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2014年1月 1日 (水)

内部被曝のメカニズム(1):生物学的半減期 (長山淳哉著 『胎児と乳児の内部被ばく: 国際放射線防護委員会のカラクリ』より)

前略,田中一郎です。

(別添PDFファイルは添付できませんでした。代替として、一部、説明表を添付します)「nagayama_betuhyou.pdf」をダウンロード


 今回から数回に分けて、長山淳哉元九州大学大学院医学研究院准教授の新著『胎児と乳児の内部被ばく:国際放射線防護委員会のカラクリ』(緑風出版)をご紹介したいと思います。長山淳哉氏の著書につきましては、前著『放射線規制値のウソ:真実へのアプローチと身を守る法』から、私が一昨年に拙文「(増補版)シーベルトへの疑問」を書くにあたり、多くのことを参考にさせていただきました。今回の新著は、それに続く、内部被曝理解のための必読の著書です。みなさまには、このメールをご覧いただきましたことを契機に、ご一読をお勧めいたします。

 

●胎児と乳児の内部被ばく 国際放射線防護委員会のカラクリ-長山淳哉/著 本・コミック : オンライン書店e-hon

http://www.e-hon.ne.jp/bec/SA/Detail?refShinCode=0100000000000032937538&Action_id=121&Sza_id=C0

 

●放射線規制値のウソ 真実へのアプローチと身を守る法-長山淳哉/著 本・コミック : オンライン書店e-hon

http://www.e-hon.ne.jp/bec/SA/Detail?refShinCode=0100000000000032659868&Action_id=121&Sza_id=C0

 

●(増補版)シーベルトへの疑問 いちろうちゃんのブログ

http://tyobotyobosiminn.cocolog-nifty.com/blog/2013/04/post-d2f2.html

 

 

 今回は、長山淳哉氏の著書のP56~P74に記載されている「生物学的半減期」に関することを簡単にご紹介いたします。まず、最初に、P56に記載されている同署の下記記述にご注目いただきたいと思います。

 

(以下は、一部引用です)

・・・・・・・・・・・・・・・・・

 「遺伝子不安定性やバイスタンダー効果は、放射線によってDNAが直接に損傷されなくても、遺伝的変化や障害が生ずる、ということを示しています。このことは二十世紀までの放射線影響学の分野において、長い間、揺らぐことのないセントラルドグマであったDNA標的説では説明できない現象です。このような視点から、これまでの放射線による人間への影響とリスク評価は根本的にまちがっている、といえます。そして、そのことがまったく考慮されていない現行の放射線規制値とか食品からの摂取基準などというものもすべて、改正されねばなりません」

・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 これは常々、私から申し上げていた放射線内部被曝による細胞生理や生命秩序の破壊=エピジェネティクス・メカニズムの破壊のことです。原子力ムラ・放射線ムラの似非科学が、内部被曝の実態解明のための科学的究明や実証研究を怠り、あるいは政治的に妨害し、まるで素人だましの「低線量内部被ばく安全論」や「DNA(だけ)損傷論」を繰り返しているうちに、分子生物学や細胞生理学の発展から取り残されてしまったことを意味しています。まるで1960年頃の生物学を未だに振り回して、内部被曝はDNAを損傷するが、それが修復されたり再生されたりすれば、それ以外には、たいして危険性はないかのごとき嘘八百が、まことしやかに語られてきました。

 

 しかし、内部被曝の実態は、特に恒常的な低線量内部被曝の実態は、DNA=遺伝子のみならず、遺伝子を発現させたり、停止させたりしている細胞内の「複雑系」であるエピジェネティクス的機能を、放射線の猛烈なエネルギーでメチャクチャにしてしまうということであり、それはとりもなおさず、ただ単にDNA=遺伝子だけに注目していればいい、というものではないということなのです。原子力ムラ・放射線ムラのインチキ似非科学にだまされてはなりません。

 

 では以下に、著書に沿って、簡単にその内容をご紹介いたします。第1回の今回は、「第二章 実効線量計数のカラクリ」に書かれている「生物学的半減期」についてです。「実効線量計数」とは、内部被曝評価において、ベクレル値をシーベルト値に換算する換算係数のことです。

 

 

1.まずP59の「表Ⅱー1:放射線に関連する用語の単位とその意味」は、一種の復習のようなもので、前著で説明されていた「シーベルト体系」という放射線被曝の体系の概念説明になっています。再度、別添PDFファイルで、その内容をご確認ください。

