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2014年7月 3日 (木)

甲状腺疾患についての2つの新聞記事

前略,田中一郎です。

(別添PDFファイルは添付できませんでした)

 

別添PDFファイルは昨今の甲状腺疾患に関する新聞記事です。一つは、正反対の性格の2つの甲状腺疾患についての、コンパクトで、なかなかいい解説記事、もう一つは、「福島県民健康調査」の甲状腺検査に関する「首をかしげたくなる」記事です。簡単にご紹介いたします。

 

  <別添PDFファイル: 添付できませんでした>

(1)女性に多い橋本病(東京 2014.7.1)

(2)福島で続く甲状腺検査、見守り手厚く)日経 2014.6.20

 

1.女性に多い橋本病(東京 2014.7.1)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/living/health/CK2014070102000189.html

 

 甲状腺疾患には次の2つのタイプのものがある(記事より一部抜粋)。

 

(1)橋本病:甲状腺機能低下症

「ストレスや出産など何らかの原因で自己免疫システムが崩れ、甲状腺を異物として攻撃する抗体ができる。攻撃され、炎症を起こした甲状腺は硬く腫れる。深刻化すると働きが低下して、甲状腺ホルモンの分泌量が減少。新陳代謝が低下し、全身の活力がなくなったり、臓器の働きが弱まったりする。便秘や体重増加、生理不順、寒がりなどの症状のほか、無気力で疲れやすくなることもある。」

 

「血液検査をすれば、甲状腺の異常は簡単に調べられる。橋本病の場合、炎症が起きても甲状腺の働きは正常で、症状の出ていない人が多い。この場合、昆布などヨウ素を多く含む食品を避け、定期的な血液検査で甲状腺の働きをチェックする。妊娠中の場合は、ごく軽度に甲状腺の機能が低下しても、胎児の発育に影響する可能性があるので受診が必要だ。橋本病からまれに悪性リンパ腫になることがあるので注意したい。」

 

「進行して甲状腺の働きが低下した場合、不足したホルモンを補うホルモン剤を飲む。分量が定まれば半年に一回の通院でいい。伊藤院長は「治療をすると、冬眠から覚めたようだと言う人も。自己免疫疾患なので予防法はないが、悪くなった場合は治療でコントロール可能だ」と強調する。」

 

「<橋本病>慢性甲状腺炎。1912年、この病気について初めて論文を発表した九州大の外科医、橋本策(はかる)博士にちなんで名づけられた。代表的な自己免疫疾患で、患者は欧米などでも多くみられる。「バセドー病」よりも患者数は多いという。ただ、いずれの病気も特有の症状ではないため、症状からの診断は難しい。」

 

(2)パセドー病:甲状腺機能亢進症

 橋本病とは逆に、甲状腺ホルモンの働きが過剰になり、動悸(どうき)や汗かき、下痢などが起こる。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%90%E3%82%BB%E3%83%89%E3%82%A6%E7%97%85

 

(田中一郎コメント)

 橋本病については、「何らかの原因で自己免疫システムが崩れ、甲状腺を異物として攻撃する抗体ができる」とあり、「橋本病から、まれに悪性リンパ腫になることがあるので注意したい。」と、記事には書かれている。この「何らかの原因」に「放射線被曝はない」とは言えないだろう。ならば何故、「福島県民健康調査」では、橋本病を含むガンや悪性腫瘍以外の甲状腺疾患についても検査しないのだろうか。放射線被曝によるガン以外の疾患や健康障害の無視・握りつぶしは目に余る。

 

 何度も申し上げているが、放射線被曝、特に恒常的な低線量被曝(外部被曝・内部被曝)は非常に危険であることは、その放射線被曝を原理的にシンプルに考えてみれば自明なことである(小さなエネルギーで結合している人間の体を構成している分子を、放射線のとてつもない大きなエネルギーが破壊する=めちゃくちゃにしてしまう)。さしあたり五感に感じないからといって、かつてのあの枝野幸男(民主党)のように「ただちに健康に影響はない」などと安易に構え、一定の期間が経過したのちに、体のあちこちに異変が出始めて気がついても、もう遅いのだ。まして、大人自身だけでなく、何も知らない、罪もない、未来を背負うべき世代の子どもたちや孫たちにまで、大人の都合で放射線被曝を強要することなどあってはならないのではないか。

 

 行政は近未来の健康被害の大量発生を何としても避けるための必須の対策を早急に打つ義務がある。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

