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2013年11月21日 (木)

偽モノキャンペーン「食べて応援・買って支援」と,消費者を馬鹿にする「風評被害」論

前略,田中一郎です。

(別添PDFファイルは添付できませんでした)

(1)水産庁-職員食堂を活用した三省庁連携による福島県の水産物のPRについて
  http://www.jfa.maff.go.jp/j/press/kakou/131120.html


(2)農林水産省-がんばれ福島in築地市場青果部

 http://www.maff.go.jp/j/shokusan/eat/tabete/120918.html


(3)別添PDFファイル

 「福島原発沖の密漁魚が「産地偽装」で出荷されている(青沼陽一郎 『女性自身 2013 10 22』)」


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 上記(1)は,本日付(11/21)で水産庁HPで見つけたものです((2)は少し古い事例の一つ)。農林水産省も,水産庁も,林野庁も,3.11「東京電力(福島第1原発)放射能放出事件」以降,再三にわたってかようなバカバカしいパフォーマンスを繰り返し,飲食品の放射能汚染が大したものではないことの消費者・国民に対する「説得」に務めています。

 しかし,放射能汚染地域から産出される食料品が安全である,心配がない,ことを最も説得的に示すためには,徹底して,その食品群の残留放射能検査を繰り返し,そしてそれを何一つ隠しだてすることなく徹底して公開することではないでしょうか。汚染の実態を隠そうとしたり,小さく見せようとしたりせず,ありのままを徹底して公開し,汚染していれば対策を打ち,これ以上の汚染を防いだり,汚染物が出回らないように規制や取り締まりをかけたり,汚染による被害者(生産者,事業者,消費者)に損害賠償をしたりして,汚染そのものと,その悪影響の抑え込みを図らねばなりませんし,汚染していなければ,まことに結構なことで,今後も汚染しないよう,今も大量の放射能を環境に放出し続けている福島第1原発に対する監視を強めればいいのです。

 

 しかし,農林水産省も水産庁も林野庁も,実際にやっていることはその真逆で,たとえば,飲食品の残留放射能検査体制をいつまでたっても整備しないため,脆弱な検査体制の下で,流通している飲食品のほとんどは未検査のままであること(別添PDFファイルの女性週刊誌記事にあるように,水産物の検査は,茨城県の場合,1週間に1回程度らしい),それも検査されているのは放射性セシウムだけの話で,その他の放射性核種,たとえば危険極まりない放射性ストロンチウムなどは全く検査されていないこと,少ない検査頻度であるにもかかわらず,その検査が,牛肉,コメ,特定の魚介類,キノコなどに偏っていて,それ以外の食品群については,ほとんど調べられていないこと,検査結果についても情報の開示状況が悪く,どうしてその品目にそのような汚染が出たのかさえも,一般の消費者・国民には理由や原因が全くわかないこと,従って,今後の対策や対処のしようがないこと,などなど,検査運営の不備も目立っているのです。

 

 水産物の場合には,「産地表示偽装・隠蔽」「漁獲水域表示偽装・隠蔽」「未検査品の検査済み表示偽装・隠蔽」など,流通過程で悪意が入り込む可能性のある「スキ間」がたくさんあり,とても安心して買って食べるわけにはまいりませんが,これも全くの放置状態で,規制も取り締まりもほとんどなされておりません。日本の水産物は,韓国がいみじくも適入禁止にしたように「放射能汚染の危険性だらけ」と言っても過言ではないのです(どれがどれだけ汚染されているか,全く分からないので,いわば消費者・国民は,水産物を買って食べるのが「ロシアン・ルーレット」のような状態におかれています)。

 

 それでいて,農林水産省も水産庁も林野庁も,事あるごとに「風評被害」という言葉を乱発し,福島県をはじめ東日本の放射能汚染地域の産品を避けている消費者・国民に対して,お前らのような愚かな消費者がいるから,生産者は苦労が絶えないのだと言わんばかりの,まるで消費者・国民を「バカ呼ばわり」するがごときの「風評被害克服キャンペーン」を展開しております。ロクすっぽ検査もされていないものを避けて通ることは,賢明な消費者・国民として当然のことですが,これが放射能汚染を小さく見せたい彼らにとっては気にくわないようなのです。そして,愚かにも,この「風評被害克服キャンペーン」に,農協や漁協などの生産者団体に加え,生協や一部の消費者団体までもが一緒になり,「食べて応援・買って支援」などの,バカバカしい,かつ危険な「大(翼賛)運動]を繰り広げているのですから,あきれてしまいます。

