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2014年9月29日 (月)

東京新聞・吉田調書シリーズ特集記事に見る福島第1原発事故(その実態と事故原因をさぐる):(4)自ら拡大、3号機の危機、「何とかなる」で大ピンチ

前略,田中一郎です。

(別添PDFファイルは添付できませんでした)

 

東京新聞が9/15よりシリーズで報道し始めた吉田調書(政府事故調による吉田昌郎福島第1原発所長(当時)証言記録)に関する特集記事「調書は語る:吉田昌郎所長の証言」を見ながら、福島第1原発事故の実態とその原因を探ってみたいと思います。第4回目の今日は、下記の東京新聞記事です。なお、私のメールでは、このシリーズ特集記事にある、主として吉田昌郎所長証言のあいまいさや、証言から推察される福島第1原発事故深刻化の原因となったであろうことがらを取り上げて、簡単にコメントいたします。

 

 <別添PDFファイル>

● 調書は語る(4):自ら拡大、3号機の危機、「何とかなる」で大ピンチ(東京 2014.9.19

http://www2.87sumika.jp/tanutanu9887/e/962dcafef0545259fc3350de237f9ead

 

1.東京新聞記事

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「非常用冷却装置による冷却が続いていた3号機だが、十三日未明に装置が止まると状況は悪化。しかし、吉田昌郎(まさお)所長は官邸にいた東電の部長らしき人物から「海水を使うと廃炉につながる」との電話を受け、注入準備が整った海水を使わず、新たにホースをつなぎ、淡水注入の準備を始めた。この時間的ロスがさらに事態を悪化させる結果につながった。(肩書はいずれも当時)」

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(田中一郎コメント)

 31112日の1号機の場合には、首相官邸や東京電力本社を二枚舌を使ってだましてでも海水の注入を行った吉田昌郎所長が、3号機については、海水を使わずに真水を使おうとしている。海水を使えば、その原子炉は廃炉とせざるを得ないからだ。この期に及んで何をしているのか、という印象を強くするが、こうした吉田昌郎所長の態度の急変の背後には、東京電力本社から吉田昌郎所長に対して(陰に隠れて)猛烈な圧力がかかったものと推測される。「この時間的ロスがさらに事態を悪化させる結果につながった」とあるのは、おそらく3号機の高圧注水系(HPCI)が人為的に作業員の手動で停止されて以降の原子炉炉心の冷却が遅れに遅れてしまったことを意味しているものと推測される。

 

2.東京新聞記事

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「海水注入の準備が整ったのに、なぜ淡水に切り替えたのか。」

 

「基本的に思い出せないんですよ。強く海水がだめだというような指示が本店からあった記憶もないんですね。現場の人間は『海水注入は次にして、淡水という指示に切り替えた』と言っているようですけれども、私はあまり記憶が無くて、淡水であろうが、海水であろうが、やりやすい方でやればいいという判断でやったつもりなんです」

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(田中一郎コメント)

 またぞろ吉田昌郎所長得意の「思い出せない、記憶がない」である。先週末に「ポレポレ東中野」で上映された「東電テレビ会議 49時間の記録」(OUR PLANET TV 白石草氏 提供)の映像で見ても、吉田昌郎所長は、何度も何度も海水ではなくて真水で行くんだ、と頑張っていた(実際には、現場作業員は高い放射線量の下で、まとまった量の真水を探しまわっていた様子)。こんな言い訳が通用するわけがない。おそらくは東京電力本社からの圧力を隠蔽しているものと推測される。

 

(参考)「東電テレビ会議 49時間の記録」自主上映について OurPlanet-TV:特定非営利活動法人 アワープラネット・ティービー

 http://www.ourplanet-tv.org/?q=node/1664

 

(みなさま、この録画は必見です。何とかして見るようにしていただければと思います:ある程度、沸騰水型の原子炉の基礎知識を持っておく方がいいですし、1回見ただけでは記憶に残らないので、2~3度くらい見た方がいいような気もします ⇒ 追って、別途報告します)

