福島原発事故の原因は津波だとしながら,その津波対策について科学的実証的な裏付けがないまま「再稼働審査」という「芝居」を続ける原子力「寄生」委員会
前略,田中一郎です。
(別添PDFファイルは添付できませんでした)
別添PDFファイルは,2013年12月24日付毎日新聞夕刊2面に掲載された,原子力「寄生」委員会による原発再稼働審査に関する重大な疑問点を具体的に報じた優れた必読記事である。是非ご一読いただきたい。以下,簡単に記事内容をご紹介し私見を申し上げる。
毎日新聞のウィークデイの夕刊2面「特集ワイド」に掲載される記事には注目すべきものが多い。東京新聞の「こちら特報部」と併せて,日々の購読をお勧めしたい。なお,一時は注目された朝日新聞の特集記事「プロメテウスの罠」は,昨今は恒常的な放射線被曝環境の危険性を軽視・無視した,首をかしげたくなる記事が多くなってしまった。やはり朝日新聞は,朝日の新聞ではなく夕日の新聞だったのかもしれない。
(毎日新聞の記者のみなさま,あなた方が真摯に真実報道を追い求めるというのでしたら応援します。そして,毎日新聞の編集デスクや経営者のみなさま,現場の批判力たくましい優秀な記者達の邪魔をしないでください。あなた方の新聞社が,いわゆる「マスごみ」から脱し,批判的ジャーナリズムと権力の監視という新聞の本来の使命を発揮するよう全力を挙げるおっしゃるのなら,定期購読をしてもいいと思います。それは難しいことではありません。この間の毎日新聞の特定秘密保護法を巡る報道姿勢を,あらゆる問題について展開していただければいいだけの話です。覚悟ができていれば、できますよね)
(記事の一部引用)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
●特集ワイド:原発安全審査への疑問 防潮堤への津波影響実験 水圧、国基準の倍も(機器守る扉「研究まだ」/それでも進む“再稼働”)
http://mainichi.jp/shimen/news/m20131224dde012040002000c.html
原子力規制委員会が全国7原発、14基の安全審査を進めている。ポイントの一つが津波対策だ。7月にできた新規制基準は福島第1原発事故を教訓に、高い津波の想定と対策を要求している。だが実は、防潮堤の設計に必要な「ある高さの津波で、どれだけ力がかかるか」は津波の高さ以外の要素にも左右され、詳しく分かっていない。原発の建物内で浸水を防ぐ「水密扉(すいみつとびら)」の設計法にも実験で解明すべき疑問が残る。原子力規制庁は「現状でも安全審査はできる」というがそれでよいのか。【高木昭午】
独立行政法人「原子力安全基盤機構」(東京都港区)は10月、新潟工科大(新潟県柏崎市)や東京電力と協力し、原発の耐震安全に関する研究発表会を同大で開いた。その席で、機構の高松直丘(なおたか)・耐震安全部長らが発表した。
「津波が襲った際に、防潮堤にどれだけの力がかかるか模型実験で研究中だ。(規制委の安全)審査に有効なデータを取りたい」「水密扉が地震で弱った時に、水が来たらどうなるかも実験中だ」
機構は原発の安全研究が専門で来春に規制庁に統合される。安全審査の詳細を決める「審査マニュアル」を作る立場でもある。そこの専門家が、津波対策で調べるべきことが残ると発表したのだ。安全審査は進んでいるのに、どういうことか。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
記事の要旨は,簡単に申し上げれば,福島第1原発事故の原因は津波による浸水だと強調されているのに,原子力「寄生」委員会は,その津波の破壊力や,浸水防止のための「水密扉」について,科学的実証的な数値や実験的裏付けを持たずに(言い換えれば,何の根拠もないまま),原発施設ではない一般の指標として国土交通省が策定している数値を使って,原発再稼働「審査」という「三文芝居」を続けている,ということだ。
しかし,以前から指摘されているように,原発・核燃料施設の安全性に関する規制については,たとえば,(1)「最大津波」という概念があいまいで,今後,原発・核燃料施設が大津波に襲われることはない・原子力施設が浸水したり水没したりすることはない,とは言えないような原発・核燃料施設の「敷地状態」を許していること,に加えて,
(2)今回の毎日新聞の指摘のように,津波の破壊力や「水密扉」(防水用)の性能度合いが科学的・実証的根拠がなくて,どうやって原発・核燃料施設の対津波強度を評価するのか,