 

 かつて,アジア太平洋戦争前には,戦争に反対したり,協力しない態度をとる人に対して「非国民」のレッテルを張り,多くの人間がその人を取り囲んでバッシングをするというようなことが日常的に行われていました。いわゆる「翼賛型軍国主義」社会ですが,それと似たような雰囲気が「風評被害」という言葉で,食べものの放射能汚染に懸念を示す人達に対して投げかけられています。例えば,子どもの食べものを心配する保護者達を押しのけて,福島県やその他の汚染地域で,強引に地場産の農畜産物や水産物などが学校給食の食材に使われ,3.11以前以上に,ことさらに地産地消の大宣伝が行われているのも異常という他ありません。たいていの場合,その地場産食材の放射能検査体制は貧弱な場合が多いのです。「放射能,みんなで食べれば怖くない」では,話になりません。こうした食べものを通しての「被曝の押し付け合い」社会というのは,もはや一種の「原子力翼賛社会」という他ありません。そもそも,ろくすっぽ検査も調査もしていない食料品を,安全だ,安心だと,虚偽のPRやキャンペーンで繰り返す=これは食品表示の世界で言うところの「優良誤認」の典型のようなものではありませんか(検査をしていないのに,しているかのように,「大した汚染ではない」と強調する)。

 

 放射能で汚染しているかもしれないようなものを,「食べて応援・買って支援」などしていても,福島県や汚染地域の農林水産業は救済されることはありません。何故なら,こんなキャンペーンに対しては,多くの人々が本音ベースで懐疑的に見ているだけでなく,「食べて応援・買って支援」によって,汚染地域の産業活動がやめられなくなり,被災地の汚染が被害者の被曝に結びついていくことになる他,買って食べた方も内部被曝をする可能性が高まります。また,本来は,加害者・東京電力や事故責任者・国がきちんと被害者の生産者や食品業者に対して賠償・補償をしなければならないものが,この「(翼賛)運動」によってうやむやにされ,売り上げの不振と相まって,益々生産者・事業者を苦境に追い込んでいくからです。そもそも政府が,このキャンペーンを大々的に展開している最大のねらいは,(1)賠償・補償を極小化する(安全・安心なら賠償・補償はいらない=売れないのは生産者・事業者の自己責任で東京電力の責任ではない),(2)「東京電力(福島第1原発)放射能放出事件」の放射能汚染は大したことはなく,もう事故は終わったという虚構をでっちあげるため(そうすれば原子力の(再)推進がいよいよ日程に上ってくる),の2つであると思われます。

 

 原発事故をなかったことにしたい人達・放射能汚染と被曝を小さく見せたい人達に踊らされて,愚かな「食べて応援・買って支援」キャンペーンなどに乗せられてはならないのです。愚かなマスごみの記事などは,聞き流せばいいだけです。偽モノキャンペーン「食べて応援・買って支援」と,消費者を馬鹿にした「風評被害」論は,放射能汚染地域の悲劇をより深刻にし,誰が加害者で誰が被害者なのかもわからなくする,原子力ムラ・放射線ムラの連中にとっては,笑いが止まらないくらいに愉快で快適な,そして,我々消費者・国民やまじめで努力家の生産者・食品事業者にとっては,まことに迷惑で困った「(翼賛)運動」に他なりません。本来あるべきキャンペーンは,たとえば「食べるのやめよう汚染物,買うのもやめよう汚染物」「そんなことでは被害者は救済されません,加害者・東京電力や事故責任者・国は,早く万全の賠償・補償をして,被害者を救済して下さい」「被害者の生産者・農家には,新しい汚染されていない農地と農場と農業資材を提供して下さい」です。

 

 だいぶ前の話ですが,イギリスでBSE牛が発見され大騒ぎになったことがあります。その時に,時の英国農林大臣は,自分の孫娘をTVに登場させ,その孫娘と一緒に,BSEに汚染されているかもしれない英国産の牛肉を食べて見せて,そして「BSEは人間には感染いたしません。皆さま,私もかわいい孫たちに英国産の牛肉を食べさせていますから安心して下さい」と,言いました。しかし,まもなく,英国でBSEの人間への感染が確認され,何人かの方が犠牲となってしまいました。

 

 水産庁が今回やった職員食堂での「三省庁連携による福島県の水産物のPR」は,この英国農林大臣がやったことと大差ないと思われます。

早々

 

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