原発・被ばく、こんなのおかしいのとちがう?(1):原発取材後の鼻血の描写、「美味しんぼ」物議(2014.4.29付毎日新聞他各紙)
前略,田中一郎です。
(別添PDFファイルは添付できませんでした)
別添PDFファイルは、さる4/29の朝刊各紙に掲載された記事(添付は毎日新聞)の一つです。どうも記事を読んでいて、おかしいぞ、と思ったので、以下簡単にコメントします。
<別添PDFファイル>
●原発取材後の鼻血の描写、「美味しんぼ」物議(毎日 2014.4.29)
http://www.excite.co.jp/News/society_g/20140429/Mainichi_20140429k0000e040156000c.html
(一部抜粋)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
小学館が28日に発売した週刊誌「ビッグコミックスピリッツ」5月12、19日合併号の人気漫画「美味(おい)しんぼ」(雁屋哲作・花咲アキラ画)で、東京電力福島第1原発を訪れた主人公らが鼻血を出す場面が描かれ、読者から問い合わせが相次いでいることが分かった。同誌編集部は「綿密な取材に基づき、作者の表現を尊重して掲載した」などとするコメントを発表した。
(中略)
◇被ばくと関連ない
野口邦和・日本大准教授(放射線防護学)の話 急性放射線障害になれば鼻血が出る可能性もあるが、その場合は血小板も減り、目や耳など体中の毛細血管から出血が続くだろう。福島第1原発を取材で見学して急性放射線障害になるほどの放射線を浴びるとは考えられず、鼻血と被ばくを関連づけるような記述があれば不正確だ。
◇ストレスが影響も
立命館大の安斎育郎名誉教授(放射線防護学)の話 放射線影響学的には一度に1シーベルト以上を浴びなければ健康被害はないとされるが、心理的ストレスが免疫機能に影響を与えて鼻血や倦怠感につながることはある。福島の人たちは将来への不安感が強く、このような表現は心の重荷になるのでは。偏見や差別的感情を起こさない配慮が必要だ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
この手の話は今までにもたくさんあった話で、私はこの記事については、下記の3者の対応で十分だと考えている。今の段階では、それ以上にも、それ以下にもしてはいけないと思うからだ。そういうことがあったという事実は事実として、受け止めておけばいい。
(1)同誌編集部は、ホームページに掲載したコメントで「鼻血や疲労感が放射線の影響によるものと断定する意図はない」「風評被害を助長する意図はない」などとしている。
(2)原作者の雁屋氏は今年1月、豪州在住の日本人向け情報サイトで2011年11月〜13年5月に福島第1原発の敷地内などを取材したことを明かし、「帰って夕食を食べている時に、突然鼻血が出て止まらなくなった」「同行したスタッフも鼻血と倦怠(けんたい)感に悩まされていた」などと語っていた。
(3)井戸川氏は28日の毎日新聞の取材に「雁屋さんから取材されて答えたことがそのまま描かれている。(描写や吹き出しの文章は)本当のことで、それ以上のコメントはない」と話した。
私が問題だと考えているのは、この記事に添付された2人の著名な学者のコメントである。上記記事をもう一度ご覧いただきたい。
● 野口とかいう学者の話に対して私が疑問に思うこと
(その1)何で被ばくと関係ないと断言できるのか?
(その2)「急性放射線障害になれば鼻血が出る可能性もあるが・・・・」などと述べているようだが、急性だろうが、鈍足性だろうが、放射線被曝の人体への影響の度合いについては、驚くほど個体差が大きい。小さな放射線被曝であっても、鼻血の出る可能性は否定できない。絶対にない、とは言えないはずだ。この野口とか云う学者は、おそらく「急性放射線障害」について、インチキ被ばく単位の「シーベルト」でいくらいくら、という「固定観念」を持っていて、それ以外では絶対に鼻血はあり得ない、と思い込んでいるようだ。私は、そんな教科書的な判断は、こと放射線被曝については全くあてにならない、と考えているが、もし野口氏が「いや絶対にこうである」と言い張るのなら、その実証的証拠を統計学的に有意な形で示していただきたい。おそらくは数百万人の放射線被曝と鼻血の関係についての疫学的調査結果をお持ちなのでしょう。是非、お見せいただきたいものである。
(その3)「福島第1原発を取材で見学して急性放射線障害になるほどの放射線を浴びるとは考えられず」などと、どうして同行したわけでもない野口氏が、かようなことを言えるのか。福島第1原発の現場は、あっちこっちが猛烈なホット・スポットだらけであることに加え、事故後から今日まで、大量の様々な放射性物質を、大気中に、あるいは汚染水として敷地のいたるところに撒き散らしているのである。不幸にして、そのばら撒かれた放射能によって、たくさん被ばくしてしまったということは、ありえないと、どうして野口氏がいえるのだろうか。
(その4)従って「鼻血と被ばくを関連づけるような記述があれば不正確だ」ではなく、「不正確なのは、あなた」、つまり野口さん、あなたなのです。憶測でモノを言っていはいけません。
● 安斉とかいう学者の話に対して私が疑問に思うこと
(ほんとうに安斉氏がかようなことを言ったのかなあ、と素朴に疑問を感じます。ひょっとして「1シーベルト」とあるのは「1ミリシーベルト」の間違いではないのか、とも思います)
ずばり「放射線影響学的には一度に1シーベルト以上を浴びなければ健康被害はないとされるが」なんて、あんた何柳京煕天然(なにゆうてんねん)。寝言は寝て言え!!、であります。安斉さん、そんなことをおっしゃるならば、申し訳ないけど、毎日1Sv以下(0.99Sv)の放射線を浴び続けていただけませんか? 健康被害はないのでしょうから、別にどうってことはないでしょう?
