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2013年12月11日 (水)

日本の「食」が破壊されていく(何故,日本の行政は食の安全を守ろうとしないのか)

前略,田中一郎です。

(別添PDFファイルは添付できませんでした)

 

 別添PDFファイルは,直近の食の安全に関係したマスコミ報道その他を若干集めたものです。昨今,ホテル,百貨店,有名レストランなどでのメニュー偽装・原材料の虚偽表示が巷を騒がせておりますが,そうした食品表示の出鱈目と並行して,我々消費者・国民が日常的に食べる物の安全性が脅かされる事態が次々と起きるようになってきました。

 

 諸悪の根源は,儲かれば何でもいい・後は野となれ山となれ,という姿勢が顕著になってしまった現在の食品産業各社にあるわけですが,他方では,本来,我々消費者・国民になり代わって,日々の飲食の安全性を厳しく監視・管理して,その安全性を高いレベルで担保しなければならないはずの日本の行政が,国も自治体も,審議会も委員会も,まるで「手抜き」や「責任回避」のようなことを平気で繰り返して,あたり一面を「危険物の海」にしてしまっていることが大問題です。

 

 この嘆かわしくも危険な状態の淵源は,1980年代の中曽根内閣時代の市場原理主義的偏向政策の導入に遡れますが,とりわけ1995年の超円高以降,日本経済を覆い始めた「低価格指向」=食いものの費用をケチるだけケチる,という,企業と消費者双方の「どん底へのスパイラル」的な供給・購買の絡み合いが,食の安全性の破壊に大きく影響しているように思えます。

 

 市場原理主義にイカれた頭で,できるだけ安い(得体の知れない)食物を選び,安かろう・悪かろう・危なかろうの食生活をおくる,そういう嘆かわしくも悲しい日本の「食文化」が形成され始めているように思われます。そして,行政の不作為と責任逃れが,その社会傾向に拍車をかけているのです。(今回は「飲食の放射能汚染」の問題以外のものを抽出しています)

 

 およそ食べものを粗末にしたり、主食をないがしろにするような国や国民が繁栄するなどということはないのではないでしょうか。日本は1990年のバブル景気をピークにして、その後は「失われた10年」「転落のもう10年」などと言われておりますが、今日では、悲しくも嘆かわしくも、その喪失・転落の速度を速めているような気がしてなりません。そしてそれは、日本において、上記で申し上げたような「食」の安全をないがしろにしたり軽視したりするような風潮や、市場原理主義に洗脳されて、日本の伝統産業であり、また主食であるコメを海外に「売り渡してしまう」ような愚かな政策の蔓延と歩調を合わせているように思えます。

 

 「食」を取り戻すこと、具体的には、何を「食」とし、どのような「質」と「量」の「食」を自給し、そして、どのような「食」を安全とみなすのかという、この「食主権」をしっかりと意識して実現していくことが、上記のような「食」の破壊を防ぐ最も重要な対策であると思います。

 

 以下,ごく簡単にコメントを付して記事をご紹介いたします。

 

 <別添PDFファイル>

(1)拡大し続けるネオニコ系農薬汚染(『選択 2013.12』)

(2)いま”食品添加物”は?!(『生活と自治 2013.12』 生活クラブ生協連)

(3)亜塩素酸ナトリウム 使用基準改正,再検討(水産経済新聞 2013.12.4

(4)中国,解決しない粉ミルク問題(『日経ビジネス 2013.12.2』)

 

1.拡大し続けるネオニコ系農薬汚染(『選択 2013.12』)

 今までも何度かご紹介したことのある話です。欧米各国当局が,ミツバチのCCD(蜂群崩壊症候群)などから危険性を察知し,その使用を制限・禁止し始めたネオ・ニコチノイド系農薬ですが,日本では何と,農薬製造会社である住友化学などの大手化学メーカーの要請に「ヘイヘイ」と応じて,逆に,ネオ・ニコチノイド系農薬の使用規制・残留規制などを緩和しようとしております。信じがたい話です。

 

