『週刊金曜日』 のマンガ 「郡山もんもんライフ」 は やはり おかしい
前略,田中一郎です。
(別添PDFファイルは添付できませんでした)
<別添PDFファイル>
(1)郡山もんもんライフ(最終回)(芳賀由香
『週刊金曜日 2014 6 13』)
(2)原発事故終わっていない:郡山住民の日常 「漫画」で描く (東京 2014 6 10)
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別添PDFファイルは、『週刊金曜日』に毎月一度、掲載されてきたマンガ「郡山もんもんライフ」の最終回(今週号:2014.6.13)と、その著者・芳賀由香氏を報じる東京新聞記事です。
● 東京新聞原発事故終わっていない 郡山住民の日常 漫画で描く 井上能行のふくしま便り 東日本大震災 (TOKYO Web)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/feature/tohokujisin/fukushima_report/list/CK2014061002000171.html
以前にも、私のメールで、この「郡山もんもんライフ」というマンガを批判したことがありますが、今回の最終回の作品を拝見して、再度、これはち~とばかり変だ、おかしいと申し上げないといけないと思いました。
著者の芳賀由香氏について、根本的におかしいと思うのは、やはり福島県の浜通りや仲通りの放射能汚染の状況と、それに伴う住民の放射線被曝についての認識です。私は決定的に認識が甘いと考えています。このマンガの評価が人によって違ってくる理由は、いくつかあるだろうと思います。しかし、決定的なのは、やはりこの放射能と被ばくに対する著者の認識です。
もし、芳賀氏が言うように、現状の福島県の汚染状況下で住み続けたとしても、誰一人として健康障害を引き起こすことがなく、(過去の被ばくはともかくも)これからの放射線被曝についても意識的に自主的に排除し、あるいは回避して生活すれば本当に大丈夫であるのなら、このマンガのような描き方もありうるでしょう。しかし、事実はそうではありません。私が何度も申しあげているように、恒常的な低線量被曝(外部被曝・内部被曝)は非常に危険であり、それは放射線被曝を原理的に考えてみれば、そう難しいことではないですし、また、放射能や被ばくの感受性は、単に年齢や性別の違いだけでなく、そもそも人間・生き物の個体ごとに、個々人ごとに大きく違っているのです。「生物学的半減期」などという概念は、科学的実証的な根拠のないインチキだと考えていて間違いありません。その決定的に重大な間違いは、人の命と健康にかかわることを「平均値」で見ているということであり、それは言いかえれば、平均値よりも感受性の高い人には「泣いていただきます」「健康被害が出ても仕方がありません」「あきらめてください」ということを意味しているのです。
このマンガを読んでみると、著者の芳賀氏も、必ずしも放射能と被ばくについて、安心しきっている様子ではないようです。やはり、中長期的に継続的な低線量被ばくに伴う不安や懸念は隠せないように見えます。しかし、それならそれで、その不安の状況こそを、心配の心情こそを、もっとしっかりと書かなければならないのではないでしょうか。しかも、福島県では、その不安や懸念を口に出して云えない状況がつくられてしまっているのですから、「美味しんぼ」問題ではありませんが、そのおかしな社会状況についても、マンガで描かれなければいけないのではないかと思います。(どうして無理をして、福島の被ばく状況の中でも、健康に元気に誰もがやっていけるかのごとく描くのですか? それは、もしも、健康被害が出た場合には、その被害者に対する大変な加害行為(「だました」行為)であり、また、今や90人を超えつつある子ども甲状腺がん・甲状腺疾患の被害者に対してもひどい話になるでしょう。甲状腺がん・甲状腺疾患の原因は、放射性ヨウ素のみならず放射性セシウムも重大な原因の一つと言われているのですから)
しかし、著者はそれとは逆に、「福島の食べ物は大丈夫だ」とか「WBCで内部被曝を計測したら大丈夫だったので安心しました」などと、マンガやインタビューでしきりに書き、そして発言しています。それ以外にも、「除染」「去年よりだいぶ下がった」「家に引きこもっている人の方が高い」「外に出て動いた方がセシウム排出するみたい」等々、毎回のように、首をかしげたくなる、ミスリーディングな「演出的発言」をマンガの登場人物にさせています。
著者は、どうして、「それは事実ではありません、原子力ムラ・放射線ムラの仕組んだ悪意の潜むインチキです」と訴える、たくさんの人たちの声を聞きとめようとはしないのでしょうか。まるで、そんな話は最初から聞く必要はないと、自分で情報を遮断し、ないしは偏った選択をして、歪んだ判断に陥っているように見えて仕方がありません。いやそれどころか、今回のマンガに描かれているように、そうした放射能や被ばくへの懸念を言う人たち、放射線被曝を歪曲・矮小化する「ムラ人」達を厳しく批判する人たちを、まるで「黒い悪魔」か「サタン」のように描き、脱原発を押し付ける悪玉菌のようなマンガを描いているのです。おかしいです。実におかしい。悪玉菌は、放射線被曝を矮小化・歪曲して放射能汚染を私たちに押し付ける原子力ムラ・放射線ムラや「国際原子力マフィアの人たち、あるいはその代理店のように動いている現日本政府や福島県、それに一部の自治体であることをしっかりと認識すべきではないかと思います。
(念のために書いておきますと)
(1)食べものの放射能汚染はロクすっぽ測定されておりませんし、わずかに測定されているものも放射性セシウムだけです。厚生労働省が定める残留放射能規制値も危なくて仕方がないような数値です。その他、いろいろ(私の「食べものの放射能汚染(1)(2)(3)」というレポートを見てください)。
