シロウトでもこれくらいはわかる高温ガス炉の「危なさ」と「おかしさ」:高速増殖炉「もんじゅ」に代わる原子力ムラの食いぶち=高温ガス炉で税金を取れるだけしゃぶり取れ
前略,田中一郎です。
(別添PDFファイルは添付できませんでした)
別添PDFファイル及び下記URLは、1週間ほど前に東京新聞に掲載されました「高温ガス炉」(高温工学試験研究炉(HTTR)」に関する批判的記事です。高速増殖炉「もんじゅ」をもて遊んで深刻なナトリウム事故を引き起こし(1995年)、その後も、いつまでたっても(燃料を使えば使うほど、燃料がどんどん増える)「夢の原子炉」など実現することもなく今日に至っている、そんなウソ寒い原子力ムラの明日を切り開くため、またぞろ、ロクでもない「大人のおもちゃ」ならぬ「ムラのおもちゃ」を持ち出そうとしています。
こんなもの、ただ危ないだけでクソの役にも立たず、動かせば使用済み核燃料などの核のゴミが増えて、将来世代の負担を増やすだけです。以下、記事に沿って、この高温ガス炉の「危なさ」と「おかしさ」を指摘しておきましょう。私のような原子力工学についてのまったくのドシロウトでも、これだけのことは言えます。それだけ、レベルの”ひく~い”、お粗末きわまる発電装置だと思っていただけたらいいと思います。
<別添PDFファイル>
(1)大洗の高温ガス炉
再開へ、「原発依存低減」に逆行(東京 2014.9.18 夕)
(2)新型原子炉 見えぬ実用化、政府、再開申請へ(東京 2014.9.19)
1.大洗の高温ガス炉 再開へ、「原発依存低減」に逆行(東京 2014.9.18 夕)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2014091802000256.html
(一部抜粋)
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政府は十八日、東京電力福島第一原発事故の影響で運転を中止している新型原子炉の一つの高温ガス炉「高温工学試験研究炉」(HTTR、茨城県大洗町)について、運営主体の日本原子力研究開発機構(原子力機構)が十一月に、新規制基準に基づく研究再開のための審査を原子力規制委員会に申請する見通しだと明らかにした。世耕弘成官房副長官が十八日午前の記者会見で述べた。安倍政権は原発依存度をできるだけ下げる方針を掲げるが、逆行する動きとなった。
世耕氏は、高温ガス炉について「安全性、経済性に優れているとされ、早期の運転再開が必要だと認識している」と述べた。政府が四月に閣議決定したエネルギー基本計画は「原発への依存度を可能な限り引き下げる」とする一方、高温ガス炉の研究開発を推進するとも明記している。
世耕氏は、HTTRの運転再開や安全性の実証試験のため、文部科学省が来年度政府予算で十六億円を概算要求していると説明した。HTTRは一九九一年に着工し、九八年に核分裂反応が持続して起こる「臨界」を達成した。しかし、二〇一一年三月の震災を受け、運転を停止したままになっている。
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2.新型原子炉 見えぬ実用化、政府、再開申請へ(東京 2014.9.19)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2014091902000154.html
(一部抜粋)
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政府が十八日、東京電力福島第一原発事故を受けて運転を中止していた新型原子炉の一つである高温ガス炉「高温工学試験研究炉」(HTTR、茨城県大洗町)の再開に向けて動きだした。原子力への国民の不安が払拭(ふっしょく)されないまま実用化のめどが立たない研究に多額の税金を費やすのは一兆円以上をつぎ込んで頓挫している高速増殖原型炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)の二の舞いになりかねない。
世耕弘成官房副長官は十八日の記者会見で、HTTRの運営主体の日本原子力研究開発機構(原子力機構)が十一月、原子力規制委員会に新規制基準に基づく運転再開のための審査を申請する見通しを表明。「安全性、経済性に優れているとされ、早期の運転再開が必要だと認識している」と述べた。文部科学省はHTTRの運転再開のため、二〇一五年度政府予算で十六億円を概算要求している。
