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2013年10月 8日 (火)

原発事故の賠償を何故きちんとしないのか(その1) (原子力損害賠償紛争審査会の新たな方針でも賠償金額が全然足りない)

 別添PDFファイルの2つの新聞記事は,今般,審議が進められている原子力損害賠償紛争審査会での賠償・補償指針の見直しの動向に関する報道である。ご承知の通り,我が国では,「東京電力(福島第1原発)放射能放出事件」から2年半以上が経過しているというのに,原発事故で被害を受けた大半の方々が,未だ生活や人生の再建・再スタートに着手できないどころか,今日明日の行方も定まらない不安定な境遇に縛り付けられ,かつ放射線被曝の危険性におびえながら,経済的に困窮した,つらい,悲しい,厳しい,苦しい生活を余儀なくされている。しかもそれは,何も福島県の避難指示区域の方々だけでなく,放射能で汚染されてしまった福島県各地や,広く関東・東北の各都県の人々にも広がりを見せているのであり,今や看過できない重大な問題=人権侵害問題となってきているのである。

 こうした情勢下,これまで被害者切捨てのために発足したのではないかと疑わせるような仕事ぶりを発揮してきた原子力損害賠償紛争審査会が,このたび,ようやくその重い,かつ歪んだ「腰」をあげ,従来の原発被害に対する賠償・補償の指針見直しに着手し始めた。下記に紹介する記事は,その賠償指針再検討の最終局面を伝える報道だが,それを見る限り,事態の改善にはあまり結びつかない,依然として不十分極まる内容となっている。以下,記事内容を簡単にご紹介するとともに,その問題点を具体的に浮き彫りにしておきたい。

 <別添PDFファイル>

(1)福島帰宅困難者,家屋の賠償上乗せ(毎日 2013.9.30 夕刊)

(2)原発事故慰謝料 避難解除1年後まで 原賠審方針(朝日 2013.10.1

1.福島帰宅困難者,家屋の賠償上乗せ(毎日 2013.9.30 夕刊)

[その1]http://mainichi.jp/feature/20110311/news/20130930dde001040004000c.html

[その2]http://mainichi.jp/select/news/20130930dde007040046000c.html

      

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

(上記より引用:その1)

「東日本大震災:福島第1原発事故 帰宅困難者、家屋の賠償上乗せ 木造築48年超で2.5倍 毎日新聞 20130930日 東京夕刊

 

 文部科学省の原子力損害賠償紛争審査会は、東京電力福島第1原発事故による帰宅困難者らの家屋の賠償額を上乗せする方針を固めた。築年数に応じ増額され、補償の最低基準は従来の最大2・5倍程度になる。避難先での住宅取得を支援するのが狙い。10月1日の審査会で審議し、損害賠償指針に盛り込む。

 不動産の賠償は2012年3月の審査会指針に沿い経済産業省が同7月に基準を決定。東電が事故前の固定資産税評価額などにより賠償額を算定し、支払いを始めている。家屋の賠償額は、減価償却の考え方に基づき、築年数が長いほど低く算定される。現行の算定方法は、家屋補償の最低基準を新築時の2割と規定。木造家屋では、築48年超の場合に最低基準が当てはめられる。

 しかし、避難者の多くは都市部に避難しており、不動産価格の格差から避難先での住宅取得が難しく、生活再建に支障があると不満の声が出ていた。このため、審査会は不動産価値の損害について「移住せざるを得ないことによる損害」の概念を新たに導入。ダムや道路工事に伴う住宅移転の補償制度を参考に、最低基準を新築時の最大5割程度に引き上げることにした。

 例えば、2000万円で建てた築48年超の木造家屋の場合、補償額は従来の400万円から1000万円に増額される。木造以外でも同等の上乗せとなる。帰還困難区域に加え、居住制限区域や避難指示解除準備区域でも、避難年数に応じて減額した上で、リフォームなどの費用を考慮して補償する。対象は3万戸前後の見込み。

 原発事故の賠償問題に詳しい大阪市立大の除本理史(よけもとまさふみ)教授は「避難者の被害実態を踏まえて審査会が指針を見直すことは高く評価できる」と話している。【奥山智己】」

(上記より引用:その2)