2.福島で続く甲状腺検査、見守り手厚く(日経 2014.6.20

 http://www.nikkei.com/article/DGXDZO72986510Z10C14A6EL1P01/

 

 そもそも、この記事の見出しが「首をかしげたくなる表現」であり、福島県民に対して失礼である。3.11以降、(2013年春に「福島県民健康調査検討委員会」の委員メンバーが一部交代しても、なお変わらない)、原子力ムラ・放射線ムラの利益や面目を優先させ、加害者・東京電力や事故責任者・国のそれぞれの加害者・事故責任者としての責務をも免罪・放免して、「福島県民健康調査検討委員会」や福島県庁・福島県立医科大学などは、福島県民の命や健康を高いリスクにさらし続け、しかも、その暴挙とでも言うべき人権蹂躙の対応を合理化し続けている。県民が受検する検査はおざなりで、検査結果の本人への還元もいい加減で不親切なら、検査結果の保存や情報活用などについても秘密主義的で独善的である。これではまるで福島県民をモルモット扱いしているとしか言いようがない。がしかし、この新聞は、それを「見守り手厚く」などと書いて報道するのである。福島県民を馬鹿にしているのか。御用新聞もここまで来ると、許される領域を超えている。

 

 記事の中の記述を若干ピックアップして批判しておこう。記事の内容もミスリーディングで「おかしな点」や「妙な脚色」だらけである。

 

(1)「調査責任者の鈴木真一県立医大教授は「現時点では事故による放射線で発生が増えたとは考えにくい」と指摘する。理由として、(1)50人はほとんどが震災当時10代で、放射線の影響を受けやすいとされる0~5歳児に多く甲状腺がんが見つかったチェルノブイリと異なる、(2)がんだった人の被曝線量がほかより高い傾向は見られない――などを挙げる。」

 

(田中一郎)⇒ チェルノブイリ原発事故時の甲状腺がん発生の年齢構成が、福島第1原発事故後の福島県のものとは違うからと言って、どうして「現時点では事故による放射線で発生が増えたとは考えにくい」などと言えるのか。年齢層の低い子どもたちは、その若い親御さんたちが、いち早く避難させたり、建物内部にかくまって放射線被曝を回避させたかもしれないし、それより上の世代の親御さんは、放射性ヨウ素の危険性を知らぬまま、子どもたちを野外で自由に遊ぶのを放置していたのかもしれない。また、チェルノブイリ原発事故では、日本とは違う事情があったのかもしれない(たとえば、赤ん坊や幼児に対して放射性ヨウ素で汚染されたミルクを多く与えてしまったなど)。要するに、旧ソ連諸国のチェルノブイリ原発事故や日本での福島第1原発事故の個々のケースを丁寧に調べなければ、こんなことは言えないということだ。

 

 また、初期被ばくの実態調査を自分たちでつぶしておいて、その結果、子どもたちの実際の被ばく線量が分からない状態に陥っているにもかかわらず(その点については何の問題にすることもなく)、まるで「風が吹けば桶屋が儲かる」式の「初期被ばく線量推計」なるインチキ過小評価計算で、「がんだった人の被曝線量が他より高い傾向は見られない」などとのたまわるのだから、話にならない。この新聞がこの記事を「新聞報道だ」と言うのなら(言い換えれば、「福島県民健康調査検討委員会」の御用広報機関紙ではないというのなら)、何故、この「福島県民健康調査検討委員会」の不作為や理不尽やおかしさを浮き彫りにするような報道をしようとしないのか。事実、この鈴木真一福島県立医科大学教授の言うこととは真逆の主張をしている医師や医学者がいるのに、どうしてそうした人の発言を並べて報道しないのか。

 

(2)「環境省が青森・山梨・長崎3県の3~18歳約4千人を対象に、福島県と同じ手法で実施した甲状腺調査でもがんと診断されたのは1人。福島事故による住民の健康への影響に否定的な報告をまとめた国連科学委員会のラーソン議長も5月の来日時、「小児甲状腺がんの発生率は基本的に低いと思っている」と話した。」

 

(田中一郎)⇒ 「国連科学委員会(UNSCEAR)]の報告など、何の根拠もないことは、既に多くの人に語られている。「風が吹けば桶屋が儲かる」どころの話ではなく、まさに虚偽でっちあげの報告書ではないか。そもそも、「国連科学委員会(UNSCEAR)」自体が、いわゆる「国際原子力マフィア」と呼ばれている国際的な原子力推進機関の一つであり、そのようなところが公正・公平な社会的チェックも経ずに、被ばく被害のもみ消しのための報告書を公表し、それを日本の新聞がもっともらしく報道するなどあってはならないことである。日本経済新聞は「利益相反」という言葉を何と心得ているのだろうか。