 ネオ・ニコチノイド系農薬は水に溶けるため,使われた農作物は他の農薬のように,その表面だけが危険であるのではなく,水を養分とともに根から吸い上げた農作物全体が「危険物」と化してしまいます。農作物の花の蜜や花粉を食料としているミツバチが,このネオ・ニコチノイド系農薬の犠牲となり,大量死・大量疾走となって,逆に野菜や果実の授粉をさせるミツバチが足りなくなるなど,既に深刻な事態になるまでに被害は広がっています(若干数の県でネオニコ農薬の使用抑制の動きあり)。

 

 しかし,ネオ・ニコチノイド系農薬の危険性はミツバチに対してだけではありません。全ての昆虫類に害悪が及び,それは食物連鎖を通じて「沈黙の春」を創り出して行きます。昨今では,田舎の国道・県道に設置されている街燈には,夜になっても虫たちがほとんど集まってこなくなったという話を聞きます。ネオ・ニコチノイド系農薬で,地域一帯の昆虫類が全滅している可能性があります。昆虫がいないのなら,それを餌にしている両生類,爬虫類,鳥類なども,やがていなくなるでしょうし,更に,それらを餌にしている哺乳類の動物群もいなくなるか,人里にエサを求めて侵入してくることになるのです(それを農林水産省は,鉄砲で迎え撃て,と指導しております)。

 

 更には,このネオ・ニコチノイド系農薬は,人間などの哺乳類の神経系に対しても毒性を持ち,たとえば子どもたちのADHD(注意欠陥・多動性障害)やLDなど,現代病と言われている様々な障害の大きな原因の一つであることも分かってきています。にもかかわらず,どうしてこのような危険な農薬が,いつまでたっても使用制限・禁止とならないのでしょう。

 

 農業団体や生産者・農家の一部にも問題があるように思われます。自分達の使う農薬の影響について,もっと真剣に考えるべきでしょう。そもそも,ミツバチがいなくなれば,野菜や果実など,大事な農作物の受粉がままならなくなり,自分達の農業が立ち行かなくなるわけですから,ある意味で天に唾するようなものだと言えると思います。まして,米粒選別機で除去できるカメムシ斑点米を極端に皆無にするために,せっせとネオ・ニコチノイド系農薬を使うなどということは,全く愚かなことだという他ありません。農薬を売るために,生産者・農家を騙してはいけないのです。

 

2.いま”食品添加物”は?!(『生活と自治 2013.12』 生活クラブ生協連)

 日本の食品衛生法では,食品添加物は原則禁止です。しかし,ここ10年の間,政府・厚生労働省がやってきたことは,この食品添加物の原則禁止の規定を「骨抜き」にすることでした。

 

簡単にいえば,(1)消費者の安全を後回しにして,食品を売る側=つまり食品産業の金儲けの便宜を徹底して優先したということ,(2)更には,国際市場原理主義に取りつかれ,規制撤廃をして自由に国際貿易をやり,全世界から得体の知れない食い物を集めることが豊かになることだと勘違いをして,日本の食の安全を守る規制やルールを次々に骨抜き・撤廃・ないがしろにしてきた,(3)毎年のように被害や被害者が出るたびに形だけの規制や安全管理の体制改革なるものを行い,数年もしないうちに,その賞味期限が切れて「元のもくあみ」となる,を繰り返してきた,ということです。

 

(ひょっとすると,厚生労働省も食品産業も,腹の中では我々消費者・国民のことを馬鹿にしているのかもしれません。何かあると過剰反応するが,そのうちすぐに忘れる,などとでも思っているのかもしれません)

 

 この生活クラブ生協連が生協組合員向けに発行している『生活と自治』に掲載された食品添加物についての解説は,非常に分かりやすく,適切な内容です。最後のところで鈴鹿医療科学大学客員教授で食品添加物の「プロ」の中村幹夫先生へのインタビュー記事も掲載されています。是非,ご覧ください。

 

3.亜塩素酸ナトリウム 使用基準改正,再検討(水産経済新聞 2013.12.4

 食品添加物の一つである亜塩素酸ナトリウムの使用基準改正が「再検討」とされ,改正は当面行わないことになったという記事です。薬事・食品衛生審議会(厚生労働省)にしてはめずらしい,少しはいいこともするんだ,と思って記事を読んでみましたら。とんでもない話でした。

 

