米価暴落、日本の稲作農業=水田が危ない(自国の農業を亡ぼす国は必ず自らも滅ぶ)
前略,田中一郎です。
(別添PDFファイルは添付できませんでした)
米の値段が暴落しています。
現在の暴落米価である7000円~10000円/1俵(60kg)は、平均的な生産原価(コスト)=16000円/1俵の約半分でしかありません。どうやっても赤字です。このままでは経営が続けられません。
このままでは、日本の稲作農業がつぶれてしまいます。稲作がつぶれれば、大豆や麦や露地野菜なども同時につぶれます。担い手が同じだからです。日本は、個人家族経営を中核にした労働集約型の水田農業が、もっとも風土や気候に合致した、日本にふさわしい農業です。そうした小規模経営の農業が、生産者・農家の創意工夫やいろいろな努力によって支えられ、世界的に見ても超一流の高品質で美味で安全な農産物を生みだしてきたのです。それが、今や、おろかな市場原理主義イデオロギーと、軽率・安易極まりない「安けりゃいい」主義=大規模粗放型経営化政策=資本主義的農場制農業化政策によって、つぶされようとしております。
市場原理主義にもとづく、低米価放置政策と、野放図な貿易自由化の結果です。自民党・民主党の政治家達が振り回す政策に原因があります。まさに、100%人災です。少し詳しく申し上げれば、4つの優先農業政策(①アメリカ優先,②WTO・FTA・EPA優先,③財政再建優先(安上り農政),④政治家・官僚・食品関連産業の利権優先)の必然的帰結です。
国土の半分以上が中山間地域か山村地域である島国・日本で、アメリカやオーストラリアのような「侵略により先住民から強奪した広大な土地」をベースにした新大陸型の農場制農業を志向して、国際競争力を付けるために大規模化する、などという、勘違い丸出しの農業政策・農業イデオロギーを、1961年の農業基本法以来、日本政府や全国の自治体はずっと続け、それがため、日本の優れた宝物のような農業を、徐々に徐々に、ぐちゃぐちゃにしてしまっています。今では、ほとんどの担い手が高齢化し、労多くして割に合わないどころか、そもそも農業だけでは食べていけない経済条件・社会情勢の下で、後継者が見つからず、耕作放棄地もどんどん増えて行く状態です。(日本の農業が「過保護」だなどと言っている人間は、その「過保護」の恩恵に浴すべく、すべての私財を投じて農業に転業すればよろしい。政府の農業政策によって生産者・農家が受け続けている理不尽を身をもって知ることができるでしょう)
こんな中で、日本農業の最後のよりどころである主食・米づくり=稲作農業=水田農業が、米価暴落放置により、まもなく潰されようとしています。どこまで日本の農業と生産者・農家を痛めつけば気が済むのでしょうか。およそ、自国の農業や主食を粗末にする国と、その国民が、豊かに繁栄することなどありえない話です。いわゆる「罰あたり」に明日はありません。(日本の食料自給率=40%を辛うじて支えているのが、転作を含む水田農業です。水田農業をつぶせば、日本は事実上、農業がなくなることになります:畜産や野菜・果樹なども遅れて衰退していくことになるでしょう)
自家労働への支払い(ペイ)をほとんど放棄させられるような米価で、生産者・農家は、先祖伝来の田んぼを守るべく、来る年も来る年も、稲作に励んできました。おかげで、日本でとれる米は、まさに芸術品に近いくらいに高品質で美味です。生産性を上げる努力も積み重ねられてきましたから、反収だって、世界的にダントツに高い状態が維持されています。しかし、愚かな農業政策・食料政策が、これを破壊しているのです。
たとえば、いつまでたっても米飯給食にならない学校給食が放置されたまま、米の需要が年々減少していく(自国の子どもたちに自国の主食を食べさせない「教育」とは一体なんぞ? 愛国心もへったくれもあるか)、たとえば、生産者・農家の高品質米への努力を無残にも踏み潰す「格上げ混米と偽装表示」を取り締まらない(有毒低価格な非食用米や古古米・外国産米を国産米に混ぜて売って消費者をだまして利益を稼ぐ)、あるいは、需要に合わせて米の転作をしようにも、転作用の穀物類(大豆、麦など)が関税ゼロ状態で全く採算に合わない(大半をアメリカから輸入する穀物植民地状態:いわゆる「米だけは(何とかしましょう)」政策)、備蓄米の売買を米の需給調整に使えばいいものを、貿易自由化のために低米価政策(その低米価も国際価格並みの低米価)に固執し、採算価格から大幅に下落した低米価が生産者・農家に押し付けられる、などなど、書いていたらきりがないくらい、出鱈目な農業政策が続いているのです。