(2)WBCは、検出限界が大きいため、内部被曝を見逃します、特に体重が小さい子どもたちの場合はそうです。尿検査や血液検査の方がはるかに内部被曝の度合いがわかりますが、この尿検査も血液検査もきちんとなされておりません。また、WBCで計測できるのはガンマ線だけであり、深刻な内部被曝をもたらすベータ線やアルファ線はキャッチできないのです。しかし、政府も自治体も、いつまでたっても、このベータ放射線被曝やアルファ放射線被曝の計測をしようとはしません。
放射能と被ばくのこと以外にも、このマンガには、いくつかのおかしさや難点があります。一つだけ挙げておきますと、加害者・東京電力や事故責任者・国、それに福島県庁や一部の自治体などの行政について、著者はどう考えているのか、見ているのか、がはっきりしません。いや、ひょっとすると、フレンドリーでさえあるのではないか、少なくとも、その責任をきちんと問うていないのでは、と感じさせられることです。たしかに、ひどいことをされた、という思いが出ていることは感じます。しかし、それは当たり前のことで、問題は、だから、どうなのか、国や自治体や加害者に対して、どうさせたいのか、どうしてもらわなければ困るのか、どうあるのが当然のあり方なのか、という、福島第1原発事故後の被害者にとって最も大切な部分が抜け落ちている(避けられている)と思われてならないことです。
もし、著者が描くように、福島第1原発事故後の福島県の放射能汚染くらいは、事故後3年もすれば人間が注意すれば住めるようになり、たいしたこともなくなり、事故を引き起こした張本人たちについても、もういいんじゃないの、そんなにぎりぎり責めなくても、ということであるのなら、原発再稼働したっていいんじゃない、ということになりませんか? 放射能や被ばくは、少々あっても大丈夫、心配いらない、何とかやっていけるのなら、原子力や原発だって、そんなに忌み嫌うこともないでしょう。あれだけの原発事故に見舞われた福島県だって、もうほとんど大丈夫なんだから、県内の原発は様子を見てまた動かせば、地域にカネも落ちるし、ということになりませんか? 私は、脱原発(著者もまた脱原発だと言っています)と脱被ばくは表裏一体だと思います。
私は、このマンガのベースにあるセンチメントが、先般批判した僧侶・玄侑宗久氏に通底しているような気がしています。そして、それは更に、あの悪魔の施策「フクシマ・エートス」にもつながっているように思います。それは「美味しんぼ」でクローズアップされた原子力翼賛の圧力の大きな共鳴板であるようにも思えます。放射能は危ないし、放射線被曝はできるだけ避けましょう、子どもや妊婦さんは、できる限り放射能汚染地域から離れましょう、食べ物・飲み物は要注意です、この当たり前のことを言えない「もんもん」とした「ライフ」状態を描くはずだったこのマンガが、いつの間にやら「フクシマ・エートス、るんるんライフ」に変質しているような気がしてならないのです。
著者の芳賀氏に悪意があるのかないのか(私は週刊金曜日の編集方針は問題ありだと思っていますが:このマンガは掲載すべきではなかった)、それはわかりません。しかし、いずれにせよ、このマンガは、芳賀氏として意図してか、せざるしてかはわかりませんが、福島県での放射能と被ばくの問題について、誤った認識・軽率な判断を拡散することになるように思います。そしてそれは、福島県の人々に意図しない無用の被ばくを間接的に助長することになり、従ってまた、健康被害の危険性を高めてしまうことになるでしょう。芳賀氏もまた、被害者・被災者ですから、氏を真正面から批判することは憚られますが、しかし、そのインパクトを考えれば、私はやはり、しっかりと批判しておいた方がいいと思っています。特に、今回の原発事故でひどい被害にあわれた方々から、このマンガはいけない、変だ、という声を挙げて行くべきであろうと、私は思います(私のような東京在住の人間もまた、大なり小なり今回の福島第1原発事故の被害者であると認識しておりますが:私は2011.3/15の日の午後にそれとは知らず屋外にいて、大量の呼吸被ばくをさせられたと認識しております)。
このマンガが、今回「最終回」であったことにホッとしています。著者の芳賀氏には、もう少し、放射能と放射線被曝の危険性について、それを強く訴え、また国や行政を厳しく批判している人々との間で十分な会話や議論をしていただき、ご認識を改めていただいて、再チャレンジしていただきたいと願っています。少なくとも、放射能と放射線被曝を強く懸念する人々や「脱原発」を訴える人々を「黒いサタン」として描いてはいけないだろうと思います。
(参考)「いちろうちゃんのブログ」より
(1)食べものの放射能汚染に関して、(1)韓国国会議員が福島訪問 水産物検査に「お粗末」、(2)農林水産省-避難指示区域等における26年産米の作付に係る取組について いちろうちゃんのブログ
http://tyobotyobosiminn.cocolog-nifty.com/blog/2014/03/-26-4383.html
(2)食べものの放射能汚染:子どもたちまで「出し」にして放射能汚染物を商売に使う日本の食品産業の「罰あたり」
いちろうちゃんのブログ
http://tyobotyobosiminn.cocolog-nifty.com/blog/2014/02/post-ebc4.html
(3)食べものの放射能汚染(1)(近況報告:厚生労働省公表の検査結果から)
いちろうちゃんのブログ
http://tyobotyobosiminn.cocolog-nifty.com/blog/2013/09/post-85a7.html
(4)食べものの放射能汚染(2)
韓国の日本産水産物輸入禁止・試験操業再開
http://tyobotyobosiminn.cocolog-nifty.com/blog/2013/10/post-44e1.html
(5)食べものの放射能汚染(3)
いちろうちゃんのブログ
http://tyobotyobosiminn.cocolog-nifty.com/blog/2014/06/post-f186.html
早々
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