食べものの放射能汚染:子どもたちまで「出し」にして放射能汚染物を商売に使う日本の食品産業の「罰あたり」
前略,田中一郎です。
(別添PDFファイルは添付できませんでした)
別添PDFファイルは、昨今の飲食にかかる放射能汚染関連の記事を若干集めたものです。放射能汚染の検査体制を依然として拡充することなく、従って、飲食物の放射能汚染をロクすっぽ検査することなく、空虚な安全安心キャンペーンを振り回して、実は放射能汚染物を商売に使おうとする日本の食品産業の歪んだ姿勢が赤裸々に見えています。当然、こうした日本の食品産業の態度は、海外からは疑惑と不信の目で見られており、食の安全に対してきちんとした態度を示す国々では、日本産の飲食物への輸入チェックが厳しいままに据え置かれています。
昔、食べ物を粗末にするものには罰があたる、と教えられました。それは今でも大事な「教え」ですが、これに重ねて、放射能汚染に対していい加減な姿勢で臨む食品産業に対しては「食べ物の検査を粗末にするものには罰があたる」とでも申し上げておきましょう。飲食の放射能汚染を甘く見るな、これは何度繰り返して申し上げても尽きせぬものがあります。
<別添PDFファイル>
(1)福島の沿岸試験操業、スケソウダラを追加(水産経済新聞 2014.2.27)
(2)EUの日本食品輸入規制、福島除き一部緩和(東京 2014.2.22)
(3)韓国が日本産養魚用飼料に放射能検査証明を義務化(2014.1,28)
(4)原木原木干しシイタケ、給食利用の拡大推進(日本農業 2014.1.16)
1.福島の沿岸試験操業、スケソウダラを追加(水産経済新聞 2014.2.27)
この記事は、底引き網漁の対象魚種にスケソウダラを、刺し網漁の対象にイシカワシラウオを、それぞれ追加したという報道である。更に、3月からはコウナゴ漁も開始するという。東京電力によるずさん極まりない管理が原因で、放射性ストロンチウムを含むベータ核種を大量に含む放射能汚染水が海に流れ出ているというのに、この福島県の漁業団体は、そんなことには構っていられない、という様子である。
流れ出ている汚染水は、溶融した核燃料を洗った水そのものであって、その汚染は猛烈だ。放射性セシウムだけをわずかばかりの検体で調べて、それで安全が確保できましたなんて、何言っているの、ということである。ありとあらゆる放射性核種が混ざり合った猛烈な放射能汚染水が、日々、福島第1原発から海へと垂れ流されているということを絶対に忘れてはいけないのだ。そんな福島第1原発の近隣海域での漁業など、絶対にしてはいけないことであることは、自明中の自明である。
スケソウダラについては、かつて100ベクレル/kgを超える汚染値(放射性セシウム)が出たこともあるが、その後は昨年6月を最後(8.1ベクレル)に検出限界値未満が続いているという。しかしだ。こんな数値は、福島県沖合で獲れるスケソウダラの安全性を担保するものではない。スケソウダラは、一方で「タラコ」(卵巣)をとるとともに、身の部分をすり身にしてカマボコなどの原料とされる。また、韓国ではなべ物に入れて食べるため、そのまま韓国に輸出もされている海産物である(主に北海道産が輸出される)。それを考えた場合、少なくとも次のようなことは手当てされていなければならないはずであるが、今のところ、そうした対応は、なしのつぶてである。
(1)スケソウダラを、タラコ、身の部分、骨の3つに区分し、それぞれについて、放射性セシウムのみならず、放射性ストロンチウムやプルトニウム、ウラン、その他のアルファ核種、ベータ核種、ガンマ核種が、綿密に継続的に検査されていなければならない。特に、福島沖で漁獲されたスケソウダラの骨への放射性ストロンチウムの蓄積状況の把握は絶対に必要不可欠の検査である。
(2)タラコは魚の卵巣なので、特別な放射性核種が蓄積しないとも限らない。放射能汚染の影響を見極めるまでは、福島県沖をはじめ、広く東日本の太平洋沿岸・沖合で獲れるスケソウダラのタラコは、飲食すべきではない。
(3)韓国は日本産の魚介類の輸入について、厳しいスタンスを取っている。見習うべきである。
