「農地中間管理機構」関連二法案を可決した衆議院農林水産委員会の付帯決議=規制改革会議・産業競争力会議の意見は参考でいい
前略,田中一郎です。
(別添PDFファイルは添付できませんでした)
別添PDFファイルの2013年11月28日付日本農業新聞,及び下記の『日刊アグリ・リサーチ』記事(2013年11月28日)は,先般の衆議院農林水産委員会における「農地中間管理機構」(農地バンク)関連二法案の可決と,当該委員会での審議の様子,ならびにそれを受けての付帯決議を報ずるものです。
注目すべきは,同委員会の与野党議員の大半が一致して,安倍晋三内閣「アベノミクス」の目玉組織である規制改革会議や産業競争力会議の見解・提言を事実上否定し,当初,農林水産省が考えていた「人・農地プラン」と「農地中間管理機構」(農地バンク)の関連付けを強め,地域での話し合いを重視して,「現場の実態を踏まえ現場で十分機能するものとすることを第一義として制度の運用を行うこと」などとする付帯決議を付け加えたことである。そこでは「産業競争力会議、規制改革会議等の意見については、参考とするにとどめ」とされている。
(例外的に,野党の中で「みんなの党」だけが,産業競争力会議や規制改革会議の見解・提言を支持し,付帯決議に反対をしている。「竹中・小泉市場原理主義改革では生ぬるい」とする同党の本領発揮というところなのだろうが,今般の特定秘密保護法案を巡っての安倍晋三・自民党政権との談合・政権へのすり寄りとあわせ,同党の「自民党補完物」としての正体が表面化しているというべきか)
時代遅れの市場原理主義一色になりつつあった日本の政治情勢の中で,かろうじて衆議院農林水産委員会では「良識」が働き,市場原理主義の行きすぎにブレーキがかかったと見ていいのだろうか。しかし,この付帯決議は,あくまで衆議院の一委員会である農林水産委員会での決議であって,本会議決議ではない。その影響力は,小さくはないだろうが,大きくもない。もしかしたら,自民党ゴロツキ政治詐欺集団と,「口先やるやる詐欺」集団・民主党のアリバイ行為の可能性もある。つまり,本音のTPP推進をはじめ市場原理主義の徹底政策は,これからますます本格化させて強引に推し進めるが,それに対する有権者・国民,生産者・農家への「エクスキューズ」として,「私たちは国会でここまで頑張って皆さまのためにやりましたが,時代の流れということでもあり・・・・・」を態度で示したということにすぎないかもしれないのだ。今後の法案の行方を厳しく見て行かなくてはならない。
この「農地中間管理機構」(農地バンク)関連法案については,かねてより私から申し上げているように,元来がゆがんだ日本農業への見方から派生してきている「不要な法案」であり,簡単にいえば,国際市場原理主義の貿易体制に備えて,日本農業の伝統的な良さの根幹であった小規模家族経営による水田稲作をコアとする創意工夫の農業を,新大陸型の大規模モノカルチャー型の低コスト粗放型(石油がぶ飲み)農業に転換させようとするものだということだ。そもそもの考え方の出発点が歪んでいる。
ただ,農地については,いずれにしても生産者・農家の高齢化により,今後,耕作ができなくなってくる速度が益々速まるので,何らかの組織を創って,生産者・農家のリタイアー後の農地の耕作後継者確保対策をしなければならないことには変わりはない。だから,志は歪んでいるが,「農地中間管理機構」(農地バンク)を創設して,そこが地域の農地の耕作放棄地化を防ぐ「砦」となればいいのである。その際に留意すべきは下記のようなことである。
(1)産業競争力会議や規制改革会議の見解・提言は,これまで日本農業を支えてきた家族経営の生産者・農家を頭から全面否定し,彼らの高齢化によるリタイアーを契機に,農業経営から,その後継者も含めて彼らを「追い払い」,その代わりに,地域の外から外国資本を含む農業経営資本を導入して(投資FUNDを含む),日本の農村と農業を新大陸の大規模粗放型の低コスト農場にドラスティックに再編してしまおう,というものである。農業を大資本の金儲けのための材料に差し出せ,ということだ。農地も賃貸だけでなく所有を認めることで,宅地転換等による地価上昇で利益をあげられるから,企業にも農地を保有させよとしつこく主張している。金儲けのためなら,何でもOKにして,世界で最も企業が活動しやすい国にするのだそうである。農業歪曲的なこのような見解・提言などは,衆議院農林水産委員会の付帯決議よろしく無視すればよろしい。
(2)過去への反省が足りない。まず,「農地中間管理機構」(農地バンク)と同じような組織に農地保有合理化法人があるが,何故,ここがまともに機能していないのか。また,各地域の農業委員会についても,その運営がきわめてよろしくないところがある=一部の幹部達の私利私欲(宅地転用許可)従属型だったり,無節操に宅地転用を認めたり,農業に新規参入を希望する若い世代の人に農地を貸そうとしなかったり,耕作放棄地をほったらかしにしている,などなど,各農地関連の各組織が,その期待された役割や使命を十分に発揮していない現実がある。新しい改革をするのであれば,これまでのことを,いいも悪いもきちんとレビューし,具体的に反省をしてから次に進まないと,また同じことの繰り返しになりかねない。