「解説:東日本大震災 福島第1原発事故 帰宅困難者、家屋賠償上乗せ 住宅再取得に配慮 毎日新聞 20130930日 東京夕刊

 原子力損害賠償紛争審査会が家屋の賠償額の上乗せ方針を固めた背景には、事故のためわが家を追われ、避難先で住宅を買わざるを得ない避難者の実情を、今の賠償指針が十分に反映できていない現実がある。

 審査会が2012年3月にまとめた不動産の賠償指針では、地元の要望を受け「同等の建物を取得できるような価格とすることに配慮する」ことを求めた。この「同等」の取り扱いについて、避難者は「事故前と同じ家が買える」ことを期待したが、東京電力は「築年数に応じて減価償却した、事故時点の資産価値」と解釈。さらに償却による価値の目減り分を大きく見積もるなどして、賠償額を低く算定しようとした。そのため、経済産業省が同7月、目減り分を抑えるため基準を策定。しかし、買い替えを迫られた避難者の実態にはなお追い付いていなかった。審査会は今回、「移住せざるを得ないことによる損害」の概念を導入した。従来の賠償額に上乗せすることで、減価償却による目減り分を一部補う。

 新たな方針について原発被災者弁護団の丸山輝久弁護団長は「上乗せ自体は評価できるが、本当に再取得が進むのか、慎重に見守る必要がある」と指摘。古くても問題なく住めたわが家の資産価値が低く見積もられ、移住後の生活再建に支障となることに、避難者は納得できない。土地の価格差などの課題も残っており、避難者が住宅取得に一歩を踏み出せるよう、実態に沿った賠償指針づくりが求められる。【奥山智己】」

・・・・・・・・・・・・・・・・(以上,引用終わり)

 現在の「東京電力(福島第1原発)放射能放出事件」に係る損害賠償・補償の進め方については山のように問題がある。もはや「山のような問題」というよりは,原発被害を小さく見せ,加害者・東京電力や事故責任者・国の賠償・補償負担を極端に小さくするために,政治的にあらゆる手段が使われていると言ってよく,従ってまた,それは「問題」ではなく,賠償・補償責任の政治的なゴマカシや歪曲・放棄,あるいは重大な人権侵害,ないしは,今世紀における最も悪質な国家犯罪・権力犯罪となりつつあることを認識すべきである。

 原子力損害賠償紛争審査会(原賠審)とは,そうした人権侵害・国家犯罪を覆い隠すため,あるいは政治的に乗り切るための(虚偽の)正当性・妥当性を糊塗するためにつくられた一種のインチキ組織であり,従ってまた,彼ら原賠審委員たちは,被害実態に合わない,被害者の安全救済からは程遠い「(賠償免責のための)屁理屈の体系」=「被害者への泣き寝入り強要スキーム」を練り上げては,原発事故で苦しむ被害者の方々にそれを押しつけ,現場での悲惨な状況に対して,ずっとこの間,見て見ぬふりをしてきたのである。

(原賠審はこの背信的態度の「言い訳」として「賠償指針は最低限の基準だ」とリップサービスするが,当事者の東京電力は原賠審の指針をそのようには運用せず,逆に「最大限の基準」として使い,支払拒否の口実にしているのである。それに対して原賠審が抜本的な対応の転換を東京電力に求めたなどという話は寡聞にして聞かない)

 このほど,さすがに「インチキ組織」とはいえ,現場のあまりの悲惨さに,従来の姿勢や方針の見直しをせざるを得ない状況となり,ようやく重い腰をあげたが,見直し案の中身は依然として被害者完全救済からは程遠い,お粗末な内容のままである。

 <原発事故賠償・補償の至らなさ>

 これまでの賠償・補償を巡っては,下記のような許し難い欠陥や歪みがあり,被害者の方々は賠償・補償が充分になされないまま,生活や仕事の再建ができず,人生の再出発のスタートラインにいつまでたっても立てない状態が続いている。

(1)(賠償・補償対象範囲が)狭い

 下記で申し上げる「賠償・補償・再建支援」の「5原則+α」で書いたように,原発事故にかかる損害賠償・補償は,当然ながら「全ての被害者の全ての被害・損害が,何の留保条件を付けられることなく,すみやかに全額賠償または原状復帰されること(逸失利益含む)」でなければならない。そして,その場合のいわゆる(損害発生の)「因果関係」の立証も,各具体的な損害について,一定程度の蓋然性があればそれでよく,それ以上のことは,加害者・東京電力や事故責任者・国の方で「因果関係がない」「賠償する必要がない」ことを立証した場合にのみ,賠償・補償の責任が免除されるような仕組みでなければならない。

