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2013年10月 5日 (土)

東京新聞「こちら特報部:本音のコラ欄:竹田茂夫著 ”金融危機の教訓」を読んで

前略,田中一郎です。

 

2013103日付の東京新聞「こちら特報部:本音のコラム欄」に,竹田茂夫法政大学教授がお書きになった ”金融危機の教訓”が載りました。以下,拝読しての私の所感をごく簡単に申し上げます。詳しく書いておりますと「大論文」になりますので,ごくごく簡単に,感覚的に書き落しておきます。詳しくはお会いした時にでも議論いたしましょう。

 

竹田氏がこのコラム記事で述べられている教訓は次の2つです。

(1)かつての5大投資銀行に象徴される米国型直接金融の効率性幻想が払拭された

(2)もう一つの教訓は,自立する市場経済という虚構が赤裸々になった

 

1.米国型直接金融の効率性について

 貨幣(マネー)の動きであり,貨幣のビジネスである金融は,本来は実体経済(財サービス経済)を円滑に発展させるためのもの,つまり「実物経済のための金融」だったはず。それがいつの間にやら「金融ビジネスのための金融」「金融のための金融」となり,かつ,その金融が実物経済を支配しはじめる。不特定多数の出資者から資金を集めて有限責任で会社を運営していく株式会社制度が確立され,金融グループを中心とした持ち株会社制度やコンツェルン形成などの金融資本主義が台頭してくるのである。そして更に,1980年頃からは(米レーガン・英サッチャーの時代),「投機=金融バクチのための金融」となり,金融本来が持つ機能が金融規制緩和などの進捗にしたがい次第に歪められ,麻痺させられてしまった(金融技術革命とカジノ資本主義)。その際の,この実物経済への破壊的君臨と,金融機能歪曲化の「合理化」イデオロギーとなったのが,市場原理主義=米国型金融の「効率性」なる神話である。(ちなみに「投資銀行」という用語は米国特有です,証券会社とでも読み替えておけばいいと思います)

 

 この「神話」が嘘八百であったことは,竹田氏がこのコラムで書いておられる通りで,簡単に言えば,金融市場の「相場」=金融商品や金融取引の「価格」(金利の逆数)を一方向へ中期的なタームで際限なく上昇させていき,ある時,それが一気に崩壊・暴落するという,非常に不健全で不効率な「市況サイクル」を生みだしてしまうことが「実際の経験」として「実証的」に明らかとなった,ということである。17世紀オランダのチューリップ恐慌以来,投機の無際限の繁殖とバブル相場の崩壊という「やりたい放題市場」のドラマは,根拠に乏しい,まことしやかな屁理屈や分析なるものにバックアップされ,アカデミズムや政府・大企業などの権力組織による無責任な言説に刺激されながら,相場上昇の中で踊りに踊って,最後は泣き崩れ滅び去る,という,愚かものの典型のような巨大な不効率を繰り返してきているのである。

 

 もはやアメリカには不況というものはなくなった(ニューエコノミー論),グリーンスパンFRB議長の金融調節は「神の手になる采配である」などと,今となってはアホウにもほどがある,とでもいうようなことを,多くの金融ビジネスマンや企業経営者達,あるいは大学教授と言われる(実際の経済や金融を知らない)「おっちょこちょい」の机上空論学者達が真顔で騒がしいほどに論じていたのです。それは,本当についこの間のことだったことを思い出さねばなりません。

 

 目先のことだけを見て,市場に全てを委ねておくことが=言い換えれば,強きも弱きも「勝手にしやがれ」で,知らぬものが馬鹿を見る弱肉強食の風土の中で,実物経済を踏みつぶして金融が大手を振り,その金融を押しのけて,悪性の投機マネーが金融を含むすべての経済活動を食い物にし,破壊していく。およそ投機マネー=そのもっとも典型的な形が「私募形式の投資FUND」(ヘッジファンドもその一つ)である,にとって,食いものにできるものであれば何でもよく,モラルも,国家による規制も,インサイダーであろうが無かろうが,実体経済の良しあしも,金融の効率性なるものも,すべて「どうでもいい」。とにかく,価格変動の合間をぬって駆け回り,その差額を自らの利益として無限に増殖する・膨張する,それが投機マネーの「無政府的哲学」であり「生まれ持ったる宿命的性質」なのである。

 