(4)漁業者がこうした苦し紛れの、しかし危険極まりない操業を余儀なくされるのは、ひとえに被害を受け続ける漁業者、及び関係食品産業業者に対して、万全の賠償・補償や、経営再建支援が行なわれないが為である。これは、本来なら加害者・東京電力や事故責任者・国が償うべき賠償・補償の費用を、消費者が健康被害と汚染物購入費用を持って負担するということを意味している。許されないことである。食べて応援・買って支援など、全くする必要はない。それは単に、加害者・東京電力や事故責任者・国の責任を棚上げにして、彼らを間接的に応援・支援することに他ならない「お目出度い」行為であると自覚したほうがいい。
それから、シラウオやコウナゴの方も、とてもじゃないけれど、安全とはいえない。小魚なので骨ごと食べてしまうため非常に危険である(放射性ストロンチウム汚染)。また、こうした小魚は、養殖魚用の飼料原料としても使われる可能性があり、汚染魚が養殖魚用飼料となれば、これは全国に汚染が広がってしまうと同時に、魚介類から魚介類へと食物連鎖によって放射性物質が濃縮されながら蓄積していくため、その二次被害の程度は一次被害よりも大きくなってしまう危険性がある。こんな試験操業は、直ちにやめるべきだ。まず、東京電力の出鱈目な汚染水管理を適正化し、福島第1原発から海への汚染水流出を止めることが先決である。
みなさま、福島県のみならず、北は青森から南は千葉県くらいまでの海域で獲れる、海藻(昆布、わかめ、海苔など:既に放射性ストロンチウムが検出され始めたという話も聞こえてくる)を含む海産物を買って食べるのをやめましょう。そして、被害を受け続けている漁業者や関係事業者に対して、万全の賠償や補償と経営再建のための支援が政策的に実施されるよう、加害者・東京電力や事故責任者・国に要求していきましょう。加害者・責任者が、事故後の様々な費用を、まず負担するのは当たり前のことです。我々消費者・国民が真っ先に負担する必要はありません。
2.EUの日本食品輸入規制、福島除き一部緩和(東京 2014.2.22)
http://after311.info/radioactivity/post-3319/
最低限、EUの輸入規制並みの国内流通制限があってしかるべきである。日本政府は、消費者・国民の飲食による内部被曝のことなど、どうでもいい、と思っているようだ。
3.韓国が日本産養魚用飼料に放射能検査証明を義務化(2014.1,28)
市中に流通していた日本産のウナギ用の飼料から放射性セシウムが検出されたため、韓国政府が、飲食用の日本産海産物に加えて、今度は養殖用飼料の輸入規制に踏み切ったという記事である。検出された放射性セシウムは、0.1~2.3ベクレル/kgで、日本の養魚用飼料の基準値40ベクレル/kgを大きく下回るという。
しかし、韓国の報道では、専門家のコメントを引用して、食物連鎖の観点からみると、飼料に含まれる放射性セシウムは人体蓄積の可能性が高いため、非常に危険であると指摘したそうだ。韓国は養殖用の飼料を日本に大きく依存しているため、今回の措置に至った様子。具体的には、日本産飼料の輸入時には放射能検査証明書の提出を義務化し、国内生産飼料に対するモニターも実施して、放射能安全管理措置をより強化するという。
この韓国政府の措置は、魚介類の食物連鎖による濃縮・蓄積のことを考えれば当然のことだし、また、日本政府が決めている養魚用飼料の基準=40ベクレル/kgに科学的実証的な根拠はない。おそらく「安全バッファ」さえ設けていない、危険極まりなく「大きな数値」であるに違いない。しかも、この農林水産省が決めている飼料の基準値については、仮にふとどきものの業者がいて、この基準を守らなくても、単なる目安として出している数値なので、なんの罰則もペナルティもないという、いい加減なものである。
韓国は自国民を放射能の汚染や被ばくから守ろうという姿勢がみられるが、日本の政府は自国民を守ろうなどとは全く念頭にない様子である。
4.原木原木干しシイタケ、給食利用の拡大推進(日本農業 2014.1.16)
●もうこの国はどうしようもない。干しシイタケを20億円かけて給食で子供に食べさせる狂気の国、日本。 - ブログ「風の谷」