 しかし,現実はそれとは全く逆で,まず,損害賠償・補償の対象が地域・地点で絞り込まれ,福島県の浜通り地方の避難指示区域以外の地域では,事実上,賠償・補償のほとんどが東京電力によって拒否されてしまっている。今でも福島県内の避難指示区域以外の方々や,福島県外の汚染地域やホット・スポットの方々には,自主避難者も含めて,賠償・補償はほとんどなされる気配がないのである。おまけに昨今では,避難指示区域再編などと称して,強引に,高いレベルの放射能汚染を前提に地域が3つに区分され(*),それぞれに賠償・補償で差がつけられるという,地域・人心の分断政策までもが導入されている。それはまるで,多くの被害者を賠償・補償切り捨ての兵糧攻めにしながらも,他方では,札束で被害者の顔を叩いて,さっさと汚染地域に戻れ,戻ればそれなりのことはしてやると,恫喝的に汚染地域への帰還を催促するような卑劣なやり方である。

(*)政府は,避難指示区域を20mSv/年,50mSv/年で3つに区切り名前をつけた(帰還困難区域,居住制限区域,避難指示解除準備区域)。もちろん20mSv/年や50mSv/年に科学的な根拠などない,放射線被曝線量としては非常に高い危険な値である:住めと言われても,とても住めるものではない)

 

 更に,どんな損害に対して支払うのかという対象事物についても,あれだめ・これだめの許し難い対応が続けられており,ただでさえ経済的・精神的に困難な状況下に追い込まれている被害者の方々を,更に苦境に陥れる理不尽極まりない状況がつくられているのである。

 簡単に言えば,20mSvまでの放射能汚染については,つべこべ言わずに元の所に戻って住め,また,50mSvくらいなら数年したら線量も下がって来るから,これもつべこべ言わずに少し待っておれ,移住や移転などもってのほかで,そんなことする奴らは,福島県その他の被害地域の再建に参加・協力せずに,それを妨げる「非国民」だから,賠償も・補償もしてやる必要などない(形だけのわずかなものでいい),ということだ。こんな理不尽極まる卑劣な人権侵害行為は断じて許されないことである。

 日本には,一般人の放射線被曝限度線量が年間1mSvであるという法律が「東京電力(福島第1原発)放射能放出事件」前から既に存在している。当然ながら,賠償・補償の対象も,この年間1mSvが一つの区切りの基準にならねばならないはずである(但し,1mSv以下は賠償・補償が不要と申し上げているのではない。そもそも事故前には,年間1mSvを超えるような被ばくをする汚染地域は存在していなかった。それを汚してしまったことの償いは,たとえ1mSv未満であっても,してもらわなければならない)。

(2)(賠償・補償金額が)足りない

 記事では住宅などの土地・建物=不動産が事例に挙げられているが,加えて,金額の大きな動産類(車両,農機具,営業用資産等)も同様である。これらは中古品として時価評価された上に,減価償却費をみなし金額で差し引かれてしまうため,賠償額としては非常に小額の金額になってしまう(記事によれば,築48年以上の家屋の補償が最低基準となり,新築の場合のわずか2割しか支払われないという)。

 そのため,生活や家業を放射能汚染されていない新天地で再建・再スタートしようとしても,お金が足りなくて住宅が入手できない,元手がなくて家業が開始できない,など,経済的に苦境に陥り,結局は汚染された従来の土地・家屋に帰還しなければならなくなってしまう(それ以外に生活していけない)。これでは加害者側の「坊主丸もうけ」ならぬ「加害者丸逃げ」の理不尽を追認しているようなものである。

 記事には「審査会は不動産価値の損害について「移住せざるを得ないことによる損害」の概念を新たに導入。ダムや道路工事に伴う住宅移転の補償制度を参考に、最低基準を新築時の最大5割程度に引き上げることにした」と書かれているが,「公共工事の立ち退き補償」を「参考にする」ではだめで,「最低限とする」,でなくてはならないし,「最低基準を新築時の最大5割程度」では話にならないではないか。「10割」まで引き上げた上で,中古住宅と比較しての割り増し分は,「本人の意思に反して強制的に移住させられるようなもの」という被害実態に対する「損害賠償」と考えるべきである。決して「移住せざるを得ないことによる損害」などというスマートで生易しいものではないことを,金額によって「表面化」させる必要があるだろう。

