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2013年11月20日 (水)

内部被曝とエピジェネティクスについて (講談社ブルーバックス 『エピゲノムと生命』 を読んで感じたこと)

前略,田中一郎です。

なお,別添PDFファイルは著作権上の問題がありますので,第三者転送・転載はご容赦ください。くれぐれも第三者転送・転載をなさいませんようお願い申し上げます。

 

 <参考書>

*『エピゲノムと生命 DNAだけでない「遺伝」のしくみ』(ブルーバックス:太田邦史/著)

 http://www.e-hon.ne.jp/bec/SA/Detail?refShinCode=0100000000000032966264&Action_id=121&Sza_id=C0

 

 別添PDFファイルは,今般発刊された講談社ブルーバックスの『エピゲノムと生命』(太田邦史著)の一節です。「ノンコーディングRNA」と,その「エピジェネティクス」的機能について解説された部分の一部を抜き出してあります。

 

 ついこの間まで「ジャンクDNA領域」(「何の役にも立っていないゴミのようなDNAの一部分」くらいの意味)と言われていたDNA領域が「ノンコードDNA領域」と呼ばれるようになりましたが,「ノンコーディングRNA」とは,そこから転写によって産生するRNAのことで,たんぱく質に翻訳されることはなく,一般に遺伝子機能を持たないDNAの塩基対部分から生み出されてくるRNAのことを意味してしています。

 

 実は,この「ノンコーディングRNA」は,「ジャンク」どころか,複雑な遺伝子制御に関わっていて,生物の複雑な生命プログラム実行を可能にしている,というのが,この本の説明です。つまり,「ジャンク」と思われていたDNAの領域から大量の機能未知のRNAが合成され,それが遺伝子の発現を制御し,認識されることもなく消去されている可能性が高いと,この本の著者は言います。多くの研究者はこのような状況にかなり興奮し,2005年には理化学研究所のある研究者が,この状況を「RNA新大陸の発見」と称したそうです。(下記のこの図書からの引用を参照)

 

 更に,「ノンコーディングRNA」は,遺伝子機能発現や抑制をにらんでの創薬研究に使われたり,更に研究が進んで,遺伝子制御以外の様々な生命機能にも関わることも分かってきて,今や分子生物学・細胞生理学の最先端を切り開く重要なキーワードとなっています。

 

 <若干の引用をしておきます:私が赤線を引っ張った部分です>

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P74「エピジエネテイクスは「同じDNAを持つ細胞をいろいろな種類の細胞に分化させるのに用いられる」ということを述べました。エピジエネティクスのしくみを使うと、DNAの情報に加えて、それをどう使うかという情報が書き込め、しかもそれを記憶することが可能になります」

 

P74「非コードDNA領域から生み出されるRNAの積極的な関与を想定します。このようなタンパク質に翻訳されないRNAのことを、「非コードRNA」とか「ノンコーディングRNA(ncRNA)」と呼んでいます。」

 

P74「非コードRNAは、現在非常に活発に研究が行われている領域です」

 

P76「つまり、「ジャンク」のように思われていた領域から大量の機能未知のRNAが合成され、遺伝子の発現を制御し、認識されることもなく消去されている可能性が高いのです。このような状況に研究者が興奮しないわけがありません。lncRNAの発見に関わった理化学研究所の林崎良英博士は、2005年にこの状況を「RNA新大陸の発見」と称することで、研究ステージの新たな展開を印象付けました。」

 

P77「非コードRNAの詳細は他書に譲ることにして、非コードRNAの遺伝子発現制御における役割だけ説明します。miRNAは二十数塩基対の短いRNAで、ある種の標的遺伝子の発現を特異的に抑制します。miRNAは我々の体でも多数発現しており、器官形成や発生、疾患発症などと密接な関係があることがわかってきています。

 

P78「なお、RNAiの登場により、狙った遺伝子を好きなように変えることが困難な高等生物でも、任意の遺伝子の機能を抑制することができるようになりました。これによって、従来は解析が難しかった、高等生物の遺伝子機能が解析できるようになり、さらにRNAiを利用して、がん遺伝子を不活性化するなど、さまざまな創築研究が行われています。」

