食べものの放射能汚染:食べてもらえぬ米の山(読売 2014 8 27 より)
前略,田中一郎です。
(別添PDFファイルは添付できませんでした)
別添PDFファイルは、昨今、読売新聞が特集してシリーズで報道する「原発と福島
風評の現実」の「その2」=「食べてもらえぬ米の山(読売 2014 8 27)」です。福島県産の米などの農林水産品が消費者に避けられてしまって売れない事態を「風評被害」などと報じていることがそもそもの間違いですが、以下、簡単にコメントいたします。
<別添PDFファイル>
● 原発と福島 風評の現実(2)
食べてもらえぬ米の山(読売 2014 8 27)
http://premium.yomiuri.co.jp/pc/#!/list_%2523IMPTNT
(一部抜粋)
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「天井まで10メートルはある農協の冷蔵倉庫に、60キロ入りの米袋が高々と積まれていた。「こんなに売れ残っているのか」。福島県相馬市の農家・・・は、米袋の壁の前でうめいた。」(中略)「すべての米が放射性物質の検査をパスしている。それでも食べてもらえない。「風評」がもたらした厳しい現実が、・・・の目の前にあった。」
「震災後の相馬市内の米の作付面積は、津波被害に加え、原発事故で多くの農家が避難したこともあり、大幅に減少した。12年に地元農協「JAそうま」が農家から販売を委託された米の量は約5400トン。事故前の4分の1を下回った。」
「農家に事故のしわ寄せが行かないように、JAが価格の下落による損失分を肩代わりし、まとめて東京電力に賠償請求していた。」
「収種した米を近所に配りにいくと、「私はいいんだけど、小さい孫には食べさせたくない」と受け取ってもらえなかった。知り合いの農家も孫のために他県産の米を買っていると知った。」
「「精魂込めて米を作っても、食べてもらえない」。大きな矛盾を抱えたまま、・・・は農作業を続ける。」(中略)「隣に座っていたJA幹部に、自分たちの米がどこへ行くのか尋ねた。「飼料用や加工用に使われるんだ」。幹部は諦め顔でそう答えた」
「「米穀安定供給確保支援機構」(東京都)は4月、米価維持を目的に、供給過剰だった13年産の主食用米35万トンを市場から買い取ることを決めた。販売が難しい産地の米を買い取り、家畜の餌や加工品原料として売却する。そのうち福島県産は全国最多の5万3000トン。JAそうまからは、13年産の85%にあたる5600トンが買い取られた。」
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(田中一郎コメント)
(1)米は福島県産であれば全袋検査である(それ以外の放射能汚染県の米はそうではない:危ない!!)。放射性セシウムについては、一応悉皆的なチェックは入っている。検査の仕方や検査機器類に問題がなければ、放射性セシウムについては問題がなさそうに見えるが、そうではない。単に、安全基準としては根拠の乏しい厚生労働省の飲食品にかかる残留放射性セシウム規制値=100ベクレル/kgを下回っていると言うだけのことで、それが実際、いかほどの汚染状況なのか、ベクレル表示はなされないからわからない。しかし、同じ100ベクレル/kg以下だと言っても、99ベクレル/kgと1ベクレル/kgでは、雲泥の差がある。米は主食であり、日々たくさん食べるもの。もっと厳しい規制値や厳しい表示義務が課されて当然である。また、検査の仕方や検査機器類の適正性については、適宜、利益相反のない組織によって、定期的に抜き打ちで点検されるべきである。
それから、さらに重大な問題は、放射性セシウム以外の危険な放射性核種=たとえば放射性ストロンチウムなどが検査されていないということである。何故、検査しないのか。チェルノブイリ原発事故後の旧ソ連諸国では、放射性ストロンチウム検査はなされているではないか。要はやる気の問題だ。検査しなければ、安全であるなどとはとても言えない。放射性ストロンチウムは物理的半減期が長い他(約30年)、体内に入ると骨や歯などの特定部署に集中的に蓄積・滞留して対外には出てこないし、昨今では、体内のさまざまな重要な機能を担っているカルシウムとも入れ替わる可能性があることもわかってきて、放射性セシウムに比べてはるかに危険である(放射性ストロンチウムの有害性がいかほどのものなのかは、詳細・正確にはわかっていない)。
