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2013年11月23日 (土)

コメの「減反政策」はとうの昔に廃止されている,今あるのは「主食用米の転作政策」 ( 「主食用米の「生産調整」政策の変遷」に見る日本の農業政策)

前略,田中一郎です。

 

<別添PDFファイル>

*(主食用米の)生産調整政策の変遷 (20131122日付農業協同組合新聞)
「20131122.pdf」をダウンロード

 

 別添PDFファイルは,このほど農業協同組合新聞(20131120日付)に掲載されました(主食用米の)「生産調整政策の変遷」という記事です。1971年(昭和46年)以降の日本政府=自民党・農林水産省の米政策の変遷がコンパクトに,よくまとめられています。

 

 これをご覧になればお分かりのように,いわゆる「コメ減反」といわれる「コメを作らせないことに主眼を置いた政策」は,早くも1978年(昭和53年)の「水田利用再編対策]以降,主食用米の「転作政策」へと転換されています。生産過剰となっている主食用米の水田での作付をやめて,自給率が極度に落ち込んでしまった他の穀物類(小麦,大麦,大豆,飼料作物等)への転作をはかるという政策で,単純に「コメを作らせない」政策で田んぼを荒らすのではなく,転作によって田んぼの潜在的生産力(農地の力+農業者の力)を維持したまま,食料自給率向上や地域農業の多面的な発展を志向しようというものでした。この考え方が採用された背景には,故鈴木善幸元総理ら,自民党の農業政策グループの動きがあったと言われています。

 

 しかし,この政策はうまくいきませんでした。それはなぜか? その理由は,考え方がまずかったのではなく,考え方に反して,政府・自民党。農林水産省が,ロクでもないことをしてきたからなのです。以下,簡単・具体的に申し上げます。

 

(1)日本政府自身が日本の農業をないがしろにし,食い物にする政策を,自民党のゴロツキ政治家達とともに長く続け,農業政策を利権の巣に変えてしまいました。

 

(2)具体的には,まず,コメ以外の穀物類の関税を撤廃して貿易自由化を行い,国際的な価格競争に裸のままでさらしてしまったため穀物価格が暴落,日本においては,どのようなやり方をしても,米以外の穀物を作付・栽培することは採算に合わない状態となってしまったのです。いわば,賃金や農機具・農業資材を含む価格体系が全く異なる日本という国の財・サービスのうち,農産物だけを国際価格水準という日本から見ればはるかに低価格の水準に合わせてしまったため,穀物作付農業が経済的に不可能になってしまった,ということです。

 

 決して,日本農業の自然条件が外国に比べて恵まれていないとか,日本の生産者・農家の努力や能力が足りないからではありません。(むしろ,日本は四季の変化がはっきりしており,多雨で農業用水に恵まれ,豊かな森林を引き継いでいるなど,農業の最適地とでも言える自然条件がありますし,生産者・農家の農業技術の水準は名人技とも言えるくらいに高レベルです。その結果,日本では世界的に見ても指折りのすばらしい農産物が毎年生産・供給されています)

 

 どうしても無理に採算を国際価格水準に合わせろ,ということであれば,賃金や農機具・農業資材などの価格も国際価格水準に合わせねばならず,また,農地もアメリカやオーストラリアのような新大陸と同じような広さにしなければなりませんから,簡単にいえば,日本人は自給100円程度以下(日給1,000円以下)の低賃金・社会保険なしで働き,関東平野に住んでいる人々は暴力的にその居住地から追い出して(アメリカや豪州が先住民にしたように),100箇所くらいの大農場に集約・統合し,そこに石油がぶ飲み型の大型農業機械などを入れて農業生産をしなければならなくなります。

 

(これをやっていこう,というのが,今検討されている「強い農業」などと言われているものです。その結果,安かろう,悪かろう,危なかろう,の3拍子そろった「家畜のエサ」並みの農産物が大量生産され,家畜のように酷使される日本人や外国から連れてこられた農業労働者が,みじめな日々を送ることとなっていきます。自分の賃金は据え置かれたまま,食べ物だけが安くなる,そんなムシのいい話など無いのです。農業を理不尽にバッシングすることは,結局は,天に唾するごとく,すべて自分達に返ってきます。公務員をバッシングしているうちに,多くの日本人が非正規労働者になってしまって,にっちもさっちもいかなくなった,ごとくです。だまされてはいけません)

 

(3)上記で申し上げたように,転作する作物の収益性や採算性が主食用米に比較してよろしくないにもかかわらず,政府・自民党・農林水産省は,転作作物に対して十分な「転作奨励金」(補助金)を用意しませんでした。主食用の稲作に比較して,その他の穀物生産は収益性が悪く,かつ,転作にはさまざまな困難や苦労が伴いますから,多くの生産者・農家は主食用米の転作を極度に嫌がりました。当たり前と言えば当たり前でしょう。誰がわざわざ,苦労して収入が低いコメ以外の穀物に作付を変えようとするでしょうか。主食用米の生産過剰に生産者・農家の責任はほとんどありません。農業政策がおかしいのです。