 

P78「二本鎖のRNAが細胞に入ると、その配列を持つRNAの分解や翻訳抑制が起こるというのは、よく考えると不思議な話です。」

 

P78「RNAiは、遺伝子発現制御以外のさまざまな生命機能に関わることも知られています。」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

(以上,引用終わり)

 

 ところで,申し上げたいことはここからです。

 いわゆる放射線の内部被曝,放射能の体内取り込みによる健康被害が論じられる時は,どういうわけか,放射線防護学にせよ,放射線生物学にせよ,DNA=遺伝子の損傷と破壊のみに着目した,非常に狭い範囲内での時代遅れの議論が展開されるにとどまっております。(原子力ムラ・放射線ムラの似非学者どもには,せめて講談社のブルーバックスや岩波新書くらいは読んどけよ,と申し上げたいですね)

 

 これは,ワトソン・クリックによる遺伝子=DNAの構造仮説と,いわゆるセントラルドグマ(DNA=RNA=たんぱく質への翻訳)がノーベル賞を受賞した,1950年代から60年代にかけての頃の古い議論です。体内にある放射性物質から発せられる放射線が,大きなエネルギーでDNAや遺伝子にぶち当たり,それを破壊するために,遺伝子の病気が発生する,破壊されても修復機能があるために,病気の発生はある程度抑えられる,こういう議論です。遺伝子の破壊や損傷が問題ですから,それによる健康障害や病気と言えば「ガン・白血病」ということになるわけです。

 

 しかし,人間の体を含む生物の細胞は,かような「機械論的な構造」をしているのではありません。確かにDNAも遺伝子も,細胞内の「器官」の一つではありますが,それは細胞を一義的に支配する「殿様」でも何でもなくて,言い換えれば,遺伝子 ⇒ 細胞内生理,の一方方向の命令制御ではなく,遺伝子そのものが細胞内の生理的秩序によって逆に制御されている,同じ遺伝子があったとしても,それが発現されたりされなかったり,発現が妨げられたり促進されたりと,細胞内では様々な環境変化に対して,双方向・複数方向に自在に変化・適応・反応して,生き物としての生命発現が制御されているのです。(また,ミトコンドリアという「器官」には,細胞核とは異なるもう一つのDNAもあり,生物の体のエネルギー制御を司っております)

 

 上記でご紹介した図書に書かれている「ノンコーディングRNA」のエピジェネティクス的な機能は,そうした複雑な遺伝子制御や生命秩序維持のミクロ世界における生化学的な説明の一つに他なりません。ついこの間まで,その重要な機能を知らなかった「無知の塊」である人類が名付けた「クズDNA」「ゴミDNA」=「ジャンクDNA」が,実は「ジャンク」どころか,遺伝子発現制御の根幹に携わる「ノンコーディングRNA」産生のキーとなるDNA領域だったわけで,研究が進めば進むほど,生命というものの複雑さと,生命体内の各部位や器官や細胞間の複雑多岐にわたる連関性や機能相互補完性が見えてきます。ミクロの世界の果てしない未知の世界が,まだまだ我々人類の眼前に広大な大陸として広がっている,そういう印象を強く受けるのです。

 

 ところが,放射能や放射線被曝の健康障害への影響を論じる際の,あの原子力ムラや放射線ムラの似非学者達の議論の「単純さ」たるや,あまりにも馬鹿げています。それはまるで「時間が止まった世界」のごとく「思考停止」状態が続いていて,シロウト騙しの「遺伝子破壊・修復」論を繰り返し,セントラルドグマ以降の約50年間の生物学の進歩・発展には,とんと頭が回らないようなお粗末さです。放射線被曝=遺伝子破壊・損傷=ガン・白血病の発症,それでことが終わるのなら,これほど楽なことはないのですが,絶対にそういうことではありません。

 