放射性ストロンチウムなどのベータ核種やウラン、プルトニウムなどのα核種について、どのように検査・調査するのが効率的で有効かについて、真剣に議論された様子は、2011年3月11日以降、まったくと言っていいほどうかがえない。放射性セシウムの1/10の量で見ておけばいい、などと勝手に決め付けている。こうした非科学的な、危険を甘く見る態度の後には、必ずと言っていいほど大きな危険性が顕在化してくるものだ。従って、一般の消費者・国民が福島県産のみならず、広く東日本の放射能汚染地域産の農林水産品やその加工品を避けているのは、しごく当然の適切な消費選択である。風評被害などでは全くない。
ちなみに、米以外の農林水産品については、そのほとんどがノーチェックである。流通する量のわずか0.1%でさえも、検査されておらず、検査されているのは、サンプル抽出の仕方や、検査の仕方に疑義がある形で、ほんの僅かばかりが、放射性セシウムだけに限って検査されているにすぎない。加工食品は業者に丸投げ、流通している品物を無作為抽出で抜き打ち検査することも、東京などの大都市を除いて、ほぼ皆無である。こんな状態で、どうして福島県を含む放射能汚染地帯の農林水産品や加工食品・外食などが安全だと言えるのか。無理・無茶を承知で、安全、安全と、パフォーマンスするため、3年前の福島第1原発事故以降、ほんとうに無残にもバカバカしい「安全安心キャンペーン」が繰り返されている。ロクすっぽ、検査も調査もしないでである。そのようなことをしているヒマと金があったら、食品の検査体制・検査機器類・検査要員や態勢を拡充させ、根拠のある「安全性立証」をお見せいただきたいものである。
(2)農地の放射線汚染地図が、いつまでたってもきちんと作成されない。放射性セシウムについてでさえ、そうなのだから、他の放射性核種については、汚染状況が全く分からない中で、農林業が再開されている。また、米についても他の作物についても、放射能検査の結果と農地の汚染状況調査=汚染マップ作製とがリンクしていない。通常の常識は、検査でひっかかった作物の産生場所を調べ、その周辺も含めて綿密に農地の汚染状況を調べ、汚染が発見されたら除染を行う、という形で、繰り返し試行錯誤で農地がきれいにされていくものだ。しかし、今現在、そのようなことをしている生産者・農家はいないだろうし、放射能検査結果の具体的なデータなどが、きちんと生産現場に還元されていない可能性もある。要するに、農産物検査と農地検査、及び除染はリンクしていない。
農地は一般的に森林や林など、樹木に囲まれている場合が多いが、福島県他の放射能汚染地帯では、その森林や林も放射能で汚染されていて、日々、放射性物質を周辺環境に拡散していることが多い。また、福島第1原発からは、毎時間ごとに1000万ベクレル超の放射性物質が放出されているため、農地の汚染状況を一度調べるだけでは、まったくの片手落ちである。毎年、定期的な農地の汚染状況調査が必要であり(α核種、ベータ核種、ガンマ核種のそれぞれ別々に)、汚染マップは塗り替えられる。更に、農業用水の汚染も懸念されるものの一つである。特に、ため池や湖沼の水が利用される場合には要注意ということになるだろう。(報道によれば、政府・環境省は、放射能で汚染された池や湖沼の底の除染を(費用を惜しんで)拒否しているという。信じがたい話である)
そもそも何故に、上記のようなことをしてまで、農業が続けられているのだろうか。農林水産省は、2011年の事故直後の2011年5月に、早くも作付可能な田んぼの汚染限度は 5000ベクレル/kg以下だとして発表した。その根拠は、厚生労働省が決めた米などの一般食品の暫定規制値が500ベクレル/kgで、米=稲の「移行係数」が最大でも0,1(10%)だというところから、5000ベクレル/kgとなった(5000ベクレル(農地)×0.1=500ベクレル(稲):なお、「移行係数」とは、土壌汚染の何%くらいが作物に移行するか、その割合のこと)。5000ベクレル/kg以下の汚染された田んぼであれば、米の「移行係数」から考えて、500ベクレル/kgの厚生労働省の規制値を超える米はできないだろうという見通しに基づいている。なお、その他の作物については、麦も大豆も、野菜も果実も、一切の作物について、汚染農地の作付制限を決めなかった。これも信じがたい。
実に乱暴な方法である。そもそも5000ベクレル/kgというのは、土1kgあたり5000ベクレルという意味だから、これを面積基準に換算すると×60で、なんと300,000ベクレル/m2にもなる。こんな放射能汚染農地で稲作をやれというのだろうか。しかも、米以外の小麦や大豆やその他作物については「制限なし」だというから驚きである。全くの出鱈目と言っていい。また、この5000ベクレル/kgの米の作付制限については「落ち」があって、その後、厚生労働省は飲食の放射能残留規制値を1/5の100ベクレル/kgにしたので、本来なら、米の作付制限規制値も1/5にしなければおかしいところだが、農林水産省は未だに5000ベクレル/kgのままで放置している。つまり農林水産省は、そもそも、汚染地域での農業を規制する気もなければ、放射能で汚染された農林水産品や食品を供給しないようにする意思も気力も責任感もないことがはっきりしたということである。要するに、消費者・国民をだまして売り飛ばしてしまえばいい、ということだ、そうすれば、対策費用も不要となる。
