消費者庁 食品表示Gメン等の消費者庁への併任発令について (これで食品表示偽装はなくなるのか)
前略,田中一郎です。
今般,消費者庁は,ホテルや百貨店などの食材偽装表示の常態化を受けて,その改善を図るため,下記サイトの記事にあるように,農林水産省の食品表示Gメンを当分の間モニターとして活用していくことにしました。別添PDFファイルは,そのための「併任発令」を公にした消費者庁の文書です。
<別添PDFファイル>
●消費者庁 食品表示Gメン等の消費者庁への併任発令について (2014年1月24日)
「2014124.pdf」をダウンロード
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「1.趣旨
農林水産省の食品表示Gメン、米穀流通監視官等に対し、一定期間、消費者庁の職員として一時的に併任発令することにより、景品表示法に基づくレストラン、百貨店等への監視業務を実施する。」
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●消費者庁 虚偽表示対策に農水省Gメン活用!
http://www.costdown.co.jp/blog/2014/01/post_2979.html
●「食品Gメン」らがメニュー監視 百貨店などの表示違反を調査 - 芸能社会ーSANSPO.COM(サンスポ)
http://www.sanspo.com/geino/news/20140124/sot14012413550003-n1.html
この消費者庁と農林水産省の協力による食品表示の適正化対策ですが,一見,もっともらしく,よさそうに見えます。しかし実際は,その見かけに反して,この対策は食品表示の適正化にあまり大きな効果は持たないだろうと推測しています。それはなぜか。
(1)食品表示Gメンの活動の根拠となっている法律は,農林水産省が所管しているJAS法です。従って,レストランなどで提供されている外食は法律の対象外です。その対象外の食品の表示を,この農林水産省の役人であるGメンに監視させるというのですから,根拠法がありません。一般的に役人がある行動をとる場合には,その基礎に根拠法があるものですが,今回の場合,それがあやふやです(あえて言えば,国家行政組織上の業務命令程度の話です)。
(2)もともと,JAS法に基づく食品表示Gメンの表示監視自体が「根拠あやふや」でした。Gメンの農林水産省官僚達には,食品表示を監視する上で必要となる,一般調査権限や立ち入り調査権限,あるいは資料提出命令や業務改善命令を出す権限,仮に悪質な業者が指示に従わなかった場合の行政処分権限や名前を公表する権限,あるいは厳しいペナルティを課す権限など,およそ食品表示を監視する上で必要となる様々な法的な権限が,一切と言っていいくらい現場に与えられていないのです。これで適切な表示モニターができるなどというのは,まさに奇跡に近いことです。
(3)実際,だいぶ前のことですが,農林水産省食品表示Gメンが,どのように食品の偽装表示を見抜くために動いているのかをTVのドキュメンタリーニュースでやっているのを見たことがありますが,まさに「スパイ大作戦」のようなことを,現場の職員が身を粉にしてやっているのです。気の毒という他ありません。そして,仮に偽装や不正を見つけたとしても,悪質業者に居直られて,質問にも答えてもらえず,口頭で注意をしてすごすごと引き下がらざるを得ないような雰囲気のシーンが何度かあったように思います。表示偽装の調査は,いわゆる「お願いベース」で悪質業者に対して行われていて,法的な権限がほとんどない現場の役人Gメンがやっているのですから,こうなるのも当然のことでしょう。
(4)そして,私がけしからん,と思いますのは,当の農林水産省にしても,食品表示を司る消費者庁にしても,厚生労働省にしても,現場にはいない幹部クラスの役人達は,そうなるのを重々承知の上でやっている・やらせている様子がうかがえることです。つまり,一方で,役所はしっかり食品表示を監視していますよ,監視する体制をとっていますよ,というポーズを消費者・国民に対してとりながら,他方では,本音で,こんなものは大した効果などありはしない,業者の方がずっと上手で,偽装表示の大半はすりぬけてしまうだろう,それなら,業界からこのGメンの表示監視についての苦情も,おそらくはたいして来ることはないから,一石二鳥である,くらいの考えでいるのではないかということです。要するに,アリバイ政策・対策だ,ということです。そして,この政策の被害者は,我々消費者・国民であるとともに,農林水産省の現場役人であるGメン達でもあるのです。
(5)その一つの証拠に,これだけ悪質な食品表示偽装が何年も前から発覚して,数年おきにマスコミや週刊誌を騒がせているというのに,それを一掃するための厳しい罰則付きの法律はいつまでたっても制定される気配はありません。それどころか,「即罰化問題」というものがまだ解決しない=つまり,偽装という悪事を発見したらただちに行政処分で罰するということさえ,いまだに実施される様子はありません(口頭指導,文書による改善指導と業者名公表,行政処分の三段階)。
