岸べりに建てられる原発は、津波被害を避けようとすれば、できるだけ標高の高い位置=高台に建設した方がいいが、しかし、他方で原発は、日常的に海から海水をくみ上げては、それを原子炉の二次冷却(加圧水型の場合は三次冷却)=海に70%の熱エネルギーを捨てる、に使わなければいけないので、低い位置にある方が海水は調達しやすい。いわば両者は二律背反的になっている。福島第1原発の場合には、もともと30m以上の岸壁だったところを削りに削って10mくらいの標高にして原発を立てた経緯があるが、それが今回、命取りになってしまった。

 

7.東京新聞記事

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<二十日すぎから「キリン」や「ゾウ」「マンモス」など動物の愛称で呼ばれた生コン圧送車が放水に活躍。ようやくプール冷却が軌道に乗り始める>


(問い)「キリンやゾウとかあったがそれはどうか」

「あれはいいです。あれが来て初めてちゃんと注水できたということ。筒先をプールの近くに持っていって入れていますから、ロスがほとんどなくて全部水が入るというのがキリン以降の話。(それまでは)ある意味でやみくも作戦です」

 

「その中でコンクリート注入車が使えるのではと本店からあった。一台とりあえず手配できるという話で、キリン部隊というものを本店でつくってくれた。その連中が動かし方などをマスターして、やってみたら、やっとそれなりに水が入った。これからどんどん持ってこようということで、自衛隊さん、消防庁さんのお世話にならずにすんだということです」

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(田中一郎コメント)

 この証言も「教訓」である。

 

(最後に:「最悪のシナリオ」)

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燃料プール対策 後手

 

 米国との折衝を担当した長島昭久民主党議員の調書によると、米国が事故発生当初から最も懸念していたのは4号機の核燃料プールだった。一連の水素爆発もプールが地震で崩壊し、損傷した核燃料から発生した水素によるのでは、との見立てもしていた。

 

 関西電力大飯原発(福井県)の運転差し止め訴訟判決で、原子力委員会の近藤駿介委員長による「最悪のシナリオ」が引用された。実はこの試算、米国から示された強い懸念を強く意識したものだった。

 

 余震などで4号機プールが損傷し、核燃料から大量の放射能が出ると現場作業ができなくなり、炉もプールも放置され、原発250キロ圏まで避難地域が広がる危険性を説いた。後に東電は4号機プールの下部を鉄骨やコンクリートで補強したが、これも最悪のシナリオを受けた形だ。

 

 近藤氏は3月22日に菅直人首相から依頼を受けたが「本来なら、最悪のシナリオは(プールの危険が高まった)16日の一番危機だった時に作るべきだった」と調書で語っている。

 

 一方、テレビ会議の記録では、吉田氏も東電本店もプールについては何ら有効な手だてが打てなかったことがよく分かる。

 

 17回も話題に上っているのに、そのたびに炉の悪い知らせがもたらされ、炉への対応に追われ、プールは忘れられてしまう繰り返しだった。結局、まともにプールへの対応が取られたのは16日以降だった。

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(田中一郎:アメリカが言わないと、何もできないのか、この国は!?)

草々

 

 

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