(3)生産者・農家とその家族が、農作業によって、あるいは汚染地帯での居住によって被ばくしてしまうことについての注意喚起も、被ばく防護策も、その危険性についても、事後的な被ばく検査体制についても、何の手当ても言及もない。つまり、福島県民をはじめ、放射能汚染地域の生産者・農家は、消費者・国民に厚生労働省の規制値以下の汚染農林水産品・食品を出荷すればそれでいいのであって、それによって被ばくをしようが健康を害しようが、そんなことは政府も農林水産省も自治体も、知ったことではない=自己責任でやれ、ということに他ならない。全く許しがたい、ふざけた話である。
そして、ことは放射性セシウムだけの話ではないことを付記しておきたい。放射能汚染地帯での農作業で最も危険なことは、私は外部被曝ではなく、呼吸による内部被曝だと考えている。そして、この呼吸被ばくの場合には、ガンマ核種=放射性セシウム等以外にも、ウラン・プルトニウムなどのα核種や、さまざまなベータ核種にも万全の注意をしなければならない。そうしたことが全く告知されないままに、福島県や放射能汚染地域の農林水産業の「復興」だけが叫ばれるという状態になってしまっている。
(4)昨年2013年秋に収穫された南相馬市の米から、規制値を上回る放射性セシウムが検出された。いろいろ調べているうちに、その原因が、同年8月中旬に行われた福島第1原発3号機での汚染がれきの撤去作業に伴う放射性物質の周辺環境への拡散であることが分かってきた。しかも、約20km離れた南相馬市だけでなく、50km以上離れた福島市やその周辺でも、空間線量が上昇するなど、福島第1原発からの放射性物質拡散の影響が出ている。福島第1原発各号機の汚染がれきの撤去や除染作業は、今後も適宜実施されていくものと思われるので、通常ベースの毎時1000万ベクレルに加えて、桁違いの放射性物質があたり一帯の周辺環境に今後もばら撒かれること必定である。
許しがたいことに東京電力は、1号機から猛烈な放射性物質が出ていることを知っていながら、外部から指摘されるまで、そしらぬ顔をしていた。福島第1原発での作業を優先するためである。報道によれば、このがれき撤去作業で環境放出された放射性物質は2800ベクレル/時間、合計で1兆1千億ベクレルである。こんなところで農林水産業が行われていいはずがない。
● 農林水産省-福島県南相馬市の25年産米の基準値超過の発生要因調査について
http://www.maff.go.jp/j/kanbo/joho/saigai/fukusima/index.html
● 25年産米の放射性セシウム:南相馬市旧太田村の基準値超えの真の理由は? 3.11東日本大震災後の日本
http://tsukuba2011.blog60.fc2.com/blog-entry-778.html
● がれき撤去で米汚染の可能性 JA関係者が東京電力に抗議文(福島14-08-05)
- YouTube
http://www.youtube.com/watch?v=BjBsMvSBd4g
(5)読売新聞の記事によれば、生産された米を集荷する農協は、引き取りの価格を原発事故前よりも落とさないようにして、(値下がりしてしまった)福島県産米の時価との差額を一時的に負担して(???)、東京電力にその分を賠償金として請求しているという(しかし、農協の米の「共同販売」の場合には、農協は差額負担をするのではなく、低めの金額の仮渡し金を生産者・農家にいったん支払い、東京電力からの賠償金収入を待って、後日「清算」するという形をとっているように思うので、農協の差額負担はないはず)。しかし、いずれにせよ、米の倉庫保管料などを含めて、現場の生産者・農家や農協などの集荷業者に、米の放射能汚染と、売れ行きの悪化にともなう経済負担が覆いかぶさっていることは事実である。何故、国は、現場に負担がかからぬよう、万全の対策を打たないのか。