 

 そして,許し難いことに,多くの財政資金=農業予算は,農業そのものを支援するために使われるのではなく,農業を口実にした農業公共土建事業(ダム,水路河川工事,農道,ハコモノなどを含む)や役人・役所の外郭団体のためだけの非公共事業など,その多くが無駄に使われ,それにたかる政治家・官僚・事業者らによって農業が食い物にされたのです。いわゆる農業予算の利権化です。そして,愚かにも,政府・自民党・農林水産省は,それを政治的に維持するため,いわゆる「米だけは(何とかしましょう)」政策を展開し,生産過剰である主食用米の価格を維持ないしは引き上げるという,経済政策としては全くトンチンカンなことを続けていました。こうすれば,益々,主食用米と転作作物との収益性に格差が開き,益々,主食用米の転作は困難となっていくのですが,その馬鹿みたいな政策を,いつまでもやめようとはしなかったのです。「水田を守らず票田を守る政策」と言われる所以です。

 

(4)加えて,この主食用米の生産調整を,現場の意向や事情を無視・軽視して,上から「割り当て」で押し付けるような「統制経済方式」(旧食管法)を強行したり,従わない生産者・農家に対しては,国賊よばわりのバッシングやペナルティ政策を長く続けておりました。悲しいかな,中央集権体制に飼いならされてきた多くの自治体もまた,この愚かな農業政策の「下僕」として動き,政府・自治体が力を合わせて地域地域の特徴ある農業の展開を封じ込めるようなことがなされていたのです。旧食管法が天下の悪法であるかのごとく言われるのは,こういう点にあります。しかし,その食管法でさえ,悪一色ではありません。悪一色は,むしろ現在の「何でもあり」となってしまった「新食糧法」の方だと言えるでしょう。

 

(5)もう一つ,大事なこととして,日本人の伝統的な主食穀物である米の需要が,年々減少し,多くの日本人が米を食べなくなってきている=代わって,麦(パン,麺)を食べるようになったという点です。これも日本の農業政策・食料政策の最大の汚点です。簡単にいえば,日本は戦後,アメリカに政治的・外交的・軍事的に隷属するだけでなく,食べものを通して「隷属」させられ,アメリカの植民地ならぬ「食民地」にされてしまったということです。

 

 詳細は論じませんが,その典型が学校給食政策です。未だに全国の小・中学校の学校給食で,米飯給食の回数頻度が週3回程度,つまり2回は米以外のものが使われているという「惨状」です。学校給食を食育と考え,主食のコメの大切さ,重要さ,豊かさ,すばらしさを学校教育で体験的に教えて行くことになっているはずが,未だに実現しておりません。地域によっては「学校給食会」というところが,既得権益の「利権」ネットを形成しているところもある様子で,困ったものです。そもそも学校給食政策のための予算自体が貧弱で,いわゆる自校方式という給食供給の体制がつぶされて,センター方式への移行が学校現場に押し付けられております。およそ,自国の主食をないがしろにするような民族・国民の国が繁栄するはずもないでしょう。日本という国は,いつまでこの馬鹿みたいな食料政策・学校給食政策を続けるつもりなのでしょうか? ともあれ,適切な政策をきちんと展開していれば,今のように,年々主食のコメの消費が減少していくなどということは起こりません。これもまた,愚かな農業政策・食料政策の結果だと考えていいのです。

 

(6)上記のような,歪みきった愚かな農業政策・食料政策の根底には,私が常々申し上げている政府・自民党・農林水産省の「悪の3結合」による「4つの優先農政」(①アメリカ優先、②WTO/FTA・EPA優先、③財政再建優先(安上がり農政)、④利権優先(不要不急の農業土建事業や役所外郭団体の非公共事業:事例としては,少し前に話題になった農村風景3Dスライド施設等)があり,上記で申し上げたように,農業をないがしろにし,悪しざまに扱い,食い物にしてきたということです。日本農業が後継者も確保できぬほどに衰退し,耕作放棄地が何10万haも広がる今日の惨状は,ただただひとえに貿易政策を含む農業政策の出鱈目から来る人災であることを強調しておきます。

 

 生産者・農家に責任があるとすれば,充分な政治・政策情報が与えられない中で,悲しいかな,いつまでもいつまでも自民党ゴロツキ政治家達に投票をし続けてしまった,ということでしょう。そこには,日本の歴史的な,支配権力同調主義や権威従属主義,あるいは翼賛的同調押し付け風土のようなものがあるのかもしれません。生産者・農家は,自分達があの連中から,いかに虚仮(コケ)にされ続けていたかをもっと早く気が付くべきだったのだと思います。