低米価は、兼業農家よりも、稲作で生計を立てている専業農家にストレートに打撃を与え、その没落を速めます。また、稲作がつぶれた後に残る農村地帯は、それは無残な荒廃した地域と化し、日本の農村地方・地域社会の見るも無残な崩壊状況を生み出していくことになります。生産者・農家が農村からいなくなった時、日本の愚かな消費者・国民は、生産者・農家の、貴重ながらも目に見えない社会貢献や地域づくりの努力があったことを思い知ることになるのでしょうか。
米の値段を国際価格なるもの並みに破格に安くしろというのなら、米をつくるために必要な費用=農機具、肥料、農薬、販売手数料、地代、利子、そして人件費も、国際価格並みに安くしろ、ということになるでしょう。つまり、日本の消費者・国民の賃金もまた、国際価格並みに安くしてしまえ、ということです。何故に、生産者・農家にだけ、国際価格並みの二束三文の賃金で働けというのでしょう。そんなことは、ありえない話です。また、円高すぎる為替レートの問題も、この上に重なります(工業なら、円高になれば海外に出ていけばいい、しかし、農業はそうはいかない)。
つまり、米を含む農産物もまた、一国の国民経済のバランスの中で、相応に妥当な、他の財やサービスの値段とバランスのとれた価格というものが必要であるということです。それをストレートに国際価格競争にさらして、農産物価格を国際価格並みに下げろというのは、乱暴きわまる話であるということです。それに、農業の生産性とは、土地生産性に大きく左右され、さらに天候などの自然条件にも大きく影響されます。ドラスティックな生産性向上などありえない話です。大量に大規模につくれば、問題が解決するかのごとく考えるのは、相当に、頭が単純な人間=ものごとを深く実態に即して考えられない馬鹿ものだ、と言っていいでしょう。それが、今の世にはびこる市場原理主義者達です。大学などによくいる経済学者なるものたちが、その典型事例です。
こうした愚かな認識に反して、実は農業は21世紀型の、人間を心底から幸福にしてくれる、「しあわせ産業」です。一刻も早く、農業を国際価格競争の呪縛から解放し、持続可能型社会を構築すべく、農業の基本である地産地消に徹し、危険な農薬や化学肥料を大きく減らしていって、近い将来、有機農業に変えて行く、日本社会を分散型の社会に切り替えて、食料やエネルギーや、介護・ケアなどを「自給」していく、していけるような経済社会構造に変え
て行く、そんな課題が私たちの眼前に広がっているのです。その場合、農業は、その中核的な基幹産業となるでしょうし、地域の生業の大黒柱の一つになるのです。農村には、人と、豊かさと、自然の恵みと、すがすがしさと、笑顔が戻ってくるでしょう。
諸悪の根源は、低米価主義・国際価格競争力強化の、この愚かな農業政策をやめようとはしない、似非保守ゴロツキ政党の自民党と、「口先やるやる詐欺」政党の民主党です。いずれも、その単純単細胞頭脳が市場原理主義にイカレていて、今後、益々、この時代錯誤でロクでもない市場原理主義に執着した「既存経済社会焼き尽くし政策」を繰り広げて行くでしょう。このままでは、日本農業は滅びてしまいますし、やがて日本社会も取り返しがつかないほどにボロボロにされていくことでしょう。やめるなら今です。
<別添PDFファイル>
(1)新米 安値(朝日 2014.9.14)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140914-00000001-asahik-soci&pos=3
(2)政府の責任で米価を安定させ、国産米の安定供給、自給率アップを!(農民連・吉川利明 『食べもの通信 2014.8』)
(3)採算割れの概算金、稲作、継続できぬ恐れも(日農 2014.9.17)
(4)農政談義(大柿好一 『農業と経済 2014.10』)
最後の『農業と経済』掲載の小論文では、安倍晋三政権の農業政策や、その下で翻弄されるJA系統のことが書かれています。目の付けどころが表面的で、問題の核心に迫れていない、大きな視点から見ると一過性のつまらない内容の記事ですが、情勢分析的に読めば、現下の農業政策事情が大体わかります。日本農業が危機的状況下にあるというのに、この「農業・農政関係者」達は、いったい何をしているか、という印象を強くします。
日本農業にもまた、救世主が必要のようです(農業を守るというのは、保守の専売特許のようなものなのに、日本には保守政治家はいないのか)。
草々
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