(3)(賠償・補償が実際に支払われるのが)遅い

 書いた通り,支払が遅い。東京電力は自分自身の組織体制のことを言い訳にしているが,そんなの「カンケーネー」である。さっさと払え。そして,さっさと払わなければ,3.11に遡ってきちんと遅延損害金を支払わせなければならない。賠償・補償の決定までに時間がかかる,手続きに時間がかかるなどという言い訳は通用しない。

 しかし,原子力損害賠償紛争審査会も,弁護士・法曹界も,この支払遅延で困る被害者の救済のことは,ほとんど何も言わない状態が続いている。まことにおかしな話である。少し前に,正当な理由がないなど,あまりに支払遅延がひどい場合には,遅延損害金を5%の率で計算して加算しろという話が出たことがある。しかし,これには納得がいかない。正当な理由があろうとなかろうと,常識的な事務手続き期間(1か月程度)が過ぎたら,一律に遅延損害金を計算して支払わせるべきである。概算金を仮払いをさせるという方法もある。(更には,政府が立て替え払いをするという方法もある。本来は政府が立て替え払いをすべきなのだ=後に東京電力に請求)

 また,利率についても,加害者・東京電力の電気料金の納付遅延損害金利率は10%,金融機関の元利金返済遅延損害金利率は14.5%。消費者金融なら貸出利率は1520%程度である。それなのに,経済的に深刻な状態にある原発事故被害者の当然の受取賠償金の遅延損害金利率は5%,こんなことは許されないだろう。

(東京電力が消費者金融とつるんで,賠償金の支払いを遅らせ,被害者がやむにやまれず消費者金融に走ることを余儀なくさせておいて,その東京電力が他方で消費者金融に融資すれば利ザヤを稼げることになる。そんなことでいいのだろうか。ともかく,被害者に対して「兵糧攻め」のような状態になっている現状を抜本的に改めよ)

(4)手続きその他が不親切・煩雑

 東京電力は,賠償・補償を請求する被害者に対して,山のような証拠書類を要求してくる。そんなもの,お前が取りに行って来い,と言いたくなるようなものではないか。帳票類や証拠書類は最低限にせよ。一定の妥当性があればそれで十分である。懸念されることだとされる,(失念ではなく)悪質な虚偽の請求については,その抑止を目的に少しペナルティを課しておけば十分だろう。

 また,東京電力の賠償・補償相談窓口の職員で,応対の態度が悪い人間や,何を言っても賠償・補償の対象外だと請求者を追い払う「瀬戸際対策マン」がいるような話も聞く。時折,覆面の代理人請求を行い(賠償・補償事務取扱の覆面オンブズマン),そんな不心得者を見つけたら厳しく対処すべきである(金額を倍にして支払わせよ)。

(5)賠償ルールの決め方が決定的におかしい

 金額の張る不動産などの賠償基準については,何と加害者・東京電力や事故責任者・国=経済産業省が,原子力損害賠償紛争審査会の頭越しに密室談合をして決めている。何故,かようなものがまかり通っているのか。原子力損害賠償紛争審査会は,何故,その適用を否定ないし拒否しないのか。事故損害の賠償を決めるのに,加害者が被害者に対して,お前の損害はこんなもんだ,と一方的に決めるような,そんなことが許されていいのか。「利益相反行為」などという生易しいレベルを超えているではないか。非常識も甚だしい。

 また,賠償・補償金の支払の遅延損害金の決め方が(加害者)自己中心的である(上記参照)。更に,原子力損害賠償紛争審査会には,被害者の代表がいない・被害者の声を聞かない・被害の実態を見ない。まるで他人事のようである。加えて,「原子力損害賠償紛争解決センター」(原発ADR)も,新聞等に載る仲裁裁定を見ていると,被害者の賠償請求の「値切り屋」稼業に徹しているようである。期待されている仕事がなされているようには,とても見受けられない。これらの組織は,いったいどっちを向いて仕事をしているのだろうか。やるべきことはその逆だ(しかし,そんな「解決センター」の仲裁裁定ですら,東京電力は従おうとはしないことが多い:被害者を完全になめてかかっている)。