(3)津波だけでなく,津波の元となる地震の揺れや施設の耐震度についても,その想定やチェックが甘く,記事にも触れられているように,地震と津波の相乗効果=地震の揺れで痛めつけられた防潮堤その他の原発・核燃料施設が巨大津波に襲われた場合にどうなるのか,についての検証なりチェックが効いていない,
(4)地震にしても,津波にしても(あるいは放射能汚染や放射線被曝のことにしても),およそ「安全バッファ」というものを明示的に設定・設計しようという発想に欠けている(根拠レスのいい加減な「つかみ」感覚で,耐震・対津波について余裕があります,と「シロウトだまし」をするのは大得意)。たとえば,有害化学物質や重金属などの食品汚染については,動物実験の最悪結果(「最悪」結果であることに注意!)に対して100倍の「安全バッファ」をかけて「食品の安全基準」が決められている。しかし,原子力の世界では,そのような「安全保守主義」が明示的になされているのを見たことがない。
こんな状態で,原子力「寄生」委員会が「この原発・核燃料施設を審査いたしましたが,基準に照らして適合的であることを確認いたしました」などと言ったとしても,それで何らの「原発・核燃料施設の安全性」は担保・確認されないのである(だからこそ,原子力「寄生」委員会・「寄生」庁は,「原発の安全性を確認しました」とは口が裂けても言わない:あくまで「新規制基準」への適合性のみの確認である)。
まさに「猿芝居」である。そもそも,先般,原子力「寄生」委員会が決めた「新規制基準」(原発(7月)と核燃料サイクル施設(12月)の2つの規制基準がある)なるものは,福島第1原発事故の原因究明もしないままに,従来の危険極まりない「安全基準」の延長上に,言わば「外付け」で過酷事故(シビア・アクシデント)対策を継ぎ足しした「陳腐」かつ「いい加減」な,安全基準とも言えないような代物である。しかも,その過酷事故対策の重要なもののうちのいくつかが,驚くことに5年間も先送りされることまで「おまけ」で付いているのである。
「世界一安全な原発」(安倍晋三)とは,実は,地震津波列島の上に,何の安全性の根拠も確認もなく建てられている「世界で最も危険な原発」にすぎないことが,この記事から見えてきた。安倍晋三・自民党政権によって,再びの原発・核燃料施設の稼働をさせないことが,この日本という国を守り,我らが家族や子孫を守り,子どもたちや孫たちに未来を健全な形で残していける唯一の手段であることを,我々は再度確認しておかなければならない。福島第1原発の悲惨さと地獄の恐怖を忘れたとき,その時が,我々の滅亡する時である。
(以下,「津波」と「水密扉」の2つに分けて,簡単に記事をご紹介しておく)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
1.防潮堤への津波の影響はどれほどなのか
●「(原子力安全基盤)機構は原発の安全研究が専門で来春に規制庁に統合される。安全審査の詳細を決める「審査マニュアル」を作る立場でもある。そこの専門家が、津波対策で調べるべきことが残ると発表したのだ。安全審査は進んでいるのに、どういうことか。」
(田中一郎)⇒「津波対策で調べるべきことが残っている」のに,どうして原発・核燃料施設の「新規制基準」が決められてしまっているのか。明らかにおかしいではないか。しかも,発言しているのは,原子
力に批判的な科学者・技術者ではない。まさに原子力規制の中枢にいる人である。ことの重要性は絶大だ。
●「規制委は現在、津波の際に堤の底部にかかる水圧を「想定する津波の高さ(メートル)×(かける)3」を基準に計算すればよいとしている。高さ10メートルの津波なら「10×3」で,堤1平方メートル当たり30トンの水圧になる。国土交通省が2011年に発表した「津波避難ビル等の構造上の要件に係る暫定指針」に示されている考え方だ。しかし高松さんは「原発の防潮堤は、とにかく壊れては困る。水圧の計算が本当に“3倍”でよいか、想定以上の力がかかった時にどうなるか、などを確認する必要がある」と言う。
(田中一郎)⇒「上記と同じだ。「とにかく壊れては困る。水圧の計算が本当に“3倍”でよいか、想定以上の力がかかった時にどうなるか、などを確認する必要がある」と言っているが,そんなことも調べずに,新規制基準を決めているのか」
●「実験そのものは別の独立行政法人「港湾空港技術研究所」(神奈川県横須賀市)に依頼している。同研究所耐波研究チームの有川太郎・上席研究官(海岸工学)は「同じ高さの波でも波の砕け方や海底の勾配などで堤にかかる力は変わる。東日本大震災を受け、高さ10メートルなど巨大津波の力は従来より大きくみる必要があるかもしれない」という。」
