日豪EPAには「秘密条項」があった=5年後に更なる譲歩へ向けて見直しだそうだ
前略,田中一郎です。
(別添PDFファイルは添付できませんでした)
別添PDFファイルは、今般、妥結となった日豪EPAと、目下交渉中のTPPに関連した若干の記事です。日豪EPAに「5年後に再度(日本の豪州への更なる譲歩へ向けての)見直し」の「秘密条項」があることが発覚しました。政府は詳細説明を拒否しているようです。2つの「売国奴」協定の正体が露わになってきています。こんなものは国会が批准を拒否する以外にありません。以下、簡単にご紹介いたします。
<別添PDFファイル>
(1)日豪EPA、5年後に見直し状況が存在(日本農業新聞 2014.4.25)
(2)TPP報道、官僚が名指し批判(東京 2014.4.23)
(3)食料自給率、目標下げ(日経 2014.4.23)
1.日豪EPAの詳細内容(農林水産省HP)
まず、農林水産省のHPに発表されている日豪EPAの内容詳細を見ておく。日豪EPA妥結に関するマスコミの報道は、あたかも安倍晋三政権が巧みな外交手腕で交渉を妥結させたかのごとく伝え、その場合に必要不可欠(であるかのごとき)な譲歩部分=日本が農業で失うもの、についてのものばかりを詳述しているが、そんな記事ばかりを見ていると、いつの間にやら洗脳されてしまって判断を間違うことになる。
このEPAのポイントは、前回のメールでも申し上げたように下記のようなことである。かような自国農業の破壊だけの結果に終わる、日本にとっては何のメリットも利点もない、単純な豪州政権へのご機嫌取り協定=EPAなどは、さっさと国会の場で批准を否決すればいいだけの話である。かつて明治時代の政治家たちは、欧米の帝国主義列強に対抗して自国の独立を確保するために「関税自主権」=関税の奪還外交交渉を繰り広げた。翻って、その約100年後の子孫の馬鹿もの政治家たちは、その大事な大事な、欧米列強から奪い返した関税自主権を、何の見返りも得るものもないままに、交渉相手政府や一部大資本のために、投げ捨ててしまおうとしているのである。愚か極まりない市場原理主義アホダラ教である。
第一に、このEPAは日本にとって得るものが皆無に近いのに対して、失うものは農業をはじめとして巨大(豪州の自動車の関税引き下げなどは無意味で、タイ・豪州EPAに乗せてタイから自動車を豪州に輸出すればいいだけの話:実際問題、三菱自工その他の自動車メーカーはおそらくそうするだろう。トヨタも豪州の現地生産から撤退予定)
第二に、農業の聖域5品目に手を付けるなという国会決議に明確に違反
第三に、マスコミ報道は、畜産物・酪農製品や聖域5品目だけに着目し、事実上の関税割当下での関税率の半減だから、あるいは米・麦・砂糖には手がつけられていないから、だから影響は大きくないと言わんばかりにしきりに書きたてている。しかし実際は、食肉や酪農製品の価格低下をもたらし、今でも収支がきつい農業経営・畜産酪農経営を圧迫し、現状での工業型畜産・酪農の弊害を拡大しながら、日本の農業・畜産・酪農の中長期的衰退・目先の廃業多発の引き金となるだろうということ
第四に、更に、下記で詳細が明らかになった通り、多くの分野で農林水産物や加工食品・農林水産加工製品の関税破壊が行われている。中でも、農産品分野に入っている園芸作物や果樹・野菜、及び加工食品などについては、今後、中長期的にじわじわと日本の国産品産業の首を絞め続け、日本の食のほとんどすべてが外国産品にとって代わられていく大きな流れをつくってしまうであろうことが推測される。そもそも豪州にかような関税破壊を認めてしまえば、他の国の要求に対しても抵抗し難くなるのは必定だ。
第五に、こうした、日本の食と農を捨て去る売国奴協定の日豪EPAを締結したにもかかわらず、時の安倍晋三・自民党政権は、この日豪EPAの影響は限られているので、競争力を強化しなければいけない日本の農業に対しては、補助金等による価格補てんのような直接的支援よりも、生産者・農家の競争力を付けるような、言いかえれば、生産者・農家の尻を鞭打つような、そういう政策的フォローを展開する旨の発言が相次いでいる。自国農業は叩けるだけ叩いて、後は野となれ山となれ、ということのようである。ちなみに現在の日本の生産者・農家の過半は65歳以上の高齢者である。つまり農村地帯のじいさま・ばあさまを日豪EPAやTPPのために、殴り続けろ・ムチ打ち続けろということだ。
第六に、そして、極めつけは、下記の「5年後の大幅譲渡へ向けての見直し秘密条項」の存在発覚である(下記参照)
(1)農林水産省-日豪EPA(経済連携協定)交渉の大筋合意について
http://www.maff.go.jp/j/press/kokusai/renkei/140407.html
(2)農林水産省-日豪EPA(経済連携協定)交渉大筋合意の詳細について(畜産物関係)
http://www.maff.go.jp/j/press/seisan/c_shokuniku/140417.html
(3)水産庁-日豪EPA(経済連携協定)大筋合意の内容について(水産物関係)
http://www.jfa.maff.go.jp/j/press/kakou/140418.html
(4)農林水産省-日豪EPA(経済連携協定)交渉大筋合意の詳細について(農産物関係)
http://www.maff.go.jp/j/press/seisan/kikaku/140418.html
(5)林野庁-日豪EPA(経済連携協定)交渉大筋合意の内容について(林産物関係)
http://www.rinya.maff.go.jp/j/press/boutai/140422.html
(6)農林水産省-日豪EPA(経済連携協定)交渉大筋合意の内容について(加工食品関係)
http://www.maff.go.jp/j/press/shokusan/seizo/140422.html
2.日豪EPA、5年後に見直し状況が存在(日本農業新聞 2014.4.25)
http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=27352
(日本農業新聞 一部抜粋)