(6)再建・再出発が軌道に乗るまでの政策的サポート,ないしは賠償・補償の「上乗せ」(増額部分)がない

 「東京電力(福島第1原発)放射能放出事件」によって被害を受けられた方々が,放射線被曝の懸念のないところで人生の再出発をされる場合,それが軌道に乗るまでの数年間は,当然ながら政策的なサポートが必要だし(就職先のあっせん,就学支援等),自力でやっていただく部分もあるだろうから,賠償・補償の金額上乗せも当然必要だ。しかし,実際は,新聞記事にあったように,失ったものの再取得に必要な金額を割り引いて,低評価して,減額して支払うという,犯罪的とも言えるようなことをしているのが今の状態である。

 また,20126月に国会が全会一致で制定した「子ども・被災者支援法」についても,政府・復興庁は基本方針を策定しないまま1年以上を無為に過ごし,今般,ようやくパブコメに掛けられた基本方針(案)も,事実上,「子ども・被災者支援法」の条文に違反するような,お粗末極まりないものであったことは既知の通りである。

 更に関連して申し上げると,兵庫県を筆頭に,「東京電力(福島第1原発)放射能放出事件」の被害者が避難をしてきて,一時的に他県に住む場合に,公立の小中高の学校に入学することを拒否している自治体があるようである。信じがたいことではないか。住民票を移せ,などと避難者に対して強要しているようである。それができないから(してしまったら,被災県のサポートを受けられない),被害者の方々が困っているのにである。もちろん,お金がなければ,私立学校にも行くことはできない。東京都は猪瀬直樹知事の「鶴の一声」で,遅ればせながらも改められた。

 かような理不尽なことをしている自治体は,兵庫県庁以外にどこがあるのだろうか。私はこういうことを見聞きすると,耐えがたいほどの憤りを感じてしまう。(そのような冷血な)自治体の役人達は,いちいち外部から言われなければ物事がきちんとできないのだろうか。およそ人間の血が通っているようにはとても思えないのだ。

(7)賠償請求時効の期限を延長せよ(または時効の廃止)

 申し上げるまでもない。2014年3月から到来し始める賠償・補償請求の時効を特別法で延長(または廃止)する必要がある。新聞情報によれば,与党自民党内で,一律に10年に延長する法案が検討されているようだ。一刻も早い成立が待たれている。被害者に一般的な時効成立によって賠償・補償請求を放棄させることは許されない。

2.原発事故慰謝料 避難解除1年後まで 原賠審方針(朝日 2013.10.1

 http://www.peeep.us/96fe91a8

 http://twinavi.jp/topics/news/5249f27e-8470-4ecd-b1cc-1ddd5546ec81

(上記より引用)

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「避難者への慰謝料、避難解除1年後まで 福島原発事故で原賠審方針

  東京電力福島第一原発事故で国の避難指示が出た区域の住民に対する月10万円の精神的苦痛に対する賠償(慰謝料)について、文部科学省の原子力損害賠償紛争審査会は、避難指示の解除後1年間は支払いを続けることを指針に盛り込む方針を固めた。1日の審査会で合意する見通し。国の避難指示区域で、慰謝料の支払い期限が示されるのは初めて。審査会は、避難指示の解除に合わせて慰謝料を打ち切らないことで、生活再建が進むと期待している。

 一方、慰謝料は「ほとんどが生活費に使われてきた」(審査会関係者)ことから原発事故で所得が低くなった住民からは「避難者切り捨て」との批判が起きる可能性もある。 避難指示区域では、水道や電気などのインフラ復旧や除染が終了して国が指示を解除しても、仕事や商店がないなど帰還後の生活に支障が出る可能性が高い。また、国の調査では、小さい子どもがいる世帯などは放射能の不安などから避難生活を続ける意向が強い。

 このため審査会は「解除後も生活は困難で、相当期間は賠償の対象になる」との認識で一致。避難指示の解除後、帰還するしないにかかわらず1年間は慰謝料の支払いを続ける。また、家族離散などの精神的苦痛が続く場合は1年を超える賠償も認める。避難指示は福島県の11市町村の区域に出され、放射線量に応じて3区分されている。実際に解除時期が決まった場所はないが、早期の解除が見込まれる福島県田村市の都路(みやこじ)地区が最初の適用になりそうだ。