 ここからは皆さまと,想像する世界になります,上記で申し上げました「ノンコーディングRNA」がもつ遺伝子制御や生命活動機能制御の部分に,猛烈な放射線が内部被曝によって,何度も何度も,局所的に集中的に繰り返しあてられたとしたら,どうなるでしょうか。生物の体を構成するあらゆる分子にとって,放射線の持つ巨大なエネルギーの破壊力は天文学的な度合いです。少しでも当たれば,生物の細胞のミクロの世界はたちまち破壊されることは避けられません。あたかも人間の顔面に,猛烈な勢いで飛んでくる硬式野球のボールか砲弾投げの砲弾がぶち当たった時のような,大変な事態になるのは自明です(放射線のエネルギーは,細胞をつなぐエネルギーの数万~数百万倍の大きさです)。ちょっとばかり痛い,どころの話ではないのです。

 

 申し上げるまでもなく,細胞内の放射線被曝した場所は,生命制御も遺伝子制御もメチャクチャになることは容易に想像ができるでしょう。仮に,遺伝子そのもの=DNAそのものは破壊されていなくても,その遺伝子を制御するDNA周辺の,様々な生命の道具類が放射線の巨大エネルギーに蹴散らされてしまうことも,何なく理解できると思います。放射線被曝とは,そういうことなのです。放射線被曝とは,遺伝子の破壊のみならず,生物の生命秩序全体の破壊=細胞内の全生理メカニズムの崩壊をもたらす,巨大な破壊作用です。

 

 それでも生命は強い。自助修復作用というものがある,回復力もある。確かに,それはその通りですが,内部被曝は,それをも葬り去るかのごとく,何度も何度も,局所的に集中的に放射線照射を繰り返し,被曝による破壊活動を続けて行くのです。少し前に「一度だけなら許してあげる」という歌がありましたが,内部被曝は外部被曝や医療被曝のような(ガンマ線やX線による)「一過性」(一度だけ)のものではありえず,至近距離からの,アルファ線,ベータ線,ガンマ線の,繰り返しの「総攻撃」「猛攻撃」を受けてしまうということに,十分すぎるくらいの注意を払う必要があるのです。生物や人間は,内部被曝と共存しながらは,健康に生きることはできません。放射線被曝,とりわけ,恒常的な低線量内部被曝は,絶対に避けなければならない生命にとっての最大の「脅威」であると言っていでしょう。

 

(バカバカしい,自然放射能のカリウム40と放射性セシウムなどの人工放射能との比較の話は,もういたしません。カリウム40は,昔からある放射性物質で,たいして危険ではありませんが,人工放射能は人体を含む生物体内での挙動が詳細にはよく分かっておらず,カリウム40のように分子レベルにまで小さくなって全身に散らばるというようなこともなく,さまざまな放射性物質と団子状態になりながら,生物の体内を蝕んでいく危険性もある「未知の危険」物質です。原理的に危険極まりない(人工の)放射性物質が,生物や人間の体内でどう挙動するのかがよくわからないのですから,その量がたとえ微量とはいえ安全なわけがありません)

 

 こう考えれば,放射線被曝=恒常的な低線量内部被曝が,人間にガンや白血病だけでなく,ぶらぶら病をはじめとする(原因が必ずしもはっきりしない)様々な病気や健康障害をもたらし,かつ,それらが遺伝的にも伝播して,子々孫々にまで病弱で不健康な子どもが引き継がれ,また,苦しみや悲しみも引き継がれていくということは,容易に理解できるのではないでしょうか。必ずしも,見た目が「奇形」でなくても,被曝した人の子孫は,何らかの意味で(生理学的な)奇形である可能性があると言えましょう。遺伝子が遺伝されるのは当然としても,上記で申し上げたエピジェネティクス的な機能もまた,その一部は遺伝されていくのです。放射線被曝被害は,一世代では絶対に収束しないと考えておいていいでしょう。

 

(「ゲノム不安定性」(隔世遺伝的突然変異多発)や「バイスタンダー効果」と呼ばれているものが既に発見され,問題とされていますが,原子力ムラの人間達は「見て見ぬふり」をしております)