食品表示偽装を行政が抑え込むには,何度も申し上げていますが,そうした悪事を働いた業者に厳しい罰金刑を課し,食品表示偽装をすることが経済的に無意味であること=万が一発覚したら倒産の危機に陥ることを思い知ってもらえば,かなりの表示偽装はなくなるでしょう(根絶は難しいですが)。しかし,農林水産省も厚生労働省も消費者庁も,食品産業界との腐れ縁・癒着を払拭できず,かつその食品産業界ともっともっと癒着しているゴロツキ政治家達に頭を押さえられて,きちんとした商品表示偽装の防止対策をとろうとはしないので。まさに「南町奉行所」状態です。
(6)表示に関するルールの周知徹底も不十分なままですし,やたらに詳細で重箱の隅を突っつくようなくだらない決まりも解消されていません。食品業者の表示担当者が迷った時の相談窓口もいい加減です。食品表示行政の実態は「業界団体に丸投げ状態」で,霞が関の役人達は,巷で何が起きていようと涼しい顔をしているのです。これで表示偽装がなくなったら,それは奇跡というものでしょう。無責任行政の典型です。
(7)申し上げるまでもなく,外食を含む流通する食品に日常的に最もよく接しているのは,一般の消費者・国民です。その消費者・国民の協力を得て,食品表示のモニター制度を,もっと幅広く,もっと適正に運営する必要があります。しかし,私がかつてこのモニター制度の窓口のようなところに電話をした経験で申し上げれば,不正や不適正表示を発見したとの連絡を受ける農林水産省の役人が「それは県の方に言ってくれ,担当は県だ」などと,「たらい回し」や「県と農政局との(美しく見苦しい)譲り合いの精神」を発揮しているのが実態です。思い起こせば,2008年に大騒ぎとなった「北海道ミートホープ事件」でも,北海道の農政局と道庁が,寄せられた表示偽装の内部告発について,「担当はあんたの方だ」などと言いあって,責任のなすり合いを演じていたことが発覚しています。要するに,偽装を発見しても,役所はまともにとりあげようとはしない,ということを意味しています。
(8)悪質な食品表示偽装の大半は「内部告発」によって発覚しています。つまり,表示偽装を防ぐ最大の武器は「公益通報者保護制度」をしっかりした制度にし,かつその主旨を文字通り100%活かした運営がなされることです。しかし,通報を受けた保健所や役所の人間が,その情報を,内部告発している人の名前も含めて,その悪質業者に「たれこむ」(知らせる)という信じがたい背任行為が行われている様子がうかがえます。内部告発者の名前を告発された業者に(こっそりと)通知することは犯罪行為であり,やった人間は厳しい処分がなされてしかるべきですが,うやむやにされて,内部告発者だけが解雇を含む被害を被るという事態が起きています(そもそも日本の法律に,こうした背信行為を厳しく罰する規定がない)。こうしたことも抜本改善がなされないと,食品表示偽装はなくならないでしょう。([公益通報者保護制度」の主旨から外れた「たれこみ」をした役人を懲戒免職・刑事告発せよ)
(9)現在,先般制定された新法「食品表示法」(JAS法+食品衛生法+健康増進法)の内容を定める作業が進められています。この法律自体がいい加減で出来そこないですが,しかし,それに加えて,いわゆる「法の執行」(法律に書かれていることを守らせること)についても,上記のようにいい加減で出鱈目なのです。既に賞味期限の切れた食品安全委員会,消費者庁,消費者委員会など,クソの役にも立たない行政組織が乱立して,(御用学者や一部の似非消費者団体,あるいはお気楽市民運動・社会運動などを巻き込んで),肝心なことは棚上げにしたまま,どうでもいいようなことを多くの時間と費用を費やして小田原評定を続けているのが現実です。
(食品の偽装表示すら抑え込めない)このおぞましい日本の食品行政・消費者行政に終止符を打つためには,消費者主権を明確に意識した正真正銘の消費者団体を消費者・国民自身が確立するとともに,自民党や民主党をはじめとするゴロツキ・ゴキブリ政治家達を国会や地方政治の場から追い払う・一掃することです。そして,消費者行政を文字通り消費者・国民のために遂行できる体制や法体系を構築していかなくてはいけません(例えば,上記で申し上げた食品表示偽装を防ぐ実効性のある新法が必要となります)。役人をバッシングするだけでは事態は改善しないのです。
●食品表示法の概要
http://www.google.co.jp/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&frm=1&source=web&cd=2&ved=0CC8QFjAB&url=http%3A%2F%2Fwww.caa.go.jp%2Ffoods%2Fpdf%2F130621_gaiyo.pdf&ei=7qLpUrX-BcXXkAWh14DwCQ&usg=AFQjCNGISGDgRJCQNqxMjF-WMJ6nknlWog&bvm=bv.60444564,bs.1,d.dGI
早々