 

3.東京新聞記事

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「いろいろ思い出したんだけれども、確かに官邸から淡水で入れろという指示があった。それに引きずられたと今では思っていますけれども、完全に頭の記憶から抜けていました」

 

「私は海水もやむを得ずというのが腹にずっとありますから、最初から海水だろうと、当初言っていたと思います。その後に官邸から電話があって、何とかしろという話があったんで、がんばれるだけ水を手配しながらやりましょうと」

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(田中一郎コメント)

 やっぱりそうだろう。で、これで1件落着ではない。問題は、「指示があった」のは「官邸から」ではなく「東京電力本社」からではないのか、さもなくば、官邸に詰めていた竹黒一郎東電フェローの独断ではなかったのか。場所は官邸からでも、その中身は、東京電力本社幹部(おそらくは勝俣会長と若干名)で吉田昌郎所長に「廃炉にさせるな、真水でやらせろ」なんて、やっていたのかもしれない。1号機が炉心溶融して水素爆発で建屋が吹き飛び、続いて3号機が炉心溶融するかもしれないという時に、「何をやっとンじゃ、バカたれ」ということである。

 

4.東京新聞記事

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「ただ、水の手配はうちだけではできないんで、自衛隊も含めてお願いしますよという形で動いているというのがこの時点なんですね。ある程度、自衛隊が動いてくれれば水の補給は可能であるかなと、まだ期待があった時点なんで」

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(田中一郎コメント)

 これもどうもウソ臭い。「自衛隊」を引き合いに出せば説得力がつくとでも思っているのかもしれない。しかし、上記でご紹介した「東電テレビ会議 49時間の記録」を見ると、1号機が水素爆発を起こし、福島第1原発敷地内が高線量状態となって以降は、自衛隊は福島第1原発に近づくことさえ躊躇し、差し控えていた様子がうかがえる(現場の一部の指揮官が独断で福島第1原発事故現場への乗り込みを抑えていた可能性もある)。この福島第1原発事故直後の自衛隊の行動については、指揮命令系統も含めて、危機管理体制再検証の一環として、徹底して明らかにする必要があるように思われる。

 

5.東京新聞記事

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「1号はメーキャップできない状態で、真水を使えないんで、海水でやりますと腹を決めて海水を注入し始めた。廃炉も何も関係なくて。ここ(3号機)はまだメーキャップできる可能性があるんで、何とかできる範囲は真水を集めてやろうではないかという考え方ですから、海水をどんどんやるという前の日の状況とは違う」

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(田中一郎コメント)

 この段階の3号機は1号機と比べて、何が違うというのだろうか。この吉田昌郎所長の証言も理解に苦しむ。

 

6.東京新聞記事

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「淡水注水が始まるまで六時間四十分くらい空いているが、炉心の状態は」

 

「もうこのときは死ぬと思いましたから、要するにもっと早く入れたいわけですけど、結局ラインアップ(ホースをつないで注水の準備)もできないとか、いろんな条件が整わないということで」

 

「水位が下がっていく状況で、燃料棒がもう露出している認識はあったか」

 

「もちろんあります。水を入れるということと、格納容器の圧力を抜くことだけ考えていた。でも、準備ができないわけですよ。遅いだ、何だかんだ、外の人は言うんですけども、では『おまえがやってみろ』と私は言いたい。人も少ない中でやっていて、それを遅いなんて言ったやつは、私は許しませんよ」

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(田中一郎コメント)

「要するにもっと早く入れたいわけですけど」という吉田昌郎所長証言が、上記5.の「ここ(3号機)はまだメーキャップできる可能性があるんで」という吉田昌郎所長証言と矛盾しているのが分かる。ともあれ、「結局ラインアップ(ホースをつないで注水の準備)もできないとか、いろんな条件が整わないということで」証言に見られるように、現場の作業は混乱に混乱を極めていた。