 

(7)上記から,今後,日本農業の窮状を救い,日本農業の再建・再生・復興を期するために採用されるべき農業政策の概要は,おおよそ気がつかれたのではないかと思いますが,下記にそれを箇条書きにしておきます(米政策とその周辺)。

 

●主食用米の収益性以上となるように,転作奨励金の引上げをはじめ,転作を強化するための農業政策を徹底する。減反政策などは今は存在しない。主食用米の転作政策を続けるだけでなく,抜本的に改造しシェイプアップなければいけません。

 

●エサ米,加工用米を大量生産できるよう,転作奨励金の適正化(大幅アップ)と,ユーザーの確保政策を充実させる(耕畜連携やコメ加工品の国産表示の厳格化,米加工事業支援など)。

 

●コメの需給調整政策の徹底(生産者・農家の経営安定に加え,無用の財政支出を防ぐためにも,この政策が極めて重要:たとえばコメの備蓄制度の適正化=現在の回転備蓄をやめて,需給調整備蓄へ転換)

 

●他方,主食用米への金銭的テコ入れはやめる。但し,最低限の生産コスト保障政策は続ける(米価変動交付金の継続と,米の固定価格交付金(1万5千円)の廃止等)

 

●主食用米の転作政策は政府が主導して継続する。転作誘導は,生産者・農家に対する様々な政策メリットとセットで遂行されるべきである(たとえば経営安定対策と転作協力はセットにするなど)。転作で何を作付するかは現場の生産者・農家の「産地づくり協議」に原則として委ね,政府・農林水産省は,その全国調整のための仕組みを創設し,需給がバランスするまで強力な取組を行う(「補助金プレミアム」付きの主食用米作付枠の交換制度など)。

 

●従って,上記の転作奨励金も,地域の自在に委ねられる「産地資金」のウェイトを引き上げる。

 

●格上混米や米の偽装表示を徹底して撲滅するため,米の表示制度や,それにリンクされている米の検査制度の抜本改正を行う。米流通制度も抜本的に改正し,流通業者を許可制にして,米の流通から魑魅魍魎の悪質業者を叩きだす。

 

●生産性向上のためには,現在の分散錯圃状態を徐々に解消すべく,農業基盤(再)整備や農地(再)改良事業と平仄を合わせて,農地の集約を図っていく。地域農業の担い手を地域の中から確保していけるよう,地域全体が将来の地域の農業展望をもてるようにする。

 

●高齢化が益々進み,このままでは耕作放棄地が一気に増大してしまう。一刻も早く,農地耕作の後継者確保と,老朽化する農業基盤・農業施設の刷新を同時並行で取り組み,その中で,分散錯圃の解消や主食用米の転作を定着させていく。日本農業は21世紀へ向けての基幹産業となり得る将来性に満ちた産業であり,それを早く具体化できるかどうかが,日本社会や経済の豊かさ実現のキーポイントの一つとなる。

 

●農業後継者の確保は,今や政策的に強力に展開しなければならないレベルに達している。現存する生産者・農家の子弟の家業(農業)相続だけに頼ることはもはやできない。農業への新規参入を希望する若者を中心に,参入者の便宜を図るとともに,参入後の農業研修や農業技術の伝播,ノウハウの伝授,経営安定対策など,さまざまな目に見える形での農業後継者=地域農業の担い手確保に政策対処すべきである。また,元来閉鎖的と言われる農村部での農地の賃貸借について,新規参入者に耕作農地が賃貸されるよう,何らかの新組織の役割が求められているといえる。

 

●農業に新規参集した若い生産者・農家を大事に育てる必要あり。まず重要なのは農地の確保と経営安定対策=農業で食べていけるようにすること,それと同時並行で,農業技術,農業資材,農機具等の手当てとその使い方,農産物栽培のノウハウ伝授などが重要,そして更に,生産した農産物の適切・有利な販売へのサポート。

 

●米の需要拡大政策を本気・本腰で徹底して実施する(学校給食他)。

 

●MA米の国内市場持ち込みをやめる(加工用やエサ用も含めて,全て海外援助へ)⇒ MA米拒否へ向け国際貿易制度の抜本改正努力

●TPP,WTO/FTA・EPAなど,国際市場原理主義は論外で,直ちに交渉等から農林水産業を除外,できなければ,交渉から撤退

 

●市場原理主義に傾倒するマスごみ記者・記事に対してきちんと反論する。

●実践的,体験的食育=農林水産業教育の拡充

 

(時間をかけて検討・議論すれば,まだまだ政策として打ち出すべきことは多くありますが,時間の関係でこれくらいにしておきます)

早々

 

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