ついでに申しあげておくと、「心理的ストレスが免疫機能に影響を与えて鼻血や倦怠感につながることはある」だって。この説明パターン、よく聞くよね。被ばくと軍国主義貫徹は「精神・心理の問題」なのだそうだ。安斉さん、あなた、ひょっとして、原子力ムラじゃないけれど、放射線ムラなの?
ということで、みなさま、この野口邦和・日本大准教授(放射線防護学)と立命館大の安斎育郎名誉教授(放射線防護学)の2人の名前はよく覚えておきましょう。何故なら、今回の毎日新聞記事のように、この似た者同士の2人は、いわゆるリベラルの立場から放射線被曝の問題へのコメントを求められることが多く、そのたびに、上記のようなミスリーディングな発言を繰り返しているようだからです。注意! 注意! 要注意! です。
早々
(参考)「いちろうちゃんのブログ」より
●原子力翼賛社会への道:放射線被曝とは、隠ぺいして、ごまかし、バレたら適当に言い逃れをし、そして健康被害が出たら切り捨てること(2)
いちろうちゃんのブログ
http://tyobotyobosiminn.cocolog-nifty.com/blog/2014/05/post-1618.html
●原子力翼賛社会への道:放射線被曝とは、隠ぺいして、ごまかし、バレたら適当に言い逃れをし、そして健康被害が出たら切り捨てること(1)
いちろうちゃんのブログ
http://tyobotyobosiminn.cocolog-nifty.com/blog/2014/04/post-b3bd.html
●原発推進からくり人形(2) :九州電力の王国(朝日新聞記事より)と「もんじゅ」ハッタリ延命計画 いちろうちゃんのブログ
http://tyobotyobosiminn.cocolog-nifty.com/blog/2014/04/post-a2e7.html
●原発推進からくり人形 いちろうちゃんのブログ
http://tyobotyobosiminn.cocolog-nifty.com/blog/2014/03/post-5813.html
« 原子力翼賛社会への道:放射線被曝とは、隠ぺいして、ごまかし、バレたら適当に言い逃れをし、そして健康被害が出たら切り捨てること(2) | トップページ | 「100mSvをめぐって繰り返される誤解を招く表現」(津田敏秀岡山大教授 『科学 2014.5』 論文より) »
「放射線被爆」カテゴリの記事
- (メール転送です) 低線量内部被曝の危険を人々から覆い隠すICRP学説の起源 他+アルファ(2015.05.06)
- 被ばく強要を「リスクとの折り合い」などと詐称して原子力ムラに寄り添う似非リベラル、他方で「邪悪権力」に勇気を奮って立ち向かう市場原理主義者(清水修二と古賀茂明)(2015.04.07)
- 誰のための個人情報保護法なのか+「青森県小児がん等がん調査事業の報告書」(2015.04.01)
- こんなことはあってはならない : 放射線の影響 話しづらい,子供心配でも、声をあげれば孤立する,物言えぬ雰囲気の中,行政は検査縮小の動き(3/11東京新聞記事より)(2015.03.12)
- 放射線被曝はマイクロRNAに注目すべき(NHKサイエンスゼロ 「がんも!老化も! 生命を操る マイクロRNA」より)+報道特集「沖縄で何が」+誰が何を証明すべきなのか 他(2015.03.08)
« 原子力翼賛社会への道:放射線被曝とは、隠ぺいして、ごまかし、バレたら適当に言い逃れをし、そして健康被害が出たら切り捨てること(2) | トップページ | 「100mSvをめぐって繰り返される誤解を招く表現」(津田敏秀岡山大教授 『科学 2014.5』 論文より) »
コメント