 

 しかし、その大きな原因の一つが「準備ができないわけですよ。遅いだ、何だ、かんだ、外の人は言うんですけども、では『おまえがやってみろ』と私は言いたい。人も少ない中でやっていて、それを遅いなんて言ったやつは、私は許しませんよ」などと言うのなら、何故、東京電力本社や首相官邸に、きちんと人員や資材等の補給を要請しないのだろうか。道路事情が悪くて物資や人員等を福島第1原発まで届けられないのなら、ヘリコプターで運べばいいし、民間の運転手やパイロットが被ばくを恐れて担ってくれないのなら、自衛隊を出動させて運べばいい。私が福島第1原発事故直後の対応で不思議でしょうがないのは、事故現場に対する人員や資材の補給が全然だめで、対応にあたっていた現場や作業員が孤立無援のような状態だったことである。この「原発非常事態時における人員及び物資・資材の補給」についても、詳細にそれを振り返って検証することで、その問題点を浮き彫りにしなければならないと思う次第だ。

 

 それからもう一つ、吉田昌郎所長の自覚していた焦眉の問題は、証言にもあるように「水を入れるということと、格納容器の圧力を抜くことだけ考えていた」だった。この話は、ここ以外でも複数回出てきている。しかし、ここの場の発言は3号機の話(おそらく3/13)なので、1号機の水素爆発を経験した後である。何故、吉田昌郎所長は、この2つのことに加えて、1号機以外の各号機について、水素爆発をどう回避するか、という重要課題認識が念頭に浮かばなかったのだろうか。また、4号機の爆発は3号機からの水素が共用のベント用配管を通じて逆流した結果であったらしいので、そもそもベント用配管が3,4号機で共用になっていたことを吉田昌郎所長は知っていたのだろうか。更には、吉田昌郎所長が気がつかなかったのであれば、東京電力本社の技術系の人間が、何故、吉田昌郎所長に強く注意を促さなかったのだろうか。

 

(「東電テレビ会議 49時間の記録」を見ると、3/13の早い段階で、吉田昌郎所長や東京電力本社の人間は、3号機の水素爆発の危険性を察知し、1号機と同じようなことが起きるかもしれないから、大至急、対策を検討する、などと発言していた。にもかかわらず、何も手が打たれないままに、3/14の午前11時過ぎの3号機爆発に至ってしまっている。同録画では、2号機建屋の「ブローアウトパネル」(建屋の壁にある窓)が開いている(1号機の水素爆発で開いたのではないかとのこと)ことがわかり、みんなで大喜びしている場面もあった。ああ、なさけなや、なさけなや、だ)

 

 何度も繰り返して恐縮だが、原発事故時における水素爆発の危険性の認識は、スリーマイル島原発事故を通じて、世界共通の危機管理マターとなっていた。日本の東京電力を含む電力会社や原子炉メーカー、それに原子力ムラ御用学者どもが(斑目春樹原子力安全委員長がその代表格)、いかにレベルの低い、いい加減な連中であったかが、この3/13~14の3号機水素爆発に至るまでの経緯を見ることでよくわかる。

 

7.東京新聞記事

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「<しかし、消防車を一台増強し、重いホースを引き回して確保した八十トンの淡水は昼すぎに枯渇。再び海水に切り替える必要に迫られた。注水はその間五十分ほど途切れ、貴重な冷却時間を失うことになる>」

 

「だから、ホウ酸を入れて、それから海水という段取りを、私の記憶ではそう思っているんですけど、現場から聞くと、最初、海水といっていたのを淡水に戻してというような指示があったと言っているんですけども、私にはその記憶が無いんですよ。パラ(並行)では検討させた」

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(田中一郎コメント)

「私にはその記憶が無いんですよ。パラ(並行)では検討させた」 吉田君、ウソを言っちゃいかんよ。

 