「結果の正式な公表はまだだが、有川さんによると実験全体の1割ほどで、水圧は1平方メートル当たり「津波の高さの5?6倍×1トン」に達し、「3倍」を大きく上回った。ただし、この高い水圧がかかるのは波が当たる瞬間の、0・1?1秒程度だった。」
「強い力だが短時間なので堤は壊れないだろう。しかし堤がゆがんで隙間(すきま)ができ、次の波で水を通すことはあり得る」と有川さんは説明する。ゆがみの大きさは来年度に調べる計画だ。」
(田中一郎)⇒「「短時間なので堤は壊れないだろう」などと,「とにかく壊れては困る」原発・核燃料施設の防潮堤について,このように楽観的な方向で見てはいけないのではないのか。そもそも津波というものは,たった1回だけ,水しぶきがチャップリンと来て終わりなわけではない。繰り返し,繰り返し,これでもか,これでもか,と襲ってくるものだ。しかも,津波は単に「海水」だけではなく,海や陸にある様々な大型物体(岩石や破壊した建物や船舶など)を担ぎあげては,それを原発・核燃料施設に向かって投げつけるように,何度も襲ってくるのである。その想定で破壊力や耐久力を計算しなければ,実際には役に立たないものとなる」
●「今月は、防潮堤を振動台で揺すり、そこに波を当てる実験を始めた。堤が海側に揺れた瞬間に波が当たれば、カウンターパンチとなって水圧が増す可能性があるからだ。」
「「研究が不足していた」と有川さん。さらに、東日本大震災の際に各地で生じた、波が堤の下を掘り返して倒れやすくする「洗掘(せんくつ)」現象の実験も計画している。」
(田中一郎)⇒「繰り返すが,津波の威力や破壊力と,それに対する耐性を綿密に分析・計算していただくのは大いに結構なことである。しかし,それを今実験的・実証的に確認中ということならば,新規制基準なるものは,一旦撤回すべきものだろう。基準が揺れていて,どうして再稼働審査ができるのか」
2.「水密扉」
●「「水密扉」も原発を水から守る重要な存在だ。想定以上の津波や原発内の配管破断などで原子炉建屋に水があふれた際、天井まで水が来ても水圧に耐え、原子炉に冷却水を送るポンプなど扉の奥の重要機器を守る」
「機構はこの扉についても今年度から15年度までの計画で実験、研究を始めた。扉が地震でゆがんだ後で水が襲うことを想定し扉に強い力をかける。その後、扉に水圧をかけ水漏れの量を測る。実験はこれからだが、結果は地震と津波が同時に来た場合の安全対策に生かす」
「機構によると、扉のゆがみを想定した耐水圧実験は扉メーカーでもしていない」
(田中一郎)⇒「おいおい,実験もしていないの,いい加減に基準を決めるなよ」
●「機構の蛯沢勝三理事は「原発の耐津波設計はこれまで敷地を高くするなど2種類しかなかった。『一般の構造物の耐津波設計で使う計算式を原発でも使っていいんですか』と聞かれても世界的にデータは乏しい。東日本大震災を受け遅まきながらデータを取り始めた」と防潮堤や水密扉の実験の意図を説明する」
(田中一郎)⇒「見かけ倒しの,シロウトだましの,原子力の世界の典型だ。根拠がありもしないのに,さもあるかのごとくふるまい,他の業界では常識となっているようなことさえも,ロクすっぽやらない。自らの非は断固として認めず,批判や改善提案や注告に対しては馬耳東風である。そう,彼らは「ウマ」なのだ。馬の耳に念仏で,我々の懸念は届かない。前々から申し上げているように,彼らは社会的に葬り去るしか方法はない」
●「規制委はこうした疑問を脇に置き、従来の基準で安全審査を行う方針だ。規制庁の市村知也・安全規制管理官は「審査では、既存の国交省の基準などに沿い、電力会社の出すデータを個別に検討する。機構の研究は新知見の収集だが、技術的知見は常に更新されるもので、審査は今の水準で考える」と言う」
(田中一郎)⇒「発言に注目されたい。まず審査は,電力会社が安全確保のためのデータを出し,原子力「寄生」委員会はそれをチェックするという,事業者先行のスタイルを守り抜くということだ。言い換えれば,規制当局として,自らの審査の重点視点は持たず,あくまでも電力会社の「従」として,電力会社に引きずられながら審査をふるまうという姿勢である。
加えて「技術的知見は常に更新されるのだから,イチイチかまっておれないので,今の水準でチェックする」という怠慢姿勢。電気器具その他の工業製品における温暖化防止対策では「トップランナー制度」というものがあり,最先端の技術の利用が義務付けられているというのに,この遅れに遅れてしまった原子力という20世紀型のグロテスク陳腐産業では,規制当局が今の知見だけで判断して何が悪いのか,と居直っている。この人達に審査をやる資格はないと,はっきり申し上げたい」