 主旨は,この食品添加物の使用基準を緩めて,もっといろいろなものに,もっとたくさんの量を使わせろ,という業界の要請を受けて,この御用審議会が何とかそうなるように検討してきたけれど,使用基準緩和を求めた事業者が出した安全性データがあまりにひどいので,仕切り直しになった,という話です。同審議会は,事業者にデータの出し直しを求めるようです。

 

 しかし,記事によれば,この亜塩素酸ナトリウムによく似た名前の「亜塩素酸水」や,「酸性化亜塩素酸ナトリウム」の方は,既に使用基準が緩和されて,どちゃどちゃ使っていいことになっている様子。今回この亜塩素酸ナトリウムも規制緩和されれば、塩素系食品添加物「三点セット」がそろって万々歳ということになるはずだったということでしょうか。

 

 私は専門家ではないですので,上記の3つの食品添加物の化学毒性については詳細はよく分かりません。どなたかに代わって説明を願いたいところです。しかし,経験知として,およそ食品添加物の中でも「塩素」がくっついているものは,ロクでもないものが多い,という印象を持っております。ひょっとすると,この亜塩素酸ナトリウムもそのたぐいなのかもしれません。

 

 まあ,いずれにせよ,食品添加物だらけの加工食品など,いりまへん。NO THANK YOUです。しっかり表示をさせていただきたいですね。

 

4.中国,解決しない粉ミルク問題(『日経ビジネス 2013.12.2』)

 http://business.nikkeibp.co.jp/article/NBD/20131126/256342/?ST=pc

 

 メラミン入りの中国産乳製品,及びそれを原料に使った加工食品が,中国国内だけでなく,香港や台湾や東南アジアを経由して日本に輸入されていたことが分かって大騒ぎになったのは,確か2008年のことだったと思います。この記事は,その後,この大騒ぎの原因を作った中国国内の乳業メーカーと,食の安全に係る中国政府規制当局の動きをレポートしたものです。

 

 お読みになれば分かりますが,全くダメで,事態の改善はままならず,当の中国国内の消費者の信頼さえ得ることができないでいるということが分かります。そもそも規制当局の姿勢が,産業振興に傾きすぎていて,こんな調子だと,再び似たような食害事件を再発させてしまうのではないかと推測されます。

 

 しかし,このことは日本とは無縁であるどころか,2008年もそうであったように,いや輸入食品が当時よりもますます増大している今日においては,中国産乳製品と,それを原料に使った様々な加工食品は,依然として安全が担保できていないことに注意が必要です。特に,中国産乳製品そのものではなく,中国産乳製品を原料に使い,生産された国が中国以外の加工食品が,実に厄介だと言えるでしょう。日本国内の加工食品であっても,その原料に中国産乳製品を使っていれば同様です。

 

 原料原産地表示が絶対に必要だということは,こういうことからも明らかでしょう。消費者・国民は,表示がなければ,危険な中国産の乳製品を原料に使った加工食品を避けることができません。これは人権侵害に近いと言えます。

 

 また,忘れてならないのは,当時の(そして今の)厚生労働省の対応のいい加減さ・甘さです。何故,メラミン混入発覚後,ただちに中国産乳製品,及びそれを原料に使った加工食品の輸入をストップしなかったのでしょうか? また,既に輸入されてしまっていた同乳製品・加工食品の検査・点検を,各食品事業者に義務付けなかったのでしょうか?

 

 厚生労働省という食の安全を守るべき役所が,消費者・国民の方を向かずに,食品産業の顔色ばかりをうかがいながら仕事をしている国・日本,我々は,今もなお,知らず知らずのうちに,メラミン入りの加工食品を食べ続けているのかもしれません。私は,こういう事情を鑑み,一切の輸入加工食品を買わないことにしております。

 

●厚生労働省:中国における牛乳へのメラミン混入事案への対応について(第3報)

 http://www.mhlw.go.jp/houdou/2008/09/h0926-5.html

 

●丸大食品メラミン混入事件食品会社 偽装の歴史

 http://www.news88.net/giso/150/167/

 

●メラミン問題についてのQ&A(日本生協連安全政策推進室)

 http://jccu.coop/food-safety/qa/qa01_01.html

 

●中国における乳及び乳製品のメラミン混入事案関連情報

 http://www.nihs.go.jp/hse/food-info/chemical/link-melamine.html

早々

 

 

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