 慰謝料は、この3区域から避難している計約8万4千人が受け取っている。このうち比較的放射線量が低い避難指示解除準備区域の避難者は約3万4千人で、次に線量が低い居住制限区域は約2万5千人。この2区域で、避難指示を受けた住民の約7割を占める。審査会は居住制限区域も線量が下がれば解除準備区域とし、解除後にこの期限を当てはめる。(大月規義)

 ■慰謝料、避難生活の柱

 東電が支払った避難者への賠償額は1兆円規模に達している。賠償には、仕事を失った避難者の所得に対する賠償や、カビだらけになったりした住宅に対する賠償などがある。その中でも慰謝料は、所得や資産の有無にかかわらず無条件で支給され、税金もかからないため、避難生活を支える大きな柱だ。避難者は仮設住宅で暮らす生活費や、生活再建のための預貯金などに回している。原発から20~30キロ圏内の旧緊急時避難準備区域の住民も、2011年9月末の解除から11カ月間は慰謝料を受け取っていた。一方、約6万人とされる自主避難者への賠償は極めて限定的だ。審査会は精神的苦痛などへの賠償として、18歳未満と妊婦には1人40万円、それ以外は1人8万円などの一時金を認めた。▼37面=旧避難準備区域、帰還6割

 ◆キーワード

 <原子力損害賠償紛争審査会>原発事故で生じた損害について賠償のあり方を決めるため、大学教授や弁護士らでつくる政府の組織。原子力損害賠償法に基づいて文部科学省に設置された。東京電力は審査会の指針に基づいて具体的な賠償基準を決めている。下部組織の原子力損害賠償紛争解決センターが東電と被害者の和解を仲介している。

・・・・・・・・・・・・・・・・(以上,引用終わり)

 まず,この朝日新聞の1面トップ記事は,記事の大見出しがよろしくない。記事を読み進めてみると「(慰謝料は)避難解除1年後まで」とは限らず,家族離散など精神的苦痛が続く場合は1年を超える賠償も認める,ということなので,この記事の大見出しは「(慰謝料は)最低でも避難解除後1年後まで,苦痛続けば賠償継続」とでもすべきところだ。

 それはともかく,記事によれば,精神的苦痛に対する慰謝料は,そのほとんどが生活費として使われているとのことである。ならばまず,精神的慰謝料とは別に,被害者の方々の当面の生活を支えるための費用の補償を,国が立て替え払いをしてでも用意すべきである。特に,自主避難をしている方々の場合は,1人8万円,または40万円(子どもと妊婦)だという,被害者を馬鹿にしたような金額で誤魔化されているのだから,過去に遡り,きちんと被害生活・避難生活の費用は支払われなければいけないはずである。

 

 それに加えて,自主避難者を含む避難者への「慰謝料」はどうあるべきなのかが,根本的に見直されなければならない。具体的には,上記で申し上げた「当面する生活費・あるいは家業経営維持費」に加えて「突然職を奪われるショック=失業=再就職できない苦痛」「ある日突然,ソフト・ハードの全ての「財産」を奪われる精神的被害」「地域コミュニティを含む従来の人間関係が壊される苦痛」「故郷を剥奪される悲しみ・苦しみ」「慣れない環境下での生活の健康への悪影響と苦痛・医療費増など」「離散家族の再会費」などなど,償われるべき慰謝料事項はたくさんある。

 何故,これらをすべて切り捨てるのか。一つ一つ丁寧に拾って行けば,少なくとも,慰謝料を含む賠償額は,資産の再取得を前提とした物損賠償や,悪質交通事故時の精神的賠償額(慰謝料)に加えて,更に多く加算されること,少なくとも,常識的なレベルの1.5~2倍以上に増額されることは当然ではないか。原発事故による賠償・補償は,被害者の数や賠償事項が膨大で加害者側の支払負担も大きいため,1件1件の賠償額は小さくていいなどということには絶対にならない。賠償・補償問題におけるこの精神的苦痛に対する慰謝料の金額の問題は,再建までの生活費や家業経営の維持費支給の問題と併せて,被害者の立場にたって抜本的に見直されなければならない。