●「関西電力は安全審査中の高浜原発3、4号機で高さ5・5メートルの津波を想定し、海抜11・5メートルの防潮堤を建設中。堤は今後、規制委の審査を受ける。関電は「防潮堤は国交省の基準などに基づき設計している。機構の実験は把握していないが津波に関する安全性、信頼性の観点から今後、知見や技術情報の収集に努める」と話す」
(田中一郎)⇒「人の電気代を使って勝手なことするんじゃないぞ。防潮堤の建設などは,その内容について規制当局の了解を得てから,つまりは,再稼働審査がOKとなってからやるものだ。知見や技術情報も持たないで,何やってんだ。サッサとやめろ」
●「(柏崎刈羽原発)同原発土木グループは「電力各社の過去の実験結果などから、防潮堤は“×3”でも安全を考慮した設計になると考える。また地震と津波が同時に堤を襲う率は低い。水密扉は地震が来てもゆがまない強度に設計している」と反論する。」
(田中一郎)⇒「「地震と津波が同時に堤を襲う率は低い。水密扉は地震が来てもゆがまない強度に設計している」だそうだ。これでは,柏崎刈羽原発も,まもなく大過酷事故ほぼ間違いなしだ。地震と津波は別々に堤を襲うものであるという「東京電力柏崎刈羽原発の法則」の信者たちが安全対策をやっているのだから」
●「安全審査の申請は24日午前現在まだだが、関電美浜、東北電力女川、同電力東通、日本原子力発電東海第2、中国電力島根原発なども防潮堤を造っている。有川さんは話す。「原発の規制基準にはコメントできないが、防潮堤の基準が『×3』でよいかを判断するには現状はデータ不足だ。専門家として物理的にあり得るケースを調べ尽くし公表したい。どこまで丈夫に造るかの基準は、そのデータを基に社会が決めてほしい」
(田中一郎)⇒「何度でも聞く。「データ不足」で,どうして新規制基準が作れたのか」。原子力「寄生」委員会は,全国の原発と電力会社に,審査に先行して防潮堤をつくることをやめさせよ」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
かつての日本は,科学的実証性を軽視・無視し,我田引水型で極度の自己中心主義の情緒的精神主義に冒された軍部官僚達によって滅亡を余儀なくされた。その愚かな振る舞いが,再び原子力の世界で繰り返されようとしている。「悪魔が来りてホラを吹く」人達を,一刻も早く,原子力の世界から追い払わなければ,もう後がない。
早々
« シイタケやキノコ・山菜の販売不振=経営危機は、農林水産省のずさんで無責任なキノコ・山菜及び原木・培土管理がその原因である | トップページ | 除染という「やるやる詐欺」 »
「再稼動」カテゴリの記事
- 稼働させたらさっそくトラブルの「手抜き原発」=川内原発,何故,原発を一旦止めて,全復水器の全ての細管,関連して蒸気発生器細管の傷み具合を点検しないのか (なにせ4年近くも動いていない老朽化原発ですから)(2015.08.26)
- 川内原発は「再稼働」ではなくて「起動審査」=その「起動審査」を終了させるのは原子力規制委員会,しかし,その後,30km圏内自治体の防災(避難計画)と九州電力の防災支援の突き合わせが必要(2015.08.16)
- 狂気の川内原発再稼働=これで日本全土放射能汚染地獄の釜のフタは空いた:この「自爆テロ」カウントダウンを止めるには自民党・公明党を政界から追放するほかない (その1)(2015.08.12)
- (報告)高浜原発運転差止仮処分決定 緊急報告集会(2015年4月17日):田中俊一さん,事実誤認はあなたの方ですよ,そんなことより,再稼働を認可した原発が大事故を起こしたら,どう責任をとるんですか?(2015.04.19)
- 高浜原発3,4号機運転差止仮処分判決について:見事な歴史的名判決を受け止め,原発・核の廃棄がなぜ必要かを有権者・国民にこれまで以上に訴えて行きましょう=そして原発・原子力政治を転換するのです(2015.04.16)
トラックバック
この記事へのトラックバック一覧です: 福島原発事故の原因は津波だとしながら,その津波対策について科学的実証的な裏付けがないまま「再稼働審査」という「芝居」を続ける原子力「寄生」委員会:
« シイタケやキノコ・山菜の販売不振=経営危機は、農林水産省のずさんで無責任なキノコ・山菜及び原木・培土管理がその原因である | トップページ | 除染という「やるやる詐欺」 »


コメント