そもそも、放射能に汚染された生産者・農家の方々には、一時的にでも、恒久的にでも、一旦は放射能の汚染のない地域に、農場ごと避難・疎開・移転をしてもらい、降り注いだ放射能が十分に自然減衰するのを待って、農林水産業再開の準備を始めればいいのだ。その間は、国が責任を持って、汚染されていない土地で、被害者の生産者・農家のために農地を確保し、農業所得を補償し、避難・疎開・移転先での生活や子どもの教育などで困ることのないよう、被害者対策として万全を尽くすのが国のなすべき施策ではないのか。それを全部すっ飛ばし、被害者への賠償・補償も、出鱈目な方法で大幅にカットして、要するに、加害者・東京電力とグルになって被害者を切り捨てようとしているのである。許しがたいことではないか。生産者・農家は、好き好んで、猛烈な放射能汚染農地で、猛烈な放射線被曝を覚悟しながら、農業をしているわけではない。被害者を愚弄するのもいい加減にせよ。
(6)読売新聞の記事によれば、大量に売れ残ってしまった米は、飼料用や加工用として、安い値段で引き取られていくという。国の支援で創設された業界団体の「米穀安定供給確保支援機構」(東京都)が今回買い取る米も同様であるという。しかし、汚染米を加工用や飼料用に使ったからと言って、それで放射能が消えてなくなるわけではない。それどころか、家畜という動物の体を通して放射性セシウムなどの放射性物質が濃縮され、人間の口に畜肉や酪農製品として入る頃には、それが何倍もの汚染となっている可能性もある。人間が食えないから、家畜や養殖魚の餌にすればいい、などというのは、サイテーのご都合主義であるし、加工食品の原材料にするというのでは、単に放射能汚染を見えなくして、いわば消費者・国民をだまして放射能汚染物を食べさせているようなものである。
こういうことをしていると、米を餌とした畜産酪農製品や、米を原材料に使う加工食品に消費者・国民の不信感が広がり、それらが売れなくなってしまう危険性さえある。愚かなことはやめることである。また、県外に売れにくい米や自県産農林水産品を、ことさらに地産地消を強調して、学校給食の食材として使わせようとする強引な動きも散見される(さしあたり、いわき市の県産米の学校給食への使用は、一時STOPとなった様子、しかし、油断はできない)。売れ残りを消費させ、価格の下落に歯止めをかけるとともに、子供を「だし」に使って、安全性が確認されていない県産食品の「安全安心アピール」に使おうという魂胆である。教育委員会の中に、こうしたことを強引に推し進めようとする人間がいるようだ。まさに、教育者の風上にも置けない人間たちである。
ちなみに下記に公表されている農林水産省の家畜及び養殖魚の飼料に関する放射性セシウム規制値についても、人間の飲食品にかかる規制値と同様、「科学的実証的根拠」に乏しく、とても安全と言えるような代物ではないことも付記しておく
● 農林水産省- 放射性セシウムを含む肥料・土壌改良資材・培土及び飼料の暫定許容値の設定について
http://www.maff.go.jp/j/syouan/soumu/saigai/supply.html
(7)すべての問題は、放射能汚染地域で農林水産業を行うことから生まれている。福島第1原発事故による放射能汚染地地域(さしあたり空間線量で1mSv,ベクレル単位で300~500ベクレル/kg程度以上=18,000~30,000ベクレル/m2以上)での農林水産業を含むすべての産業活動をいったん停止し、汚染状況の低い地域から、綿密に、かつ慎重に、徐々に除染を進めていき、線量が下がったところで農林水産業を含む諸産業を再開するようにすべきである。
その間は、汚染地域の住民には、一時的または恒久的に避難・疎開・移住をしてもらい、その間の仕事、生活、学校、ケアなどを国が補償する措置をとればいいのである。そうした、ごく当たり前の原発事故後対策を国や東京電力が、費用負担などを理由に拒み続けていることがものごとを難しくし、健康被害などの二次災害をもたらしつつ、多くの人々を不幸と苦しみのどん底に突き落としているのである。
もういい加減にして、国はそろそろきちんと原発事故後対策・対応を実施したらどうなのか。
草々
(追)それから、「追撃」をかけるようで恐縮ながら、日本の米や食品の流通過程は、昨今では、政府・農林水産省・厚生労働省などの政策や監視・管理状態がひどいために、産地偽装をはじめとする偽装表示や格上げ混米などが横行しており、信用のおけない粗悪品や危険な飲食品が、たくさん流通・外食に出回るようになっている。産地表示で食品を買う場合も、偽装されている疑いがあることを十分に念頭において、商品選択を間違えないよう心掛ける必要がある。そして、ロクでもない、産業寄り・企業擁護の消費者行政や食品安全・表示行政を転換しようとしない日本の政府・政治、自民党や民主党の政権・政治に対して、私たちは厳しい審判を下すべきである。私たち有権者・国民は、私たち有権者・国民のために政治をしない人間達・行政をしない人間たちを、あらゆる権利を行使して、追放・交代させていく努力をする必要があるように思われる。
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