 それと最後に一つだけ申し上げておけば,被害者に対する損害賠償や除染や廃炉などの「事故の後始末」を加害者・東京電力や事故責任者・国に対してきちんとさせることは,その経済的な「しんどさ」故に,今後の原発・核燃料施設における(いい加減な管理からくる大事故の)再発防止への大きなインセンティブを伴う「出鱈目人間達につけるいい薬」となるだろう。それは言い換えれば,こうした厳しい事故後処理の義務付けや賠償・補償責任がない限りは,原子力ムラの連中は,これからも従来のまんまの「モラルハザード」の「ぬるま湯」につかりながら,再び大事故・過酷事故をもたらすに違いないであろう,ということである。二度と大事故を起こさないためにも,彼らに対して,頭から「事故責任」という「熱湯」をかけてやろうではないか。

<被害者に対する賠償・補償の実現は,最も重要な政治や市民運動の課題の一つです>

 脱原発のためには脱被曝が必要不可欠であり,脱被曝を実現するためには,被害者が完全救済されなければならない。そのためには,原発事故で被害を受けた方々への万全の賠償・補償の実現が最優先の事項である。今現在,多くの政治家や市民団体,あるいは法曹界などが熱心に取組んでいる「子ども・被災者支援法」拡充・早期実施の運動とともに,被害者への万全の賠償・補償の実現も,それと並ぶ,いやそれ以上に重要な政治や市民運動の課題であることを認識していただきたいと思う。

 何故なら,賠償・補償がきちんとなされなければ,被害者の方々は,いつまでも中途半端で不安定な状態を余儀なくされるからであり,更に現状の補償の水準では,時間がたつにつれて経済状態の悪化と生活苦が深刻化してくるのは明々白々であるからだ。このままでは,被害者の方々は,いつまでたっても生活や人生の再スタートが切れず,家業の再建や新しい仕事を見つけることもままならず,子どもたちの就学などについても支障が出てしまうことになる。文字通り,原発事故による「被害者の人生の完全破壊」が起きてしまう。こんなことは許されない・起きてはならないことだ。我々同時代に生きるものは,これを何としても防ぐ倫理上・道徳上の使命があるのではないか。 

 先般8月末に,多くの団体や有志を集めて「原発事故被害者の救済を求める全国運動」がようやく立ち上がりました。ご尽力いただいた海渡雄一弁護士,河崎健一郎弁護士,FOEジャパンの満田夏花さん他,「全国運動」を支えて下さっている多くの皆様に心から感謝申し上げるとともに,今後,被害者の完全救済へ向けて,精力的な活動を展開して下さることを願っています。

FoE Japan 「原発被害者の救済を求める全国運動」キックオフ(2013826日)

 http://www.foejapan.org/energy/action/130816.html

<賠償・補償・再建支援:5原則+α(同時代に生きる人間としての使命・倫理)>

 最後に,私の考え方を下記に箇条書きにしておきます。賠償・補償・再建支援が,この原則に従ってきちんとなされないと,被害者はいつまでたっても救われないことになります。政府は,この問題を加害者・東京電力に丸投げするのではなく,政府自身が「東京電力(福島第1原発)放射能放出事件」の発生責任者として,「立て替え払い」を含む様々な政策的手段で,被害者の完全救済に向けて取り組みを強める必要があります。一刻も早く,被害者に対する万全の賠償・補償及び再建支援が実施されることを願っています(賠償請求権の時効延長または廃止も含めて特別立法が必要)。

(1)全ての被害者の全ての被害・損害が何の留保条件を付けられることなく全額賠償または原状復帰されること(逸失利益含む)

(2)全ての被害者の生活及び経営が再建されること(費用,段取り,その他の負担のすべてを加害者が負うこと)

(3)上記(2)の再建が確認できるまでの間,全ての被害者の生活及び経営を補償すること

(4)2011311日以降,上記の賠償・補償・再建費用が実払いされるまでの間,電気料金遅延にかかる遅延損害金と同利率の遅延損害金が被害者に支払われること

(5)悪質な交通事故被害の場合以上の慰謝料(迷惑料)が被害者に支払われること

(6)(+α)被害者の被害は「お金」に変えられないものも多い。その部分を加害者・事故責任者が万全にフォローすること

以 上

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