(3)「地域の話し合い」というのは「きれいな言葉」だが,その実態は,地域のボス支配・非民主的な押しつけを,組織を通じてやっている場合もあるので要注意である。今般,安倍晋三自民党政権が打ち出してきた「日本型直接支払(多面的機能支払)」などもそうで,一方で「超バラマキ型農業予算」であるだけでなく,他方では,この補助金の「受け皿」が生産者・農家個人個人ではなく,地域や集落の「組織」がもらいうけ,そこがその使い方を決めるというスキームなので,下手をすると一部のボス支配の道具と化し,それがまた自民党への(半ば半強制的な)支持の押しつけにもつながりかねない面を持っている(土地改良事業なども似たような性格がある)。こうした,前近代的とも言える「ムラ社会」的な組織や意思決定の在り方は,そろそろ卒業して,現代市民社会的な,民主的で,公正で,透明な,地域の在り方や地域農業の今後の展望を打ち立てていくべきだろう。間違っても,旧態依然の「ムラ社会」を政策が間接支援をするようなことがあってはならない。
(4)農地の集約は,その最大の眼目を,①耕作放棄地の更なる発生の防止,②既耕作放棄地の解消(ゴミ捨て場などになっているところは最優先),③分散錯圃の解消,④老朽化する農業基盤の再整備,⑤過疎・高齢化対策,の5つに重点を置いて展開されるべきである。経営規模の拡大や,地域外企業の参入などは,二の次でよい。そして,農業政策は,こうした各論ベースの施策を総合しながら,各地域を「産地」として,将来展望できる農業地域として,中核的な担い手をはっきりさせつつ,収益性の高い農業育成を図っていくべきである。
そのためには,①農産物の価格を品質や安全性とともに引き上げて行く(おのずと農業の有機農業化となる),②6次産業化については,生産者・農家がイニシアティブをとる(単なる農商工連携ではない:農が商工の下請に再編されるのでは意味がない),③食品表示をしっかりさせ(特に国産表示),地産地消の大推進政策を展開する(学校給食は100%米飯),④食育推進(+農林水産教育),農産物販売加工支援,国産農産物の需要拡大政策などを組み合わせることで,国産農業の可能性の拡大を積極的に政策支援する(農林水産省の責任を明確化させ,その業績で人事評価せよ),等が考えられる。いずれにせよ,農業そのものを支援する政策を,これまでのようなアリバイ行為・言い訳づくり施策ではない形で,しっかりと展開していくことが肝要なことである(半ば腐っている農林水産省の幹部達は全部入れ替えた方がいいかもしれない)。
<『日刊アグリ・リサーチ』(2013年11月28日)記事より>
●衆院農水委で「農地中間管理機構」二法案を可決「競争力会議等の意見は参考」の付帯決議を採択
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二七日に行われた衆議院農林水産委員会で「農地中間管理事業の推進に関する法律案」「農業経営基盤強化促進法等の一部を改正する等の法律案」の両案および修正案が可決された。また、両法の施行にあたっては政府が実現に万全を期すべきであるとして、「アドバイザリーグループである産業競争力会議、規制改革会議等の意見については、参考とするにとどめ、現場の実態を踏まえ現場で十分機能するものとすることを第一義として制度の運用を行うこと」など一五項目を盛り込んだ付帯決議を行った。
付帯決議は「農業の生産性を高め将来にわたって安定的な農業生産を行っていくため担い手への農地集積と農地の集約化を一層加速化し、農業への新規参入を促進していくことが求められており、あわせて農業経営所得の安定向上、農村の活性化とその持続的発展を図ることが重要である」として趣旨説明された。付帯決議の要点は以下の通り。
(1)農地中間管理機構が十分に機能し、農地の集積集約化の成果を上げていくためには地域における農業者の徹底した話合いを積み重ねていくことが必要不可欠である。このため、人・農地プランの作成およびその定期的見直しについては、従来以上に強力に推進すること。農地中間管理機構が人・農地プランが策定されている地域に重点を置くとともに、人・農地プランの内容を尊重して事業を行うこととすること。また、人・農地プランと関連する各種予算措置についても適切に確保するとともに、人・農地プランのより円滑な実施を図るための必要な法制上の措置のあり方について遅滞なく検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずることとすること。
(2)農地の集積・集約化を進めるにあたっては、耕作者自らによる農地の所有が果たしてきている重要な役割も十分踏まえ、耕作者の地位の安定を図る観点から、長期にわたり耕作しない不在地主による農地所有を耕作者自らによる農地所有へと誘導するための施策のあり方について検討を加え、その結果に基づいて、必要な措置を講ずること。
(3)農地中間管理事業の実施にあたっては、農地法に基づく権利移動、農業経営基盤強化促進法に基づく利用権設定等、既存の仕組みとの連携を密にし、相互に補完する体制を整備することにより、農地の出し手受け手双方が利用しやすく、実行有る仕組みとすること。