http://blog.goo.ne.jp/flyhigh_2012/e/440f296b3b49e290a92043e1cfdec8f4
●原木干しシイタケ 給食利用の拡大推進 とある原発の溶融貫通(メルトスルー)
http://blog.livedoor.jp/home_make-toaru/archives/7506251.html
何度も何度も何度も、申し上げているように、国産のキノコ類は、シイタケに限らず、すべて、全国どこでも危険である。何故なら、シイタケを含むキノコ類を栽培する原木や栽培土が、林野庁の無責任でずさんな放射能汚染管理のおかげで、汚染されたまま全国に出回っており、もはや安全な地域というのは消滅したからだ。今は、わずかばかりの「見世物キノコ」の放射性セシウムだけを検査して、安全だ、安全だ、とハッタリ宣伝を行っているにすぎない。
反原連の反原発コールに♪♪「日本のどこにも原発いらない」♪♪というのがあるが、それにもじって申し上げれば「日本のどこでもキノコは危ない」「日本のどこでもキノコはやめとけ」ということになる。
キノコはちゃんと検査すれば済む話、原木や栽培土は放射能に汚染されておれば流通しないように廃棄させれば済む話、それぞれ、損害を受けた方々には、そのすべての損害を、機会費用も含めてきちんと支払えば済む話、こうした、あたりまえのことを、政府も農林水産省も林野庁も、そして東京電力も、これまで事故後3年間の間、一切してこなかった。
そして、あろうことか、不信感を高めている消費者に対して、安全だを強くアピールするために、今度は学校給食を使って子どもたちに無理やり、放射能汚染の可能性のあるシイタケやキノコ類を食べさせてしまえ、などということをやり始めたのがこの記事である。この記事には、その担い手として「日本産・原木乾シイタケをすすめる会」などという団体が音頭を取っているという。農林水産省は、これに予算まで付けている。
記事を読んでいて、怒りが込み上げてきた。この阿呆ども、何がシイタケをすすめる会だ。給食を拒否できない子どもたちを「出し」に使って、自分たちの商売に放射能汚染物を使う、消費者・国民をだまくらかして、汚染物を知らぬが仏で売り飛ばす、そんなことをしていて、いつまでやっていけると思っているのか。
みなさま、キノコは絶対に買ったり食べたりしてはいけません。日本全国どこでも危険です、みなさまが買わないことが、このキノコ業界と林野庁がまともになる最短の近道です。学校給食については、キノコを材料に使うなら、学校給食をやめさせて弁当にするなど、対抗措置を取りましょう。
なお、下記の林野庁が定める(キノコ用)ほだ木や栽培土の基準値についても、その科学的実証的根拠はあいまいで、かつ、基準を守らなくてもなんの罰則もペナルティもなく、実際、こうした基準値が現場で守られているのかどうかさえ明らかでないし、守らせる体制についてもいい加減なままである。
●林野庁-きのこ原木及び菌床用培地の当面の指標値の改正について
http://www.rinya.maff.go.jp/j/press/tokuyou/120328_2.html
●林野庁-きのこ原木・ほだ木の当面の指標値に関する見直しについて
http://www.rinya.maff.go.jp/j/press/tokuyou/120830.html
●林野庁-きのこ原木及び菌床用培地並びに調理加熱用の薪及び木炭の当面の指標値の設定について(関連通知一覧)
http://www.rinya.maff.go.jp/j/tokuyou/shihyouti-index.html
(ここにある通知類や基準等については、対象となる食品業者らが守らなくても、何の罰則もペナルティもなく、その実効性に疑問がある。これは単に農林水産省のいい加減さを示すだけでなく、何か悪い事態が起きた場合に「自分たちは一定程度やっていた」というアリバイ行為を示す目的と、「自分たちが悪いのではなく、基準を守らなかった業者らが悪いのだから、文句は業者の方に言ってくれ」という「たらいまわし的無責任」を担保するためのものとみておいた方がいいだろう)
早々