従来の原発(軽水炉)が核燃料の冷却に水を使うのに対し、高温ガス炉は気体のヘリウムなどを用いる。
<高温ガス炉> 原子炉内に水を循環させて沸騰させる「軽水炉」に対し、ヘリウムなどの気体を加熱してタービンを回す。事故を起こしても核分裂反応が自動的に止まり、核燃料を空気で自然に冷却できるなど、軽水炉より安全性が高いとされる。一方、扱う温度が高く原子炉内の材料の耐久性など技術的に難しい点も多い。高温工学試験研究炉は1991年に着工し98年に核分裂が持続する「臨界」を達成。2011年の福島原発事故後は運転を停止した。
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(田中一郎コメント)
以下、記事に沿ってコメントします。
1.まずは高温ガス炉についての簡単な説明のところから
「原子炉内に水を循環させて沸騰させる「軽水炉」に対し、ヘリウムなどの気体を加熱してタービンを回す。事故を起こしても核分裂反応が自動的に止まり、核燃料を空気で自然に冷却できるなど、軽水炉より安全性が高いとされる・」
(田中一郎)⇒ ヘリウム(ガス)というのは、いわゆる不活性ガスで化学反応性に乏しく(たとえば燃えない=酸素と化合しない)、空気中で安定している。だから、このガスが何らかの事故で漏れたりしても、爆発したりすることはないし、人間などの生物に対しても有害性はほとんどない。が、しかし、である。そのヘリウムを原子炉核燃料の冷却材に使っているからといって、「核分裂反応が自動的に止まり」というのは「なんじゃらほい」である。そんな虫のいい話があるのかよ、ということだ。
このヘリウムだって、説明にあるように高温(かつ、おそらくは高圧)なのだろうから、原子炉及びその配管から大量に漏れ出して「冷却材喪失事故」ということはありうるだろう。あるいは核燃料が何らかの理由で「暴走事故」(勝手に核反応が爆発的に増大すること)を引き起こすかもしれないが、そんなときでも「核分裂反応が自動的に止まり」などということなのか。そんなバナナである。
また、「核燃料を空気で自然に冷却できる」についても、ヘリウムガスを1000度まで温度上昇させる膨大な核燃料の熱量をどうやってかわしながら、空気でもって原子炉炉心を自然に冷却できる」などと言えるのだろうか。かようなお気楽なことを書いていないで、実際に高温ガス炉の過酷事故がどのようにして発生し、それがどのような展開をすると考えられるのか、もう少し詳しい説明を具体的にしてもらわなければ話にならない。
それから、高温ガス炉の原子炉炉心で発生する中性子によって、このヘリウムガスが放射化ないしは原子核反応を起こして、危険な物質に物理的に変化することはないのか。もしありうるとするのなら、とてもじゃないが、安全などとは言えそうにない。
従って、高温ガス炉が軽水炉(沸騰水型、加圧水型)よりも安全性が高いなどとは、現段階ではとても納得のできることではない。どうもこの記事の、この高温ガス炉の簡単な説明は、原子力ムラの人間が言ったことをそのまま無批判に紙面に移し書きしただけではないか。もしそうだとしたら、この記事の書き方は、まことに情けないね。
2.続いて、高温ガス炉の説明から
「一方、扱う温度が高く原子炉内の材料の耐久性など技術的に難しい点も多い。」
(田中一郎)⇒ この点は高温ガス炉のポイントの一つである。加えて、ヘリウムガスの圧力はどれくらいなのだろうか。いずれにせよ、この高温高圧ヘリウムガスもまた、原子炉や配管から漏れ出すことはありうる話で、その場合、高温高圧であればある程、危険度は高いと言っていいだろう(美浜原発では、経年劣化と無点検により配管破断が起き、高温高圧の水蒸気を全身に浴びて、複数の作業員の方がなくなった)。
●[2004年8月美浜原発3号死傷事故]140度の蒸気 一気 肌ただれ「痛い、痛い」床一面に高温の湯 - 脱原発・放射能
http://blog.goo.ne.jp/jpnx02/e/511bde0540f12b734a8372689455161b
3.更に続いて、高温ガス炉の説明から
「高温工学試験研究炉は1991年に着工し98年に核分裂が持続する「臨界」を達成。2011年の福島原発事故後は運転を停止した。」