 

 長山淳哉氏には失礼ですが、私は同氏の組織荷重係数の説明が舌足らずになっているように思います。「組織や臓器の放射線への感受性を相対的に表わした係数で、合計が1.00」と説明されているのですが、何故、合計が1.00なのかが説明されていません。結論だけを申し上げれば、この組織荷重係数は、内部被曝も外部被爆と同様に考えて、被ばくを全身で受ける、というような認識をしながら評価しているためだと思われます。だから、体の全臓器・部位の被ばく線量を足し合わせると、組織荷重係数を掛ける前と同じ数字になる、という、そういう概念設計になっているのです。まさに原爆で全身被曝をした場合の被曝評価の概念体系です。

 

 しかし、それは内部被曝の実態とはまるで違います。局所的・集中的・継続的に被ばくする内部被曝を評価するのに、全部足したら1.00などという組織荷重係数は使うことはできません。これでは、被ばくを全身に「散らす」「分散させる」ことになってしまいます。

 

 それから、この節での重要な記述を、以下に引用しておきます。生物学的半減期に関する長山淳哉氏の結論がズバリと書かれています。

 

(以下は、一部引用です)

・・・・・・・・・・・・・・・・・

「実効線量係数はひとえに、生物的半減期により決まるといっても、過言ではありません。それほどに、生物的半減期は重要なのです。そこで、第二章では生物的半減期の個人差、つまり、個人個人でのバラツキに焦点をあてます」

 

「個人差、バラツキがどうして問題かといいますと、すでにお話ししたように、実効線量係数が、これらのバラツキの平均値で決められているからです。人間一人ひとりのリスクは、平均値では決められません。とても放射線に強い人もいれば、とても弱い人もいます。私たちは、とても弱い人、影響をうけやすい人を基準にして、リスクを考えなくてはいけません。平均値で考えてはいけないのです」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

2.次にP73、いきなり結論で恐縮ですが、長山淳哉氏の説明が続いた後、同氏は、「表Ⅱー5:ICRPのデータから求めたオーバーオール生物的半減期」と「表Ⅱー6:実測のオーバーオール生物的半減期」を比較しながら、国際放射線防護委員会(ICRP)が如何に乱暴な生物学的半減期の数値を出しているかを説明しています。(別添PDFファイル)

 

(以下は、一部引用です)

・・・・・・・・・・・・・・・・・

「まず、生後一年未満の赤ちゃんの場合、表Ⅱー5では一六日となっています。しかし、実際には表Ⅱー6に示されているように、11名という極めて少人数のデータでも、10日から33日で、16日よりも短かったり、二倍以上長かったりしています」

 

「五歳から一七歳については、表Ⅱー5では、では、二一日から八一日ですから、表Ⅱー6の二九日から八八日とほぼ同じ変動幅です。しかし、実測値のほうが、長いほうにズレています」

 

「大人については、ICRPでは九九日となります。しかし、九一名の実測値では、それよりもかなり短い四二日から、とても長い161日まで、広い範囲に分布しています」

 

「以上のように、10名から100名弱という少数の人々についてえられた実際の生物的半減期でも、ICRPが採用している生物的半減期とは、大きなちがいがあるのです。ましてや、何万人、何十万人になれば、はるかに大きな個人差があるはずです。すなわち、それだけ、放射性物質の影響のうけ方にちがいがあるということです」

・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 私は、「生物学的半減期」なるものには、実証的・科学的根拠がほとんどないのではないか、と思っております(ひょっとすると、正規分布さえしていないかもしれません)。原子力ムラ・放射線ムラの連中が、チェルノブイリ原発事故後の多くの疫学的調査に対して、「調査数が少ない」などのナングセをつけて、放射線被曝による健康被害の深刻さを頭から否定しておりますが、私はそれをそのまま、この連中の「生物学的半減期」や、それを根拠に算定された「実効線量計数」に対して、投げつけてやりたいと思っております。

 

 原子力ムラ・放射線ムラの御用学者達の言う「生物学的半減期」や「実効線量計数」には、科学的・実証的根拠などありはしない。ちがう、あるのだ、というのなら、その科学的・実証的証拠を見せて見ろ、これが私が申し上げたいことです。

 

今回は以上です。

早々

 

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