 しかし,勘違いしてはいけないのは,この投機マネーは,我々の預かり知らぬところから湧き出てくる「サタンの使徒」ではない。投機マネーの中核的原資は,その大半が,欧米やロシア,アラブ,そして昨今では中国などを中心とする,ほんの一握りの大富裕層のプライベートマネーであり(私物化された国家財政を含む),そして,2008年のリーマンショックに至った約20年間においては,先進各国の年金マネーや投資信託,あるいは下記で申し上げる「シャドウ・バンキング」など,我々の零細預貯金が非民主的に「転換」されたものであることを忘れてはならない。いわば,私募投資ファンドは,まっとうな金融のための原資を,「高利回り」というエサで釣り上げて「投機化」する,一種のマネーロンダリングだとみなしてもいいのではないか。ちなみに「私募ファンド」は,原則として,一切の国家規制からフリーであり,また,情報公開(ディスクローズ)の法的規制もない,いわば「無法の世界」の巨大マネーである。(こんなものを放置しておいて,何が「市場の効率性」か!)

 

2.自立する市場経済という虚構について

 竹田氏がお書きになっているように,「やりたい放題市場経済・金融」は,調子がいい時には「自立」「自己責任」「自律」「神の見えざる手」などと,うぬぼれた「祭りの経典」をひも解いておりますが,さて,バブルが一気に崩壊して,ほんとうに自己責任が問われる段になると,その責任者達は一気に舞台から姿を消してしまう。投機マネーとは逃げ足が速い,というが,およそ市場原理主義を礼賛する似非論者達も逃げ足は速く,過去の自分達の言動に責任などとろうとはしない。都合の悪いことは,見ざる,聞かざる,言わざる,である。そして,市場原理主義者達と相性がいいのは(彼らにとっての大好きな友人は),物忘れのひどい間抜け人間達である。

 

 結局は,国家による財政や金融の出動=つまりは諸国民の血税とシステム維持努力のよって「穴埋め」がなされることになる,そして,けしからんことには,この国家そのものが民主的でないために,投機マネーとその「同族ムジナ」達によって国家機構や規制当局が占拠され牛耳られており,およそこうした血税による補てんをはじめ,国民への「巨額なつけ回し」という犯罪的な結末に対しては,その「バブル崩壊」に至るプロセスでの「罪」や「責任」を問われる者は皆無となってしまうだ。

 

 1991年の日本のバブル崩壊,そして2008年のリーマンショックという米国のバブル崩壊,そしてギリシャ危機・イタスぺポル危機というヨーロッパのバブル崩壊,などなど,およそバブル崩壊後において,カジノ資本主義の責任を取らされた人間がどれほどいるだろうか? せめて,粉飾決算や放漫経営を続けた投資銀行・商業銀行・保険会社等の経営者達ぐらいは処罰されてもいいように思われるが(特別背任・善管注意義務違反・違法行為等),それは,この市場原理主義金融投機体制(カジノ資本主義体制)とでも言うべきものを根本的に改革しなければ,ありえない話なのである。

 

3.金融市場原理主義というものの「インチキ」システムの実際

 思い出していただきたい。以下,全部出鱈目でインチキだったことを記憶しておくべきである。下記には,そのほんの一例を列記しておく。

 

●サブ・プライムローン(返済不能がわかりきっている貸出,それを「証券化」して,いろいろな物と混ぜくって分からなくして売り飛ばす)

 

●格付会社(証券化を商売にしている会社などと結託して,事実上,虚偽のような高格付を乱発,雰囲気だけで投資していた投資家が大損)

 

●商業銀行(BIS規制という自己資本比率を中心にした厳しい規制で安全経営が担保されていたと思っていたら,シャドウバンキングという手法で陰に隠れて投機)

 

●投資銀行(商業銀行に比べて規模が小さいのに,商業銀行をはるかに上回る巨額の「投機」に走り自滅:BIS規制の対象外どころか,国家規制もゆるゆるだった)

 

●保険会社・ノンバンク(ソルベンシー・マージン率などという,ややこしいだけで役に立たない規制の下,これもまた,投資銀行以上の巨額投機で崩壊)

 

●デリバティブやSPV(非公開店頭取引のデリバティブを膨らませ,規制や情報公開がうるさい金融機関本体の外側にSPVやFUNDを創って,そこで博打うち)

 

●ディスクロ(都合の悪いことは情報公開されないように仕組まれていることに加え,金融市場の「速さ」にはついていけず後手に回る=バブル阻止の決め手にはならず)

 

●投資という投機=インチキバクチ(特定のプロの詐欺師達がインチキルールに精通し,ルールを知らない単純素朴な市場参加者を食い物にする,当局は知らぬ顔)

 

●バブル崩壊後は,自己責任原則は雲散霧消し,投機のリーダー達は物陰に隠れ,巨大金融機関は国民の血税で救済される。刑事責任ゼロの「モラル・ハザード」蔓延

 