 

*ミニサテライト突然変異、バイスタンダー効果 西式甲田療法による介護 - 楽天ブログ

http://plaza.rakuten.co.jp/hukohitomi/diary/201203220006/

 

 そして,内部被曝に関しては,もう2つのことを「しか」とお伝えしておかなければなりません。一つは,内部被曝は政治的に原子力ムラ・放射線ムラの御用学者達によって矮小化され,過小評価され,無視され,政治的に抹殺されてきたこと,もう一つは,内部被曝の危険性の経験科学的・実証的な研究が,原子力ムラ・放射線ムラの御用人間達によって徹底してつぶされ,妨害され,排除され(予算や人員配置や研究設備や組織等),その結果として,内部被曝に関する政治的な情報管理と,一元的な危険度解釈の押し付けが行われてきた,ということです。「シーベルト」などいう,インチキ丸出しの被曝評価単位の概念がそうですし,今日に至っても,福島第1原発事故被害者の放射線被曝をさしたる懸念がないかの如くに報告する国際原子力マフィアの各種報告書などがその一例と言えるでしょう。

 

 みなさま,もう放射線被曝について,原子力ムラ・放射線ムラの住人達による根拠レスの嘘八百説明に惑わされるのは終わりにしましょう。彼らはもはや科学者でも何でもなくて,(似非)科学という「政治」を振り回すインチキおじさん達に他ならないのです。内部被曝を上記で申し上げましたように,エピジェネティクスをも含む細胞レベルで原理的に考え,その破壊力の大きさを心得ておけば,彼らのインチキを受入れる余地はなくなってしまうでしょう。放射線被曝被害の度合いについては,上記で申し上げたように,研究が邪魔をされて進んでおりませんから,科学的実証はこれからの話になります。しかし,そんなものをのんびりと待っている必要もありませんし,原子力ムラ・放射線ムラ支配の続く現代科学の世界で,そうした放射線被曝や内部被曝の危険性の定量的な研究や把握が,適切な形で,客観的な手続きを経て,そう簡単に出てくるとも思えません。

 

 従って,今ある多くの経験的な放射線被曝被害の報告と,上記の被曝の原理的理解を結び付け,それと相矛盾する原子力ムラ・放射線ムラ報告や勧告には「ノー」を突き付けて,彼らに対して[徹底した説明責任]を求めて行けばよいのです。その説明責任が果たされない限り,少なくとも恒常的な低線量内部被曝環境からは,一刻も早く脱出をする,という「経験則」を身につけておくべきでしょう。間違っても,愚かなマスごみの宣伝しているような,お粗末極まりない「放射線被曝安全論・安心論」に心を許したり,もたれかかったりしてはいけないのです。ましてや,原子力ムラ・放射線ムラの御用学者に,すがりついてはいけません。

 

 繰り返しになるかもしれませんが,自分の身は自分の身で守らなければなりません。原子力ムラ・放射線ムラは,皆さま一人一人の命と健康のことなど,歯牙にもかけてはおりませんし,愚かなマスごみは,この2つのムラの宣伝を「拡声器」で拡大して伝えているだけの話です。彼らに情緒的に騙されるということは,それはそのまま「緩慢な死」を,子々孫々の時代にまでわたって受入れるということを意味します。つまり,放射能によって殺されるということです。原子力ムラ・放射線ムラは,それによって原子力が推進でき,原発・核燃料施設や核兵器が引続き温存できれば,それで目的が達せられたことになり,何の憂いも残ることはありません。皆さまのことなど,彼らは「どうでもいい」と考えているのです。

 

 原子力と放射能・被曝の世界では,信じることは殺される,なのです。

 

*(参考)「いちろうちゃんのブログ」から

放射線被ばくの単位「シーベルト」はどのようにインチキなのか? いちろうちゃんのブログ

http://tyobotyobosiminn.cocolog-nifty.com/blog/2013/11/post-55ba.html

早々

 

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