(田中一郎)⇒ おかしな話である。今から20年近く前に研究がスタートしているのに、未だに成果らしい成果もなさそうであることに加え、1998年という、ずいぶんと昔に「臨界」にまで達していた、この高温ガス炉が、その後、どうして実用化へ向けての取組につながらなかったのだろうか。私はおそらく、そうできなかった、何らかの重大な欠陥が、この高温ガス炉にあるような気がする。たとえば、経済性の問題だ。冷却材として使われるヘリウムガスは、現在品薄で、価格が高騰しているというニュースを見たことがある。原子炉冷却に使うほどのヘリウムガスを、その予備分を含めて大量に確保して貯留しておくには、相当の費用負担となるのではないか。
それ以外でも、冷却材としては、水という液体の方が、ヘリウムガスという気体よりも扱いが平易で、その分、原子炉施設建設のための費用が少なくて済むのではないか。つまり、ヘリウムガスという気体を冷却材に使うことによる、何らかのデメリットや危険性、及び経済的負担の増大があるのではないか。一般的に、液体の水(H2O)と気体のヘリウムガスとを比べた場合、閉じ込めておくには高温高圧のヘリウムガスよりも、液体の水の方が容易ではないかという気もする(但し、水蒸気という気体になっているうちは変わらない)。
それから、読売新聞や日本経済新聞などの御用言論の高温ガス炉の説明図では、この高温ヘリウムの副次的利用として、水素ガス生産設備の併設などが描かれていることがある。しかし、これもおかしな話である。高温ガス炉でなくても、原発の余熱利用はいろいろありうるわけで、何も水素ガス調達だけとは限らないし また、余熱利用は高温ガス炉の専売特許でもない。直接関係のないものを混ぜくって、高温ガス炉を高品質・高度設備に見せようと厚化粧しても、化け物は化け物でしかないし、高温ガス炉のエネルギー効率の悪さは原発と大差ないだろう。
4.原発依存度が下がらない
「安倍政権は原発依存度をできるだけ下げる方針を掲げるが、逆行する動きとなった」
(田中一郎)⇒ 原発依存度を下げるという大方針があるのに、なんでまた、新型の原子炉を開発する必要があるのか。東京新聞の言うとおりだ。
5.原子力利権に絡みとられた政治家の無責任「安全」発言・「経済性」発言
「世耕氏(世耕弘成官房副長官)は、高温ガス炉について「安全性、経済性に優れているとされ、早期の運転再開が必要だと認識している」と述べた。」
(田中一郎)⇒ 安全性や経済性をしっかり確認もしないで、原子力ムラの言うことを鵜呑みにしたまま、かような戯言をしゃべくっている。この和歌山の若手自民党政治家もロクでもない人間の1人なのか。原子力利権擁護の発言丸出しである。
6.文部科学省は引き続き原子力推進の総本山
「文部科学省はHTTRの運転再開のため、二〇一五年度政府予算で十六億円を概算要求している」(中略)「「二〇一一年三月の震災を受け、運転を停止したままになっている。」
(田中一郎)⇒ 高速増殖炉「もんじゅ」に代わる、次世代の原子力ムラ「食いぶちプロジェクト」なのだろう。文部科学省が予算獲得にショショリ出てきた。福島第1原発事故によって凍結状態にしていたものを、再び今に至って、そろそろそれを解凍しようというのである。つまり、有権者・国民は、福島第1原発事故の経験を忘れ始めているだろうから、もうそろそろ、少しばかり税金をかすめ取ってもさしたる問題にはならないだろう、などと推測し、有権者・国民を馬鹿にしているのだろう。かような予算請求は、無駄と危険の限りを尽くした高速増殖炉「もんじゅ」の責任者たちを処分してからのことにしたらどうだ。
7.自民党・河野太郎議員の批判
「安倍政権は四月に閣議決定したエネルギー基本計画に、高温ガス炉の研究開発推進をもぐり込ませた。原子力機構はもんじゅの運営主体であり、自民党の河野太郎衆院議員は「もんじゅがだめだから高温ガス炉を突然入れてきた。予算確保が見え見えだ」と批判していた。」
8.九州大学副学長の吉岡斉(ひとし)教授(原子力政策)の批判
「九州大の吉岡斉(ひとし)教授(原子力政策)は「今やる理由が分からない。原子力機構は他に動かせそうなものがないから、研究機関としての稼働度を上げるために高温ガス炉に目を付けたのでは」と指摘した。」
9.全くその通り
「政府は三〇年に高温ガス炉の実用化を目指しているが、成功しても「核のごみ」は発生する。最終処分場が見つかる見通しはなく、行き場のない核のごみは増え続ける。安倍政権は一二年の衆院選公約に脱原発依存を掲げ、原発依存度を下げると繰り返し表明しているが、逆行する動きとなる。」
草々
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