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7日に大筋合意した日豪経済連携協定(EPA)に、日本が米国など他国に農産物関税で有利な条件を与えた場合、日豪間で合意内容を見直す条項が含まれていることが分かった。日本農業新聞の取材に両国の政府関係者が24日、存在を認めた。米国とのTPP交渉で日本が大幅譲歩すれば、オーストラリアが米国並みまで関税引き下げを求めてくるのは確実だ。
両国の政府関係者によると「日豪EPAの物品では最恵国待遇を含まないが、一部の農産物の市場開放については、発効の一定期間が経過、または日本が他国により良好な(関税削減などの)条件を与えた場合、見直すことを認める」との内容が項目として含まれる。この項目の存在はこれまで公表されていなかった。
「一部の農産物」が何を指すのかなど詳細については、両国政府とも説明を拒んだ。最後まで関税率の削減幅をめぐって調整した牛肉が含まれるとすれば、TPP交渉などの結果次第で影響が懸念される。「発効後の一定期間」は5年間で合意したもようだ。
日米協議は、24日の日米首脳会談を受けて閣僚間の大詰めの調整が続いた。日本政府はこれまで、日豪EPAの合意を関税削減などで譲歩できる「上限」として日米協議に臨むとしていた。しかし、オーストラリアに対する合意には見直し条項が含まれ、事実上、天井がないことが分かった。
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日本がTPP交渉で米国に、日豪EPA以上の譲歩をすれば、それは日豪EPAにも反映させるべく、協定見直しが約束されている。それだけではない。何もなくても5年後には、再び日豪EPAの中身が見直され、更に日本側から豪州へ、自国農業踏み潰しのための譲歩策が検討されることになっていた。それが今回発覚したということである。
しかし、「「一部の農産物」が何を指すのかなど詳細については、両国政府とも説明を拒んだ」であり、またしても、秘密、秘密、秘密である。日本の生産者・農家を裏切り、切り捨て、交渉相手からはほとんど何も得ることがないままに、ご機嫌をうかがうための大盤振る舞いをして、大事な大事な関税をどぶに捨ててしまう。これが、安倍晋三・市場原理主義アホダラ教自民党政権の「外交交渉力」の正体である。
3.TPP報道、官僚が名指し批判(東京 2014.4.23)
●(代替記事)
http://www.jiji.com/jc/zc?k=201404/2014042100673
(一部抜粋)
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環太平洋連携協定(TPP)交渉に関する報道をめぐって、TPP政府対策本部の渋谷和久内閣審議官は21日緊急の記者会見を開き、新聞、通信、テレビ各社に報道を見直すよう異例の要請を行った。
内閣審議官は農産物重要5項目の関税や自動車の貿易問題に関する日米の協議実態が「少なくとも日本の報道と違う」と指摘。こうした報道によって、米国が不信感を抱き協議に支障をきたしているとの認識を示した。
内閣審議官は報道機関3社を名指しした上で、「積み重ねたガラス細工が報道で壊れた」と批判。「日米が牛肉関税9%以上で折り合った」などとの報道を念頭に、「日米とも何一つ合意していない」と強調した。(2014/04/21-18:05)
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東京新聞「こちら徳報部」の荒井六貴氏曰く「では聞きたい、情報をひた隠しにする政府の責任はどうなのか」
田中一郎曰く「では聞きたい、情報をひた隠しにする政府の責任を徹底追及しない国会の責任はどうなのか。そして、その政府の責任追及を忘れて、市場原理主義歓迎のようなデマ情報を流し続けるマスコミの責任はどうなのか」
今回「誤報」呼ばわりされたのは、共同通信、読売新聞、TBSの3社だという。たとえば下記のような報道か?
●牛肉関税「9%以上」…TPPで日米歩み寄り 経済 読売新聞(YOMIURI ONLINE)
http://www.yomiuri.co.jp/economy/20140419-OYT1T50182.html
4.食料自給率、目標下げ 農相諮問機関、現行50%は「過大」:日本経済新聞
http://www.nikkei.com/article/DGXNASDF22019_S4A420C1EE8000/
(一部抜粋)
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農相の諮問機関である食料・農業・農村政策審議会は22日、カロリーベースで50%を目指す現在の食料自給率の目標が「過大な設定」との認識で一致した。これを受けて政府は、2015年3月の決定を目指す新たな計画で目標を引き下げる見通しとなった。
今後はコメや小麦などの品目ごとに、現実に見合った需要量や生産量を算出した上で、詳細な目標値を詰める。食料自給率は12年度まで3年連続で39%と横ばいで、新たな目標は40%台前半にまで下がる可能性もある。
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1億2千万人を抱える国が、その食料の半分も自給できない現状を知ってか知らずしてか、「食料自給率目標を50%にするのは過大な設定である」とする認識が、そもそも狂ってるんじゃないのか? どうせTPPや日豪EPAを締結したら日本の農林水産業が決定的なダメージを受けるから、その時、そのダメージを財政支援でカバーしろなどと国会で責められないように、食料自給率の目標をいじくって、かわせるようにしておこうという姑息な魂胆なのだろう。自国の農業を叩き続けることが「改革」であると錯誤した大バカ者たちが、あっちでもこっちでも、ロクでもないことをやりたい放題している、そんな世の中だ。安倍晋三・自民党政権の本領発揮というところか。
早々
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