 <店頭取引(OTC:オーバーザカウンター)と取引所取引との違いにも注目しておいてください>

 

 店頭取引とは,言い換えれば「相対取引」のことで,取引当事者でなければ,その内容は一切分からない。本来は資本主義市場では,この相対取引が基本であるが,金融という特殊な取引=特にメガバンクなどの「倒産させると破壊的な影響を経済・社会に及ぼす金融機関」が行う「相対取引」=「店頭取引」に対しては,厳しい規制や情報公開が義務付けられていなければならない,これがおろそかにされたのが,リーマンショックの一つの大きな原因である。

 取引所取引は,万全ではないが,店頭取引が持つ危険性が相当程度緩和されている。がしかし,昨今の取引所は「株式会社化」され,経済の「公器」としての意識を取引所運営者達が喪失しており,危険な規制緩和の兆候がみられることに留意しておかなければならない。「何のために,あんたら取引してんのよ?」,この問いを,絶え間なく取引所に対して投げかける必要があるだろう。

 

4.市場原理主義とはご都合主義であり,「現代アホダラ教」である

 市場原理主義は,時の支配権力=大資本や国家権力,政治勢力と癒着しながら増殖することを再優先している,一種のご都合主義であることが最大の特徴,従って,たとえばハイエクなどの新自由主義的な経済理論とは似て非なるものである。彼らは,単純な低モラルの貪欲なだけの「金もうけ主義」者であり,頭の中はいたって単純な「単細胞」でできており(但し,悪徳金儲けには複雑細胞機能を併せ持つ変種の生物群),言動することは,経済情勢・金融情勢が如何に変化しようとも千年一日のごとく,規制緩和(やりたい放題),民営化(=私物化),小さな政府(税金払わない),経済成長拡大万歳(自分達だけが肥え太る),財政政策無効(貧乏人は放っておけ他)・金融政策のみ有効(マネタリズム),などなどをくりかえしている。一種のジコチュー型「現代アホダラ教」だ。

 

5.金融市場原理主義バブルは繰り返す

 カジノ資本主義の基本的な構造を変えない限り,バブル経済は「くりかえし」となる。その点で,数年前にボルガー元FRB議長が提唱して制定された「米国金融改革法」の内容は,まだまだ生ぬるい内容となっていて,これでは「バブル循環」は回避できない。そして,米国では,その「金融改革法」ですらが,まだ具体的な実施に至らず,さまざまな妨害活動・骨抜き工作が跋扈している状態である。もちろん,第3次BIS規制や,マクロ・プルーデンス政策なども,その効果は限定的で,およそ「バブル経済」=「カジノ資本主義」を終焉させることはできない。

 

6.近未来の金融激震は「商品インフレ」に対するコントロール不能:「インフレターゲット論の愚かさ」

 そうした中で,私は近い将来,日本を襲ってきそうな「猛烈な円安」と「商品(&サービス)インフレ」,そして,それに預貯金金利や国債金利が追いつかないことによる,国民(金融)資産の大暴落(貨幣価値の消滅)の危機を申し上げておきたいと思う。原発・核燃料施設の再稼働と原子力推進に固執し,旧態依然の抵抗勢力・利権集団を温存させ,市場原理主義アホダラ教から抜けきれない日本という国の末路は様々に考えられるが,その一つとして,円という貨幣への信頼の喪失=貨幣資産の崩壊を挙げておきたい。

 

(「資産バブル」とは,言い換えれば「資産のインフレ」のこと,ここで言う「商品(サービス)インフレ」とは,文字通りの従来型インフレで,貧乏人の我々には関係があまりない資産バブルとは違い,この「商品インフレ」は,零細預貯金の目減りとともに,我々の生活や生存を直撃する)

 

 おそらく,その時になって,現在大流行のバカバカしい「金融政策論」である「インフレ・ターゲット」論が,正真正銘の「大嘘」であったことが実証されるだろう。賢明な人間は,大嘘に早く気が付き,愚かものは,その大嘘がとんでもない事態や悲劇を生みだしてから気がつく,ただそれだけの差にすぎないように思う。そもそも「インフレ・ターゲット」は○○%にする,と金融当局(日銀など)が打ち出して,その通りに行ったためしがあるのか,よく過去を振り返ってみることだ。かつての日本帝国陸軍は,鬼畜米英を撲滅せよ,と唱えれば戦争に勝てると思いこんでいたようだが,その精神構造が「インフレ・ターゲット」論とよく似ている。

早々

 

 

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