 

  また、青森、山梨、長崎の甲状腺がん検査についても、検査を受けた人数が少な過ぎ、かつ一過性であることが批判されて久しい。今のままでは福島県と比べても意味がないのである。何故、もっと大規模に西日本で甲状腺がんや甲状腺疾患の検査を実施して、福島県や東日本の放射能汚染地域と比較しないのか。チェルノブイリ原発事故後の旧ソ連諸国での何十万人もの疫学的調査を、検査・調査の対象数が少ないので統計的に有意ではない、などと言って、放射線被曝の被害をごまかし続ける国際原子力マフィアや放射線ムラのデマゴーグはかまびすしいほどに報道するのに、わずか数千人の「ちょい調査」を、あたかも、もっともらしく科学的実証数値などと虚飾して、福島と比較すべく報道するというのだろうか。かようなご都合主義の報道はやめることだ。

 

(3)「日本医科大学の清水一雄名誉教授によると、チェルノブイリで子供の甲状腺がんの多発が確認されたのは事故の4~5年後という。」

 

(田中一郎)⇒ これについても、もう、何度も批判されている。当時の旧ソ連諸国で甲状腺の病気を検査する体制はほとんどなかった、主として海外からの公私の援助により、ようやく曲がりなりにも甲状腺がんを含む甲状腺疾患の検査ができるようになったのは、事故後4年くらい経過してからだ、ということにすぎない可能性が高い。この清水一雄日本医科大学教授は、「福島県民健康調査検討委員会」の委員の一人であり、昨年の春にメンバー交代で加わった一人だが、未だにかようなことを言って、放射線被曝と甲状腺が多発とは関係がない、という、先に「政治的に決めてある結論」を、自分の立場を利用しながら繰り返している。きわめて悪質と言わざるを得ない。この連中は、1986年当時(チェルノブイリ原発事故)の旧ソ連諸国の甲状腺がん検査体制がどのようなものだったかをきちんと把握しているのだろうか。

 

 また、更に申し上げれば、それでも今日に残っている当時のデータで、爆発的ではないにしても、事故の直後から子ども甲状腺がんの増大傾向は見てとれる。事故直後の放射性ヨウ素による甲状腺被ばくのみならず、その後の放射性セシウムによる甲状腺被ばくについても非常に懸念され、しかも、子どものガンの場合はガンの成長速度や転移が速いなどの懸念事項もあって、とても「チェルノブイリで子供の甲状腺がんの多発が確認されたのは事故の4~5年後」などという悠長なことは言っていられないはずである。

 

(4)「2次検査を受けた子供や保護者の心のケアも重要だ。県立医大は昨年11月、心理的支援のチームを設置した。検査は20歳までは2年に1回、それ以降は5年に1回の間隔で続く。鈴木教授は「関心を持ち続けてもらうため、学校や県外の避難先で開く説明会を増やすなどして検査の意義を知らせていきたい」と話す。」

 

(田中一郎)⇒ 全くバカバカしいと申し上げておこう。肝心の健康調査を充実させず、これまで何度も何度も提言され要請されてきた「放射線被曝の総合的なワンストップ・チェック体制」(血液検査・染色体異常検査、心電図、尿検査、バイオアッセイ、WBC等)がほとんど手当てされずに、あたかも「放射線被曝への不安を持つのは考え過ぎや風評被害が原因だ」と言わんばかりの、まるで被害者・被災者を馬鹿にしたかような「精神的ケア」なる、インチキ・スリコミ処方ばかりが肥大化している。

 

 また、何度も申し上げて恐縮ながら、福島県以外の地域住民・被害者は健康調査を全く受けられず、完ぺきに無視され、被ばく者はまるで存在しないかのごとき扱いである。放射能が県境で止まったわけでもないのに、福島県以外には、もはや放射能汚染は存在しないかのごとくである。そして、腹立たしいことに、ロクすっぽ検査もせず、検査できる体制も創らずに、内容空虚な「食べもの安心安全キャンペーン」が大宣伝されていることと、ぴったりと平仄があっているのが、この出鱈目な「精神ケア」キャンペーンなのである。

 

 ともあれ、日本経済新聞はひどい新聞であることが、また一つ立証されたということです。

早々

 

 

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