東京電力向け貸出金の担保保全に走る銀行団、無担保貸出を貸し渋り
前略,田中一郎です。
(別添PDFファイルは添付できませんでした)
別添PDFファイルは、直近の『週刊エコノミスト』(2014.4.29)掲載の記事、並びに関連する日本経済新聞記事(2014.4.22)です。以下、簡単にご紹介しながらコメントいたします。
<別添PDFファイル>
(1)担保付債券で銀行と政府が対立、巨額資金不足で東電存続に黄信号(小野展克
『エコノミスト 2014.4.29』)
(2)東電向け無担保融資、大手4行、実施へ(日経 2014.4.22)
1.担保付債券で銀行と政府が対立、巨額資金不足で東電存続に黄信号(小野展克
『エコノミスト 2014.4.29』)
まず、メインのレポート(1)の簡単な内容紹介をします。
「原発事故の賠償、除染、廃炉に加え、汚染水対策が財務に重くのしかかる東電に、進んで融資する銀行はない。そこで銀行と東電が編み出したのが私募債スキームだった。」
「私募債スキームは、東電が発行する私募債を信託の枠組みを使って組成したファンドが引き受け、このファンドに銀行が融資するという仕組みだ。こうした複雑な仕組みが編み出された背景には、銀行の融資に担保を付与する狙いがあった。」
(田中一郎:上記の他、「信託」スキームが使われたのは、第一に、担保設定事務の手間暇を簡略化する目的で「信託」(ファンド)に集約して一本の担保設定にしたこと、第二に、各金融機関に対して平等に対応するためと思われる)
「私募債スキームは、「社債が償還された範囲」という上限が設定され、既存の社債保有者に不利に働かないような配慮も設けた」
「しかし、思わぬ横槍が入った。みんなの党の松田公太参院議員が私募債スキームを槍玉に挙げ、「銀行優遇だ」との批判を展開したのだ。こうした国会での批判が世論の反発に結びつくことを警戒した経産省・資源エネルギー庁は「無担保での融資継続」を銀行側に要請した。」
(田中一郎:「横槍」などではない。当然の追求だ。また、経済産業省のこの動きは、彼らがいかに自分たちが出鱈目なこと・社会的正義に反することをしているかを自覚していることを示すもの)
「しかし、これには銀行側が猛反発、経産省・資源エネルギー庁と激しく対立した。その結果、11年3月の原発事故以前の既存融資約1.6兆円については無担保での借り換えを進め、残高を維持することになった。ただ、その一方で銀行は、原発事故後の緊急融資1.9兆円については期限を迎えるごとに順次、東電から返済を受け、残高は維持しない替えだ。」
(田中一郎:結構なことだ。このまま政府が何もしなければ、東京電力は経営破たん=法的処理となる。是非そうしていただきたい。しかし、今政府がやっていることは、このゾンビ会社東京電力に税金を無尽蔵に注入して生かし続け、東京電力に代わって政府が、銀行団に対して事実上肩代わり返済のようなことをしているのである。他方で、多くの原発事故被害者は、まともな賠償・補償も支援も受けられずに放置されているのだから、全く許しがたい背信行為である。喜んでいるのは加害者・東京電力と銀行団、それに原子力ムラである。日本の政府は一体誰のために、何のために存在しているのか)
(東京電力の債務の動き)
2011年3月原発事故前 社債(有担保)=5兆円、銀行貸出(無担保)=1.6兆円
2011年3月原発事故直後 社債(有担保)=4.7兆円、銀行貸出(無担保)=1.6兆円、緊急融資(無担保)=1.9兆円
2013年3月末 社債(有担保)=3.6兆円、銀行貸出(無担保)=1.6兆円、緊急融資(無担保)=1兆円、私募債(有担保)=0.9兆円
2014年3月末 社債(有担保)=3兆円、銀行貸出(無担保)=1.6兆円、緊急融資(無担保)=0.6兆円、私募債(有担保)=1.3兆円
2015年3月末(見込み) 社債(有担保)=2.6兆円、銀行貸出(無担保)=1.6兆円、緊急融資(無担保)・私募債(有担保)=未定
「「原発のリスクを遮断しない限り、東電は安心して融資できる企業にならない」と大手銀行の幹部は嘆く。」
(田中一郎:東京電力だけではない。原発を抱える他の地域独占の大手電力会社はみな同じである。政府が東京電力を含むこれらの大手電力会社に無用のテコ入れ(例えば電気料金値上げ承認など)をしなければ、原発に固執する電力会社はやがて倒産していくだろう。それでいいのである。倒産させて法的破綻処理に追い込むのが一番いい。そうすることで、原発からも、過去のしがらみからも、きれいさっぱり足を洗った新電力会社が生まれてくる)
「原発事故の賠償、廃炉、除染を東電の経営から切り離し、すべての原発を政府が電力会社などから買い取る原発の国有化を本格的に検討すべきとの声が政府内外で浮上している。」
(史上最悪・最低のモラルハザードのシナリオだ。上記に書かれているような、いわゆる「原発国有化」論などは絶対に認められない。原発国有化は、①東京電力を法的破綻処理すること、②全ての原発・核燃料施設を破棄すること=完全即時脱原発をはっきりさせること、③福島第1原発事故の責任追及を徹底して行うこと、の3つが出そろった場合に限り、完全廃炉を目的に原発の政府買い取りが許される)
2.東電向け無担保融資、大手4行、実施へ(日経 2014.4.22)
http://www.nikkei.com/article/DGKDASGC2101E_R20C14A4EA1000/
記事を読むと、借り替えした分は貸出期間が長期から6か月の短期に切り替えられており、さしあたり銀行団は「様子見」で短期で資金繰りをつないだ、くらいの意味しかない。下記のように、株式市場がもろ手を挙げて喜ぶようなことではない。
●国内・海外・為替マーケットニュース マーケット情報 野村證券 退職金・相続など資産運用のご相談は野村證券へ
<東証>東電が大幅続伸 大手4行による無担保融資を好感
http://advance.quote.nomura.co.jp/meigara/nomura2/qsearch.exe?F=users/nomura/newshonbun&KEY1=HHG2964
3.簡単な総括
銀行団は自分たちの貸出金が保全されれば、あとはどうでもいい、という態度で臨んでおり、原発事故の被害者のことや、原発及び東京電力の今後の在り方のことを考えた場合、この行為は反社会的である。政府は、銀行団の貸出金が担保付私募債に切り替わってしまわぬうちに(つまり銀行団が身勝手な債権保全をしてしまわぬうちに)、早急に株主責任として、東京電力を法的破綻処理すべきである。
申し上げるまでもないが、被害者が東京電力に対して請求する賠償・補償債権は、銀行団の担保付私募債や、原発事故前からある担保付き一般社債に対して劣後していることを忘れてはならない。被害者の賠償・補償は、加害者の東京電力が支払えない場合は、事故責任者の政府が支払うべきものだが、しかし、銀行団には東京電力の事故の後始末に係る費用負担を共有してもらう必要があるので、無担保貸出を担保付に変えてしまって、その責任から逃げてしまうことを許すわけにはいかないのだ。
早々
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