(4)農地中間管理機構が、成果をあげていくためには農地中間管理機構が自立的に活動できることが重要である。このため、国の効果的効率的な財政支援を行うとともに、地方の負担は必要最小限とすること。
(5)農地中間管理機構による農地の貸付先決定ルールについては、借り受け希望者のニーズを踏まえて公平適切に調整するとともに、地域農業との調和およびその健全な発展に資するものとなるようにしていくこと。特に既に、効率的安定的な経営を行っている農業者の経営の発展に支障を与えないように十分に留意すること。
(6)中山間地域等の条件不利地域において、農地中間管理事業を実施するにあたっては、農地の受け手が不足する等平坦地との格差を考慮し、中山間地域等直接支払制度と連携するなど創意工夫を凝らした事業展開が可能となるよう措置すること。
(7)市町村は農地中間管理機構により農用地利用配分計画案の作成、提出等の協力を求められる等、農地中間管理事業の実施にあたって重要な役割を果たすことに鑑み、いずれの市町村においても、地域の実情に即しつつ、農地の出し手受け手のニーズに応えた事業実施が図られるよう農地中間管理機構と市町村および市町村相互の協力連携体制を整備すること。また、法定化される農地台帳等の整備を進めるとともに、その公開ルールは、他の法定台帳の取扱ルールを参考とすること、個人の権利関係に留意すること。
(8)農地中間管理事業による農地の利用集積に際しては、農地の出し手と受け手の掘り起こし等マッチングが不可欠であることに鑑み、地域の農地農業事情に精通しこうした地道な活動に取り組むことのできる人材の確保育成に十分な支援を行うこと。
(9)地域農業における集落営農の役割の重要性に鑑み、集落営農が農地の受け手として積極的に経営展開を図ることができるよう、法人化をはじめその活性化に向けた支援措置を講じること。
(10)都道府県に一を限って指定された農地中間管理機構は必要がある時は他の農地中間管理機構と情報の共有化等の連携を図ること。
(11)農地中間管理機構が借り受けた農地については、所有者の変更や権利制限にかかる事由が発生した場合等において農地中間管理機構は適切な措置を講ずること。
(12)農協およびその出資法人についても、農地流動化に関する実績能力があるところは、農地中間管理機構が委託することにより、機構の事業ルールに即して積極的に活用すること。
(13)農地中間管理機構は農地の生産性を上げていく観点から、大区画化等の利用条件の改善を適切に進めること。また農地中間管理機構を介して集積集約化された土地は農業生産のための公共財としての性格を強めるので、土地改良法等に基づく事業費の負担のあり方についても早急に検討すること。
(14)農林水産大臣は、農地中間管理事業の実施状況について全国的な見地から評価を行うに当たっては、農地および農業経営を巡る多様な状況をきめ細かく分析することにより、地域の実情に応じた農地の集積集約化の取組が助長されるよう留意されること。あわせて農地利用集積円滑化事業について、農地中間管理事業等の適切な役割分担、相互補完が図られるようその実施状況について評価・検証を行い、優良な取組事例の紹介と全国展開に努めること。
≪コレコレ 注目です!!! ↓≫
(15)アドバイザリーグループである産業競争力会議、規制改革会議等の意見については、参考とするにとどめ、現場の実態を踏まえ現場で十分機能するものとすることを第一義として制度の運用を行うこと。
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早々
(参考)「いちろうちゃんのブログ」から
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●自民党の新農業政策(続報:耕種農業)(1)
「米だけは」政策から「米さえも」政策へ=主食を捨てるような国が国家安全保障(NSC)など笑止千万 (その1) いちろうちゃんのブログ
http://tyobotyobosiminn.cocolog-nifty.com/blog/2013/11/post-2712.html
●自民党の新農業政策(続報:耕種農業)(2)
(付け加えます)「米だけは」政策から「米さえも」政策へ=主食を捨てるような国が国家安全保障(NSC)など笑止千万 (その2) いちろうちゃんのブログ
http://tyobotyobosiminn.cocolog-nifty.com/blog/2013/11/post-9d37.html
●自民党の新農業政策(続報:耕種農業)(3)=米や畑作物の価格暴落への備えがない・まだまだ反省と検討が不足している
いちろうちゃんのブログ
http://tyobotyobosiminn.cocolog-nifty.com/blog/2013/11/3-bed1.html
●コメの「減反政策」はとうの昔に廃止されている,今あるのは「主食用米の転作政策」
( 「主食用米の「生産調整」政策の変遷」に見る日本の農業政策) いちろうちゃんのブログ
http://tyobotyobosiminn.cocolog-nifty.com/blog/2013/11/post-9769.html
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