8.東京新聞記事

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「<その夜、テレビ会議では、2号機の水源をどうするかが議論された。吉田氏が海水注入の方針を伝えると、本店社員が「いきなり海水っていうのは(炉内の)材料が腐っちゃったりしてもったいない。なるべく粘って真水(淡水)を待つという選択肢もある」と議論を蒸し返した。朝、水源を急に変える判断をし大ピンチを自ら招いた吉田氏は「今から真水というのはないんです。時間が遅れます。また」と言い放った>」

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(田中一郎コメント)

 東京電力本社には、まるでアイヒマンのような役職員がうじゃうじゃいるようだ。今度は2号機でも真水で行け、もったいない、などと言っている。ひょっとすると、その後ろで、勝俣恒久会長や竹黒一郎フェロー、あるいは武藤栄副社長が、へらへら笑って控えていたのかもしれない。

 

9.東京新聞記事

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「その時、政府や東電は… 官邸の指示は誰?」

 

「吉田氏が3号機への注水方法を、海水から淡水へ切り替えると指示したのは官邸からの1本の電話がきっかけだった。その場面は、東電のビデオ会議にも記録されている。13日午前6時43分。東電本店の社員がテレビ会議で「本当に緊急です。吉田所長、官邸から電話がかかってるんで転送します」と伝えた。」

 

「この電話の直後、吉田氏はこう指示する。「官邸から。ちょっと海水を使うのは早すぎるんじゃないかとコメントがありました。廃炉につながるだろうと。極力、ろ過水なり、真水を使うことを考えてくれと」 1号機では海水注入の中止命令を無視した吉田氏だが、この時は指示をすんなり受け入れる。電話の相手は誰だったのか。」

 

「吉田調書では「■■(黒塗りだが、東電の原子力品質・安全部長と判明)と話をした後、誰かに代わったんですよ」と、吉田氏の判断を変えさせたのはこの部長とは別人のような発言になっている。」 東電の武黒一郎フェローや原子力安全・保安院の安井正也氏、細野豪志首相補佐官ら数人の名前が挙がったが、吉田氏は「ここの記憶は全く欠落している」と繰り返した。」

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(田中一郎コメント)

 吉田昌郎所長が誰かをかばっているのは明らかである。

 

 

 <最後に>

 3号機には、いくつか「わからないこと」(謎)がある。その一つが、3/13昼ごろまでは正常に動いていた高圧注水系(HPCI)を作業員が手動で止めてしまったことがある。何故、そのようなことをしたのか。政府事故調では、それに代替する冷却手段を確保しないまま止めたことが3号機の深刻化を早めたとしているが、果たしてそれが、現場作業員の単純なミスにすぎなかったのかどうか。私は、高圧注水系(HPCI)の配管が地震の揺れでやられて漏水を起こし、放置すれば冷却水喪失状態となるので、作業員が気を利かせて急きょ止めてしまったのではないかと疑っている。

 

 また、もう一つの謎は、3号機の使用済み核燃料プールの状態である。この3号機はいわゆるプルサーマル炉であり、使用済み核燃料プールに入れてある核燃料も通常の原子炉のものとは違い、プルトニウムを多く含むより危険なものだった。一説によれば、この3号機の使用済み核燃料プールにあった核燃料が、3/14に3号機が水素爆発をしたのを契機に、ほぼ同時に即発臨界事故=核爆発を引き起こしていた、という。その真偽はどうなのだろうか。

 

 更に、空気作動弁が動かないこと(地震の揺れで制御系配管が損傷した可能性)や、原子炉圧力容器の水位計が早い段階からどうもおかしいことなど、3号機の制御系機器類のぜい弱性も非常に気になるところである。しかし、これらの機器類が、新規制基準でどの程度厳しく規制され、点検されているのか、怪しい限りであると思われる。ということは、再びの過酷事故の際には、福島第1原発事故と同じことが起きるとみておいて間違いないだろう。

 

 今後の3号機の事故検証の進展の中で注目していきたい。

草々

 

 

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